(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記成分(C)が、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、水添ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
銅箔、耐熱性フィルム、または、銅箔および耐熱性フィルムの両方が積層されたフィルムからなる群から選択される少なくとも1種の基材と、請求項7に記載の熱硬化性接着フィルムおよび請求項8〜10のいずれかに記載の基材付き熱硬化性接着フィルムからなる群から選択される少なくとも1種の熱硬化性接着フィルムとが、それぞれ少なくとも1枚積層された複合フィルム。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型パソコン、携帯電話等の電子機器の高性能化、小型化、多機能化に伴い、電子機器を構成する電子部品には、高密度化、小型化、薄型化が強く求められている。電子部品の構成材料である配線板あるいは半導体パッケージ等に要求される特性も多様化しており、例えばプリント配線板においては、限られたスペースに対しても立体的な配線が可能なフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit。以下、FPCという)の要求が高まっている。
【0003】
一般的に、FPCは、ポリイミドに代表される耐熱性かつ絶縁性のプラスチックフィルム上に積層された銅箔に回路パターンを形成し、その回路パターンが熱硬化型絶縁樹脂で充填され、さらに別の耐熱フィルムで被覆された構造を有している。未硬化の回路パターン充填用樹脂と耐熱フィルムとを予め一体化したものはカバーレイフィルムと称され、これまでに多様なものが提案されている。また、高密度実装のために、FPCを多層化することが広く行われており、多層化の際に使われるものが熱硬化型接着剤を薄いシートに加工した、いわゆるボンディングシートである。
【0004】
ポリイミドフィルム等に銅箔を積層したフレキシブル銅張積層板(Flexible Cupper Clad Laminate。以下、FCCLという)、カバーレイフィルムおよびボンディングシートを用いる一般的な工法で製造されるFPCにおいては、銅箔層と他の銅箔層とは、ポリイミドフィルム等を介することで絶縁性を確保しているが、FPCに対する近年の高機能化要請、特に薄型化に対して、ポリイミドフィルム等を排除し、カバーレイフィルムあるいはボンディングシートに用いられている熱硬化型接着剤を使用して銅箔層間の絶縁を確保する工法が提案されている。この工法に用いられるものが、未硬化の熱硬化型接着剤層と銅箔が一体化されたFRCC(Flexible Resin Coated Copper)である。
【0005】
カバーレイフィルム、ボンディングシートおよびFRCCには、FPC基材である絶縁性プラスチックフィルムおよび銅箔に対して高い接着強度を有することは勿論、半田付け工程に耐え得る高い耐熱性、繰り返しの折り曲げに耐え得る柔軟性が求められる。加えて、IT技術の進展に伴って大容量の情報を高速で処理することが要求され、伝送信号の高周波化が進展しており、プリント配線板を構成する材料には低誘電率(ε)および低誘電正接(tanδ)であることが求められるようになっている。ガラスクロスに樹脂を染み込ませたプリント配線板基材、所謂プリプレグにおいては、従前のエポキシ樹脂に代えて、フッ素樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの低誘電率・低誘電正接特性を持った樹脂を利用することが提案されている。
(例えば特許文献1〜3)
【0006】
一方で、プリプレグについては、樹脂に比較して高い誘電率および誘電正接を持つガラスを用いざるを得ず、極めて低い誘電特性を付与することが難しいことは自明であり、この問題に対してはFPCで高周波化に対応する動きがある。具体的には、ポリイミドフィルムに比べて低誘電率・低誘電正接である液晶ポリマーフィルム(Liquid Crystal Polymerフィルム。以下LCPフィルムという)をFPC基材として使用し、さらに低誘電特性を有したカバーレイフィルム、ボンディングシート、FRCCを使って低誘電特性を持つFPCを作製する。
【0007】
ところで、プリプレグは、ガラスクロス等の多孔質基材に溶剤で希釈した含浸用樹脂溶液をしみ込ませ、次いでこれを乾燥させて製造されるため、プリプレグに使われる含浸用樹脂溶液には固形分濃度が高く、その一方で粘度が低いことが求められる。
また、プリント配線板における小型化および高密度化に対しては多層化が有効であるが、多層プリント配線板においては、銅箔パターンが形成されたプリプレグ上に他のプリプレグを被せ、次いで加熱および加圧してプリプレグからしみ出した含浸樹脂で銅箔パターンを埋設するため、含浸樹脂の溶融粘度を低く設計する必要がある。
上記の要求に対して、高分子量化合物であるエラストマーを添加することは、含浸用樹脂溶液の粘度および含浸用樹脂の溶融粘度を著しく増大させることに繋がるため、プリプレグ用材料に関しては多量のエラストマーを添加することは好まれない。
【0008】
加えて、プリント配線板については温度変化によるクラックの発生を防止するため、含浸樹脂には低い線膨張係数および高いガラス転移温度を有していることが求められる。この要求に対しては硬化後に高い剛性および高いガラス転移温度を発現する比較的低分子の熱硬化樹脂が、含浸樹脂材料として広く使用されている。対して、エラストマーは高い線膨張係数および低いガラス転移温度を有する物質であるため、エラストマーをプリプレグ含浸用樹脂の主成分とすることは好まれない(例えば、特許文献3および4)。
エラストマーを含有しない樹脂組成物、もしくは樹脂組成物全体に対するエラストマー含有量が50重量%以下である樹脂組成物は硬く脆い性状を示すが、プリプレグはガラスクロス等との複合状態で強度が確保できれば実使用に耐え、またプリント配線板の特性上、プリプレグには高い柔軟性は要求されない。必然的にプリプレグ用の樹脂組成物そのものには高い強度および高い柔軟性は求められないため、プリプレグ用材料としては上記のエラストマーを含まない、もしくはエラストマー含有量の小さな樹脂組成物が好適に使用される。
【0009】
一方、プリプレグ用樹脂組成物とは逆に、FPC用材料についてはフィルム化した場合の強度、柔軟性等が特に重要視される。加えて、FPC用材料は加熱および加圧によって積層されるが、その際に溶融粘度が著しく低下せず、流れ出さないことも重要である。
また、FPCの最大の特長である柔軟性を損なわないために、FPC材料には加熱硬化後にも高い柔軟性を有していることが求められる。
すなわち、プリプレグ用材料とFPC用材料とでは、それぞれに求められる特性が大きく異なり、高強度、高柔軟性、高溶融粘度を有するエラストマーを多く含有する樹脂組成物がFPC用材料として好適である。
【0010】
低誘電特性を持つ樹脂組成物としては、低誘電性のエラストマー成分と、多官能ビニル芳香族共重合体、ポリフェニレンエーテルオリゴマー、エポキシまたはビスマレイミド等の熱硬化樹脂を含有する組成物が提示されており(例えば特許文献5〜7)、これらの組成物をカバーレイフィルムあるいはボンディングシートに応用することが提案されている。
また、LCPフィルムに高い接着性を示す樹脂組成物が、特許文献8あるいは特許文献9に示されている。
【0011】
しかし、前記の文献等で示された樹脂組成物は、従来技術の延長とも言える熱硬化樹脂の硬化に伴って接着強度が発現するメカニズム、すなわち極性を持った被着体表面と、極性を持った熱硬化樹脂とが静電気的に引き合って強度が発現する現象を利用したものであるため、低極性材料であるLCPフィルムおよび高極性材料である銅の双方に高い接着性を示すものではない。加えて、低誘電率かつ低誘電正接であって、半田付け工程での急加熱に耐え得る高い耐熱性、および折り曲げに耐え得る高い柔軟性を持った熱硬化性接着剤組成物を提供するものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、低誘電率かつ低誘電正接であり、LCPフィルムおよび銅箔に対して高い接着強度、半田付け工程での急加熱に耐え得る高い耐熱性および折り曲げに耐え得る高い柔軟性を持った熱硬化性接着剤組成物、ならびに該接着剤組成物を用いたボンディングシート、カバーレイフィルム、FRCC、および接着剤付きFCCLを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、構造式(1)で示されるポリフェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物と、分子内に2個以上のマレイミド基を有するビスマレイミド樹脂と、ポリオレフィン系エラストマーとを組み合わせた熱硬化接着剤組成物において、該組成物中のビニル基とマレイミド基の比率および該組成物に占めるポリオレフィン系エラストマーの比率が特定の値を取る場合に、低誘電率、低誘電正接であり、LCPフィルムおよび銅箔に対して高い接着強度と、半田付け工程に耐え得る高い耐熱性と、熱硬化後にも折り曲げに耐え得る高い柔軟性を持った熱硬化性接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
本発明はさらに、該熱硬化性接着剤が、離型フィルムの一方の面に塗布されたボンディングシート、耐熱性フィルムの一方の面に塗布されたカバーレイフィルム、耐熱性フィルムの両面に塗布された両面接着テープ、銅箔の一方の面に塗布されたFRCC、および該熱硬化性接着剤が耐熱性フィルムの一方の面に塗布され、かつもう一方の面に銅箔が積層された接着剤付きFCCLに関する。
【0016】
すなわち、本発明には、以下の形態が含まれる。
<1> 成分(A)構造式(1)で示されるポリフェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物、成分(B)分子内に2個以上のマレイミド基を有するマレイミド樹脂、および成分(C)ポリオレフィン骨格を主成分とし、ポリオレフィンブロックとポリスチレンブロックの共重合体である熱可塑性エラストマー、を含有し、
上記成分(A)に含まれるビニル基と上記成分(B)に含まれるマレイミド基との当量比が、1.0:0.5〜1.0:4.0であり、
上記成分(A)、上記成分(B)、及び上記成分(C)の総重量に占める上記成分(C)の割合が55〜95重量%であり、
上記成分(C)の総重量に対する上記成分(C)のスチレン単位の比率が10〜40重量%、100%伸び引張応力が0.1〜2.9MPa、切断時伸びが100%以上であることを特徴とする熱硬化性接着剤組成物。
【0017】
【化1】
【0018】
上記構造式(1)中、置換基R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フェニル基、またはハロアルキル基であり、
Xは炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、硫黄原子またはハロゲン原子を含んでもよく、
aおよびdは、それぞれ、0または1であり、
Yは下記構造式(2)で表され、
bおよびcは、それぞれ、その両方が0ではない0〜20の整数であり、
Zは下記構造式(3)で表される。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
上記構造式中、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であり、
R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であり、
Aは、単結合または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、
*は酸素原子との結合部位を示す。
【0022】
<2> 上記成分(A)は、下記構造式(4)で示される構造である、上記<1>に記載の熱硬化性接着剤組成物。
【0023】
【化4】
【0024】
上記構造式(4)中、bおよびcは上記<1>に記載の通りであり、Yは、下記構造式(5)もしくは構造式(5’)のうち1種が配列した、または、2種がランダムで配列した構造を満たすものである。下記構造式(5)および構造式(5’)において、*
1は上記構造式(4)にける酸素原子との結合部位を示し、*
2は上記構造式(4)にける炭素原子との結合部位を示す。
【0025】
【化5】
【0026】
<3> 上記成分(B)が、下記構造式(6)〜(9)の構造を有する化合物群の少なくとも1種である上記<1>または上記<2>に記載の熱硬化性接着剤組成物。
【0027】
【化6】
【0028】
上記式(6)中、R
17〜R
24はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、Bは単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素基または酸素原子である。
【0029】
【化7】
【0030】
上記式(7)中、R
25〜R
32はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、Dは炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。
【0031】
【化8】
【0032】
上記式(8)中、R
33〜R
43はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、pは1〜20の整数を示す。
【0033】
【化9】
【0034】
上記式(9)中、Eは炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基である。
【0035】
<4> 上記成分(C)が、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、水添ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
<5> さらに成分(D)充填材を含む、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
<6> 180℃/1時間の加熱により硬化させた場合、25〜150℃の範囲において、貯蔵弾性率の最小値が1×10
5Pa以上、最大値が1×10
8Pa以下である、上記<1>〜<5>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物。
<7> 離型フィルム基材、または離型紙基材上に上記<1>〜<6>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物が積層された熱硬化性接着フィルム。
<8> 銅箔基材の一方の面に上記<1>〜<6>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物が積層された基材付き熱硬化性接着フィルム。
<9> 耐熱性フィルム基材の少なくとも一方の面に上記<1>〜<6>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物が積層された基材付き熱硬化性接着フィルム。
<10> 耐熱性フィルム基材の一方の面に上記<1>〜<6>のいずれかに記載の熱硬化性接着剤組成物が積層され、もう一方の面に銅箔層を有する基材付き熱硬化性接着フィルム。
<11> 上記耐熱性フィルム基材が液晶ポリマーフィルムであることを特徴とする、上記<9>または<10>に記載の基材付き熱硬化性接着フィルム。
<12> 上記<7>に記載の熱硬化性樹脂フィルムを硬化させたフィルム。
<13> 上記<8>〜<11>のいずれかに記載の基材付き熱硬化性樹脂フィルムを硬化させたフィルム。
<14> 銅箔、耐熱性フィルム、または、銅箔および耐熱性フィルムの両方が積層されたフィルムからなる群から選択される少なくとも1種の基材と、上記<7>に記載の熱硬化性接着フィルムおよび上記<8>〜<10>のいずれかに記載の基材付き熱硬化性接着フィルムからなる群から選択される少なくとも1種の熱硬化性接着フィルムとが、それぞれ少なくとも1枚積層された複合フィルム。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る熱硬化性接着剤組成物は、低誘電率かつ低誘電正接であり、LCPフィルムおよび銅箔に対して高い接着強度を示し、半田付け工程での急加熱に耐え得る高い耐熱性および折り曲げに耐え得る高い柔軟性を有し、LCPフィルムを用いたFPCの接着材料、具体的にはボンディングシート、カバーレイフィルム、FRCC、および接着剤付きFCCL用の接着材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明について詳細に説明するが、本発明は明細書に記載された具体例に基づき限定的に解釈されるものでない。
本発明における熱硬化性接着剤組成物(以下、接着剤組成物と適宜、略す)は、必須成分として、成分(A)2官能性ポリフェニレンエーテルオリゴマーの末端をビニル基に変換したビニル化合物と、成分(B)分子内に2個以上のマレイミド基を有するビスマレイミド樹脂と、成分(C)ポリオレフィン系エラストマーと、を含有する。
【0038】
<成分(A):ビニル化合物>
本発明の成分(A)は、構造式(1)で表される、ポリフェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物である。本発明において、成分(A)は、主に、接着剤組成物の熱硬化性、耐熱性および低誘電特性向上に寄与する。
【0042】
構造式(1)中、置換基R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フェニル基、またはハロアルキル基である。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
アルキル基としては、炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
ハロアルキル基としては、炭素原子数1〜6のハロアルキル基であることが好ましい。
これらの中でも、置換基R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ、水素原子、または、炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
【0043】
Xは炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、硫黄原子またはハロゲン原子を含んでもよく、aおよびdは、0または1である。
炭素数1以上の有機基として、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
【0044】
Yは構造式(2)で表され、R
5、R
6、R
7およびR
8はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であり、好ましくは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
bおよびcは、その両方が0ではない0〜20の整数である。
【0045】
Zは構造式(3)で表され、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であり、好ましくは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
構造式(3)中のAは、単結合または炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基であり、好ましくは、単結合または炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基である。
上記構造式(2)及び(3)における「*」は、各々、上記構造式(1)における酸素原子との結合部位を示す。
【0046】
好ましい形態として、成分(A)は下記構造式(4)で示される構造である。
【0048】
上記構造式(4)中、bおよびcは上記の通りである。
上記構造式(4)中、Yは下記構造式(5)または構造式(5’)のうち1種が配列した、または、2種がランダムで配列した構造を満たすものである。下記構造式(5)および構造式(5’)において、*
1は上記構造式(4)にける酸素原子との結合部位を示し、*
2は上記構造式(4)にける炭素原子との結合部位を示す。
【0050】
上記「Yは下記構造式(5)または構造式(5’)のうち1種が配列した、または、2種がランダムで配列した構造を満たすものである」により、上記構造式(4)中、−YO−が、下記構造式(5)または構造式(5’)のうち1種のみが配列した、または、2種がランダムで配列した構造であることを意味するだけでなく、−OY−が、下記構造式(5a)または構造式(5a’)のうち1種のみが配列した、または、2種がランダムで配列した構造であることも包含する。下記構造式(5a)および構造式(5a’)において、*
1は上記構造式(4)にける酸素原子との結合部位を示し、*
2は上記構造式(4)にける炭素原子との結合部位を示す。
【0052】
〔成分(A)の分子量〕
構造式(1)で示される化合物の数平均分子量は、500〜3000の範囲にあることが好ましく、1000〜2500であることがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー法により、ポリスチレン標準により測定される。
数平均分子量が500以上である場合、樹脂組成物を硬化させる工程において、接着剤組成物の粘度が極端に低くなり難く、流れ出しが起こり難くなるため好ましい。また、数平均分子量の下限が500である成分(A)はビニル基当量が小さくなり過ぎず、反応基数から配合量を決定する際、成分(B)の必要量が少なくなり、低誘電特性が得られ易くなるため好ましい。
一方、数平均分子量が3000以下である場合、溶剤への溶解性および他の樹脂との相溶性が高まり、ワニスの安定性が良好で、フィルム状態にした際の外観不良および物性低下が起こり難いため好ましい。
【0053】
<成分(B):マレイミド樹脂>
本発明の成分(B)は、分子内に2個以上のマレイミド基を有するマレイミド化合物であり、好ましくは構造式(6)〜(9)で表される化合物群から選択される少なくとも1種である。本発明において、成分(B)は、主に、接着剤組成物の熱硬化性に寄与する。前述の成分(A)、および成分(B)は、200℃以上に加熱すれば、それぞれ単独でも硬化するが、成分(A)と成分(B)を共存させることで反応温度を下げることができ、具体的には150℃〜180℃の加熱処理によって良好な特性が得られる。
本発明の接着剤組成物において、構造式(6)〜(9)で示される化合物は1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0055】
上記式(6)中、R
17〜R
24はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。Bは単結合、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または酸素原子であり、好ましくは、好ましくは炭素数1〜4の2価の脂肪族飽和炭化水素基である。
【0057】
上記式(7)中、R
25〜R
32はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。Dは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、好ましくは下記式(15)で示される炭化水素基である。
【0059】
上記式(15)中、R
44及びR
45はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Fは炭素数1〜4の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、*は酸素原子との結合部位を示す。
【0061】
上記式(8)中、R
33〜R
43はそれぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、pは1〜20の整数を示す。
【0063】
式(9)中、Eは炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10の2価の脂肪族飽和炭化水素基である。
【0064】
上記構造式(6)、(7)、(8)、(9)の具体例としては、下記構造式(10)、(11)、(12)、(13)、(14)が挙げられる。下記構造式(13)中、pは上記構造式(8)におけるpと同じ意味を示す。
【0066】
〔ビニル基とマレイミド基の比率〕
成分(A)と成分(B)の配合量は、ビニル基とマレイミド基との当量比を考慮して決定する。すなわち、成分(A)に含まれるビニル基と成分(B)に含まれるマレイミド基の当量比(ビニル基:マレイミド基)を、1.0:0.5〜1.0:4.0、好ましくは、1.0:0.75〜1.0:3.5、さらに好ましくは、1.0:1.0〜1.0:3.0に設定する。
【0067】
1.0:0.5よりもマレイミド基の比率が少ない場合、硬化後の接着剤組成物中に低分子量である成分(A)が未反応のまま残り、接着剤組成物の高温時の機械的特性が低下するため、好ましくない。一方、1.0:5.0よりもマレイミド基の比率が多い場合、接着剤組成物中における成分(B)の量が多くなり、成分(B)は成分(A)に比較して高誘電率、高誘電正接、高吸湿率であり、結果として接着剤組成物の電気特性および吸湿時の半田付け工程における耐熱性が低下するため、好ましくない。
【0068】
<成分(C):熱可塑性エラストマー>
本発明において、成分(C)は主に、接着剤組成物の低誘電特性、耐熱性および接着性向上ならびに接着剤組成物をフィルム化した際の柔軟性向上に寄与する。
【0069】
本発明に使用する成分(C)としてはエチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレンから選択される1種または2種以上からなるポリオレフィン骨格を主成分とし、ポリオレフィンブロックとポリスチレンブロックの共重合体である熱可塑性エラストマー(以下、熱可塑性エラストマーという)が使用できる。
具体的には、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体、水添ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック共重合体がより好ましく、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体およびポリスチレン−ポリイソプレンブロック共重合体が特に好ましい。
【0070】
本発明に使用する熱可塑性エラストマーにおけるスチレン単位の重量比率(以下、スチレン含有量という)は、熱可塑性エラストマーの総重量に対して、10〜40重量%であり、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。スチレン含有量が10重量%よりも少ない場合、他の樹脂との相溶性が低下するため好ましくなく、40重量%よりも多い場合は接着剤組成物をフィルム化した際にクラックが入り易く、また加熱硬化後の接着剤組成物の貯蔵弾性率E'が高くなるため柔軟性が損なわれて耐折性が低下するため、好ましくない。
【0071】
また、本発明に使用する熱可塑性エラストマーは、JIS K−6251に準拠して測定した100%伸び引張応力および切断時伸びが所定の値を示す。以下に、具体的に説明する。100%伸び引張応力は0.1〜2.9MPaの範囲にあり、好ましくは0.2〜2.7MPa、さらに好ましくは0.3〜2.5MPaである。0.1MPa未満だと硬化後の接着剤組成物が柔らかくなりすぎて接着剤として必要な強度が得られないため好ましくなく、2.9MPaを超えると加熱硬化後の接着剤組成物が剛直になるため応力緩和性能が小さくなる、すなわち小さな変移量に対して大きな応力が発生し易くなるため好ましくない。
【0072】
切断時伸びは100%以上であり、200%以上であることが好ましく、300%以上がさらに好ましく、400%以上が特に好ましい。100%未満だと接着剤組成物の柔軟性が不足するため、接着剤組成物が他の基材と積層された熱硬化性接着フィルム(以下、適宜「接着フィルム」と略す)にクラックが入り易く、また耐折性が低下するため、好ましくない。
【0073】
本発明に使用する熱可塑性エラストマーの数平均分子量は特に限定されないが、接着剤組成物の貯蔵弾性率E'を低下させ、高い柔軟性を付与するという観点から10,000〜300,000であることが好ましく、10,000〜250,000であることがより好ましく、10,000〜200,000であることが特に好ましい。熱可塑性エラストマーの数平均分子量が10,000以上であることによって、接着剤組成物の柔軟性を適切にでき、接着剤として必要な強度が得られる。一方、300,000以下であることによって、接着剤組成物の貯蔵弾性率E'が高くならないため、柔軟性が損なわれず、接着剤組成物の耐折性が低下し難いことに加えて、溶剤溶解性および他の成分との相溶性が保たれ、相分離し難い。なお、本発明の接着剤組成物において、上記のエラストマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0074】
〔成分(C)の比率〕
本発明の接着剤組成物は、成分(A)+(B)+(C)に占める成分(C)の割合が55〜95重量%である。より好ましくは60〜95重量%、さらに好ましくは70〜95重量%、特に好ましくは75〜95重量%である。
成分(C)が55重量%以上であることで、接着剤組成物溶液中で各成分が分離し難く、また、フィルム化した際に膜が割れ難い。さらに、LCPフィルムおよび銅箔に対するピール強度が大きいため、上記組成物はFPC用接着剤の用途に好適である。一方、95重量%以下である場合、適切な硬化性が得られ、硬化後の接着剤組成物の機械的特性が不足し難いため、より実用に適するものとなる。
【0075】
〔硬化後の弾性率〕
本発明の接着剤組成物は、180℃/1時間の熱処理後の貯蔵弾性率が、25〜150℃の範囲において、好ましくは最小値が1×10
5Pa以上、最大値が1×10
8Pa以下であって、より好ましくは、最小値が2×10
5Pa以上、最大値が1×10
8Pa以下であって、よりさらに好ましくは、最小値が3×10
5Pa以上、最大値が1×10
8Pa以下、である。ここで、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置により、測定周波数を11Hzとし、測定温度25℃から150℃まで、10℃/分で昇温しながら測定される。
貯蔵弾性率が1×10
5Pa以上であると適切な柔らかさであり、扱い易いうえ、FPC用接着材料として必要な機械的強度をより確保できる。また半田付け工程における著しい軟化をより防ぐことができる。一方、1×10
8Pa以下であると、硬化後の接着剤組成物の柔軟性がより確保され、より好適な耐折性が確保される。また、LCPフィルムに対する接着性をより向上することができる。
【0076】
<充填材>
本発明の接着剤組成物には、機械的強度の改善、溶融挙動の調整、表面タックの抑制、めっき性の向上、導電ペーストの接着性向上、難燃性向上、誘電特性の調整、等のため、充填材を添加しても良い。充填材としては、樹脂粒子、無機粒子、または無機繊維である充填材が挙げられ、公知の充填材を使用できる。
上記の具体的な充填材としては、樹脂粒子として、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオルエチレン、ジビニルベンゼン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、酢酸セルロース、ナイロン、セルロース、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂等;無機粒子として、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化珪素、窒化硼素、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素等の金属塩、カオリン、クレー、タルク、亜鉛華、鉛白、ジークライト、石英、ケイソウ土、パーライト、ベントナイト、雲母、合成雲母等;および、繊維状充填材として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維等が挙げられる。
【0077】
本発明の接着剤組成物の特長である低誘電率および低誘電正接特性を損なわないためには、無機粒子である、シラスバルーン、またはナノサイズの中空シリカを用いることが有効である。
上記の充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。配合量については、接着剤組成物の総体積を100体積部とした場合、充填材の好ましい配合量は0.1〜200体積部、より好ましくは0.5〜150体積部、より更に好ましくは1〜100体積部である。
【0078】
<その他の添加剤>
本発明の接着剤組成物には、種々の特性を調整する目的のため、必要に応じて公知の難燃剤、反応促進剤、架橋剤、重合禁止剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を添加できる。
ただし、接着フィルムの半田耐熱性向上の観点から、本発明の接着剤組成物はエポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。
【0079】
<接着剤組成物溶液の製造方法>
本発明の接着剤組成物溶液について説明する。本発明の接着剤組成物溶液は、本発明の接着剤組成物の原料である成分(A)、(B)、(C)等の各成分を溶剤に溶解、または分散することで得ることができる。
接着剤組成物の各成分は、それぞれ個別に溶剤に溶解したのち、各溶液の所定量を配合しても良く、あるいは接着剤組成物の原料である各成分を予め混合したものに所定量の溶剤を追加して溶解してもよい。
【0080】
溶解方法としては、例えば、攪拌装置を備えた容器に接着剤組成物と溶剤とを配合し攪拌する方法が挙げられる。溶解時間を短縮したい場合は、加熱することも有効である。
本発明では、接着剤組成物溶液の固形分は、10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%に設定することが望ましい。固形分が10重量%以上であると、接着剤組成物溶液の粘度が低くなりすぎることを防ぎ、例えば、基材フィルムへ塗布した際に流れ出ることなく、所望する厚さおよび形状のフィルムが形成されやすくなる傾向にある。一方、固形分が50重量%以下であると、接着剤組成物溶液の粘度が高くなりすぎることを防ぎ、塗布作業がより容易になり、各成分の分離や結晶化を防ぎ、接着剤組成物溶液の保存安定性が向上する傾向にある。
【0081】
本発明に使用する溶剤としては、接着剤組成物が可溶なものであれば特に制限はなく、接着剤組成物を溶解しない溶剤であっても、均一な分散状態が得られる溶剤であれば使用可能である。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキサイド、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、ベンゼンジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、γ-ブチロラクトン、セロソルブ、ブチルセロソブル、カルビトール、ブチルカルビトール等が挙げられる。上記の溶剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、テトラヒドロフラン、トルエンが好ましく使用される。
【0082】
<接着剤組成物溶液の塗布方法>
次に、本発明の接着剤組成物を、プラスチックフィルム、金属箔、紙、織布、不織布等の基材に積層し、基材付き接着フィルムを得る方法について説明する。なお、本発明においては、プラスチックフィルム、金属箔、紙、織布、不織布等に加えて、これらの一面または両面に離型処理を施したものについても基材と称する。
本発明の基材付き接着フィルムは、接着剤組成物溶液を基材に塗布、乾燥して得てもよいし、あらかじめ離型フィルムまたは離型紙に接着フィルムを作製しておき、これを基材に貼り合せて得てもよい。
【0083】
接着剤組成物溶液を塗布する方法としては、通常の塗工方式や印刷方式が挙げられる。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
【0084】
溶剤を乾燥する際の乾燥条件は特に制限はないが、60〜150℃の範囲で、使用する溶剤によって適宜調整することが望ましい。60℃よりも低温であると接着フィルム中に溶剤が残り易く、また溶剤の揮発に伴って塗布した接着剤組成物溶液の温度が低下して結露が起こり、樹脂成分が相分離、あるいは析出する場合があるため好ましくない。150℃よりも高温であると接着剤組成物の硬化が進行したり、急な温度上昇によって塗膜が荒れるため好ましくない。
乾燥時間についても特に制限は無いが、実用性を考慮すると1〜10分の処理が好ましい。
接着フィルムの厚みは、接着剤組成物溶液の濃度と塗布厚みとによって調整できる。
【0085】
乾燥後の接着フィルムには、セパレータ(保護層)として離型フィルムまたは離型紙を積層できる。離型フィルムまたは離型紙としては、接着フィルムの特性を損なうものでなく、容易に剥離できるものであれば、いずれのものも使用できる。具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、シリコーン等で離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンコート紙、ポリプロピレンコート紙、シリコーン離型紙等が挙げられる。セパレータの厚さは、プラスチックフィルムを母材に用いた離型フィルムの場合、10〜100μm、紙を母材に用いた離型紙の場合は50〜200μmが好ましい。
【0086】
セパレータを有する基材付き接着フィルムを使用する際には、セパレータのみを剥離した後、接着フィルム面を被着体に貼付する。
上記の基材付き接着フィルムの形態としては、シートまたはロールが挙げられる。生産性の見地からは、接着剤組成物溶液を公知のコーティング機等を用いてロール状態に巻き取られた基材に連続塗布し、接着剤組成物溶液が塗布された基材を乾燥炉に通し、60〜150℃で1〜10分間かけて乾燥させ、乾燥炉から出た時点でロールラミネータを用いて保護層を貼着することで基材付き接着フィルムを形成し、ロール状に巻き取って貯蔵することが好ましい。
【0087】
<接着剤組成物の硬化方法>
本発明の接着剤組成物を150〜180℃に加熱すると、硬化物が得られる。加熱時間は20分〜5時間、好ましくは30分〜2時間である。
加熱方法は任意であり、例えば、熱風循環型オーブン、プレス機、オートクレーブ等が使用できる。本発明の接着剤組成物の硬化物は、低温においても柔軟性が高く、かつ高温でも弾性率の低下が少ないことを特徴とする。具体的には、180℃/1時間の熱処理後の貯蔵弾性率が、25〜150℃の範囲において最小値が1×10
5Pa以上、最大値が1×10
8Pa以下である。
【0088】
<応用例>
上述した本発明の熱硬化性接着剤組成物は、基材と積層し、接着フィルムの形態で、FPCの各種部材に用いることができる。以下、各応用例について説明する。
【0089】
[ボンディングシート]
ボンディングシートは、離型フィルム基材上に、本発明の熱硬化性接着剤組成物が積層された熱硬化性接着フィルムということができる。
本発明の基材付き接着フィルムのうち、基材としてプラスチックフィルムを母材に用いた離型フィルム、または紙を母材に用いた離型紙を使用したものは、ボンディングシートとして用いることができ、ボンディングシートに使用する基材としては、特に制限が無いが、厚さ10〜100μmの離型フィルム、または厚さ50〜200μmの離型紙が好ましい。
【0090】
離型フィルムの具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、離型処理されたポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。離型紙の具体例としては、ポリエチレンコート紙、ポリプロピレンコート紙、シリコーン離型紙等が挙げられる。
ボンディングシートの場合、接着フィルムの厚さは任意に設定できるが、乾燥状態で5〜50μmが好ましく、5〜25μmであることがさらに好ましい。
【0091】
[銅箔付き接着フィルム(FRCC)]
本発明の基材付き接着フィルムのうち、基材として銅箔を使用したものは、FRCCとして用いることができる。すなわち、FRCCは、銅箔の一面に本発明の熱硬化性接着剤組成物が積層された熱硬化性接着テープということができる。
FRCCに使用する銅箔としては、特に制限が無いが、電子材料部品用途向けに市販されている銅箔が好適である。銅箔の厚さは、5〜50μmが好ましく、9〜25μmがより好ましい。
FRCCに使用する場合、接着フィルムの厚さは任意に設定できるが、乾燥状態で1〜50μmが好ましく、1〜25μmであることがさらに好ましい。
【0092】
〔カバーレイフィルム〕
本発明の基材付き接着フィルムのうち、基材として耐熱性プラスチックフィルムを使用したものは、カバーレイフィルムとして用いることができる。
カバーレイフィルムに使用する耐熱性フィルムとしては、電気絶縁性が高く、通常カバーレイフィルムに用いられるものであれば、特に制限は無い。具体例として、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリパラバン酸フィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、液晶ポリマーフィルム、シンジオタクチックポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられ、液晶ポリマー(LCP)フィルムがより好ましく挙げられる。
【0093】
この耐熱性フィルムの厚さは、使用目的により任意の厚さを選択してよいが、通常、1〜50μmであり、好ましくは3〜38μm、特に好ましくは5〜25μmである。また、接着剤組成物との接着をより高強度にする目的で、耐熱性フィルムの表面を薬液で処理したり、あるいはプラズマ処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理等の表面改質処理を施してもよい。
カバーレイフィルムに使用する場合、接着フィルムの厚さは任意に設定できるが、乾燥状態で5〜50μmが好ましく、5〜38μmであることがさらに好ましく、5〜25μmであることが特に好ましい。
【0094】
〔接着剤付きFCCL〕
本発明の基材付き熱硬化性接着フィルムは、耐熱性フィルム基材の一方の面に、本発明の熱硬化性接着剤組成物が積層され、もう一方の面に銅箔層を有するものである。この、本発明の接着フィルムと、耐熱性フィルムと、銅箔と、が順次積層された構造を有する接着剤付きFCCLは、FCCLの耐熱性フィルム面に予めボンディングシートが積層された構造を有している。この接着剤付きFCCLを用いることで、FPC製造工程の省力化、低コスト化を実現できる。
本発明の接着剤付きFCCLに使用する銅箔、および耐熱性フィルムとしては、前述のカバーレイフィルムおよびFRCCで例示したものが使用できる。FCCLとしては、市販されているものが本発明に使用できる。あるいは本発明の接着フィルムを用いて銅箔と耐熱性フィルムを貼り合せて作製してもよい。
【0095】
銅箔の厚さは、5〜50μm、好ましくは9〜25μmであり、耐熱性フィルムの厚さは1〜50μmであり、好ましくは3〜38μm、より好ましくは5〜25μmである。接着フィルムの厚さは任意に設定できるが、乾燥状態で1〜50μmが好ましく、1〜25μmであることがさらに好ましい。
上記のカバーレイフィルム、および接着剤組成物フィルムと、耐熱性フィルムと、銅箔と、が順次積層された構造を有する基材付き接着剤組成物フィルムにおいて、耐熱性フィルムとしてLCPフィルムを使用すれば、より低誘電率および低誘電正接のFPC材料が得られる。
【0096】
<本発明の特性>
本発明の接着剤組成物は、以下に示すとおり、特に、高周波用FPC材料、すなわちボンディングシート、カバーレイ、FRCC、接着剤付きFCCLとして好適な特性を有している。本発明の接着剤組成物は、150〜180℃で30分〜1時間加熱することによって、優れた電気特性、接着強度、耐熱性、および柔軟性を発現する。
具体的には、周波数10GHzにおける誘電率(ε)が3.0以下かつ誘電正接(tanδ)が0.005以下、LPCフィルムおよび銅箔に対するピール強度が4N/cm以上、LCPフィルムおよび銅箔との積層構造による300℃/60秒間の半田フロート試験において異状なし、銅箔との積層構造において耐折回数が5回以上である。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
〔接着剤組成物溶液の製造〕
(1)製造方法1:〔実施例1〜18、比較例1〜6〕
表1〜4に示す接着剤組成物の原料である各成分および溶剤を投入し、次いで温度計および攪拌装置をフラスコにセットして2時間の攪拌によってすべての成分を溶解した。最後にナイロンメッシュ(線径30μm、255メッシュ)を使って溶解液を濾過し、接着剤組成物溶液を得た。なお、作業中は液温が30℃を超えないように管理した。
(2)製造方法2:〔実施例19(充填材あり)〕
ガラスフラスコ中に、表1〜4に示す成分(D)充填材および溶剤を投入し、超音波洗浄装置を使って充填材を分散した。
次いで充填材および溶剤以外の各成分をフラスコに追加投入し、温度計および攪拌装置をフラスコにセットして2時間の攪拌により各成分を溶解した。
最後にナイロンメッシュ(線径30μm、255メッシュ)を使って溶解液を濾過し、接着剤組成物溶液を得た。なお、作業中は液温が30℃を超えないように管理した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
表1〜4に記載した各成分の詳細を以下に示す。
成分(A)
ビニル化合物1:オリゴフェニレンエーテル(構造式(4)で示される化合物)(OPE2St-1200、三菱ガス化学株式会社製、数平均分子量=1200)
ビニル化合物2:オリゴフェニレンエーテル(構造式(4)で示される化合物)(OPE2St-2200、三菱ガス化学株式会社製、数平均分子量=2200)
成分(B)
BMI1:構造式(10)で示される化合物(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド)
BMI2:構造式(12)で示される化合物(ビスフェノールAフェニルエーテルビスマレイミド)
BMI3:構造式(13)で示される化合物(ノボラック型多官能マレイミド)
BMI4:構造式(14)で示される化合物(1,6'-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン)
成分(C)
エラストマー1:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体。スチレン含有量20重量%、100%伸び引張応力=2.4MPa、切断時伸び=670%。
エラストマー2:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体。スチレン含有量30重量%、100%伸び引張応力=値なし、切断時伸び=100未満。
エラストマー3:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体。スチレン含有量15重量%、100%伸び引張応力=0.3MPa、切断時伸び=1400%。
エラストマー4:ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体。スチレン含有量65重量%、100%伸び引張応力=値なし、切断時伸び=100未満。
エラストマー5:ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体。スチレン含有量30重量%、100%伸び引張応力=1.0MPa、切断時伸び=580%。
エラストマー7:ポリスチレン-ポリイソプレンブロック共重合体。スチレン含有量20重量%、100%伸び引張応力=2.8MPa、切断時伸び=730%。
エラストマー8:ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/ブチレン)ブロック共重合体。スチレン含有量30重量%、100%伸び引張応力=0.7MPa、切断時伸び=780%。
エラストマー9:水添ポリスチレン-ポリ(イソプレン/ブタジエン)ブロック共重合体。スチレン含有量12重量%、100%伸び引張応力=0.7MPa、切断時伸び=980%。
成分(D)
アエロジルRX200:疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製)
その他の成分
NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂
2E4MZ :2-エチル-4-メチルイミダゾール
溶媒
THF:テトラヒドロフラン
【0104】
〔接着剤組成物フィルムの製造〕
シリコーンで離型処理された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商標名:ピューレックスA43。帝人デュポンフィルム株式会社製)に、アプリケータを用いて、乾燥後の厚さが25μmとなるように接着剤組成物溶液を塗布した。
次いで100℃に設定した通風オーブン内で5分間乾燥させ、厚さ25μmの接着剤組成物フィルムを得た。
【0105】
〔評価用サンプルの作製〕
(1)ピール強度測定用サンプルの作製
ピール強度の測定には、LCPフィルムに対する強度と、銅箔に対する強度とを個別に計測するために、下記のとおり、LCPフィルム同士、および銅箔同士を貼り合わせたサンプルを用いた。ここで、2種類の基材についてピール強度を独立に測定する理由は、性質の異なる2種類の基材に対して高い接着性を両立することが求められるため、それぞれの基材に対する正確なピール強度を知る必要があるためである。仮に一方の基材としてLCPを、もう一方の基材として銅箔を用いてサンプルを作成し、ピール強度を測定したとしても、どちらか一方の基材に対するピール強度しか知ることができないため、不十分である。
【0106】
(1−1.ピールテスト1):LCPフィルムに対する接着強度測定用
ロールラミネータを使って、厚さ25μmのLCPフィルム(商標名:ベクスターCT-Z。株式会社クラレ製)と接着剤組成物フィルムとを積層した。このときの作業条件は、ロール温度は120℃、加圧は30N/cm、速度は0.5m/分とした。
次いで、さらに上記と同じLCPフィルムを積層し、2枚のLCPフィルムが接着剤組成物を介して貼り合わされた積層体を得た。
上記の積層体を160℃×0.5MPa×2分の熱プレス処理し、次いで通風オーブン内で180℃×1時間加熱硬化させたのち、10mm×100mmにカットしてLCPフィルムに対するピール強度測定用サンプルを作製した。
【0107】
(1−2.ピールテスト2):銅箔に対する接着強度測定用
LCPフィルムを、厚さ18μmの銅箔(商標名:FQ-VLP。三井金属鉱業株式会社製)に代えた以外は上記(1−1.ピールテスト1)と同条件とし、銅箔に対するピール強度測定用サンプルを作製した。なお、銅箔の接着面は、シャイン面とした。
【0108】
(2)半田耐熱試験用サンプルの作製
(2−1.半田テスト1):LCPフィルムを使った場合の半田耐熱温度測定用
カットするサイズを25mm×25mmに代えた以外は(1−1.ピールテスト1)と同条件として、LCPフィルムを使った場合の半田耐熱温度測定用サンプルを作製した。
(2−2.半田テスト2):銅箔を使った場合の半田耐熱温度測定用
カットするサイズを25mm×25mmに代えた以外は(1−2.ピールテスト2)と同条件として、銅箔を使った場合の半田耐熱温度測定用サンプルを作製した。
【0109】
(3)はぜ折り試験用サンプルの作製
カットするサイズを20mm×100mmに代えた以外は(1−2.ピールテスト2)と同条件として、はぜ折り試験用サンプルを作製した。
【0110】
(4)誘電率および誘電正接測定用サンプルの作製
ロールラミネータを使って厚さ25μmの接着剤組成物フィルムを順次積層し、厚さ200μmの接着剤組成物を得た。
次にこれを通風オーブン内で180℃×1時間加熱硬化させたのち、2mm×50mmにカットして誘電率および誘電正接測定用サンプルを作製した。
なお、積層および加熱硬化の際は、接着剤組成物の両面にピューレックスA43を積層した状態で作業し、測定の直前にピューレックスA43を除去した。
【0111】
(5)貯蔵弾性率測定用サンプルの作製
ロールラミネータを使って厚さ25μmの接着剤組成物フィルムを積層し、厚さ50μmの接着剤組成物を得た。
次にこれを通風オーブン内で180℃×1時間加熱硬化させたのち、4mm×30mmにカットして誘電率および貯蔵弾性率測定用サンプルを作製した。
なお、積層および加熱硬化の際は、接着剤組成物の両面にピューレックスA43を積層した状態で作業し、測定の直前にピューレックスA43を除去した。
【0112】
〔評価内容および判定基準〕
(1)接着剤組成物フィルムの状態
乾燥後の接着剤組成物フィルムの外観で評価した。表面が平滑であって、ひび割れ、オレンジピール、ブラッシング等の欠陥が無い場合を○、なんらかの異状が見られる場合を×とした。
(2)ピール強度の測定
万能引張試験機(オリンテック社製)を用いて基材を90°方向に引き剥がし、ピール強度を測定した。引張速度は50mm/分とした。
LCPフィルムおよび銅箔に対して、4N/cm以上の場合を良好、4N/cmに満たない場合を不良と判定した。
(3)半田耐熱試験
サンプルを20℃/65%RH/96時間(表1〜4では処理1と記載)、または40℃/90%RH/96時間(表1〜4では処理2と記載)で調湿処理した
のち、300℃の半田浴で60秒間フロートさせた。
60秒間フロート中に異状が発生しなかった場合を○、フロート中に膨れ、破れ、めくれ等の異状が見られた場合を×とした。
(4)はぜ折り試験
まず20mm×100mmのサンプルを長手方向で軽く2つ折りにしたのち、厚さ5mm、300mm×300mmのSUS304板の上に置き、JIS C-2107 附属書Aで規定される手動ローラ(以下、ローラという)を長手方向に1往復させて荷重を加え、折り目を形成した。
次に、サンプルSUS板上に置き、2枚重ねになったうちの1枚を持ち上げながら、もう1枚の端部から長手方向にローラを1往復させて荷重を加えてサンプルを伸ばした。
この一連の作業を1回のはぜ折りとし、1回のはぜ折りが終わるごとに銅箔の状態を確認して、銅箔にクラックが生じなかった回数をはぜ折り回数とした。
(5)誘電率および誘電正接の測定
空洞共振器摂動法により、10GHzにおける誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)を測定した。
(6)貯蔵弾性率測定用サンプルの作製
動的粘弾性測定により貯蔵弾性率を測定した。測定周波数は11Hzとした。測定は25℃から開始し、10℃/分で昇温しながら150℃まで測定し、25℃〜150℃における最大値及び最小値を計測した。
【0113】
<評価結果>
実施例1〜6:
スチレン含有量が10〜40重量%であり、100%伸び引張応力が0.1〜2.9MPaの範囲にあり、切断時伸びが100%以上であるエラストマー1、3、5、7、8および9を用いており、各材料の誘電率(ε)が3.0以下かつ誘電正接(tanδ)が0.005以下、LPCフィルムおよび銅箔に対するピール強度が4N/cm以上、300℃/60秒間の半田フロート試験において異状なし、銅箔との積層構造において耐折回数が5回以上であり、良好な特性を有していた。
【0114】
比較例1:
切断時伸びが100%未満であるエラストマー2を用いた場合、接着剤組成物を基材に塗布、乾燥してフィルム化した際にひび割れが発生し、評価用サンプルが作製できなかった。
【0115】
比較例2:
スチレン含有量が40重量%を超えるエラストマー4を用いた場合、接着剤組成物フィルムが硬くなり、曲げた際に簡単に割れるため、評価用サンプルが作製できなかった。
【0116】
実施例7〜10: 成分(A)、成分(B),及び成分(C)の総重量における成分(C)(エラストマー)の含有量を55〜95重量%とした場合には、すべての評価で良好な値を示した。
【0117】
比較例3: 成分(A)、成分(B),及び成分(C)の総重量における成分(C)(エラストマー)の含有量を45重量%とした場合、接着剤組成物溶液中で各成分が分離し、塗布、乾燥後のフィルムに厚さむらおよびひび割れが発生し、評価用サンプルが作製できなかった。
比較例4: 成分(A)、成分(B),及び成分(C)の総重量における成分(C)(エラストマー)の含有量を97.5重量%とした場合、40℃/90%RH/96時間処理後の半田耐熱試験において、LCPフィルムサンプルおよび銅箔サンプルのいずれも膨れが発生した。
【0118】
実施例11〜14: 成分(A)に含まれるビニル基と上記成分(B)に含まれるマレイミド基との当量比が1.0:0.5〜1.0:4.0の範囲にある場合は、すべての評価で良好な値を示した。
【0119】
比較例5: 成分(A)に含まれるビニル基と上記成分(B)に含まれるマレイミド基との当量比を1.0:0.25として、マレイミド基を少なくした場合、40℃/90%RH/96時間処理後の半田耐熱試験において、LCPフィルムサンプルおよび銅箔サンプルのいずれも膨れが発生した。
比較例6: 成分(A)に含まれるビニル基と上記成分(B)に含まれるマレイミド基との当量比を1.0:5.0として、マレイミド基を多くした場合、LCPフィルム対するピール強度が4N/cm未満であった。
【0120】
実施例15〜18: 成分(A)の分子量を小さくした場合、成分(B)として異なる化合物を使った場合にも、すべての評価で良好な値を示した。
実施例19: 実施例2に、充填材を加えた場合にも、すべての評価で良好な値を示した。