(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面においては、同一の符号が付された構成要素は、実質的に同一の構造または機能を有するものとする。
【0016】
なお、本形態に係る異方性光学フィルムについては、以下の順序で説明する。
1 異方性光学フィルムの構造と特性
2 先行技術の課題とその解決手段の概要
3 本形態に係る異方性光学フィルムの構成
4 本形態に係る異方性光学フィルムの製造方法
5 本形態に係る異方性光学フィルムの用途
【0017】
≪異方性光学フィルムの構造と特性≫
初めに、
図1〜
図7を参照しながら、本形態に係る異方性光学フィルムについて説明する前提として、単層の異方性光学フィルム(本形態で言う「異方性光拡散層」が単層の場合)の構造と特性について説明する。
図1は、ピラー構造(後述)を有する異方性光学フィルムの一例を示す模式図である。
図2は、ルーバー構造(後述)を有する異方性光学フィルムの一例を示す模式図である。
図3は、異方性光学フィルムの光拡散性の評価方法を示す説明図である。
図4は、柱状領域13の配向方向Pがフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致する異方性光学フィルムの一例を示す模式図である。
図5は、柱状領域23の配向方向Pがフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致しない異方性光学フィルムの一例を示す模式図である。
図6は、
図4の異方性光学フィルムへの入射光の入射角と直線透過率との関係を示すグラフである。
図7は、
図5の異方性光学フィルムへの入射光の入射角と直線透過率との関係を示すグラフである。
【0018】
(異方性光学フィルムの構造)
異方性光学フィルムとは、フィルムの膜厚方向に、フィルムのマトリックス領域とは屈折率の異なる領域が形成されたフィルムである。屈折率の異なる領域の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、
図1に示すように、マトリックス領域11に柱状又は棒状等に形成された屈折率の異なる柱状領域13が形成された異方性光学フィルム(以下、「ピラー構造の異方性光学フィルム」と称する場合がある。)10や、
図2に示すように、マトリックス領域51に略板状に形成された屈折率の異なる板状領域53が形成された異方性光学フィルム(以下、「ルーバー構造の異方性光学フィルム」と称する場合がある。)50や、図示していないが、ピラー構造とルーバー構造が混在したハイブリッド型の異方性光学フィルム等がある。
【0019】
(異方性光学フィルムの特性)
上述した構造を有する異方性光学フィルムは、当該フィルムへの入射光の入射角度により光拡散性(透過率)が異なる、すなわち入射角依存性を有する光拡散フィルムである。この異方性光学フィルムに所定の入射角で入射した光は、屈折率の異なる領域の配向方向(例えば、ピラー構造における柱状領域13の延在方向(配向方向)やルーバー構造における板状領域53の高さ方向)と略平行である場合には拡散が優先され、当該方向に平行でない場合には透過が優先される。
【0020】
ここで、
図3〜
図7を参照しながら、異方性光学フィルムの光拡散性についてより具体的に説明する。ここでは、上述したピラー構造の異方性光学フィルムのうち、柱状領域13の配向方向Pがフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致する異方性光学フィルム10と(
図4を参照)、柱状領域23の配向方向Pがフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致しない異方性光学フィルム20(
図5を参照)の光拡散性を例に挙げて説明する。なお、異方性光学フィルム20の柱状領域23の配向方向Pは、フィルムの法線方向から約20°傾斜した方向となっている。
【0021】
光拡散性の評価方法は、以下のようにして行った。まず、
図3に示すように、異方性光学フィルム10、20を、光源1と検出器2との間に配置する。本形態においては、光源1からの照射光Iが、異方性光学フィルム10、20の法線方向から入射する場合を入射角0°とした。また、異方性光学フィルム10、20は直線Lを中心として、任意に回転させることができるように配置され、光源1及び検出器2は固定されている。
【0022】
異方性光学フィルム10、20を、それぞれ、
図4及び
図5のA−A軸(異方性光学フィルムの径(辺)方向の軸)を
図3に示す回転中心の直線Lに選んだ場合(回転方向A)と、B−B軸(A−A軸と直交する軸)を
図3に示す回転中心の直線Lに選んだ場合(回転方向B)における光拡散性を評価した。回転方向Aと回転方向Bのそれぞれに配置した異方性光学フィルム10を回転させて得られた光拡散性の評価結果を
図6に示した。同様に、回転方向Bに配置した異方性光学フィルム20を回転させて得られた光拡散性の評価結果を
図7に示した。ここで、
図6及び
図7は、
図3に示した方法で測定したものであり、縦軸を直線透過率(直線透過率=異方性光学フィルム10、20がある場合の検出器20の検出光量/異方性光学フィルム10、20がない場合の検出器20の検出光量)とし、横軸を異方性光学フィルム10、20への入射角とした。
【0023】
図6に示すように、柱状領域13の配向方向Pがフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致する異方性光学フィルム10は、入射光の入射角によって直線透過率が変化するものである。また、異方性光学フィルム10について、A−A軸を直線Lに選んだ場合と、A−A軸に直交するB−B軸を直線Lに選んだ場合とで、ほとんど同じ光学プロファイルを示すものである。ここで、本明細書でいう光学プロファイルとは、
図6や
図7に示すように光拡散性の入射角依存性を示す曲線を意味する。光学プロファイルは、光拡散性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね光拡散性を示しているといえる。通常の等方的な光拡散フィルムでは、0°付近をピークとする山型の光学プロファイルを示すが、異方性光学フィルム10では、その配置方向(A−A軸方向及びB−B軸方向)に依存せずに、回転中心軸(直線Lとして選んだ軸)が変わってもほぼ同じ直線透過率を示し、法線方向(0°)で入射する場合の透過率と比較して、±5〜10°の入射角で一旦直線透過率が極小値になり、その入射角(の絶対値)が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなり、±45〜60°の入射角で直線透過率が極大値となる谷型の光学プロファイルを示す。このように、異方性光学フィルム10は、入射光が法線方向(すなわち、柱状領域13の配向方向P)に近い±5〜10°の入射角範囲では強く拡散されるが、それ以上の入射角範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。以下、最大直線透過率と最小直線透過率の差の1/2をなす角度範囲を拡散領域(拡散幅)と称し、それ以外の角度範囲を非拡散領域(透過領域)と称する。
【0024】
また、
図6に示す谷型の光学プロファイルは、入射角0°付近(特に、2つの極小値の間に存在する極大値付近)を軸にして対称になっており、本形態においては、これを散乱中心軸という。すなわち、散乱中心軸とは、入射角を変化させた際に光拡散性がその入射角を境に略対称性を有する光の入射角と一致する方向を意味する。ここで、略対称性を有するとするのは、散乱中心軸がフィルムの法線方向に対して傾きを有する場合には、光学プロファイルが厳密には対称性を有しないためである。異方性光学フィルム10においては、散乱中心軸と柱状領域13の配向方向Pとは平行となる。
【0025】
ここで、散乱中心軸と柱状領域の配向方向Pとが平行であるとは、屈折率の法則(Snellの法則)を満たすものであればよく、厳密に平行である必要はない。Snellの法則は、屈折率n
1の媒質から屈折率n
2の媒質の界面に対して光が入射する場合、その入射角θ
1と屈折角θ
2との間に、n
1sinθ
1=n
2sinθ
2の関係が成立するものである。例えば、n
1=1(空気)、n
2=1.51(異方性光学フィルム)とすると、散乱中心軸の傾き(入射角)が30°の場合、柱状領域の配向方向(屈折角)は約19°となるが、このように入射角と屈折角が異なっていてもSnellの法則を満たしていれば、本形態においては平行の概念に包含される。
【0026】
次に、
図7に示すように、柱状領域13の配向方向Pがフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致しない異方性光学フィルム20は、入射光の入射角によって直線透過率が変化するものである点では、異方性光学フィルム10と同様である。ただし、図示してはいないが、柱状領域13の配向方向Pがフィルムの法線方向と一致していないため、A−A軸を直線Lに選んだ場合と、A−A軸に直交するB−B軸を直線Lに選んだ場合とでは、異なる光学プロファイルを示す。また、異方性光学フィルム20は、入射角20°付近を中心として、入射角15°付近と30°付近に極小値を有する谷型の光学プロファイルを示す。このように、異方性光学フィルム20は、入射光が法線方向から20°傾いた方向(すなわち、柱状領域13の配向方向P)に近い入射角範囲(拡散領域)では強く拡散されるが、それ以上の入射角範囲(非拡散領域)では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。また、
図7に示す谷型の光学プロファイルは、入射角20°付近(特に、2つの極小値の間に存在する極大値付近)を軸にして対称になっており、異方性光学フィルム20の散乱中心軸は約20°の方向といえ、柱状領域13の配向方向Pと平行となっている。
【0027】
このように、ピラー構造を有する異方性光学フィルム(異方性光拡散層が単層のみの場合)では、散乱中心軸方向及びこれに近い入射角範囲(拡散領域)では強く拡散されるが、散乱中心軸方向から離れるほど直線透過率が高まるという性質を有している。
【0028】
≪先行技術の課題とその解決手段の概要≫
次に、先行技術における異方性光学フィルムの課題とその解決手段の概要について説明する。
【0029】
(先行技術の課題)
以上説明したようなピラー構造を有する異方性光拡散層を単層のみ有する異方性光学フィルムを液晶表示パネル等に用いた場合、散乱中心軸を適宜調整することで、視野角をある程度広げ、視野角方向における輝度及びコントラストを改善することができる。
【0030】
しかしながら、視野角方向における輝度及びコントラストを改善しようとして、ピラー構造を有する異方性光拡散層を単層のみ有する異方性光学フィルムを用いると、視野角方向以外の他の方向(例えば、表示パネルの法線方向)の輝度及びコントラストを大きく低下させてしまうという現象が生じてしまう。また、視野角を更に広げようとした場合には、視野角方向以外の他の方向の輝度及びコントラストの低下が著しいものとなってしまう。
【0031】
本発明者らが上記現象の原因を検討したところ、ピラー構造を有する異方性光拡散層を単層のみ有する異方性光学フィルムでは、輝度やコントラストを向上させようとして非拡散領域における直線透過率を向上させると、拡散領域が縮小してしまうため視野角が狭くなってしまい、一方、視野角を広げようとして拡散領域を拡大しようとすると、非拡散領域における直線透過率が低くなってしまうことが分かった。すなわち、本発明者らは、ピラー構造を有する異方性光拡散層を単層のみ有する異方性光学フィルムでは非拡散領域における直線透過率の向上と、拡散領域(拡散幅)の拡大を両立することが困難であるという課題を見出した。
【0032】
(先行技術の課題解決手段の概要)
かかる課題を解決するためには、
図8に太線で示すように、異方性光学フィルムが、非拡散領域における高い直線透過率を有するとともに、広い拡散領域(拡散幅)を有することが理想的であると考えられる。そこで、本発明者らは、このような非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域(拡散幅)の拡大を両立させた異方性光学フィルムを得るために更に検討を進めた。その結果、特許文献2に記載されているように、単に、各異方性光拡散層の散乱中心軸の方向を異ならせただけでは不十分であり、異なる直線透過率及び拡散強度を有する異方性光拡散層を2層以上積層し、且つ、各異方性光拡散層の最大直線透過率及び最小直線透過率(拡散強度)を特定の範囲内とすることで、非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域(拡散幅)の拡大を両立することが可能となることを知見した。
【0033】
また、本発明者らは、拡散領域(拡散幅)を更に効果的に拡大するためには、散乱中心軸を特定の角度範囲ずらした異方性光拡散層を積層することが有効であることも併せて知見した。
【0034】
以上のように、特定範囲の直線透過率(最大直線透過率)及び拡散強度(最小直線透過率)を有し、且つ、これらの直線透過率及び拡散強度が互いに異なる異方性光拡散層を2層以上積層した異方性光学フィルムによれば、非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域(拡散幅)の拡大を両立すること可能となる。従って、このような異方性光学フィルムを液晶表示パネル等に用いることにより、視野角方向における表示特性(輝度及びコントラスト等)を改善しつつ、他の方向における表示特性の低下を抑制することができる。以下、これらの知見に基づいて成された本形態に係る異方性光学フィルムについて、詳細に説明する。
【0035】
≪本形態に係る異方性光学フィルムの構成≫
図9及び
図10を参照しながら、本形態に係る異方性光学フィルム100の構成について説明する。
図9は、本形態に係る異方性光学フィルム100の全体構成の一例を示す模式図である。
図10は、本形態に係る異方性光学フィルム100における異方性光拡散層110、120の構成の一例を示す模式図であり、(a)が異方性光拡散層110の構成を、(b)が異方性光拡散層120の構成を示している。
【0036】
<全体構成>
図9に示すように、異方性光学フィルム100は、2層の異方性光拡散層110、120が積層された異方性光学フィルムである。本発明に係る異方性光学フィルムは、異方性光拡散層として、少なくとも、相対的に入射光の透過率が高い異方性光拡散層(a)と、相対的に入射光の透過率が低い(拡散強度が強い)異方性光拡散層(b)とを有することが必要である。本形態に係る異方性光学フィルム100は、上記異方性光拡散層(a)として、上層側に積層された異方性光拡散層110を有し、上記異方性光拡散層(b)として、下層側に積層された異方性光拡散層120を有している。ただし、本発明では、異方性光拡散層(a)と異方性光拡散層(b)の積層順序は特に制限されず、本形態に係る異方性光拡散層110が下層側に、異方性光拡散層120が上層側に積層されていてもよい。なお、本形態では、異方性光拡散層が2層積層された構成を示しているが、本発明に係る異方性光学フィルムとしては、異方性光拡散層が3層以上積層されているものであってもよい。
【0037】
また、各異方性光拡散層110、120の間には、透明性を有する粘着層130が更に積層されている。この粘着層130は、必要に応じて設ければよいが、後述する実施例に示すように、粘着層130を有する方が、異方性光学フィルム100の非拡散領域における透過率の最大値がやや大きくなり、拡散領域の幅(拡散幅)がやや広くなるため好適である。ここで、異方性光学フィルムが、3層以上の異方性光拡散層を有する場合には、全ての異方性光拡散層の間に粘着層があってもよいし、一部の異方性光拡散層の間のみに粘着層があってもよいし、全ての異方性光拡散層が粘着層無しに積層されていてもよい。
【0038】
<異方性光拡散層110、120>
異方性光学フィルム100を構成する各異方性光拡散層110、120は、上述した単層の異方性光学フィルム10、20等と同様の構成を有しており、入射光の入射角により直線透過率が変化する光拡散性を有している。また、
図10に示すように、異方性光拡散層110、120は、それぞれ、光重合性化合物を含む組成物の硬化物からなり、マトリックス領域111、121と、当該マトリックス領域111、121とは屈折率の異なる複数の柱状領域113、123を有している。この柱状領域113、123の配向方向(延在方向)Pは、散乱中心軸と平行になるように形成されており、異方性光拡散層110、120が所望の透過率及び拡散性を有するように適宜定められている。このような構造は、詳しくは後述するが、例えば、光重合性化合物を含む組成物をシート状に設け、所望の散乱中心軸と平行な光線を光源からシートに対して照射し、組成物を硬化させることにより形成でき、光線を照射した部分が柱状領域113、123となり、光線を照射していない部分がマトリックス領域111、121となる。なお、「平行」の概念については上述した通り、Snellの法則を満たすものであれば本形態における「平行」の概念に含まれる。
【0039】
(柱状領域)
また、本形態に係る柱状領域113、123は、マトリックス領域111、121中に、複数の柱状又は棒状の硬化領域として設けられており、各々の柱状領域113、123は、それぞれ配向方向Pが散乱中心軸と平行になるように形成されたものである。従って、同一の異方性光拡散層(例えば、異方性光拡散層110)における複数の柱状領域(例えば、柱状領域111)は、互いに平行となるように形成されている。また、柱状領域113、123の形状は、柱状又は棒状であれば、柱状領域113、123の配向方向Pに垂直な断面の形状は特に制限されるものではない。例えば、
図10では柱状領域113、123の断面形状を円形状に示しているが、柱状領域113、123の断面形状は、円形状に限定されるものではなく、楕円形状、多角形状、不定形状等、特に限定されるものではない。ただし、異方性光学フィルム100の非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域(拡散幅)の拡大をより効果的に実現するためには、柱状領域113、123の断面における短径と長径のアスペクト比が、2未満であることが好ましく、1.5未満であることがより好ましい。
【0040】
(直線透過率)
異方性光拡散層110は、上述したように、相対的に透過率の高い層である異方性光拡散層(a)に相当する層である。ここで、直線透過率が最大となる入射角で異方性光拡散層110に入射した光の直線透過率を「最大直線透過率」と定義し、直線透過率が最小となる入射角で異方性光拡散層110に入射した光の直線透過率を「最小直線透過率」と定義すると、異方性光拡散層110は、最大直線透過率が40%以上95%未満であり、最小直線透過率が20%未満であることが必要である。
【0041】
また、異方性光拡散層120は、上述したように、相対的に透過率の低い(拡散強度の強い)層である異方性光拡散層(b)に相当する層である。ここで、直線透過率が最大となる入射角で異方性光拡散層120に入射した光の直線透過率を「最大直線透過率」と定義し、直線透過率が最小となる入射角で異方性光拡散層120に入射した光の直線透過率を「最小直線透過率」と定義すると、異方性光拡散層120は、最大直線透過率が20%以上40%未満であり、最小直線透過率が20%未満であることが必要である。
【0042】
異方性光拡散層110(透過率が相対的に高い異方性光拡散層(a)に相当)と異方性光拡散層120(拡散強度が相対的に強い異方性光拡散層(b)に相当)の最大直線透過率及び最小直線透過率を上記範囲とすることにより、異方性光学フィルム100において、非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域(拡散幅)の拡大を両立することが可能となる。換言すれば、異方性光拡散層110の最大直線透過率及び最小直線透過率、並びに、異方性光拡散層120の最大直線透過率及び最小直線透過率のいずれか一つでも、上記範囲から外れる場合には、非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域の幅(拡散幅)の拡大を両立させることはできない。上記最大直線透過率及び最小直線透過率の範囲を有する異方性光拡散層110と異方性光拡散層120が積層された異方性光学フィルム100を表示装置の拡散フィルムとして使用することで、視野角方向における表示特性(輝度及びコントラスト等)を改善しつつ、他の方向における表示特性の低下を抑制することができる。
【0043】
非拡散領域における直線透過率を更に向上させ、拡散領域の幅(拡散幅)を更に拡大するためには、異方性光拡散層110(透過率が相対的に高い異方性光拡散層(a)に相当)の最大直線透過率が55%以上70%未満であり、且つ、最小直線透過率が15%以下であることが好ましく、また、異方性光拡散層120(拡散強度が相対的に強い異方性光拡散層(b)に相当)の最大直線透過率が30%以上40%未満であり、且つ、最小直線透過率が5%以下であることが好ましい。
【0044】
ここで、異方性光拡散層110、120における最大直線透過率及び最小直線透過率は、製造時の設計パラメータによって調整することができる。パラメータの例としては、塗膜の組成、塗膜の膜厚、構造形成時に与える塗膜への温度等が挙げられる。塗膜の組成は構成成分を適宜選択し調合することで、最大直線透過率及び最小直線透過率は変化する。設計パラメータでは、膜厚が厚いほど最大直線透過率及び最小直線透過率は低くなりやすく、薄いほど高くなりやすい。温度が高いほど最大直線透過率及び最小直線透過率は低くなりやすく、低いほど高くなりやすい。これらのパラメータの組み合わせにより、最大直線透過率及び最小直線透過率のそれぞれを適宜調節することが可能である。
【0045】
(散乱中心軸)
次に、
図11を参照しながら、異方性光拡散層110、120における散乱中心軸Qについて説明する。
図11は、異方性光拡散層110、120における散乱中心軸Qを説明するための3次元極座標表示である。
【0046】
異方性光拡散層110、120の各々は、少なくとも1つの散乱中心軸を有するが、この散乱中心軸は、上述したように、異方性光拡散層110、120への入射角を変化させた際に光拡散性がその入射角を境に略対称性を有する光の入射角と一致する方向を意味する。なお、このときの入射角は、異方性光拡散層110、120の光学プロファイルを測定し、この光学プロファイルにおける極小値に挟まれた略中央部(拡散領域の中央部)となる。
【0047】
また、上記散乱中心軸は、
図11に示すような3次元極座標表示によれば、異方性光拡散層110、120の表面をxy平面とし、法線をz軸とすると、極角θと方位角φとによって表現することができる。つまり、
図11中のP
xyが、上記異方性光拡散層110、120の表面に投影した散乱中心軸の長さ方向ということができる。
【0048】
ここで、異方性光拡散層110、120の法線(
図11に示すz軸)と散乱中心軸Qとのなす極角θ(−90°<θ<90°)を本形態における散乱中心軸角度と定義すると、異方性光拡散層110(透過率が相対的に高い異方性光拡散層(a)に相当)の散乱中心軸角度と、異方性光拡散層120(拡散強度が相対的に強い異方性光拡散層(b)に相当)の散乱中心軸角度との差の絶対値が、0°以上30°以下であることが好ましい。散乱中心軸角度の差の絶対値を上記範囲とすることで、異方性光学フィルム100の非拡散領域における直線透過率を低下させることなく、拡散領域の幅を更に拡大することが可能となる。この効果をより効果的に実現するためには、異方性光拡散層110の散乱中心軸角度と異方性光拡散層120の散乱中心軸角度との差の絶対値が0°以上20°以下であることがより好ましい。なお、異方性光拡散層110、120の散乱中心軸角度は、これらを製造する際に、シート状の光重合性化合物を含む組成物に照射する光線の方向を変えることで、所望の角度に調整することができる。なお、散乱中心軸角度の正負は、異方性光拡散層110、120の面方向における所定の対称軸(例えば、
図4及び
図5におけるB−B軸)と、異方性光拡散層110、120の法線の両方を通る平面に対して、散乱中心軸が一側に傾斜している場合を+、他側に傾斜している場合を−と定義することとする。例えば、異方性光拡散層110、120を
図5のB−B軸を回転中心として回転させた場合、
図7における入射角度の+、−と、散乱中心軸角度の+、−とは一致することとなる。
【0049】
また、上記散乱中心軸角度(極角)の差の絶対値が上記範囲を満たすことに加えて、異方性光拡散層110の散乱中心軸の方位角と異方性光拡散層120の散乱中心軸の方位角との差の絶対値が0°以上20°以下であることが好ましい。これにより、異方性光学フィルム100の非拡散領域における直線透過率を低下させることなく、拡散領域の幅を更に拡大することが可能となる。
【0050】
ここで、異方性光拡散層110、120の各々は、単一層中に、傾きの異なる柱状領域群(同一の傾きを有する柱状領域の集合)を複数有していてもよい。このように、単一層中に傾きの異なる柱状領域群が複数ある場合には、各柱状領域の群の傾きに対応して散乱中心軸も複数となる。散乱中心軸が複数ある場合には、これら複数の散乱中心軸のうちの少なくとも1つの散乱中心軸が、上述した散乱中心軸角度の条件を満たしていればよい。例えば、異方性光拡散層110が2つの散乱中心軸Q1、Q2を有し、異方性光拡散層120が2つの散乱中心軸Q3、Q4を有している場合、Q1とQ2の少なくともいずれか一方の散乱中心軸角度と、Q3とQ4の少なくともいずれか一方の散乱中心軸角度との差の絶対値が0°以上30°以下であることが好ましく、0°以上20°以下であることがより好ましい。
【0051】
また、各異方性光拡散層110、120の散乱中心軸Qの極角θ(すなわち、散乱中心軸角度)が±10〜60°であることが好ましく、±30〜45°であることがより好ましい。散乱中心軸角度が−10°より大きく+10°未満では、液晶表示パネルを含む表示パネルの視野角方向におけるコントラストや輝度を十分に向上させることができない。一方、散乱中心軸角度が+60°より大きい、もしくは、−60°未満である場合、製造過程においてシート状に設けられた光重合性化合物を含む組成物に対して深い傾きから光を照射する必要があり、照射光の吸収効率が悪く製造上不利であるため好ましくない。
【0052】
(屈折率)
異方性光拡散層110、120は、光重合性化合物を含む組成物を硬化したものであるが、この組成物としては、次のような組み合わせが使用可能である。
(1)後述する単独の光重合性化合物を使用するもの
(2)後述する複数の光重合性化合物を混合使用するもの
(3)単独又は複数の光重合性化合物と、光重合性を有しない高分子化合物とを混合して使用するもの
【0053】
上記いずれの組み合わせにおいても、光照射により異方性光拡散層110、120中に、屈折率の異なるミクロンオーダーの微細な構造が形成されると推察されており、これにより、本形態に示される特異な異方性光拡散特性が発現されるものと思われる。従って、上記(1)では、光重合の前後における屈折率変化が大きい方が好ましく、また、(2)、(3)では屈折率の異なる複数の材料を組み合わせることが好ましい。なお、ここでの屈折率変化や屈折率の差とは、具体的には、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上の変化や差を示すものである。
【0054】
(各層の厚み)
異方性光拡散層110、120の各々の厚みは、15μm以上100μm以下であることが好ましい。厚みを上記範囲とすることで、異方性光学フィルム100の非拡散領域における直線透過率の向上と拡散領域(拡散幅)の拡大をより効果的に実現することができる。なお、異方性光学フィルムが異方性光拡散層を3層以上有する場合には、各々の異方性光拡散層の厚みが、15μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0055】
<異方性光学フィルムの他の形態>
本形態に係る異方性光学フィルム100は、光重合性化合物を含む組成物の硬化物からなる異方性光拡散層を複数(本形態では、異方性光拡散層110、120)積層されたものであるが、この積層体を透光性基体上に積層したり、この積層体の両側に透光性基体を積層したりしてもよい。ここで、透光性基体としては、透明性が高いもの程良好であり、全光線透過率(JIS K7361−1)が80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上のものが好適に使用でき、また、ヘイズ値(JIS K7136)が3.0以下、より好ましくは1.0以下、最も好ましくは0.5以下のものが好適に使用できる。具体的には、透光性基体としては、透明なプラスチックフィルムやガラス板等が使用可能であるが、薄く、軽く、割れ難く、生産性に優れる点でプラスチックフィルムが好適である。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、セロファン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、シクロオレフィン樹脂等が挙げられ、これらを単独で又は混合して、更には積層したものを用いることができる。また、透光性基体の厚みは、用途や生産性を考慮すると、1μm〜5mmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、50〜150μmであることが更に好ましい。
【0056】
≪本形態に係る異方性光学フィルムの製造方法≫
以上、本形態に係る異方性光学フィルム100の構成について詳細に説明したが、続いて、かかる構成を有する異方性光学フィルム100の製造方法について説明する。
【0057】
本形態に係る異方性光学フィルム100は、異方性光拡散層110、120を直接又は粘着層130を介して積層することで得られるが、各異方性光拡散層110、120は、特定の光硬化性樹脂層に特殊な条件でUV等の光線を照射することにより製造することができる。以下、初めに異方性光拡散層110、120の原料を説明し、次いで製造プロセスを説明する。
【0058】
<異方性光拡散層の原料>
異方性光拡散層110、120の原料については、(1)光重合性化合物、(2)光開始剤、(3)配合量、その他任意成分の順に説明する。
【0059】
(光重合性化合物)
本形態に係る異方性光拡散層110、120を形成する材料である光重合性化合物は、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーから選択される光重合性化合物と光開始剤とから構成され、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより重合・硬化する材料である。
【0060】
ラジカル重合性化合物は、主に分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有するもので、具体的には、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2−エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変成トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。なお、同様にメタクリレートも使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が光重合速度が速いので好ましい。
【0061】
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が使用できる。エポキシ基を有する化合物としては、2−エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0062】
エポキシ基を有する化合物としては更に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
【0064】
また、オキセタン基を有する化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)−オキセタン等が使用できる。
【0065】
なお、以上のカチオン重合性化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。上記光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。また、十分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物には、低屈折率化を図るために、フッ素原子(F)を導入しても良く、高屈折率化を図るために、硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入しても良い。さらに、特表2005−514487号公報に開示されるように、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化錫(SnO
x)等の高屈折率の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基やメタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を上述の光重合性化合物に添加することも有効である。
【0066】
(光開始剤)
ラジカル重合性化合物を重合させることのできる光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0067】
また、カチオン重合性化合物の光開始剤は、光照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、SbF
6−等のアニオンが用いられる。具体例としては、4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5−イソプロピルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0068】
(配合量、その他任意成分)
本形態において、上記光開始剤は、光重合性化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.1〜5重量部程度配合される。これは、0.01重量部未満では光硬化性が低下し、10重量部を超えて配合した場合には、表面だけが硬化して内部の硬化性が低下してしまう弊害、着色、柱状構造の形成の阻害を招くからである。これらの光開始剤は、通常粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。このような溶剤としては光重合性であることが更に好ましく、具体的には炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。また、光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。さらに、光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化を更に促進し完全なものにすることが期待できる。
【0069】
本形態では、上記の光重合性化合物を単独で、又は複数を混合した組成物を硬化させて、異方性光拡散層110、120を形成することができる。また、光重合性化合物と光硬化性を有しない高分子樹脂の混合物を硬化させることによっても本形態の異方性光拡散層110、120を形成することができる。ここで使用できる高分子樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの高分子樹脂と光重合性化合物は、光硬化前は十分な相溶性を有していることが必要であるが、この相溶性を確保するために各種有機溶剤や可塑剤等を使用することも可能である。なお、光重合性化合物としてアクリレートを使用する場合は、高分子樹脂としてはアクリル樹脂から選択することが相溶性の点で好ましい。
【0070】
また、光重合性化合物を含む組成物を調製する際の溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等を使用することができる。
【0071】
<製造プロセス>
次に、本形態の異方性光拡散層110、120の製造方法(プロセス)について説明する。まず、上述の光重合性化合物を含む組成物(以下、「光硬化性組成物」と称する場合がある。)を透明PETフィルムのような適当な基体上に塗布し又はシート状に設け、成膜して光硬化性樹脂層を設ける。この光硬化性樹脂層を、必要に応じて乾燥し溶剤を揮発させた上で、光硬化性樹脂層上に光を照射することで、異方性光拡散層110、120を作製することができる。
【0072】
(光重合性化合物を含む組成物を基体上にシート状に設ける手法)
ここで、光重合性化合物を含む組成物を基体上にシート状に設ける手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に組成物をキャストすることもできる。
【0073】
(マスクの積層)
本形態に係る異方性光拡散層110、120の特徴である柱状領域113、123を効率良く形成させるために、光硬化性組成物層の光照射側に密着して光の照射強度を局所的に変化させるマスクを積層することも可能である。マスクの材質としては、カーボン等の光吸収性のフィラーをポリマーマトリックス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものが好ましい。また、通常の透明フィルムを光硬化性組成物層上に積層するだけでも、酸素障害を防ぎ柱状領域113、123の形成を促す上で有効である。このようなマスクや透明フィルムを介した光照射では、光重合性化合物を含む組成物中に、その照射強度に応じた光重合反応を生じるため、屈折率分布を生じ易く、本形態に係る異方性光拡散層110、120の作製に有効である。
【0074】
(光源)
光重合性化合物を含む組成物(光硬化性樹脂層)に光照射を行うための光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。また、光硬化性樹脂層上には、所望の散乱中心軸Qと平行な光線を照射する必要があるが、このような平行光を得るためには、点光源を配置して、この点光源と光硬化性樹脂層の間に平行光を照射するためのフレネルレンズ等の光学レンズを配置して、光硬化性樹脂層に平行光を照射することで、異方性光拡散層110、120を作製することができる。一方、線状光源を使用する場合は、特開2005−292219号公報に記載されているように、線状光源とシート状の光重合性化合物を含む組成物との間に、筒状物の集合を介在させ、この筒状物を通して光照射を行うことにより、異方性光拡散層110、120を作製することができる。線状光源を使用すると連続生産を行うことができるため好ましい。線状光源としては、ケミカルランプ(紫外線を出す蛍光灯)を使用することができる。ケミカルランプは、直径20〜50mm、発光長100〜1500mm程度のものが市販されており、作成する異方性光拡散層110、120の大きさに合わせて適宜選択することができる。
【0075】
光重合性化合物を含む組成物に照射する光線は、該光重合性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要で、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。この波長帯を使って異方性光拡散層110、120を作製する場合、照度としては0.01〜100mW/cm
2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20mW/cm
2の範囲である。照度が0.01mW/cm
2未満であると硬化に長時間を要するため、生産効率が悪くなり、100mW/cm
2を超えると光重合性化合物の硬化が速すぎて構造形成を生じず、目的の異方性拡散特性を発現できなくなるからである。なお、光の照射時間は特に限定されないが、10〜180秒間、より好ましくは30〜120秒間である。
【0076】
本形態の異方性光拡散層110、120は、上述の如く低照度の光を比較的長時間照射することにより光硬化性組成物層中に特定の内部構造が形成されることで得られるものである。そのため、このような光照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm
2以上の高照度の光を追加照射して残存モノマーを重合させることができる。このときの光照射はマスクを積層した側の逆側から行うのが好ましい。
【0077】
以上のようにして作製した異方性光拡散層110、120を直接又は粘着層130を介して積層することで、本形態に係る異方性光学フィルム100を得ることができる。
【0078】
上記粘着層130に用いられる粘着剤としては、透明性を有するものであれば特に制限されるものではないが、常温で感圧接着性を有する粘着剤が好適に使用される。このような粘着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂を挙げることができる。特に、アクリル系樹脂は光学的透明性が高いこと、比較的安価なこと等から好ましい。粘着層を介して複数の光拡散層(本形態では、光拡散層110、120)を積層する場合、粘着層の厚みは5〜50μm程度であることが好ましい。
【0079】
一方、異方性光拡散層110に異方性光拡散層120を直接積層する場合には、異方性光拡散層110用の光硬化性樹脂層を硬化させた後に、当該硬化後の異方性光拡散層110上に直接光重合性化合物を含む組成物を塗布するか又はシート状に設ければよい。さらに、異方性光拡散層110と同様にして異方性光拡散層120を作製することで、本形態に係る異方性光学フィルム100を得ることができる。
【0080】
≪本形態に係る異方性光学フィルムの用途≫
以上、本形態に係る異方性光学フィルム100の構成及び製造方法について詳細に説明したが、続いて、
図12及び
図13を参照しながら、上述した異方性光学フィルム100の好適用途について説明する。
図12及び
図13は、本形態に係る異方性光学フィルム100を用いた液晶表示パネルの構成の一例を示す模式図である。
【0081】
本形態に係る異方性光学フィルム100は、表示装置用の拡散フィルムとして好適に使用することができる。異方性光学フィルム100を好適に利用可能な表示装置としては、表示性能に視野角依存性を有するものであればよい。このような表示装置としては、例えば、液晶表示パネル、PDPパネル、有機ELパネル、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクター等を挙げることができる。ここで、表示性能に視野角依存性を有するとは、正面方向(表示装置の観察面の法線方向、視野角0°方向)から観察した場合と斜め方向(視野角0°より大きい方向)から観察した場合とで、コントラスト、階調特性、色度等の表示性能が異なることや、輝度が大きく変化することを意味する。特に、液晶表示パネルのTNモードやSTNモードでこのような視野角依存性が強く現れるが、これらの表示装置の観察面側に、本形態の異方性光学フィルム100を設けることにより、視野角方向において優れた表示特性(輝度やコントラスト等)を持ちながら、他の方向における表示特性の低下を抑制することができる。
【0082】
また、例えば、本形態に係る異方性光学フィルム100を液晶表示装置(LCD)に用いる場合には、液晶表示パネルの出射光側に、異方性光学フィルム100を配置すればよい。具体的には、
図12及び
図13に示すように、透明電極が形成された一対の透明ガラス基板1011、1012の間に、ネマチック液晶1013が挟持され、このガラス基板1011、1012の両側に、一対の偏光板1014、1015が設けられた液晶表示パネルにおいて、偏光板1014上、又は、ガラス基板1011と偏光板1014との間に、本形態に係る異方性光学フィルム100を配置することができる。なお、上記の透明ガラス基板、ネマチック液晶、偏光板等としては、一般に公知のものを使用することができる。
【実施例】
【0083】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0084】
以下の方法に従って、本発明の異方性光学フィルム及び比較例の異方性光学フィルムを製造した。
【0085】
[実施例1]
厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:A4300)の縁部全周に、ディスペンサーを使い硬化性樹脂で高さ0.07mmの隔壁を形成した。この中に下記の光硬化性樹脂組成物を充填し、別のPETフィルムでカバーした。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460、重量平均分子量:5,890) 20重量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18)
・ネオペンチルグリコールジアクリレート(屈折率:1.450) 30重量部
(ダイセルサイテック社製、商品名Ebecryl145)
・ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(屈折率:1.536) 15重量部
(ダイセルサイテック社製、商品名:Ebecyl150)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 40重量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4重量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
【0086】
この両面をPETフィルムで挟まれた0.07mmの厚さの液膜を加熱して、上部からUVスポット光源(浜松ホトニクス社製、商品名:L2859−01)の落射用照射ユニットから出射される平行UV光線を塗膜面の法線方向から垂直に、照射強度5mW/cm
2として1分間照射して、柱状構造を多数有する異方性光拡散層をPETフィルム上に形成した。
【0087】
さらに、隔壁の高さを変更して0.03mmの隔壁を用いて、柱状構造を多数有する異方性光拡散層をPETフィルム上に形成した。
【0088】
PETフィルムを剥離した上で、それぞれの異方性光拡散層の単独の直線透過率を測定した結果を表1に示した。さらに、2つの異方性光拡散層を25μmの厚みの透明性粘着材を介して積層し、得られた異方性光学フィルムの直線透過率を測定した結果を表2に示した。
【0089】
[実施例2]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約20°、2層目の異方性光拡散層を約5°である以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0090】
[実施例3]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約40°、2層目の異方性光拡散層を約20°である以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0091】
[実施例4]
実施例3と同一の異方性光拡散層の積層体を粘着材を介さずに作成した。1層目の異方性光拡散層を得た後、カバーのPETフィルムを剥離した後、0.03mmの隔壁を1層目に形成した隔壁の更に上に追加して形成し、1層目の異方性光拡散層の上に同様の光硬化性樹脂組成物を充填しPETフィルムでカバーをした。その後は同様の操作で、2層目の異方性光拡散層を形成し、1層目と2層目が密着した異方性光学フィルムを得た。それぞれの異方性光拡散層の光学特性は測定していないが、実施例3と同条件で作成されたそれぞれの異方性光拡散層の光学特性は、実施例3と同等であると推測される。得られた異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0092】
[実施例5]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約20°、2層目の異方性光拡散層を約10°とし、2層目の隔壁の高さを0.02mmとした以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0093】
[実施例6]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約20°、2層目の異方性光拡散層を約15°とし、1層目の隔壁の高さを0.10mm、2層目の隔壁の高さを0.03mmとした以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0094】
[実施例7]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約20°、2層目の異方性光拡散層を約15°とした以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0095】
[実施例8]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約15°、2層目の異方性光拡散層を約20°とし、1層目の隔壁の高さを0.03mm、2層目の隔壁の高さを0.07mmとした以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0096】
[実施例9]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約0°、2層目の異方性光拡散層を約10°とし、1層目の隔壁の高さを0.05mm、2層目の隔壁の高さを0.03mmとした以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0097】
[
参考例
1]
平行UV光線の照射角度を変更することで、1層目の異方性光拡散層を約30°、2層目の異方性光拡散層を約40°とし、1層目の隔壁の高さを0.07mm、2層目の隔壁の高さを0.03mmとした以外は実施例1と同様に2つの異方性光拡散層を得た。それぞれの光学特性と粘着を介して作成した異方性光学フィルムの光学特性を表1と表2に示した。
【0098】
[比較例1]
実施例1の隔壁を0.1mmに変更した以外は同様にして異方性光拡散層を得た。1つの異方性光拡散層を作成したのみで、異方性光拡散層を積層した異方性光学フィルムは得なかった。得られた異方性光拡散層の光学特性を表1と表2に示した。
【0099】
[比較例2]
2つの異方性光拡散層を同じ厚みで形成するために、隔壁の高さをそれぞれ0.07mmにする以外は実施例1と同様にして、それぞれの異方性光拡散層を得て、光学特性を測定し結果を表1に示した。実施例1と同様に粘着材を介して2つの異方性光拡散層を積層し、得られた異方性光学フィルムの光学特性を表2に示した。
【0100】
[比較例3]
2つの異方性光拡散層を同じ厚みで形成するために、隔壁の高さをそれぞれ0.03mmにする以外は実施例1と同様にして、それぞれの異方性光拡散層を得て、光学特性を測定し結果を表1に示した。実施例1と同様に粘着材を介して2つの異方性光拡散層を積層し、得られた異方性光学フィルムの光学特性を表2に示した。
【0101】
[比較例4]
2つの異方性光拡散層を同じ厚みで形成するために、隔壁の高さをそれぞれ0.07mmにする以外は実施例2と同様にして、それぞれの異方性光拡散層を得て、光学特性を測定し結果を表1に示した。実施例2と同様に粘着材を介して2つの異方性光拡散層を積層し、得られた異方性光学フィルムの光学特性を表2に示した。
【0102】
[比較例5]
2つの異方性光拡散層を同じ厚みで形成するために、隔壁の高さをそれぞれ0.03mmにする以外は実施例2と同様にして、それぞれの異方性光拡散層を得て、光学特性を測定し結果を表1に示した。実施例2と同様に粘着材を介して2つの異方性光拡散層を積層し、得られた異方性光学フィルムの光学特性を表2に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
なお、上記表2における評価基準は以下の通りである。
◎ 透過率の最大値35%以上、且つ、拡散幅55°以上
○○ 透過率の最大値25%以上35%未満、且つ拡散幅55°以上
○ 透過率の最大値25%以上35%未満、且つ拡散幅40°以上55°未満
△ 透過率の最大値10%以上25%未満、且つ拡散幅40°以上55°未満
× 透過率の最大値10%以上25%未満、且つ拡散幅40°未満
【0106】
表2に示すとおり、実施例の異方性光学フィルムは比較的高い透過率の最大値を有しながら、広い拡散幅を有していた。特に、
実施例7および8は高い透過率と広い拡散幅を共に高いレベルでバランスしており、優れた異方性光学フィルムであるといえる。一方で、比較例の異方性光拡散層または異方性光学フィルムは、透過率は実施例と同等であったが拡散幅が狭いものであった。加えて、
実施例3および4は、散乱軸方向が30〜40°付近にあり、かつ拡散幅が広いため、この方向での視野角改善に良好であり、実際の透過型LCDの表面に貼合して目視で確認したところ、輝度及びコントラストが良好で視野角が広くなり、色変化などの違和感も少ない表示体であった。
【0107】
したがって、実施例の異方性光学フィルムは、高い透過率と拡散幅の両立ができ、表示体の拡散フィルムとして用いたときは、視野角に対して優れた特性を得ながら、正面方向のコントラストや輝度を低下させにくいなどの効果を得ることができる。
【0108】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で当業者が想到し得る他の形態または各種の変更例についても本発明の技術的範囲に属するものと理解される。
【0109】
例えば、上述した形態においては、異方性光拡散層を2層有する異方性光学フィルムについて説明したが、本発明に係る異方性光学フィルムは、異方性光拡散層を3層以上有するものであってもよい。