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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記香料消費ベースは、液体又は固体洗剤、繊維柔軟剤、繊維消臭剤、漂白剤、デオドラント又は制汗剤、付香石鹸、シャワームース又はバスムース、衛生製品、空気清浄剤、「すぐ使用できる」粉末空気清浄剤、食器用洗剤又は硬質表面用洗剤であることを特徴とする、請求項4に記載の付香消費製品。
式(I)の化合物を、β−グルクロニダーゼ酵素(uidA)をコードする遺伝子を有する細菌と接触させる工程を有する、請求項3に記載の組成物から付香アルコールを遊離する方法。
前記細菌は、ヒト由来であり、かつ腸内細菌から選択される科及びコリネバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、ストレプトコッカス属、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム属及びバクテロイド属に属することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
前記細菌は、プロピオニバクテリウム・アクネス、ストレプトコッカス・アガラクチエ、エシェリキア・コリ、エシェリキア・フェルグソニイ、スタフィロコッカス・ワルネリ、スタフィロコッカス・キシロスス及びスタフィロコッカス・ハエモリチクスから選択される1つとして同定される、請求項8に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料分野に関する。更に特に、皮膚微生物相又は環境からの細菌の作用によって匂い分子、特にアルコールを遊離することができる少なくとも1種のβ−グルクロニド基を有する化合物に関する。本発明は、上記化合物の、香料中での使用、並びに付香組成物又は付香された製品、特に本発明の化合物を有するデオドラント及び制汗剤にも関する。
【0002】
背景技術
特定の条件下で発香性化合物のような活性成分を遊離することができ、こうして特定の期間にわたり活性成分の効果を相違させる及び/又は延長することができる化合物は、香料工業において高い関心が持たれてきた。このような化合物は、この活性成分が匂い物質である場合にしばしば「プロパフューム(pro-perfumes)」といわれ、多様な用途、例えば繊細な香料又は機能性の香料に使用することができる。プロパフュームは、例えば、繊維製品の洗濯において、特に洗濯及び乾燥後に特定期間効果的である香料の作用が絶えず求められる分野において極めて有用であるといわれている。
【0003】
プロパフュームからの活性分子の放出はいわゆる分解反応によって行われる。例えば発香性分子の放出につながる上述の反応は、pH変化、酸素又は他の酸化剤の存在、酵素又は熱により影響されるともいわれているが、他のタイプのメカニズム又はいくつかのメカニズムの組み合わせによって引き起こされることもある。
【0004】
更に近頃では、皮膚細菌により引き起こされる酵素的経路による放出を利用するプロパフュームのデオドラント中での使用は、公共に発表された主題であった。悪臭性の揮発性酸の公知の前駆体に基づいて、デオドラント中での適用を目標として、グルタミン抱合体及び特定の悪臭を生成する酵素、すなわちコリネバクテリアのN
α−アシル−グルタミン−アミノアシラーゼによる分解の際に悪臭性化合物の代わりに芳香性分子を放出するその能力が、in vitroで述べられていて、かつNatsch et alにより、デオドラント活性のための目標としての悪臭を生成する酵素の確認(Validation of a malodour-forming enzyme as a target for deodorant active):コリネバクテリアのN
α−アシル−グルタミン−アミノアシラーゼを目標とするグルタミン抱合体のin vivo試験(in vivo testing of a glutamine conjugate targeting a cornebacterial N
α-acyl-glutamine-aminoacylase)、Flavor and Fragrance Journal, 2013において、in vivoで試験された。
【0005】
悪臭の制御は、香料工業にとって中心的な論点である。体臭、特にヒトの汗のいくつかの前駆体は、これまでに十分に述べられており、例えばグルタミン抱合体及びシステイン−S−抱合体はNatsch et alにより述べられていて、かつシステイン−グリシン−S−抱合体はStarkenmann et alによりWO 2006/079934などに述べられていたが、特にステロイドは、この文献中に明確には確認されていなかった。
【0006】
本発明の化合物の中でいくつかが先行技術から公知であるだけである。この公知の化合物は、フェネチルβ−D−グルコピラノシドウロン酸;β−D−グルコピラノシドウロン酸4−(3−オキソブチル)フェニル;グルコピラノシドウロン酸1−メンチル;β−D−グルコピラノシドウロン酸4−ホルミル−2−メトキシフェニル;及びβ−D−グルコピラノシドウロン酸2−メトキシ−4−(2−プロペン−1−イル)フェニルである。これらの化合物は、天然で発見されたか、又は香料とは異なる文脈で用いられていた。特に、これらの化合物を記載する文献中には、付香成分としてのこれらの潜在的な使用及び更に特に活性分子、例えば発香性分子の放出を制御するための前記化合物の使用についての言及又は示唆はない。
【0007】
香料工業では、今なお新規でかつより効果的なプロパフュームを見出すことに対して高い関心がある。他方で、悪臭制御はこの香料工業にとって中心的な論点であり、従って、悪臭、例えば体汗から生じるような悪臭に対処するための効果的な解決策が必要とされる。
【0008】
発明の概要
意外にも、特定の細菌、特にヒトの汗中に見られる皮膚細菌、更には環境中にも見られる細菌の作用によって活性分子を遊離することができる、少なくとも1つのβ−グルクロニド基を有する化合物が見出された。「活性分子」とは、周囲環境に匂いの恩恵又は効果を与えることができる全ての分子、特に発香性分子、すなわち付香成分、例えばアルコールを意味する。本発明の文脈で、「付香成分(perfuming ingredient)」とは、香料工業において現在使用されている化合物、すなわち快楽効果を与えるために付香調合物又は付香組成物中で活性成分として使用されている化合物である。換言すると、付香成分は、香料分野の当業者により、組成物の匂いを、本来持っている匂いではなく良好な方向又は心地よい方向へ改良又は変更することができる成分であると認識される。本発明の化合物は、デオドラント及び制汗剤のような用途で特に有用な価値ある付香成分であり、ここで、このデオドラント及び制汗剤は、化合物を分解しかつ活性の付香アルコールを放出することができる細菌と接触させられる。
【0009】
従って、本発明の第1の観点は、式
【化1】
[式中:
Rは、好ましくは、4−アリル−2−メトキシフェノール(オイゲノール)、3−ベンジル−3−ペンタノール、4−シクロヘキシル−2−メチルブタン−2−オール(供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、2−シクロヘキシルプロパノール、デカノール、9−デセノール(Rosalva、供給元:International Flavors and Fragrances、New York、USA)、(2,4−ジメチルシクロヘキサ−3−エニル)メタノール、(2,4−ジメチルシクロヘキシル)メタノール、2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルシクロヘキサノール、2,6−ジメチルヘプタン−2−オール、3,7−ジメチル−7−ヒドロキシオクタナール、2,5−ジメチル−2−インダンメタノール、3,7−ジメチル−1,6−ノナジエン−3−オール、6,8−ジメチルノナン−2−オール、4,8−ジメチル−7−ノネン−2−オール、(E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエノール(ゲラニオール)、(Z)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエノール(ネロール)、3,7−ジメチル−3,6−オクタジエノール、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール(リナロール)、3,7−ジメチルオクタン−1,7−ジオール(ヒドロキシシトロネロール)、3,7−ジメチルオクタノール、2,6−ジメチルオクタン−2−オール(テトラヒドロミルセノール)、3,7−ジメチルオクタン−3−オール、3,7−ジメチルオクテン−3−オール、3,7−ジメチルオクタ−6−エノール(シトロネロール)、3,7−ジメチルオクタ−7−エノール、2,6−ジメチルオクタ−7−エン−2−オール(ジヒドロミルセノール)、(E)−3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール(Polysantol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、ドデカノール、1,8−エポキシ−p−メンタン(ユーカリプトール)、2−エトキシ−5−(1−プロペニル)フェノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチル3−ヒドロキシヘキサノアート、4−エチル−2−メトキシフェノール、6−エチル−3−メチル−5−オクテノール、5−エチルノナン−2−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)ブタ−2−エノール、1−ヘプタノール、ヘキサノール、ヘキサン−2−オール、3−ヘキセノール、4−ヘキセノール、3−ヒドロキシブタン−2−オン、4−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)ブタン−2−オン、2−(ヒドロキシメチル)ノナン−2−オン、4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)ブタン−2−オン(ラズベリーケトン)、1−(N−インドリル)−3,7−ジメチルオクタン−1,7−ジオール、4−イソプロピル−1−ベンゼンメタノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、1−(4−イソプロピル−1−シクロヘキシル)エタノール、(4−イソプロピル−1−シクロヘキシル)メタノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、5−イソプロピル−2−メチルフェノール、(4−イソプロピルフェニル)メタノール、7−p−メンタノール(Mayol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、p−メンタン−3−オール(メントール)、p−メンタン−8−オール、p−メンテン−4−オール、p−メンテン−8−オール、p−メンタ−8−エノール、p−メンタ−8−エン−2−オール、p−メンタ−8−エン−3−オール、4−メトキシ−1−ベンゼンメタノール、7−メトキシ−3,7−ジメチルオクタン−2−オール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、2−メトキシ−2−フェニルエタノール、(4−メトキシフェニル)メタノール(アニシルアルコール)、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)フェノール(イソオイゲノール)、2−メトキシ−4−プロピル−1−シクロヘキサノール(Tarragol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、2−メトキシ−4−プロピルフェノール、2−メトキシ−4−ビニルフェノール、3−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)ブタノール、4−メチル−3−デセノール、4−メチル−3−デセン−5−オール(供給元:Givaudan SA、Geneva、スイス国)、4−(1−メチルエチル)シクロヘキシルメタノール、4−メチルフェノール、2−メチル−4−フェニルブタン−2−オール、3−メチル−4−フェニルブタン−2−オール、1−(4−メチルフェニル)エタノール、2−(2−メチルフェニル)エタノール、2−メチル−4−フェニルペンタノール、2−メチル−5−フェニルペンタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノール(フェニルヘキサノール、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、4−メチル−1−フェニルペンタン−2−オール、2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オール、2−(4−メチルフェニル)プロパン−2−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール(Ebanol(登録商標)、供給元:Givaudan SA、Geneva、スイス国)、2−(2−メチルプロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピラン、2−メチル−4−(2,3,3−トリメチル−2−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテノール(Santaliff(登録商標)、供給元:International Flavors and Fragrances、New York、USA)、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)ペンタン−2−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)ペンタ−4−エノール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチルシクロペンチル−3−エニル)ペンタ−4−エン−2−オール、2,6−ノナジエノール、1−ノナノール、6−ノネノール、1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,2,6,8−テトラメチル−1−ナフタレノール、オクタヒドロ−2,5,5−トリメチル−2−ナフタレノール、オクタノール、オクタン−2−オール、オクタン−3−オール、1−オクテン−3−オール、3,4,5,6,6−ペンタメチルヘプタン−2−オール(Kohinool(登録商標)、供給元:International Flavors and Fragrances、New York、USA)、2−ペンチル−1−シクロペンタノール、ペルヒドロ−4,8a−ジメチル−4a−ナフタレノール、2−フェノキシエタノール、4−フェニルブタン−2−オール、4−フェニル−3−ブテン−2−オール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、1−フェニルヘキサン−2−オール、フェニルメタノール、1−フェニルペンタン−2−オール、2−フェニルプロパノール、2−フェニルプロパノール、3−フェニルプロパノール、1−フェニルプロパン−2−オール、3−フェニル−2−プロペノール、2−tert−ブチルシクロヘキサノール(Verdol、供給元:International Flavors and Fragrances、New York、USA)、4−tert−ブチルシクロヘキサノール、1−(2−tert−ブチル−シクロヘキシルオキシ)ブタン−2−オール、2−tert−ブチル−4−メチル−1−シクロヘキサノール、テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル(2H)ピラン−4−オール(Florol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、2−(テトラヒドロ−5−メチル−5−ビニル−2−フリル)プロパン−2−オール、1−(2,2,3,6−テトラメチルシクロヘキサ−1−イル)ヘキサン−3−オール(Limbanol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、2,4,6,8−テトラメチルノナン−1−オール、3,6,7−テトラメチルノナン−1−オール、2,6,10,10−テトラメチル−1−オキサスピロ[4.5]デカン−6−オール、2,6,6,8−テトラメチルトリシクロ[5.3.1.0(1、5)]ウンデカン−8−オール(セドレノール)、(+)−(1R,2R)−1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2endo−オール(フェンコール)、(+)−(1R,2S)−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール(ボルネオール)、2,6,6−トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オール、3−(5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)シクロヘキサノール(Sandela(登録商標)、供給元:Givaudan SA、Geneva、スイス国)、4−(5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)シクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)ブタン−2−オール、4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オール(ベータ−イオノール)、(E)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オール(アルファ−イオノール)、(2,4,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エニル)メタノール、1−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)ヘキサン−3−オール、5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール、4,7,9−トリメチルデカン−2−オール、4,6,8−トリメチルデカン−2−オール、3,8,9−トリメチルデカン−2−オール、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエノール(ファルネソール)、3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン−3−オール(ネロリドール)、3,3,5−トリメチルヘキサノール、ウンデカノール及びウンデカン−2−オール及び10−ウンデセノールからなる群から選択される付香アルコールを表す]の化合物の付香成分としての使用に関する。
【0010】
式(I)の化合物は、β−グルクロニド抱合体に関する。
【0011】
好ましい実施態様の場合に、Rは、(E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエノール(ゲラニオール)、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール(リナロール)、3,7−ジメチルオクタ−6−エノール(シトロネロール)、2,6−ジメチルオクタ−7−エン−2−オール(ジヒドロミルセノール)、3−ヘキセノール、2−フェニルエタノール、(E)−3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール(Polysantol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、7−p−メンタノール(Mayol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、3−メチル−5−フェニルペンタノール(フェニルヘキサノール、origin:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、2,6−ノナジエノール、1−フェニルヘキサン−2−オール、テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル(2H)ピラン−4−オール(Florol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、3−(5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)シクロヘキサノール(Sandela(登録商標)、供給元:Givaudan SA、Geneva、スイス国)、3−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)ブタノール、4−シクロヘキシル−2−メチルブタン−2−オール(コラノール)、4−メチル−3−デセン−5−オール(ウンデカベルトール)、4−アリル−2−メトキシフェノール(オイゲノール)、4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)ブタン−2−オン(ラズベリーケトン)、p−メンタン−3−オール(メントール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、3,7−ジメチル−1,6−ノナジエン−3−オール(エチルリナロール)、3,7−ジメチルオクタノール、1−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)ヘキサン−3−オール(Norlimbanol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、2−エチル−4−[2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)ブタ−2−エノール(Dartanol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)、(E)−3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール(Polysantol(登録商標)、供給元:Firmenich SA、Geneva、スイス国)及び2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルシクロヘキサノールからなる群から選択される。
【0012】
同様に、更に好ましくは、Rは、4−アリル−2−メトキシフェノール(オイゲノール)、4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)ブタン−2−オン(ラズベリーケトン)、p−メンタン−3−オール(メントール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、2−フェニルエタノール、3,7−ジメチルオクタ−6−エノール(シトロネロール)及び2,6−ジメチルオクタ−7−エン−2−オール(ジヒドロミルセノール)からなる群から選択される。
【0013】
本発明の化合物は、特に特定の細菌と接触する場合に匂い分子を生成することができることが判明した。好ましくは、本発明の化合物は、皮膚微生物相の作用下で分解される。例えば、これらの化合物は、ヒトの汗中で同定された細菌と一緒に培養する際に、付香アルコールを遊離することができ、これらの化合物はデオドラント又は制汗剤中での用途のために特に有用である。
【0014】
式(I)の化合物を分解できる細菌は、β−グルクロニダーゼ酵素(uidA)をコードする遺伝子を有する細菌である。適切な細菌の非限定的な例は、腸内細菌科から選択される科に属する細菌及びコリネバクテリウム属(Corynebacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属、バクテロイド(Bacteroides)属及びコリネバクテリウム(Corynebacterium)属を含む。特に、このような細菌は、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エシェリキア・フェルグソニイ(Escherichia fergusonii)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロスス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・ハエモリチクス(Staphyloccoccus haemolyticus)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エシェリキア・フェルグソニイ(Escherichia fergusonii)、コリネバクテリウム・グルクロノリチクム(Corynebacterium glucuronolyticum)及びビフィドバクテリウム・デンチクム(Bifidobacterium denticum)から選択される一つとして同定される[Hawksworth, G., B.S Drasar, and M. J. Hill. 1971. Intestinal bacteria and the hydrolysis of glycosidic bounds. J. Med. Microbiol. 4:451-45][Brenner, D.J., Fanning, G.R., Skerman, F.J., Falkow, S., 1972. Polynucleotide sequence divergence among strains of Escherichia coli and closely related organisms. J. Bacteriol. 109, 953-965]。
【0015】
しかしながら、例えば環境に見られるような他の細菌も、本発明の化合物を分解することができる。
【0016】
上述に定義された式(I)の化合物は、本発明の他の主題を構成するが、ただしフェネチルβ−D−グルコピラノシドウロン酸;β−D−グルコピラノシドウロン酸4−(3−オキソブチル)フェニル;グルコピラノシドウロン酸1−メンチル;β−D−グルコピラノシドウロン酸4−ホルミル−2−メトキシフェニル;及びβ−D−グルコピラノシドウロン酸2−メトキシ−4−(2−プロペン−1−イル)フェニルは除く。これらの化合物は、市場で入手可能な成分から合成することができる。一般的にいうと、式(I)のグルクロシド抱合体は、対応するグルコシド抱合体の酸化により得ることができる。特別な例は以下に記載されている。他の方法は、アセチル化されたグルクロニドメチルエステルを、中間体を介して付香アルコールと反応させることである。
【0017】
上述のように、本発明は、付香成分としての式(I)の化合物の使用に関する。換言すると、これは、付香組成物又は付香された製品の匂い特性を付与する、強化する、改善する又は変更する方法に関し、この方法は、前記組成物又は製品に有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物を添加することを含む。「式(I)の化合物の使用」とは、ここでも、化合物(I)を有する、香料工業において有利に使用することができる全ての組成物の使用とも解釈される。
【0018】
実際に付香成分として有利に使用できる前記組成物も、本発明の主題である。
【0019】
従って、本発明の他の主題は、次の:
i) 付香成分としての、上記に定義された少なくとも1種の本発明による化合物;
ii) 香料担体及び少なくとも1種の付香補助成分からなる群から選択される少なくとも1種の成分;及び
iii) 場合により少なくとも1つの香料補助剤
を有する付香組成物である。
【0020】
「香料担体」とは、ここでは、香料の観点からは実質的に中性である材料、つまり、付香成分の感覚刺激特性を大幅には変更しない材料を意味する。前記担体は、液体又は固体であってもよい。
【0021】
液体担体として、非限定的な例として、乳化系、つまり溶剤及び界面活性剤系、又は香料分野で通常使用される溶剤を挙げることができる。香料分野で通常使用される溶剤の性質及び種類についての詳細な記載は網羅的にはできない。しかしながら、非限定的な例として、ジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール又はクエン酸エチルのような溶剤を挙げることができ、これらは最も一般的に使用される。香料担体及び香料ベースの両方を有する組成物のために、上記に特定されたものとは別の適切な香料担体は、水(この場合、可溶化量の界面活性剤が必要となる)、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン又は他のテルペン、Isopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)の商標で公知であるようなイソパラフィン又はグリコールエーテル及びDowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)の商標で公知であるようなグリコールエーテルエステルであってもよい。
【0022】
固体担体として、非限定的な例として、吸収性のガム又はポリマー、又はカプセル化する材料を挙げることができる。このような材料の例は、造壁材料又は可塑化材料、例えば単糖類、二糖類又は三糖類、天然又は化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、酢酸ポリビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又はH. Scherz著(Hydrokolloide(親水コロイド): Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln(食品中の安定剤、増粘剤及びゲル化剤), Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996のような参考資料で引用された材料を有することができる。カプセル化は、当業者に周知のプロセスであり、例えば噴霧乾燥、アグロメレーション又は押出成形のような技術を用いて行うことができるか;又はコアセルベーション及び複合コアセルベーション技術を含めたコーティングカプセル化からなる。
【0023】
上述の少なくとも1種の付香補助成分は、式(I)のものではない。更に、「付香補助成分(perfuming co-ingredient)」とは、ここでは、快楽効果を与えるために付香調製物又は付香組成物中で使用される化合物を意味する。換言すると、このような補助成分は、香料の1種であると考えるべきであり、匂いを有するだけではなく、組成物の匂いを肯定的又は快適な方向で付与又は変更することができるものとして当業者によって認識されなければならない。
【0024】
ベース中に存在する付香補助成分の性質及び種類は、ここでは、より詳細な記載は保証されず、この記載はいずれの場合にも網羅的ではないが、当業者は、一般的知識に基づき、かつ意図される使用又は用途及び所望の感覚刺激効果に従って選択することができる。一般的にいえば、この付香補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセタート、ニトリル、テルペノイド、窒素含有又は硫黄含有の複素環式化合物、及び精油のような多様な化学薬品クラスに属し、かつこの付香補助成分は、天然由来又は合成由来であってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれの場合でも、S. Arctander著, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA又はそのより最近の版の書籍のような参考文献、又は同様の種類の他の文献に列挙されているか、並びに香料分野の豊富な特許文献に挙げられている。また、上述の補助成分は、多様なタイプの付香化合物を制御して放出するために公知の化合物であってもよく、又はカプセル化された香料であってもよいと解釈される。
【0025】
「香料補助剤(perfumery adjuvant)」とは、ここでは、色、特に耐光性、化学的安定性等のような付加的な特性を付与することができる成分を意味する。付香ベースにおいて通常使用される補助剤の性質及び種類の詳細な記載は、網羅的にはできないが、上記成分は当業者には周知であると述べることができる。
【0026】
式(I)の少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種の香料担体からなる本発明による組成物は、式(I)の少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の香料担体、少なくとも1種の付香補助成分、及び場合により少なくとも1種の付香補助剤を有する付香組成物と同様に本発明の特別な実施態様を示す。
【0027】
調香師が調和を作り出すことを可能にし、本発明の多様な化合物の香調を有するように付香することを可能にし、調香師の仕事に新たな手段を作り出すことを可能にする場合に、上述の組成物中で式(I)の1種より多い化合物が重要であるという可能性を有することを言及することは有用である。
【0028】
本発明の化合物は、好ましくは、現代の香料の多くの分野で、特に機能性香料において、上記化合物(I)が添加される消費製品の匂いを肯定的に付与するか又は変更するために使用することができる。実際に、例えば、本発明の化合物は、ヒトの汗中に存在する細菌を活用し、かつ適切な時期に付香分子を放出することにより関連する悪臭に対処することができるが、香料の作用が実際に必要となる際、すなわち細菌が悪臭前駆体を分解する際に、しばしばデオドラント組成物中で既に蒸発して存在する典型的な香料成分自体では浮遊の問題が生じる。
【0029】
従って、
i) 付香成分として、上述で定義されたような式(I)の少なくとも1種の化合物;及び
ii) 香料消費ベース
を有する付香消費製品も、本発明の主題である。
【0030】
本発明の化合物は、本発明の付香組成物自体としてか又はその一部として添加することができる。
【0031】
明確にするために、「付香消費製品(perfuming consumer product)」とは、少なくとも付香効果を付与することが予想される消費製品を意味し、換言すると、付香された消費製品であることを言及しなければならない。明確にするために、「香料消費ベース(perfumery consumer base)」とは、ここでは機能性調製物、並びに場合により、消費製品に対応する付加的な有益材(benefit agents)を意味することを言及しなければならず、この消費製品は付香成分と相溶性でありかつ適用される表面(例えば皮膚、繊維製品、又は住宅表面)に快適な匂いを付与することが想定される。換言すると、本発明による付香消費製品は、機能性調製物、並びに場合により所望な消費製品に対応する付加的な有益材、例えばデオドラント又は空気清浄剤、及び嗅覚的に有効量の本発明による少なくとも1種の化合物を有する。
【0032】
香料消費ベースの構成成分の性質及び種類は、より詳細な記載は保証されず、この記載は いずれの場合も網羅的ではないが、当業者は、一般的知識に基づき、かつ前記製品の性質及び所望の効果に従って選択することができる。
【0033】
適切な香料消費ベースの非限定的な例は、繊維ケア製品、例えば液体又は固体洗剤、繊維柔軟剤、繊維消臭剤、漂白剤;化粧品、例えばデオドラント又は制汗剤、又はスキンケア製品(例えば付香石鹸、シャワームース又はバスムース、又は衛生製品);エアケア製品、例えば空気清浄剤又は「すぐ使用できる」粉末状空気清浄剤;又はホームケア製品、例えば食器洗剤又は硬質表面用洗剤であってもよい。
【0034】
好ましい付香組成物又は付香された製品は、デオドラント及び制汗剤である。
【0035】
本発明の化合物を導入することができるデオドラント又は制汗剤組成物の一般的な例は、例えば、US4822603、WO2001089464、EP0024175、EP0468564又はEP0384034に記載されている。
【0036】
上述の消費製品ベースのいくつかは、本発明の化合物にとって攻撃的な媒体であることがあるため、例えば適切な外部刺激、例えば酵素、光、熱又はpH変化の際に本発明の成分を放出するために適している、カプセル化又は他の化学薬品への化学的な結合により、この化合物を早期の分解に対して保護することが必要となることがある。
【0037】
本発明による化合物を多様な上述の製品又は組成物に導入することができる割合は、広い範囲の値で変化する。これらの値は、付香されるべき製品の性質及び所望な感覚刺激効果、並びに本発明による化合物が、付香補助成分、溶剤又はこの分野で通常使用される添加剤と混合される場合には、特定のベース中での補助成分の性質に依存する。
【0038】
例えば、付香組成物の場合には、本発明の化合物の典型的な濃度は、これが導入される組成物の質量を基準として、0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%のオーダーであるか又はそれ以上である。この化合物を付香された製品中へ導入する場合には、この製品の質量に対するパーセンテージで、これより低い濃度を使用することができる。
【0039】
上記に定義したように、式(I)の化合物を、β−グルクロニダーゼ酵素(uidA)をコードする遺伝子を有する細菌と接触させる工程を含む組成物からの付香アルコールを遊離する方法は、本発明の他の主題である。特別な実施態様の場合に、この細菌は、ヒト由来であり、かつ腸内細菌科から選択される科及びコリネバクテリウム属(Corynebacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属、バクテロイド(Bacteroides)属及びコリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する。好ましくは、この細菌は、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エシェリキア・フェルグソニイ(Escherichia fergusonii)、スタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・キシロスス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・ハエモリチクス(Staphyloccoccus haemolyticus)、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エシェリキア・フェルグソニイ(Escherichia fergusonii)から選択される一つとして同定される。
【0040】
本発明は、ここで次の実施例によって更に詳細に記載されるが、この実施例は本発明を制限するものではない。この実施例中での略語は、この分野において通常の意味であり、温度は摂氏(℃)で示されている;NMRスペクトルデータは、CDCl
3(特に明記しない場合)で、
1H及び
13Cについて360又は400MHz機器で記録され、化学シフトδは、標準としてTMSに関するppmで表され、カップリング定数JはHzで表される。
【0041】
実施例1
式(I)の化合物の合成
実験:
UPLC−MS。分析は、質量計と連結したWaters(Baden-Daettwil、スイス国)Acquityシステムで行った。この分離は、Acquity BEH-C18カラム(内径2.1mm×100mm、1.7m)で行った。溶離剤は、ギ酸0.1%を有するCH
3CN(溶剤B)及びギ酸0.1%を有する水(溶剤A)であった。勾配プロフィールを、B10%で開始し、これを0.5分間保持し、7.5分でB90%に増大させた。この流速は0.3mL/minであった。この質量計は、ネガティブモードで操作したESIソース(HESI-II)を備えたThermo Finnigan LXQであった。このスプレー電圧は4.0kVであり、蒸発器温度は250℃であり、毛管温度は350℃であった。このシースガスは、50(Finnigan任意単位)の流速の窒素であった。この補助ガスも、20(Finnigan任意単位)の流速の窒素であった。このイベントは、スキャンイベント1からの第1の最大強度イオンのデータ依存MS/MSと連結されたフルスキャン[80−800]であり、コリジョンエネルギーは35Vであった。
核磁気共鳴(NMR)スペクトル。1H−及び13C−NMRスペクトルを、Bruker AV-500(チューリッヒ、スイス国)分光器で500.13及び125.76MHzで又はAV-600分光器で600.34及び150.96MHzでそれぞれ記録した。この化学シフトは、内部標準としてのTMSに対して参照した。このアサイメントは、2D NMR(HSQC、HMBC及びCOSY)によって確認した。
【0042】
(i) 2−フェニルエチル β−D−グルコピラノシドウロン酸(フェネチロール グルクロニド)の合成
β−グルコピラノシドを、標準的手法に従って、グリコシルドナーとして市場で入手できるペンタアセチルブロモ−D−グルコース及びそれぞれのグリコシルアクセプターとして遊離アルコールから出発して製造した。
【0043】
フェネチロールグルコシド(973mg、3.42mmol)、PIPO(12g)、KBr(41mg、0.34mmol)及び塩化テトラブチルアンモニウム(57mg、0.2mmol)を、塩化メチレン(11mL)及びNaHCO
3飽和(6.6mL)中で混合した。0℃に冷却後に、NaOCl 10%(8.6mL)及びNaCl飽和(15mL)の混合物を滴加し、この反応物を室温で1.5時間撹拌した。塩化メチレンを留去し、この混合物を濃HClでpH2〜2.5に酸性化した。この生成物をRP-18(水9:エタノール1)でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、フェネチロール グルクロニド(581mg)が収率57%で得られた。MW:298.3(C
14H
18O
7)。
UPLC−MS H−ESI
-(r.t. 3.14min)
MS−MS:M−H=296.9、依存スキャン:MS
n:112.6(100%相対強度)、156.7(42)、174.7(30%)、86.6(27%)、236.9(26%)、192.8(25%)。
13C NMR(125MHz、MeOD):δ 37.2(t)、72.0(t)、73.7(d)、74.9(d)、76.2(d)、77.8(d)、104.4(d)、127.2(d)、129.4(d)、130.1(d)、140.0(s)、177.4(s)。
【0044】
(ii) (4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン−β−D−グルコピラノシドウロン酸(ラズベリー ケトン グルクロニド)の合成
ラズベリーケトングルコシド(1000mg、3.06mmol)、PIPO(12mg)、KBr(36.5mg、0.306mmol)及び塩化テトラブチルアンモニウム(51.1mg、0.184mmol)を、塩化メチレン(11mL)及びNaHCO3飽和(6.6mL)中で混合した。0℃に冷却後に、NaOCl 10%(7.72mL)及びNaCl飽和(15mL)の混合物を滴加し、この反応物を室温で2.5時間撹拌した。塩化メチレンを留去し、この混合物を濃HClでpH2〜2.5に酸性化した。この生成物をSiO
2(酢酸エチル6:メタノール4)でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、ラズベリーケトン グルクロニド10(228mg)が収率22%で得られた。
MW:340.3(C
16H
20O
8)。
UPLC−MS H−ESI
-(r.t. 2.67min)
MS−MS:M−H=339、依存スキャン:MS
n:112.6(100%相対強度)、174.7(66%)、86.6(27%)、162.8(7%)。
13C NMR(125MHz、MeOD):δ 30.0(t)、30.0(q)、46.0(t)、73.6(d)、74.7(d)、76.4(d)、77.7(d)、102.6(d)、118.1(d)、130.3(d)、136.6(s)、157.6(s)、177.0(s)、211.1(s)。
【0045】
(iii) メチル 2,3,4−トリ−O−アセチル−1−O−(2,2,2−トリクロロエタンイミドイル)−D−グルコピランウロナートの合成
メチル2,3,4−トリ−O−アセチル−D−グルコピランウロナート(1.5g、4.49mmol)を、CH
2Cl
2(18mL)中に溶かし、続けてトリクロロアセトニトリル(4.34g、30.1mmol)及びK
2CO
3(4.15g、30.1mmol)を溶かした。この混合物を、21℃で15時間撹拌した。この粗製混合物をSiO
2カラム(高さ4cm、約SiO
2 6gを含有)に置き、Et
2O(100mL)で溶離させ、回転蒸発器で濃縮して、100%のα−異性体1.79gを得た。収率83%。
13C NMR(125MHz、CDCl
3):δ 20.4(q)、20.5(q)、20.7(q)、53.0(q)、69.0(d)、69.1(d)、69.5(d)、70.5(d)、90.5(s)、92.6(d)、160.6(s)、167.2(s)、169.5(s)、169.7(s)、169.8(s)。
【0046】
(iv) 3,7−ジメチルオクタ−6−エン−1−イル β−D−グルコピラノシドウロン酸(シトロネロール グルクロニド)の合成
メチル 2,3,4−トリ−O−アセチル−1−O−(2,2,2−トリクロロエタンイミドイル)−D−グルコピランウロナート(190mg、0.397mmol)及びシトロネロール(62mg、0.397mmol)を、CH
2Cl
2(7mL)中で、モレキュラーシーブ4Aの存在で1時間撹拌した。この反応物を、−15℃で1時間冷却した。次いでBF
3Et
2O(25.4mg、0.179mmol)を添加した。この反応をTLC(薄層クロマトグラフィー、SiO
2)により監視した。30分後に、全てのイミダートが消費された。EtOAcを添加し(30mL)、有機相をNaHCO
3飽和水溶液で洗浄し、次いでブラインで洗浄した。溶剤を回転蒸発器により真空中で除去した。粗製生成物を、SiO
2で、ペンタン/Et
2O 2/3で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、保護された糖85mg(収率45%)、100%のβ−異性体が得られた。
【0047】
精製された生成物(74mg、0.157mmol)を、MeOH(2mL)中に希釈した。0℃で、水性NaOH 5M(0.16mL)を添加した。この生成物を1時間撹拌し、室温に戻した。MeOHを真空中で除去し、次いで残留物を水中の溶液の形でクロマトグラフィーカラム(Si=2−RP18、2.5g)に供した。このカラムを、水100%で開始する勾配で溶離し、この生成物を水/EtOH 4/1の混合物で複数の画分に溶離した。表題化合物を2つのジアステレオ異性体の混合物として得た。β立体化学で純粋:28mg(収率54%)。
MW:332.4(C
16H
28O
7)。
UPLC−MS H−ESI
-(r.t.4.93min)
MS−MS:M−H=331.2依存スキャン:MS
n:112.6(100%相対強度)156.7(58%)、128.7(39%)、271.0(36%)。
13C NMR(151MHz、MeOD)(
*立体異性体):17.6(q);20.0(q);25.9(q);26.5(t);30.7(t);30.7(t);73.6(d);69.3、69.4
*(t);73.7、75.0
*(d);75.0、76.1
*(d);77.9(d);104.3、104.4
*(d);125.9、126.0(s);177.0(s)。
【0048】
(v) 2,6−ジメチルオクタ−7−エン−2−イル β−D−グルコピラノシドウロン酸(ジヒドロミルセノール グルクロニド)の合成
メチル 2,3,4−トリ−O−アセチル−1−O−(2,2,2−トリクロロエタンイミドイル)−D−グルコピランウロナート(190mg、0.397mmol)及びジヒドロミルセノール(62mg、0.397mmol)を、モレキュラーシーブ4Aの存在で1時間撹拌した。この反応物を、−15℃で(1時間)冷却した。次いでBF
3Et
2O(25.4mg、0.179mmol)を添加した。この反応をTLC(薄層クロマトグラフィー、SiO
2)により監視した。30分後に、全てのイミダートが消費された。EtOAcを添加し(30mL)、有機相をNaHCO
3飽和水溶液で洗浄し、次いでブラインで洗浄した。溶剤を回転蒸発器により真空下で除去した。粗製生成物を、SiO
2で、ペンタン/Et
2O 2/3で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、保護された糖73mg(収率39%)、100%のβ−異性体が得られた。
【0049】
精製された生成物(60mg、0.127mmol)を、MeOH(2mL)中に希釈した。0℃で、水性NaOH 5M(0.13mL)を添加した。この生成物を1時間撹拌し、室温に戻した。MeOHを真空中で除去し、次いで残留物を水中の溶液の形でクロマトグラフィーカラム(Si=2−RP18、2.5g)に供した。このカラムを、水100%で開始する勾配で溶離し、この生成物を水/EtOH 4/1の混合物で複数の画分に溶離した。表題化合物を2つのジアステレオ異性体の混合物として得た。β立体化学で純粋:21mg(収率50%)。
MW:332.4(C
16H
28O
7)。
UPLC−MS H−ESI
-(r.t.4.64min)
MS−MS:M−H=331.2依存スキャン:MS
n:112.6(100%相対強度)、156.7(47%)、128.7(29%)、174.8(7%)。
13C NMR(151MHz、MeOD)(
*立体異性体):20.1(q);23.0(t);26.8(q)、38.5(t);39.1(d);48.6、48.7
*(t);73.8(t);75.0(d);76.5(t);78.1(d);79.2(s);98.5(d);112.9(t);146.1(d);177.0(s)。
【0050】
実施例2
式(I)の化合物の「プロパフューム」としての性能
本発明の式(I)の化合物からの付香アルコールの遊離を、定義された皮膚細菌株とともにインキュベーションすることよりin vitroで試験した。
【0051】
インキュベーション
1.
細菌溶液の準備
a) 媒体:トリプチケースソイ寒天(TSA)固形培地を、Beckton Dickinson(Pont de Claix、フランス国)から購入した。5%ヒツジ血を有するシェドラー寒天固形培地(SCH)を、Biomerieux(リヨン、フランス国)から購入した。
【0052】
b) 試薬:0.9%(NaCl0.9%)の滅菌塩化ナトリウム溶液を、実験室で作製した。塩化ナトリウム粉末を、Carlo Erba(Val de Reuil、フランス)から購入した。
【0053】
c) 細菌溶液:2種の腋細菌単離体、プロピニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes ATCC 6919)及びスタフィロコッカス・ワルネリ(Staphylococcus warneri DSM 20316)(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und ZellKulturen DSMZ(ドイツ国)で16S rDNA配列により同定)を、嫌気条件下で、それぞれSCH寒天上、37℃で72時間培養し、かつTSA上、37℃で24時間培養した。
【0054】
SCH寒天上の純粋な初代培養から単離したP.アクネスのコロニーを、新たなSCH寒天に接種し、嫌気条件下に37℃で72時間インキュベーションした。インキュベーションの後に、この全体の培養を、20mlのNaCl 0.9%中で振盪により解離させ、次いで室温において5000rpmで10分間遠心分離した。このペレットを、NaCl 0.9%中で洗浄し、NaCl 0.9%中で2回濃縮した。
【0055】
同様に、TSA上の純粋な初代培養からのS.ワルネリのコロニーを、新たなTSA上に接種し、37℃で24時間インキュベーションした。インキュベーション後に、この全体の培養を、20mlのNaCl 0.9%中で振盪により解離させ、次いで4℃において5000rpmで15分間遠心分離した。このペレットを、NaCl 0.9%で洗浄し、NaCl 0.9%中で2回濃縮した。
【0056】
2.
インキュベーションのための一般的方法
メントールグルクロニド(6mg/kg)、フェネチロールβ−グルクロニド(10.75mg/kg)及びラズベリーケトンβ−グルクロニド(13mg/kg)を含む水中のプロパフュームのグルクロニド混合物を、次のいずれかと一緒にインキュベーションした:
− 上述の細菌溶液500μL
− ポジティブコントロールとして、Helix pomatia(RocheDiagnostic, Indianapolis, USA)社から市販の酵素β−グルクロニダーゼ/アリールスルファターゼ10μL及びNaCl 0.9% 490μL
− 細菌とのインキュベーションのためのネガティブコントロールとして、NaCl 0.9% 500μl。
【0057】
各溶液を、複製して準備した(ガラスバイアル中)。
このバイアルを、細菌溶液に依存して1〜7日間温和に撹拌しながら37℃で加熱ブロック中に置いた。インキュベーション期間の完了時にバイアルを室温に冷却させ、150μLをLC−MS溶剤B50μLと混合し、アクロディスク(acrodisc)によって濾過し、1μLをLC−MSに注入した(考察されるピーク面積をそれぞれの分子量に従ってSIMモードで測定した)。インキュベーションされた溶液中のグルクロニド(HESI−)又はグルコシド(HESI+)面積と、ブランク(100%として固定)中のグルクロニド(HESI−)又はグルコシド(HESI+)面積を比較した。
【0058】
3.
インキュベーション後の揮発物の分析
一般的方法
2mLガラスバイアル中に、CH
2Cl
2(200μL、0.2μg)中の内部標準(IS)(エイコサン)の溶液及びCH
2Cl
2 200μLを、インキュベーションの溶液に添加し、次いで十分に混合し、3260gで3分間遠心分離した。この低層をピペットで取り除き、Na
2SO
4で乾燥し、綿で濾過し、アルゴン流下で約20μLに濃縮した。1μLをGC−MSに注入した。この濃度をa−アンドロスタノール(m/z276)と比較したa−アンドロステノール(m/z274)のGC−MSピーク面積から測定しかつ応答計数値(0.3845±0.03)により補正した。
【0059】
表1. プロピオニバクテリウム・アクネスとインキュベーションした後のグルクロニド抱合体の残留率(パーセンテージで)
【表1】
【0060】
表2. S.ワルネリとインキュベーションした後のグルクロニド抱合体の残留率(パーセンテージで)
【表2】
【0061】
このデータは、プロピオニバクテリウム・アクネスの存在で、変換は1日後に観察されず、アルコールはインキュベーションの5日後に放出されることを示す。スタフィロコッカス・ワルネリについて、これは完全な変換であり及び1日後ですでに出発材料は残らず、相応するアルコールの迅速な放出が示される。
【0062】
表3. S.ワルネリとインキュベーションした後のグルクロニド抱合体の残留率(パーセンテージで)
【表3】
【0063】
この結果は、S.ワルネリと一緒の5日間のインキュベーション後にグルコシド抱合体からのアルコールの効果的な放出を示す。