(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ニトロソ基を含む化合物とニコチンとを含む材料から前記ニトロソ基を含む化合物を選択的に取り除くビーズであって、前記ビーズは懸濁重合生成物であり、前記ビーズは、一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤との吸着性非分子鋳型重合体であり、前記単量体は1つの炭素−炭素2重結合の不飽和による1つの重合可能官能基を有し、前記架橋剤は2以上の炭素−炭素2重結合の不飽和による複数の重合可能官能基を有し、ビーズは、塊になっていない平均径10〜1000μmの明確に規定された球形のビーズであり、直径が10μm未満の微粒子を10体積%未満含む、ビーズ。
前記重合体はメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸3−ヒドロキシプロピルと二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)との共重合体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のビーズ。
下記に掲げる少なくとも1種のニトロソ基を含む化合物とニコチンとを含む材料から前記少なくとも1種のニトロソ基を含む化合物を選択的に取り除くことを特徴とする請求項11乃至19のいずれか1項に記載のビーズ。
4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(「NNK」)
4−(メチルニトロソアミノ)−4−(3−ピリジル)ブタナール(「NNA」)
N−ニトロソノルニコチン(「NNN」)
N−ニトロソアナバシン(「NAB」)
N−ニトロソアナタビン(「NAT」)
4−(メチルニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノール(「NNAL」)
4−(メチルニトロソアミノ)−4−(3−ピリジル)−1−ブタノール(「イソNNAL」)
4−(メチルニトロソアミノ)−4−(3−ピリジル)ブタン酸(「イソNNAC」)
前記細孔形成剤はトルエンであり、前記立体安定剤であるポリビニルアルコールの量は単量体および架橋剤の重量に対して2.5〜4.5重量%であり、開始剤の量は単量体および架橋剤の重量に対して1.75〜10重量%であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
前記開始剤は、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)から成る群より選ばれることを特徴とする請求項23に記載の方法。
ニトロソ基を含む化合物を含む材料からこの化合物を取り除く方法であって、前記材料を請求項1乃至20のいずれか1項に記載のビーズと接触させることを含む方法。
前記材料が、タバコ、タバコ誘導体、タバコを抽出液で処理して得られる抽出物、タバコ熱分解物、タバコ燃焼物、タバコ代用品、タバコ含有材料、生体液から成る群より選ばれることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
重合体
用語「非酸性の」は中性、アルカリ性、及び塩基性化合物を含む。重合体の単量体前駆体は非酸性である。前駆体はアルカリ性または塩基性であってもよいが、塩基性の親水性重合体を使用すると製造、特に重合体ビーズの形成が困難になることがある。したがってNIPの単量体前駆体は、好ましくは中性である。化合物は、正味荷電なしに存在し、かつプロトンを授受できなければ、通常は中性とみなされる。そうでなければpH7あるいはpH7の領域(例えば6.5〜7.5)である。
【0024】
NIPの化学構造は、次の点ですべての架橋された重合体の化学構造と同様である。すなわち、NIPは原子や比較的低分子量の部位を含む複数の同じ基から構成され、それらの基が分子網目状に結合してより大きい高分子量の分子を形成している。構造の各部位は、通常重合体の調製に用いられる材料に相当するが、主に単量体の内部結合が再配置されて重合体の部位同士を結合しているという点で通常の材料とは異なる。NIPは、少なくとも2種類の部位を含む。これら部位は、構造中の一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤とに相当する。
【0025】
NIPは単量体と、その単量体と重合可能な架橋剤とを含む前駆体の非分子鋳型重合体とみなすことができるが、NIPを構成する部位に相当する、あるいは同じまたは類似する構造を有し、共重合することができる単量体を参照した本明細書のNIPのいずれの記述も、NIPの製造または調製に任意の特定の方法やプロセスを用いた、あるいは用いなければならないことを暗示していると解釈されるべきではない。
【0026】
NIPの2種類の部位は、任意の反応機構で共重合することができる単量体と架橋剤に相当してもよい。この共重合は、不飽和化合物の重合で起こる遊離ラジカル重合や、ポリエステルやポリアミドの形成で起こる縮合重合を含む。単量体は、通常、重合可能な単一の官能基を含み、架橋剤は、通常、重合可能な複数の官能基を含む。
【0027】
単量体及び架橋剤が不飽和である場合、単量体は単不飽和または多不飽和であってもよく、通常、炭素−炭素二重結合が1つの不飽和である。架橋剤は多不飽和(例えば、二重結合が2つ、3つ、4つ、5つあるいはそれ以上の不飽和)であってもよく、通常、炭素−炭素二重結合が2つ以上の不飽和である。
【0028】
単量体及び架橋剤の不飽和はそれぞれ、アルケニル官能基またはアクリル官能基の形で別々に存在していてもよい。アルケニル官能基の例としては、炭素数が1〜10または1〜6のアルケニル基、特にビニル基、ビニリデン基、アリル基、及びイソプロペニル基がある。アクリル官能基の例としては、アクリラート基、メタクリラート基、エタクリラート基など、非アルキル化されたアクリロイル基及びアルキル化されたアクリロイル基がある。例えば、単量体がモノアルケニルであり、架橋剤がジアルケニル、トリアルケニル、またはポリアルケニルであってもよい。
【0029】
NIPの親水性及び疎水性は、その前駆体のいずれか、すなわち架橋剤または単量体のいずれかによって付与することができる。例えば、NIPは非酸性の親水性単量体と疎水性架橋剤との重合体であってもよい。あるいは、NIPは非酸性の疎水性単量体と親水性架橋剤との重合体であってもよい。
【0030】
化合物(例えばNIP、単量体、または架橋剤)の疎水性及び親水性は、化合物の分子構造の極性を反映している。この極性は、分子中の隣り合う原子または基の間の不均一な電子分布に由来している。ある原子が他の原子より大きい電気陰性度を有する場合、その原子は結合中でその隣の原子よりも多くの共有電子を引き寄せ、電気双極子を生じる。例
えば炭素原子がハロゲン、酸素、または窒素原子に結合している場合、炭素原子の共有電子は少なくなり、部分的に正の電荷を帯びる。隣接する電子は部分的に負の電荷を帯びる。分子内に生じる双極子は、他の分子との相互作用に影響を及ぼす。例えば、水分子(H
2O)の極性により、極性分子は一般に水に溶解することができ、したがって通常は非極性分子よりも親水性が高い。
【0031】
単量体は、疎水性、親水性のいずれであってもよく、架橋剤の親水性または疎水性によって選択される。
【0032】
いくつかの態様では、重合体中の前記架橋剤の部位は前記単量体の部位に対して過剰モルで存在する。よって、架橋剤部位と非酸性の単量体のモル比は、3:1〜10:1、さらなる態様では4:1〜6:1であってもよい。
【0033】
極性官能基(ヒドロキシ基、アミド基、イミド基、アミノ基、ハロ基、ヒドロキシアルキル基、ハロアルキル基、例えばC
1−C
6ヒドロキシアルキル基、エーテル基、エステル基など)を有する単量体は、疎水性架橋剤との組み合わせに特に有用であることができる。単量体は例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリル化合物を含んでいてもよい。単量体はまた、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、一アクリル酸グリセリン、一メタクリル酸グリセリンなど、多価アルコールの部分アクリルエステルから、あるいは2−(4−ビニルフェニル)−1,3−プロパンジオールなどの極性官能基を有するアルケニル化合物から選択してもよい。上記単量体の任意の混合物も有用であることができる。
【0034】
親水性架橋剤との組み合わせにおいて、スチレンなどの非酸性の疎水性単量体が有用であることができる。アクリル酸2−エチルヘキシル(「EHA」)、アクリル酸ブチルメチル(「BMA」)、ビニルピリジン、メタクリル酸メチルなど、極性官能基を有する疎水性単量体が有用であることができる。
【0035】
このように、一態様では、非酸性の単量体はメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、一アクリル酸グリセリン、一メタクリル酸グリセリン、2−(4−ビニルフェニル)−1,3−プロパンジオール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEAEM)、及びこれらの混合物から選択することができ、架橋剤は疎水性であることができる。この場合、架橋剤は、二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)、三メタクリル酸トリメチロールプロパン(「TRIM」)、二メタクリル酸テトラメチレングリコール、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ブチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、及びこれらの混合物から選択することができる。さらなる態様では、単量体は、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、2−ビニルピリジン、ビニルトルエン、アクリル酸エチルヘキシル(EHA)、アクリル酸ブチルメチル(BMA)、メタクリル酸メチル、及びこれらの混合物から選択することができ、架橋剤は親水性であってもよい。後者の場合、架橋剤は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、二メタクリル酸ジエチレングリコール(「DEDMA」)、四アクリル酸ペンタエリトリトール、二メタクリル酸トリエチレングリコール、二メタクリル酸テトラエチレングリコール、二メタクリル酸ポリエチレングリコール、三アクリル酸ペンタエリトリトール(PETRA)、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0036】
いくつかの態様では、重合体は、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)と疎水性架橋剤との共重合体であり、例えばメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)と二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)との共重合体である。また、メタクリ
ル酸2−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸3−ヒドロキシプロピル(HPMA)と疎水性架橋剤との共重合体、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸3−ヒドロキシプロピル(HPMA)と二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)との共重合体であってもよい。
【0037】
一態様では、単量体はHEMA以外の非酸性の単量体である。
【0038】
他の態様では、単量体は、HEMAと、少なくとも1つの他の重合性単量体(例えば上記の単量体のいずれか)との組み合わせを含む。
【0039】
架橋剤は単量体であってもよく、重合体であってもよい。架橋剤は疎水性であってもよく、親水性であってもよく、単量体の親水性または疎水性により選択される。好ましくは、架橋剤は少なくとも何らかの極性官能基を有する。1分子につき少なくとも1つの極性官能基(ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、イミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシアルキル基、ハロアルキル基、例えばC
1−C
6ヒドロキシルアルキル基、ハロアルキル基など)を含む架橋剤が有用であることができる。例えば、架橋剤はアクリルエステルなどのアクリル化合物、特に多価アルコールのポリアクリルエステル(EDMA、三メタクリル酸トリメチロールプロパン(「TRIM」)、二メタクリル酸テトラメチレングリコール、二メタクリル酸ジエチレングリコール(「DEDMA」)、四アクリル酸ペンタエリトリトール)であってもよい。N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ブチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミドなどのアクリルアミドが有用であることができる。上記の架橋剤は、1分子ごとの極性官能基の数と種類により、例えばEDMAやTRIMなど中程度の疎水性のものから、DEDMAなどの親水性のものまである。使用可能な他の親水性架橋剤としては、二メタクリル酸トリエチレングリコール、二メタクリル酸テトラエチレングリコール、二メタクリル酸ポリエチレングリコール、三アクリル酸ペンタエリトリトール(PETRA)などが挙げられる。上記の架橋剤の混合物もまた用いることができる。
【0040】
一態様では、架橋剤はEDMA以外の化合物である。
【0041】
他の態様では、架橋剤は、EDMAと少なくとも1つの他の架橋剤(上記の架橋剤など)との組み合わせを含む。
【0042】
中性のメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)と二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)との非分子鋳型共重合体は特に興味深い。興味深い他のNIPとしては以下のようなものが挙げられる。
(i)HEMAと、TRIM、二メタクリル酸テトラメチレングリコール、四アクリル酸ペンタエリトリトール、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ブチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、及びDEDMAから選択する架橋剤との非分子鋳型重合体、及び
(ii)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、一アクリル酸グリセリン、一メタクリル酸グリセリン、2−(4−ビニルフェニル)−1,3−プロパンジオール、メタクリル酸メチル(「MMA」)、N−ビニルピロリドン(「NVP」)、メタクリル酸ジエチルアミノエチル(「DEAEM」)、スチレン、アクリル酸エチルヘキシル(「EHA」)、メタクリル酸ブチル(「BMA」)、及びビニルピリジンから選択された単量体と、EDMA、TRIM、二メタクリル酸テトラメチレングリコール、四アクリル酸ペンタエリトリトール、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ブチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレン−ビスアクリルアミド、DEDMA、二メタクリル酸トリエチレングリコー
ル、二メタクリル酸テトラエチレングリコール、二メタクリル酸ポリエチレングリコール、及び三アクリル酸ペンタエリトリトール(PETRA)から選択された架橋剤との非分子鋳型重合体。
【0043】
NIPは、顆粒、粉末、ビーズ、モノリス、成形品、繊維、紙、布など、NIPを使用するのに好適な任意の固体形状であることができる。
【0044】
ビーズ
一態様では、本発明は、一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤との重合体のビーズを提供する。
【0045】
重合体の製造において重合可能な単量体と架橋剤とを使用すると、分岐状で相互に結合した分子鎖の網目形状の分子構造を有する重合体を得ることができることが多い。このような分子網目により、比較的膨潤能の低い重合体の最終品が得られる。重合体の膨潤能は、その重合体が吸収することができる液体材料の量を測定したもので、通常重量%で表される。重合体を分析または抽出目的で用いる場合、低い膨潤能(例えば100%未満)が望ましい。
【0046】
物質を選択的に分離しようとするのに用いる場合、重合体は多孔質の固体材料、例えば多孔質の顆粒またはビーズの形態であることが好ましい。
【0047】
材料の孔隙率は、B.E.T.表面積が、上限が例えば1200、1000、800、600、500、または400m
2/gで下限が例えば100、200、300、400、500、または600m
2/gの範囲のいずれかの値を有するような孔隙率であることができる。この表面積は、例えば、200〜1000、300〜800、300〜600、または200〜500m
2/gのいずれかの範囲であればよい。いくつかの態様においては、B.E.T.表面積が20〜500m
2/g、例えば50〜500m
2/gであり、かつ/または孔体積が0.2〜1.5ml/g、例えば0.5〜1.5ml/gである。平均孔径は、30〜300Å、例えば0〜200Åであることができる。
【0048】
単量体、架橋剤、及び重合条件(例えば溶媒または細孔形成剤、開始剤、温度など)は、NIPの物性及び化学特性に影響を及ぼすことがある。よって、疎水性前駆体が重合体の塊を形成する場合、通常、この重合体も疎水性となる。いかなる論理によって限定されることを望むものではないが、親水性前駆体と疎水性前駆体との組み合わせを用いると、一方の前駆体の親水性と他方の前駆体の疎水性とがバランスを取るように作用させることができる。このことが、重合体によるニトロソ化合物の吸着ならびに、ニコチンよりもニトロソ化合物に対する重合体の選択性に影響を及ぼす。NIPの選択性もまた、単量体や架橋剤の極性官能基の存在によって影響を受けることがある。典型的な極性官能基としては、ヒドロキシル基、エステル基、カルボキシル基、アミド基、イミド基、エーテル基などが挙げられる。
【0049】
疎水性前駆体の極性基が前駆体の疎水性を抑制しないのであれば、単量体、架橋剤の両方に1つ以上の極性官能基が存在することが望ましいことがある。
【0050】
好適な反応条件で機能的単量体(または複数の単量体)と架橋剤(または複数の架橋剤)とをブロック重合、乳化重合、あるいは懸濁重合などにより、共重合することにより、NIPを調製することができる。重合は、熱的、光化学的(例えばUV光により)、あるいは使用する材料及び工程に適切な任意の方法で開始することができる。
【0051】
ブロック重合を用いる場合、得られた固体材料は典型的には破砕し、分級して所望のサ
イズの粒子材料分を得る。懸濁重合または乳化重合のいずれかの方法で調製する場合、破砕及び分級は必要ない。なぜなら粒径を重合プロセス中に所望の範囲内に調整することができるからである。
【0052】
乳化重合は通常、界面活性剤、遊離基開始剤、乳化剤、安定剤を含む水溶液に単量体を分散させることにより行われる。通常、体積平均直径が1μm未満の重合体粒子またはビーズが得られる。
【0053】
懸濁重合は重合体ビーズの形成に寄与し、例えば、単量体と架橋剤を含む反応混合物の水性懸濁液を用いて行うことができる。重合反応を行っている間、この懸濁液を撹拌して、反応混合物の懸濁滴が凝集するのを防ぐことができる。得られた重合体の球またはビーズは、通常、乳化重合によって形成されたものよりも大きく、典型的には体積平均直径が10μmより大きい。
【0054】
前駆体を重合した後、重合生成物を通常、例えば濾過などにより反応混合物から分離し、洗浄して未反応の単量体や反応混合物に存在する、あるいは反応プロセス中に生成された他の材料(細孔形成剤など)から重合体を分離する。洗浄は、水や有機溶媒、あるいはそれらの混合物を用いて行うことができる。分離された重合体を乾燥することができる。
【0055】
重合反応を行う条件の多くの変数もまた、得られる重合体の物性及び化学特性に影響を及ぼすことがある。これらの変数は、安定剤の量及び種類、用いる開始剤の量、反応混合物の固体含有量、細孔形成剤の存在、用いる単量体及び架橋剤の相対的量、反応混合物の撹拌度合いなどを含む。
【0056】
反応条件はビーズの品質に大きく影響を及ぼす可能性がある。本発明者らは、親水性前駆体及び疎水性前駆体の重合に関与する反応系において、安定剤が存在すると重合体の明確に規定された個別のビーズを形成するのに有利であり、粒子の塊すなわち凝集体の形成や微粒子の形成を低減することができることを見出した。
【0057】
したがって、さらなる態様によれば、重合体を調製する方法は、一方が親水性で他方が疎水性の極性基を有する非酸性の単量体と架橋剤とを含む重合体の前駆体を重合することを含み、重合は安定剤の存在下で行われる。
【0058】
例えば、ポリビニルアルコール、酸化ポリエチレン及び/または酸化ポリプロピレンのブロック共重合物や、変性セルロース(例えばヒドロキシエチルセルロース)などの立体安定剤が好ましい。そのような安定剤は、長分子鎖によって特徴づけられる。長分子鎖は、安定剤を含む水性媒中で懸濁している反応混合物の液滴表面を覆うように展延して、液滴が合体して大きくなる速度を低減することができる。液滴が大きくなると反応で生成される重合体の物理的形状に影響を及ぼす。
【0059】
本発明者らはまた、安定剤の存在下で重合体を形成すると、重合体の表面化学に影響を及ぼす可能性があることを見出した。例えば、NIPの調製にポリビニルアルコール安定剤を用いると、ニコチンよりもTSNAに対するNIPの選択性によい影響を及ぼすことができることを見出した。
【0060】
重合は、安定剤を含む水性媒中で単量体と架橋剤とを含む反応混合物の懸濁液を用いて行うことができる。
【0061】
例えば安定剤を少なくとも0.1重量%、0.5重量%、または1重量%、通常少なくとも1.75重量%、または少なくとも2重量%含む安定剤の水溶液を用いることができ
る。安定剤の濃度が高いと溶液の粘度が高くなり、処理がしにくくなる。安定剤は、水溶液の10重量%を超える必要はない。6重量%以下の安定剤を含む溶液など、通常それよりも低い濃度で用いられる。例えば安定化剤は、2.5〜6重量%、例えば2.5〜4.5重量%の量で存在することができる。
【0062】
ポリビニルアルコール(「PVOH」)は安定剤として用いるのに便利である。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの加水分解により商業的に製造されており、様々な粘度の溶液として入手可能である。この粘度の値は、重合体の分子量及び加水分解度(ポリビニルアルコールに変換されたポリ酢酸ビニルの百分率を反映する)により変化する。加水分解度が85〜90%の高分子量ポリビニルアルコールでは、典型的には分子量が85,000〜124,000の範囲であり、20℃の4重量%水溶液で測定した粘度が23〜27cpsの範囲である。低分子量ポリビニルアルコールでは、典型的には分子量が13,000〜23,000の範囲であり、(同じ条件で測定した)粘度が3.5〜4.5cpsの範囲である。適切なポリビニルアルコールの組成物としては、セラニーズコーポレーションから入手可能な商標CELVOL523など、部分的に(例えば80〜90%)加水分解されたポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0063】
重合体粒子の表面積を増加させるため、孔形成溶媒すなわち細孔形成剤の存在下で重合を行うことができる。細孔形成剤は、しばしば、例えばトルエン、クロロホルム、アセトニトリル、またはこれらの混合物(例えばアセトニトリル及びトルエンの1:1混合物(体積比))など、低極性から中程度の極性の非プロトン性溶媒から選択する。特に反応をポリビニルアルコールの存在下で行う場合、トルエンは特に有効な細孔形成剤である。
【0064】
典型的には、細孔形成剤は単量体及び架橋剤の量の少なくとも0.5ml/g存在する。例えば2ml/gまでなど、細孔形成剤の量が多いと、NIPのTSNAに対する選択性、特にニコチンよりもNNNに対する選択性を向上させることができる。通常、細孔形成剤は単量体及び架橋剤の量の約1.5ml/g存在する。重合で用いる単量体及び架橋剤の相対的な割合は、用いる特定の物質、これらの相対的分子量、及び重合体に求められる架橋の程度に依存する。NIPの調製では、単量体に対して過剰モルの架橋剤を用いることができる。典型的には、架橋剤の単量体に対するモル比は、1:1より大きく、例えば10:1、12:1、あるいは15:1までである。通常、架橋剤の単量体に対するモル比は、3:1〜10:1の範囲であることができる。架橋剤の単量体に対するモル比が高いほど、NIPのTSNAに対する選択性、特にニコチンよりもNNNに対する選択性を向上させることができる。典型的には、単量体及び架橋剤は、単量体1モルにつき、架橋剤が4、5、または6モルの量で重合される。これらの重量比は、特に単量体がHEMAであり、架橋剤がEDMAである場合に適切である。
【0065】
重合プロセスを液相中で行う場合、反応混合物をかき回すなどして撹拌することができる。懸濁重合では、反応混合物を撹拌する激しさが得られる重合体の粒径に影響を及ぼす可能性があり、撹拌が激しいとより小さい粒子が得られる。
【0066】
重合体をビーズ形状にする場合、ビーズの大きさは、典型的には10〜1000ミクロンの範囲である。重合で作製されたビーズを分級する、あるいは選別して所望の範囲の粒径を有する製品を得ることができる。
【0067】
本発明は具体的には、一方が親水性で他方が疎水性の非酸性の単量体と、少なくとも部分的に極性である架橋剤との非分子鋳型重合体を含み、この重合体はビーズ形状である。
【0068】
本発明はまた、具体的には、重合体ビーズを作製する方法を含み、この方法は、立体安定剤及び細孔形成剤の存在下で水性媒中、単量体と架橋剤とを懸濁重合することと、重合
生成物を反応混合物から分離することとを含む。
【0069】
単量体と架橋剤の反応混合物の相比は、懸濁液中の固体の重量%で表され、典型的には25重量%以下、しばしば20重量%または15重量%以下である。通常、固体の含有量は、少なくとも5重量%または少なくとも10重量%である。例えば、固体の含有量は5〜25重量%の範囲である、あるいは約10重量%、15重量%、または20重量%である。
【0070】
重合は開始剤の存在下で行うことができる。例えば、過酸化ラウロイルや過酸化ベンゾイルなど過酸化物遊離基開始剤を用いてもよく、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(「AIBN」)や2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(「AMBN」)などアゾ遊離基開始剤を用いてもよい。典型的には、開始剤は、単量体及び架橋剤の量の少なくとも0.1重量%存在し、通常少なくとも0.5重量%または1重量%以上、例えば少なくとも2重量%または3重量%である。開始剤は、単量体及び架橋剤の量の5重量%、6重量%、または10重量%まで存在してもよく、例えば0.5〜6重量%の範囲である。開始剤の量は、懸濁重合で得られる重合体の粒径に小さいが有意な効果をもたらすことができ、高レベルの開始剤は大きい粒子を形成する。
【0071】
本明細書で開示する重合体の調製方法は、NIP及びMIPの両方の調製に用いることができる。NIPの調製では、鋳型分子は存在しない。したがって得られた重合体は鋳型分子重合体ではない。MIPの調製では、重合反応において分子鋳型材料が存在する。ニトロソ化合物に対して選択性を有するMIPの調製に好適な鋳型分子の例は、国際公開第2005/112670号及び国際公開第2008/068153号に記載されている。
【0072】
したがって、本発明の一態様は、一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤の選択的吸着性重合体の分子鋳型多孔質ビーズであり、このビーズはさらに残留ポリビニルアルコールを含む。
【0073】
本発明の他の態様は、分子鋳型重合体ビーズを調製する方法であって、TSNAの構造類似体及びポリビニルアルコールの存在下、一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤を懸濁重合して、TSNAの構造類似体に結合した分子鋳型重合体を調製して残留ポリビニルアルコールを取り込むことと、TSNAの構造類似体をビーズから取り除くこととを含む方法を提供する。
【0074】
分子鋳型法は、典型的には次の工程からなる。(1)テンプレート化合物(目的分子またはその構造類似体であってもよい)を選択した機能性単量体(または複数の単量体)と溶液中で相互作用させてテンプレート単量体錯体を形成する。(2)そのテンプレート単量体錯体を架橋単量体と共重合して、テンプレート化合物を組み込んだ重合体マトリックスを得る。(3)そのテンプレート化合物を重合体マトリックスから抽出して、目的分子と選択的に結合するのに用いることができるMIPを形成する。テンプレート化合物を取り除くことによって露出される分子鋳型重合体の反応部位は、目的分子の新しい分子と反応するのに適した立体化学構造を有する。その結果、分子鋳型重合体は目的分子と選択的に結合するのに用いることができる。
【0075】
分子鋳型結合部位を生成するのに「非共有」法が広く用いられてきた。これはテンプレート化合物及び機能性単量体の非共有性自己集合体を利用して、テンプレート単量体錯体を形成し、架橋単量体の存在下で遊離ラジカル重合を行い、最後にテンプレート化合物を抽出するものである。重合の前に鋳型分子と好適な単量体(または複数の単量体)とを共有結合で結合させる、共有鋳型法もまた周知の方法により行うことができる。これらの方法のいずれかで形成したMIPの結合性は、鋳型分子と再結合させることにより調べるこ
とができる。
【0076】
重合は、孔形成溶媒、すなわち細孔形成剤の存在下で行う。機能性単量体・テンプレート化合物間の静電相互作用を安定化させるため、極性が低いものから中程度の非プロトン性溶媒の中から細孔形成剤を選択することが多い。テンプレート化合物は、重合媒に中程度から高い溶解性を示すものが多く、したがって、これらまたはその構造類似体をこの標準的手順に直接用いることができる。目的分子自体をテンプレートとして用いることができるが、以下の理由で目的分子の構造類似体が一般には好ましい。(a)目的分子は重合条件化で不安定である、または重合を阻害することがある。(b)目的分子は、その合成の複雑さまたはコスト、あるいはその両方からから十分な量入手できないことがある。(c)テンプレートは、重合前混合物に不溶性または難溶性であることがある。(d)MIPは、重合体マトリックスの近づきにくい領域に保持された低レベルの目的分子によって汚染されたままであることがある。および/または(e)標的分析物が有意な健康危険性を示し、テンプレートとして用いるべきではないことがある。ニトロソ化合物、特に以下で述べるTSNAとして知られている化合物の場合、その機能類似体をテンプレート化合物として用いることが簡便であることが多い。例えば、スルホンアミド、エナミン、またはアミド(例えばホルムアミド)、TSNAの誘導体がテンプレート化合物であることができる。
【0077】
目的化合物の機能類似体を用いてMIPを誘導する場合、機能類似体は目的化合物と等比体積でなければならず、かつ好ましくは等電子数である、または強い相互作用があるような目的化合物の下位構造を含んでいてもよい。
【0078】
本明細書を通して分子の「構造類似体」は、元の分子と同じではないが、分子の形状、電子分布、または他の特徴について元の分子と部分的または全体的に類似している。ニトロソ基を含む化合物、特にニトロソアミンは、式O=N−N(R
1)(R
2)を有するが、消費者に有害であるとされるタバコ及びタバコの煙の多数の成分の中に含まれる。本発明において興味深いのは、タバコに天然に生じるニトロソアミン群、すなわちTSNAである。
【0079】
ニトロソ化合物、特にTSNAとして知られている化合物の場合、その機能類似体をテンプレート化合物として用いることが簡便であることが多い。例えば、スルホンアミド、エナミン、またはアミド(例えばホルムアミド)、TSNAの誘導体がテンプレート化合物であることができる。目的化合物の機能類似体を用いてMIPを誘導する場合、機能類似体は目的化合物と等比体積でなければならず、かつ好ましくは等電子数である、または強い相互作用があるような目的化合物の下位構造を含んでいてもよい。ニトロソアミンを標的にするための可能な等比体積類似体としては以下のものがある。示す分子はすべて、親となるアミンの誘導体であり、単一の工程で、二級アミン及び対応するアルデヒドまたは酸塩化物から合成することができる。
【0080】
選択性
好ましいNIPは、ニコチンよりも少なくとも1種のニトロソ化合物に対する選択性、特に少なくとも1種のTSNAに対する選択性を示す。
【0081】
第2の物質よりも第1の物質に対する吸着剤材料の選択性は、両方の物質を含む溶液から吸着剤材料によって抽出された、第1の物質の第2の物質に対する重量%として算出することができる。例えば、吸着剤材料を、ニトロソアミン及びニコチンの混合物を含む溶液と接触させた場合、吸着剤材料の選択性は下記式により算出される。
ニコチンに対するニトロソアミン選択性={
抽出されたニトロソアミン(重量%)}/{抽出されたニコチン(重量%)}
【0082】
好ましいNIPは、ニトロソアミンなどのニトロソ化合物、特にTSNA(NNK、NNA、NNN、NAB、NAT、NNAL、イソNNAL、イソNNAなどを含む)の選択的吸着に用途を見出すことができる。NIPはまた、生体内でのニトロソ化合物の分析及び定量、特に、例えばタバコ製品の消費に関してヒトの生体液中にある化合物の定量や非タバコ製品の調製及び評価に用途を見出すことができる。
【0083】
キット
一態様は、分析、検出、定量、分離、予備抽出、クロマトグラフィー、分析試料の前処理、化学センサ、または固相フィルター抽出のためのNIPの使用、特にTSNAなどのニトロソ化合物に対して選択性を有するNIPの使用を含む。
【0084】
さらなる態様は、一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤との非分子鋳型重合体を含むキットを含み、この重合体はニコチンよりも少なくとも1種のニトロソ化合物に対する選択性を有し、この重合体は固相抽出またはクロマトグラフィーに好適なカラムに充填される。
【0085】
さらなる態様は、ニコチンよりも少なくとも1種のニトロソ化合物に対する選択性を有
する上記NIPのいずれかと、NIPを用いて試料中または試料からのニトロソアミンの分析、検出、定量、分離、抽出、低減、または除去のうち、少なくとも1つを行うための説明書とを含むキットを含む。
【0086】
このようなキットは、例えば以下のものを1つ以上含んでいてもよい。固相抽出(「SPE」)、クロマトグラフィー、または他の濾過技術のためのカラム、所定量の上記NIPのいずれかであって、濾過カラムに充填するのに好適な量に分割されたNIP、上記いずれかのNIPを所定量充填したSPE、クロマトグラフィー、または他の濾過カラム、カラムを調整するための試薬、カラムを溶出し、NIPを再生成するための試薬、及びスパチェラ、測定シリンダ、ビーカーなど、成分を取り扱うための1つ以上の道具。
【0087】
この装置は、例えば、ニトロソ化合物、及びニコチンやその代謝物質を含む他の化合物を含んでいる可能性がある生体試料など、ニトロソ化合物を含む材料の分析に用いることができる。
【0088】
用途
NIPはまた、ニコチン系消費者製品、特にニコチンを含む禁煙補助薬(チューインガム、トローチ剤、皮膚パッチ、スプレーなど)との関連で用途を見出すことができる。このようなニコチン含有製品を消費すると、体組織内でニコチンが残留している間、自然の代謝過程により生体内でニトロソアミンニコチン代謝物質を生成することができる。NIPがニトロソ化合物に対する選択性を有する場合、このNIPを用いて、例えば生体内の低レベルのニトロソ基を含むニコチン代謝物質を監視することができ、また製造中にニコチン及びニコチン酸化物のレベルを監視することができる。
【0089】
NIPはまた、例えば生物分析、食品分析、及び環境分析や、一般に製品からの成分の選択的除去などにおいて、分子の認識及び固相抽出(SPE)に用途を見出すことができる。
【0090】
NIPはまた、タバコまたはタバコの煙の成分、特にTSNAを分析、検出、定量、分離、抽出、低減、または除去するための材料、及びその方法に用途を見出すことができる。
【0091】
NIPはまた、ニトロソ化合物、特にTSNAなどの目的化合物のレベルを低減させることにより、タバコ、タバコ代用品、またはその混合物を含む材料を消費することの有害効果の低減に用途を見出すことができる。
【0092】
したがって、他の態様では、ニコチンを対象に供給する方法は、タバコの葉を生産することと、タバコの葉を一方が親水性で他方が疎水性の極性官能基を有する非酸性の単量体と架橋剤との非分子鋳型重合体(ニコチンよりもTSNAに対して選択性を有する)で処理してタバコの葉のTSNA含有量を低減させることと、処理された葉から消費可能なタバコ製品を製造することと、ニコチンを供給するためにタバコ製品を消費者に供給することとを含む。
【0093】
他の態様では、タバコ製品中の少なくとも1種のニトロソ化合物、特に少なくとも1種のTSNAのレベルを低減する方法は、ニコチンよりもニトロソ化合物に対する選択性を有する上記NIPのいずれかでタバコ製品を処理してタバコ製品中のニトロソ化合物を低減させることを含む。
【0094】
処理されたタバコ製品は、タバコ(タバコの葉や茎を含む)、タバコ代用品、タバコとタバコ代用品のブレンド、タバコの誘導体(例えば材料を溶媒と接触させて得たタバコ抽
出物、タバコを燃焼または熱分解して得た煙やエアロゾルなどを含む)を含有する材料であることができる。
【0095】
タバコまたはタバコ代用品を含む材料を熱分解してタバコ製品を得る場合、例えば従来の紙巻きタバコにおけるように材料の燃焼により分解を行うことができる。あるいは、消費者が吸引するエアロゾルを生成するためにいくつかの知られている代替えタバコ製品で用いる工程に従って材料を燃焼温度より低い温度に加熱することにより、分解を行うことができる。一方法では、材料の熱分解物をフィルターと接触させて、熱分解物から望ましくない成分を吸収する。
【0096】
他の態様では、タバコ製品は、タバコ、タバコ代用品、またはそれらの混合物を溶媒と接触させて製造する。
【0097】
他の態様では、タバコ材料を抽出液で処理して抽出物を形成し、抽出物をニトロソ化合物に対する選択性を有する上記NIPのいずれかで処理して抽出物中のニトロソ化合物のレベルを低減し、抽出物中に残留する材料をタバコ材料と一緒にする、タバコの処理方法を提供する。
【0098】
この方法では、材料は、例えば微粉、茎、小片、切断した葉身、細断した茎、あるいはこれらの組み合わせなど、いずれかの便利な形状であることができる。この方法はまた、タバコ自体及びタバコ代用品の両方に用いることができる。すなわち、天然材料、または天然タバコに類似した特徴を有し、喫煙、咀嚼、吸引などタバコと同様に消費することができる合成材料に用いることができる。
【0099】
抽出液は水などの水性溶媒または非水性溶媒であってもよく、界面活性剤、メチルアルコール、エチルアルコール、または超臨界流体抽出媒体(超臨界液体二酸化炭素など)を含んでいてもよい。抽出は、タバコから窒素含有化合物を抽出するのに好適な任意の条件で行うことができる。
【0100】
例えば、抽出液でタバコ材料を処理し、この抽出液をNIPで処理してTSNAを取り除くなど、タバコからTSNAを抽出するのにNIPを用いる場合、抽出液と接触後のNIPを洗浄して吸収されたニコチン(TSNAほど強くNIPと結合することができない)を回収することが有益な場合がある。洗浄液中のニコチンは、このようにNIPで処理した後の抽出液を一緒にすることができる。
【0101】
さらなる態様によると、ニトロソ化合物の含有量、好ましくはTSNAの含有量が、ニトロソ化合物に対する選択性を有する上記NIPのいずれかで処理することにより低減された喫煙材料を提供する。
【0102】
喫煙材料及び製品
他の態様によれば、喫煙品は上記NIPのいずれかを含み、好ましくは少なくとも1種のニトロソ化合物、特に少なくとも1種のTSNAに対して選択性を有する上記NIPのいずれかを含む。
【0103】
喫煙品は、紙巻きタバコ、葉巻、または細葉巻など、従来のいずれかの形態を取ることができる。特に、喫煙品は喫煙材料の刻を含むことができ、巻紙に巻かれていてもよく、フィルターはあってもなくてもよい。巻紙は、紙、タバコの葉、再構成タバコ、またはタバコ代用品であってもよい。あるいは、例えば、喫煙品から出る副流煙を少なくする、あるいは主流煙中の熱分解物のレベルを低くしようとする場合、巻紙はセラミック材料など燃焼しない無機材料から構成することができる。フィルターは、繊維状の酢酸セルロース
、ポリプロピレン、またはポリエチレン、あるいは紙など好適ないずれの材料で構成することができる。
【0104】
喫煙材料は、好ましくはタバコであるが、非タバコ喫煙材料などタバコ代用品であってもよい。非タバコ喫煙材料は、例えば、乾燥・熟成した野菜材料(果物材料を含む)、及びアルギン酸塩や、グリセリンなどのエアロゾル生成物質から生成できる合成喫煙材料である。喫煙材料はまた、タバコ及び非タバコ喫煙材料のブレンドを含んでいてもよい。喫煙材料がタバコを含む場合、タバコは任意の好適なタイプ(空気乾燥(air-cured)、火
力乾燥(fire-cured)、熱気乾燥(flue-cured)または日干し乾燥(sun-cured)した葉
身または茎を含む)、またはそのブレンドであってもよく、任意の適切な工程で処理されたものであってもよい。例えば、タバコは切断、細断、膨張、再生されていてもよい。喫煙材料はまた、法律で認められた従来の添加剤、例えば改質剤、着色剤、保湿剤(グリセリン、プロピレングリコールなど)、不活性充填剤(チョークなど)、香味料(メントール、砂糖、リコリス、ココアなど)を含んでいてもよい。
【0105】
NIPは、喫煙可能材料に組み込まれてもよく、したがってさらなる態様は、上記NIPのいずれかを組み込んだ喫煙材料を含む。
【0106】
喫煙品が巻紙中に喫煙可能材料の刻を含む場合、NIPは巻紙に組み込まれてもよい。巻紙は紙などのセルロース系材料、または再生タバコなどのタバコ系材料であってもよい。
【0107】
さらなる態様によれば、タバコ製品はタバコと、上記NIPのいずれかを含み、好ましくはニコチンよりも少なくとも1種のTSNAに対する選択性を有するNIPのいずれかを含む。タバコ製品は、タバコロッド、巻紙、及びフィルターを含む紙巻きタバコであってもよい。
【0108】
さらなる態様によれば、上記NIPのいずれかを組み込んだ煙フィルターが提供される。典型的には、NIPはフィルターに配置されて、使用すると、NIPがフィルターを通過する煙またはエアロゾルに晒される。この目的のため、NIPはフィルター中に粒状で組み込むことができる。いくつかの場合では、NIPを繊維状に形成して、フィルタートウとしてフィルターに組み込んでもよい。あるいは、NIPをフィルターペーパー、チッピング紙、またはシガレットペーパーに組み込んでもよい。煙フィルターは、例えば紙巻きタバコホルダー、葉巻ホルダーの形態で喫煙品とは別に製造することができる。また、例えばフィルター付き紙巻きタバコの形態として喫煙品に組み込むことができる。
【0109】
フィルターの形態の煙フィルターは従来のいずれの構造であってもよい。例えば、酢酸セルロースなどの繊維状フィルター材料部分を含む「ダルメシアン」型フィルターであってもよく、NIPは粒状でフィルター材料部分全体に分布している。あるいは、フィルターは、「空洞」型フィルターの形態であってもよく、複数の部分を含み、 NIPは繊維
状フィルター材料の2つの隣接する部分の間に配置されていてもよい。煙フィルターはまた、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ、アルミナ、アンバーライトなどの他の吸着剤材料を含んでいてもよい。
【0110】
使用すると、煙はフィルターを通り、NIPは煙から目的化合物を選択的に吸収・保持する。フィルターを通った煙が喫煙者に供給される。
【0111】
煙フィルター及び喫煙品は、使用中に煙からNIPを保護する、あるいは煙への暴露を低減するための手段を含んでいてもよい。これは、様々な方法によって達成することができる。例えば、煙フィルターは煙の蒸気または粒子から材料を吸着するためのフィルター
エレメントを含んでいてもよい。そのようなフィルターエレメントは、活性炭などの一般的な吸着剤を含でいてもよく、この吸着剤は糸、粒子、顆粒、布、紙などいずれの簡便な形態であってもよい。フィルターエレメントはまた、イオン交換樹脂、ゼオライト、シリカ、アルミナ、アンバーライトなどの選択的吸着剤であってもよい。NIPを保護するための手段は、例えば第1の酢酸セルロースフィルターエレメントと第2の活性炭フィルターエレメントなど、異なる組成のフィルターエレメントを2つ以上含んでいてもよい。煙フィルター及び喫煙品に複数のフィルターエレメントを設けることはよく知られており、フィルターのいずれかの従来構造及びそれに関連する構成方法を用いることができる。
【0112】
以下の実施例において、本発明の実施の形態をさらに説明する。
【0113】
実施例1
評価用NIPの調製
2種のモノアルケニル単量体、すなわち酸性のメタクリル酸(MAA)と中性のメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、及び2種の架橋剤(この例では、ジ−またはトリアルケニル単量体)、すなわち親水性の三アクリル酸ペンタエリトリトール(PETRA)と疎水性の二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA)を用いて、異なる4種のNIPの試料をそれぞれ3つ調製した。重合体を分子鋳型する分子鋳型材料は、この重合には存在しなかった。
【0114】
各組み合わせにおいて、モノアルケニル単量体、架橋剤、及び遊離基開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)など)をクロロホルムまたは他の非プロトン性溶媒に溶解させることにより重合前溶液を調製した。この溶液を重合容器に移して、封をした。重合は、70℃で開始し、この温度で24時間保持した。得られたNIPを粗破砕し、まず4:1のメチルアルコール:酢酸で、その後、メチルアルコールで抽出して未反応の単量体をすべて取り除き、乾燥させた。
【0115】
実施例2
ニトロソアミンの選択的吸着におけるNIPの使用
実施例1のNIPについて、ニコチンよりもニトロソアミンに対する選択的吸着性能を、試験混合物(1:1のN−ニトロソピペリジン及びニコチンの水溶液)をそれぞれのNIPで処理することにより評価することができる。結果を表1にまとめた。これは、各NIPの3つの試料について行った3回の吸着試験の結果を平均したものである。
【表1】
【0116】
表1から明らかなように、疎水性架橋剤から調製した非分子鋳型重合体は、親水性架橋剤から調製したNIPよりも顕著にニトロソアミンと結合する。また中性単量体及び疎水性架橋剤から調製したNIPは、酸性の単量体及び疎水性架橋剤から調製したNIPに比べて、ニコチンよりもニトロソアミンに対して選択性が高い。
【0117】
実施例3
NIPのさらなる比較
表1でまとめた非酸性の疎水性NIPの驚くべき有益な性能について、中性単量体HEMA及び疎水性架橋剤EDMAから調製したNIP(NIP1)を、中性モノアルケニル単量体HEMA及び親水性トリアルケニル単量体三アクリル酸ペンタエリトリトール(PETRA)から調製した非分子鋳型重合体(NIP2)と比較した。
【0118】
2本のSPEカラムを準備した。一方には粉砕して20〜90μmに分級したNIP1を25mg入れ、もう一方には粉砕して20〜90μmに分級したNIP2を25mg入れた。各カラムに、NNN、NNK、NAT(それぞれ約80ng/ml)、NAB(40ng/ml)、及びニコチン(0.2μg/ml)を含む水溶液を1ml加えた。HPLCを用いて各カラムで抽出されなかったTSNAの量を求め、抽出された材料を計算した。
【0119】
ついで1mlの水を各カラムに通して、もしあれば放出されたTSNAの量を求めた。表2は、その結果をまとめたもので、2つの実験結果の平均を示している。
【表2】
【0120】
表2のデータは、水で洗浄した際にNIPから放出されるTSNAのレベルが低いことを示している。これは分子鋳型がないという観点からすると驚くべきことである。さらに、NIPは、ニコチンよりもTSNAをより強く保持しているようである。
【0121】
0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)のメチルアルコール溶液(v/v)など、酸性溶媒とアルコール溶媒の混合物でNIPを洗浄することによりNIPを再生することができる。
【0122】
実施例4
特定のTSNA及びニコチンを用いたNIPの評価
NIPの、TSNA選択性吸着剤としての効力は以下の実験で発揮された。粉砕して分級したNIPを25mg入れたSPEカラムを準備した。5mlの試験液を、1mlずつ5回連続してカラムに充填した。試験液は、NNN、NNK、NAT(それぞれ約80ng/ml)、NAB(40ng/ml)、及びニコチン(4μg/ml)のpH6.3のリン酸塩緩衝剤(イオン強度0.09)であった。各試料を充填した後、保持されなかったニコチン及び各TSNAの量(すなわち、カラムを通過した充填液中の各成分の百分率)をHPLCで求めた。その結果を表3に示す。各1ml充填液中の、カラムで保持され
なかった各成分の量を、全成分の合計に対する百分率として表している。
【表3】
【0123】
表から明らかなように、連続充填工程では、NIPに結合するニコチンの量が減少している。はじめの方の工程でNIPはニコチンで飽和される。連続充填では保持されるニコチンが次第に減少している。
【0124】
TSNAの中で、NNNはNIPとの結合が最も弱いが、それでもニコチンよりは有意に強く結合している。NNNは1回目の充填工程ではカラムを通り抜けないが、2回目の充填工程以後は試料が徐々にカラムを通り抜ける。NIPは、NNK、NAB、及びNATをより顕著に保持する。このように、中性機能性単量体及び疎水性ジ−またはポリオレフィン単量体の組み合わると、混合試料からのTSNAを驚くほど高い比率で保持するが、ニコチンは最小限の量のみ保持する。
【0125】
実施例5
タバコ抽出物の処理におけるNIPの使用
上述のように調製したNIPをSPEカラムに組み込むことができ、そのカラムを当業者に周知の方法で調整することができる。切断または細断したタバコの葉を60℃、15〜25分間、水で抽出した。濾過してタバコを溶液から分離し、乾燥させた。この溶液をSPEカラムに通し、抽出液からTSNAを吸着させた。カラムに水を通して、処理済み抽出液と一緒にしてもよい。次いで、カラムを空けて、溶液を膜蒸発により濃縮した。この濃縮液を抽出済みタバコと一緒にして、空気乾燥した。0.5%TFAを含む2×1mlメチルアルコールを用いてNIPから結合化合物を溶出し、HPLC−UVで抽出液を分析することにより、NIPの性能を評価することができる。
【0126】
実施例6
タバコ抽出物の処理におけるNIPの使用
連続抽出工程を用いて、アメリカンブレンドタイプの細断したタバコの葉を、超臨界二酸化炭素が供給された第1の抽出室に充填した。タバコを接触させた後、この二酸化炭素を、NIPを含む第2の抽出室に供給した。この重合体と接触させた後、二酸化炭素を第1の抽出室に戻し、再度タバコと接触させた。このサイクル工程を、タバコのTSNA含有量が所望のレベルにまで低減されるまで継続し、二酸化炭素を系から抜き、タバコを第1の抽出室から取り除いた。第2の抽出室のNIPを再利用のため、再生した。
【0127】
実施例7
試料分析のためのNIPの使用
25mgのNIPを加えてSPEカラムを準備した。例えばTSNAを含む可能性があるヒトの尿を5mlなどの試験用試料をカラムに加えた。試料をカラムに通して、すべての液体を真空除去し、確実にNIP材料を乾燥させた。例えば1mlの蒸留水などで洗浄して、NIPに特異的な関連づけがないと思われる妨害化合物を取り除いてもよい。乾燥後、例えば、1mlのDCMでTSNAをNIPから回収することができ、HPLCで定量することがでる。
【0128】
実施例8
喫煙品におけるNIPの使用
図を参照して、
図1及び
図2は紙巻きタバコの形態の喫煙品を示すものである。紙巻きタバコは、タバコのロッド1と、ロッド1を収納した巻紙2とを備える。巻紙2には、煙フィルター3がチッピング紙4により取り付けられている。分かりやすくするため、チッピング紙4は巻紙2から離して示されているが、実際にはこれらは密着している。
【0129】
図1において、煙フィルター3は3つの円筒形フィルターエレメント3a、3b、3cを含む。第1のフィルターエレメント3aは、フィルターの吸い口端部に位置し、7mmの長さで、7重量%のトリアセチン可塑化剤で含浸された酢酸セルローストウで構成される。第1のフィルターエレメント3aは、全長に渡って水圧が25mm低下する。第2のフィルターエレメント3bはフィルターの中央に位置する長さ5mmの空洞であり、150mgの活性炭顆粒を含んでいる。第3のフィルターエレメント3cは、ロッド1に隣接する。長さ15mmで、全長に渡って水圧が90mm低下する。第3のフィルターエレメント3cは、80mgの酢酸セルローストウを含む。トウは、4重量%のトリアセチンで含浸されており、本明細書で記載したTSNAに特異的なNIPを80mg含む。このNIPは、「ダルメシアン」型フィルターではその全体積中に均等に分布している。
【0130】
図2に示す紙巻きタバコは、
図1の紙巻きタバコと同様であるが、煙フィルター3が4つの同軸円筒形フィルターエレメント3a、3b、3c、及び3dを有する点で異なる。第1のフィルターエレメント3aは、紙巻きタバコの吸い口端部に位置し、5mmの長さで、7重量%のトリアセチン可塑化剤で含浸された酢酸セルローストウで構成される。第2のフィルターエレメント3bは、第1のフィルターエレメント3aに隣接する長さ5mmの空洞で、本明細書で記載したように調製したNIPを200mg含む。第3のフィルターエレメント3cは、第2のフィルターエレメント3bに隣接し、長さ10mmで、7重量%のトリアセチンで含浸された酢酸セルローストウを含む。第4のフィルターエレメント3dは、第3のフィルターエレメント3cと刻との間に位置し、長さ7mmである。第4のフィルターエレメント3dは粒状の活性炭を80mg含む。チッピング紙4の放射面A−Aには通気孔5が環状に形成されており、紙巻きタバコを通して煙が吸引されると、第4のフィルターエレメント3dとの接合部の下流約3mmのところで、第3のフィルターエレメント3cに空気が供給される。
【0131】
実施例9
試験キットにおけるNIPの使用
図3にクロマトグラフィーまたはSPEに好適な典型的なカラムを示す。カラムは管11を備える。管11は円筒形であり、例えば金属、ガラス、またはプラスチックで形成されていてもよく、入り口12を有する第1の端部と、出口13を有する第2の端部とを有する。入り口12及び出口13を用いてカラムを他のクロマトグラフィー装置に接続する。第1の端部及び第2の端部は、それぞれ、ねじ接続、締まりばめ、溶着などでカラムに取り付けた、あるいは取り付け可能な個別の部品として提供されてもよいが、カラムと一
体に形成されていてもよい。カラムは、出口に隣接した下部フリット14を備えていてもよく、このフリットの上に重合体15を置く。図示のようにさらに、カラムの第1の端部に近い重合体の上部表面に上部フリット16を設けて、上部フリットと第1の端部の間に試料を充填するのに好適な空間を設けてもよい。
【0132】
上記単量体及び架橋剤のいずれかから形成した、あるいは本明細書で記載したいずれかの方法で形成した重合体粒子を、クロマトグラフ用カラムまたは固相抽出カラムに充填して、例えばニトロソアミンなどの化合物を、構造や機能が類似する分子を含む混合物の他の成分からクロマトグラフィーにより分離するのに用いることができる。カラムを、カラムの使用を容易にする他の装置(例えばカラムを調整するための試薬、カラムを溶出してNIPを再生成するための試薬、スパチェラ、測定シリンダ、ビーカーなど成分を取り扱うための1つ以上の道具、及び装置を使用するための説明書を含む)と共にキットに入れてもよい。NIPを好適な容器に供給してもよく、濾過カラムに充填するのに好適な分割した量で供給してもよい。カラム自体に、NIPが前充填された状態で供給されてもよい。
【0133】
実施例10
懸濁重合による重合体ビーズの形成
以下の一連の実験では、単量体と架橋剤の重合に関して、8つの可変反応条件、すなわち反応パラメータの変化に起因する可能性のある、重合体の物性に及ぼす効果を示す。EDMAとHEMAとの重合体である、19個の試料(No.E1−E19)を、各試料の調製に用いる反応条件に対して異なる値の組み合わせを確立する実験計画法を用いて調製した。互いに独立して反応条件を変化させることの、重合に及ぼす効果を評価できるように各実験の値を選択した。以下のようにパラメータ及びその範囲を選択した。
架橋剤(XL):単量体(M)のモル比 4:1〜6:1
細孔形成剤の種類 極性(酢酸エチル(「EtOAc」))または非極性(トルエン)
細孔形成剤の量 0.7〜1.5重量%
開始剤の量 1.5〜3.3重量%の過酸化ベンゾイル
ポリビニルアルコールの種類 低モル重量/粘度(「Celvol203」)または高モル重量/粘度(「Celvol523」)
PVOH濃度 水相の1〜3重量%
固体の含有量 10〜20重量%
撹拌(速度) 低(200rpm)〜高(300rpm)
【0134】
各実験で選択した反応条件の値を以下の表4にまとめた。各実験においては、架橋剤と単量体を懸濁重合プロセスにより重合した。各実験では、ポリビニルアルコールを50℃で3時間撹拌して水に溶かして、重合反応用の水相を調製した。室温まで冷却した後、攪拌器を備える反応容器中で、単量体、開始剤、及び細孔形成剤を含む単量体相をこの水相と一緒にして懸濁液を調製した。懸濁液を30分間撹拌し、その後、65℃まで加熱した。一定の強さで撹拌しつつ、この温度で18時間維持して、重合を行った。冷却後、得られた重合体を混合物から濾過して、温水、メチルアルコール、及び酢酸エチルで洗浄した。
【0135】
実験で調製した重合体の物性は、個々の反応条件によって異なり、以下の表4に記載する。
【0136】
表5に、各実験で調製した重合体ビーズの品質に及ぼす反応条件の変化の効果を示す。表5では、対応する実験番号の付いたセル中に実験結果を示している。セルには、調製したビーズの品質を示すように陰影が付けられている。最も陰影が濃いセルは、重合の失敗を示す。次に濃いセルは、不規則な粒子の形成を示す。その次に濃いセルは、球状粒子塊
の形成を示す。一番陰影が薄いセルは、球状ビーズと微粒子の形成を示す。陰影のないセルは、微粒子のない、明確に規定された球状ビーズの形成を示す。以下の各表では、XLはEDMAを意味し、MはHEMAを意味する。
【表4】
【表5】
【0137】
上記実験は、好ましくは2重量%より多く、おそらくは4または5重量%までのPVOH水性ポリビニルアルコール溶液を含む安定剤の存在下で架橋剤と単量体を懸濁重合することにより上質の重合体ビーズを形成することができることを示している。PVOH水性ポリビニルアルコール溶液は、好ましくは商標Celvol523で供給されるような、モル重量/粘度の高い等級品である。NIPの明確に規定されたビーズは、以下のものを1つ以上用いることによっても有利に形成される。(a)比較的多い量の開始剤(例えば少なくとも3重量%)、(b)非極性細孔形成剤(例えばトルエン)、及び(c)比較的少ない(例えば約10重量%)固形分を含む反応混合物。比較的高濃度のポリビニルアルコールと比較的多量の開始剤とにより、残留ポリビニルアルコールが、ニコチンよりもニトロソ基を含む化合物に対する選択性を向上させるのに有効な量、多孔質ビーズに組み込まれると思われる。
【0138】
実施例11
懸濁重合によって調製したビーズの評価
ニトロソ化合物の吸着及びニコチンよりもニトロソ化合物に対する選択性について、実施例10の運転No.E3〜E5及びE7〜E19で調製したNIPの性能を、それぞれの重合体について以下の2段階の抽出試験を行うことにより示した。運転No.E1、E2、及びE6の重合が不十分なものについては試験を行わなかった。
【0139】
4μg/mlのニコチン(「NIC」)、80ng/mlのNNN、80ng/mlのNNK、80ng/mlのNAT、及び40ng/mlのNABの15mMリン酸塩の水性緩衝液(pH6.3)を含む試験液を調製した。各試験において、実施例10のNIPをそれぞれ125mg、次のようにしてまず調節した。室温でNIPの試料を5mlのエチルアルコールと撹拌し、この混合物を10μmフリットで濾過することによりエチルアルコールを取り除いた。室温で2分間、試料を5mlの蒸留水と撹拌し、混合物を再度10μmフリットで濾過した。試験のステージ1では、各NIP試料を10分間、約5℃で試験液と撹拌した。10μmフリットで混合物を濾過することにより試料から溶液を分離し、NIPにより試験液から抽出されたニコチン及びTSNAの%を見積もるためにこの溶液の含有量を紫外線放射線検出による液体クロマトグラフィー(LC−UV)を用いて分析した。試験のステージ2では、ステージ1で回収したNIPを5mlの蒸留水で10分間、約5℃で撹拌し、10mlフリットで濾過して水を取り除いた。試験液から抽出されたニコチン及びTSNAの%、及び洗浄後のNIPによって保持されるニコチン及びTSNAの%を見積もるため、溶液の含有量をLC−UVで分析した。
【0140】
各NIPについての結果を以下の表6にまとめた。この表では、試験したNIPごとに、試験の(a)ステージ1及び(b)ステージ2後に試験液に残ったニコチン(「NIC」)、NNN、NNK、及びNATを重量%で示している。全体的なNIPの性能を示すため、19回の実験すべての数字の平均が最後の行に示されている。
【表6】
【0141】
表6で100%を超える回収値は、実験誤差の範囲内の測定のばらつきによるものである。
【0142】
試験したすべてのNIPは、ニコチンよりもTSNAに対して優れた選択性を示した。ステージ1後では少なくとも81.7%のニコチンが溶液に残留したが、溶液に保持されたNNN、NNK、及びNATの量はそれぞれ、46.0%、29.7%、21.7%であった。溶液中の残留ニコチンの百分率は、ステージ2後に増加していることがわかる。
これは、ニコチンが抽出工程ではNIPにより比較的弱く吸着され、洗浄工程で放出されて、いくつかの場合では100%回収された可能性があることを示している。
【0143】
NIPにより試験したTSNAの抽出率は4種のTSNAで異なるが、各NIPによるNNN、NNK、及びNATの抽出率をNICの抽出率に対してプロットして得た相対的な抽出率は、ステージ1後及びステージ2後の両方できれいな相関関係を示している。
【0144】
商標MODDE(Umetrics AB社)で販売されているような実験ソフトウェアの設計を用いてコンピュータで実験データを分析し、テストしたパラメータごとに係数を生成することができる。これら係数は、各パラメータの、NIPの性能に及ぼすよい影響または悪影響を表している。
図4a及び
図4bはそれぞれ、ステージ1(抽出)の試験液の残留ニコチン(重量%)及び重合体により試験液から取り除かれたNNN(重量%)について、各反応パラメータに対する係数をプロットしたグラフである。
図4c及び
図4dは、ステージ2後の係数をプロットした同様のグラフである(抽出及び洗浄)。各グラフの縦棒は、以下の反応パラメータ(左から右へ)に対する係数をそれぞれプロットしたものである。
モル比 EDMA(XL):HEMA(M)
細孔形成剤の種類 極性(「EtOAc)」)または非極性(「Tol」)
細孔形成剤の量 PoR
開始剤の量 「I」
PVOHの種類 低分子量(「C523)」または高分子量(「(C203)」)
PVOHの量 「PVA」
固形分 「SC」
撹拌速度 「rpm」
【0145】
図4a〜4dにおいて、正の値は望ましい効果を示し、負の値は望ましくない効果を示す。
【0146】
このように、ニコチンの場合、各パラメータの棒は、パラメータの高い値を用いた場合の溶液中の残留ニコチン量と、中程度の値のパラメータを用いた場合の溶液中の残留ニコチン量(パーセント)の平均差を示している。したがって正の係数は、パラメータの高い値を用いるとより多くのニコチンが溶液中に残留することを示し、負の値は、溶液に残留するニコチンレベルが低いことを示す。NNN及び他のTSNAの場合も、パラメータの棒はパラメータの高い値と中程度の値とを用いたときの溶液中の残留ニコチン量の平均差を示している。ただし、ニコチン及びNNNに及ぼすパラメータの効果の比較を容易にするにするために、グラフではパーセントデータの二乗の逆数(NNN=NNN
−2)をプロットした。これにより、正の係数は、パラメータの高い値を用いるとより少ないNNNが溶液に残留することを示す。負の係数は、パラメータの低い値を用いると溶液中の残留TSNAレベルが高くなり、したがってNIPによる抽出率が低くなることを示している。
【0147】
試験したTSNAすべての吸着率は、互いによく相関しているので、NNNに対する係数を試験した4種すべてのTSNAの代表とする。
【0148】
各グラフのプロットにはエラーバーが示されている。エラーバーがゼロ線を超えている場合、その結果は統計的に有意ではないとみなされる。
【0149】
統計的に有意なプロットを考慮すると、各ステージ後の試験液中のニコチン残留量が増加しているという点で非極性細孔形成剤(「Tol」)の使用は有効であるが、各ステージでのニコチン残留量が減少しているという点で極性細孔形成剤の使用は有効ではないこ
とがわかる。
【0150】
細孔形成剤(「POR」)及び開始剤(「I」)の量を増やすことがニコチンレベルに及ぼす効果はステージ1後では負の効果であるが、ステージ2後ではその効果はもはや有意ではなくなる。しかしながら、細孔形成剤レベルを上げることがTSNAレベルに及ぼす効果は、試験の両ステージにおいて正の効果である。このことは、TSNAに比べてニコチンのNIPとの結合が弱いということを示しており、所望であれば、水による洗浄などさらなる処理工程でニコチンをNIPから回収することができる。
【0151】
XL:M(架橋剤:単量体)比(例えばジ−またはポリアルケニル単量体:モノアルケニル単量体)が高いと、両ステージでのTSNAの吸着率、特にNNNの吸着率に有効である。
【0152】
実施例12
ビーズ径に及ぼす反応条件の効果
以下の一連の実験は、単量体と架橋剤との重合について、4つのパラメータの変更に起因する重合体ビーズ粒径に及ぼす効果を示すものである。17個の重合体試料(No.N1〜N17)を以下のように調製した。EDMA及びHEMAを、トルエン細孔形成剤及び高分子量ポリビニルアルコール(Celvol523)の存在下、70℃で固形分10重量%を含む反応混合物中で250rpmの速度で撹拌して懸濁重合した。商標MODDE(Umetrics AB社)で販売されているようなDoEソフトウェアを用いて、パラメータをそれぞれ変更した場合と、他のパラメータと組み合わせた場合における、粒径及びTSNA選択性に及ぼす効果を見積ることができるように、各実験において3つの選択したパラメータの値を実験計画法により確立した。これら実験のために、以下のパラメータを選択した。
EDMA:HEMAの比(XL:M) 4:1〜6:1
開始剤の量 1.0〜4.67重量%
PVOHの量 水相の1.0〜4.5重量%
細孔形成剤の量 1.0〜1.7mL/g
【0153】
さらなる一連の実験(A〜C)において、細孔形成剤の量を変化させることの効果について調べた。これら実験のために、以下のパラメータを選択した。
架橋剤:単量体の比 5:1
開始剤の量 2.84重量%
PVOHの量 水相の3.0重量%
細孔形成剤の量 1.0〜1.7mL/g
【0154】
各実験におけるそれぞれの反応条件を以下の表7にまとめた。各実験で調製した重合体ビーズ粒子の平均径、及び調製した微粒子の見積もり体積を表7に示す。
【表7】
【0155】
すべての実験で、重合体の球状ビーズが凝集することなく調製された。いくつかの場合において、微粒子が形成されたが、4重量%以下の量であった。PVOHを1.5重量%から4.5重量%の範囲の間で用いて反応を行った場合、形成された微粒子の量は減少した。最適濃度は約3重量%であることが示された。
【0156】
図5及び
図6は、上記のDoEソフトウェアを用いて反応パラメータに関する実験N1〜N17の重合体ビーズ粒径の変化を分析して得たものである。
図5は、PVOH濃度に関する実験で調製した重合体ビーズ粒径(体積平均粒子径(d4,3V)として表す)の変化を示している。
図6は、PVOH、架橋剤(XL)、開始剤、PVOH濃度の二乗(
図6ではPVOH*PVOHとして示されている)の相対濃度の効果に対する係数、及び高い架橋剤:単量体比と高レベルの開始剤とを組み合わせた相互作用効果の係数をプロットしている。これらの分析から、反応中にビーズ粒径はPVOH濃度に最も著しく影響を受け、濃度が高いと粒径が小さくなる傾向があることがわかった。開始剤の使用量は、粒径に小さな効果を及ぼし、濃度が高いと粒径が大きくなる傾向にある。
【0157】
上述のように、以下の条件でさらなる実験を行った。
EDMA:HEMA比(XL:M) 4:1
開始剤の量 3.3重量%
PVOHの量 水相の2.8重量%
細孔形成剤の量 1.27ml/g
【0158】
生成物は、乾燥状態でかさ密度0.35g/ml、BET表面積308m
2/g、孔体積0.77g/ml、及び平均孔径100Åのビーズ状であった。
【0159】
実施例13
選択性に及ぼす反応条件の効果
ニトロソ化合物の吸着及びニコチンよりもニトロソ化合物に対する吸着選択性について、実施例11に記載した手順により各化合物に対して抽出試験を行うことにより実施例12で調製したNIPの性能を示した。
【0160】
NIPの各試料を試験し、結果の2つの集合の平均を表8にまとめた。「平均」という項目の行は、各実験における4種すべてのTSNA(NNN、NNK、NAT、及びNAB)の平均抽出率を示している。
【表8】
【0161】
結果を
図7a及び
図7bのグラフにまとめた。
図7aはステージ1の結果(ステージ1後に試験液から抽出された量(重量%)(充填のみ))を示す。
図7bは、ステージ2(ステージ1及びステージ2後に試験液から抽出された量(重量%)(充填及び洗浄))の結果を示す。各グラフの左から右へ、横棒は、試験液からそれぞれ抽出したニコチン(NIC)、NNN、NNK、NAT、及びNABの重量%について、20個すべてのNIP試料の試験で得た値の範囲を示している。一番右の棒(TSNA(平均))は、20個のNIP試料で4種すべてのTSNAを抽出したときの平均抽出率の値の範囲を示すものである。
【0162】
図7a及び
図7bから、NIPは、ニコチンよりもすべてのTSNAに対して強い選択的吸着性があることがわかる。また、4種のTSNAの中ではNATが最も強く吸着され、NNNが最も弱く吸着されることがわかる。それぞれの場合において、抽出されたニコチン及びTSNAの重量%は、洗浄工程によって減少した。TSNAの中では、NNNの保持が洗浄によって最も影響を受けた。ニコチンは、TSNAのいずれよりもNIPとの結合が弱く、所望であれば、水による洗浄などのさらなる処理工程でNIPから回収することができる。
【0163】
図8a〜
図8dに、試験手順(充填のみ)のステージ1及びステージ2(充填及び洗浄)でニコチン及びTSNAの抽出に及ぼす各パラメータの効果を表す係数を示す。この係数はMODDEソフトウェアで算出した。
図8a及び
図8bは、ステージ1でのニコチン抽出率及び各TSNAの平均抽出率に関し、
図8c及び
図8dはステージ2の各抽出率に関する。
【0164】
図8a及び
図8bからわかるように、試験のステージ1では、開始剤の使用量はニコチン及びTSNA両方の抽出率に顕著な効果がある。
【0165】
図8c及び
図8dに示すように、ステージ2では、開始剤の量が増加するとニコチン及びTSNAの抽出率もステージ1と同様に増加するが、ポリビニルアルコールの量が増加するとニコチン抽出率が減じるという点でポリビニルアルコールの使用量もまた有益な効果がある。したがって、抽出後に洗浄を含む抽出工程において、NIPの調製にポリビニルアルコールを用いることは、TSNAとニコチンの混合物からTSNAを選択的に抽出するのに有益である。なぜなら、ポリビニルアルコールが、ニコチンの吸着レベルに及ぼす開始剤の効果を相殺するからである。上述のように、これは、残留ポリビニルアルコールが架橋重合体に取り込まれた結果であると思われる。
【0166】
図9a及び
図9bは、上記のデータから生成した2つの応答曲面図を示す。
図9aはステージ2後のニコチン抽出に関し、
図9bはステージ2後のTSNA平均抽出率に関する。x軸に示す反応混合物のPVOH含有量を、y軸の開始剤含有量に対してプロットした。応答曲面図の等高線は、抽出量(重量%)が等しい点を結んだもので、抽出量の値が各等高線のラベルに示されている。破線で示された長方形の面積は、TSNA及びニコチンがバランスよく抽出されていると思われる開始剤及びPVOHの量の領域を示している。この領域は、PVOHが約2.5重量%以上、開始剤が1.75重量%以上の範囲に広がっている。したがって、PVOH及び開始剤を高レベルで用いると、ニコチンよりもTSNAに対する選択性を有する重合体の調製に有益であると思われる。
図9をもとに推定すると、これらのレベルは、本明細書の実験で用いた最大レベル4.5重量%よりも高くすることができる。しかしながら、PVOHの使用量が多いと処理コストが増加する場合がある。このように、PVOHは高濃度で溶解させるのが困難であり、重合でより多くの微粒子が生成される。その結果、懸濁液の粘度が増加して、濾過が困難になり、PVOHを取り除くのにより大がかりな洗浄が必要になることがある。したがって、PVOH及び開
始剤の最適量はこれら因子の妥協点を表すものである。
【0167】
試験液中のニコチン及びTSNAの溶出率に及ぼすPVOHの効果は、TSNA及びニコチンの相対的極性によって変化することがある。
図10は、同じ図中でステージ2後のニコチン及び各TSNAの抽出係数を示したものである。これら係数は、逆相液体クロマトグラフィー(「HPLC」)により溶出された化合物の配列順にプロットされているが、この配列順は対応する化合物の極性に依存している。PVOHのレベルが増加すると、最も極性の高い化合物(ニコチン)の抽出が減り、最も極性の低い化合物(NAB)の抽出が増加する。開始剤はすべての化合物の抽出を増加させるが、その効果は極性の高い化合物に対するほど大きくなる。高い比のジ−またはポリアルケニル:モノアルケニル単量体を高レベル開始剤(EDMA*I)と併用する相互作用効果により、極性の低い化合物の抽出が低減される。
【0168】
実験A〜Cでは、実験N15〜17に比べても抽出率に有意な差が見られないが、これは1.0〜1.7mL/gの範囲で細孔形成剤量を変化させても、NIPの、ニコチンよりもTSNAに対する選択性に効果がないことを示している。
【0169】
用いる開始剤の種類は、NIPの性能に影響を及ぼさないようである。したがって、過酸化ベンゾイル以外の開始剤を重合反応に用いてもよい。
【0170】
実施例14
様々な単量体を用いたビーズの形成
以下の一連の17回の実験(No.P1〜P16及びP18)は、極性の異なるモノアルケニル単量体(「単量体」)と架橋剤(いくつかの態様ではジ−またはポリアルケニル単量体)、すなわち、疎水性及び親水性の異なる単量体と架橋剤、また酸性単量体と塩基性単量体とから重合体を形成する試みを示すものである。
【0171】
以下の単量体を用いた。単量体は、極性の低い順に並べた。塩基性のDEAEM及び酸性のMMAを除いて単量体はすべて中性である。
スチレン(非極性、疎水性)
メタクリル酸メチル(MMA)(低極性官能基、疎水性)
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)(親水性)
N−ビニルピロリドン(NVP)(極性官能基、親水性)
メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル(DEAEM)(高極性、親水性、塩基性)
メタクリル酸(MAA)(極性官能基、酸性)
以下の架橋剤を用いた。架橋剤は極性の小さい順に並べた。
ジビニルベンゼン(非極性、疎水性)
三メタクリル酸トリメチロールプロパン(TRIM)(低極性官能基、疎水性)
二メタクリル酸エチレングリコール(EDMA(低極性官能基、疎水性))
二メタクリル酸ジエチレングリコール(DEDMA)(高極性、親水性)
【0172】
懸濁重合により17個の重合体試料を調製した。それぞれの場合において、70℃で単量体(M)と架橋剤(XL)(モル比M:XLで1:5)、2.84重量%過酸化ベンゾイル開始剤、及び1.27ml/gトルエン細孔形成剤を含む単量体相を、3重量%高分子ポリビニルアルコール(Celvol523)を含む水相と混合し、固形分10重量%の懸濁液を調製した。懸濁液を250rpmで18時間撹拌して重合を行った。冷却後、得られた重合体を混合物から濾過し、水、メチルアルコール、及び酢酸エチルで洗浄した。
【0173】
重合結果及び形成されたビーズを表9にまとめた。数字データを含む表の各セルは、例
番号(P1〜16及びP18)、(形成されている場合)ビーズの体積平均粒子径(μm)、微粒子状のもの(「微粒子」)の概算重量%、及び重合体材料が形成した塊または凝集体「凝集体」の概算重量%を含む。
【表9】
【0174】
表9からわかるように、塩基性単量体(この場合ではDEAEM)を用いると、重合体ビーズが形成されない。多くの場合で、ビーズの形成と共に重合体粒子の凝集体や塊が形成された。中性または酸性の単量体を用いた場合、明確に規定されたビーズが得られた。
【0175】
実施例15
様々な単量体を用いて調製したビーズの性能
ニトロソ化合物の吸着及びニコチンよりもニトロソ化合物に対する吸着選択性について、実施例11に記載した手順により各化合物に対して抽出試験を行うことにより実施例14で調製したNIPの性能を示した。結果を表10にまとめた。明確に規定されないビーズを有するNIPについては試験を行わなかった。
【表10】
【0176】
これらの結果を表9と同じ形式の表11にまとめた。各実験について、セルは、ステージ2後の試験液から抽出されたニコチン及びTSNAの量(重量%)を示している。各セルは、上の行の左から右に極性または親水性が増加する順で適切な単量体を横に並べ、左の列の上から下へ極性または親水性が増加する順で適切な架橋剤を縦に並べたものである。この表はまた、上の実施例で示したようにEDMAとHEMAとから誘導されたNIPの数値を含んでいる。ニコチンよりもTSNAに対する選択性が最も高いNIPは、太い枠線で囲まれたセルのものである。
【表11】
【0177】
酸性の単量体(MAA)は、ニコチンよりもTSNAに対するNIPの選択性に悪影響を及ぼすことがわかる。同様に、完全な非極性架橋剤(DVB)を用いると、ニコチンよりもTSNAに対する選択性が低い重合体が得られる。非酸性の単量体と、少なくとも部分的に極性である架橋剤とから調製した重合体は、ニコチンよりもTSNAに対してより高い選択性を示している。
【0178】
選択性は、反対の極性を有する単量体と架橋剤とを用いることにより向上することがわかる。このように、疎水性単量体(スチレン)と親水性架橋剤(DEDMA)とから調製したNIPは、ニコチンよりもTSNAに良好な選択性を示している。親水性単量体(MMA、HEMA、及びNVP)と疎水性架橋剤(EDMA)とから調製したNIPもまた良好な選択性を示している。
【0179】
実施例16
さらなる性能の評価
タバコ処理工程の環境により近い環境でNIPの性能を評価するため、TSNA選択性に関する試験を、乾燥したタバコの葉を水と接触させて得たタバコ抽出液を用いて行った。この抽出液は、ニコチン、TSNA、及びNIPの吸着効果を干渉または遮る可能性のある多くの他の化合物を含んでいた。試験は、表12に記載する重合体を用いて行った。
【表12】
【0180】
各重合体は、各試料の試験液を5mlのタバコ抽出液(12gのタバコを240mlの水と一緒に60℃まで30分間加熱、濾過、冷却して調製)を加えて調製したこと以外は、実施例11で記載した2段階の手順で2回試験した。2回の試験結果の平均を以下の表13に示す。
【表13】
【0181】
NIPは、上の実施例で用いた試験液に対するのと同様にタバコ抽出液試料に作用することがわかる。一般に、すべての重合体によるニコチンの抽出レベルはステージ1後でも低く、スチレンとDEDMAとの重合体(R10)はステージ1後でもニコチン抽出量が最も少ない。MMAとEDMAとの重合体(R8)は、他の重合体よりもTSNAを多く抽出している。懸濁重合によって調製したNIPの選択性は、いくつかの場合では分子鋳型重合体(R1)の選択性とほぼ同じか、それよりも高い。
【0182】
上記の実施例及び図面は、単に具体的な態様を説明するだけであり、限定的と解釈されるべきではない。当業者には開示した態様は、本明細書が包含する本発明の精神及びものを組み込んで変更できることが自明であるので、本発明は添付の請求項及びその均等物の範囲内にあるすべてのものを含むと解釈されるべきである。