特許第6483071号(P6483071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社癌免疫研究所の特許一覧

特許6483071ペプチド癌抗原特異的T細胞のレセプター遺伝子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483071
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】ペプチド癌抗原特異的T細胞のレセプター遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20190304BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20190304BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20190304BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20190304BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20190304BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C12N15/09 ZZNA
   C07K14/725
   C07K16/28
   C12N5/078
   C12Q1/68
   G01N33/574 A
   G01N33/574 D
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-193222(P2016-193222)
(22)【出願日】2016年9月30日
(62)【分割の表示】特願2013-522787(P2013-522787)の分割
【原出願日】2012年6月20日
(65)【公開番号】特開2017-46698(P2017-46698A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-143273(P2011-143273)
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505443953
【氏名又は名称】株式会社癌免疫研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 治夫
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/108257(WO,A1)
【文献】 特表2001−517958(JP,A)
【文献】 特表2002−515243(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/059155(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/116074(WO,A1)
【文献】 国際公開第1999/027957(WO,A1)
【文献】 河上 裕,メラノーマに対する免疫療法における最近の展開,Skin Cancer,2004年,Vol.19,pp.25-33
【文献】 Ochsenreither Sebastian et al,"Wilms Tumor Protein 1" (WT1) Peptide Vaccination-induced Complete Remission in a Patient With Acute Myeloid Leukemia Is Accompanied by the Emergence of a Predominant T-cell Clone Both in Blood and Bone Marrow,Journal of immunotherapy,2011年 1月,vol.34,no.1,p85-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
C12N 5/00−5/28
C12Q 1/00−1/70
G01N 33/00−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA−A0201陽性患者における癌にかかっている可能性を判定する方法であって、
治療前に該HLA−A0201陽性患者から得られた試料中の、下記ポリヌクレオチドあるいは下記ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーを調べ、治療前の患者における下記ポリヌクレオチドのいずれかまたは下記ペプチドのいずれかを有する3以上のクロナリティーを有するWT1特異的CTLのクロナリティーが大きいほど、あるいは3以上のクロナリティーを有するWT1特異的CTLの種類が多いほど、該患者が癌にかかっている可能性が高いと判定することを特徴とし、
ポリヌクレオチドが、(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチドであるか、あるいは(ii)配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列からなるDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列からなる(i)記載のポリヌクレオチドであり、
ペプチドが、(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいは(ii)配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列からなる(i)記載のペプチドである、
方法。
【請求項2】
T1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドに対する抗体であって、ペプチド中の、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を認識する抗体。
【請求項3】
下記ポリヌクレオチド、下記ペプチド、あるいは請求項2記載の抗体を含むチップであって、
ポリヌクレオチドが、
(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチドであるか、あるいは
(ii)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列からなるポリヌクレオチドであり、
ペプチドが、
(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいは
(ii)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列からなるペプチドである、
チップ。
【請求項4】
下記ポリヌクレオチドあるいは下記ペプチドを有するWT1特異的CTLを検出するための手段を含む、請求項1に記載の方法を用いることによる癌の診断キットであって、
ポリヌクレオチドが、
(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチドであるか、あるいは
(ii)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列からなるDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列からなるポリヌクレオチドであり、
ペプチドが、
(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいは
(ii)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列からなるペプチドである、
キット。
【請求項5】
下記ポリヌクレオチドあるいは下記ペプチドを有するWT1特異的CTLを検出するための手段を含む、請求項1に記載の方法を用いることによる癌の診断装置であって、
ポリヌクレオチドが、
(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチドであるか、あるいは
(ii)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号:11、12、17、18、22、23、26、37、47、49、63、70、89、122、143、174、189、203、206、212、222、246、249、318、333、340、377、381、389、462、468、473、478、500、513、549、555、564、577、583に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列からなるDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列からなるポリヌクレオチドであり、
ペプチドが、
(i)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を有するペプチドであるか、あるいは
(ii)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号:767、768、773、774、778、779、782、793、803、805、819、826、845、878、899、930、945、959、962、968、978、1002、1005、1074、1089、1096、1133、1137、1145、1218、1224、1229、1234、1256、1269、1305、1311、1320、1333、1339に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列からなるペプチドである、
装置。
【請求項6】
請求項3記載のチップを含む請求項4記載のキット。
【請求項7】
請求項3記載のチップが用いられる請求項5記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌抗原特異的T細胞のレセプター遺伝子に含まれるポリヌクレオチドおよびそれによりコードされるペプチド、ならびにそれらを用いる癌の検査(診断、予後、治療モニタリング等)や癌の治療等に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療には手術による切除、放射線治療、抗癌剤による治療、そして免疫療法がある。このうち、免疫療法は癌に対する選択性・特異性が高く、副作用もほとんどないので、近年、特に注目されている。なかでも、多くの癌細胞や白血病細胞に豊富に存在するWT1蛋白を標的とした癌や白血病の治療の試みがさかんに行われている。このようなWT1を標的とした抗癌治療のメカニズムを研究し、さらに治療効果を高めるためには、WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)遺伝子のヌクレオチド配列およびそれによりコードされるレセプターペプチドのアミノ酸配列を同定する必要がある。しかしながら、現在に至るまでいくつかの研究(特許文献1、非特許文献1−5等参照)がなされているが、依然として、かかるレセプター遺伝子およびレセプターペプチドの配列やそれらの利用について情報が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO2008/108257A1
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Valmori D. et al., J. Immunol. 168:4231-4240, 2002
【非特許文献2】Dietrich PY. et al., Cancer Res. 61:2047-2054, 2001
【非特許文献3】Coulie PG. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98:10290-10295, 2001
【非特許文献4】Godelaine D. et al. J. Immunol. 171:4893-4897, 2003
【非特許文献5】Mandruzzato S. et al., J. Immunol. 169:4017-4024, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、WT1蛋白に対するWT1特異的細胞傷害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子のヌクレオチド配列、特にそのCDR3領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を明らかにし、これらを癌の検査(診断、予後、治療モニタリング等)や癌治療に利用することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、健常人およびHLA−A0201陽性患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を初めて決定し、本発明を完成するに至った。特に本発明は、WT1癌抗原ペプチド(WT1タンパクのアミノ酸126〜134番目、RMFPNAPYL(配列番号:1543))を認識するWT1特異的細胞傷害性T細胞のT細胞レセプター(TCR)遺伝子の塩基配列を初めて同定した。
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであって、配列番号:1〜756に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチド;
(2)配列番号:1〜756に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列からなるDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列からなる(1)記載のポリヌクレオチド;
(3)WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号:757〜1512に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を有するペプチド;
(4)配列番号:757〜1512に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列からなる(3)記載のペプチド;
(5)(1)または(2)記載のポリヌクレオチドあるいは(3)または(4)記載のペプチドの、癌マーカーとしての使用;
(6)治療前にHLA−A0201陽性患者から得られた試料中の、(1)または(2)記載のいずれかのポリヌクレオチドあるいは(3)または(4)記載のいずれかのペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーを調べることを特徴とする、癌の診断方法であって、該クロナリティーが複数であるWT1特異的CTLが存在する場合に、該クロナリティーが複数であるWT1特異的CTLの種類が多いほど、あるいは該クロナリティーが複数であるWT1特異的CTLのクロナリティーが大きいほど、患者が癌にかかっている可能性が高いと判定する方法;
(7)治療前の患者におけるいずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有する3以上のクロナリティーを有するWT1特異的CTLのクロナリティーが大きいほど、あるいは3以上のクロナリティーを有するWT1特異的CTLの種類が多いほど、該患者が癌にかかっている可能性が高いと判定する(6)記載の方法;
(8)治療前においてHLA−A0201陽性患者から得られた試料中の、(1)または(2)記載のいずれかのポリヌクレオチドあるいは(3)または(4)記載のいずれかのペプチドを有するWT1特異的CTLの種類およびクロナリティーを調べることを特徴とする、WT1ペプチド免疫療法に対する患者の感受性を調べる方法であって、該患者におけるクロナリティーが複数であるWT1特異的CTLの種類が、WT1ペプチド免疫療法に対する無応答者のそれよりも多い場合に、WT1ペプチド免疫療法に対する該患者の感受性があると判定する方法;
(9)治療前の患者におけるクロナリティーが複数であるWT1特異的CTLクローンの種類が多いほど、あるいはクロナリティーが大きいほど、WT1ペプチド免疫療法に対する該患者の感受性が高いと判定する(8)記載の方法;
(10)WT1ペプチド免疫療法の前後において、HLA−A2402陽性患者から得られた試料中の、(1)または(2)記載のいずれかのポリヌクレオチドあるいは(3)または(4)記載のいずれかのペプチドを有するWT1特異的CTLクローンのクロナリティーを調べることを特徴とする、該患者におけるWT1ペプチド免疫療法のモニタリング方法であって、いずれかのクローンに関してWT1ペプチド免疫療法前よりもWT1ペプチド免疫療法後において該WT1特異的CTLのクロナリティーが増加した場合に、該患者がWT1ペプチド免疫療法に応答したと判定する方法;
(11)WT1ペプチド免疫療法後において、クロナリティーの増加の割合が大きいほど、あるいはクロナリティーが増加したクローンの種類が多いほど、WT1ペプチド免疫療法に対する応答性が高いと判定する(10)記載の方法;
(12)(3)または(4)記載のペプチドに対する抗体;
(13)(1)または(2)記載のポリヌクレオチド、(3)または(4)記載のペプチド、あるいは(12)記載の抗体を含むチップ;
(14)配列番号:1513〜1538に示す配列から選択される配列を有するCDR3ポリペプチド増幅用プライマー;
(15)(1)または(2)記載のポリヌクレオチドあるいは(3)または(4)記載のペプチドを有するWT1特異的CTLを検出するための手段を含む、癌の診断キット、WT1ペプチド免疫療法に対する癌患者の感受性を調べるためのキット、またはWT1ペプチド免疫療法のモニタリング用キット;
(16)(1)または(2)記載のポリヌクレオチドあるいは(3)または(4)記載のペプチドを有するWT1特異的CTLを検出するための手段を含む、癌の診断装置、WT1ペプチド免疫療法に対する癌患者の感受性を調べるための装置、またはWT1ペプチド免疫療法のモニタリング用装置;
(17)(13)記載のチップまたは(14)記載のプライマーを含む(15)記載のキット;
(18)(13)記載のチップまたは(14)記載のプライマーが用いられる(16)記載の装置;
(19)(1)または(2)記載のポリヌクレオチド配列を含むT細胞レセプター遺伝子を導入したHLA−A0201陽性癌患者のリンパ球。
【0007】
さらに本発明は、CDR3ポリヌクレオチドを含むT細胞レセプター遺伝子を導入したHLA−A0201陽性の人のリンパ球を用いた癌治療も提供する。
【0008】
さらに本発明は、CDR3ペプチドに対する抗体およびその使用も提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、WT1特異的CTLのTCRのVβ鎖遺伝子に含まれるヌクレオチド配列およびそれらによりコードされるペプチドのアミノ酸配列、詳細には、CDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が明らかとなり、これらのポリヌクレオチドまたはペプチドを用いて、広範な癌の検査(診断、予後、治療モニタリング等)、有効な癌の治療等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1-1】図1−1は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-2】図1−2は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-3】図1−3は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-4】図1−4は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-5】図1−5は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-6】図1−6は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-7】図1−7は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-8】図1−8は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図1-9】図1−9は、本発明において同定された健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、それらのクローン数(クロナリティー)等を示す。clone#はクローン番号であり、ドットの左の数字はVβ鎖のファミリー番号、ドットの右の数字は整理番号である。nameの欄はクローンが由来した対象を示し、HD1、HD2、HD3、HD4、HD5はそれぞれ健常人を表し、PT1、PT2、PT3、PT4、PT5、PT6は固形癌患者を表し、それぞれ、グリオブラストーマ、原始神経外胚葉腫瘍、グリオブラストーマ、卵巣癌、盲腸癌、グリオブラストーマの患者である。Vname、JnameおよびDnameはV領域、J領域およびD領域がどのようなものかを示す。ヌクレオチド配列は、V領域、N1領域、D領域、(P)N2領域、J領域に由来する部分ごとに示される。ヌクレオチド配列の右隣の欄はヌクレオチド配列がどのような領域由来の配列から構成されているかを示す。各ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列は当業者に公知の1文字法で示される。アミノ酸配列の右側の2つの欄は、各健常人におけるクロナリティーおよび各癌患者におけるクロナリティーを示す。右端の欄は各クローンのクロナリティー合計を示す。
図2-1】図2−1は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-2】図2−2は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-3】図2−3は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-4】図2−4は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-5】図2−5は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-6】図2−6は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-7】図2−7は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-8】図2−8は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-9】図2−9は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-10】図2−10は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-11】図2−11は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-12】図2−12は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
図2-13】図2−13は、健常人およびHLA−A0201陽性固形癌患者から得られたWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をまとめたものである。左端のname欄は健常者、癌患者を示し、符号の意味は図1と同じである。cell#は各人から得られた細胞の番号である。TRBV、TRBJおよびTRBDは、それぞれ図1のVname、JnameおよびDnameと同じ意味である。ヌクレオチド配列の表示においてドット(図1では省略せず)を省略してある。アミノ酸配列の右の*あるいは**は、同じ配列が2つ以上並んでいることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、WT1ペプチド/HLA−A0201の複合体からなるWT1テトラマーで癌患者の末梢血リンパ球を染色し、FACSを用いてWT1テトラマー陽性細胞を1個ずつ分離し、各細胞からcDNAを作成し、PCR法を適用することによってWT1特異的細胞障害性T細胞(以下において「WT1特異的CTL」ということがある)のT細胞レセプター(以下において「TCR」ということがある)のVβ鎖に含まれるCDR3をコードするヌクレオチド配列を決定した(図1−1〜図1−9、図2−1〜図2−13、配列番号:1〜756)。これらの結果から該CDR3のアミノ酸配列も決定した(図1−1〜図1−9、図2−1〜図2−13、配列番号:757〜1512)。これらの配列は本発明により初めて同定されたものである。
【0012】
したがって、本発明は、1の態様において、健常人およびHLA−A0201陽性患者のWT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであって、配列番号:1〜756に示すいずれかのCDR3ヌクレオチド配列を有するDNA、またはその相補的RNA、またはそれらの相補配列を有するポリヌクレオチドを提供するものである。本明細書において、これらのDNA、RNA、それらの相補的ポリヌクレオチドをまとめて「CDR3ポリヌクレオチド」という。例えば、CDR3ポリヌクレオチドは、配列番号:1〜756に示すヌクレオチド配列からなるDNAのみならず、これらの配列を含むDNAも包含する。また例えば、CDR3ポリヌクレオチドは、配列番号:1〜756に示すヌクレオチド配列からなるDNAに相補的なRNAのみならず、これらの配列を含むRNAも包含する。さらに例えば、CDR3ポリヌクレオチドは、上記DNAまたはRNAおよびRNAに相補的な配列を有するポリヌクレオチドも包含する。また、「CDRポリヌクレオチド」には、「CDR3ペプチド」をコードする縮重配列を有するものも包含される。
【0013】
また本発明は、別の態様において、WT1特異的細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞レセプター(TCR)のVβ鎖のCDR3のアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号:757〜1512に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列を有するペプチドを提供するものである。本明細書において、これらのペプチドをまとめて「CDR3ペプチド」という。例えば、CDR3ペプチドは、配列番号:757〜1512に示すいずれかのCDR3アミノ酸配列からなるペプチドのみならず、これらのCDR3アミノ酸配列を含むペプチドも包含する(例えば、Vβ鎖ペプチドまたはその一部分など)。さらに、配列番号:757〜1512に示すアミノ酸配列において、1個ないし数個、好ましくは1個ないし3個、1個ないし2個、あるいは1個のアミノ酸が置換、付加、欠失しているアミノ酸配列からなる、あるいは含むペプチドも「CDR3ペプチド」に包含される。ただし、これらのペプチドが本来のペプチドと同等の機能を有することが条件となる。これらのCDR3ペプチドは上記のCDR3ポリヌクレオチドによってコードされるものである。
【0014】
CDR3は最も多様性に富む領域であり、抗原認識の特異性に最も強く関与する部分である。それゆえ、本発明のCDR3ポリヌクレオチドの配列および本発明のCDR3ペプチドの配列は、HLA−A0201陽性患者におけるWT1特異的CTLに特有の配列であると考えられる。したがって、あるT細胞のTCRのVβ鎖遺伝子のCDR3領域をコードするポリヌクレオチドまたはそのCDR3領域のペプチドが本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のペプチドの配列を有していれば、そのT細胞はWT1特異的であると考えられる。したがって、本発明のCDR3ポリヌクレオチドおよびCDR3ペプチドは、広範な癌のマーカーとして、癌の診断、WT1ペプチド免疫療法に対する該患者の感受性の診断、WT1ペプチド免疫療法に対する該患者の応答性の検査などに使用することができる。
【0015】
本発明のCDR3ポリヌクレオチドおよびCDR3ペプチドは、WT1を有する細胞に起因する癌であれば、いずれの種類の癌患者のリンパ球においても出現し得る。WT1は多くの種類の癌や血液悪性腫瘍において癌抗原となっていることが知られている。従って、本発明のCDR3ポリヌクレオチドおよびCDR3ペプチド、ならびに以下に説明する本発明の方法は、固形癌、血液癌を問わず殆どあらゆる種類の癌に適用することができ、例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、同種造血幹細胞移植後再発などの血液悪性疾患;舌癌、歯肉癌、口腔底癌、咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌、甲状腺癌などの固形癌;乳癌、肺癌、胸腺癌などの胸部の癌;大腸癌、小腸癌、胃癌、膵臓癌、肝癌、胆管癌、消化器内分泌腫瘍、消化管カルチノイドなどの消化器の癌;腎癌、尿路上皮癌、胚細胞腫、ウイルムス腫瘍、前立腺癌、子宮体癌、子宮頚癌、子宮肉腫、卵巣悪性腫瘍などの尿路生殖器系の癌;骨原発性悪性腫瘍(骨肉種、Ewing肉腫など)、軟部肉腫などの筋・骨格系の悪性腫瘍;その他皮膚癌、神経芽細胞腫、悪性神経膠腫(グリオブラストーマ)、中枢神経原発悪性リンパ腫、髄芽腫・PNETなどに適用できるが、これらの癌や腫瘍に限定されない。
【0016】
CDR3ポリヌクレオチドあるいはCDR3ペプチドを製造する場合には、通常の遺伝子工学的手法および/または化学合成法を用いることができる。例えば、CDR3ポリヌクレオチドを細胞から単離してもよく、あるいは化学合成してもよい。CDR3ポリヌクレオチドをPCR法などの公知方法にて増幅することもできる。また例えば、CDR3ポリヌクレオチド(公知方法にて適当量まで増幅しておいてもよい)を適当なベクターに組み込んで適当な細胞に導入し、あるいは遺伝子銃やエレクトロポレーションなどによって適当な細胞に導入し、次いで、CDR3ポリヌクレオチドを導入された細胞を培養して、発現させることにより、CDR3ポリヌクレオチドおよびCDR3ペプチドを得ることができる。使用可能なベクターや細胞、遺伝子導入条件、培養条件、遺伝子やペプチドの単離方法などは当業者に公知であり、適宜選択して用いることができる。CDR3ポリヌクレオチドあるいはCDR3ペプチドを製造するために化学合成法を用いてもよい。これらの化学合成法は公知であり、遺伝子の化学合成法としてはアミダイト法によるDNAの固相合成や1−4ホスホネート法などがあり、ペプチドの化学合成法としてはFmoc法などがある。
【0017】
したがって、本発明は、さらなる態様において、治療前のHLA−A0201陽性患者から得られた試料中の、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーを調べることを特徴とする該患者における癌の診断方法であって、該クロナリティーが複数であるWT1特異的CTLが存在する場合に、該クロナリティーが複数であるWT1特異的CTLの種類が多いほど、あるいは該クロナリティーが複数であるWT1特異的CTLのクロナリティーが大きいほど、患者が癌にかかっている可能性が高いと判定する方法を提供する。本明細書において「クロナリティー」とは、同一のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する細胞が検出される頻度をいう。クロナリティーを調べるためには、細胞1個1個を識別することのできるセルソーターを用いるのが一般的である。「患者」とは、癌の疑いのあるヒト、癌にかかっているヒトの両方を包含する。この方法を実施する際に、癌にかかっていない人のクロナリティーが複数であるWT1特異的CTLの種類やクロナリティーが複数であるWT1特異的CTLのクロナリティーと比較してもよい。
【0018】
本発明者は、患者におけるいずれかのCDR3ポリヌクレオチドあるいはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーを調べることにより、該患者が癌にかかっているかどうかを判定できることを見出した。図1−1〜図1−9および図2−1〜図2−13にも示されているように、健常人(HD1〜HD5)では、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーはほとんどのクローンに関して1、希に2または3、ごく希に4(1クローンのみ)であるのに対し、治療前におけるすべての癌患者(PT1〜PT6)では、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーが複数のものが必ず存在しており、そのクロナリティー数およびそのような細胞の種類も健常人よりも多い。治療前における患者におけるクロナリティーの増加またはクロナリティーが複数である細胞の種類の増加は、患者において癌細胞に対する防御・攻撃が既に開始されている可能性を示すものである。
【0019】
これらのことより、被験者試料を調べた場合に、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのなかにクロナリティーが複数のものが存在すれば、該被験者は癌にかかっている可能性があると判定することができる。さらに、治療前の被験者におけるいずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーが大きいほど、あるいは複数のクロナリティーを有するWT1特異的CTLの種類が多いほど、被験者が癌にかかっている可能性が高いと判定することができる。また、上記判定方法において、治療前の患者におけるいずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有する3以上のクロナリティーを有するWT1特異的CTLのクロナリティーが大きいほど、あるいは3以上のクロナリティーを有するWT1特異的CTLの種類が多いほど、患者が癌にかかっている可能性が高いと判定してもよい。
【0020】
本発明は、さらなる態様において、治療前においてHLA−A0201陽性患者から得られた試料中の、請求項1記載のいずれかのポリヌクレオチドまたは請求項2記載のいずれかのペプチドを有するWT1特異的CTLクローンの種類の数およびクロナリティーを調べることを特徴とする、WT1ペプチド免疫療法に対する患者の感受性を調べる方法であって、該患者におけるクロナリティーが複数であるWT1特異的CTLクローンの種類が、WT1ペプチド免疫療法に対する無応答者のそれよりも多い場合に、WT1ペプチド免疫療法に対する該患者の感受性があると判定する方法を提供する。
【0021】
患者における癌細胞に対抗して、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLが作用する。治療前において既にクロナリティーが複数であるクローンは、WT1ペプチド免疫療法によってクロナリティーをさらに増加させるか、あるいはそのクロナリティーを維持すると考えられる。また、できるだけ多種類のクローンが存在したほうが、全体として有効なWT1特異的CTLクローンの数および種類が増加することとなり、WT1免疫療法の成功の可能性が高いと考えられる。より厳密には、患者におけるクロナリティーが複数であるWT1特異的CTLクローンの種類が無応答者におけるそれよりも多い場合に、WT1ペプチド免疫療法に対する患者の感受性が高いと判定することができる。
【0022】
あるクローンのクロナリティーが増加したことは、WT1ペプチド免疫療法が一定期間奏功したことを示すと考えられる。あるクローンのクロナリティーが一時的に増加し、その後減少しても、他のクローンのクロナリティーが増加して、効果を補填するものと考えられる。癌細胞に対する効果からすると、クロナリティーの増加の割合が大きいほど望ましいと考えられる。したがって、WT1ペプチド免疫療法後において、クロナリティーの増加の割合が大きいほど、あるいはクロナリティーが増加したクローンの種類が多いほど、WT1ペプチド免疫療法に対する応答性が高かったと考えられる。
【0023】
本発明は、さらなる態様において、WT1ペプチド免疫療法の前後において、HLA−A0201陽性患者から得られた試料中の、請求項1記載のいずれかのポリヌクレオチドまたは請求項2記載のいずれかのペプチドを有するWT1特異的CTLクローンのクロナリティーを調べることを特徴とする、該患者におけるWT1ペプチド免疫療法のモニタリング方法であって、いずれかのクローンに関してWT1ペプチド免疫療法前よりもWT1ペプチド免疫療法後において該WT1特異的CTLのクロナリティーが増加した場合に、該患者がWT1ペプチド免疫療法に応答したと判定する方法を提供する。
【0024】
WT1ペプチド免疫療法によりクロナリティーが増えるクローンが存在することは、WT1ペプチド免疫療法に対する応答を示すものである。すなわち、クロナリティーが増加したことは、WT1ペプチド免疫療法が一定期間奏功したことを示すと考えられる。これらのクロナリティーの増加は一時的なものであってもよく、持続的なものであってもよい。あるクローンのクロナリティーが一時的に増加し、その後減少しても、他のWT1特異的CTLのクロナリティーが増加して、効果を補填するものと考えられる。癌細胞に対する効果からすると、クロナリティーの増加の割合が大きいほど望ましいと考えられる。したがって、WT1ペプチド免疫療法後において、クロナリティーの増加の割合が大きいほど、あるいはクロナリティーが増加したクローンの種類が多いほど、WT1ペプチド免疫療法に対する応答性が高いと判定することができる。癌の種類、部位などに応じて適切な方法を用いて癌細胞の数や性質を調べることができる。
【0025】
上記治療モニタリング方法において、WT1ペプチド免疫療法の前後でクロナリティーを比較するのであるが、該前後の時間間隔は任意であってよい。例えば、数日間、1週間、2週間、3週間、4週間、2ヶ月、3ヶ月またはそれ以上であってもよい。
【0026】
上で説明した本発明の方法において、クロナリティーを調べるための手段・方法、クローンの種類を調べる(すなわち、CDR3ペプチドのアミノ酸配列あるいはそれをコードするヌクレオチド配列を決定する)ための手段・方法は、当業者に公知であり、当業者は適宜これらの作業を行うことができる。例えば、本明細書の実施例に示すように、FACSAria装置などの公知のソーティング装置、および例えばPCR法などの公知の遺伝子増幅方法(例えばプライマーセットとして表1に記載のものを使用する)などを用いることができる。本発明のCDR3ポリヌクレオチドあるいはCDRペプチドの解析を、より厳密に、あるいはより確定的に行うためには、Vβ鎖遺伝子中のCDR3ヌクレオチド配列、IMGT、J領域およびD領域が図1−1〜図1−9および図2−1〜図2−13に示すものであるかどうかを確認すればよい。かかる確認は当業者の通常行い得るところである。
【0027】
WT1ペプチド免疫療法も公知である。HLA−A0201陽性患者に対しては、HLA−A0201拘束性WT1ペプチド(例えば、WT1126:アミノ酸配列:RMFPNAPYL(配列番号:1543)またはWT1187:アミノ酸配列SLGEQQYSV(配列番号:1544))を、例えば経皮的に投与することにより行うことができる。通常、1回の投与量はμg/body〜mg/bodyのオーダーであり、1週間〜数週間間隔で投与することができる。
【0028】
本発明は、さらなる態様において、CDR3ポリヌクレオチドまたはその相補的ポリヌクレオチドを含むチップ、あるいはCDR3ペプチドを含むチップ、CDR3ペプチドに対する抗体を含むチップを提供する。これらのチップはマイクロチップ、マイクロアレイなどの形態であってもよい。これらのチップの作製は常法に従って行うことができ、例えば、ガラス基盤上にCDR3ポリヌクレオチドあるいはCDR3ペプチドに対する抗体を固定することができる。チップ上に固定されるCDR3ポリヌクレオチド、その相補的ポリヌクレオチド、CDR3ペプチド、CDR3ペプチドに対する抗体の種類は1種〜全種類であり、好ましくは全種類を固定して網羅的に解析する。例えば、配列番号:1〜756に示すヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなる全種類のポリヌクレオチドをチップ上に固定してもよく、また例えば、配列番号:757〜1512に示すアミノ酸配列からなる全種類のペプチドを特異的に認識して結合する抗体をチップ上に固定してもよい。チップ上のCDR3ポリヌクレオチド、その相補的ポリヌクレオチド、CDR3ペプチド、CDR3ペプチドに対する抗体の配置は任意である。
【0029】
これらのチップは、上記の癌の診断方法などにおいて使用することができる。試料としては、患部組織、血液、リンパ液などの体液、粘膜などであってよいが、好ましくは末梢血である。例えば、分析対象がCDR3ポリヌクレオチドである場合、常法に従って細胞から核酸を抽出し、配列番号:1〜756に示すヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなる全種類のポリヌクレオチドを固定したチップを用いて、ハイブリダイゼーションした試料中のDNAの種類および量を調べることができる。また例えば、分析対象がCDR3ペプチドである場合には、配列番号:757〜1512に示すアミノ酸配列からなる全種類のペプチドを特異的に認識して結合する抗体を固定したチップを用いて、特異的結合した試料中のペプチドの種類および量を調べることができる。
【0030】
この点において、本発明は、CDR3ペプチドを特異的に認識してこれに結合する抗体を提供する。好ましくは、かかる抗体は、配列番号:757〜1512に示すいずれかのアミノ酸配列を特異的に認識するものである。かかる抗体の作成方法は当業者に公知である。
【0031】
通常は、試料中のDNAあるいはチップ上のDNA配列に、ハイブリダイゼーションの有無およびハイブリダイゼーション量を示すことのできる標識を付しておく。また例えば、配列番号:757〜1512のCDR3ペプチドに対する各抗体をチップ上に配列させ、試料中のCDR3ペプチドとの特異的結合を調べることにより、試料中のCDR3ペプチドの存在、および種類を同定することができる。通常は、試料中のペプチドあるいはチップ上の抗体に、特異的結合の有無を判別できる標識を付しておく。ハイブリダイゼーションや特異的結合の有無および量を示すことのできる標識は公知であり、例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識、発色基を含むものなどがあり、適宜選択して用いることができる。上記のチップを用いることにより、同時に多検体を分析することが可能となる。
【0032】
本発明のCDR3ポリヌクレオチドおよびCDRペプチドはこれらのチップを用いるほか、例えば、サザンブロット、ノーザンブロット、コロニーハイブリダイゼーション、ELISAなどの公知の方法を用いて分析し同定することができる。
【0033】
上述のごとく、本発明のCDR3 DNAは実施例に示すプライマー、特に、表1に示すプライマーセットを用いて同定されたものである。したがって、本発明は、CDRポリヌクレオチドを増幅するための配列番号:1513〜1538に示す配列から選択される配列を有するプライマーを提供するものである。
【0034】
また本発明は、CDR3ポリヌクレオチドあるいはCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLを検出するための手段を含む、癌の診断キット、WT1ペプチド免疫療法に対する癌患者の感受性を調べるためのキット、またはWT1ペプチド免疫療法のモニタリング用キットを提供する。さらに本発明は、CDR3ポリヌクレオチドあるいはCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLを検出するための手段を含む、癌の診断装置、WT1ペプチド免疫療法に対する癌患者の感受性を調べるための装置、またはWT1ペプチド免疫療法のモニタリング用装置も提供する。上述のプライマーセットなどの遺伝子増幅手段、上述のチップ、あるいはチップから得られる情報の解析手段などをかかるキットの構成成分とすることができ、あるいはかかる装置に用いることができる。
【0035】
本発明は、さらにもう1つの態様において、CDR3ポリヌクレオチド配列を含むT細胞レセプター遺伝子を導入したHLA−A0201陽性の人のリンパ球に関するものである。HLA−A0201陽性の人は癌にかかっていない人および癌患者を包含する。HLA−A0201陽性の人は、例えば健常人であってもよく、骨髄移植のドナーであってもよく、癌患者であってもよい。好ましくは、かかるリンパ球は、本発明のポリヌクレオチドであってCDR3ポリヌクレオチドを含むWT1特異的CTLのTCRのVβ鎖遺伝子と、WT1特異的CTLのTCRのVα鎖遺伝子とを導入された癌患者の末梢血リンパ球である。このような末梢血リンパ球の調製にあたり、これらのWT1特異的CTLのTCRのVβ鎖遺伝子1種類を用いて複数種類の末梢リンパ球を得て、それらを患者に導入してもよいが、WT1特異的CTLのTCRのVβ鎖遺伝子を複数種類用いて複数種類の末梢リンパ球を得て、それらを患者に導入することが、治療効果の向上の点から好ましい。あるいはまた、患者や癌の種類等によっては、治療に有効な遺伝子中のヌクレオチド配列が異なることもあり、個々の状況に応じて導入する遺伝子のヌクレオチド配列を選択することも好ましい。なお、本明細書において癌の「治療」とは、癌の進行を抑制すること、癌を縮小させること、癌を消失させる等の癌の処置だけでなく、癌の再発を防止することも含む。
【0036】
導入すべき遺伝子の調製方法、ならびに末梢血リンパ球への遺伝子導入方法は当業者に公知である。例えば、導入すべき遺伝子を適当なベクターに組み込んで適当な細胞に導入してもよく、あるいは遺伝子銃やエレクトロポレーションなどによって適当な細胞に導入してもよい。その他の遺伝子導入条件や細胞の培養条件などは当業者が適宜選択しうるものである。
【0037】
上記のように遺伝子を導入されたリンパ球を体外で培養して大量のWT1特異的CTLを得ることができる。そして、得られたWT1特異的CTLを癌患者に導入することにより、WT1を発現している癌を傷害させることができ、癌治療を行うことができる。このような癌治療を行う場合には、治療すべき癌患者から得られた末梢血リンパ球に上記にように遺伝子を導入し、得られたWT1特異的CTLを同一の癌患者に導入することが好ましい。
【0038】
上記の癌治療は、抗ガン剤や放射線療法などの他の癌治療と併用することもできる。上記癌治療は広範な癌に適用することができ、それらは上で例示してあるが、これらに限らない。
【0039】
本発明は、さらにもう1つの態様において、CDR3ペプチドに対する抗体ならびにその使用方法を提供する。かかる抗体の作成方法は当業者に公知である。かかる抗体を用いて、例えば、対象試料中の本発明のCDR3ペプチドのアミノ酸配列あるいはそれを有するアミノ酸配列をVβ鎖中に有するリンパ球を検出あるいは同定することができる。例えば、配列番号:757〜1512のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドに対する抗体を用いて、癌特異的なリンパ球を検出または同定することができる。またこれらの抗体を用いて、上記の本発明の方法、例えば癌の診断などを行うことができる。
【0040】
また、かかる抗体を、それに対する本発明のCDR3アミノ酸配列を有するリンパ球と接触させて、活性化することもできる。このようにして活性化されたリンパ球を癌の治療に使用することができる。好ましくは、癌患者から得たリンパ球を活性化して、必要ならば増殖させて、当該患者に戻すことにより癌治療を行うことができる。また、かかる抗体を用いて、目的とするWT1特異的T細胞を豊富化させることもできる。例えば、かかる抗体を用いて癌患者においてWT1特異的T細胞を豊富化させ、癌治療に資することができる。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、上で説明した本発明の末梢血リンパ球に検出可能な標識を付して患者に投与し、次いで、標識の存在位置および量を調べることを特徴とする、固形癌の位置および大きさの特定方法を提供する。標識はテクネシウム99のごとき放射性標識、蛍光標識など公知のものを用いることができる。細胞の標識化方法も公知である。標識の検出およびシグナルの定量もまた当業者に公知であり、放射線カウンター、蛍光測定、あるいは生検による組織の採取などにより行うことができる。
【0042】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0043】
A.実験方法および使用材料
(1)細胞試料
5人の健常人ボランティア(HD1〜HD5)ならびに6人のHLA−A0201陽性固形癌患者(PT1〜PT6)から末梢血試料を得た。健常人および癌患者のHLA−アレルは、HD1:0201/2402、HD2:0201/0206、HD3:0201/2602、HD4:0201/3303、HD5:0201/2402、PT1:0201/2402、PT2:0201/2402、PT3:0201/2402、PT4:0201/2402、PT5:0201/2402、PT6:0201/2402であった。得られた末梢血試料をFicoll-Hypaque(Pharmacia, Uppsala, Sweden)を用いる密度勾配遠心分離に供して末梢血単核細胞(PBMCs)を分離し、使用するまで−170℃にて冷凍した。
【0044】
(2)フローサイトメトリー分析およびソーティング
先ず、1試料あたり2x10個のPBMCsを、FACSバッファー(2%ウシ胎児血清含有PBS)中にて37℃で30分、PE抱合HLA−A0201−WT1 126−134テトラマー(MBL, Tokyo, Japan)にて染色した。次いで、下記の5色の蛍光標識モノクローナル抗体にて、暗所かつ氷上で25分染色した:FITC−標識抗−CD4、CD14、CD16、CD19およびCD56、抗−CD3−PerCP、抗−CD8−APC−Cy7(BD Bioscience, San Jose, CA)、抗−CD45RA−APCおよび抗−CCR7−PE−Cy7(BD Pharmingen, San Diego, CA)。染色された細胞をFACSバッファーにて2回洗浄した。FACSAria装置(BD Biosciences)を用いてソーティングを行い、FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)にてデータ解析を行って、CD4CD14CD16CD19CD56細胞フラクション中の単一のHLA−A0201−WT1126−134テトラマーCD3CD8細胞を得て、WT1−Tet細胞と定義した。
【0045】
(3)ソーティングされた単一細胞からのTCR−β鎖のcDNAの合成
上記のごとく得られた単一WT1−Tet細胞を反応ミックスを入れたPCRチューブに直接ソーティングし(反応体積20μl)、50℃で90分インキュベーションしてcDNA合成を行い、次いで、反応を停止させるために95℃で5分インキュベーションした。RT反応液組成を表1に示す。
【表1】
【0046】
(4)PCR反応
上記手順により得た10μlの合成cDNA生成物を、40μlの反応ミックス中に添加し、1st PCR反応を行った。PCR手順は以下のとおりであった:プレ−PCR加熱工程を95℃で9分、次いで、95℃で45秒の変性工程、57℃で45秒のアニーリング工程および72℃で50秒の伸長工程からなるサイクルを40サイクル。1st PCR反応液組成を表2に示す。
【表2】
Vb PCR−1ミックスは、S1ミックス、S2ミックスおよびS7ミックスを含んでいた。
Vb PCR−2ミックスは、S3ミックス、S4ミックスおよびS8ミックスを含んでいた。
Vb PCR−3ミックスは、S5ミックスおよびS6ミックスを含んでいた。
【0047】
次いで、上記PCRの生成物を2nd PCR(スクリーニングPCR)に供した。上記PCR生成物を各々8本の別個のチューブに入れ、各チューブに反応ミックスを入れた。PCR手順は以下のとおりであった:プレ−PCR加熱工程を95℃で9分、次いで、94℃で45秒の変性工程、57℃で45秒のアニーリング工程および72℃で40秒の伸長工程からなるサイクルを35サイクル。2nd PCR反応液組成を表3に示す。
【表3】
** 8本のチューブのそれぞれに、S1ミックスプライマー〜S8ミックスプライマーのぞれぞれを入れた。
【0048】
各Sミックスプライマーは表4に示すプライマーを含んでいた。
【表4】

表中<>はその中から1つの塩基を選択することを意味する。例えば....<ct>....と標記した場合は、....c....および....t....の2種の配列があることを意味する。
【0049】
8つのスクリーニングPCRにおける陽性反応を確認するために、5μlの各スクリーニングPCR生成物を2%アガロースゲル電気泳動に供した。次いで、さらなるPCRを行った。このPCRは、陽性と確認されたSミックスプライマーセットのVβ特異的フォワードプライマーをそれぞれ用いて上記のごとく得られた試料を鋳型として、3rd PCR反応を行った。PCR手順は以下のとおりであった:プレ−PCR加熱工程を95℃で9分、次いで、94℃で45秒の変性工程、57℃で45秒のアニーリング工程および72℃で40秒の伸長工程からなるサイクルを35サイクル。2nd PCR反応液組成を表5に示す。反応生成物を2%アガロースゲル電気泳動にかけ、陽性反応を確認した。陰性対照として、細胞を含まない系を用いて同じ手順で実験を行った。
【表5】
*** 例えば、上記S1ミックスプライマーを用いた系で陽性反応が確認された場合にはS1ミックスプライマーの構成成分であるVb1/5、Vb11およびVb12をそれぞれ用いて3rd PCR反応を行った。
【0050】
(5)TCR−β相補性決定領域3(CDR3)の配列決定分析
3rd PCT生成物を2%アガロースゲル電気泳動にかけ、陽性反応を確認した。増幅されたTCR−β遺伝子フラグメントを、QIAquick PCR Purification kit(Qiagen, Valencia, CA)により精製した。対応するVbプライマーを用いて配列決定を行った。配列決定にはABI PRIAM BigDye Terminator v 3.1 Cycle Sequencing kit(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用い、ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)にて分析を行った。IMGTヒトTCR遺伝子データベースのサイト
(http://imgt.cines.fr/IMGT_vquest/vquest?livret=0&Option=humanTcRfor)と比較することによりCDR3の配列データを分析した。
【0051】
B.結果
本発明において、HLA−A0201の5人の健常人(HD1〜HD5)および6人の癌患者(PT1〜PT6)の末梢血単核球中の636種のTCRβ鎖遺伝子の塩基配列を決定し、それらがコードするアミノ酸配列も決定することができた。健常人(HD1〜HD5)および癌患者(PT1〜PT6)由来のWT1特異的CTLのVβ鎖遺伝子の配列、J領域の配列、D領域の配列、N領域の配列、CDR3ヌクレオチド配列およびCDR3アミノ酸配列を図1−1〜図1−9に示す。各人のWT1特異的CTLのクロナリティーを図2−1〜図2−13に示す。また、CDR3ヌクレオチド配列を配列番号:1〜636に示し、CDR3アミノ酸配列を配列番号:757〜1392に示した。
【0052】
さらに、HLA−A0201陽性である1人の甲状腺癌患者(PT7)および1人の健常人(HD6)の末梢血試料から上記と同じ手順にてCDR3ヌクレオチド配列およびCDR3アミノ酸配列を決定した。PT7およびHD6から得られたCDR3ヌクレオチド配列を配列番号:637〜756に、アミノ酸配列を1393〜1512に示す。
【0053】
図2−1〜図2−13からわかるように、健常人(HD1〜HD5)では、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーはほとんどのクローンに関して1、希に2または3、ごく希に4(1種類だけ)であるものが見られるのに対し、治療前におけるすべての癌患者(AMLおよびMDS)においては、いずれかのCDR3ポリヌクレオチドまたはいずれかのCDR3ペプチドを有するWT1特異的CTLのクロナリティーが複数のものが必ず存在しており、そのクロナリティー数およびそのような細胞の種類も健常人よりも多い傾向が見られた。具体的には、PT1:4種(これらのクロナリティー合計30)、PT2:10種(これらのクロナリティー合計38)、PT3:8種(これらのクロナリティー合計26)、PT4:4種(これらのクロナリティー合計9)。PT5:9種(これらのクロナリティー合計20)、PT6:5種(これらのクロナリティー合計13種)。一方、健常人HD1〜HD5では、各人におけるクロナリティーが複数であるクローンの種類は1〜5種であり、クロナリティー合計は2〜10であった。
【0054】
以上において、HLA−AアリルがA*0201である場合について本発明を説明したが、本発明はHLA-AアリルがA*0206である場合にも適用可能な場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、有用な抗癌治療用医薬、癌検査用キットまたは試薬、癌の研究試薬等が提供される。したがって、本発明は、癌の治療のための医薬品の分野、癌の検査用キットおよび試薬の分野、ならびに癌研究の分野などにおいて利用されうる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図2-10】
図2-11】
図2-12】
図2-13】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]