特許第6483165号(P6483165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セコム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6483165-空間監視装置 図000002
  • 特許6483165-空間監視装置 図000003
  • 特許6483165-空間監視装置 図000004
  • 特許6483165-空間監視装置 図000005
  • 特許6483165-空間監視装置 図000006
  • 特許6483165-空間監視装置 図000007
  • 特許6483165-空間監視装置 図000008
  • 特許6483165-空間監視装置 図000009
  • 特許6483165-空間監視装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483165
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】空間監視装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/30 20060101AFI20190304BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G06F11/30 189
   G05B23/02 302P
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-13139(P2017-13139)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2018-120523(P2018-120523A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 直也
(72)【発明者】
【氏名】野中 陽介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 功
【審査官】 多胡 滋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−261618(JP,A)
【文献】 特開2010−269884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/30
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間を所定時間おきに撮影して撮影画像を生成する撮影手段と、
前記空間の構成物の三次元モデルであって構成物それぞれの光学的な特徴量又は三次元座標値をモデルパラメータとして含み前記空間を模す空間モデルを記憶している記憶手段と、
前記構成物に含まれる所定の機器について動作状態の遷移を開始させる制御信号を取得する制御信号取得手段と、
前記機器の動作状態に応じて当該機器の前記モデルパラメータを変更した空間モデルを生成する手段であって、前記空間モデルとして少なくとも、前記モデルパラメータが前記遷移の目標範囲への移行途中の範囲にある遷移不達成モデルを生成するモデル生成手段と、
前記遷移不達成モデルを前記撮影手段の撮影面にレンダリングしたレンダリング画像と前記撮影画像との類似度を算出し、当該類似度を用いて前記遷移が失敗したか否かを判定する遷移判定手段と、
前記遷移判定手段により前記遷移が失敗したと判定された場合に前記機器の不具合を警告する警告手段と、
を備えたことを特徴とする空間監視装置。
【請求項2】
前記制御信号取得手段は、複数の構成要素からなる前記機器について前記複数の構成要素の動作状態を一括して遷移させるための前記制御信号を取得し、
前記モデル生成手段は、前記遷移不達成モデルとして、それぞれ少なくとも1つの前記構成要素の前記モデルパラメータが前記機器の前記遷移での当該構成要素に関する目標範囲への移行途中の範囲にある複数パターンの前記空間モデルを生成し、
前記遷移判定手段は、前記遷移不達成モデルそれぞれに関する前記類似度のうち最大のものを用いて前記遷移が失敗したか否かを判定すること、
を特徴とする請求項1に記載の空間監視装置。
【請求項3】
前記モデル生成手段は、前記空間モデルとしてさらに、前記機器の前記モデルパラメータが前記目標範囲にある遷移達成モデルを生成し、
前記遷移判定手段は、前記遷移達成モデルについての前記レンダリング画像と前記撮影画像との類似度よりも、前記遷移不達成モデルについての前記レンダリング画像と前記撮影画像との前記類似度の方が高い場合に、前記遷移が失敗したと判定すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空間監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間に設置された機器の不具合を判定する空間監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明機器が点灯しない不具合に迅速に対処するために、点検時に照明を点灯制御して撮影した画像と、照明が点灯した状態にて予め撮影して記憶させた画像との差が大きな場合に、照明機器に不具合が生じていると自動判定する提案がされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−011872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、機器に不具合が生じていないときの画像を予め撮影しておく必要があり、多大な労力が必要であった。
【0005】
また、多くの部屋の照明機器は1つのスイッチに複数(オフィスなどでは数十)の電灯が連動しているため、上述の画像の差が1つの電灯の不具合では小さくなり判定が困難となる問題があった。例えば、全電灯が点灯している時の画像を記憶させて比較に用いても、撮影した画像との差が、電灯の1つが点灯しない不具合によって生じているのか、全ての電灯が点灯しているにもかかわらず経年変化によって差が生じているのかが判定困難となる場合があった。
【0006】
また、1つのスイッチに複数の電灯が連動した照明機器について、不具合のパターンごとの画像を用意する場合、電灯をひとつずつ外して撮影するなど多大な労力が必要となる。
【0007】
すなわち、従来技術では、複数の構成要素からなる機器の不具合を的確に判定することが容易ではなかった。
【0008】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、所定空間中の機器の不具合を多大な労力を要せず的確に判定できる空間監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る空間監視装置は、所定の空間を所定時間おきに撮影して撮影画像を生成する撮影手段と、前記空間の構成物の三次元モデルであって構成物それぞれの光学的な特徴量又は三次元座標値をモデルパラメータとして含み前記空間を模す空間モデルを記憶している記憶手段と、前記構成物に含まれる所定の機器について動作状態の遷移を開始させる制御信号を取得する制御信号取得手段と、前記機器の動作状態に応じて当該機器の前記モデルパラメータを変更した空間モデルを生成する手段であって、前記空間モデルとして少なくとも、前記モデルパラメータが前記遷移の目標範囲への移行途中の範囲にある遷移不達成モデルを生成するモデル生成手段と、前記遷移不達成モデルを前記撮影手段の撮影面にレンダリングしたレンダリング画像と前記撮影画像との類似度を算出し、当該類似度を用いて前記遷移が失敗したか否かを判定する遷移判定手段と、前記遷移判定手段により前記遷移が失敗したと判定された場合に前記機器の不具合を警告する警告手段と、を備える。
【0010】
(2)上記(1)に記載の空間監視装置において、前記制御信号取得手段は、複数の構成要素からなる前記機器について前記複数の構成要素の動作状態を一括して遷移させるための前記制御信号を取得し、前記モデル生成手段は、前記遷移不達成モデルとして、それぞれ少なくとも1つの前記構成要素の前記モデルパラメータが前記機器の前記遷移での当該構成要素に関する目標範囲への移行途中の範囲にある複数パターンの前記空間モデルを生成し、前記遷移判定手段は、前記遷移不達成モデルそれぞれに関する前記類似度のうち最大のものを用いて前記遷移が失敗したか否かを判定する構成とすることができる。
【0011】
(3)上記(1)および(2)に記載の空間監視装置において、前記モデル生成手段は、前記空間モデルとしてさらに、前記機器の前記モデルパラメータが前記目標範囲にある遷移達成モデルを生成し、前記遷移判定手段は、前記遷移達成モデルについての前記レンダリング画像と前記撮影画像との類似度よりも、前記遷移不達成モデルについての前記レンダリング画像と前記撮影画像との前記類似度の方が高い場合に、前記遷移が失敗したと判定する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空間監視装置によれば、事前撮影の労力を要さずに的確に機器の不具合を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る空間監視装置の概略の構成を示すブロック図である。
図2】制御信号により動作を制御される機器の構成例を示す概略のブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る空間監視装置の概略の機能ブロック図である。
図4】機器が1つの電灯で構成される照明機器である場合のモデル制御情報を説明する模式図である。
図5】機器が3つの電灯で構成される照明機器である場合のモデル制御情報を説明する模式図である。
図6】機器が自動ドアである場合のモデル制御情報を説明する模式図である。
図7】モデル生成手段による背景モデルの生成の例を説明する模式図である。
図8】本発明の実施形態に係る空間監視装置の概略の動作を示すフロー図である。
図9】本発明の実施形態に係る空間監視装置の概略の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について、図面に基づいて説明する。本発明の実施形態は、監視カメラが撮影した画像に基づいて所定の空間(監視空間)に存在する機器の動作を監視する空間監視装置1であり、図1は空間監視装置1の概略の構成を示すブロック図である。監視空間を構成する構成物には機器2が含まれる。本実施形態における機器2は構成物のうち制御信号に基づき動作して動作状態が変化するものであり、機器2はその動作により画像に変化を生じさせる。監視空間に構成物として存在する機器2は例えば、照明機器や自動ドアである。また機器2以外の構成物は例えば、床、壁、机、手動のドアである。
【0015】
空間監視装置1は例えば、監視空間を模した空間モデルに基づいて監視空間の画像を生成し、機器2の想定される動作などを反映して生成した画像を監視カメラによる撮影画像と比較することによって不具合を生じている機器2を検知する。具体的には、空間監視装置1は機器インターフェース部3、カメラ4、記憶部5、画像処理部6およびユーザーインターフェース部7を備える。
【0016】
機器2は、空間監視装置1の機器インターフェース部3と接続され、空間監視装置1の画像処理部6は、機器2の動作を制御する制御信号を機器2から機器インターフェース部3を介して取得する。
【0017】
図2は機器2の構成例を示す概略のブロック図である。図2(a)に示す機器2aは1つのスイッチ20により1つの電灯21の点灯/消灯動作を制御する照明機器である。また、図2(b)に示す機器2bは1つのスイッチ20により3つの電灯21(電灯A〜C)の点灯/消灯動作を一括して制御する照明機器である。例えば、電灯21は蛍光灯または白熱灯などである。照明機器である機器2a,2bは例えば、スイッチ20がON状態とされると電灯21が通電されて点灯し、スイッチがOFF状態とされると電灯21への通電が停止されて消灯する。ちなみに、オフィスや工場などの照明機器は機器2bのような形態に構成されていることが多い。
【0018】
スイッチ20が機械式の場合、電灯21に印加される電圧/電流が当該電灯21の点灯/消灯動作を制御する制御信号に相当する。この場合、機器2a,2bは、電灯21に印加される電気信号自体を制御信号として空間監視装置1に出力してもよいし、当該電気信号からその印加の有無を表す信号を別途生成して空間監視装置1に出力してもよい。例えば、機器2a,2bは、スイッチ20がON状態であるとき所定の高電圧(ハイレベル)となり、一方、スイッチ20がOFF状態であるとき所定の低電圧(ローレベル)となる電気信号を空間監視装置1に出力する。また、スイッチ20がトランジスタなど電子的にON/OFFを切り替える素子で構成される場合には、スイッチ20のON/OFFを切り替える電気信号を制御信号として取り出すことができる。
【0019】
図2(c)に示す機器2cは人感センサ22の出力に応じてドア23が開閉するタイプの自動ドアである。すなわち、人感センサ22のセンサ出力信号が自動ドア2cの開閉動作を制御する制御信号である。具体的には人感センサ22は例えば、人を検知している間はハイレベルの電圧を出力し、一方、人を検知していない間はローレベルの電圧を出力する。このセンサ出力信号のローレベルからハイレベルへの電圧変化がドア23を開いて閉じる動作指示を表す制御信号として利用される。また、ドア23の閉状態のときのローレベルの電圧をドア23の閉状態を維持する動作指示を表す制御信号として利用できる。
【0020】
画像処理部6は機器2の制御信号の変化から当該機器2の動作状態の遷移が開始する契機、すなわち監視空間の画像の変化の契機を認識することができる。制御信号の変化は、撮影画像を取得するたびに制御信号を記憶部5に記憶しておき、今回の制御信号を前回の制御信号と比較することで検出できる。あるいは、制御信号の変化は、前回撮影画像を取得してから今回撮影画像を取得するまでの制御信号の波形を微分して閾値処理することにより検出できる。また、画像処理部6は機器2の制御信号から当該機器2の動作の維持を認識することができる。
【0021】
機器インターフェース部3は、監視空間の構成物に含まれる所定の機器の動作を制御する制御信号を取得する制御信号取得手段であり、具体的には機器2および画像処理部6と接続され、機器2からの制御信号を取得して画像処理部6に出力する回路である。
【0022】
カメラ4はいわゆる監視カメラであり、監視空間を所定時間おきに撮影する撮影手段である。具体的にはカメラ4は画像処理部6と接続され、監視空間を撮影して撮影画像を生成し、撮影画像を画像処理部6に出力する。例えば、カメラ4はイベント会場内に設定した各監視空間の天井に当該監視空間を俯瞰する視野に固定された状態で設置され、当該監視空間を5フレーム/秒の間隔で撮影する。
【0023】
記憶部5はROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部5は、各種プログラムや各種データを記憶し、画像処理部6との間でこれらの情報を入出力する。例えば、記憶部5は空間の構成物の三次元モデルである空間モデルや、カメラ4のカメラパラメータを予め記憶する。
【0024】
画像処理部6はCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を用いて構成される。画像処理部6は記憶部5と接続され、記憶部5からプログラムを読み出して実行することで後述する各手段として機能する。また、画像処理部6は各種データを記憶部5から読み出し、また各種データを記憶部5に記憶させる。また、画像処理部6は機器2およびカメラ4とも直接的または間接的に接続され、機器2からの制御信号およびカメラ4からの撮影画像を取得し、また空間モデルをカメラ4の仮想的な撮影面にレンダリングしたコンピュータグラフィックスである画像(レンダリング画像)を生成し、機器2の不具合を検知する処理などを行う。また、画像処理部6はユーザーインターフェース部7とも接続され、ユーザーインターフェース部7を介して、機器2の不具合の検知結果などをユーザーに示し、またユーザーからの操作入力を受け付ける。
【0025】
ユーザーインターフェース部7はキーボード、マウス、ディスプレイ等からなるユーザーインターフェース装置であり、画像処理部6と接続され、画像処理部6から入力されたデータを表示し、ユーザーが入力したデータを画像処理部6に出力する。例えば、ユーザーインターフェース部7は警備員などのユーザーにより使用され、機器2の不具合検知結果やそれに対する警告の表示、機器2の復旧信号の入力などに用いられる。
【0026】
図3は空間監視装置1の概略の機能ブロック図である。機器インターフェース部3は制御信号取得手段30として機能し、カメラ4は撮影手段40として機能し、記憶部5は空間モデル記憶手段50等として機能する。また、画像処理部6はモデル生成手段60および遷移判定手段61等として機能する。ユーザーインターフェース部7は遷移判定手段61による判定結果に基づいて警告を出力する警告手段70として機能する。
【0027】
空間モデル記憶手段50は監視空間に存在する構成物の三次元モデルであって構成物それぞれの光学的な特徴量または三次元座標値をモデルパラメータとして含む空間モデルを記憶する。
【0028】
空間モデルは、構成物で構成された監視空間のコンピュータグラフィックスを生成するために必要な情報からなる。具体的には空間モデルは、監視空間を模したXYZ座標系における各構成物の位置、姿勢、立体形状にて表される三次元座標値および各構成物の表面の色、テクスチャ、反射特性のデータを含み、これらのデータが対応する構成物番号と紐付けて空間モデル記憶手段50に記憶されている。
【0029】
なお、空間モデルは精密であるほど良く、例えばドアであればドア板とドアノブ、机であれば天板と脚というように色、テクスチャおよび反射特性が異なるパーツそれぞれを構成物と定義して空間モデルを記憶させておくのが好適である。他方、壁のように大きな構成物は各面の光源からの距離の差が大きくなるため各面を構成物と定義するのが好適である。
【0030】
空間モデルを構成するモデルパラメータは予め定義され、監視空間の実環境に合わせて適宜更新される。特に、動作により画像に変化を生じる機器2に関し、モデルパラメータは動作状態に応じて適宜、具体的な値を設定され、レンダリング画像にて機器2の動作状態の変化を表現するために用いられる。
【0031】
光源については、空間モデルは監視空間を模したXYZ座標系における当該光源の位置および当該光源の配光、色温度などで表される照明特性を含む。照明機器は光源でもある。光源には太陽等を含めてもよい。空間モデルにて光源について各光源の点消灯状態を設定し、点灯状態が設定された光源の出力を照明特性に演算することにより、監視空間に対する複数の照明条件を模擬できる。
【0032】
すなわち、空間モデル記憶手段50は、カメラ4が撮影対象としている所定の空間を構成する複数の構成物それぞれの三次元座標値と各構成物の光学的な特徴量(色、テクスチャ、反射特性、および該空間を照明する光源の照明特性)とを含んだ空間モデルを記憶している。
【0033】
ここで、空間モデルは各機器2についてモデルパラメータ以外にもその動作に関する情報を含み、ここでは当該情報を機器2のモデル制御情報と称する。
【0034】
図4は、機器2が1つの電灯で構成される照明機器である場合のモデル制御情報を説明する模式図であり、モデル制御情報の項目とその値域とが示されている。図4に示す照明機器は図2(a)の機器2aに該当する。
【0035】
照明強度は照明機器の明るさに相当するものである。照明強度は照明機器についてのモデルパラメータであり、その値域は、スイッチがOFFで光を発しない状態を0%、スイッチがONで最も明るい状態を100%とする0〜100%である。ここで、照明機器の100%に対応する照明強度は実測により定めてもよいし、当該照明機器のカタログスペックなどに基づいて定めてもよい。
【0036】
照明強度推定レンジ(パラメータレンジ)は、モデル生成手段60が、制御信号により生じる照明機器の動作状態に応じて当該照明機器のモデルパラメータである照明強度を変更した空間モデルを生成する際に、照明強度を変化させる範囲である。照明強度推定レンジは基本的には照明機器の動作状態に応じて設定される。照明機器については動作状態として、例えば、点灯状態(スイッチがONされた場合の照明機器の動作状態の遷移に関し、照明強度が目標とする範囲に達して安定した遷移達成状態)、消灯状態(スイッチがOFFされた場合の遷移達成状態)、点灯状態への移行中の状態(スイッチがONされた場合の遷移に関し、照明強度が目標範囲への移行途中の強度である遷移不達成状態)を定めることができる。照明強度推定レンジは、例えば、点灯状態に対応する目標範囲として90%以上100%以下(90〜100%)を設定される。このように目標範囲に幅を持たせているのは、スイッチがONの場合に実際の照明強度が100%の値になるとは限らず、照明機器の経年劣化などにより実際の照明強度が100%に達しない場合もあるからである。また、消灯状態については0%、移行中状態については移行途中の範囲と定義する0%以上90%未満(便宜上、0〜89%と表す。)が設定される。
【0037】
照明強度推定レンジによりモデルパラメータである照明強度の変化範囲を制限することで、後述する照明強度の推定を高速に行うことができることに加え、想定される動作状態に対応する範囲外に誤って照明強度が推定されるといった危険性を回避することができる。
【0038】
前回照明強度(前回パラメータ)は例えば、動作状態が「移行中」である際に、照明強度が一定になったかどうかを判定するためなどに利用される。具体的には、後述する動作にて撮影画像の取得ごとに繰り返される処理において、直近の推定値が前回照明強度に格納され、次の処理周期にて前回の照明強度の推定値として読み出され利用される。
【0039】
動作状態は、制御信号に応じて、上述した「点灯」、「消灯」、「移行中」のいずれかの状態を設定される。また、設定には必要に応じて、推定された照明強度が加味される。スイッチがOFFのときは動作状態には「消灯」が格納される。スイッチをONにした直後から推定照明強度が目標範囲に達し安定するまでの期間は、動作状態には「移行中」が格納される。推定された照明強度が目標範囲内にて安定すると、照明機器が十分に点灯し、スイッチをOFFからONに切り替えたときの照明機器の動作状態の遷移が完了したとして動作状態には「点灯」が格納される。
【0040】
安定カウンタは、動作状態を「移行中」から「点灯」とする際の判定に利用するためのカウンタであり、照明強度が安定して推定された回数をカウントし、カウント値が所定値以上になったら動作状態を「点灯」と判定するものである。一方、不安定カウンタは、電灯が一定期間以上安定しない、すなわち電灯がちらついている不具合を判定するためのカウンタである。具体的には、移行中にて新たに推定された照明強度と前回照明強度との差の大きさが所定の閾値以下であると、安定カウンタの値がインクリメントされ、逆に当該差が閾値より大きい場合には不安定カウンタの値がインクリメントされる。
【0041】
不具合検知フラグは、照明のスイッチをONにした際に、照明が点かない、照明が暗い、照明がちらつくといった不具合が発生した場合にONとし、ユーザーインターフェース部7を通じて器具の管理者等に通知、警告するためのフラグである。
【0042】
図5は機器2が3つの電灯A〜Cで構成される照明機器である場合のモデル制御情報を説明する模式図であり、モデル制御情報の項目とその値域とが示されている。図5に示す照明機器は図2(b)の機器2bに該当する。
【0043】
機器2bに関しては例えば、複数の電灯(電灯A〜C)が全て点灯状態であれば機器2bの動作状態は点灯状態とし、逆に全て消灯状態であれば機器2bの動作状態は消灯状態とし、いずれかの電灯が移行中であれば機器2bの動作状態は移行中状態であると定義することができる。また、機器2bに関しては、図4に示したモデル制御情報のうち照明強度、照明強度推定レンジ、前回照明強度、安定カウンタ、不安定カウンタ、不具合検知フラグは、図5に示すように電灯ごとに保持される。このように、電灯ごとにパラメータを保持しているため、個々の電灯で明るさのばらつきがある場合でも最適な照明強度の推定を行うことができ、レンダリング画像生成の精度を高めることができる。また、不具合検知フラグを電灯ごとに保持しているため、不具合発生時の修理・交換箇所を即座に特定することが容易になる。
【0044】
図6は機器2が自動ドアである場合のモデル制御情報を説明する模式図であり、モデル制御情報の項目とその値域とが示されている。図6に示す自動ドアは図2(c)の機器2cに該当する。
【0045】
開き幅はドア23が開いている部分の幅である。開き幅は自動ドア2cについてのモデルパラメータであり、その値域は、ドア23が完全に閉まっている状態を0%、完全に開いている状態を100%とする0〜100%である。
【0046】
開き幅推定レンジ(パラメータレンジ)は、モデル生成手段60が自動ドア2cの開き幅を変更した空間モデルを生成する際に、開き幅を変化させる範囲である。開き幅推定レンジは基本的に自動ドア2cの動作状態に応じて設定される。自動ドア2cについては動作状態として、例えば、閉状態(人感センサ22が人を検知せずドア23が閉鎖された状態)、開閉中の状態(人感センサ22が人を探知してドア23が開放、閉鎖の順に移行途中の状態)を定めることができる。開き幅推定レンジは、例えば、閉状態について0〜1%を設定される。なお、開閉中が遷移不達成状態であるのに対し、閉状態は遷移達成状態に当たる。開閉中状態の開き幅推定レンジは、目標範囲とそこに到達するまでの移行途中の範囲とを合わせた範囲に設定される。具体的には、開閉中状態について、移行途中の範囲と定義する1%超100%以下(便宜上、2〜100%と表す。)が設定される。
【0047】
前回開き幅(前回パラメータ)は例えば、動作状態が「開閉中」である際に、開き幅が一定になったかどうかを判定するためなどに利用される。具体的には、上述した前回照明強度と同様、直近の推定値が前回開き幅に格納され、次の処理周期にて利用される。
【0048】
動作状態は、推定された開き幅に基づいて、自動ドアの開閉状態が上述した「閉」、「開閉中」のいずれであるかを設定される。
【0049】
安定カウンタ、不安定カウンタは基本的に上述した照明機器の場合と同様である。具体的には、安定カウンタは開き幅が安定して推定された回数をカウントし、カウント値が所定値以上になったら開閉動作の移行完了が判定され、一方、不安定カウンタは、開き幅が一定期間以上安定しない不具合を判定するために用いられる。
【0050】
不具合検知フラグは、例えば、人感センサが人を検知しても自動ドアが開かない事象や、人感センサが人を未検知の状態であっても自動ドアが閉まらない事象などの不具合が発生した場合にONとし、ユーザーインターフェース部7を通じて器具の管理者等に通知、警告するためのフラグである。
【0051】
ここで、不具合検知フラグがONに設定された機器2については、パラメータレンジ(照明強度推定レンジ、開き幅推定レンジ)を上述した動作状態に応じた範囲とは別途の範囲に設定してもよい。例えば、劣化した照明機器の照明強度は、OFFからONへの制御信号の変化に対し、目標範囲より低い値で飽和し得る。本実施形態では、このように動作状態が移行途中の範囲で安定した機器2について不具合検知フラグをONにするとともに、当該機器のパラメータレンジを例えば、不具合検知までに到達した照明強度または開き幅を中心として±5%を上限/下限とする範囲に設定する。なお、例えば、照明機器が点灯と消灯とを繰り返すちらつきのような機器2の不安定な不具合については、パラメータレンジを0〜100%に設定することができる。
【0052】
モデル生成手段60は、機器2にて制御信号により生じる動作状態に応じて当該機器のモデルパラメータを変更した空間モデルを生成する。これにより、機器2が制御信号により生起される動作状態である場合の空間を模した空間モデルが生成される。モデル生成手段60は生成した空間モデルを遷移判定手段61に出力する。
【0053】
本実施形態では、モデル生成手段60は、制御信号取得手段30が制御信号を取得すると、当該制御信号に対して予め想定されるモデルパラメータの変化範囲にてモデルパラメータが異なる複数の空間モデルを生成する。
【0054】
機器2が照明機器である場合、モデル生成手段60は制御信号に応じてモデルパラメータとされた照明機器の照明条件を変更する。ここでは、モデルパラメータは照明強度であり、例えば、モデル生成手段60は照明強度を1%刻みで変更し空間モデルを生成する。
【0055】
具体的には、動作状態が消灯から点灯への遷移における移行中状態である場合は、モデル生成手段60は照明強度を、照明強度推定レンジに設定される0〜100%の範囲で1%刻みで変更する。このうち、遷移の目標範囲への移行途中の範囲(0〜89%)にて生成される複数の空間モデルを遷移不達成モデルと称し、また消灯から点灯への遷移における目標範囲(90〜100%)にて生成される複数の空間モデルを遷移達成モデルと称する。すなわち、モデル生成手段60は消灯から点灯への移行中の期間において、空間モデルとして少なくとも、モデルパラメータが遷移の目標範囲への移行途中の範囲にある遷移不達成モデルを生成し、さらに本実施形態では当該期間にてモデルパラメータが目標範囲にある遷移達成モデルも生成する。
【0056】
一方、動作状態が点灯状態である場合は、モデル生成手段60は照明強度を、照明強度推定レンジに設定される90〜100%の範囲で1%刻みで変更する。すなわちモデル生成手段60は遷移不達成モデルの生成を省略し、動作状態が消灯から点灯へ遷移する場合における遷移達成モデルのみを生成する。
【0057】
動作状態が消灯状態である場合は、モデル生成手段60は照明強度を0%とした空間モデルを生成する。なお、本実施形態では点灯から消灯への移行中は定義しない。つまり、制御信号から点灯から消灯への変化が検出された場合は移行中を経ずに消灯状態とする。すなわち、制御信号がONからOFFへ変化した場合には、モデル生成手段60は遷移不達成モデルを生成せず、照明強度を0%とした遷移達成モデルのみを生成する。しかし、点灯から消灯への移行中を消灯から点灯への移行中と同様に定義してもよい。つまり、点灯から消灯への遷移において0%超100%以下(便宜上、1〜100%と表す。)の範囲を移行途中の範囲と定義し、当該移行中状態において、空間モデルとして少なくとも、1〜100%の範囲で照明強度を設定した遷移不達成モデルを生成する構成としてもよい。
【0058】
機器2が自動ドア等の可動機器であれば、モデル生成手段60は制御信号に応じて可動機器についてモデルパラメータとされた三次元座標値を変更する。例えば、自動ドアについては上述のように開き幅がモデルパラメータとされ、例えば、モデル生成手段60は開き幅を1%刻みで変更し空間モデルを生成する。具体的には、動作状態が開閉中である場合は、モデル生成手段60は開き幅を、開き幅推定レンジに設定される0〜100%の範囲で1%刻みで変更して、遷移不達成モデルおよび遷移達成モデルを生成する。また、モデル生成手段60は動作状態が閉状態である場合は、開き幅を0%および1%とした遷移達成モデルを生成する。
【0059】
ここで、機器2が複数の構成要素からなり、当該複数の構成要素の動作状態の遷移が1つの制御信号により一括して制御される場合には、モデル生成手段60はそれぞれ構成要素のパラメータレンジ内で設定される複数の構成要素のモデルパラメータについての組み合わせに対応して空間モデルを生成する。例えば、1つのスイッチにより2つの電灯A,Bの点灯/消灯動作を一括して制御する照明機器における消灯から点灯への遷移において、両方の電灯の動作状態が点灯になっている場合は、モデル生成手段60は各電灯の照明強度推定レンジの設定に基づき、電灯Aの照明強度について目標範囲(90〜100%)で1%刻みで設定される11通りのモデルパラメータと電灯Bの照明強度について同様に設定される11通りのモデルパラメータとを組み合わせた121通りの空間モデルを遷移達成モデルとして出力する。一方、例えば、上述の消灯から点灯への遷移において、電灯Aの動作状態は点灯になっているが、電灯Bの動作状態は移行中である場合は、モデル生成手段60は遷移不達成モデルとして、電灯Aの照明強度について目標範囲で1%刻みで設定される11通りのモデルパラメータと電灯Bの照明強度について移行途中の範囲(0〜89%)で1%刻みで設定される90通りのモデルパラメータとを組み合わせた990通りの空間モデルを出力する。また、電灯A,B両方の動作状態が移行中である場合は、モデル生成手段60は遷移不達成モデルとして、例えば、電灯Aの照明強度について0〜89%のモデルパラメータと電灯Bの照明強度について0〜89%のモデルパラメータとを組み合わせた複数の空間モデルを出力する。
【0060】
図7はモデル生成手段60による空間モデルの生成の例を説明する模式図である。図7図2(b)の機器2bについてのモデル生成例を示している。図7は水平方向を時間軸とし、右向きに時間が経過する際の動作状態の変化の例を示している。
【0061】
図2(b)の機器2bについて、図7に示すように、照明機器のスイッチ20がOFFからONに変わった場合、制御信号取得手段30が当該照明機器の状態を消灯から点灯に移行させる制御信号を取得し、モデル生成手段60が当該照明機器の構成要素である電灯A〜Cのモデルパラメータである照明強度をそれぞれ、移行中状態にて照明強度推定レンジに設定される0〜100%の範囲で変更し、複数の空間モデルを生成する。生成される複数の空間モデルは、電灯A〜C全てのモデルパラメータが目標範囲(90〜100%)にある遷移達成モデルと、電灯A〜Cのうち少なくとも1つのモデルパラメータが移行途中の範囲(0〜89%)にある遷移不達成モデルとからなる。
【0062】
スイッチをONして或る程度時間が経過すると、電灯の照明強度は目標範囲に達して、移行中状態から点灯状態となることが期待される。図7では機器2bについて点灯状態となることが期待される期間を「点灯」期間として表しており、当該期間は図7の例では正常である電灯Aが目標範囲内で安定した照明強度となったタイミングからスイッチがOFFされ消灯するまでの期間に対応している。つまり、電灯Aの照明強度推定レンジは、移行中期間では遷移不達成モデルおよび遷移達成モデルに対応した0〜100%に設定されていたが、点灯期間では遷移達成モデルに対応した目標範囲(90〜100%)に設定される。
【0063】
一方、電灯Bは劣化など、照明強度が目標範囲未満の値で安定する不具合を有し、また電灯Cは点消灯繰り返しなど、照明強度が安定しない不具合を有しており、点灯期間になってもそれらの照明強度推定レンジは目標範囲には設定されていない。具体的には、電灯Bは照明強度が65%で安定した結果、その不具合検知フラグがONに設定され、照明強度推定レンジは、例えば、不具合検知までに到達した照明強度を中心として±5%を上限/下限とする範囲、つまり60〜70%に設定されている。また、電灯Cはやはり不具合検知フラグをONに設定され、不安定な照明強度に対応して照明強度推定レンジは0〜100%に設定されている。この結果、電灯Aが点灯状態となる期間における機器2bの空間モデルとして、電灯A〜Cの上述の照明強度推定レンジでのモデルパラメータの組み合わせに対応した遷移不達成モデルが生成される。
【0064】
照明機器のスイッチがONからOFFに変わった場合は、制御信号取得手段30が当該照明機器の状態を点灯から消灯に遷移させる制御信号を取得し、モデル生成手段60は当該照明機器の照明強度を0%とした遷移達成モデルを生成する。
【0065】
遷移判定手段61はモデル生成手段60により生成された空間モデル(遷移達成モデル、遷移不達成モデル)を、記憶部5に予め記憶されたカメラパラメータに基づきカメラ4の撮影面に仮想的にレンダリングしレンダリング画像を生成する。ちなみにカメラパラメータはカメラ4の内部パラメータ及び外部パラメータであり、撮影位置姿勢の他に焦点距離、解像度(幅方向画素数、高さ方向画素数)、レンズ歪みなどを含む。
【0066】
具体的には、まず遷移判定手段61は、カメラパラメータから空間モデルのXYZ座標系におけるカメラ4の撮影面を導出する。次に遷移判定手段61は、空間モデルに含まれる光源についてその位置および照明特性に従った光線データを生成する。その際、光源のうち機器2である照明機器については、空間モデルごとに、設定された照明強度に基づいて光線データの有無や出力を調整する。続いて遷移判定手段61は、構成物での反射による光線データの色や出力の変化を構成物の色、テクスチャ、反射特性に従って調整する。そして遷移判定手段61は光源から撮影面に到達する直接光、反射光の光線データを撮影面の各画素値に設定してレンダリング画像を生成する。
【0067】
遷移判定手段61は、レンダリング画像と撮影画像との類似度または相違度を算出し、当該類似度が最大、または相違度が最小のレンダリング画像を、カメラ4の撮影タイミングでの監視空間の機器2の動作状態を好適に模した画像として選択する。ちなみに、ここでの類似度と相違度とは互いに負の相関関係にある指標であり、一方の指標を他方に変換することができ、両者に本質的な違いはない。よって、以下の説明では適宜、一方のみを用い記載を簡潔にする。
【0068】
さて上述したように、モデル生成手段60は、或るタイミングの監視空間についてモデルパラメータが異なる遷移不達成モデルおよび遷移達成モデルをそれぞれ複数生成し得る。遷移判定手段61は、遷移不達成モデルが複数生成された場合、それぞれについてレンダリング画像を生成し、同様に、遷移達成モデルが複数生成された場合、それぞれについてレンダリング画像を生成し、それら遷移不達成モデルについてのレンダリング画像および遷移達成モデルについてのレンダリング画像のうち撮影画像との類似度が最大のものを選択する。
【0069】
遷移判定手段61は、選択したレンダリング画像に対応する空間モデルでの動作状態から、撮影画像の取得タイミングでの機器2の動作状態を推定することができ、当該空間モデルが遷移不達成モデルであれば当該タイミングでの動作状態は遷移不達成状態であり、逆に、遷移達成モデルであれば遷移達成状態であると推定できる。
【0070】
遷移判定手段61は、制御信号の変化による遷移の成否を判定するのに適したタイミングにて、動作状態が遷移不達成状態であれば、遷移が失敗したと判定する。これにより、動作状態が目標範囲未満の値で安定する不具合が検知される。具体的には本実施形態では、動作状態が移行中であり、且つ不具合が検知されていない機器2について空間モデルとして遷移不達成モデルと遷移達成モデルとの両方が生成される。遷移判定手段61は遷移達成モデルについてのレンダリング画像と撮影画像との類似度Rと、遷移不達成モデルについてのレンダリング画像と撮影画像との類似度Rとを比較し、類似度Rより類似度Rの方が高い場合に、遷移が失敗したと判定する。ここで、遷移不達成モデルが複数生成された場合は、それらについての類似度Rのうち最大値が上記比較に用いられ、また、遷移達成モデルが複数生成された場合は、それらについての類似度Rのうち最大値が上記比較に用いられる。
【0071】
従来、撮影画像と正常時の画像との相違が閾値を超えた場合に不具合を判定していたところ、本実施形態ではRとRとを比較することで閾値を用いずに遷移失敗を判定することができる。また、遷移不達成モデルは機器2または機器群の各種の動作状態について生成することができ、遷移失敗と判定される場合に類似度Rが最大の遷移不達成モデルでの機器2または機器群の動作状態から不具合の具体的な態様を推定することができる。
【0072】
動作状態が目標範囲未満の値で安定する遷移失敗に関する判定を行うタイミングに関しては、例えば、遷移判定手段61はレンダリング画像と撮影画像との比較から推定した動作状態の変化を監視し、当該変化が所定の安定状態に達した場合に、遷移の成否を判定することができる。また、機器2の動作状態の遷移に要するおおよその時間は一般に予め把握できるので、当該時間に応じた一定の遅延期間を設定し、単純に当該遅延期間の経過後、遷移の成否を判定してもよい。
【0073】
また、遷移判定手段61は、機器2の動作状態の変化が収束しない状態が或る限度以上続く場合にも遷移の成否を判定することができ、これにより、動作状態が安定しない不具合を検知することができる。
【0074】
例えば、遷移判定手段61は、撮影画像の画素値の代表特徴量とレンダリング画像の画素値の代表特徴量との差を相違度として算出する。代表特徴量は例えば平均画素値とすることができる。或いは平均画素値および画素値の分散を代表特徴量としてもよい。また、画素値は色でもよく、或いは濃淡値でもよい。
【0075】
また、代表特徴量は撮影画像において構成物以外が写った領域(人物領域など)を除いて算出することが望ましい。そのため、遷移判定手段61は例えば、人が存在し得ない領域として高さ2m以上の位置に予め定めた評価領域内の画素を用いて代表特徴量を算出する。
【0076】
或いは、遷移判定手段61は例えば、レンダリング画像において背景物ごとに当該背景物の領域の画素値の分散を算出し、分散が所定値未満である領域内の画素を用いて代表特徴量を算出する。
【0077】
遷移判定手段61は遷移の成否の判定結果を警告手段70に出力する。警告手段70は、遷移判定手段61により遷移が失敗したと判定された場合に、ユーザーに対し機器2の不具合を警告する。
【0078】
次に空間監視装置1の動作について説明する。図8および図9は空間監視装置1の概略の動作を示すフロー図である。
【0079】
画像処理部6は、カメラ4から撮影画像を取得すると(ステップS1)、制御信号取得手段30である機器インターフェース部3から機器2の制御信号を取得する(ステップS2)。すなわち、カメラ4による撮影タイミングと基本的に同期して、機器2の制御信号が取得される。
【0080】
画像処理部6はモデル生成手段60として動作し、制御信号が前回の取得時から変化したか否かを判定する(ステップS3)。変化したと判定した場合(ステップS3にてYESの場合)、モデル生成手段60は当該機器2についての動作状態として「移行中」を設定する(ステップS4)。具体的には、機器2が照明機器であれば、スイッチ20がOFFからONに切り替えられる際の制御信号の変化に対して、空間モデル記憶手段50の当該機器のモデル制御情報における動作状態に「移行中」が設定され、照明強度推定レンジに0〜100%が設定される。また、機器2が自動ドアであれば、制御信号である人感センサ22の出力が未検知時のローレベルの電圧から検知時のハイレベルの電圧に変化したときに動作状態に「開閉中」が設定され、開き幅推定レンジに0〜100%が設定される。また、ステップS4における動作状態の「移行中」(または「開閉中」)の設定と併せて、モデル生成手段60は安定カウンタ、不安定カウンタのカウント値を0にリセットし、また、不具合検知フラグをOFFにセットする。なお、既に述べたように本実施形態では、照明機器のONからOFFへの切り替え時には移行中を定義しないので、この場合は、モデル生成手段60は動作状態に「消灯」を設定し、照明強度推定レンジに0%を設定する。
【0081】
一方、制御信号が変化しなかったと判定した場合は(ステップS3にてNOの場合)、モデル生成手段60はステップS4をスキップする。
【0082】
構成物に複数の機器2が存在する場合、モデル生成手段60は各機器についてステップS2〜S4の処理を行う。
【0083】
ステップS2〜S4の次に、モデル生成手段60は記憶部5の空間モデル記憶手段50から空間モデルを読み出して機器2の状態を確認し(S5,S6)、その状態に応じた空間モデルを生成する(S7〜S10)。
【0084】
具体的には、モデル生成手段60は機器2の状態に関し例えば、空間モデルに含まれるモデル制御情報のパラメータレンジ、動作状態および不具合検知フラグを読み出す。そして、動作状態が移行中(または開閉中)であり、且つ不具合検知フラグがOFFである機器2に関しては(ステップS5にてYES、且つステップS6にてNOの場合)、モデル生成手段60は当該機器2のモデルパラメータをパラメータレンジ内にて変更して空間モデルを生成する。この場合、パラメータレンジには目標範囲とそこへの移行途中の範囲とを合わせた範囲が設定されているので、モデル生成手段60は、遷移達成モデルと遷移不達成モデルとの両方を生成する(ステップS7,S8)。
【0085】
例えば、機器2が移行中であり且つ不具合がまだ検知されていない照明機器であれば動作状態には移行中、照明強度推定レンジには0〜100%、不具合検知フラグにはOFFがそれぞれ設定されている。モデル生成手段60は当該照明機器に関し、照明強度推定レンジに従い、照明強度を順次0%,1%,…,89%と変更して遷移不達成モデルを生成し、また、照明強度を順次90%,91%,…,100%と変更して遷移達成モデルを生成する。
【0086】
また、例えば、機器2が移行中であり且つ不具合がまだ検知されていない自動ドアであれば動作状態には移行中、開き幅推定レンジには0〜100%、不具合検知フラグにはOFFが設定されている。モデル生成手段60は当該自動ドアに関し、開き幅推定レンジに従い、当該自動ドアの開き幅を順次0%,1%,…,99%と変更して遷移不達成モデルを生成し、また、開き幅を100%に設定して遷移達成モデルを生成する。
【0087】
動作状態が移行中であり且つ不具合が発生中である機器2に関しては(ステップS5にてYES、且つステップS6にてYESの場合)、モデル生成手段60は当該機器2のモデルパラメータをパラメータレンジ内にて変更して遷移不達成モデルを生成する(S9)。
【0088】
例えば、機器2が図7における電灯Bのように照明強度65%で安定した不具合(劣化)が発生中の照明機器であれば動作状態には「移行中」、照明強度推定レンジには例えば60〜70%、不具合検知フラグにはONが設定されている。モデル生成手段60は当該照明機器に関し、照明強度推定レンジに従い、照明強度を60%,61%,…,70%に設定した遷移不達成モデルを生成する。
【0089】
また例えば、機器2が図7における電灯Cのように照明強度の不安定な不具合(点消灯繰り返し)が発生中の照明機器であれば、動作状態は基本的には「移行中」であり、また、照明強度推定レンジには例えば0〜100%、不具合検知フラグにはONが設定されている。モデル生成手段60は当該照明機器に関し、照明強度推定レンジに従い、照明強度を0%,1%,…,100%に設定した遷移不達成モデルを生成する。
【0090】
例えば、機器2が開き幅50%で安定した不具合(停止)が発生中の自動ドアであれば、動作状態には「開閉中」、開き幅推定レンジには例えば45〜55%、不具合検知フラグにはONが設定されている。モデル生成手段60は当該自動ドアに関し、開き幅推定レンジに従い、開き幅を45%,46%,…,55%に設定した遷移不達成モデルを生成する。
【0091】
また例えば、機器2が開き幅の不安定な不具合(開閉繰り返し)が発生中の自動ドアであれば、動作状態は基本的に「開閉中」であり、また、開き幅推定レンジには例えば0〜100%、不具合検知フラグにはONが設定されている。モデル生成手段60は当該自動ドアに関し、開き幅推定レンジに従い、開き幅を0%,1%,…,100%に設定した遷移不達成モデルを生成する。
【0092】
機器2の状態が移行中ではない機器2に関しては(ステップS5にてNOの場合)、モデル生成手段60は当該機器2のモデルパラメータをパラメータレンジ内にて変更して遷移達成モデルを生成する(ステップS10)。
【0093】
例えば、機器2が照明強度99%で点灯状態に移行完了している照明機器であれば、動作状態には「点灯」、照明強度推定レンジには90〜100%が設定されている。モデル生成手段60は当該照明機器に関し、照明強度推定レンジに従い、照明強度を順次90%,91%,…,100%と変更して遷移達成モデルを生成する。
【0094】
また例えば、機器2が消灯状態に移行完了した照明機器であれば、動作状態には「消灯」、照明強度推定レンジには0%が設定されている。モデル生成手段60は当該照明機器に関し、照明強度推定レンジに従い、照明強度を0%として遷移達成モデルを生成する。
【0095】
また例えば、機器2が開き幅1%で閉状態に移行完了している自動ドアであれば、動作状態には「閉」、開き幅推定レンジには0〜1%が設定されている。モデル生成手段60は当該自動ドアに関し、開き幅推定レンジに従い、開き幅を順次0%,1%に変更して遷移達成モデルを生成する。
【0096】
構成物に複数の機器2が存在する場合、モデル生成手段60は各機器のモデルパラメータを上述のように動作状態等に応じて変更し、複数の機器2のモデルパラメータを組み合わせて空間モデルを生成する。
【0097】
上述のようにモデル生成手段60により、制御信号に対して予め想定されるパラメータレンジ内にてモデルパラメータを設定して空間モデルが生成される。1つの機器2についてモデルパラメータはパラメータレンジにて複数通りに設定され得、構成物には複数の機器2が存在し得るので、基本的には、機器2または機器群の動作状態が異なる複数の空間モデルが生成される。但し、例えば、構成物に閉状態の自動ドアだけが存在する場合などには、空間モデルとして1通りの動作状態のものしか生成されない場合もある。
【0098】
空間モデルを生成すると、画像処理部6は遷移判定手段61として動作し、モデル生成手段60により機器2の動作状態等に応じて生成された基本的に複数通りの空間モデルそれぞれを、撮影手段40であるカメラ4の撮影面に対応する座標系にレンダリングしてレンダリング画像を生成する(ステップS11)。
【0099】
遷移判定手段61は、各レンダリング画像を撮影画像と比較して類似度を算出し、類似度が最大のレンダリング画像を選択する(ステップS12)。
【0100】
選択されたレンダリング画像はカメラ4による撮影時における監視空間の機器2の状態を反映したものとなっている。遷移判定手段61は当該選択レンダリング画像に基づいて、機器2の状態の判定および更新を行い、機器2に不具合が検知された場合には警告手段70が警告を行う(ステップS13〜S27)。以下、この処理を説明する。
【0101】
遷移判定手段61は、機器2の動作状態が「移行中」であるか否かを確認する(ステップS13)。移行中ではない場合は(ステップS13にてNOの場合)、ステップS14〜S24をスキップして処理をステップS25に進める。
【0102】
一方、機器2が移行中である場合(ステップS13にてYESの場合)、遷移判定手段61は、ステップS12における選択レンダリング画像に対応する移行中モデルのモデルパラメータ(以下、今回パラメータ)と、記憶部5に記憶されている前回の選択レンダリング画像に対応する移行中モデルのモデルパラメータ(以下、前回パラメータ)との差を算出して閾値Tと比較する(ステップS16)。閾値Tは動作状態が安定している時の機器2の画像の変動幅に応じて予め定めておく。例えば、Tは1%とする。
【0103】
差の絶対値がT以下である場合(ステップS14にてYESの場合)、遷移判定手段61は、当該機器の安定カウンタのカウント値を1だけ増加させて(ステップS15)、増加後のカウント値を閾値Tと比較する(ステップS16)。閾値Tは機器2の安定/不安定を弁別できる程度の時間長に予め定めておく。例えば、照明機器であれば1秒間相当のフレーム数である5がTとして設定され、自動ドアであれば連続入退場を加味して10秒間相当のフレーム数である50がTとして設定される。
【0104】
安定カウンタの値がT以上であった場合(ステップS16にてYESの場合)、遷移判定手段61は、ステップS12で選択されたレンダリング画像が遷移不達成モデルに対応するものであるか否かを確認する(ステップS17)。すなわち機器2の今回パラメータが目標範囲への移行途中の範囲にあるか否かを確認する。機器2の今回パラメータが移行途中の範囲にはない、すなわち目標範囲にある場合(ステップS17にてNOの場合)、遷移判定手段61は当該機器の動作状態を移行完了を示す状態に設定する(ステップS18)。具体的には、照明機器については「点灯」、「消灯」、また自動ドアについては「閉」が設定される。この場合、遷移判定手段61は当該機器2のパラメータレンジを目標範囲に変更する。例えば、機器2が点灯への遷移が完了した照明機器である場合、照明強度推定レンジは90〜100%に設定される。
【0105】
一方、機器2の今回パラメータが目標範囲にはなく、移行途中の範囲にある場合は(ステップS17にてYESの場合)、上述した照明機器の劣化による照明強度の低下のように、機器2の動作状態が目標範囲に到達する前に定常状態となり動作状態の遷移に失敗した場合であるので、遷移判定手段61は、動作状態が安定している不具合が発生したとして当該機器の不具合検知フラグをONに設定する(ステップS19)。この場合、遷移判定手段61は例えば、当該機器2のパラメータレンジをステップS12で選択された空間モデルのモデルパラメータを中心として±5%を上限/下限とする範囲に変更する。例えば、機器2が照明機器であり、ステップS11で選出した空間モデルの照明強度が65%であった場合、照明強度推定レンジに60〜70%と設定する。
【0106】
遷移判定手段61は不具合が発生中であることを検知すると、遷移の成否の判定結果を警告手段70に出力する。警告手段70は、不具合が発生し遷移が失敗したと遷移判定手段61により判定された場合に、ユーザーに対し機器2の不具合を警告する(ステップS20)。例えば、機器2が照明機器であれば、当該照明機器の設置面(天井など)を視野に含む仮想の撮影面に空間モデルをレンダリングしてユーザーインターフェース部7のディスプレイに表示し、当該レンダリング画像中にて不具合の発生している電灯の像を強調表示するとともに当該画像に文字列「電灯が劣化しています」を重畳させて警告表示させる。また、機器2が自動ドアであれば例えば、不具合の発生している自動ドアの像を背景画像において強調表示するとともに当該背景画像に文字列「自動ドアが止まっています」を重畳させて警告表示させる。
【0107】
安定カウンタの値がT未満の場合(ステップS16にてNOの場合)、ステップS17〜S20をスキップして処理をステップS25に進める。
【0108】
また、ステップS14にて、機器2の今回パラメータと前回パラメータとの差の大きさがTより大きかった場合(ステップS14にてNOの場合)、遷移判定手段61は、当該機器の不安定カウンタの値を1だけ増加させて(ステップS21)、増加後の不安定カウンタの値を閾値Tと比較する(ステップS22)。閾値Tは機器2が移行に要する程度の時間長に予め定めておく。例えば、照明機器であれば1秒間相当のフレーム数である5がTとして設定され、自動ドアであれば連続入退場を加味して10秒間相当のフレーム数である50がTとして設定される。
【0109】
機器2の不安定カウンタの値がT以上であった場合は(ステップS22にてYESの場合)、例えば、照明機器が点灯と消灯とを繰り返すちらつきのような機器2の不安定な不具合が発生しており動作状態の遷移に失敗しているといえる。そこで、遷移判定手段61は、動作状態が不安定である不具合が発生したとして当該機器の不具合検知フラグをONに設定する(ステップS23)。この場合、遷移判定手段61は、当該機器2のパラメータレンジを移行中モデルのパラメータレンジと同じ設定とすることができ、例えば、0〜100%とする。
【0110】
遷移判定手段61は不具合が発生中であることを検知すると、遷移の成否の判定結果を警告手段70に出力する。警告手段70は、不具合が発生し遷移が失敗したと遷移判定手段61により判定された場合に、ユーザーに対し機器2の不具合を警告する(ステップS24)。例えば、機器2が照明機器であれば、当該照明機器の設置面(天井など)を視野に含む仮想の撮影面に空間モデルをレンダリングしてユーザーインターフェース部7のディスプレイに表示し、当該レンダリング画像中にて不具合の発生している電灯の像を強調表示するとともに当該画像に文字列「電灯にちらつきが発生しています」を重畳させて警告表示させる。また、機器2が自動ドアであれば例えば、不具合の発生している自動ドアの像を背景画像において強調表示するとともに当該背景画像に文字列「自動ドアが開閉を繰り返しています」を重畳させて警告表示させる。
【0111】
機器2の不安定カウンタの値がT未満であった場合(ステップS22にてNOの場合)、ステップS23,S24をスキップして処理をステップS25に進める。
【0112】
ステップS25では遷移判定手段61は、次回に前回パラメータとして参照するために今回パラメータを記憶部5に記憶させる。
【0113】
ステップS20,S24での不具合警告を受けて、ユーザーである機器管理者は不具合発生中の機器2の修理・交換といった対処を行うことができる。当該対処により不具合が解消された場合、ユーザーはユーザーインターフェース部7を操作して復旧信号を入力する。遷移判定手段61は、復旧信号の入力を確認し(ステップS26)、復旧信号が入力されている場合(ステップS26にてYESの場合)、機器2の動作状態を「移行中」に設定する(ステップS27)。一方、復旧信号が入力されていない場合は(ステップS26にてNOの場合)、ステップS27はスキップされる。
【0114】
構成物に複数の機器2が存在する場合、遷移判定手段61は各機器についてステップS13〜S27を実行する。
【0115】
モデルパラメータの記録処理S25および復旧処理への対応処理S26,S27を終えると、画像処理部6は処理をステップS1に戻し、次の撮影画像に対する処理を開始する。
【0116】
なお、ステップS16の判定にて安定カウンタの値が閾値以上であったことが、今回パラメータと前回パラメータとの差の大きさが閾値T以下である状態が所定期間以上継続したことを保証するために、ステップS14にて今回パラメータと前回パラメータとの差の大きさが閾値Tを超えた場合には安定カウンタの値を0にリセットしてもよい。
【0117】
[変形例]
(1)上記実施形態においては、複数通りの空間モデルに変更する場合、モデル生成手段60が一度に複数通りに空間モデルを生成する例を示したが、モデル生成手段60が遷移判定手段61と連携して探索的に空間モデルを変更してもよい。例えば、移行中の照明機器に関しモデルパラメータである照明強度を0〜100%の範囲で1%刻みで設定する場合、まずモデル生成手段60が照明強度を50%に設定した空間モデルを出力し遷移判定手段61がそのレンダリング画像と撮影画像との明るさの差を算出する。次に、当該差が正である(レンダリング画像の方が明るい)場合は、モデル生成手段60が照明強度を49%に変更した空間モデルを出力し、差が負である(レンダリング画像の方が暗い)場合は、モデル生成手段60が照明強度を51%に変更した空間モデルを出力する、というように差が0に近づく方向に照明強度を変更する。そして、遷移判定手段61は、差の正負が変わったときまたは差の正負が変わらないまま範囲の下限または上限に達したときのレンダリング画像に基づいて機器2の動作状態を推定する。このようにすることでさらに処理負荷を軽減できる。
【0118】
(2)上記実施形態においては、動作状態の遷移にて動作状態が「移行中」である場合に空間モデルとして、モデルパラメータが遷移の目標範囲への移行途中の範囲にある遷移不達成モデルと、モデルパラメータが目標範囲にある遷移達成モデルとの両方を生成する構成とした。これに代えて、「移行中」の場合に遷移不達成モデルのみを生成し、機器2の遷移失敗を判定する構成とすることもできる。すなわち当該構成では、遷移判定手段61は、遷移不達成モデルをカメラパラメータに基づきレンダリングしたレンダリング画像と撮影画像との類似度を算出し、当該類似度を用いて遷移が失敗したか否かを判定する。例えば、遷移判定手段61は、類似度が予め定めた閾値以上であるレンダリング画像が存在する場合に、遷移が失敗したと判定する。この場合、ユーザーは当該レンダリング画像に対応する遷移不達成モデルにおける機器2または機器群のモデルパラメータから、遷移失敗と判定された不具合の状態を把握することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 空間監視装置、2 機器、3 機器インターフェース部、4 カメラ、5 記憶部、6 画像処理部、7 ユーザーインターフェース部、20 スイッチ、21 電灯、22 人感センサ、23 自動ドア、30 制御信号取得手段、40 撮影手段、50 空間モデル記憶手段、60 モデル生成手段、61 遷移判定手段、70 警告手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9