(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1油圧回路(L30)に設けられ、前記第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から前記左前油圧モータ(L21)と前記左後油圧モータ(L22)とに供給される油量の比率を切り替える第1油量切替部(L2)と、
前記第2油圧回路(R30)に設けられ、前記第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から前記右前油圧モータ(R21)と前記右後油圧モータ(R22)とに供給される油量の比率を切り替える第2油量切替部(R2)と、を更に備える、請求項1に記載の車両(2)。
前記左前駆動輪(L11)、前記左後駆動輪(L12)、前記右前駆動輪(R11)、及び前記右後駆動輪(R12)は、逆位相4輪操舵となるように操舵される、請求項1又は2に記載の車両(2)。
前記第1可変容量型油圧ポンプ(L1)の吐出ポートと前記第2可変容量型油圧ポンプ(R1)の吐出ポート、及び前記第1可変容量型油圧ポンプ(L1)の吸入ポートと前記第2可変容量型油圧ポンプ(R1)の吸入ポートを、それぞれ同時に連通させる又は遮断する状態切替部(B3)を、更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両(2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、4つの駆動輪を有する車両では、旋回時において旋回の内側の駆動輪と外側の駆動輪との間で回転速度に差が生じる。このため、4つの駆動輪を有する車両では、旋回時における回転速度の差を考慮し、右側の駆動輪と左側の駆動輪とを適切に駆動することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、左側の駆動輪と右側の駆動輪とを適切に駆動可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、左前駆動輪(L11)、左後駆動輪(L12)、右前駆動輪(R11)、及び右後駆動輪(R12)を有する車両(2)であって、左前駆動輪(L11)を駆動する左前油圧モータ(L21)と、左後駆動輪(L12)を駆動する左後油圧モータ(L22)と、右前駆動輪(R11)を駆動する右前油圧モータ(R21)と、右後駆動輪(R12)を駆動する右後油圧モータ(R22)と、左前油圧モータ(L21)及び左後油圧モータ(L22)に第1油圧回路(L30)により接続される第1可変容量型油圧ポンプ(L1)と、右前油圧モータ(R21)及び右後油圧モータ(R22)に第2油圧回路(R30)により接続される第2可変容量型油圧ポンプ(R1)と、第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から吐出される油量及び第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から吐出される油量を制御する制御部(10)と、
左前駆動輪(L11)、左後駆動輪(L12)、右前駆動輪(R11)、及び右後駆動輪(R12)のうち操舵輪となる駆動輪の操舵角を検出する操舵角検出部(9)と、を備え、制御部(10)は、操舵角検出部(9)で検出された操舵角に基づいて、第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から吐出される油量及び第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から吐出される油量を制御する。
【0007】
この車両(2)において、左前油圧モータ(L21)及び左後油圧モータ(L22)は、第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から供給される油圧によって駆動される。右前油圧モータ(R21)及び右後油圧モータ(R22)は、第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から供給される油圧によって駆動される。第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から吐出される油量及び第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から吐出される油量は、制御部(10)によって制御される。すなわち、制御部(10)は、左側の駆動輪(左前駆動輪(L11)及び左後駆動輪(L12))と、右側の駆動輪(右前駆動輪(R11)及び右後駆動輪(R12))とを独立してそれぞれ駆動することができる。このため、制御部(10)は、旋回時において、旋回の内側の駆動輪と外側の駆動輪との間で生じる回転速度の差を考慮して、左側の駆動輪と右側の駆動輪とを駆動することができる。以上のように、車両(2)は、左側の駆動輪と右側の駆動輪とを適切に駆動することができる。
【0008】
旋回の内側の駆動輪と外側の駆動輪との間で生じる回転速度の差は、操舵角に応じて変化する。このため、操舵角に応じて第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から吐出される油量及び第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から吐出される油量を制御することで、回転速度の差が抑制されるように左側の駆動輪(左前駆動輪(L11)及び左後駆動輪(L12))と右側の駆動輪(右前駆動輪(R11)及び右後駆動輪(R12))とを適切に駆動することができる。
【0009】
車両(2)は、第1油圧回路(L30)に設けられ、第1可変容量型油圧ポンプ(L1)から左前油圧モータ(L21)と左後油圧モータ(L22)とに供給される油量の比率を切り替える第1油量切替部(L2)と、第2油圧回路(R30)に設けられ、第2可変容量型油圧ポンプ(R1)から右前油圧モータ(R21)と右後油圧モータ(R22)とに供給される油量の比率を切り替える第2油量切替部(R2)と、を更に備えていてもよい。この場合、第1油量切替部(L2)の切り替えにより、左前駆動輪(L11)と左後駆動輪(L12)とをデフロック状態とすることができる。また、第2油量切替部(R2)の切り替えにより、右前駆動輪(R11)と右後駆動輪(R12)とをデフロック状態とすることができる。このように、前後の駆動輪をデフロック状態とすることができるので、走行路の条件が悪い場合であっても車両(2)の走破性を向上させることができる。
【0010】
左前駆動輪(L11)、左後駆動輪(L12)、右前駆動輪(R11)、及び右後駆動輪(R12)は、逆位相4輪操舵となるように操舵されてもよい。車両(2)は、逆位相4輪操舵を行うことにより、車両(2)の旋回性を向上させることができる。
【0011】
車両(2)は、第1可変容量型油圧ポンプ(L1)の吐出ポートと第2可変容量型油圧ポンプ(R1)の吐出ポート、及び第1可変容量型油圧ポンプ(L1)の吸入ポートと第2可変容量型油圧ポンプ(R1)の吸入ポートを、それぞれ同時に連通させる又は遮断する状態切替部(B3)を、更に備えていてもよい。この場合には、状態切替部(B3)の切り替えにより、左右の駆動輪を独立して駆動させることと、左右の駆動輪を一体に駆動させることとを切り替えることができる。例えば、走行路の条件が悪い場合には、左前駆動輪(L11)及び左後駆動輪(L12)と、右前駆動輪(R11)及び右後駆動輪(R12)とを独立して駆動させて走破性を向上させることができる。例えば、走行路の条件が良い場合には、左前駆動輪(L11)及び左後駆動輪(L12)と、右前駆動輪(R11)及び右後駆動輪(R12)とを、流体デフ効果によって一体に駆動させ、スムーズに旋回することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、左側の駆動輪と右側の駆動輪とを適切に駆動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示されるように、ブームスプレーヤ1は、自走可能であり、圃場において農地又は作物に薬液散布を行う。ブームスプレーヤ1は、車両2と、車両2の前部に取り付けられたセンターブーム3と、センターブーム3の両端に連結された一対のサイドブーム4とを備えている。サイドブーム4は、薬液散布を行わないときには折り畳まれ、
図1に示されるように車両2の側方位置において斜め後ろ上りの状態で格納されている。薬液散布を行う場合、サイドブーム4は、センターブーム3に対して一直線状となるように広げられる。
【0016】
車両2の前部には、作業者が着座する空間を形成するキャビン5が設けられている。車両2の後部には、エンジンを収容するエンジンルーム6が設けられている。キャビン5とエンジンルーム6との間には、センターブーム3及びサイドブーム4から散布される薬液を収容する薬液タンク7が設けられている。
【0017】
車両2は、左前駆動輪L11、左後駆動輪L12、右前駆動輪R11、及び右後駆動輪R12を有している。左前駆動輪L11、左後駆動輪L12、右前駆動輪R11、及び右後駆動輪R12は、それぞれ、タイヤを有する車輪である。
【0018】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」は、車両2を基準とした場合の向きを示している。また、以下の説明において、作動油の「吐出」及び「吸入」については、車両2が前進する場合に左側HSTポンプL1等の構成要素から「吐出」及び「吸入」されることを示している。車両2が後進する場合には、作動油の流れが逆となり、前進している場合おける「吐出」及び「吸入」が、「吸入」及び「吐出」となる。
【0019】
車両2は、左前駆動輪L11、左後駆動輪L12、右前駆動輪R11、及び右後駆動輪R12の向きを変える(操舵する)操舵機構を備えている。車両2は、2輪操舵と、逆位相4輪操舵とを切り替えることができる。2輪操舵(2WS)と逆位相4輪操舵(4WS)との切り替えは、作業者によって操作される切替レバー8の切り替えに応じて行われる。切替レバー8は、キャビン5内に設けられている。
【0020】
図2に示されるように、車両2は、更に、左前油圧モータL21、左後油圧モータL22、左側HST[Hydro Static Transmission]ポンプ(第1可変容量型油圧ポンプ)L1、左側油圧回路(第1油圧回路)L30、右前油圧モータR21、右後油圧モータR22、右側HSTポンプ(第2可変容量型油圧ポンプ)R1、右側油圧回路(第2油圧回路)R30、及び制御部10を備えている。
【0021】
左前油圧モータL21は、供給される作動油によって駆動力を生成し、左前駆動輪L11を駆動する。左後油圧モータL22は、供給される作動油によって駆動力を生成し、左後駆動輪L12を駆動する。左側HSTポンプL1は、左前油圧モータL21及び左後油圧モータL22に作動油を供給する。左側HSTポンプL1は、吐出する作動油の油量を変更することができる。左側HSTポンプL1は、制御部10から入力された制御信号に基づいて、吐出する作動油の油量を変更する。左側HSTポンプL1は、車両2に搭載されたエンジンによって駆動される。
【0022】
左側油圧回路L30は、左側HSTポンプL1、左前油圧モータL21、及び左後油圧モータL22を接続する油圧回路である。具体的には、左側油圧回路L30は、左側吐出回路L30a、及び左側吸入回路L30bを有している。左側吐出回路L30aは、左側HSTポンプL1から吐出された作動油を、左前油圧モータL21及び左後油圧モータL22に供給する油圧回路である。左側吸入回路L30bは、左前油圧モータL21及び左後油圧モータL22から吐出された作動油を、左側HSTポンプL1に戻す油圧回路である。すなわち、左側油圧回路L30は、左側HSTポンプL1、左前油圧モータL21、及び左後油圧モータL22間において閉じた油圧回路となっている。
【0023】
左側吐出回路L30aには、左側HSTポンプL1から左前油圧モータL21と左後油圧モータL22とに供給される作動油の油量の比率を切り替える左側デフロックバルブ(第1油量切替部)L2が設けられている。左側デフロックバルブL2は、スプール位置が切り替わることにより、分流状態及びフリーフロー状態のいずれかに切り替えられる。分流状態とは、左側HSTポンプL1から吐出された作動油を、左前油圧モータL21と左後油圧モータL22とに対して、50:50で供給する(強制的に50:50に分流する(後進の時は集流する))状態である。フリーフロー状態とは、左側HSTポンプL1から吐出された作動油を、左前油圧モータL21と左後油圧モータL22とに対して、自由に供給する状態である。すなわち、左側HSTポンプL1から左前油圧モータL21に供給される作動油と、左後油圧モータL22に供給される作動油との比率が自由に変化する状態である。
【0024】
右前油圧モータR21は、供給される作動油によって駆動力を生成し、右前駆動輪R11を駆動する。右後油圧モータR22は、供給される作動油によって駆動力を生成し、右後駆動輪R12を駆動する。右側HSTポンプR1は、右前油圧モータR21及び右後油圧モータR22に作動油を供給する。右側HSTポンプR1は、吐出する作動油の油量を変更することができる。右側HSTポンプR1は、制御部10から入力された制御信号に基づいて、吐出する作動油の油量を変更する。右側HSTポンプR1は、車両2に搭載されたエンジンによって駆動される。
【0025】
右側油圧回路R30は、右側HSTポンプR1、右前油圧モータR21、及び右後油圧モータR22を接続する油圧回路である。具体的には、右側油圧回路R30は、右側吐出回路R30a、及び右側吸入回路R30bを有している。右側吐出回路R30aは、右側HSTポンプR1から吐出された作動油を、右前油圧モータR21及び右後油圧モータR22に供給する油圧回路である。右側吸入回路R30bは、右前油圧モータR21及び右後油圧モータR22から吐出された作動油を、右側HSTポンプR1に戻す油圧回路である。すなわち、右側油圧回路R30は、右側HSTポンプR1、右前油圧モータR21、及び右後油圧モータR22間において閉じた油圧回路となっている。
【0026】
右側吐出回路R30aには、右側HSTポンプR1から右前油圧モータR21と右後油圧モータR22とに供給される作動油の油量の比率を切り替える右側デフロックバルブ(第2油量切替部)R2が設けられている。右側デフロックバルブR2は、スプール位置が切り替わることにより、分流状態及びフリーフロー状態のいずれかに切り替えられる。分流状態とは、右側HSTポンプR1から吐出された作動油を、右前油圧モータR21と右後油圧モータR22とに対して、50:50で供給する(強制的に50:50に分流する(後進の時は集流する))状態である。フリーフロー状態とは、右側HSTポンプR1から吐出された作動油を、右前油圧モータR21と右後油圧モータR22とに対して、自由に供給する状態である。すなわち、右側HSTポンプR1から右前油圧モータR21に供給される作動油と、右後油圧モータR22に供給される作動油との比率が自由に変化する状態である。
【0027】
左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2の状態を切り替えるため、車両2は、チャージポンプP1、チャージ回路P2、及びパイロットバルブP3を有している。チャージポンプP1は、車両2に搭載されたエンジンによって駆動され、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2に供給するパイロット圧(油圧)を生成する。チャージ回路P2は、チャージポンプP1で生成されたパイロット圧を左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2に供給する。
【0028】
パイロットバルブP3は、スプール位置が切り替わることにより、供給状態及び遮断状態のいずれかに切り替えられる。パイロットバルブP3の供給状態とは、チャージポンプP1から、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2へパイロット圧を供給する状態である。パイロットバルブP3の遮断状態とは、チャージポンプP1から左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2へのパイロット圧の供給が遮断された状態である。パイロットバルブP3の状態の切り替えは、制御部10から入力された制御信号に基づいて行われる。パイロットバルブP3は、制御信号に応じて電磁コイルにおいて発生した磁力によってスプール位置が変化させられ、供給状態及び遮断状態のいずれかに切り替えられる。本実施形態において、パイロットバルブP3は、制御部10から制御信号が入力されているときに供給状態となり、制御信号が入力されていないときに遮断状態となる。
【0029】
左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2は、チャージポンプP1からパイロット圧が供給されていない状態(パイロットバルブP3が遮断状態)のときは、フリーフロー状態となる。左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2は、チャージポンプP1からパイロット圧が供給(パイロットバルブP3が供給状態)されるとスプール位置が切り替わり、分流状態(前及び後の駆動輪に50:50で供給する状態)に切り替わる。このように、パイロットバルブP3は、制御部10からの制御信号に基づいて、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2を、分流状態及びフリーフロー状態のいずれかに切り替える。
【0030】
なお、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2は、パイロットバルブP3のように、電磁コイルで生じた磁力によってスプール位置が変化させられ、分流状態及びフリーフロー状態のいずれかに切り替わる構成であってもよい。
【0031】
車両2は、更に、吐出側連結回路B1、吸入側連結回路B2、及びバイパスバルブ(状態切替部)B3を有している。吐出側連結回路B1は、左側吐出回路L30aと右側吐出回路R30aとを接続する油圧回路である。吸入側連結回路B2は、左側吸入回路L30bと右側吸入回路R30bとを接続する油圧回路である。
【0032】
バイパスバルブB3は、スプール位置が切り替わることにより、連通状態及び遮断状態のいずれかに切り替えられる。連通状態とは、吐出側連結回路B1を連通させた状態と、吸入側連結回路B2を連通された状態とが同時に実現されている状態である。遮断状態とは、吐出側連結回路B1の連通が遮断された状態と、吸入側連結回路B2の連通が遮断された状態とが同時に実現されている状態である。すなわち、バイパスバルブB3は、左側HSTポンプL1の吐出ポートと右側HSTポンプR1の吐出ポート、及び左側HSTポンプL1の吸入ポートと右側HSTポンプR1の吸入ポートを、それぞれ同時に連通させる又は遮断する。
【0033】
バイパスバルブB3の切り替えは、制御部10から入力された制御信号に基づいて行われる。バイパスバルブB3は、制御信号に応じて電磁コイルにおいて発生した磁力によってスプール位置が変化させられ、連通状態及び遮断状態のいずれかに切り替えられる。本実施形態において、バイパスバルブB3は、制御部10から制御信号が入力されているときに遮断状態となり、制御信号が入力されていないときに連通状態となる。
【0034】
なお、バイパスバルブB3は、左側デフロックバルブL2等のようにチャージポンプP1から供給される油圧(パイロット圧)に基づいて連通状態及び遮断状態のいずれかに切り替えられる構成であってもよい。
【0035】
車両2は、更に、操舵角センサ(操舵角検出部)9を備えている。操舵角センサ9は、車両2の操舵が行われたときに向きが変えられる操舵輪の操舵角を検出する。具体的には、操舵角センサ9は、本実施形態では、左前駆動輪L11の操舵角を検出する。
【0036】
制御部10は、左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1に制御信号を送信することにより、左側HSTポンプL1及び左側デフロックバルブL2から吐出される作動油の油量を制御する。また、制御部10は、操舵角センサ9で検出された操舵角に基づいて、左側HSTポンプL1及び左側デフロックバルブL2から吐出される作動油の油量を制御する。更に、制御部10は、パイロットバルブP3及びバイパスバルブB3に制御信号を送信し、バルブの状態の切り替えを行う。なお、
図2においては、左側油圧回路L30等の油圧回路と制御部10に入出力される信号の信号線とを区別するため、信号線を破線で示している。
【0037】
制御部10は、例えば、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。制御部10は、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。
【0038】
次に、車両2が走行する走行路の状態及び操舵角に基づいて、制御部10によって制御される各部の状態について説明する。
【0039】
(走行路の状態が良い場合)
まず、走行路の状態が良い場合について説明する。走行路の状態が良い場合とは、例えば、舗装された路面、平坦地等が挙げられる。この場合、作業者は、走行モードとして「オープンデフモード」を選択する。作業者による走行モードの選択は、キャビン5内に設けられたモード切替レバー等の操作部を通じて行われる。オープンデフモードが選択された場合、制御部10は、吐出側連結回路B1及び吸入側連結回路B2が連通状態となるように、バイパスバルブB3を制御する。本実施形態では、制御部10は、バイパスバルブB3を連通状態とするために、バイパスバルブB3に対して制御信号の入力は行わない。これにより、左側HSTポンプL1の吐出ポートと右側HSTポンプR1の吐出ポートとが連通状態となり、更に、左側HSTポンプL1の吸入ポートと右側HSTポンプR1の吸入ポートとが連通状態となる。
【0040】
また、制御部10は、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2がフリーフロー状態となるように、パイロットバルブP3を制御する。ここでは、制御部10は、パイロットバルブP3を遮断状態にする。本実施形態では、制御部10は、パイロットバルブP3を遮断状態とするために、パイロットバルブP3に対して制御信号の入力は行わない。これにより、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2がフリーフロー状態となる。
【0041】
この場合、左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1は、あたかも一つのポンプであるかのように作用する。そして、車両2の旋回時に4つの駆動輪(L11,L12,R11,R12)の回転速度が異なる場合には、回転速度が遅い側の駆動輪の油圧モータ(L21,L22,R21,R22)から回転速度が速い側の駆動輪の油圧モータ(L21,L22,R21,R22)に作動油が自然と分配される。このため、オープンデフモードの場合、車両2はスムーズに旋回することができる。
【0042】
(走行路の状態が悪い場合)
次に、走行路の状態が悪い場合について説明する。走行路の状態が悪い場合とは、例えば、傾斜地、軟弱地等が挙げられる。この場合、作業者は、走行モードとして「デフロックモード」を選択する。デフロックモードが選択された場合、制御部10は、吐出側連結回路B1及び吸入側連結回路B2が遮断状態となるように、バイパスバルブB3を制御する。本実施形態では、制御部10は、バイパスバルブB3を遮断状態とするために、バイパスバルブB3に対して制御信号を出力する。これにより、左側HSTポンプL1の吐出ポートと右側HSTポンプR1の吐出ポートとが遮断状態となり、更に、左側HSTポンプL1の吸入ポートと右側HSTポンプR1の吸入ポートとが遮断状態となる。これにより、左前駆動輪L11及び左後駆動輪L12の駆動と、右前駆動輪R11及び右後駆動輪R12の駆動とがそれぞれ独立した状態となる。
【0043】
また、制御部10は、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2が分流状態となるように、パイロットバルブP3を制御する。ここでは、パイロットバルブP3を供給状態にする。本実施形態では、制御部10は、パイロットバルブP3を供給状態とするために、パイロットバルブP3に対して制御信号を出力する。これにより、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2が分流状態となる。
【0044】
また、制御部10は、左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量が同じとなるように、左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1を制御する。この場合、左前油圧モータL21、左後油圧モータL22、右前油圧モータR21、及び右後油圧モータR22の全てに同じ量の作動油が供給される。このため、左前駆動輪L11、左後駆動輪L12、右前駆動輪R11、及び右後駆動輪R12の全てが同じ回転速度で回転し、車両2の走破性を高めることができる。
【0045】
(デフロックモード+逆位相4輪操舵)
次に、走行モードとしてデフロックモードが選択されている状態で、更に、切替レバー8によって逆位相4輪操舵が選択されている場合について説明する。なお、制御部10におけるバイパスバルブB3、及びパイロットバルブP3の制御については、上述した走行モードとしてデフロックモードが選択されている場合と同じである。
【0046】
制御部10は、操舵角センサ9によって検出された操舵角に基づいて、左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量が予め設定された油量となるように、左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1に制御信号を出力する。
【0047】
具体例として、制御部10は、車両2の直進時には、左側HSTポンプL1から吐出される作動油の油量と右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量との比が、100:100となるように制御信号を出力する。制御部10は、車両2が左側にフルステアされたときは、左側HSTポンプL1から吐出される作動油の油量と右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量との比が、70:130となるように制御信号を出力する。制御部10は、車両2が右側にフルステアされたときは、左側HSTポンプL1から吐出される作動油の油量と右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量との比が、130:70となるように制御信号を出力する。
【0048】
また、制御部10は、車両2が左側にハーフステアされたときは、左側HSTポンプL1から吐出される作動油の油量と右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量との比が、85:115となるように制御信号を出力する。制御部10は、車両2が右側にハーフステアされたときは、左側HSTポンプL1から吐出される作動油の油量と右側HSTポンプR1から吐出される作動油の油量との比が、115:85となるように制御信号を出力する。このように、制御部10は、操舵されている側の油圧モータに供給するHSTポンプの吐出量を、他方のHSTポンプの吐出量よりも少なくする。
【0049】
これにより、操舵角に応じて駆動輪(L11,L12,R11,R12)の回転速度が制御され、車両2の適切な旋回が可能となる。
【0050】
本実施形態は以上のように構成され、この車両2において、左前油圧モータL21及び左後駆動輪L12は、左側HSTポンプL1から供給される油圧によって駆動される。右前駆動輪R11及び右後駆動輪R12は、右側HSTポンプR1から供給される油圧によって駆動される。左側HSTポンプL1から吐出される油量及び右側HSTポンプR1から吐出される油量は、制御部10によって制御される。すなわち、制御部10は、左側の駆動輪(左前駆動輪L11及び左後駆動輪L12)と、右側の駆動輪(右前駆動輪R11及び右後駆動輪R12)とを独立してそれぞれ駆動することができる。このため、制御部10は、旋回時において、旋回の内側の駆動輪と外側の駆動輪との間で生じる回転速度の差を考慮して、左側の駆動輪L11,L12と右側の駆動輪R11,R12とを駆動することができる。
【0051】
以上のように、車両2は、左側の駆動輪L11,L12と右側の駆動輪R11,R12とを適切に駆動することができる。また、車両2の旋回時おいて、旋回の内側の駆動輪及び外側の駆動輪の回転速度をそれぞれ適切に制御できるので、駆動輪L11,L12,R11,R12によって圃場を痛めることを抑制できる。
【0052】
旋回の内側の駆動輪と外側の駆動輪との間で生じる回転速度の差は、操舵角に応じて変化する。このため、操舵角センサ9で検出された操舵角に応じて左側HSTポンプL1から吐出される油量及び右側HSTポンプR1から吐出される油量を制御することで、回転速度の差が抑制されるように左側の駆動輪L11,L12と右側の駆動輪R11,R12とを適切に駆動することができる。
【0053】
左側デフロックバルブL2の切り替えにより、左前駆動輪L11と左後駆動輪L12とをデフロック状態とすることができる。また、右側デフロックバルブR2の切り替えにより、右前駆動輪R11と右後駆動輪R12とをデフロック状態とすることができる。このように、前後の駆動輪をデフロック状態とすることができるので、走行路の条件が悪い場合であっても車両2の走破性を向上させることができる。
【0054】
車両2は、2輪操舵と逆位相4輪操舵との切り替えを行うことができる。車両2は、逆位相4輪操舵を行うことにより、車両2の旋回性を向上させることができる。また、逆位相4輪操舵を行う場合、旋回時には内側の駆動輪と外側の駆動輪は、それぞれ前後輪が同じ回転速度で回転する。このため、逆位相4輪操舵を行う際に、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2を切り替えて前後の駆動輪をデフロック状態とすることで、旋回中においてもデフロックの効果を発揮させることができる。
【0055】
バイパスバルブB3の状態を切り替えることにより、左前駆動輪L11及び左後駆動輪L12と、右前駆動輪R11及び右後駆動輪R12とを独立して駆動させることと、これら左右の駆動輪を一体に駆動させることとを切り替えることができる。例えば、走行路の条件が悪い場合には、左前駆動輪L11及び左後駆動輪L12と、右前駆動輪R11及び右後駆動輪R12とを独立して駆動させて走破性を向上させることができる。例えば、走行路の条件が良い場合には、左前駆動輪L11及び左後駆動輪L12と、右前駆動輪R11及び右後駆動輪R12とを、流体デフ効果によって一体に駆動させ、スムーズに旋回することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、車両2はブームスプレーヤ1に適用されることに限定されない。例えば、車両2は、建設機械、ブームスプレーヤ1以外の他の農作機械、草刈り機等に用いられる車両に適用することができる。
【0057】
左前駆動輪L11、左後駆動輪L12、右前駆動輪R11、及び右後駆動輪R12は、それぞれ、タイヤを有する車輪としたが、例えば、クローラであってもよい。操舵角センサ9は、操舵角を検出できれば、左前駆動輪L11以外の向き(操舵角)を検出してもよい。
【0058】
車両2は、操舵角センサ9を備えていなくてもよく、操舵角に基づいて制御部10が左側HSTポンプL1及び右側HSTポンプR1の吐出量を制御していなくてもよい。車両2は、左側デフロックバルブL2及び右側デフロックバルブR2を備えていなくてもよい。車両2は、バイパスバルブB3を備えていなくてもよい。車両2は、逆位相4輪操舵を行うことは必須では無く、2輪操舵のみが可能であってもよい。