特許第6483102号(P6483102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483102
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】不織材料
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20190304BHJP
   D02G 1/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   D04H3/147
   D02G1/00 103
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-522374(P2016-522374)
(86)(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公表番号】特表2016-527410(P2016-527410A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014062074
(87)【国際公開番号】WO2015000663
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年4月24日
(31)【優先権主張番号】13174824.6
(32)【優先日】2013年7月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501080701
【氏名又は名称】ロウ アンド ボナー ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Low & Bonar B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】セース フェルスヒュット
(72)【発明者】
【氏名】ロブ タイラー
(72)【発明者】
【氏名】イーペ ファン デル ゼイプ
(72)【発明者】
【氏名】ペペイン カイク
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭52−014346(JP,B2)
【文献】 特開2004−169249(JP,A)
【文献】 特開2002−020956(JP,A)
【文献】 特表2012−502483(JP,A)
【文献】 特表2005−536646(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00862545(GB,A)
【文献】 英国特許出願公開第01192351(GB,A)
【文献】 特表2014−512983(JP,A)
【文献】 特開平06−065849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00−18/04
D02G1/00−3/48
D02J1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の不織層の厚さが繊維の不織層の幅及び長さの両方より少なくとも1桁小さい大きさである、厚さ、幅及び長さを有する少なくとも1つの繊維の不織層を含む材料であって、少なくとも1つの繊維の不織層が少なくとも1つの加工糸を含み、その際、加工糸が少なくとも2つの異なるポリマーを含むマルチフィラメント糸であり、且つ少なくとも1つの繊維の不織層が熱的に結合されることを特徴とする、前記材料。
【請求項2】
材料が、材料の全質量を基準として少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも25質量%、更に好ましくは少なくとも50質量%、更に一層好ましくは少なくとも75質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%の加工糸を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
加工糸に加工する前の同じ質量の糸の長さに対する加工糸の長さの比が、0.90以下、好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.60以下、最も好ましくは0.50以下である、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
加工糸が、長さ1メートル当たり少なくとも25個、好ましくは少なくとも50個、更に一層好ましくは少なくとも75個、最も好ましくは少なくとも100個の捲縮を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
少なくとも1つの加工糸がニット・デ・ニット糸である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
ニット・デ・ニット糸が、熱固定したニット・デ・ニット糸である、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
マルチフィラメント糸が、二成分フィラメント、好ましくはコア−シース二成分フィラメントを含む、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
加工糸が少なくとも500dtex、更に好ましくは少なくとも1000dtex、最も好ましくは少なくとも1500dtexの線密度を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
加工糸が加工糸の長さに沿って異なる色の区画を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項10】
異なる色の区画が、材料の表面にわたりランダムに分布する、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
加工糸が、加工糸の長さに沿って分布する絡み合いを含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項12】
加工糸における絡み合いの数が、加工糸の長さ1メートル当たり少なくとも0.5個、好ましくは長さ1メートル当たり少なくとも1.0個、更に好ましくは長さ1メートル当たり少なくとも1.5個、最も好ましくは長さ1メートル当たり少なくとも2.0個である、請求項11に記載の材料。
【請求項13】
加工糸における絡み合いの長さが、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも5cm、更に好ましくは少なくとも10cm、更に一層好ましくは少なくとも20cm、最も好ましくは少なくとも50cmである、請求項11又は12に記載の材料。
【請求項14】
絡み合いが、ノットの形成によって、機械的摩擦点を形成するためのフィラメントの撚り合せによって及び/又はフィラメントを互いに熱的に結合することによって形成されたものである、請求項11から13までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項15】
フィラメントが、加工糸に、流体噴流、好ましくは空気噴射を向けることによって撚り合せられている、請求項14に記載の材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1つの繊維の不織層を含む材料及び前記材料の製造方法に関する。
【0002】
不織材料は、例えば、排水材料、建築材料及び包装材料などの多くの産業用途に使用されている。産業用途に使用される不織材料は、一般に、高い引張強度と高い弾性率を有する。産業用途の不織布は、例えば、不規則な形状の物体の周りの包装材料として使用される場合、又は複雑な三次元形状に成形される場合に、高度の局所的な変形に供され得る。高弾性率の不織布は、このような高度の局所的な変形に適合する能力に欠ける場合がある。
【0003】
GB1,192,351号は、捲縮した連続フィラメントが張力下で供給される捲縮した連続フィラメントの絡み合いを形成し、その後、張力を解放して三次元的にランダムにフィラメントの相互浸透を作り出し、且つ分散液又は溶液の形で適用される少なくとも1つの樹脂又はエラストマー結合剤によってフィラメントを一緒に結合することによる柔軟なシート材料の製造方法を開示している。
【0004】
高度の局所的な変形に適合する能力を有する少なくとも1つの繊維の不織層を含む材料を提供することが本発明の課題である。
【0005】
本発明の課題は、請求項1による材料によって達成される。
【0006】
加工糸(textured yarn)が繊維の不織層に存在することで、材料の機械的特性を、材料が高度の局所的変形に適合できるように調整することができる。
【0007】
本願明細書で使用される繊維との用語は、ステープルファイバー及びフィラメントの両方を意味する。
【0008】
加工糸は、糸の繊維及び/又はフィラメントの長さに沿って耐久性の歪みを導入するように加工した糸、例えば、クリンプ、コイル、ループ、しわ又は他の歪み、又はそれらの任意の組み合わせであることが理解されるべきである。
【0009】
当業者によく知られているように、繊維の不織層は実質的に2次元の形状を有しており、その際、繊維の不織層の厚さは、繊維の不織層の幅と長さの両方より、少なくとも1桁、更に好ましくは少なくとも2桁、更に好ましくは少なくとも3桁小さい大きさである。
【0010】
繊維の不織層の厚さは、0.05〜10mmの範囲、好ましくは0.10〜5.0mmの範囲、更に好ましくは0.2〜2.0mmの範囲、更に好ましくは0.3〜1.0mmの範囲である。
【0011】
加工した加工糸の長さは、耐久性の歪みの形成のために加工糸に加工する前に、同じ質量を有する糸の長さと比較して短い。糸の長さは、糸の一方の端部をクランプに固定し且つ糸の他方の端部からクランプまでの距離を測定することによって、糸に負荷をかけることなく決定され、その際、加工糸に加工する前の糸の長さは好ましくは1.0mである。加工する前の糸の長さに対する加工糸の長さの比は、0.90以下、好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.60以下、最も好ましくは0.50以下である。好ましくは、加工する前の糸の長さに対する加工糸の長さの比は少なくとも0.20、更に好ましくは少なくとも0.30、最も好ましくは少なくとも0.40である。加工する前の糸の長さに対する加工糸の長さの比を低下させることによって、加工糸の歪みの数及び/又は歪みの大きさが増加し、これは加工糸の破断時の最大伸びを増加させる及び/又は小さな伸び、例えば、2%、5%又は15%の伸びでの加工糸の弾性率を低下させる。加工する前の糸の長さに対する加工糸の長さの比が0.40以下の場合、歪みの数は、加工糸における歪みの間に形成されている絡み合いの危険性が増大するレベルまで増加することがあり、これは加工糸の破断時の最大伸びを低下させる及び/又は加工糸の小さい伸び時の弾性率を増加させることがある。
【0012】
好ましくは、歪みの数は、加工した加工糸の長さ1メートル当たり少なくとも25個、更に好ましくは少なくとも50個、更に一層好ましくは少なくとも75個、最も好ましくは少なくとも100個である。好ましくは、歪みの数は、加工した加工糸の長さ1メートル当たり250個以下、更に好ましくは200個以下、更に一層好ましくは150個以下、最も好ましくは加工した加工糸の長さ1メートル当たり少なくとも125個以下である。
【0013】
一実施態様では、少なくとも1つの繊維の不織層を含む材料は完全に加工糸からなり得る。
【0014】
耐久性の歪みは、任意の適切な方法によって、例えば、連続的な方法で又は3段階の方法のいずれかで、糸を撚り合わせ、撚糸を加熱硬化し且つ加熱硬化した撚糸を解撚することによって、又は糸を加熱した押込み室(stuffer box)に通すことによって糸に導入され得る。糸はまた、糸を加熱し、加熱した糸をナイフエッジに通すことによって又はギアホイール対の間に加熱した糸を通すことによって加工してもよい。糸は、糸をエアテクスチャライジング(air-texturizing)することによって加工糸に加工してもよい。
【0015】
好ましくは、糸は、糸を布に編み、任意に編地を加熱硬化し、そして編地をニット・デ・ニット(KDK)糸にほどくことによって加工糸に加工される。ニット・デ・ニット糸は、ほどいた糸をストレート糸としてボビンに巻き取ることができる利点を有するが、但し、十分な張力が巻線の間にかけられ、それによってボビン上での絡み合いの危険性を低減することを条件とする。KDK糸を巻戻すことによる張力の解放は、加工糸において耐久性の歪みを再確立する。
【0016】
編地の加熱硬化は、好ましくは、高められた温度で、好ましくは糸の繊維及び/又はフィラメントに含まれるポリマーのガラス転移温度を上回る温度にてオーブン内で実施される。蒸気は更に、加熱硬化される編地への熱伝達を増加させるためにオーブン内に導入され得る。
【0017】
編地は更に、任意の公知の染色又は印刷技術を用いて、任意の所望のパターンに染色されてよい。編地は、例えば、少なくとも2つの異なる色によって染色され得る。従って、ほどいたニット・デ・ニット糸は、加工糸の長さに沿って異なる色の区画を含み得る。糸の長さに沿って異なる色の区画を有するニット・デ・ニット糸を含む少なくとも1つの繊維の不織層は、その表面上に異なる色がランダムに分布されており、これは例えば、カムフラージュ用途に及び/又は装飾用途、例えば、カーテン、ブラインド及び/又は花の包装に使用され得る。一実施態様では、編地は、少なくとも3つの異なる色、好ましくは少なくとも4つ、更に好ましくは少なくとも5つの異なる色で染色されているので、ニット・デ・ニット糸は、糸の長さに沿って少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの異なる色を有する区画を有する。
【0018】
嵩高糸(texturized yarn)は、少なくとも10質量%の1つ以上の熱可塑性ポリマーが加工糸において熱結合できるように含まれ得る。好ましくは、加工糸は、少なくとも25質量%、更に好ましくは少なくとも50質量%、更に好ましくは少なくとも75質量%、更に好ましくは少なくとも90質量%の1つ以上の熱可塑性ポリマーが含まれる。好ましい実施態様では、加工糸は、100質量%の1つ以上の熱可塑性ポリマーからなる。
【0019】
加工糸はマルチフィラメント糸であり得る。好ましくは、マルチフィラメント糸は少なくとも2つの異なるポリマーを含む。少なくとも2つの異なるポリマーは、マルチフィラメント糸に含まれる別個のフィラメントに又はマルチフィラメント糸に含まれる1つのフィラメントに一緒に存在し得る。少なくとも2つの異なるポリマーは、マルチフィラメント糸に含まれる別個のフィラメントに部分的に存在してよく、また、マルチフィラメント糸に含まれる1つのフィラメントに一緒に部分的に存在してもよい。好ましくは、少なくとも2つの異なるポリマーの融点は少なくとも10℃だけ異なる。更に好ましくは、融点は少なくとも50℃だけ異なる。少なくとも2つの異なるポリマーを含むマルチフィラメント糸は、加工糸における粘着力を高めるために低い融点を有するポリマーの少なくとも融点の温度に糸を曝すことによって熱結合されてよい。少なくとも2つの異なるポリマーは、好ましくは、マルチフィラメント糸において全てのフィラメント間の粘着力が確実に得られるように、二成分フィラメント、例えば、隣接及び/又は芯鞘の二成分フィラメントに含まれる。加工糸及び/又は少なくとも1層の繊維の不織層は、このように加工糸に由来するポリマーによって熱結合される。
【0020】
マルチフィラメント糸は、マルチフィラメント糸の個々のフィラメントが比較的大きな面積にわたり繊維の不織層に分布することを防ぐために、加工糸の長さに沿って分布する絡み合いを更に含み得る。絡み合いは、この区画のマルチフィラメント糸における個々のフィラメントが、巻き取り、繰り出し及び/又は繊維の不織層中に導入される場合に一緒に残るように、フィラメントが互いに強固に結合されているマルチフィラメント糸の区画であると理解されている。絡み合いは、任意に好適な方法で、例えば、ノットの形成によって、機械的摩擦点を形成するためのフィラメントの撚り合せによって及び/又はフィラメントを互いに熱的に結合することによって形成され得る。
【0021】
マルチフィラメント糸が絡み合いを含む場合、2つの連続した絡み合いの間の距離は、マルチフィラメント糸の個々のフィラメントが分布し得る繊維の不織層の面積を制限する。
【0022】
マルチフィラメント糸のフィラメントは、例えば、糸の長手方向に対する角度で、好ましくは糸の長手方向に対して垂直の角度で、マルチフィラメント糸に、所望の時間にわたり、流体噴流、好ましくは空気噴射を向けることによって撚り合せられ得る。任意に、撚り合せたフィラメントは、絡み合いの強度を高めるために熱的に結合されてよい。
【0023】
糸が、個々の絡み合いが作られる時に停滞する場合、絡み合いの長さは、流体噴射の幅によって決定される。マルチフィラメント糸の長さに沿う2つの連続した絡み合いの間の距離は、こうして所望の通り選択され得る。
【0024】
個々の絡み合いが作られる際に糸が動いている場合、絡み合いの長さは、流体噴射がマルチフィラメント糸に向けられる間の時間によって及びマルチフィラメント糸の速度によって決定される。マルチフィラメント糸の長さに沿う2つの連続した絡み合いの間の距離は、前の絡み合いを形成するために流体噴射がマルチフィラメント糸に向けられる時間の終了から、次の絡み合いを形成するために流体噴射がマルチフィラメント糸に向けられる時間の開始までの間の時間によって、及びマルチフィラメント糸の速度によって決定される。
【0025】
加工したマルチフィラメント糸における絡み合いの数は非常に広範に変化し得る。好ましくは、マルチフィラメント糸における絡み合いの数は、加工糸の長さ1メートル当たり少なくとも0.5個、好ましくは長さ1メートル当たり少なくとも1.0個、更に好ましくは長さ1メートル当たり少なくとも1.5個、最も好ましくは長さ1メートル当たり少なくとも2.0個である。
【0026】
加工したマルチフィラメント糸における絡み合いの長さは、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも5cm、更に好ましくは少なくとも10cm、更に一層好ましくは少なくとも20cm、最も好ましくは少なくとも50cmであってよい。マルチフィラメント糸における絡み合いの長さは、加工糸の全長であってもよい。好ましくは、マルチフィラメント糸における絡み合いの長さは、10m以下、好ましくは10m以下、更に好ましくは5m以下、更に一層好ましくは2.5m以下、最も好ましくは1m以下である。マルチフィラメント糸における絡み合いの長さの増大は、繊維の不織層内に広がる個々のフィラメントの長さを減少させ、それによって、例えば、熱結合によって、結合点に形成され得る、マルチフィラメント糸のフィラメントと、繊維の不織層に含有される他の繊維及び/又はフィラメントとの間の交点の数を制限して、材料の機械的特性を調整する。
【0027】
加工マルチフィラメント糸における2つの連続的な絡み合いの間の距離は広範に変化し得る。好ましくは、マルチフィラメント糸における2つの連続的な絡み合いの間の距離は、少なくとも5cm、更に好ましくは少なくとも10cm、更に一層好ましくは少なくとも15cm、最も好ましくは少なくとも20cmである。マルチフィラメント糸内の2つの連続した絡み合いの間の個々のフィラメントは、繊維の不織層内に拡がり、それによって、例えば、熱結合によって、結合点に形成され得る、マルチフィラメント糸のフィラメントと、繊維の不織層に含有される他の繊維及び/又はフィラメントとの間の交点の増加を作り出して、材料の粘着力を改善する。好ましくは、マルチフィラメント糸における2つの連続的な絡み合いの間の距離は250cm以下、更に好ましくは150cm以下、更に一層好ましくは100cm以下、最も好ましくは75cm以下である。マルチフィラメント糸における2つの連続的な絡み合いの間の距離が増加する場合、不織層繊維中に加工糸を含む材料の機械的特性は、加工糸のない不織層繊維を含む材料からあまり区別されない。
【0028】
加工したマルチフィラメント糸における連続的な絡み合いの長さは一定であってよく、規則的なパターンで変化し得るか又は機械的特性及び/又は材料の外観を調整するためにランダムであり得る。
【0029】
加工したマルチフィラメント糸における連続的な絡み合いの間の距離は一定であってよく、任意の規則的なパターンで変化し得るか又はランダムであってよく、材料の機械的特性及び/又は外観を調整し得る。
【0030】
材料の一実施態様では、少なくとも1つの繊維の不織層は、材料の全質量を基準として、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、更に好ましくは少なくとも75質量%、更に一層好ましくは少なくとも90質量%の加工糸を含む。少なくとも1つの繊維の不織層も完全に加工糸から構成され得る。
【0031】
材料の実施態様では、少なくとも1つの繊維の不織層は、少なくとも15g/m、好ましくは20g/m、好ましくは少なくとも25g/m、更に好ましくは少なくとも30g/mの質量を有する。好ましくは、少なくとも1つの繊維の不織層は、500g/m以下、好ましくは250g/m以下、好ましくは150g/m以下、更に好ましくは100g/m以下の質量を有する。
【0032】
加工糸に加工する前の糸の線密度は、広い範囲にわたって変化し得る。好ましくは、糸の線密度は、少なくとも250dtex、好ましくは少なくとも500dtex、更に好ましくは少なくとも1000dtex、最も好ましくは少なくとも1500dtexである。好ましくは、加工糸に加工する前の糸の線密度は、5000dtex未満、更に好ましくは2500dtex未満、最も好ましくは2000dtex未満である。
【0033】
マルチフィラメント加工糸における個々のフィラメントの数は広範に変化し得る。好ましくは、マルチフィラメント加工糸における個別のフィラメントの数は、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個、更に好ましくは少なくとも50個、更に好ましくは少なくとも75個、更に好ましくは少なくとも100個、更に好ましくは少なくとも125個である。
【0034】
加工糸は、多種多様なポリマー、例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び/又は(超)高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン及び/又はコポリマー又は任意のそれらのブレンドを含み得る。嵩高糸は、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレート、又はポリアミド、例えば、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4,6及び/又はコポリマー又はそれらの任意のブレンドも含み得る。
【0035】
上記の通り、嵩高糸は、上記のような多様なポリマーから選択される2つの異なるポリマーを含み得る。好ましい組み合わせは、ポリエステル/コポリエステル、ポリエステル/ポリアミド、ポリアミド/コポリアミド、ポリエステル/ポリオレフィン及びポリアミド/ポリオレフィンである。
【0036】
材料の実施態様では、少なくとも1つの繊維の不織層は、更なるステープル繊維及び/又はフィラメントに加えて、上記のような加工糸を含み、好ましくは少なくとも2つの異なるポリマーも含む。好ましくは、更なるステープル繊維及び/又はフィラメントに含まれるポリマーは熱可塑性ポリマーである。更なるステープル繊維及び/又はフィラメントのうち少なくとも2つのポリマーは、別個のステープル繊維及び/又はフィラメントのいずれかに又は1つのステープル繊維及び/又はフィラメントにおいて一緒に存在し得る。更なるステープル繊維及び/又はフィラメントのうち少なくとも2つの異なるポリマーは、繊維の不織層に含まれる別個のステープル繊維及び/又はフィラメントに部分的に存在してもよく、繊維の不織層に含まれる1つのステープル繊維及び/又はフィラメントに部分的に一緒に存在してもよい。好ましくは、少なくとも2つの異なるポリマーの融点は、熱結合を可能にするために、少なくとも10℃だけ、更に好ましくは少なくとも50℃だけ異なる。少なくとも1層の繊維の不織層は、このように加工糸に由来する及び/又は更なるステープル繊維及び/又はフィラメントに由来するポリマーによって熱的に結合される。
【0037】
更なるステープル繊維及び/又はフィラメントは、多種多様なポリマー、例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、例えば、直鎖状の低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及び/又は(超)高分子ポリエチレン、及びポリプロピレン及び/又はコポリマー又は任意のそれらのブレンドを含み得る。更なるステープル繊維及び/又はフィラメントは、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレート、又はポリアミド、例えば、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4,6、及び/又はコポリマー又は任意のそれらのブレンドも含み得る。
【0038】
上記のように、更なるステープル繊維及び/又はフィラメントは、多様な上記のポリマーから選択される2つの異なるポリマーを含み得る。
【0039】
好ましい組み合わせは、ポリエステル/コポリエステル、ポリエステル/ポリアミド、ポリアミド/コポリアミド、ポリエステル/ポリオレフィン及びポリアミド/ポリオレフィンである。
【0040】
好ましくは、嵩高糸及び更なるステープル繊維及び/又はフィラメントは、材料の熱結合を最適化するために加工糸に含まれるのと同じポリマーを含む。
【0041】
好ましくは、更なるステープル繊維及び/又はフィラメントは、耐久性の歪みを含まない。
【0042】
少なくとも1つの繊維の不織層は、このように少なくとも2つのステープル繊維及び/又はフィラメント型を含み得る。少なくとも2つのステープル繊維及び/又はフィラメント型は、いわゆる二本糸型の不織布を形成するために異なる融点を有する異なるポリマーを含む。繊維の不織層は、少なくとも2つの異なるポリマーのうち最低の融点を有するポリマーの少なくとも融点の温度に繊維の不織層を曝すことによって熱的に結合され得る。二本糸型の不織層は、より高い融点を有するポリマーを含むステープル繊維及び/又はフィラメントが互いに交差し得るので、それぞれの交点で結合されない。高融点と低融点又は低融点と低融点を組み合わせたステープル繊維及び/又はフィラメントの交点のみが結合し、高融点を有するステープル繊維及び/又はフィラメントの交点は結合しない。
【0043】
更なるステープル繊維及び/又はフィラメントのうち少なくとも2つのポリマーは一緒に1つのステープル繊維及び/又はフィラメントに存在してよく、二成分繊維及び/又は二成分フィラメントから作られたいわゆる二成分型の不織布を形成する。二成分型の繊維の不織層は、繊維の不織層を、より低い融点を有するポリマーの少なくとも融点の温度に曝すことによって熱的に結合され得る。二成分ステープル繊維及び/又は二成分フィラメントは、二成分ステープル繊維及び/又は二成分フィラメントのそれぞれの交点で結合される。
【0044】
更なるステープル繊維及び/又はフィラメントの線密度は広範囲にわたり変化し得る。好ましくは、更なるステープル繊維及び/又はフィラメントの線密度は、ステープル繊維又はフィラメント当たり少なくとも5dtex、更に好ましくは少なくとも10dtex、最も好ましくはステープル繊維又はフィラメント当たり少なくとも15dtexである。好ましくは、更なるステープル繊維及び/又はフィラメントの線密度は、ステープル繊維又はフィラメント当たり50dtex未満、更に好ましくは25dtex未満、最も好ましくはステープル繊維又はフィラメント当たり20dtex未満である。
【0045】
材料の機械的特性は、このように材料に含まれる加工糸の量及び少なくとも1つの繊維の不織層に含まれる更なるステープル繊維及び/又はフィラメントのタイプを選択することによって高い局所変形に適合するように調整することができる。
【0046】
材料は、1つ以上の更なる材料の層を含み得る。各々の更なる材料層は、繊維材料の膜又は層、例えば、織られた、二次元のグリッド又はスクリム、押し出されたフィラメントの不織の又は三次元の絡み合ったマットであってよい。
【0047】
各々の追加の材料層は、少なくとも1つの繊維の不織層に及び/又は更なる追加の材料の材料層に、任意の公知の方法によって、例えば、熱結合、機械的結合、例えば、機械的ニードリング、ハイドロエンタングルメント又はステッチングによって、又は接着結合又は超音波結合又は任意のそれらの組み合わせによって、物理的に結合され得る。
【0048】
ガラス転移温度と溶融温度は、温度が毎分20℃の速度で0℃から300℃まで上昇するDSC測定によって測定される。ガラス転移点(Tg)は、吸熱事象、DSC計測曲線のベースラインの変化によって示される熱容量の変化である。これは材料の軟化点又は半結晶性物質の非晶質領域の融点と見なされる。融点(Tm)は、材料が溶融する温度である。これは吸熱事象のピーク温度として測定される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、比較例による試料の写真を示す。
図2図2は、実施例1による試料の写真を示す。
図3図3は、実施例2による試料の写真を示す。
【0050】
実施例
比較例
30g/mの不織布を、74/26体積%/体積%の割合でポリエステルテレフタレート(PET)コア及びポリアミド−6(PA6)シースからなるコア/シース二成分フィラメントからなるマルチフィラメント糸から製造した。個々の二成分フィラメントは、フィラメント当たり15dtexの線密度を有する。マルチフィラメント糸は、1800dtexの線密度を有していた。マルチフィラメント糸を、ディフューザーを使用して単一フィラメントに開き、動いているコンベアベルト上に置いた。不織布を、スルーエアボンディングドラムを使用して230℃の温度で熱的に結合した。図1は、比較例の代表的な試料を示す。
【0051】
実施例1
30g/mの不織布を、ニット・デ・ニット法によって加工された50質量%の加工糸と50質量%の比較例の糸から製造した。糸は、加工糸に加工する前に1800dtexの線密度を有していた。加工する前の糸の長さに対する加工糸の長さの比は0.55であった。
【0052】
マルチフィラメント糸は、74/26体積%/体積%の割合でポリエステルテレフタレート(PET)コア及びポリアミド6(PA6)シースからなるコア/シース二成分フィラメントからなっていた。個々の二成分フィラメントは、フィラメント当たり15dtexの線密度を有する。不織布を、スルーエアボンディングドラムを使用して230℃の温度で熱的に結合した。図2は、実施例1の不織布の代表的な試料を示す。
【0053】
実施例2
30g/mの不織布を、ニット・デ・ニット法によって加工した加工糸から完全に製造した。糸は、加工糸に加工する前に1800dtexの線密度を有していた。加工する前の糸の長さに対する加工糸の長さの比は0.55であった。
【0054】
マルチフィラメント糸は、74/26体積%/体積%の割合でポリエステルテレフタレート(PET)コア及びポリアミド−6(PA6)シースからなるコア/シース二成分フィラメントからなっていた。個々の二成分フィラメントは、フィラメント当たり15dtexの線密度を有する。不織布を、スルーエアボンディングドラムを使用して230℃の温度で熱的に結合した。図3は、実施例2の不織布の代表的な試料を示す。
【0055】
不織布の機械的特性を、20cmの試料幅を使用し、試料を試料幅全体にわたりクランプし、そして200mm/分のクランプ速度を使用して、EN29073−3(08−1992)に従って決定した。表1は、加工糸を含む不織布の機械的特性をまとめる。
【表1】
【0056】
加工糸を含む不織布は、低下した弾性率、即ち、特定の伸び、2%、5%及び15%の伸び(LASE2、LASE5及びLASE15)時の荷重を有する。完全に加工糸からなる不織布は、比較例と比較して増加した最大荷重時の伸びを示す。材料に含まれる加工糸の量に応じて、機械的特性は、このように材料が高い局所変形に適合することが可能であるように調整することができる。
図1
図2
図3