(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷凍サイクルの一部を構成する熱交換器により被冷却媒体を冷却し、前記熱交換器の負荷状態に応じて通常制御モード又は低負荷制御モードへの切換えを行うとともに、前記通常制御モードでは、前記冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機の回転数を可変して前記被冷却媒体の温度を制御し、かつ前記低負荷制御モードでは、前記冷凍サイクルに接続したホットガスバイパス回路における制御弁の開度を可変して前記温度を制御するチラーの制御方法であって、前記通常制御モード時に、前記回転数が最低回転数になり、かつ前記温度が予め設定した切換判定温度を下回ったなら、前記最低回転数よりも大きい予め設定したシフト回転数に変更して前記低負荷制御モードに切換えるとともに、この後、前記温度が予め設定した判定温度範囲にある第一条件,この第一条件が予め設定した監視時間継続する第二条件及び前記制御弁が予め設定した判定開度以上にある第三条件を満たしたなら、前記シフト回転数から予め設定した単位回転数を減算する中間処理を行うことを特徴とするチラーの制御方法。
冷凍サイクルの一部を構成することにより被冷却媒体を冷却する熱交換器の負荷状態に応じて通常制御モード又は低負荷制御モードへ切換制御するモード切換制御機能と、前記冷凍サイクルの一部を構成する圧縮機の回転数を可変して前記被冷却媒体の温度を制御する前記通常制御モードを実行する通常制御機能と、前記冷凍サイクルに接続したホットガスバイパス回路における制御弁の開度を可変して前記温度を制御する前記低負荷制御モードを実行する低負荷制御機能とを備えてなるチラーの制御装置であって、前記通常制御モード時の前記回転数が最低回転数になり、かつ前記温度が予め設定した切換判定温度を下回ることにより、前記最低回転数よりも大きい予め設定したシフト回転数に変更して前記低負荷制御モードに切換えるモード切換制御機能と、このモード切換制御機能による切換後に、前記温度が予め設定した判定温度範囲にある第一条件,この第一条件が予め設定した監視時間継続する第二条件及び前記制御弁が予め設定した判定開度以上にある第三条件を満たしたなら、前記シフト回転数から予め設定した単位回転数を減算する処理を行う中間処理機能とを備えることを特徴とするチラーの制御装置。
前記熱交換器は、一次側を前記冷凍サイクルに接続し、かつ二次側を前記冷却液が流通する冷却液回路に接続してなることを特徴とする請求項4記載のチラーの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1における冷却装置(チラー)の制御方法は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
即ち、コンプレッサの回転周波数(回転数)を可変して被冷却物の温度を制御する通常制御モードと、冷凍サイクルに接続したホットガスバイパス回路における制御弁の開度を可変して被冷却物の温度を制御する低負荷制御モードとを設け、通常の負荷状態では通常制御モードを使用するとともに、負荷が小さくなった低負荷状態では低負荷制御モードを使用するものであり、特に、通常制御モードから低負荷制御モードに切換える際は、通常制御モード時におけるコンプレッサの回転数と水温を監視し、この回転数が最低回転数になり、かつ水温が予め設定した切換判定温度を下回ることを切換条件として低負荷制御モードへの切換えを行っていた。
【0007】
したがって、基本的には、この切換条件を満たしたなら通常制御モードから低負荷制御モードに切換えるとともに、低負荷制御モード時に、負荷が予め設定した大きさになったなら通常制御モードに切換える制御を行うため、負荷変動などの負荷の状態により、通常制御モードと低負荷制御モード間のモード切換が頻繁に行われてしまうとともに、コンプレッサの制御限界となる最低回転数において制御弁による制御に切換わるため、モード切換時の挙動が不安定になる可能性を有していた。
【0008】
結局、この制御方法では、モード切換時における安定性を向上させ、温度制御の高精度化を継続的に実現する観点からは必ずしも十分であるとはいえず、特に、通常制御モードから低負荷制御モードへ切換える際の制御を最適化する観点からは更なる改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したチラーの制御方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るチラーCの制御方法は、上述した課題を解決するため、冷凍サイクル2の一部を構成する熱交換器3により被冷却媒体Lを冷却し、熱交換器3の負荷状態に応じて通常制御モードMs又は低負荷制御モードMdへの切換制御を行うとともに、通常制御モードMsでは、冷凍サイクル2の一部を構成する圧縮機4の回転数Rsを可変して被冷却媒体Lの温度Twを制御し、かつ低負荷制御モードMdでは、冷凍サイクル2に接続したホットガスバイパス回路5における制御弁6の開度Qsを可変して温度Twを制御するに際し、通常制御モードMs時に、回転数Rsが最低回転数Rdになり、かつ温度Twが予め設定した切換判定温度Tdを下回ったなら、最低回転数Rdよりも大きい予め設定したシフト回転数Ruに変更して低負荷制御モードMdに切換えるとともに、この後、温度Twが予め設定した判定温度範囲Dsにある第一条件,この第一条件が予め設定した監視時間Zs継続する第二条件及び制御弁6が予め設定した判定開度Qp以上にある第三条件を満たしたなら、シフト回転数Ruから予め設定した単位回転数Roを減算する中間処理Mmを行うようにしたことを特徴とする。
【0011】
一方、本発明に係るチラーCの制御装置1は、上述した課題を解決するため、冷凍サイクル2の一部を構成することにより被冷却媒体Lを冷却する熱交換器3の負荷状態に応じて通常制御モードMs又は低負荷制御モードMdへ切換制御するモード切換制御機能と、冷凍サイクル2の一部を構成する圧縮機4の回転数Rsを可変して被冷却媒体Lの温度Twを制御する通常制御モードMsを実行する通常制御機能と、冷凍サイクル2に接続したホットガスバイパス回路5における制御弁6の開度Qsを可変して温度Twを制御する低負荷制御モードMdを実行する低負荷制御機能とを備えてなる制御装置を構成するに際して、通常制御モードMs時の回転数Rsが最低回転数Rdになり、かつ温度Twが予め設定した切換判定温度Tdを下回ることにより、最低回転数Rdよりも大きい予め設定したシフト回転数Ruに変更して低負荷制御モードMdに切換えるモード切換制御機能と、このモード切換制御機能による切換後に、温度Twが予め設定した判定温度範囲Dsにある第一条件,この第一条件が予め設定した監視時間Zs継続する第二条件及び制御弁6が予め設定した判定開度Qp以上にある第三条件を満たしたなら、シフト回転数Ruから予め設定した単位回転数Roを減算する中間処理Mmを行う中間処理機能とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、好適な態様により、圧縮機4の回転数Rsは、PID制御を行うインバータ4iにより可変制御することができる。他方、被冷却媒体Lには、少なくとも冷却液Lwを含ませることができる。なお、冷却液Lwには、冷却水をはじめ、不凍液や各種溶剤等が含まれる。このため、熱交換器3は、一次側3fを冷凍サイクル2に接続し、かつ二次側3sを冷却液Lwが流通する冷却液回路11に接続することができる。さらに、制御弁6には、ホットガスバイパス回路5に直列接続した電子膨張弁6eを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係るチラーCの制御方法及び装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 通常制御モードMs時に、回転数Rsが最低回転数Rdになり、かつ温度Twが予め設定した切換判定温度Tdを下回ったなら、最低回転数Rdよりも大きい予め設定したシフト回転数Ruに変更して低負荷制御モードMdに切換えるため、モード切換時には、本来の負荷状態に対して、いわば人為的な負荷が一時的に付加されることになる。したがって、モード切換時には通常制御モードMsと低負荷制御モードMdの双方による制御が行われ、切換時の安定性を向上させることが可能になるとともに、温度制御の継続的な高精度化を実現できる。しかも、モード切換後は、温度Twが予め設定した判定温度範囲Dsにある第一条件,この第一条件が予め設定した監視時間Zs継続する第二条件及び制御弁6が予め設定した判定開度Qp以上にある第三条件を満たしたなら、シフト回転数Ruから予め設定した単位回転数Roを減算する中間処理Mmを行うようにしたため、消費電力が大きくなる不具合を回避できる。これにより、特に、通常制御モードMsから低負荷制御モードMdへ切換制御する際の最適化を図ることができる。
【0015】
(2) 好適な態様により、被冷却媒体Lに、少なくとも冷却液Lwを含ませれば、安定性に優れ、高精度の温度制御を実現できる最も一般的な水冷方式による冷却システムを容易に構築することができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、熱交換器3の一次側3fを冷凍サイクル2に接続し、かつ二次側3sを冷却液Lwが流通する冷却液回路11に接続すれば、電子機器や精密機械等における高温発熱部に対して高精度に温度制御された冷却液Lwを継続的に供給できるため、この種の用途に最適なチラーCとして提供できる。
【0017】
(4) 好適な態様により、圧縮機4の回転数Rsを、PID制御を行うインバータ4iにより可変制御するようにすれば、各種チラーに内蔵するインバータ圧縮機をそのまま利用可能になるため、冷凍サイクル2に対するハードウェア上の追加要素を不要にできる。したがって、ソフトウェア変更等により容易に実現できるとともに、低コストに実施できる。
【0018】
(5) 好適な態様により、制御弁6に、ホットガスバイパス回路5に直列接続した電子膨張弁6eを用いれば、各種チラーに備えるホットガスバイパス回路及び電子膨張弁をそのまま利用可能になるため、上述した(4)と併せ、ソフトウェア変更等により容易に実現できるとともに、低コストに実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る制御方法の理解を容易にするため、同制御方法を実施できるチラーCの構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0022】
図2は、チラーCの全体構成を示す。チラーCは、基本的な構成として、冷凍サイクル2により構成する冷却ユニット20と冷却液タンク51を有する冷却液回路11を備える。この場合、冷却ユニット20は、
図2に示すように、冷凍サイクル2を構成する四要素となる、圧縮機4,凝縮器21,電子膨張弁22及び熱交換器(冷却器)3を備えており、熱交換器3における一次側3fの一端口(冷媒流入口)には、電子膨張弁22の冷媒流出側を接続するとともに、熱交換器3における一次側3fの他端口(冷媒流出口)には、圧縮機4の冷媒流入側を接続する。なお、
図2中、21fは凝縮器21を空冷する凝縮器ファン、23は凝縮器21と電子膨張弁22間に接続したストレーナをそれぞれ示す。これにより、矢印Fc方向に冷媒が循環する基本的な冷凍サイクル本体が構成される。
【0023】
また、圧縮機4の下流側(凝縮器21の上流側)と、電子膨張弁22の下流側(熱交換器3の一次側3fの上流側)は、ホットガスバイパス回路5を介して接続するとともに、このホットガスバイパス回路5の中途には電子膨張弁6eを直列接続する。この電子膨張弁6eは加熱側の制御弁6として機能する。このように、制御弁6として電子膨張弁6eを用いれば、各種チラーに備えるホットガスバイパス回路及び電子膨張弁をそのまま利用可能になるため、冷凍サイクル2に対するハードウェア上の追加要素を不要にできる。したがって、ソフトウェア変更等により容易に実現できるとともに、低コストに実施できる利点がある。なお、電子膨張弁22は冷却側の制御弁として機能する。
【0024】
さらに、圧縮機4の駆動には電動モータを使用し、この電動モータはインバータ4iに接続する。これにより、インバータ4iに対して回転数制御信号Sr(
図3)を付与すれば、電動モータに基づく圧縮機4の回転数を当該回転数制御信号Srに対応した回転数Rsに可変制御することができる。また、このインバータ4iは、回転数Rsに対してPID制御を行うことができる。したがって、インバータ4iには、最適化されたPID定数が予め設定されている。なお、4mは、インバータ4iを除く圧縮機本体を示す。
【0025】
このように、圧縮機4の回転数Rsを、PID制御を行うインバータ4iにより可変制御するようにすれば、各種チラーに内蔵するインバータ圧縮機をそのまま利用可能になるため、冷凍サイクル2に対するハードウェア上の追加要素を不要にできる。したがって、上述した電子膨張弁6eを利用することと併せ、ソフトウェア変更等により容易に実現できるとともに、低コストに実施できる利点がある。
【0026】
一方、冷却液回路11は、被冷却媒体Lとなる冷却液Lwを貯留する冷却液タンク51を備える。例示の冷却液タンク51は、上面部を開放したタンク本体部51mと、このタンク本体部51mの上面部を覆うタンク蓋部51cにより構成する。なお、冷却液タンク51は、要部のみを示し、付属要素であるドレンライン,フロートスイッチ,液面計,ストレーナ等は省略してある。このように、被冷却媒体Lとして冷却液Lwを適用すれば、安定性に優れ、高精度の温度制御を実現できる最も一般的な水冷方式による冷却システムを容易に構築できる利点がある。この場合、冷却液Lwには、冷却水をはじめ、不凍液や溶剤等、各種の冷却液が含まれる。
【0027】
また、タンク蓋部51cには、タンク本体部51mにおける液面側の冷却液Lwを吸上げる圧送ポンプ52を取付け、この圧送ポンプ52の吐出側を、配水管を介して熱交換器3における二次側3sの一端口(流入口)に接続するとともに、熱交換器3における二次側3sの他端口(流出口)は、中途位置に開閉バルブ53を接続した配水管54を介して、電子機器や精密機械等における高温発熱部となる被冷却部71の供給口に接続する。そして、この配水管54の中途には液温センサ55を付設する。この液温センサ55は冷却液Lwの温度(液温)Twを計測する機能を備える。さらに、タンク本体部51mの底部側は、中途位置に開閉バルブ56を接続した配水管を介して、被冷却部71の戻し口に接続する。
【0028】
これにより、冷却液タンク51に貯留された冷却液Lwは、圧送ポンプ52により吸い上げられるとともに、吸い上げられた冷却液Lwは、熱交換器3の二次側3sに供給される。そして、熱交換器3の二次側3sを流通する際に、一次側3fの冷却された冷媒との熱交換が行われることにより冷却され、この冷却された冷却液Lwが配水管54を介して被冷却部71の供給口に供給される。そして、被冷却部71に供給された冷却液Lwにより被冷却部71が冷却される。また、被冷却部71を冷却した冷却液Lwは、被冷却部71における戻り口を介して冷却液タンク51に戻される。以上により、冷却液Lwが循環する冷却液回路11が構成される。
【0029】
このように、熱交換器3の一次側3fを冷凍サイクル2に接続し、かつ二次側3sを冷却液Lwが流通する冷却液回路11に接続すれば、電子機器や精密機械等における高温発熱部(被冷却部71)に対して、高精度に温度制御された冷却液Lwを継続的に供給できるため、この種の用途に最適なチラーCとして提供できる利点がある。
【0030】
他方、チラーCは、本実施形態に係る制御方法を実行できる
図3に示す制御装置1を内蔵する。この制御装置1は、主要部となるチラーコントローラ30を備え、このチラーコントローラ30には、CPU,内部メモリ31m等のハードウェアを含むコントローラ本体31を内蔵する。
【0031】
そして、このコントローラ本体31には、前述した冷却液回路11に設けた液温センサ55を接続する。これにより、液温センサ55により計測される液温Twに係わる計測データがコントローラ本体31に付与される。また、コントローラ本体31には、冷却ユニット20に備えるホットガスバイパス回路5の電子膨張弁6eを接続するとともに、冷凍サイクル本体に備える電子膨張弁22を接続する。これにより、本実施形態に係る制御方法の実行時には、コントローラ本体31から開度制御信号Spが加熱側となる電子膨張弁6eに付与されることにより、電子膨張弁6eの開度Qsが可変制御される。さらに、コントローラ本体31には、圧縮機4に備えるインバータ4iを接続する。これにより、本実施形態に係る制御方法の実行時には、コントローラ本体31から回転数制御信号Srがインバータ4iに付与されることにより、圧縮機4の回転数Rsが可変制御される。
【0032】
一方、コントローラ本体31には、入力部(操作部)32及び出力部(表示部)33をそれぞれ接続する。この入力部32により、本実施形態に係る制御方法を実行する際における各種制御条件の設定を行うことができるとともに、出力部33により、設定した各種制御条件に係わる数値データや各種計測データを表示することができる。34は、コントローラ本体31に内蔵する計時用のタイマ機能を示す。
【0033】
また、内部メモリ31mは、各種データを書き込み可能なデータエリア31mdを有するとともに、各種プログラムを格納可能なプログラムエリア31mpを有する。したがって、データエリア31mdには、本実施形態に係る制御方法の実施に関連して、少なくとも、設定した各種制御条件に係わる数値データや各種計測データを書き込むことができる。この場合、具体的なデータとしては、圧縮機4の最低回転数Rdに係わるデータ,低負荷制御モードMdへの切換判定時に使用する切換判定温度Tdに係わるデータ,低負荷制御モードMdへの切換判定時に使用するシフト回転数Ruに係わるデータ,シフト回転数Ruに対して設定する単位回転数Roに係わるデータ,第一条件を満たすか否かを判定する液温Twに対する判定温度範囲Dsに係わるデータ,第二条件を満たすか否かを判定する継続条件に対する監視時間Zsに係わるデータ,第三条件を満たすか否かを判定する電子膨張弁6eの判定開度Qpに係わるデータ等が含まれる。
【0034】
他方、プログラムエリア31mpには、PLCプログラム及びHMIプログラムを格納するとともに、各種演算処理(算出処理)及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するための各種処理プログラムを格納する。したがって、チラーコントローラ30は、基本的に、コンピュータシステムとして構成し、チラーC全体の制御を司る機能を備える。なお、PLCプログラムは、チラーCにおける各種シーケンス動作やチラーCの監視等を実現するためのソフトウェアであり、HMIプログラムは、制御装置1に係わるデータの設定及び表示等を実現するためのソフトウェアである。
【0035】
さらに、プログラムエリア31mpには、本実施形態に係る制御方法を実行するための制御プログラムを格納する。この制御プログラムにより、圧縮機4の回転数Rsを可変して液温Twを制御する通常制御モードMsを実現する通常制御機能,ホットガスバイパス回路5における電子膨張弁6eの開度Qsを可変して液温Twを制御する低負荷制御モードMdを実現する低負荷制御機能,冷却液Lwを冷却する熱交換器3の負荷状態に応じて通常制御モードMs又は低負荷制御モードMdに切換制御するモード切換制御機能であって、特に、通常制御モードMs時における圧縮機4の回転数Rsが最低回転数Rdになり、かつ液温Twが予め設定した切換判定温度Tdを下回ることにより、予め設定したシフト回転数Ruに変更するとともに、低負荷制御モードMdへの切換えを行うモード切換制御機能,このモード切換制御機能による切換後に、液温Twが予め設定した判定温度範囲Dsにある第一条件とこの第一条件が予め設定した監視時間Zs継続する第二条件と制御弁6が予め設定した判定開度Qp以上にある第三条件とを満たしたなら、シフト回転数Ruから予め設定した単位回転数Roを減算する中間処理Mmを行う中間処理機能等を実行することができる。
【0036】
次に、このような構成を備える制御装置1を用いた本実施形態に係る制御方法について、
図2〜
図4を参照しつつ
図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0037】
今、チラーCは、通常の負荷状態にあり、制御装置1により通常制御モードMsによる制御が行われているものとする(ステップS1)。したがって、この場合、冷却ユニット20では、圧縮機4の回転により冷凍サイクル2内を冷媒が循環し、熱交換器3の一次側3fが冷却状態となる。なお、ホットガスバイパス回路5の電子膨張弁6eは閉ポジション(開度Qsは0)に制御されている。これにより、熱交換器3では、冷凍サイクル2の冷媒と冷却液回路11の冷却液Lw間で熱交換が行われ、冷却液Lwが冷却されるとともに、冷却された冷却液Lwは被冷却部71に供給される。この際、冷却液Lwの液温Twは、液温センサ55により計測され、コントローラ本体31に付与される。そして、液温Twが目標温度Tsに維持されるように、圧縮機4の回転数Rsがフィードバック制御されるとともに、必要に応じて電子制御弁22の開度が制御される。
【0038】
即ち、通常制御モードMsでは、基本的に圧縮機4の回転数Rsがインバータ4iにより可変制御されるため、熱交換器3の負荷状態が大きくなり、液温Twが目標温度Tsよりも高まる傾向のときは、圧縮機4の回転数Rsが大きくなり、冷却能力が高められるとともに、熱交換器3の負荷状態が小さくなり、液温Twが目標温度Tsよりも低くなる傾向のときは、圧縮機4の回転数Rsが小さくなり、冷却能力が抑制される。なお、目標温度Tsに対しては許容範囲としてのディファレンシャルが設定されている。
【0039】
また、通常制御モードMsの運転中は、コントローラ本体31により、液温Twと圧縮機4の回転数Rsの監視が行われる。即ち、圧縮機4の回転数Rsが最低回転数Rdになったか否かを監視するとともに、液温Twが切換判定温度Tdを下回ったか否かを監視する(ステップS2,S3)。インバータ4iにより制御される圧縮機4の場合、回転数Rsに対する可変可能な制御領域が存在し、最低回転数Rdを下回る領域では実質的な制御ができない。さらに、この状態において、液温Twが、目標温度Tsに対して設定されるディファレンシャルの下限温度を下回る状態、即ち、この状態を検出する切換判定温度Tdになった状態は、制御限界にあるため、圧縮機4の回転数Rsが最低回転数Rdになり、かつ液温Twが設定液温Tdを下回ることを、低負荷制御モードMdに切換える切換条件に設定している。
【0040】
今、負荷状態が大きく低下した低負荷状態になり、当該切換条件を満たした場合を想定する(ステップS4)。この場合、回転数Rは最低回転数Rdに達し、かつ液温Twは設定液温Tdを下回る状態となるため、本発明に係る制御方法に従って、圧縮機4の回転数Rsは予め設定したシフト回転数Ruに変更される(ステップS5)。このシフト回転数Ruは、最低回転数Rdよりも大きい値に設定される。例えば、一例として、最低回転数Rdが1000〔rpm〕に設定されている場合、シフト回転数Ruは、1200〔rpm〕に設定することができる。変更する目安は、特定の条件に拘束されるものではないが、最低回転数Rd及び回転数Rsの可変制御範囲を考慮することにより、最低回転数Rdに対して、1〜3割程度大きくすることができる。最低回転数Rdに代えて設定されるシフト回転数Ruは固定値として設定される。
【0041】
また、シフト回転数Ruへの変更と同時に低負荷制御モードMdへの切換を行う(ステップS6)。具体的には、電子膨張弁6eに対する閉ポジションの制御を解除し、ホットガスバイパス回路5の機能を有効にする。これにより、電子膨張弁6eは液温Twに対応して可変制御される。
【0042】
図4(d)は、圧縮機4の回転数Rsが低下し、ts時点で最低回転数Rdになった状態を示すとともに、
図4(b)は、液温Twが低下し、ts時点から経過したt1時点で切換判定温度Tdを下回った状態を示している。したがって、例示の場合、t1時点で切換条件を満たすため、このタイミングにより回転数Rsがシフト回転数Ruに変更されるとともに、低負荷制御モードMdへの切換が行われる。なお、電子膨張弁6eの開度Qsは、
図4(c)に示すように、t1時点から液温Twに対応した制御が行われている状態を示している。
【0043】
この後、コントローラ本体31は、液温Twに対する第一条件,継続条件に対する第二条件及び開度Qsに対する第三条件を満たすか否かを監視する。
【0044】
即ち、最初に、液温Twが判定温度範囲Dsにあるか否かを監視する(ステップS7)。判定温度範囲Dsは、例えば、設定液温Tsに対して±0.05〔℃〕等のように設定できる。したがって、判定温度範囲Dsは、通常制御モードMsにおける設定した目標温度Tsに対するディファレンシャルと同じに設定してもよいし、異ならせることにより、より厳しい(或いはより緩い)条件に設定してもよい。これにより、液温Twが判定温度範囲Dsにあれば、第一条件を満たすことになる(ステップS8)。
図4(b)の場合、t2時点で第一条件を満たした状態を示している。
【0045】
また、この第一条件が、予め設定した監視時間Zsを継続したか否かを監視するため、第一条件を満たした時点からタイマ機能34により計時する(ステップS9)。この監視は、液温Twの大きさが安定したか否かを判定するものであり、経験等により任意の時間を設定可能である。これにより、例示の場合、t2時点から監視時間Zsが経過しても第一条件を満たした状態にあれば、第二条件を満たすことになる(ステップS10)。
【0046】
さらに、この状態において、電子膨張弁6eが予め設定した判定開度Qp以上になっているか否かを確認する(ステップS11)。判定開度Qpとしては、例えば、全開(100〔%〕)に対して10〜45〔%〕の開度を選定できる。そして、この際、判定開度Qp以上であれば、第三条件を満たすことになる(ステップS12)。例示する
図4(c)は、t2時点及びt3時点のいずれにおいても第三条件を満たした状態を示している。
【0047】
この場合、第一条件から第三条件のいずれか一つでも満たさないときは、現状を維持する制御を継続する。これに対して、第一条件から第三条件の全てを満たしたなら、シフト回転数Ruから予め設定した単位回転数Roを減算する処理を行う(ステップS13)。単位回転数Roの大きさの目安は、特定の条件に拘束されるものではないが、シフト回転数Ruに対して、例えば、4〜8回程度の減算処理を行うことにより最低回転数Rdになる大きさを設定できる。したがって、例示の場合には、単位回転数Roを50〔rpm〕程度に設定可能である。
【0048】
図4に示す場合、t3時点で第一条件から第三条件の全ての条件を満たすため、t3時点でシフト回転数Ruから単位回転数Roを減算する処理が行われる。例示の場合、1200〔rpm〕から50〔rpm〕を減算する処理を行う。これにより、シフト回転数Ruは、1150〔rpm〕に変更される。以降も同様の処理を繰り返して行う(ステップS14,S7…)。
図4は、t3時点からt5時点まで計三回の減算処理が行われた状態を示している。
【0049】
また、減算処理を行った際に、シフト回転数Ruが最低回転数Rd又はこの近辺で安定したか否かを判定する(ステップS14)。例示の場合、t5時点では減算処理が行われている途上にあり、安定したとはいえないため、同様の監視を継続する。これに対して、
図4(c)に示すように、t6時点では、電子膨張弁6eが判定開度Qp以上となる第三条件を満たさないため、シフト回転数Ruから単位回転数Roを減じる減算処理を行なわずに現状を維持する。この場合、シフト回転数Ruは、最低回転数Rd又はこの近辺で安定したものと判断できるため、t5時点からは、実質的に、安定した低負荷制御モードMsに移行したものと見做すことができる。即ち、t1時点からt5時点までの期間は、本実施形態に係る制御方法による中間処理Mmが行われたことになり、t5時点以降から本来の低負荷制御モードMdによる制御が行われている(ステップS14,S15)。以上の切換及び処理に係わるイメージを
図4(a)に示す。
【0050】
一方、低負荷制御モードMdの実行中は、通常制御モードMsに切換えるための切換条件が発生したか否かを監視する(ステップS16)。そして、切換条件が発生した場合には、通常制御モードMsへの切換処理を行う(ステップS17)。これにより、通常制御モードMsによる制御が行われる(ステップS1…)。
【0051】
よって、このような本実施形態に係るチラーCの制御方法によれば、通常制御モードMs時に、回転数Rsが最低回転数Rdになり、かつ液温Twが予め設定した切換判定温度Tdを下回ったなら、最低回転数Rdよりも大きい予め設定したシフト回転数Ruに変更して低負荷制御モードMdに切換えるため、モード切換時には、本来の負荷状態に対して、いわば人為的な負荷が一時的に付加されることになる。したがって、モード切換時には通常制御モードMsと低負荷制御モードMdの双方による制御が行われ、切換時の安定性を向上させることが可能になるとともに、温度制御の継続的な高精度化を実現できる。しかも、モード切換後は、液温Twが予め設定した判定温度範囲Dsにある第一条件,この第一条件が予め設定した監視時間Zs継続する第二条件及び電子膨張弁6eが予め設定した判定開度Qp以上にある第三条件を満たしたなら、シフト回転数Ruから予め設定した単位回転数Roを減算する中間処理Mmを行うようにしたため、消費電力が大きくなる不具合を回避できる。これにより、特に、通常制御モードMsから低負荷制御モードMdへ切換制御する際の最適化を図ることができる。
【0052】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,手法,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に、変更,追加,削除することができる。
【0053】
例えば、被冷却媒体Lとして、冷却液Lwを例示したが、その他、空気やガス等の気体であってもよいし、固体の被冷却媒体Lを排除するものではない。したがって、熱交換器3の形態やこの熱交換器3の二次側3sに接続される冷却液回路11や被冷却部71は、他の各種構造体により置換できる。また、圧縮機4の駆動手段としてインバータ4iにより制御される電動モータを例示したが、駆動手段としては、オイルモータ,エアモータ,エンジン等の他の駆動手段であっても同様に適用できる。さらに、制御弁6(22)として電子膨張弁6eを用いた場合を示したが、同様の機能を発揮できる他の制御弁の使用を排除するものではない。