特許第6483125号(P6483125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルクハルト コンプレッション アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000002
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000003
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000004
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000005
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000006
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000007
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000008
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000009
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000010
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000011
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000012
  • 特許6483125-シールアセンブリおよびその操作方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483125
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】シールアセンブリおよびその操作方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/53 20060101AFI20190304BHJP
   F16J 9/16 20060101ALI20190304BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20190304BHJP
   F16J 15/16 20060101ALN20190304BHJP
【FI】
   F16J15/53
   F16J9/16
   F04B39/00 104C
   !F16J15/16 A
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-535155(P2016-535155)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-503974(P2017-503974A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014076304
(87)【国際公開番号】WO2015082497
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】13195239.2
(32)【優先日】2013年12月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592229502
【氏名又は名称】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ド ラペルソンヌ、パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ファイステル、ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】フォーザー、アレクサンドル
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−163558(JP,A)
【文献】 特開平05−133478(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0042364(US,A1)
【文献】 特開昭58−221074(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00141821(GB,A)
【文献】 特開平08−284956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00−39/16
F16C 32/00−32/06
F16J 1/00−1/24
7/00−10/04
15/16−15/32
15/324−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン式圧縮機のピストンロッド(2)を封止するシールアセンブリ(1)であって、前記ピストンロッドは軸方向(A)に延びて軸方向に往復移動可能であり、前記シールアセンブリは少なくとも1つのパッキンチャンバ(4)を備え、前記パッキンチャンバ(4)は軸方向(A)に第1および第2側壁(5,6)によって区切られ、前記パッキンチャンバ(4)には、シールリング(7)または油かきリング(8)として構成されている少なくとも1つのパッキンリング(78)およびばね具(9)が配置され、ばね具(9)および少なくとも1つのパッキンリング(78)は前記第1側壁(5)から軸方向(A)に順に配置され、前記パッキンリング(78)は前記第2側壁(6)に当接するシールアセンブリにおいて、
前記ばね具(9)は、磁性ばねとして構成され、かつ軸方向(A)に離間している2つのアセンブリ(9a,9b)、第1アセンブリ(9a)および第2アセンブリ(9b)からなり、
各アセンブリ(9a,9b)は、少なくとも1つの磁石(10a,10b)を備え、
前記磁石(10a,10b)は、前記2つのアセンブリ(9a,9b)が互いに反発するように相互に合わさるかたちで、前記2つのアセンブリ(9a,9b)に配置され、
前記2つのアセンブリ(9a,9b)は、前記2つのアセンブリ(9a,9b)を接続する手段を有しないことで、軸方向(A)と径方向とにそれぞれ相互に移動可能であることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載のシールアセンブリにおいて、
軸方向(A)に互いに隣接して配置されている少なくとも2つのパッキンリング(78)を備えることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシールアセンブリにおいて、
前記磁石(10a,10b)は、永久磁石として構成されていることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のシールアセンブリにおいて、
前記磁石(10a,10b)のうちの少なくとも1つは電磁石として構成されていることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
前記パッキンリング(78)は、更に、前記第2アセンブリ(9b)を備え、前記パッキンリング(78)に磁石(10b)が配置されて、前記パッキンリング(78)は非強磁性材料からなることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
少なくとも1つの磁石(10a)は、チャンバディスク(3)が前記第1アセンブリ(9a)を包囲するように前記チャンバディスク(3)の前記第1側壁(5)に配置され、前記チャンバディスク(3)は非強磁性材料からなることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
前記第1アセンブリ(9a)は、少なくとも1つの磁石(10a)が配置されるリング形の磁石キャリア(11a)を包囲し、前記リング形の磁石キャリア(11a)は前記パッキンチャンバ(4)に配置され、前記リング形の磁石キャリア(11a)は第1側壁(5)に接触し、前記リング形の磁石キャリア(11a)は非強磁性材料からなることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のシールアセンブリにおいて、
前記第2アセンブリ(9b)は、少なくとも1つの磁石(10b)が配置されるリング形の磁石キャリア(11b)を包囲し、前記リング形の磁石キャリア(11b)は前記パッキンチャンバ(4)に配置され、前記リング形の磁石キャリア(11b)は前記パッキンリング(78)に接触し、前記リング形の磁石キャリア(11b)は非強磁性材料からなることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項9】
請求項1〜3及び請求項5〜8のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
前記磁石(10a,10b)は永久磁石であり、リング形構成を有し、周方向(10c)に360°延びていることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項10】
請求項9に記載のシールアセンブリにおいて、
前記永久磁石(10a,10b)は半径方向に磁化されることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項11】
請求項9に記載のシールアセンブリにおいて、
前記永久磁石(10a,10b)は軸方向に磁化されることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
前記永久磁石(10a,10b)は一部品で構成されていることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
前記永久磁石(10a,10b)は、周方向(10c)に順に配置されている複数の永久磁石部品(10d,10e,10f,10g)からなることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項14】
請求項13に記載のシールアセンブリにおいて、
順に配置されている前記永久磁石部品(10d,10e,10f,10g)は、反対方向に磁化されることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項15】
請求項1〜3及び請求項5〜8のいずれか一項に記載のシールアセンブリにおいて、
前記磁石(10a,10b)は永久磁石として構成され、各アセンブリ(9a,9b)は複数の永久磁石(10a,10b)を備え、前記永久磁石(10a,10b)は、第1および第2のアセンブリ(9a,9b)の永久磁石(10a,10b)が軸方向(A)に互いに反対に配置されるよう相互に合わさるかたちで、周方向(10c)に離間して配置され、前記永久磁石(10a,10b)は軸方向(A)に磁化され、軸方向(A)に互いに反対に配置される前記永久磁石(10a,10b)は反対方向に磁化されることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項16】
請求項4に記載のシールアセンブリにおいて、
測定された状態変数に応じて前記ばね具(9)のばね力(F)を変更するため、ピストン式圧縮機の状態変数を検出する調整器(15)およびセンサ(15d)と、電磁石として構成された前記磁石(10a)を制御するための制御器(15e)とを備えることを特徴とするシールアセンブリ。
【請求項17】
ピストン式圧縮機のピストンロッド(2)を封止するシールアセンブリ(1)の操作方法であって、前記ピストンロッドは軸方向(A)に延びて軸方向(A)に往復移動可能であり、前記シールアセンブリ(1)は少なくとも1つのパッキンチャンバ(4)を備え、前記パッキンチャンバ(4)内には、電磁石を備える磁性ばね具(9)と少なくとも1つのパッキンリング(78)とが軸方向(A)に順に配置され、磁性ばね具(9)は、軸方向(A)に離間している2つのアセンブリ(9a,9b)を備え、前記2つのアセンブリ(9a,9b)は、軸方向(A)と径方向とにそれぞれ相互に移動可能であり、状態変数に応じて前記パッキンリング(78)に前記磁性ばね具(9)によって加えられるばね力(F)を変更するため、前記ピストン式圧縮機の状態変数が測定され、前記電磁石が前記状態変数に応じて制御されることを特徴とする操作方法。
【請求項18】
請求項17に記載の操作方法において、
前記ピストン式圧縮機の回転速度が前記状態変数として測定され、前記ばね力(F)は速度が増すと上昇し、速度が低下すると減少することを特徴とする操作方法。
【請求項19】
請求項17に記載の操作方法において、
前記ピストンロッド(2)の速度が前記状態変数として測定されて、前記ばね力(F)は速度が増すと上昇し、速度が低下すると減少することを特徴とする操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に延びかつ軸方向に往復運動可能なピストン式圧縮機のピストンロッドを封止するシールアセンブリに関する。本発明は、さらに、シールアセンブリの操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストン式圧縮機は、あらゆる種類のガスを搬送し、高圧まで圧縮するために使用される作業機である。ピストン式圧縮機は、押しのけ容積の原理に従って作動する。すなわち、圧縮チャンバは、ガスを吸引し取り込んだ後、完全に閉じられる。力が加えられると、シリンダ内の体積が減少し、ガスが圧縮される。この種のピストン式圧縮機は、クロスヘッドピストン式圧縮機と称され、直線的に往復移動可能であり、片側でピストンに接続されかつ反対側でクロスヘッドまたはクランクドライブに接続されたピストンロッドを備えている。ピストンとクランクドライブとの高差圧を密封するため、圧力パッキンがチャンバディスクと共にピストンロッドに沿って配置されている。この種の圧力パッキンは、シールリングまたは油かきリングとして構成された少なくとも1つのパッキンリングを備えている。通常、クランクドライブ側に面するこの種の圧力パッキンは、クランクドライブから、例えば、ピストンロッドに付着する潤滑油などのオイルをかき落とすため、少なくとも1つの油かきリングを備えている。
【0003】
特許文献1は、チャンバディスクを備えた圧力パッキンを開示する。各チャンバディスクが、パッキンチャンバを形成し、少なくとも1つのパッキンリングが、油かきリングまたはシールリングとして構成され、パッキンチャンバのうちの少なくとも1つに配置され、ピストンロッドに付着するオイルをかき落とす機能を有する。パッキンリングとチャンバディスクの境界面との間の漏れ経路の形成を防止するため、パッキンリングには、ばね要素を介して、軸方向に予圧がかけられている。特許文献1に開示されるようなばね要素と組み合わせたパッキンリングの配置には、以下の欠点がある。即ち、ピストンロッドの各ストロークにより、パッキンリングは軸方向の遊びを有するため、パッキンリングとパッキンリングに時々隣接するチャンバディスクの境界面との間に半径方向の隙間が広がり、オイルが妨げられずに半径方向の隙間を通ってクランクケースまたはギアボックスからパッキンチャンバに入る。また、油かきリングは、より多くの摩耗を受けるため、短い保守間隔での交換が必要となる。
【0004】
特許文献2は、ばね要素と組み合わせた2つのパッキンリングのアセンブリを開示する。このアセンブリには、以下の欠点がある。即ち、パッキンリングは軸方向の遊びを有するため、2つのパッキンリング間及びパッキンリングとチャンバディスクの境界面との間、2つのパッキンリング間又はパッキンリングとチャンバディスクの境界面との間に半径方向の隙間が広がり、その結果、オイルがその隙間を妨げられずに通ってピストンロッドまたはクランクケースからパッキンチャンバに入る。このパッキンリングも、より多くの摩耗を受けるため、短い保守間隔での交換が必要となる。
【0005】
特許文献3は、非圧縮性流体のシールデバイスを開示する。この種のシールデバイスは、回転シャフトを封止するのに適している。しかしながら、この種のシールデバイスは、軸方向に昇降運動を行うシャフトを封止するのに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】オーストリア特許第512609号明細書
【特許文献2】オーストリア特許第508782A4号明細書
【特許文献3】米国特許第5,558,341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半径方向の隙間が形成されにくく摩耗がより少なくなる、より有利なシールアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を備えたシールアセンブリによって、達成される。従属請求項2から16は、さらに有利な構成に関する。本目的は、さらに、請求項17の特徴を備えたシールアセンブリの操作方法によって、達成される。従属請求項18および19は、さらに、有利な方法ステップに関する。
【0009】
本目的は、特に、ピストン式圧縮機のピストンロッドを封止するためのシールアセンブリによって達成され、ピストンロッドは軸方向に延びて軸方向に往復移動可能であり、シールアセンブリは少なくとも1つのパッキンチャンバを備え、パッキンチャンバは軸方向に第1および第2側壁によって区切られ、パッキンチャンバ内にシールリングまたは油かきリングとして構成されている少なくとも1つのパッキンリング、およびばね具が配置され、ばね具および少なくとも1つのパッキンリングは第1側壁から軸方向に連続して順に配置され、パッキンリングは第2側壁に当接し、ばね具は磁性ばねとして構成され、軸方向に離間している2つのアセンブリ、第1アセンブリおよび第2アセンブリからなり、各アセンブリは少なくとも1つの磁石を備え、磁石は、2つのアセンブリが互いに反発するように相互に合わさるかたちで、2つのアセンブリに配置されている。
【0010】
本目的はさらに、特にピストン式圧縮機のピストンロッドを封止するためのシールアセンブリの操作方法によって達成され、ピストンロッドは軸方向に延びて、軸方向に往復移動することができ、シールアセンブリは少なくとも1つのパッキンチャンバを備え、パッキンチャンバには電磁石を備える磁性ばね具および少なくとも1つのパッキンリングが軸方向に連続して配置され、ピストン式圧縮機の状態変数が測定され、ばね力を変更するために状態変数に応じて電磁石が制御され、ばね力は状態変数に応じて磁性ばね具によってパッキンリングに加えられる。
【0011】
パッキンリングとチャンバディスクの境界面との間、または隣り合って配置される2つのパッキンリング間に形成される軸方向の遊びまたは半径方向の隙間は、ばね力の増大によって減少させることができると証明されている。しかし、ばね力の増大によって、パッキンリングとチャンバディスクの境界面との間、または2つのパッキンリング間の相互の接触圧力が大きくなりすぎると、半径方向、すなわちピストンロッドの移動方向に対して半径方向へのパッキンリングの移動が低減されるか、防止される、との結果をもたらす。これによって、パッキンリングがピストンロッドに対して偏心位置に保持される、との結果をもたらし、そのため、パッキンリングの摩耗が増大し、パッキンリングからの漏れも増大する。磁性ばねの使用は、後者が非線形ばね特性を有する、との利点を有する。磁性ばねのばね力は、半径方向へのパッキンリングの移動が可能なように、またパッキンリングとチャンバディスクの境界面との間、または2つのパッキンリング間に軸方向の遊びまたは軸方向の変位が生じるときに、ばね力が非線形に、すなわち超比例的に上昇するように選択されると、さらに有利である。非線形ばね特性は、パッキンリングの半径方向への移動が少なくとも部分的に可能でありながら、軸方向の遊びを低減するか防止する、との結果をもたらす。そのため、本発明によるシールアセンブリは、半径方向の隙間を形成しにくく、パッキンリングの摩耗を低減し、密封性を高める、との利点を有する。また、磁性ばねは摩耗が少ない、との利点を有する。
【0012】
特に有利な実施形態では、磁石は永久磁石として構成される。この実施形態は、ばね具を特にコスト効果的に、信頼性高く構成できる、との利点を有する。さらに有利な実施形態では、2つのアセンブリの磁石は電磁石として形成される。さらに考えられる実施形態では、一方のアセンブリの磁石は永久磁石として形成され、他方のアセンブリの磁石は電磁石として形成される。少なくとも1つの電磁石を備えるばね具の実施形態は、ばね具により加えられるばね力を、対応する電磁石の磁化により制御可能である、との利点を有する。シールアセンブリに要求されるばね力は、特にピストン式圧縮機の回転速度またはストローク頻度に依存する。したがって、有利な構成では、ピストン式圧縮機の回転速度に応じてばね力を調整する調整器が提供される。
【0013】
本発明によるシールアセンブリは、特に、ばね具が摩耗を受けない、との利点を有している。したがって、摩耗または損耗がなく、ばね具を交換する必要は全く、またはほとんどない。これにより保守費が低減し、シールアセンブリの信頼性が高まる。さらに、磁性ばねとして構成されるばね具は、磁性ばねが非線形の力経路特性線を有する、との利点を有している。すなわち、磁性ばねの2つの離間したアセンブリの反発力は、間隔が小さくなるにつれて非常に急速に、非線形に増大する。このように、空隙の間隔のわずかな、例として0.5ミリメートルの減少が、ある場合には、反発力を1.5倍に増大させる。この磁性ばねのばね特性は、軸方向の変位による軸方向の遊びの結果として、提示された位置のままになっていたシールリングまたは油かきリングを非常に急速に補正された原位置に戻すため、側壁に対して配置されるシールリングまたは油かきリングが再び第2側壁に当接する、との結果をもたらす。これは、シールリングまたは油かきリングが主にそれに意図される位置に保持されるため、シールリングまたは油かきリングの摩耗およびシールリングまたは油かきリングの漏れを少なくする、との結果をもたらす。同様に、これは保守費を低減し、シールアセンブリの信頼性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0014】
実施形態を説明するために使用される図面において、
図1】シールアセンブリの第1の例示的な実施形態を示す縦断面図。
図2】シールアセンブリの第2の例示的な実施形態を示す縦断面図。
図3】シールアセンブリの第3の例示的な実施形態を示す縦断面図。
図4】シールアセンブリの第4の例示的な実施形態を示す縦断面図。
図5】2つの永久磁石を示す斜視図。
図6】更に別の2つの永久磁石を示す斜視図。
図7】磁石キャリアを備えたアセンブリを示す平面図。
図8】2つのアセンブリを示す斜視図。
図9】更に別のアセンブリの例示的な実施形態を示す平面図。
図10】シールアセンブリの第5の例示的な実施形態を示す縦断面図。
図11】シールリングを示す斜視図。
図12】ばね特性を示す図。
【0015】
原則として、図中、同じ部品には、同じ参照番号を付されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図4および図10は、軸方向Aに延びかつ方向Bに移動可能なピストン式圧縮機のピストンロッド2を封止する様々なシールアセンブリ1の縦断面図をそれぞれ示す。シールアセンブリ1は、パッキンチャンバ4または凹部を形成するチャンバディスク3またはパッキンハウジング3を備えている。パッキンチャンバ4は、軸方向Aに第1および第2側壁5,6によって区切られている。第1側壁5は、シリンダチャンバ14側に配置され、第2側壁6は、クランクケース13またはギアボックス側に配置されている。ばね具9は、パッキンチャンバ4内に配置されている。更に、少なくとも1つのパッキンリングが、図1に示すような油かきリング8として、または、図2から図4もしくは図10に示すようなシールリング7として構成されている。油かきリング8は、特に、ピストンロッド2の表面に蓄積したオイルをかき落とす機能を有している。シールリング8は、特に存在するガス雲の密封及びかき落としの両方、又は密封及びかき落としの一方を行う。第1側壁5から始まり、まず、ばね具9が、次に、少なくとも1つの油かきリング8またはシールリング7が、軸方向Aに順に配置されている。シールリング7または油かきリング8は、第2側壁6に当接されている。ばね具9は、磁性ばねとして構成され、軸方向Aに離間して配置された2つのアセンブリ9a,9b、つまり、第1アセンブリ9aおよび第2アセンブリ9bからなり、各アセンブリ9a,9bは、少なくとも1つの磁石10a,10bを備え、磁石10a,10bは、2つのアセンブリ9a,9bが互いに反発するように2つのアセンブリ9a,9bにて相互に合わさるかたちで配置されている。この点で、相互の反発力Fは、互いに距離F1だけ離間している2つの磁石10a,10bの間に作用することで、ばね力Fは、油かきリング8またはシールリング7にそれぞれ作用する。図12は、図1から図4または図10に示すようなばね具9の距離F1に応じたばね力Fの結合の一例を示す。
【0017】
好ましい構成では、磁石10a,10bは、図5および図6に示すような永久磁石として構成され、永久磁石の極性は、NおよびSで記されている。図5は、2つの円環状の永久磁石10a,10bを示している。ここで、4つの永久磁石部品10d,10e,10f,10gが、周方向に広がって配置されている。磁石の極性は、軸Aの軸方向に走行する。周方向に隣接する2つの永久磁石部分10d,10e,10f,10gは、反対極性を有し、周方向に極性N−S−N−Sを有するように示されている。永久磁石部品10d,10e,10f,10gは、対向する永久磁石部品10d,10e,10f,10gの端側が軸方向Aに同じ極性N−NまたはS−Sを有するために磁石10a,10bが軸方向Aに互いに反発するよう、磁石10a,10bにて相互に合わさるように配置されている。
【0018】
図6は、好ましくは、それぞれが一部品である2つの円形に延びる永久磁石10a,10bを示し、磁石10a,10bの極性は、半径方向、すなわち、軸Aに対して半径方向に走行する。永久磁石10a,10bは、磁石10a,10bが軸方向Aに互いに反発するように相互に合わさるかたちで配置されている。
【0019】
図8は、2つの円形に延びるアセンブリ9a,9b、第1アセンブリ9aおよび第2アセンブリ9bを示し、永久磁石部品10d,10e,10f,10gは、周方向に互いに離間して配置されて、永久磁石部品10d,10e,10f,10gには、軸Aの軸方向に極性が付されている。周方向に隣接して配置される2つの永久磁石部品10d,10e,10f,10gは、反対極性をそれぞれ有する。永久磁石部品10d,10e,10f,10gは、磁石10a,10bおよびアセンブリ9a,9bがそれぞれ軸方向Aに互いに反発するように相互に合わさるかたちで、第1および第2アセンブリ9a,9bにそれぞれ配置されている。
【0020】
図9は、リング形状の磁石キャリア11bを有するアセンブリ9bの更に別の実施形態を示す平面図である。8つの永久磁石部品10d,10e,10f,10gは、周方向に相互に離間して配置され、それらのうち4つに参照番号が付されている。
【0021】
図5図6図8および図9に示すようなアセンブリ9a,9bは、図1から図4または図10に示すように、シールアセンブリ1にて異なる方法で配置することができる。この種の配置は、図12に示すばね特性を有することができる。
【0022】
図1に示すシールアセンブリ1は、軸方向Aに隣り合って配置される3つの油かきリング8を備え、第1アセンブリ9aは、パッキンハウジング3の第1側壁5に配置され、第2アセンブリ9bは、油かきリング8に配置されている。そのため、反発ばね力Fは、2つの永久磁石10a,10bによって発生し、封止面12に対してばね力Fの方向に油かきリング8を押圧する。2つのアセンブリ9a,9bは、磁性ばね具9を形成する。この実施形態では、少なくとも第2アセンブリ9bが配置されている油かきリング8は、非強磁性材料からなる。また、第1側壁5は、非強磁性材料から形成されている。詳細には示していない油かきリング8は、筒状ばね8bによって包囲されている。
【0023】
図2に示すシールアセンブリ1は、軸方向Aに隣り合って配置されている2つのシールリング7を備え、さらに、軸方向Aに隣り合って配置されている2つのアセンブリ9a,9bを備えている。各アセンブリ9a,9bは、リング形磁石キャリア11a,11bと、リング形磁石キャリア11a,11bに配置されている永久磁石10a,10bとを備えている。第1アセンブリ9aは、パッキンハウジング3の第1側壁5に当接されるのに対し、第2アセンブリ9bは、シールリング7に当接されている。そのため、第2アセンブリ9bは、シールリング7にばね力Fを加える。この力は、封止面12に対してばね力Fの方向にシールリング7を押圧する。リング形磁石キャリア11a,11bは、非強磁性材料からなる。図7は、リング形磁石キャリア11bおよび永久磁石10bと共に、図2に示す第2アセンブリの平面図を示している。詳細には示していないシールリング7は、筒状ばね7bによって包囲されている。
【0024】
図3に示すシールアセンブリ1は、軸方向Aに隣り合って配置されている2つのシールリング7を備え、また、軸方向Aに離間して配置されかつリング形磁石キャリア11aおよび永久磁石10aを備える第1アセンブリ9aを備えている。第2アセンブリ9bは、シールリング7と永久磁石10bとの組み合わせによって形成されている。第1アセンブリ9aは、パッキンハウジング3の第1側壁5に当接されるのに対し、第2アセンブリ9bは、シールリング7の一部を形成して、さらに別のシールリング7に当接されている。そのため、第2アセンブリ9bは、シールリング7にばね力Fを加え、この力は、封止面12に対してばね力Fの方向にシールリング7を押圧する。リング形磁石キャリア11a、および第2アセンブリ9bを有するシールリング7は、非強磁性材料からなる。
【0025】
図4に示すシールアセンブリ1は、軸方向Aに隣り合って配置されている2つのシールリング7を備え、また、第1アセンブリ9aおよび第2アセンブリ9bを有するばね具9を備えている。第1アセンブリ9aは、パッキンハウジング3の第1側壁5に配置されている。第2アセンブリ9bは、シールリング7と永久磁石10bとの組み合わせによって形成されている。第2アセンブリ9bは、シールリング7にばね力Fを加え、この力は、封止面12に対してばね力Fの方向に右側に配置されているシールリング7を押圧する。パッキンハウジング3、および第2アセンブリ9bを有するシールリング7は、非強磁性材料からなる。
【0026】
図10に示すシールアセンブリ1は、1つのシールリング7を備え、第1アセンブリ9aおよび第2アセンブリ9bを有するばね具9を備えている。第1アセンブリ9aは、パッキンハウジング3の第1側壁5に配置されている。第2アセンブリ9bは、シールリング7と永久磁石10bとの組み合わせによって形成されている。第2アセンブリ9bは、シールリング7にばね力Fを加え、この力は、封止面12に対してばね力Fの方向に右側に配置されているシールリング7を押圧する。パッキンハウジング3、および第2アセンブリ9bを有するシールリング7は、非強磁性材料からなる。
【0027】
図11は、第1、第2および第3のセグメント部品7b、7c、7dを備えかつ筒状ばね7aによって包囲されているシールリング7の一例を示す。3つのセグメント部品7b,7c,7dは、ジョイント7fを介して相互に変位可能に取り付けられ、各セグメントは、1つのジョイント7eをそれぞれ有している。筒状ばね7aのばね力は、封止面7gがピストンロッド2に対して予圧を有し、ピストンロッド2に向けて押圧される、との結果をもたらす。図2に示すシールアセンブリ1は、例として、図11に示すような2つのシールリング7を有することができる。ばね具9によって加えられるばね力Fが大きすぎると、シールリング7のセグメント部品7b,7c,7dが移動できなくなり、ピストンロッド2に対するシールリング7の支持が非対称になるか、全く支持されなくなる。その結果、摩耗の増大、非対称摩耗、または非気密性の増大をもたらす。図2では、ばね具9は、相互の間隔F1を有している。図12は、間隔F1の場合にばね力を示す。ばね力Fの非線形経路は、間隔F1の場合にばね力が比較的低いためにシールリング7のセグメント部品7b,7c,7dの相互移動が阻止されない、との利点を有している。シールリング7が軸方向Aに移動Bした結果、変位すると、図12から明らかなように間隔F1が小さくなり、シールリング7に作用するばね力Fが超比例的に上昇する。このため、2つのシールリング7間、またはシールリング7と第2側壁6との間に、小さい半径方向の隙間しか形成されず、ばね力Fが増大した結果、2つのシールリング7が、図2に示す位置に再び戻ることになる。そのため、本発明によるシールアセンブリ1は、2つのシールリング7間またはシールリング7と第2側壁6との間の半径方向の隙間の形成または少なくとも幅が低減し、シールリング7の半径方向の移動が全くまたはわずかしか阻止されない、との利点を有している。
【0028】
シールリング7は、多くの可能な方法により構成してもよく、具体的には、一部品であってもよい。油かきリング8も、多くの可能な方法によって構成してもよく、具体的には、セグメント化された形態または一部品であってもよい。
【0029】
図4に示すシールアセンブリ1に関し、第1アセンブリ9aの磁石10aは電磁石として形成され、第2アセンブリ9bの磁石10bは永久磁石として形成されている。更に別の実施形態では、第1および第2のアセンブリ9a,9bの磁石10a,10bの少なくとも1つ、好ましくは両磁石10a,10bが、電磁石に流れる電流によって磁気作用を生成する電磁石として形成されている。ある構成では、相応の一定の磁気作用を生成するように、一定の電流が電磁石に流れる。特に有利な構成では、シールアセンブリ1は、第1アセンブリ9aの第1制御リード線15a及び又は第2アセンブリ9bの第2制御リード線15bとセンサ15dのリード線15cとを有する調整器15を備えている。センサ15dは、ばね力Fや第1および第2のアセンブリ9a,9b間の間隔F1、即ち、ピストン式圧縮機の回転速度もしくはピストンロッド2のストロークなど他の状態変数等を測定するために使用される。より有利には、第1および/または第2のアセンブリ9a,9bの電磁石10a,10bが、所定の理想値、例えば、ばね力Fまたは2つのアセンブリ9a,9b間の間隔F1の理想値が観察されるように制御される。ある有利な構成では、ばね力Fが速度に応じて制御される。そのため、ピストンロッド2の回転速度または例として移動が追加のセンサにより検出され、ばね具9により作動するばね力Fが回転速度に応じて制御される。
【0030】
ここで、この種の調整の例示的な実施形態を、詳細に説明する。図4に示すシールアセンブリに関し、第1アセンブリ9aの磁石10aは電磁石であり、第2アセンブリ9bの磁石10bは永久磁石である、と想定する。電磁石10aには、調整器15および制御器15eにより制御リード線15aを介して電流が供給される。ピストン式圧縮機の回転速度は、センサ15dを用いて測定され、その信号は、リード線15cを介して調整器15に供給される。電磁石10aの電流または電磁石10aによって発生する磁場は、速度が増すにつれて増大し、または速度が低下するにつれて減少する。それにより、ばね具9のばね特性が変更される。図12に示すように、電磁石10aの磁場が増大すると、ばね特性F’が上側に変位する。これに対し、磁場が減少すると、ばね特性F’’は下側に変位する。ピストン式圧縮機の回転速度が増大すると、シールリング7に軸方向Aに作用する力も増大する。シールリング7の軸方向Aへの変位に対抗するため、F’で示すようにばね特性が上昇すると、間隔F1の場合に作用するばね力が、値F10から値F11に上昇する。ピストン式圧縮機の速度が低下すると、電磁石10aの電流が減少するため、ばね特性は再び一定の速度から経路Fを有し、ばね力は間隔F1で値F10を有するようになる。
【0031】
図4に示すシールアセンブリ1は、少なくとも1つのパッキンチャンバと、磁性ばね具9とを備えている。磁性ばね具9は、電磁石10aと、パッキンチャンバ4内に軸方向に順に配置された少なくとも1つのパッキンリング78とを備えている。ここで、ピストン式圧縮機の状態変数が測定され、電磁石10aは状態変数に応じて制御される。こうして、磁性ばね具9によってパッキンリング78に加えられるばね力Fが、状態変数に応じて変更される。
【0032】
ピストン式圧縮機の回転速度は、例えば、状態変数として測定される。ここで、ばね力Fは、速度が増すと増大し、速度が低下すると減少する。ピストン2の速度も、例として、状態変数として測定することができる。
【0033】
図1から図4および図10は、単一のチャンバディスク3を備えたシールアセンブリ1をそれぞれ示している。しかしながら、複数のチャンバディスク3を軸方向Aに順に配置し、好ましくは、ばね具9と少なくとも1つのパッキンリング78とを各チャンバディスク3に配置するように、シールアセンブリ1を構成してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12