(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持体構造の前記強磁性能力は、前記1つ又はそれ以上の磁石によって提供される所望の磁気吸着力に等しいか又はそれより大きい、請求項1に記載の磁石式搬送システム。
前記トロリーは、ハウジングを備える少なくとも1つの吸着体セルを備えており、前記1つ又はそれ以上の磁石及び前記少なくとも1つの摩擦低減荷重分散装置は前記ハウジング内に配置されている、請求項1に記載の磁石式搬送システム。
前記吸着体セルは、前記複数のベアリングボールを通して循環させるための溜め及び流路を形成するように前記ハウジング内に配置されている荷重伝達部材を更に備えている、請求項6に記載の磁石式搬送システム。
前記荷重伝達部材は支承面を有しており、前記複数のベアリングボールの一部は前記支承面と前記支持体構造の間に配置されている、請求項7に記載の磁石式搬送システム。
構造体の構造的フレームの1つ又はそれ以上の部材に付着されて実質的に滑らかで平坦な水平の支承面を形成する複数の天井パネルであって、前記天井パネルのそれぞれが磁石式搬送システムの移動可能なトロリーから構造体の構造的フレームへ荷重を伝達するように構成されている、複数の天井パネルを備え、
天井パネルのそれぞれは、外側の強磁性層と、上側の外層と、充填材層と、を備え、
前記外側の強磁性層は実質的に滑らかで平坦な前記支承面を画定している、
磁石式搬送システムのための構造的な天井パネルシステム。
前記外側の強磁性層は鋼又は鉄のシートであり、前記上側の外層及び前記充填材層は1枚又はそれ以上の材料シートを備えており、前記外側の強磁性層の前記シートと、前記上側の外層と前記充填材層の1枚又はそれ以上の前記シートとは、硬化性樹脂によって加圧下に一体に結着されている、請求項18に記載の磁石式搬送システムのための天井パネルシステム。
構造的フレームの1つ又はそれ以上の部材に付着されて実質的に滑らかで平坦な水平の支承面を形成する複数の天井パネルを備える支持体構造であって、前記天井パネルのそれぞれが外側の強磁性層と、上側の外層と、充填材層と、を備え、前記外側の強磁性層は前記支持体構造の強磁性能力を提供する、支持体構造と、
前記支持体構造に作動可能に接続されて前記支持体構造上を前記支承面に実質的に平行である何れかの方向に移動するために配置されているトロリーであって、1つ又はそれ以上の磁石及び1つ又はそれ以上の摩擦低減荷重分散装置を備えるトロリーと、
を備えている磁石式搬送システムにおいて、
前記1つ又はそれ以上の磁石が磁気吸着力を前記トロリーと前記支持体構造の間に及ぼして前記トロリーを前記支持体構造へ作動可能に接続し、
前記少なくとも1つの摩擦低減荷重分散装置は、前記支持体構造の支承面に対して支承して前記1つ又はそれ以上の磁石を支持体構造から或る空き距離だけ隔てて、前記磁気吸着力を支持体構造の支承面の或る面積に亘って分配するとともに前記支承面に実質的に平行である少なくとも1つの方向への前記トロリー装置の運動を妨げる摩擦力を低減し、
前記天井パネルのそれぞれが前記トロリーから前記構造的フレームへ荷重を伝達するように構成されている、
磁石式搬送システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に続く本発明の詳細な説明は、発明が実践され得る具体的な実施形態を描いている添付図面を参照する。実施形態は、当業者が本発明を実践できるように発明の態様を十分詳細に説明することを目的とする。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施形態が利用されたり変更がなされたりすることもあろう。本発明は、付随の特許請求の範囲によって定義され、従って当該説明は、限定を課す意味に取られてはならず、その様な特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の範囲を制限するものではない。
【0012】
本願は、
図1に示されている様にオーバーヘッド方式に配置されてもよいし又は他の水平方位又は垂直方位で使用されてもよい磁石式搬送システム10に向けられている。
図1に示されている様に、磁石式搬送システム10の或る実施形態は、トロリー12と強磁性支持体構造14(強磁性天井14として図示)という基本的構成要素を備えており、支持体構造14上をトロリー12は支持体構造14の支承面に実質的に平行である何れかの方向に並進運動するよう作動可能である。更に
図1及び
図2に示されている様に、トロリー12はトロリーフレーム18へ取り付けられている1つ又はそれ以上の吸着体セル16を備えている。
図8は、トロリーフレーム18(
図1及び
図2参照)及び吸着体セル16(
図1及び
図2参照)並びに他の構成要素を保護するカバー100をトロリー12が含んでいる実施形態を示している。
【0013】
図1及び
図2は、吸着体セル16が取り付けられる複数の腕部22を有する板20を含んでいるトロリーフレーム18の或る実施形態を示している。
図1は、吸着体セル16がそれぞれ取り付けられている3つの腕部22を有する板20の実施形態を示している。
図2は、類似の実施形態において、板20aが2つの腕部22を含み、板20bが同じく2つの腕部22を含み、各腕部22がそれへ作動可能に接続されている吸着体セル16を有している実施形態を示している。
図2の実施形態は、1つ又はそれ以上の関節運動式コネクタ25を使用するリンク部材23によって接続されている2つの板20a及び20bを含んでいる。各関節運動式コネクタ25は、ばね仕掛けの接続部、粘弾性又は弾性グロメット、ブッシング、又は1又はそれ以上の自由度の運動を提供する他の要素、とすることができる。概して、関節運動式コネクタ25は、2つの板部分間の相対変位を、枢軸接続、直線変位、又は多自由度接続のどれかを通じて提供し、支持体構造の支承面の変差に適応するための2つの板20a及び20bのリンク部材23に対する相対運動を可能にさせる。リンク部材23には用具及び/又は吊り具28が連結されていてもよい。同様に、吸着体セル16を説明されている通りに連結させている2対より多い腕部対(ムカデを模している)を含む追加の実施形態も本発明の範囲内である。トロリー12が2つ又はそれ以上の吸着体セルを含む類似の構成は他にもある。
【0014】
図1に戻って、板20は、板20の総重量を減らす腕部16を含んでいてもよい。また一方、幾つかの実施形態では板20が三角形又は四角形の様な何れかの形状をしているということもあり得る。代わりに、示されていない或る実施形態は、更に重量を減らすために1つ又はそれ以上の引張又は圧縮フレーム要素で構築されているスペースフレームであるトロリーフレーム18を含むこともできる。強磁性支持体構造14は、吸着体セル16を引き付けその上を走行させる強磁性の性質を有する滑らかな及び/又は平面状の支承面を提供しているのが望ましい。
【0015】
図1及び
図2は、吸着体セル16が1つ又はそれ以上の締結具24でトロリーフレーム18へ連結されていることを示している。更に、
図1に最も分かり易く示されている様に、締結具24は、トロリーフレーム18から吸着体セル16までの所望の間隔取りを提供するカラー26を通って延びていてもよい。1つの実施形態では、カラー26は、剛性材料で作られていてもよいし、又は代わりに可撓性又は粘弾性材料で作られ、吸着体セル16のトロリーフレーム18に対する変位、回転、及び/又は関節運動を可能にさせていてもよい。加えて、1つ又はそれ以上の弾性又は粘弾性グロメット27(又はワッシャ)を可撓性カラーに代えて又はそれに加えて接続に利用して、吸着体セル16とトロリーフレーム18の間の接続に追加の関節運動を提供させるようにしてもよい。吸着体セル16は、支持体構造14の滑らかな及び/又は平面状の支承面の途絶にも適応するように多少の関節運動及び/又は枢動能力を有するトロリーフレーム18へ連結されているのが好適である。関節運動式接続は、荷重の均一分配及び吸着体セル16が支持体構造14の支承面の途切れに係合する際の摩擦低減荷重伝達装置30(以下に説明)内ベアリングボール保持をやり易くする。
【0016】
図1は、トロリーフレーム18上に取り付けられている又はトロリーフレーム18へ連結されている吊り具又は用具28も示している。当業者には、トロリーフレーム18は、現在知られているか又はその後開発される幾つもの数の機器類を取り付け支持するように適合され得るものと認識されたい。また、トロリー12の或る実施形態(図示せず)は、吊り具又は用具28をトロリーフレーム18無しに吸着体セル16へ直接付着させて含み、本システムの実施形態の設計を軽量の取付具又は他物品支持向けに簡素化している。多くの様々な用具、機械、吊り具、及びそれらの構成を本磁石式搬送システム10に利用することができるであろう。
【0017】
トロリー12は、更に、超過荷重の支持を許容しようとしない荷重制限装置(図示せず)であって、過荷重を防止するよう作動可能な荷重制限装置を組み入れていてもよい。トロリー12の他の実施形態(図示せず)は、荷重感知システム及びトロリーが過荷重であることを指示する関連付けられた警報、搬送されることになる物体の持ち上げ及び降下及び走行を支援するための動力駆動機構又はモーターシステム、所望場所への自動案内及び搬送のための搭載型コンピュータ、搭載型照明、関連付けられている非常時フェイルセーフシステム、再充電式バッテリシステム、有線又は無線遠隔制御システム、制動又は保留システム、ホイスト及び懸吊物品及び装置のための1つ又はそれ以上のアンカー点、及び他の機構、を組み入れていてもよい。
【0018】
吸着体セル16の1つの実施形態は、共通フレーム上で別々に作動することができるか又はより典型的には単一ユニットへ組み合わせることのできる2つの別個のシステムを備えている。第1のシステムは強磁性支持体構造14へ吸着される適した強度の磁石又は磁石アレイであり、第2のシステムは支持体構造14と実際に接触している摩擦低減荷重分散装置である。摩擦低減荷重分散装置30は磁石又は磁石アレイを常時天井面から離して支持することができる。
図3は、ハウジング32に収容されている摩擦低減荷重分散装置30及び摩擦低減荷重分散装置30下の磁石又は磁石アレイ又は非磁性部材(
図5、
図6、及び
図13参照)を備える吸着体セル16の1つの実施形態を示している。
図3に示されている様に、摩擦低減荷重分散装置30は、半径Rによって画定されている支承面積を含んでいる。
【0019】
図4は、吸着体セル16の或る類似の実施形態を描いており、摩擦低減荷重分散装置30の一部分を取り払ってハウジング32内の磁石又は磁石アレイ34の配置を示している。磁石又は磁石アレイ34は、摩擦低減荷重分散装置30を通してか又は当該装置に直接隣接してかのどちらかで天井14を吸着するというやり方で取り付けられていてもよい。摩擦低減荷重分散装置30は、何れかの側方方向への運動及び/又は方向転換に抵抗又はためらいの殆どないシステムを提供することを可能にするはずである。
【0020】
磁石又は磁石組立体34は、
図5に示されている単一磁石36を採用することによって構築されていてもよい。単一磁石36は、その互いに反対側の面に極性を有し磁石36の周りを後面44から前面42に向けて包み込む鉄、鋼、又は他の強磁性体ホルダ40内に取り付けられ、強磁性面へ吸着するのに十分な強化された磁場を発生させる従来のカップ磁石として構成されていてもよい。磁石組立体32は、更に、示されている磁石36の上方に配置されている支承板49を含んでいてもよい。この構成は、各種保持用途向けに共通に使用され、望ましい、というのも、それは磁石36の両極を単一面又は側へ集中させ、而して磁石36によって掛けられる保持力又は吸着力を増幅させるからである。磁石又は磁石組立体34はまた単純に磁場強化無しにホルダ40内に取り付けられている北−南磁石であってもよい。支承板49は、非強磁性金属、複合材、ポリマー、又は粘弾性材料から作ることができる。
【0021】
図4及び
図6は、例えば鉄又は軟鋼の様な強磁性材料から作られた強磁性後板48上に取り付けられている永久磁石46の配列を有する磁石アレイ38を備える磁石又は磁石組立体34の別の実施形態を示している。永久磁石46は、隣り合う磁石同士で各々の磁極が反転するようにして後板48上に配列され、ハウジング41内に取り付けられていてもよい。磁石アレイは、磁石間に配置されているスペーサ47と、支承面を提供するため及び/又は磁石46をその場に保持するための支承板49と、を含んでいてもよい。例えば、
図6に示されている様に、永久磁石46aはそれらの正極を上向きに有し、永久磁石46bはそれらの負極を上向きに有していてもよい。後板48は、その場合、単一磁石36のための
図5の鉄カップホルダ40によく似た働きをする。後板48は、磁石アレイ38の後面50の磁場を逆磁極の隣接する磁石へ送り込み、磁石アレイ38の前面52側に保持力を集中させ、結果的に前面52が作用面となるようにする。この構成は、前面52側に高い磁束密度を作り出す。磁石アレイ38及び磁石44の配置は、所望の保持強度及び/又は吸着力を提供するよう必要に応じ適合及び構成されればよい。
【0022】
後板48の後側の面53は、磁気の兆しを殆ど又は全く有せず、というのも、磁場は完全に吸収され前側52即ち作用側に向かって曲がっているからである。磁石44の寸法、形状、厚さ、及び強度並びに後板48の材料と厚さの選択は、所望の保持強度及び/又は吸着力を提供するべく1つ又はそれ以上の極めて可変性の因子に基づき選択される。例えば、特定の用途に依存して、諸要素の選択は少なくとも次の考慮事項、即ち、取り扱おうとする使用荷重、何らかの所望又は要求される安全率、吸着体セル60によって要求される空隙の程度、及び磁場パターンリーチ、に基づくものとなろう。一般的に、取り付けられ組み立てられたときの磁石36又は磁石アレイ38の磁石44の強度は、所望/要求安全率に関して所望又は要求される設計荷重を空隙を介して支持するのに十分でなくてはならない。その上、後板48の厚さは、鉄であろうと鋼であろうと他の鋼合金又は他の強磁性材料であろうと、磁気飽和を来たさないよう十分な厚さとする。後板48が磁気飽和を来たしたなら、磁場は後板48の外まで広がりかねず、それは用途によっては望ましくない場合もある。
【0023】
吸着体セル16は、支持側である強磁性支持体構造14、例えば天井14、に平行又は実質的に平行な平面方向への多方向運動に耐える能力を提供するように構成されている。そういうものとして、磁石36又は磁石アレイ38と支持体構造14の間では摩擦低減荷重分散装置30を使用して摩擦を低減させなくてはならない。一般的に、摩擦低減荷重分散装置30は、トロリー12を支持体構造14の支承面上で滑走させるのに要求されるように摩擦力を低減し磁石吸着力によって作り出される荷重を支持体構造へ伝達する、構成要素の何れかの構成である。
図5、
図6、
図13、
図14B、及び
図15Bに示されている実施形態では、摩擦低減はハウジング32と支持体構造(天井)14の間にベアリングボール56を配置させることで成し遂げられることになる。幾つかの実施形態では、ベアリングボール56は、摩擦低減性質及び方向転換システムの必要性の無い動作方向変更能力を提供する。摩擦低減荷重分散装置30の他の実施形態は、ハウジング32及び/又は磁石34と支持体構造14の間の摩擦を低減する減摩擦又は低摩擦ポリマーの様な材料の1つ又はそれ以上のパッドを含んでいてもよい。他の代替形には、トロリーフレームと支持体構造の間に配置される1つ又はそれ以上のキャスター及び/又はホイール、機械式に操舵可能なホイール、又は1つ又は複数の単ボールトランスファーが含まれ、それについては以下に更に詳細に説明する。
【0024】
トロリー12の多方向運動を妨げる摩擦を低減するためにここでは本発明のシステム10と共に利用することのできる摩擦低減荷重分散装置30の4つの実施例を説明している。但し、ここに記載のボール支持装置の精神の内に入る追加の構成も本発明の範囲内にある。1つの実施形態(図示せず)は、各種構成で一般に入手可能な従来の単ボールトランスファー装置である。それらはハウジング上方に部分的に現れている単一の荷重担持ボールを提供しており、ハウジング内では複数の小さいベアリングボールが転動及び再循環してより大きな露出しているボールを支えそれが何れの方向にも低抵抗で転動できるようにしている。
【0025】
これらの従来の単ボールトランスファーは、主荷重担持ボールの単一接触点でしか荷重を支えず、結果的に支持面上の単一接触点を非常に小さいものにしてしまう。この構成は、支持体構造の支承面の極めて小さい面積に亘る高い圧力集中を発生させる。従来の単ボールトランスファーは相当重い荷重を支持することはできても、それらは支承面を横断して転動する間、支承面へ損傷を与える力を及ぼしかねない。当該接触点にて平坦な接触面に及ぼされる圧力は、軟鋼板へ溝を鍛造するに足る数千ポンド毎平方インチに匹敵する圧潰になり得る。主ボールがポリマーであったとしても、及ぼされる接点圧力及び力は荷重が大きい場合には高いままである。
【0026】
従って、従来の単ボール装置を使用している場合、支持体構造は少なくとも従来のボールトランスファーの主ボールと同じほど硬質である必要があるか、又は転動を受ける面への損傷を予防するために荷重を非常に低くせざるを得ない。この要求のせいで、従来の単ボール装置は極めて軽負荷又は軽荷重支承型式のシステムでなら有用であり、というのは吸着体セル16の磁気吸着を採用されているボールトランスファーの圧力による支持体構造14への異常な応力又は損傷を引き起こすほど大きくする必要がないからである。その様な用途には、限定するわけではないが、電灯や他の軽量取付具の様な軽量物体が含まれる。
【0027】
図3、
図4、
図5、
図6、
図13、
図14A、
図14B、
図15A、及び
図15Bは、開放型ボールトランスファー装置(「OBT」:open−ball−transfer)54である摩擦低減荷重分散装置30の実施形態を示している。OBT54は、その支承面が全半径の丸みの付いた円盤の形状をしている。但し、他の形状も本発明の範囲内である。
図5及び
図6に示されている様に、OBT54は、吸着体セル16の支承面58と支持体構造14の支承面59を隔てそれらの間に空隙68を作り出す複数の相互接触ベアリングボール56を含んでいる。OBT54は、更に、或る体積分のベアリングボール56を貯蔵するための溜め60と、ベアリングボール56が支持体構造14の支承面59と吸着体セル16の支承面58の間の界面70での係合位置64から走行できるようにする環状流路62と、を含んでいる。ベアリングボール56は、互いに相対位置に収容されも保持されもしておらず、何れの方向にも自由に転動することができる。吸着体セル16の支承面58と支持体構造14の支承面59の間の界面70に位置付けられるベアリングボール56の量と密度は非常に高く、それらが係合位置64に配置されている複数のベアリングボール56と溜め60と流路62を備える固定体積を有する閉鎖型再循環システム内に保持されているという事実によって当該密度に維持される。ベアリングボール56の運動は概して固定体積中の隣り合うボール56同士の強制押し退けによって引き起こされる。
【0028】
図5及び
図6に示されている様に、溜め60の或る実施形態は、ベアリングボール56の1段分が収まる深さを有し、吸着体セル16の何れの走行方向についてもベアリングボール56が平坦化された円状の流れ経路を辿れるようにしている。溜め60及び流路62はベアリングボール56の直径より僅かに大きい空き寸法を有している。この構成は、溜め60及び流路62内のベアリングボール56を押し退け係合位置64を横切って循環する運動を生じさせるのに要する力が少なくて済むことから好ましい。代わりに、ベアリングボール1層分より多くを収納するのに十分な体積を有する溜め60を含んでいる他の実施形態(図示せず)を利用することもできる。更に別の実施形態は、ハウジング32の内面78又は内面86に配置されている環状溝である溜め60を含んでおり、当該環状溝は、吸着体セル16の支承面58への十分なベアリングボール56の供給が提供されるように十分な数のベアリングボール56を貯蔵するのに十分な断面形状及び体積を有している。これは、
図5及び
図6に示されている実施形態の様にハウジング32内に荷重伝達部材72を浮かせておく必要性を排除する。
【0029】
図5に示されている様に、磁石36及びホルダ40は荷重伝達部材72aを構成している。
図6に示されている様に、複数の磁石46、後板48、及び前板49は荷重伝達部材の別の実施形態72bを構成している。
図13に示されている或る代わりの実施形態は、磁性を持たない金属又はポリマー材料である荷重伝達部材72cを含んでいる。各荷重伝達部材72a、72b、及び72cは、支承面58を有している。
図5、
図6、及び
図13に示されている様に、荷重伝達部材72a、72b、及び72cは、支承面58が支持体構造14の支承面59から距離「D1」となるようにハウジング32内に取り付けられていてもよい。
【0030】
図5及び
図6に示されている様に、ハウジング32は、脱着可能になっているか又は永久的に一体に連結されている上ハウジング部材74と下ハウジング部材76を備えていてもよい。上ハウジング部材74は、内面78、外面80、天面82、及び底面84を備えている。下ハウジング部材76は、内面86、外面88、天面90、及び底面92を含んでいる。
図5及び
図6では、ハウジング32の実施形態は、実質的に円形且つ円筒状の形状を画定している外面80及び外面88を含んでいる。但し、他の形状も本発明の範囲内である。内面78と内面86は、上ハウジング部材74と下ハウジング部材76の間の移行部では、上ハウジング部材74の底面84の幅が移行部の下ハウジング部材76の天面90の幅と実質的に同様になっているという具合に整列している。更に示されている様に、内面78と内面86は、それら内面78及び内面86の外面80及び外面88の反対側になっている部分が全体的に湾曲している。
図5及び
図6はこの湾曲が弓形であるものとして示しているが、それは実質的に半円形であってもよい。これらの湾曲形状は、上ハウジング部材74及び下ハウジング部材76の内面78と内面86によって一部が形成されている流路62及び溜め60内のベアリングボール56の円滑な流れを可能にさせる。更に
図5及び
図6に示されている様に、上ハウジング部材74の内面78は内向きに湾曲し、それにより上ハウジング部材74の内面78と天面82の交点に傾斜移行部分94を作り出している。
【0031】
ハウジング部材32のこの構成は、荷重伝達部材72a又は72bを下ハウジング部材76の内面86の底面92とは反対側になっている部分へ連結させられるようにする。荷重伝達部材72a又は72bは、それぞれの吸着体セル16のための要求される荷重を支え荷重伝達部材72をハウジング32内に精度よく位置決めするのに十分な何れの数の締結具及び/又はスペーサによってハウジング32へ連結されていてもよい。但し、締結具及び/又はスペーサは、溜め60内のベアリングボール56の流れが阻害されることが最小限に抑えられるようにハウジング32内に分散されているのが好ましい。荷重伝達部材72a又は72bは、下ハウジング部材76の内面86の内側に離して浮かされている。
図5及び
図6に示されている様に、荷重伝達部材72a又は72bと内面86は相補形状を有しているので、荷重伝達部材72a又は72bがハウジング32内に配置されると、実質的に一定した寸法の溜め60及び流路62が内面86と荷重伝達部材72a又は72bの外面96の間に形成される。荷重伝達部材72a又は72bの外面96と下ハウジング部材76の内面86の形状はベアリングボール56のための滑らかな流れ流路が提供されるように湾曲しているのが好ましい。
図13の荷重伝達部材72cも同様に配列することができる。
【0032】
作動時、係合位置64にあるベアリングボール56は、吸着体セル16の支承面58と支持体構造14の支承面59の間で転動して側方運動に対する摩擦及び抵抗を低減する。上ハウジング部材74のベアリングボール56を案内して転がし落とす傾斜移行部分94に係合して支承面58と支承面59の間から係合位置64を離れてゆくベアリングボール56は、後続又は次に出てきたボールによって流路62及び溜め60の中へ押される。ベアリングボール56は、体積押し退けのおかげで、流路62及び溜め60を通って循環し支承面58と支承面59の間の係合位置64に再度配置されるまで無荷重下に自由に押されてゆくことになる。循環したベアリングボール56は、こうして再度界面70での動きに対する摩擦及び抵抗を低減するのに利用できるようになる。この配列は、ボールが継続的に循環して係合位置64から流路62及び溜め60を通って係合位置64に戻ることを、OBT54の動きの方向又は方向変更にかかわらず、自動的かつ継続的に許容する。
【0033】
OBT54に採用されているベアリングボール56は、天井表面の損耗及び傷付きを低減するようにプラスチック、デルリン、又はナイロンであるのが好ましく、というのもそれらは磁気的性質を持たないからである。アルミニウムやステンレス鋼の様な金属、また更にはテフロンの様なより軟質のプラスチック、又はより硬質のゴムボールをも含め、他の材料も用途によっては有効に働くかもしれない。認識しておきたいこととして、荷重伝達部材72a、72b、及び72cは相当な面積を有する支承面58を含み、当該面積のかなりの部分がベアリングボール56で覆われていてもよいものとする。而して、有効支承面積及びベアリングボール56の直径と密度にも依るが、ボール当たり支承荷重は、500ポンド(約226.8キログラム)又はそれ以上を支持しているシステムで使用されたとして数オンス(約50〜100g)程に低くなり得る。この構成は、トロリー12が、塗料又はポリマー表面被覆のどちらかで覆われた審美的に滑らかな表面を有する強磁性天井パネルの様な支持体構造14上を、完成品天井への余計な損耗又は損傷を引き起こすことなく並進運動できるようにする。
【0034】
図14A及び
図14Bは、摩擦低減荷重分散装置30が、支持体構造14の支承面59に係合するように隆起した係合位置64に配置されている複数のベアリングボール56と、ベアリングボール56の係合位置64を取り囲む僅かに低くなっている環状溜め156と、を含んでいるOBT54’である、或る代わりの実施形態を示している。係合位置にあるベアリングボール56は、ハウジング32’の天面154と支持体構造14の支承面59の間に空隙68を提供するように係合位置64に配置されている。而して、ハウジング32’が支持体構造14に対して滑走した際に係合位置64にあるベアリングボール56がハウジング32’に対して並進運動すると、係合位置64から出てゆくベアリングボール56は同様に溜め156内のベアリングボール56に係合しベアリングボール56の押し退けを強制するので、固定体積中のベアリングボール56同士の押し退けのせいで、ベアリングボール56を係合位置64へ入れたり出したりする循環及び置き換えが生じる。
【0035】
図15A及び
図15Bに示されている別の代わりの実施形態は、OBT54’’を有する摩擦低減荷重分散装置30を含んでおり、ここでは、荷重伝達部材72dはハウジング32’’内に配置され浮かされている環状リングである。磁石又は磁石組立体34は、荷重伝達部材72dの内円の内側に配置させることができる。言い換えるなら、荷重伝達部材72dが磁石又は磁石組立体34を取り囲んでいてもよい。
図15Bに最も分かり易く示されている様に、磁石又は磁石組立体34は、ハウジング40内に保持され及び/又はハウジング32’’の中へ受け入れられている。ベアリングボール56は同様にOBT54’’内に配置され、それらは支持体構造14の支承面59に係合位置64で係合し、吸着体セル16が支持体構造14に対して並進運動すると溜め60を通り流路62を通って循環してゆく。ベアリングボール56は、同様に、磁石の天面158及び/又はハウジング32’’の天面160との間に空隙68を画定するように配置させることができる。この実施形態は、磁石34の面を支承面59により近づけて設置することをやり易くし、それにより磁石34が支持体構造14へ及ぼす有効磁力を増加させる。
【0036】
OBTの基本的機能判定基準は、ベアリングボールの溜めがベアリングボールの係合位置と近接性又は流路を通じて連通していて、ボールの運動が吸着体セルの何れかの方向への並進運動時のベアリングボールの溜めに出入りする循環をもたらす、ということである。更に、係合位置の荷重伝達部材72(
図5、
図6、
図13、及び
図15B)又はハウジング32’’(
図14B)の支承面58は、滑らかで、障害物が一切なく、ボール運動をやり易くするものでなくてはならない。
【0037】
摩擦低減荷重分散装置30は、本搬送システム10での動きに対する摩擦及び抵抗を低減するうえで様々なやり方で採用することができる。1つは、摩擦低減荷重分散装置30を上述の吸着体セル16へ組み入れ、吸着体セル16又は複数の吸着体セル(
図1及び
図2参照)をトロリーフレーム20上へ取り付けることによるものである。吸着体セル16をより小さいものにすること及び吸着体セル16をより多くすることが、支持体構造(天井)14の面59の凸凹を補償する好適な方法である。吸着体セル16は、天井面の平坦度完全性が一貫していないことから生じる問題を軽減するうえで助けとなるようにトロリーフレーム20へのその取り付け方法によって水平から数度の関節運動を有するように設計されている。以上に説明されている様に、複数の吸着体セル16が採用されている場合、各吸着体セルの互いに対する多様な関節運動度が好ましい。
【0038】
図7は、複数の個別の磁石又は磁石アレイ98を複数の吸着体セル16の間に及び/又は隣接に配置させているトロリーフレーム18を含むトロリー12の別の実施形態を描いている。この実施形態では、吸着体セル16は、磁石36(
図5)又は磁石アレイ38(
図6)を含む荷重伝達部材72を含んでいてもよい。代わりに、それら吸着体セルは、磁気吸着無しで支持体構造14への減摩擦荷重伝達だけを提供するように単純に非磁性の板である荷重伝達部材72及び摩擦低減荷重分散装置30を含み、磁石又は磁石アレイ98のみが磁気吸着力を提供する、というようになっていてもよい。
【0039】
上ハウジング部材74の天面82には、アクティブでも非アクティブでもよいが、封止装置(図示せず)を組み入れることもできよう。封止装置は、ハウジング32と支持体構造14の間の空隙68を閉じ、而して、塵埃を一掃し摩擦低減荷重分散装置30及び/又はOBT54への塵埃の入り込みを予防することで汚染に因る損耗が起こるのを防止する。封止装置は、更に、ベアリングボール56を収容し且つ支持体構造14の支承面59に途切れがあった場合にベアリングボール56がシステムから出てゆかないようにするうえで役立つ。加えて、示されていない別の実施形態は、ボール側に開放メッシュ覆い(図示せず)の付いた開放口を有する下ハウジング部材76の底面92を含んでいて、ベアリングボール56を素通り落下させることなく、塵埃及び異物粒子が重力によって下方に引き出されることで開放メッシュを通って排出されるようにしていてもよい。これらの追加の構成は低コストの自己清浄化システムを提供することができる。清浄化用のベルト又はディスクを再循環室の溜め側の後面を横切るように通し、ベアリングボールが周期的に拭かれてきれいになるようにする、アクティブなシステムを組み入れることもできよう。他の空気システム及び真空システムを、必要に応じ清浄化を達成するべく組み入れることもできよう。
【0040】
トロリー12はブレーキ102の様な追加の特性を含んでいてもよい。
図9は、トロリー12へ組み入れることのできるブレーキ102の1つの実施形態を描いている。
図9は、ブレーキ磁石組立体104と、シャフト108であってトロリーフレーム18へ連結されているスリーブ110内を可動である場合は一端が磁石組立体104へ連結されているシャフト108と、磁石組立体104とは反対側でシャフト108へ作動可能に接続されているブレーキレバー112と、ブレーキレバー112へ連結されているブレーキケーブル114と、ブレーキケーブルを引く又は解放するためのブレーキ制御機構(図示せず)と、を含むブレーキ102を示している。
図9に示されている様に、スリーブ110は、フランジ及びねじの切られた外面を含んでおり、ねじ部にはナットを係合させ、それを締めてスリーブ110をトロリーフレーム18上へ固着させる。シャフト108も磁石組立体104とは反対側にねじの切られた端を有しており、ねじ部にナットを係合させ、それを締めてシャフト108をスリーブ110内に固着させる。磁石組立体104は、ハウジング116と、ハウジング116の天面120上に配置されているか又は天面120の中へ受け入れられている磁石118と、支持体構造14上でのトロリー12の側方運動に抵抗する側方摩擦を増加させるために磁石118の外部面124上に配置されているブレーキパッド122と、を含んでいてもよい。ブレーキパッド122は、弾性、粘弾性、又は他の類似の材料であってもよい。1つの実施形態は、ゴムであるブレーキパッド122を含んでいる。ブレーキ制御機構は、自転車や車いすで使用されているものと同様の機械式レバー、サーボモーター機構、又は他の機械式又は電動式機構であってもよい。
【0041】
作動時、ブレーキ制御機構によってブレーキケーブル114を引くと、ブレーキレバー112の直線変位か又は回転の何れかが生じ、シャフト108及び磁石組立体104のスリーブ110に対する下方並進運動を起こさせ、それによりブレーキパッド122が支持体構造14の支承面59に当てた支承から係合解除される。その結果、トロリー12は支持体構造14の支承面59と実質的に平行な何れの方向にも自由に動けるようになる。ブレーキ102を掛けるには、ブレーキ制御機構にケーブルを解放させるよう仕向け、磁石118の磁力が強磁性支持体構造14へ引き寄せられるようにし、それによりシャフト108及び磁石組立体104のスリーブ110に対する支持体構造14の支承面59に向かう並進運動を生じさせ、最終的に支承面59に当接して支承させる。同様の効果を有する制動システムの他の構成も本発明の範囲内である。
【0042】
トロリー12の1つ又はそれ以上の実施形態は、更に、自動化された駆動システム(図示せず)を含んでいてもよい。その様な自動化された駆動システムは、支持体構造14の支承面59に係合する駆動輪であってサーボモーターの様な1つ又はそれ以上のモーターによって駆動されていてもよい駆動輪を含んでいる。自動化された駆動システムは、使用者が本搬送システムの運動及び方向を制御できるようにする有線又は無線の制御システムを含んでいてもよい。
【0043】
また、トロリー12の1つ又はそれ以上の実施形態は、過荷重保護装置又は過荷重防止装置(図示せず)を含んでいてもよい。これらの装置は、秤の様な計算装置又は或る一定の印加荷重が掛かると警報が音を発するか又はシステムがブレーキを係合して荷重の運動を防止する他の装置を組み入れていてもよい。代わりに、大き過ぎる荷重が加えられると破損しそれにより本搬送システムを作動不能にせしめるヒューズ部材が組み入れられていてもよい。数多くの通報システム、警報システム、及び/又は測定システムが本発明の範囲内にある。
【0044】
支持体構造14(
図1、
図8、
図10、及び
図11に示されている天井)は、強磁性であるという一次的機能性を提供するとともに実質的に滑らかな及び/又は平面状の面を提供し、その上をトロリー12が当該滑らかな面に実質的に平行な何れの方向にも並進運動できるようにしている。支持体構造14は建物の荷重支承構造の要素としての働きもしていて、そこから本搬送システム10を使用して物体を懸吊し搬送することができる。支持体構造14は、概して、強度のある強磁性材料を含んでいるか又は外(又は支承)面59に適正に近接していなくてはならない。軟鋼は試験して成功であったが、トロリーが表面を横切って動いてゆく際に自身に残留磁化を来たすことなく帯磁から消磁への絶え間ない遷移に耐え得るより適正な合金ならより確実に役目を果たすであろう。1つのその様な材料に冷間圧延無方向性珪素鋼(「CRNGO」)があり、それは軟磁(帯磁したままであることを嫌う)特性を求めて作製されているものである。但し、本発明は或る特定の材料に限定されず、何れの強磁性材料が実施されてもよい。
【0045】
1つの実施形態(図示せず)では、支持体構造14は、単純に、建物の下層の構造的支持体部材へ固着されている鋼又は鉄の板であってもよい。この実施形態は、厚肉中実板を必要とする大荷重の搬送には重量的及び費用的に実施が極めて困難になるかもしれない。支持体構造14の別の実施形態は、複数の構造的天井パネル124を含む天井を備えている。
図10には、支持体構造(天井)14の天井パネル124の1つの実施形態が示されている。天井パネル124は、外側の強磁性層126、上側の外層128、及び充填材層130、を備えていてもよい。1つの実施形態では、外側の強磁性層126、上側の層128、及び充填材層130は、接着剤又は樹脂によって全て一体に結着されている。天井パネル124は、構造的支持体間で本搬送システム10の設計荷重容量を支えるように構成されている荷重支承構造的パネルであるのが好ましい。
図1、
図11、及び
図12に示されている様に、天井14を支持体構造として利用する場合、天井14は複数の天井パネル124で構成されていてもよい。天井パネル124は、重量が実用可能に軽量であるのが好ましい。材料重量は費用及び設置の容易さと関係がある。天井パネル124又はその諸部分は、最も軽量で最も容易に商業化される形態を目指して技術工夫が凝らされてもよい。天井パネル124は、審美的に好感の持てる外観を提供するように塗装又は粉末被覆されていてもよい。代わりに、別の実施形態では、天井パネル124は、更に、300系ステンレス鋼、アルマイト、また更には硬質ポリマー被覆の様な、強磁性の性質を持つもの又は持たないものを含め、薄手のより硬質な外側の耐摩耗面を外観目的で含んでいてもよい。但し、トロリー12を乗せ強磁性層126へ吸い付かせる面として何れの滑らかで平坦な面を採用することも実施可能であろう。
【0046】
図10に戻り、外側の支承層126は、上述の強磁性材料の1枚又はそれ以上のシートであってもよい。代わりに、外側の支承層126は充填材層130へ塗工されている強磁性被覆であってもよい。外側の支承層126の総厚又はゲージはトロリー12によって生成される全磁場を吸収するに足るように選択されるものであって遥かに上回るように選択されるものではなく、というのは、特に外側の支承層の厚さに冗長性があれば、それは天井タイル124への費用と重量を加増させるだけであって明らかな恩恵は何もないからである。外側の支承層126の平坦度及び隣り合う天井タイル124同士の整列度もまた、トロリー及びその吸着体セルが天井14全体を容易に横断できるようにするうえで実質的に滑らか及び/又は平面状であるのが好ましい。
【0047】
上側の層128は、何れの実質的に剛性のある材料の1枚又はそれ以上のシートであってもよい。上側の層128は、鋼やアルミニウムの様な何れかの金属のシートであってもよいし、実質的に剛性のあるポリマー材料であってもよい。上側の層128は強磁性である必要はない。或る実施形態(図示せず)は、より剛性のあるパネルを提供するべく隆起したリブ又は隆起した中心部分を有する上側層128を含んでいる。充填材層130は、建築用製品に使用されているものと同様の何れの材料から作られていてもよい。一部の実施形態は、剛性又は実質的に剛性の発泡体又はハニカムを含んでいる。一部の実施形態は、ベニヤ板、OSB、MDF、又は削片板の様な木材を基材とするシート材料を含んでいる。新しい軽量複合板も利用できる。充填材層130はその様な材料の1枚又はそれ以上の薄いシートであってもよい。充填材層130は、下からの引く力を支持しそれらを天板層128と支承層126の間で表皮層へ分散させるにはその引張及び剪断の容量が十分に強くなくてはならないであろう。1つの実施形態では、単一のモジュール天井タイル124は、16インチ(約40.64センチメートル)平方であり、10ポンド(約4.53キログラム)以下の重量であるのが好ましい。但し、天井パネル124は、製造、設置、及び/又は所望の荷重容量を実施し易くするうえで実現可能な何れの長さ、幅、及び厚さを有していてもよい。
【0048】
支持体構造又は天井14は、実質的に滑らか、平坦、及び/又は平面状の面であるのが好ましい。パネルの強磁性面で好適とされる平坦度完全性を現出させる1つの方法を築き試験したところ成功であった。この方法は、比較的薄い強磁性軟鋼材料の層を数層一体に支承層126とし、上側の層128としての別の非常に薄いシート材料の安定化層を充填材層130である別のシート材料と共に有するコア材料と組み合わせてラミネート加工することから成る。上側の層128のシート材料を金属とし、充填材層130のシート材料をベニヤ板としてもよいが、他のシート材料も本発明の範囲内である。複合天井パネル層を組み立て、同時にエポキシの様な接着剤系で互いに結着させ、層を真っ平らな面に当てて押圧した状態に保持しながら硬化させればよい。これは、真空袋詰技法を用いて行ったが、より単純には、機械式、油圧式、空気、又は他の型式の圧縮を掛ける機構である例えば重り、油圧プレス、又は圧縮ローラーの様な、何らかの圧縮荷重下に遂行されてもよい。このプロセスは、平坦な成形面にきつく押し当てて薄シート層を形成させ硬化させることが可能であるので、極めて平坦な面をもたらす。はるかに厚い板なら、はるかに重い材料及び同じ平坦度を得るための高価な機械加工が必要になるはずである。加えて、上記プロセスを用いる天井パネル124の形成は、所望に応じ形成中に1つ又はそれ以上の接続要素を天井パネル124へ結着する及び/又は天井パネル124へと一体形成することを可能にさせる。
【0049】
図11に示されている様に、天井14の天井パネル124は、典型的な木枠の天井枠組レイアウトへ設置されている。但し、天井パネル124は、何れかの鋼、コンクリート、木材、又はそれらの他の組合せの構造へ、既知の技法を用いて取り付けられてもよい。
図11に示されている様に、天井パネル124は、ボルト、釘、又は螺子の様な、締結具を使用して天井根太132へ直に連結又は締結されていてもよい。加えて、止め金具136が用いられていてもよい。滑らか及び/又は平坦な支承面を作り出すのにシム134が必要になる場合もある。加えて、止め金具136は、パネルの位置を調節可能にできる垂直方向調節能力を含んでいてもよい。天井パネル124は、滑らかな面のためのパネルの整列をやり易くするために、示されている様に本実矧係合138を含んでいてもよいし相決り140を有していてもよい。
【0050】
図11に更に示されている様に、天井14の或る実施形態は、示されている根太132と下堰板層144の間に配置されている照明又は他の取付具142を含むことができる。取付具142は、強磁性の格子又はディフューザ150が中に組み入れられているプレキシガラス、ポリカーボネート、又は他の透明な材料カバー148を露出させた取付具142内に照明146を収容して含んでいてもよく、そうすれば天井に「死」点は無くなる。プレキシガラス、ポリカーボネート、又は他の透明な材料カバー148は、天井パネル124と取付具142の間に滑らかな移行部を提供するように設置されるものとする。加えて、天井ファンや他の照明取付具などの様な取付具のせいで表面に突出がある場合、囲い又は緩衝器152を天井パネル124又は天井14上に設置してトロリー12が取付具にぶつからないようにしてもよい。天井を設置する場合、取り外しパネル(図示せず)を設置するか又は容易に取り外せるように構成しておいて、トロリー12をこのタイルへ動かしタイルをトロリー12の付着した状態で容易に取り外せるようにしておけば、トロリー12の除去及び/又は点検修理が可能になる。代わりに、1つ又はそれ以上のパネルを非強磁性材料にしておき、作動中は取り外し可能な囲い又は緩衝器にトロリーがこのパネル上へ進んでくるのを防止させ、但しトロリーを取り外すことが望ましくなった場合には囲い又は緩衝器を取り外してトロリーを当該非強磁性パネル上へ滑走させるようにすれば、トロリー12を容易に支持体構造14から除去できる。天井パネルの他の実施形態は、従来型吊天井に似た支持体構造ではあるが但しトロリー12及び支持される要素の構造的荷重を支えるように技術的工夫の施されたシステムを有する支持体構造から懸吊されている。
【0051】
支持体構造14は、天井、壁、床、又は何れかの他の面又は部材とすることができる。仮使用向けの実施形態及び/又は可搬式である実施形態を提供することも本発明の範囲内である。この実施形態では、「仮設」基礎構造は、部屋の周囲及び/又は内部の周りに間隔を空けて配置させる追加の支柱とそれら柱によって支持される所望の荷重を支えるように設計された梁システムを併せて用いて建築することができる。天井構造又は支持体構造14は、梁システム上に設置されてもよい。この実施形態は、居宅的用途の場合に、それが元の仕上がりを無傷に維持でき、撤去に際してシステムを取り除いて自宅をその元の仕上がりに復帰させるのに大して建築費用が掛からないという点で望ましいであろう。
【0052】
使用において、本搬送システム10の実施形態には数多くの用途があり、一例として、居宅又は施設での移動性の提供又は支援を必要とする高齢者、怪我人、及び/又は身障者の搬送における使用がある。例えば、
図12に示されている様に、本搬送システムの或る実施形態が自宅、病院、又は老人ホームの部屋200にあるものとして示されている。部屋200は、生活環境全体の上方に設置された天井パネル124を備えている天井202である支持体構造14を含んでいる。
図12は、更に、第2の部屋即ち玄関204を示しており、玄関204も部屋全体を覆って設置されている天井パネル124を備えている天井206である支持体構造14を含んでいる。天井202と天井206の間の滑らか及び/又は継ぎ目のない移行部208が示されている。
【0053】
図12に示されている様に、天井202にはトロリー12が配置されている。使用者210は、トロリー12側に配置されているホイスト214へケーブル又はストラップ216によって接続されているハーネス212を着用することができる。ホイスト214は、有線又は無線制御によって作動可能になっていて、使用者210の体重の全部又は一部を支えることができるようになっている。ホイスト214は、使用者210を持ち上げ地上から浮き上がらせるようになっていてもよい。使用者210は、ブレーキケーブル114の一端に配置されている機械式ブレーキ解放ハンドル218を使用して、トロリー12を固定位置又は制動位置から自由にさせることができる。解放ハンドル218は、ホイスト214又は何れかの他の望ましい機能を作動させる他の制御、例えばモーターが天井14のトロリー12を動かすための制御など、を含んでいてもよい。使用者210がブレーキハンドル218を強く握ることによってブレーキを解放すれば、トロリー12は天井202を部屋200の何処へでも横方向に動かされてゆく。これは、軌道を必要とするシステムに勝る有意な改善である。加えて、部屋204も滑らかな移行部208のある天井206を有しているため、使用者210は搬送システム10によって支援を提供されながら部屋200から部屋204へ歩いてゆくことができる。部屋若しくは一階建ての建物内での使用者210の運動に関しては、支持体構造14が構造全体を通して滑らかな天井として設置されている限り何らの制限もない。同様に、看護師又は家庭保健師がホイスト214を使用して患者を持ち上げるということもあり、その場合、看護師又は家庭保健師は制御を利用してブレーキを解放させ、患者を支援させるか又は患者を自力で動けるようにすることができる。更に
図12は、1つの実施形態では容易に取り外せるようになっていることもあれば別の実施形態では囲い又は緩衝器によって保護されている非強磁性材料のこともある取り外しパネル220を示している。取り外しパネル220は、トロリー12の支持体構造14との係合からの容易解除をやり易くする。
【0054】
その上、本磁石式搬送システム10は、更に、複数のトロリーを使用して同時に2つ以上の物体が支持されることを可能にさせる。具体的には、利点は、複数の物体/使用者が支持面から支持され又は懸吊され、支持面が荷重パターンを支えるように設計されたものである限り各物体/使用者が支持面全体に亘る最大限の運動アクセス性を同時に持てることである。上方の天井/床の過荷重を予防するため、使用者間の最小限の間隔取りが、トロリー上に配置されている間隔取り機構、例えば最小限の間隔取りを確保するためのフェンスなど、を利用して制御されるようになっていてもよい。例えば、病院内の複数患者が本磁石式搬送装置10を使用して支持されているとして、各患者は天井が設置されている何れの区域へも最大限のアクセスを有することができる。而して何れの使用者も、ホールで同方向又は逆方向に進みながら又は同じ治療室内で又は食堂で互いにすれ違うことができ、その間中ずっと、天井を有する部屋のどの部分にも束縛されずにアクセスできる。この柔軟性は既存の搬送システムでは実現されない。その上、この柔軟性及び特性は、多様な設定、用途、及び産業での本磁石式搬送システム10の使用にも役立つ。
【0055】
本願の磁石式搬送システム10は、ヒトの移動用途に加え多くの他の用途を有していることが認識されるであろう。一般に、磁石式搬送システム10は、物体を固定させる又は懸吊することのできる代わりの面を提供する。磁石式搬送システム10は、物体を位置決めし保持するのに使用することのできる複数の面を床に追加して提供するので、室内の物体のレイアウトにおける柔軟性が大いに改善される。例えば、医療処置室内の機器を各自のトロリーへ取り付けて天井から吊り下げることもできる。この応用は医療処置室の床空間を空けることができる。磁石式搬送システム10は、工業的用途では、製品を製造時にステーションからステーションへ搬送したり、重い物体を製造工場又は梱包工場の中でたった一人のオペレータを使用して又は手動オペレータ若しくはロボットの様な自動制御システムによって制御される動力ユニットを使用してあちこち動かしたりするのに使用することができる。
【0056】
本発明の磁石式搬送システム10の他の使用は、商業的会合空間のレイアウトであろう。可動式壁パネルを1つ又はそれ以上のトロリーに支持させれば、壁パネルを動かし強磁性天井パネルを有する部屋の何れの場所にも選択的に位置付けることができる。磁石式搬送システム10は、更に、居宅的、商業的展示、又は実験室の用途で、棚材料、芸術作品、照明、機器、看板、及び/又は対話型情報を吊るのにも使用することができ、それら物品は1つ又はそれ以上のトロリーを使用して部屋内の何処にでも容易に配置し直すことができる。本磁石式搬送システムの別の実現可能な用途は、演劇及び映画のセット、映像製作、及び/又は写真撮影の環境にあり、照明、小道具、フィルタ、カメラ、及び他の物体を可動式にして容易に位置換えできるようにはしたいが使用中は所望場所でその場にしっかりと保持させたい場合である。
【0057】
本磁石式搬送システム10は、普通は天井に取り付けられることのない多くの物体を今や磁力で上方に取り付けられるようにする。無生物物体を容易に位置決めしその場にロックできるようにする特別なトロリーは、この技術の単純な派生形である。また、本技術は、手術室の様な用途では重い物体を容易に床に固着させる及び床上を動かすのに有用であり、ブレーキを使用すれば手術台を床上に磁力で固定することができるし、しかも清掃又は再構成の場合には摩擦低減荷重分散装置を使用して部屋内をあちこち容易に動かすことができる。
【0058】
以上の説明から明らかな様に、本発明の一部の態様はここに示されている実施例の特定の詳細事項に限定されない。従って、他の類似又は関連の特性又は技法を使用する他の修正及び適用が当業者には想起されるであろうと考えている。故に、本発明の精神及び範囲から逸脱しない全てのその様な修正、変形、及び他の使用及び適用は、本発明によって網羅されると見なされるものとする。
【0059】
本発明の他の態様、目的、及び利点は、図面、開示事項、及び付随の特許請求の範囲の考察から得ることができよう。