特許第6483031号(P6483031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6483031-カプセル製剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483031
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】カプセル製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/66 20060101AFI20190304BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20190304BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   A61K9/66
   A61K47/04
   A61K47/14
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-559812(P2015-559812)
(86)(22)【出願日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】JP2015000291
(87)【国際公開番号】WO2015115072
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-17685(P2014-17685)
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391010976
【氏名又は名称】富士カプセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】中野 博史
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】下川 義之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健治
【審査官】 天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102133406(CN,A)
【文献】 特表2005−501914(JP,A)
【文献】 特表2002−519370(JP,A)
【文献】 特開昭54−080407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0268039(US,A1)
【文献】 特表2002−512184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/66
A61K 47/04
A61K 47/14
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性微粒子粉末を含有する融点−40〜40℃の油性物質100重量部0.01〜80重量部の水溶液が内包されたカプセル用内容物を親水性皮膜で被包したソフトカプセル製剤。
【請求項2】
油性物質100重量部に対して多孔性微粒子粉末0.1〜20重量部を含有している、請求項1記載のソフトカプセル製剤。
【請求項3】
多孔性微粒子粉末が気相法シリカである、請求項1又は2記載のソフトカプセル製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル製剤に関し、より詳しくは、多孔性微粒子粉末を含有する油性物質に水溶液が内包されたカプセル用内容物を親水性皮膜で被包したカプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機能性食品や薬剤などを内包するカプセルが種々報告されている。これらのカプセルにおける皮膜材料としては、ゼラチン(特許文献1、特許文献2参照)や、寒天及び水溶性高分子の混合物(特許文献3参照)や、アルギン酸塩(特許文献4、特許文献5参照)などが用いられている。
【0003】
一般に親水性物質の溶剤としては水が使われるが、皮膜材料としてゼラチンや、寒天及び水溶性高分子の混合物を用いた場合、水を含有する材料を内包したカプセル製剤を製造すると、カプセル化時の皮膜液と水との相溶やカプセル化後の水の移行によるカプセル皮膜の軟化が生じる。したがって、親水性物質を安定な状態でカプセル内に内包することができないのが現状であった。
【0004】
皮膜材料としてゼラチンを用いたカプセルにおいては、皮膜が親水性であるため、水を含有する材料、例えばニンニクエキス、コーヒーエキス、アロエベラエキスなどの食品のエキスを内包すると、皮膜が水によって溶解するという問題がある。そのため、内包する材料を粉末とするか、硬化油に懸濁してカプセル内に内包する必要があった。
【0005】
また、皮膜材料として寒天及び水溶性高分子の混合物を用いたカプセルにおいては、寒天を水に溶解し、これにカラギーナンなどの水溶性高分子を加えた混合液から皮膜を形成している。かかる皮膜も親水性であるため、水を含有する材料を内包すると皮膜が水によって溶解するという問題があり、油脂に溶解した内容物を内包する場合に用いられている(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、皮膜材料としてアルギン酸塩を用いたカプセルの製造方法としては、例えば、アルギン酸ナトリウムの水溶液に所望の材料を分散あるいは溶解し、これを多価金属塩水溶液中に滴下して、形成された液滴の外側に水不溶性の皮膜を形成させ、さらに液滴内部まで固化して、強固なカプセルを得る方法が知られている(特許文献4参照)。かかる方法では、カプセル製剤の製造において、洗浄・乾燥などの複雑な工程が必要とされる。
【0007】
一方、親水性物質のカプセル化について、親水性物質と皮膜との間にショ糖の低級脂肪酸エステルを介在させ、親水性物質をカプセル化する方法が提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、ショ糖の低級脂肪酸エステルからなる疎水性の膜は低分子化合物の集合体であるため、親水性物質が有効に遮断されないという問題がある。
【0008】
また、近年の技術革新により、動物や植物などからの成分精製技術や抽出技術、化学合成による成分精製技術が発達し、様々な成分や抽出物が製造されるようになった。それらの二種類以上の成分を組み合わせて混合したものをカプセル製剤化したものが多く存在するが、成分間で負の相互作用を起こす可能性のある混合禁忌の成分は同一カプセル内に充填できないという問題があった。
【0009】
このほか、ソフトカプセル皮膜に微粒子二酸化ケイ素を含有させる方法(特許文献6、7参照)が提案されているが、あくまでソフトカプセルの付着性をなくすことを目的とするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59−139317号公報
【特許文献2】特開昭61−151127号公報
【特許文献3】特開平9−25228号公報
【特許文献4】特開平3−68508号公報
【特許文献5】特開平3−52639号公報
【特許文献6】特開平6−247845号公報
【特許文献7】特開平8−34727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の如き従来の実状に鑑みてなされたものであり、親水性物質を長期間安定に保持することができ、さらに混合禁忌の成分を同一カプセル内に含有することができるカプセル製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、食用油に多孔性微粒子粉末を添加した混合液に、親水性物質を溶解した水溶液を添加してカプセル内溶物を調製し、かかるカプセル内容物をゼラチン皮膜で被包したカプセル製剤を製造したところ、ゼラチン皮膜の軟化が生じず、かつ混合禁忌の成分を同一カプセル内に含有させても親水性物質が安定に保たれることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、[1]多孔性微粒子粉末を含有する油性物質に水溶液が内包されたカプセル用内容物を親水性皮膜で被包したカプセル製剤や、[2]油性物質100重量部に対して多孔性微粒子粉末0.1〜20重量部を含有している、上記[1]記載のカプセル製剤や、[3]カプセル製剤がソフトカプセル製剤である、上記[1]又は[2]記載のカプセル製剤や、[4]多孔性微粒子粉末が気相法シリカである、上記[1]〜[3]のいずれか記載のカプセル製剤に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水溶液中の親水性物質を長期間にわたって安定に保持することが可能であり、さらに混合禁忌の成分を同一カプセル内に含有することも可能であるカプセル製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で得られた寒天微粒含有ソフトカプセルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のカプセル製剤としては、多孔性微粒子粉末を含有する油性物質に水溶液が内包されたカプセル用内容物を親水性皮膜で被包したカプセル製剤であれば特に制限されないが、ソフトカプセル製剤であることを好適に挙げることができる。
【0017】
本発明において、多孔性微粒子粉末としては、気相法シリカや湿式法シリカなどの非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタンなどの公知の微粒子粉末を挙げることができるが、空隙率が高い観点から、好ましくは気相法シリカや湿式法シリカなどの非晶質合成シリカ、アルミナ又はアルミナ水和物、より好ましくは気相法シリカや湿式法シリカなどの非晶質合成シリカ、さらに好ましくは気相法シリカを挙げることができる。
【0018】
非晶質合成シリカは、製造方法によって気相法シリカと湿式法シリカとその他のシリカに分類され、湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。
【0019】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素とともに燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシランなどのシラン類も、単独又は四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカとしてはアエロジル(登録商標)(日本アエロジル社製)や、レオロシール(登録商標)(トクヤマ社製)が市販されている。
【0020】
沈降法シリカは、ケイ酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製造される。沈降法シリカとしては、ニップシール(登録商標)(東ソー・シリカ社製)が市販されている。
【0021】
ゲル法シリカは、ケイ酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。ゲル法シリカとしては、ニップジェル(登録商標)(東ソーシリカ社製)やサイロイド、サイロジェット(グレースジャパン社製)が市販されている。
【0022】
ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。ゾル法シリカとしては、スノーテックス(登録商標)(日産化学工業社製)が市販されている。
【0023】
多孔性微粒子粉末の比表面積は100m/g以上、好ましくは100〜500m/gを挙げることができる。
【0024】
本発明において、多孔性微粒子粉末を2種以上併用することもできる。例えば、粉砕した気相法シリカと湿式法シリカとの併用や、微粉砕した湿式法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用や、気相法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用が挙げられる。
【0025】
本発明における油性物質としては、サフラワー油、亜麻仁油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、からし油、ナタネ油、コーン油、ヒマシ油、月見草油、パーム核油、ホホバ油、綿実油、ヤシ油、落花生油、カカオ油、ラード、EPA、DHA、サメ肝油、タラ肝油、硬化油、部分硬化油などの動植物油や、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)や、グリセリン脂肪酸エステルや、脂肪酸アシルエステルや、パラフィンなどを挙げることができ、MCTを好適に挙げることができる。また、上記油性物質を2種以上組み合わせてもよいが、高融点の油性物質と低融点の油性物質の混合物を用いる場合、高融点の油性物質と低融点の油性物質の比は、1:10〜10:1であるのが好ましく、その場合は構造が類似した油性物質同士を用いることが好ましい。また、油性物質は室温で液体であるものが好ましく、油性物質の融点としては−40〜40℃、特に−30〜20℃であることが好ましい。
【0026】
多孔性微粒子粉末の含有量は、油性物質100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部、さらに好ましくは6〜10重量部を挙げることができる。
【0027】
多孔性微粒子粉末を含有する油性物質を調製する方法としては、油性物質に多孔性微粒子粉末を加えて分散させればよく、分散方法としては、人の手による撹拌に加え、プロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌など、従来公知の方法を用いることができる。また、油性物質に多孔性微粒子粉末以外の成分をさらに含んでもよい。
【0028】
本発明において、水溶液としては、水、又は親水性物質が水に溶解した液状物であれば特に制限されず、複数の親水性物質が水に溶解していてもよい。本発明における親水性物質とは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ケトン基、スルフォ基などの水分子との間に結合をつくりやすい官能基を分子構造の一部に有し、水に可溶な物質であれば特に制限されず、水溶性ビタミン、有機酸及びその塩類、糖類、核酸、その他漢方などの水抽出物などの医薬、医薬部外品、食品、調味料、香料、生薬、化粧品の分野において種々の用途に利用される物質を挙げることができる。
【0029】
水溶液には親水性物質と水以外の成分を含んでもよく、かかる水溶液として、ブルーベリーエキス、レモン果汁、ニンニクエキス、シジミエキスなどの食品エキスや、ニンジンエキス、トウキエキスなどの医薬品エキスなどの水の含有割合が15〜40%で低流動性の液状物も含まれる。また、寒天、ゼラチン、カラギーナンアルギン酸ナトリウム、プルラン、グルコマンナン、アラビアゴム、ファーセレラン、ユーケマ藻類、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デンプン類などの水溶性高分子を水に溶解させて製造した柔らかい微粒も便宜的に水溶液に含まれる。
【0030】
水溶液の含量は、油性物質100重量部に対して0.01〜80重量部、好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.2〜20重量部を挙げることができる。
【0031】
水溶液中の水の含量は、溶解させる親水性物質の量に応じて適宜調整できるが、溶解させる親水性物質が溶解可能な量であることが好ましい。
【0032】
本発明において、油性物質に水溶液が内包されたとは、水溶液が油性物質に覆われており、油性物質の内部に水溶液が存在している限り特に制限されず、油性物質に内包された水溶液の数は1つでも2以上でもよい。
【0033】
本発明において、多孔性微粒子粉末を含有する油性物質に水溶液が内包されたカプセル用内容物を製造する方法としては、多孔性微粒子粉末を含有する油性物質に水溶液を添加して攪拌する方法を挙げることができる。かかる方法においては、攪拌によって、添加した水溶液が分離して複数の水溶液となって油性物質中に分散した状態で内包されてもよい。
【0034】
水溶液に溶解した親水性物質と、混合禁忌の成分とを含有したカプセル用内容物を製造することもできる。かかるカプセル用内容物を製造する方法として、多孔性微粒子粉末を含有する油性物質に水溶液と共に粉末の混合禁忌の成分を添加して攪拌する方法や、多孔性微粒子粉末と粉末の混合忌避成分とを含有する油性物質を調製し、かかる油性物質に水溶液を添加して攪拌する方法を挙げることができる。多孔性微粒子粉末と粉末の混合忌避成分とを含有する油性物質を調製する方法は、多孔性微粒子粉末を含有する油性物質を調製する方法と同様である。
【0035】
また、混合禁忌の成分が疎水性の場合には、多孔性微粒子粉末を含有し、混合禁忌の成分が溶解した油性物質を調製し、かかる油性物質に水溶液を添加して攪拌する方法を挙げることができる。
【0036】
本発明において、親水性皮膜としては、皮膜材料として親水性物質を用いて製造された皮膜である限り特に制限されず、かかる皮膜は親水性であっても、カプセル用内容物中の水溶液は油性物質に内包されているため、水溶液に含まれる水が皮膜に接触することがなく、皮膜の軟化は生じない。
【0037】
皮膜材料としては、ゼラチン、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グルコマンナン、アラビアゴム、ファーセレラン、ユーケマ藻類、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デンプン類などの親水性高分子を挙げることができ、ゼラチンを好適に挙げることができる。
【0038】
親水性皮膜を製造する際には、皮膜材料にグリセリンなどの可塑剤、リン酸ナトリウムなどのpH調整剤、クエン酸三ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのキレート剤、乳酸カルシウム、塩化カリウムなどのゲル化促進剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどの界面活性剤、甘味料、香料、防腐剤、着色剤などを添加してもよい。
【0039】
本発明のカプセル製剤は、平板法、ロータリーダイ法、シームレス法などの公知のカプセル製剤の製造方法を用い、カプセル用内容物を親水性皮膜で被包することによって製造される。カプセル製剤の長径は特に制限されないが、1〜50mm、好ましくは5〜20mmを挙げることができる。
【0040】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
[寒天微粒の保存試験]
本発明のカプセル製剤によりカプセル中に水溶液を安定に保持できるか否かを確認するために、寒天微粒を用いてカプセル製剤を製造し、カプセル製剤を保存後の寒天の状態を調べた。
【0042】
(寒天微粒用寒天溶液の製造)
水100重量部に対して寒天1重量部、赤色102号0.01重量部を添加し、95℃で加温溶解して寒天微粒用寒天溶液を得た。
【0043】
(寒天微粒の製造)
シームレス式ソフトカプセル製造装置を用いて前記寒天微粒用寒天溶液を滴下し、直径約1mmの柔らかい寒天微粒を製造した。
【0044】
(カプセル皮膜液の製造)
水90重量部に、グリセリン30重量部及びゼラチン100重量部を加えて吸水膨潤させた後、80℃で加温溶解してカプセル皮膜液を得た。
【0045】
(カプセル内容物の製造)
MCT(ココナードMT、花王社製)100重量部に対し、アエロジルRX200(日本アエロジル社製)10重量部を添加し、攪拌機を用いて撹拌した。その後、上記寒天微粒を5重量部加え、さらに混合することでカプセル内容物を得た。
【0046】
(寒天微粒含有ソフトカプセルの製造)
ロータリーダイ式ソフトカプセル製造装置により、前記カプセル内容物を前記カプセル皮膜液で被包し、その後30℃で20時間乾燥させることにより寒天微粒含有ソフトカプセルを製造した。得られた寒天微粒含有ソフトカプセル1球には、10粒前後の寒天微粒が内包されていた。寒天微粒は、カプセル製造における乾燥工程後でも柔らかく、水分を保持していた。
【0047】
(保存後の評価)
得られた寒天微粒含有ソフトカプセルを40℃で6カ月間保存した。保存後の寒天微粒含有ソフトカプセルの写真を図1に示す。カプセル内容物中の矢印で示す点が寒天微粒である。保存後の寒天微粒含有ソフトカプセルに内包された寒天微粒を観察すると、カプセル製造直後の寒天微粒含有ソフトカプセルに内包された寒天微粒と同程度に柔らかく、同程度に水分を保持していた。さらに、皮膜の軟化は生じなかった。
【0048】
[比較例1]
(従来技術による寒天微粒含有カプセルの製造)
実施例1のカプセル内容物において、アエロジルRX200に代えてミツロウを同量使用する以外は、上記と同様の条件で寒天微粒含有ソフトカプセルを製造した。得られた寒天微粒含有ソフトカプセル1球には、10粒前後の寒天微粒が内包されていた。寒天微粒は、製造直後は柔らかく、水分を保持していた。
【0049】
(保存後の評価)
得られた寒天微粒含有ソフトカプセルを40℃で6カ月間保存した。保存後のソフトカプセルは皮膜が軟化し、カプセル同士が融着していた。また寒天微粒は水分が蒸発し、残渣のみが観察された。
【0050】
以上より、本発明のカプセル製剤を用いれば、従来のカプセル製剤では内包や保持が不可能であった水溶液を長期間にわたって保持することが可能であること、親水性皮膜を用いても、カプセル内容物の水溶液によって皮膜が軟化しないことが明らかとなった。
【実施例2】
【0051】
[MCT−アエロジル混合液の水分散性試験1]
MCT(ココナードMT、花王社製)83重量部にアエロジル380(日本アエロジル社製)7重量部を加え、ホモミキサーを用いて2000rpmで5分間撹拌した。得られた混合液に、着色した水10重量部を加え、再び2000rpmで5分間撹拌して分散液を得た。
【0052】
得られた分散液を遠心管に入れ、遠心分離機にて2000rpmで5分間遠心分離を行った。遠心分離後においても、着色した水とMCTが分離することなく、均一な分散液であった。
【実施例3】
【0053】
[MCT−アエロジル混合液の水分散性試験2]
MCT(ココナードMT、花王社製)85重量部にアエロジル200(日本アエロジル社製)5重量部を加え、ホモミキサーを用いて2000rpmで5分間撹拌した。得られた混合液に、着色した水10重量部を加え、再び2000rpmで5分間撹拌して分散液を得た。
【0054】
得られた分散液を遠心管に入れ、遠心分離機にて2000rpmで5分間遠心分離を行った。遠心分離後においても、着色した水とMCTが分離することなく、均一な分散液であった。
【0055】
したがって、MCT−アエロジル混合液を用いて水溶液を内包すれば、水溶液がMCT−アエロジル混合液に内包された状態を維持することができ、カプセル内容物として用いた際には、水溶液中の水分の蒸発防止や、皮膜の軟化防止が可能となる。
【実施例4】
【0056】
[シアノコバラミンの保存安定性試験]
親水性ビタミンであるシアノコバラミンを水に溶解させた水溶液と、コバラミン類を劣化させるチアミン類及びピリドキシン類とを同一カプセル内に含有するカプセル製剤を製造し、シアノコバラミンの劣化を調べた。なお、シアノコバラミンの劣化とは、分解などによりシアノコバラミンの量が低下することを意味する。
【0057】
(シアノコバラミン水溶液が内包されたカプセル内容物の製造)
MCT(ココナードMT、花王製)1654.68重量部を60℃に加温し、アエロジルRX200(日本アエロジル社製)116.1重量部を添加して水冷しながら攪拌機を用いて撹拌した。シアノコバラミン1%水溶液6重量部、フルスルチアミン塩酸塩109.16重量部、ピリドキシン塩酸塩20重量部、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム800重量部を添加し、さらに混合撹拌した。その後、コロイドミルにて粉砕し、真空脱泡して、アエロジルを含有するMCTにシアノコバラミン水溶液が内包されたカプセル内容物を得た。
【0058】
(シアノコバラミン含有カプセルの製造)
ロータリーダイ式ソフトカプセル製造装置により、実施例1に記載したカプセル皮膜液及び上記シアノコバラミン水溶液が内包されたカプセル内容物を用いてソフトカプセルを製造した。
【0059】
(保存後の評価)
得られたシアノコバラミン含有ソフトカプセル製剤を40℃で1カ月間保存した。保存後のソフトカプセルにおいて、水溶液はカプセル製造直後と同量を維持し、皮膜の軟化は生じなかった。また、ソフトカプセル製造直後及び1ヶ月保存後のシアノコバラミン量を、高速液体クロマトグラフィー法を用いて測定した。結果を表1に示す。表1におけるシアノコバラミン量は、添加したシアノコバラミン量を100とした場合の、製造直後及び1ヶ月保存後のシアノコバラミン量(%)を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
[比較例2]
(従来技術によるシアノコバラミン含有カプセルの製造)
実施例4のシアノコバラミン含有カプセル内容物において、アエロジルRX200に代えてポエムS−100(理研ビタミン社製)を同量使用する以外は、実施例4と同様の方法でシアノコバラミン含有カプセル製剤を製造した。
【0062】
(保存後の評価)
実施例4と同様に、ソフトカプセル製造直後及び1ヶ月保存後のシアノコバラミン含有量を測定した。結果を表2に示す。表2におけるシアノコバラミン量は、添加したシアノコバラミン量を100とした場合の、製造直後及び1ヶ月保存後のシアノコバラミン量(%)を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
以上より、本発明のカプセル製剤を用いれば、水溶液を長期間にわたって保持することができることから、水溶液中に親水性物質を溶解させることで、親水性物質を長期間安定に保持すると共に皮膜の軟化を防ぐことが可能であることが明らかとなった。さらに本発明のカプセル製剤を用いれば、水溶液中に親水性物質を溶解させることで、親水性物質と混合禁忌の成分をカプセル内容物に混合させても、親水性物質の劣化を防ぐことができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のカプセル製剤は、医薬、医薬部外品、食品などの分野において、親水性物質を長期間安定に保持できるカプセル製剤として利用可能である。
図1