(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし装置であって、
前記積層フィルムを加熱する加熱部と、
前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記加熱部により加熱中の前記積層フィルムを又は前記加熱部により加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ部と、
前記積層フィルムを前記曲げ部の上流から下流へ移動させる移動機構と、
を備え、
前記曲げ部は、前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面に接触する接触面を有し、前記接触面が前記積層フィルムの移動方向に曲げられており、
前記曲げ部は、前記移動方向にみて離間した位置において、前記積層フィルムを互いに異なる曲率で湾曲させる部分、又は前記積層フィルムを互いに異なる角度で屈曲させる部分を有し、
前記移動機構により移動方向に引っ張られた状態の前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面と前記接触面とを接触させることにより、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように前記積層フィルムを曲げる、剥がし装置。
ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし装置であって、
前記積層フィルムを加熱する加熱部と、
前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記加熱部により加熱中の前記積層フィルムを又は前記加熱部により加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ部と、
前記積層フィルムを前記曲げ部の上流から下流へ移動させる移動機構と、
を備え、
前記曲げ部は、前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面に接触する接触面を有し、前記接触面が前記積層フィルムの移動方向に曲げられており、
前記移動機構により移動方向に引っ張られた状態の前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面と前記接触面とを接触させることにより、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように前記積層フィルムを曲げ、
前記積層フィルムと前記接触面とが接触した状態と、前記積層フィルムと前記接触面とが非接触の状態とを切り替える切替機構を備える、剥がし装置。
ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし装置であって、
前記積層フィルムを加熱する加熱部と、
前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記加熱部により加熱中の前記積層フィルムを又は前記加熱部により加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ部と、
前記曲げ部による曲げ処理後の前記積層フィルムについて、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす剥がし機構と、
を備え、
前記剥がし機構は、所定間隔をあけて設けられた複数の突起を備え、
前記剥がし機構において、前記積層フィルムは、前記複数の突起の各先端と前記ベースフィルム側の面とが接触するように前記複数の突起の間に架け渡されており、
前記剥がし機構は、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対向する位置において隣り合う前記突起の間に配置され、周方向に複数の刃部を有する刃付き回転体を備え、
前記刃付き回転体が周方向に回転して前記刃部の先端が前記積層フィルムの前記金属膜側の面に接触されることにより、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす、剥がし装置。
前記曲げ部による曲げ処理後であって、前記剥がし機構により前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対して、当該面に沿って断続的である厚み方向の切込みを形成する切込み形成部を備える、請求項4又は5に記載の剥がし装置。
ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし装置であって、
前記積層フィルムを加熱する加熱部と、
前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記加熱部により加熱中の前記積層フィルムを又は前記加熱部により加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ部と、
前記曲げ部による曲げ処理後の前記積層フィルムについて、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす剥がし機構と、
前記曲げ部による曲げ処理後であって、前記剥がし機構により前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対して、当該面に沿って断続的である厚み方向の切込みを形成する切込み形成部と、
を備える、剥がし装置。
前記切込み形成部は、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対し、第1方向に延びる切込みを形成する第1切込み部と、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる切込みを形成する第2切込み部と、を備え、
前記第1切込み部及び前記第2切込み部のそれぞれは、前記一対の回転体を備え、
前記第1切込み部により前記積層フィルムに前記第1方向に延びる切込みを形成した後に、前記第2切込み部により前記積層フィルムに前記第2方向に延びる切込みを形成する、請求項8に記載の剥がし装置。
ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし装置であって、
前記積層フィルムを加熱する加熱部と、
前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記加熱部により加熱中の前記積層フィルムを又は前記加熱部により加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ部と、
前記曲げ部による曲げ処理後であって、前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記積層フィルムに光を照射する光照射部と、
を備える、剥がし装置。
ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がして金属片を製造する方法であって、
前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、加熱中の前記積層フィルムを又は加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ工程と、
前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす剥がし工程と、
を含み、
前記剥がし工程は、所定間隔をあけて設けられた複数の突起の各先端と前記ベースフィルム側の面とが接触するように前記複数の突起の間に架け渡された状態の前記積層フィルムの前記金属膜側の面と、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対向する位置に配置され周方向に複数の刃部を有する回転体の前記刃部の先端と、を接触させることにより、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす、金属片の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、得られる金属膜は不織布に保持されているため、金属膜をそれ単独の状態で得るには、不織布に保持された状態の金属膜を、不織布を溶解可能な溶媒に浸漬して、金属膜から不織布を取り除くことが必要である。そのため、乾燥した状態の金属膜を得るには、不織布を取り除いた後の金属膜を乾燥させる処理が必要になる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ベースフィルム上の金属膜を、乾燥した状態のままでもベースフィルムから容易に剥がすことができる剥がし装
置を提供することを一つの目的とする。また、ベースフィルム上の金属膜を、金属膜に離型剤が付着した状態でかつ乾燥した状態のままベースフィルムから剥がして、凝集しにくい金属片を製造する方法を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明は、ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし装置に関する。第1の構成は、前記積層フィルムを加熱する加熱部と、前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記加熱部により加熱中の前記積層フィルムを又は前記加熱部により加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成では、ベースフィルムから金属膜を剥がす前に、加熱中の積層フィルムを又は加熱した直後の積層フィルムを、ベースフィルム側が内側に曲げられた状態となるように曲げる処理を行う。この場合、加熱によって離型剤層が軟化され、その軟化された状態でベースフィルム側が内側となるように積層フィルムが曲げられることにより、積層フィルムのベースフィルム側より外周面側の離型剤層及び金属膜側に大きい歪みを生じさせることができる。これにより、ベースフィルムと離型剤層との密着性を低下させることができ、その後の剥がし工程においてベースフィルムから金属膜を剥がしやすくすることができる。また、離型剤層中の離型剤の少なくとも一部が金属膜に付着した状態のまま金属膜が剥がれることにより、ベースフィルムから剥がした後の金属膜同士が凝集しにくくなるようにすることができる。
【0009】
第2の構成は、第1の構成において、前記積層フィルムを前記曲げ部の上流から下流へ移動させる移動機構を備え、前記曲げ部は、前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面に接触する接触面を有し、前記接触面が前記積層フィルムの移動方向に曲げられており、前記移動機構により移動方向に引っ張られた状態の前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面と前記接触面とを接触させることにより、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように前記積層フィルムを曲げることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、加熱によって離型剤層が軟化された積層フィルムが、ベースフィルム側の面が内側になるように曲げられた状態で更に移動方向に引っ張られることにより、積層フィルム内部に移動方向のずれ応力を生じさせることができる。これにより、ベースフィルムと離型剤層との境界でフィルム移動方向のずれが起きやすく、ベースフィルムと離型剤層との密着性をより低下させることができる。
【0011】
第3の構成は、上記第2の構成において、前記曲げ部は、前記移動方向にみて離間した位置において、前記積層フィルムを互いに異なる曲率で湾曲させる部分、又は前記積層フィルムを互いに異なる角度で屈曲させる部分を有することを特徴とする。この構成によれば、曲がり度合いが異なる複数の箇所で積層フィルムが曲げられることにより積層フィルム内部の歪みをより大きくでき、ベースフィルムから金属膜をより剥がれやすくすることができる。
【0012】
第4の構成は、上記第2又は第3の構成において、前記加熱部は、前記接触面を加熱し、前記積層フィルムの前記ベースフィルム側の面の全体が前記接触面に接触されることを特徴とする。この構成によれば、積層フィルムのベースフィルム側の面全体に熱が万遍なく行き渡り、離型剤層の軟化を面全体に生じさせることができる。
【0013】
第5の構成は、第2〜第4のいずれか1の構成において、前記積層フィルムと前記接触面とが接触した状態と、前記積層フィルムと前記接触面とが非接触の状態とを切り替える切替機構を備えることを特徴とする。加熱部に対する積層フィルムの相対位置が機械の停止等により数秒変更されず、積層フィルムの一部の領域のみが加熱され続けると、その一部の領域において過熱による変形や焼き付きが生じるおそれがある。これに対し、積層フィルムと接触面との接触/非接触を切り替える切替機構を備える構成によれば、積層フィルムの一部の領域で加熱部による加熱が継続されないようにすることができ、積層フィルムの過熱による変形や焼き付きを抑制することができる。
【0014】
第6の構成は、第1〜第5のいずれかの1の構成において、前記曲げ部は、前記積層フィルムを屈曲させる屈曲部を有することを特徴とする。この構成によれば、積層フィルムが屈曲部で屈曲されることによって積層フィルムの内部応力がより大きくなり、離型剤層の軟化により金属膜をベースフィルムからより剥がしやすくすることができる。
【0015】
第7の構成は、上記第1〜第6のいずれか1の構成において、前記曲げ部による曲げ処理後の前記積層フィルムについて、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす剥がし機構を備えることを特徴とする。この構成によれば、従来の湿式による製造方法(例えば、水中における電気精錬法の湿式による製造方法)で必要とされる乾燥工程が不要であり、金属片の製造に際して工程数を極力少なくすることができる。また、金属を薄く打ち延ばした金属箔(例えば、銀箔や金箔、錫箔等)を細かくすることによって金属片を製造する方法に比べて、静電気による機械部品への密着や飛散も少なく、金属膜の取り扱い性に優れ、また大量生産に適している。また、金属箔だけで金属片を製造すると時間経過に伴い金属片同士が凝集しやすいが、本構成では、金属片に離型剤が付着した状態となっていることから、金属片同士の凝集を抑制することができる。したがって、本構成によれば、高い生産効率で金属片を製造でき、乾燥した状態の凝集しにくい金属片を安い単価で得ることができる。
【0016】
第8の構成は、第7の構成につき、前記剥がし機構は、所定間隔をあけて設けられた複数の突起を備え、前記剥がし機構において、前記積層フィルムは、前記複数の突起の各先端と前記ベースフィルム側の面とが接触するように前記複数の突起の間に架け渡されており、前記剥がし機構は、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対向する位置において隣り合う前記突起の間に配置され、周方向に複数の刃部を有する刃付き回転体を備え、前記刃付き回転体が周方向に回転して前記刃部の先端が前記積層フィルムの前記金属膜側の面に接触されることにより、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がすことを特徴とする。
【0017】
剥がし機構によってベースフィルムから金属膜を剥がす前の積層フィルムには、上記曲げ部による曲げ処理が施されているため、積層フィルムの金属膜側の面を強く擦らなくても、刃付き回転体を回転させながら刃部の先端を接触させるという簡便な操作によって、離型剤が付着した状態のまま金属膜をベースフィルムから剥がすことができる。また、複数の突起によって浮いた状態の積層フィルムに刃部を接触させるため、刃部の損傷を防ぐことができる。これにより、得られる金属片に刃部の欠片が混入しないようにすることができる。
【0018】
第9の構成は、第7又は第8の構成において、前記曲げ部による曲げ処理後であって、前記剥がし機構により前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対して、当該面に沿って断続的である厚み方向の切込みを形成する切込み形成部を備えることを特徴とする。この構成によれば、その後の剥がし工程でベースフィルムから金属膜を離型剤が付着した状態のまま剥がしやすくしつつ、ベースフィルムから金属膜を剥がす前に金属膜がバラバラに飛散しないようにすることができる。これにより、剥がされた金属片の回収効率を高くすることができる。
【0019】
第10の構成は、第9の構成において、前記切込み形成部は、前記積層フィルムを挟んで設けられた一対の回転体を備え、前記一対の回転体のうち前記金属膜側に設けられた第1回転体は、所定幅の刃部を周方向に複数有し、前記一対の回転体のうち前記ベースフィルム側に設けられた第2回転体は、外周面における前記第1回転体の前記刃部に対応する位置に凹み部が形成されており、前記第1回転体の前記刃部が前記凹み部に入り込むことにより前記積層フィルムに前記切込みと前記金属膜の浮き上がりとを形成することを特徴とする。
【0020】
第10の構成によれば、積層フィルムに切込みを形成する際に、第1回転体の刃部が第2回転体の凹み部に入り込むことにより、刃部で押圧されていない部分、つまり切込みと切込みとの間の離型剤層及び金属膜を浮き上がらせるようにすることができる。これにより、先に切込みを形成した部分において離型剤層及び金属膜を剥がれやすくすることができる。
【0021】
第11の構成は、前記切込み形成部は、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対し、第1方向に延びる切込みを形成する第1切込み部と、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる切込みを形成する第2切込み部と、を備え、前記第1切込み部及び前記第2切込み部のそれぞれは、前記一対の回転体を備え、前記第1切込み部により前記積層フィルムに前記第1方向に延びる切込みを形成した後に、前記第2切込み部により前記積層フィルムに前記第2方向に延びる切込みを形成することを特徴とする。
【0022】
第11の構成によれば、第2切込み部によって積層フィルムに切込みを形成する前に、第1切込み部によって積層フィルム上に第1方向に延びる切込みを形成するため、第2切込み部の第1回転体の刃部が凹み部に入り込んだときには、第1切込み部によって形成した切込みの部分で離型剤層及び金属膜が浮き上がりやすい。このため、離型剤層及び金属膜をベースフィルムからより剥がしやすくすることができる。
【0023】
第12の構成は、第1〜11のいずれか1の構成において、前記曲げ部による曲げ処理後であって、前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、前記積層フィルムに光を照射する光照射部を備えることを特徴とする。この構成によれば、光照射によって積層フィルムをさらに加熱することができ、離型剤層の軟化を促進させることができる。特に、ナノ単位の金属粒子からなる薄膜によって金属膜を構成した場合には、金属膜に光が照射されることによって、金属膜を構成する金属ナノ粒子の表面でのプラズモン共鳴の励起により発熱が促進される。これにより、ベースフィルムの軟化を一層促進させることができる。
【0024】
第2の発明は、ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がす剥がし方法に関する。第13の構成は、前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、加熱中の前記積層フィルムを又は加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ工程を含むことを特徴とする。
【0025】
上記の剥がし方法によれば、加熱によって離型剤層が軟化され、その軟化された状態でベースフィルム側が内側となるように積層フィルムが曲げられることにより、積層フィルムのベースフィルム側より外周面側の離型剤層及び金属膜側に大きい歪みを生じさせることができる。これにより、ベースフィルムと離型剤層との密着性を低下させることができ、その後の剥がし工程においてベースフィルムから金属膜を剥がしやすくすることができる。
【0026】
第3の発明は、ベースフィルムと、離型剤を含む離型剤層と、金属膜とがこの順に積層された積層フィルムの前記ベースフィルムから、前記離型剤の少なくとも一部が前記金属膜に付着した状態で前記金属膜を剥がして金属片を製造する方法に関する。第14の構成は、前記ベースフィルムから前記金属膜を剥がす前に、加熱中の前記積層フィルムを又は加熱した直後の前記積層フィルムを、前記ベースフィルム側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる曲げ工程と、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がす剥がし工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
上記の製造方法によれば、上記の剥がし方法を用いて金属片を製造することから、剥がし工程においてベースフィルムから金属膜を剥がしやすくすることができる。また、ベースフィルムから金属膜をバラバラな状態に剥がして金属片を得るため、従来の湿式による製造方法で必要とされる乾燥工程が不要であり、金属片の製造に際して工程数を極力少なくすることができる。さらに、乾燥した金属片は軽量で包装形状も簡略に済み、運搬作業時における金属膜の取り扱い性に優れており、高速大量生産にも適している。したがって、本構成によれば、高い生産効率で乾燥して凝集しにくい金属片を安い単価で得ることができる。
【0028】
第15の構成は、第14の構成において、前記剥がし工程は、所定間隔をあけて設けられた複数の突起の各先端と前記ベースフィルム側の面とが接触するように前記複数の突起の間に架け渡された状態の前記積層フィルムの前記金属膜側の面と、前記積層フィルムの前記金属膜側の面に対向する位置に配置され周方向に複数の刃部を有する回転体の前記刃部の先端と、を接触させることにより、前記ベースフィルムから前記金属膜をバラバラな状態に剥がすことを特徴とする。
【0029】
第15の構成によれば、剥がし機構によってベースフィルムから金属膜を離型剤が付着した状態のまま剥がす前に、加熱中の積層フィルム又は加熱した直後の積層フィルムを、ベースフィルム側が内側に曲げられた状態となるように曲げる処理が施されているため、積層フィルムの金属膜側の面を強く擦らなくても、刃付き回転体を回転させながら刃部の先端を接触させるという簡便な操作によってベースフィルムから金属膜を剥がすことができる。また、複数の突起によって浮いた状態の積層フィルムに刃部を接触させるため、刃部の損傷を防ぐことができる。これにより、得られる金属片に刃部の欠片が混入しないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ベースフィルムと離型剤層と金属膜とがこの順に積層された積層フィルムのベースフィルムから、離型剤の少なくとも一部が金属膜に付着した状態のまま金属膜を剥がす剥がし装置を、ベースフィルムから金属膜をバラバラな状態に剥がして、銀粉や金粉、銅粉等の金属片を製造する金属片製造装置に具体化している。
【0032】
<金属片製造装置>
図1に示すように、金属片製造装置10は、積層フィルム11を保持するとともに下流側に供給するフィルム供給部20と、積層フィルム11のベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14を剥がしやすくするための前処理を行う前処理部30と、ベースフィルム13から、離型剤が付着した状態で金属膜14を剥がす剥がし機構70と、金属膜14に離型剤が付着した状態で金属膜14を剥がし取った後のベースフィルム13を回収するフィルム回収部90と、を備えている。金属片製造装置10において、これらフィルム供給部20、前処理部30、はがし機構70及びフィルム回収部90は、支持部材である本体部16によって支持されている。
【0033】
(本体部16)
本体部16は、平板状の底板17と、底板17の上面に立設された平板状の壁板18と、底板17の下面四隅に取り付けられた脚部19と、を備えている。本実施形態では、壁板18の前面18aに、フィルム供給部20、前処理部30、はがし機構70及びフィルム回収部90が、積層フィルム11の移動方向の上流側から下流側にこの順で取り付けられている。積層フィルム11は、フィルム供給部20から、前処理部30及び剥がし機構70を経由し、剥がし機構70で離型剤層15と金属膜14とが剥がされた後、最終的にフィルム回収部90に送られる。
【0034】
(積層フィルム11)
積層フィルム11は長尺状であり、
図2に示すように、ベースフィルム13と、ベースフィルム13上に形成された離型剤層15と、離型剤層15上に形成された金属膜14とを有する。ベースフィルム13は高分子フィルムであり、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート等の材料を用いて形成されている。ベースフィルム13の厚みは、例えば5μm〜50μmである。離型剤層15は、コーター機でベースフィルム13の一方の表面上に離型剤をコーティングすることによって形成されており、厚みは3μm〜20μmである。金属膜14は、本実施形態では銀からなる極薄膜であり、スパッタ蒸着機によって離型剤層15の一方の表面上に形成されている。金属膜14の厚みは、スパッタ蒸着機等といった金属膜の製造装置によって製造しようとする金属片の厚みに応じて選択されるが、例えば3nm〜20nmである。
【0035】
スパッタ蒸着機によれば、蒸着機の真空室内に板状の金属板、例えば銀の10mm〜30mmの厚さで、板面の大きさは蒸着機の真空室内に合わせた大きさの金属板の表面へ向けてアルゴンガスを噴射、あるいは電子ビームを照射することにより、銀微粒子を真空室内へ満遍なく蒸発させて、真空室内を移動するベースフィルム13の表面に蒸着して成膜する。蒸着方法は、真空蒸着機によっても同様に、ベースフィルム13の表面に蒸着させて成膜することが可能である。どちらも銀の純度は100%の純度を保ち、厚みがより薄い金属膜14が得られる点で好適である。この場合の銀粒子の粒径は、例えば3nm〜5nmである。なお、金属膜14は銀からなる極薄膜に限らず、例えば金、銅、白金、錫、亜鉛、バナジウム又はこれらの合金等の金属からなる薄膜であってもよい。
【0036】
離型剤層15は、水溶性離型剤を用いて形成されており、本実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びエチルセルロース等のセルロース誘導体を用いて形成されている。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、製剤のフィルムコーティング剤や、カプセル用の基剤としても使用されており、薄膜としても強靭であり、水溶性離型剤に対する安心感とイメージが良い点、あるいは安全性が高い点で好適である。ただし、水溶性離型剤は、水による溶解の難易度が高い上に、コーティング機でベースフィルム13上に薄膜を形成した後に積層した金属膜14の剥離工程において、加熱しても軟化しにくく、ベースフィルム13から離型剤層15と金属膜14との剥離が困難を極めるため、剥離する際に種々の考案工夫が多様に必要になる。なお、離型剤層15を形成する材料は上記のものに限らず、例えば分散性離型剤、油性離型剤等を用いることもできる。
【0037】
(フィルム供給部20)
フィルム供給部20は、積層フィルム11を巻回体12の状態で保持するとともに、下流側に配置された前処理部30に対して、積層フィルム11を巻回体12から引き出して供給する。フィルム供給部20は、壁板18から側方に突出し回転可能な軸部21と、軸部21の先端において壁板18に対向するように取り付けられた円板22と、を備えている。円板22は、軸部21に対して取り外し可能となっている。円板22が軸部21から取り外された状態で、積層フィルム11の巻回体12の中心部を軸部21に通し、さらに軸部21の先端に円板22を取り付けることにより、巻回体12が壁板18に保持される。
【0038】
フィルム供給部20には、軸部21を回転させるモータ23が取り付けられており、モータ23によって軸部21の回転速度が制御されることより、フィルム供給部20から下流側への積層フィルム11の供給速度及び引き張りの強弱が調節される。金属片製造装置10は、システム全体を制御する制御装置99を備えており、制御装置99によってモータ23の駆動が制御される。制御装置99は、CPU、ROM、RAM等を備える周知のマイクロコンピュータであり、金属片製造装置10における積層フィルム11の移動や、金属膜14の剥がし処理等の各種制御を実施する。
【0039】
(フィルム回収部90)
フィルム回収部90は、壁板18から側方に突出し回転可能な軸部91と、軸部91の先端において壁板18に対向するように取り付けられた円板92と、を備えている。フィルム回収部90には、軸部91を回転させるモータ93が取り付けられており、モータ93の駆動によって、金属膜14を剥がした後のベースフィルム13が巻回体の状態で回収される。また、軸部91の回転速度が制御装置99によって制御されることにより、ベースフィルム13の回収速度及び引き張りの強弱が調節される。円板92は、軸部91に対して取り外し可能となっており、円板92を軸部91から取り外すことでベースフィルム13を巻回体の状態で取り外し可能になっている。
【0040】
(前処理部30)
次に、前処理部30の構成について、
図1〜
図7を用いて詳細に説明する。なお、
図3及び
図4は、壁板18の前面18aに沿った方向の断面図に相当する。
図7は、第2処理部50の構成を示す断面図であり、(a)は第1切込み部51におけるフィルム幅方向の断面図に相当し、(b)は第2切込み部52におけるフィルム長さ方向の断面図に相当する。
【0041】
前処理部30は、ベースフィルム13から離型剤層15と金属膜14とを剥がしやすくする手段として、積層フィルム11を加熱しながら曲げる第1処理部40と、積層フィルム11の厚み方向に所定深さの切込みを形成する切込み形成部としての第2処理部50と、を備えている。本実施形態では、積層フィルム11の移動方向に対して、第1処理部40が上流側、第2処理部50が下流側にそれぞれ配置されている。
【0042】
第1処理部40は、
図1及び
図3に示すように、ベースフィルム13側の面13aが内側に曲げられた状態となるように積層フィルム11を曲げる曲げ部41と、積層フィルム11を加熱する加熱部42と、を備えている。
【0043】
曲げ部41は、積層フィルム11よりも幅広で所定の厚み(例えば、3〜20mm)を有し、幅方向に直交する方向に長い金属板41aからなり、この金属板41aが長さ方向に曲げられた曲げ部材である。金属板41aの外側表面は、積層フィルム11のベースフィルム13側の面13aに接触する接触面41bとなっており、接触面41bが積層フィルム11の移動方向に曲げられることにより、接触面41bによって曲面形状のフィルム移動経路が形成されている。本実施形態では、積層フィルム11のベースフィルム13側の面全体が、金属板41aの接触面41bに接触され、積層フィルム11が加熱される。
【0044】
曲げ部41は、金属板41aの長さ方向(フィルム移動方向)にみて離間した位置に配置された複数の湾曲部A〜Cを有する。各湾曲部A〜Cは、断面形状が円形又は楕円形であり、隣接する湾曲部(AとB、BとC)がそれぞれ直線経路41c、41dによって繋げられている。
【0045】
複数の湾曲部A〜Cは、それぞれの曲率が互いに異なっており、積層フィルム11を互いに異なる曲率で湾曲させる。具体的には、
図3に示すように、曲げ部41が有する複数の湾曲部A〜Cのうち、最下流位置の湾曲部Cで曲率が最も大きく、フィルム移動方向に対して内側により大きく曲げられた曲面となっている。また、中間位置の湾曲部Bでの曲率が最も小さく、より緩やかな曲面となっている。なお、本明細書において「曲率」とは、湾曲部A〜Cの頂点に内接する円の半径の逆数をいう。本実施形態では、曲げ部41により積層フィルム11を曲げる処理を、積層フィルム11のベースフィルム13側が内側になる方向についてのみ行う。湾曲部Cは、頂点Rよりも上流側のフィルム移動方向に沿った方向に延びる線分と、頂点Rよりも下流側のフィルム移動方向に沿った方向に延びる線分とが交差する角度が鋭角(例えば45°〜90°)をなしており、その先端部(頂点R)が丸みを帯びた形状を有している。
【0046】
なお、本実施形態では、金属板41aは、接触面41bが全体として曲面形状となっていればよい。例えば、曲げ部41は、湾曲部を1個のみ有し、接触面41bの面全体の断面形状が円形又は楕円形であってもよい。また、曲げ部41における湾曲部の数は3個に限らず、2個でもよく、4個以上であってもよい。複数の湾曲部の曲率については、一部が同じであってもよく、全部が同じであってもよい。複数の湾曲部における曲率が互いに異なっている場合、湾曲部と曲率との位置関係は
図3のものに限定されない。例えば、曲げ部41が3個の湾曲部を有する場合に、最上流位置の湾曲部の曲率が最も大きく、最下流位置で曲率が最も小さくてもよい。
【0047】
加熱部42は、金属板41aに内蔵された発熱体であり、通電によって金属板41aの接触面41bが所定温度となるように金属板41aを加熱する。この金属板41aに与えられた熱エネルギーが金属板41a上の積層フィルム11に伝達されることにより、積層フィルム11がベースフィルム13側から加熱される。加熱部42によって加熱する際の接触面41bの表面温度は、好ましくは80〜180℃であり、より好ましくは90〜150℃である。加熱部の通電制御は制御装置99によって実施される。
【0048】
なお、本実施形態では、発熱体が金属板41aに内蔵されている構成としたが、例えば金属板41aの外部に発熱体が配置されており、金属板41aを外側から加熱する構成としてもよい。また、加熱部42は発熱体に限らず、例えば振動を与えることによって加熱対象を加熱するものであってもよい。
【0049】
第1処理部40の下流側には、積層フィルム11を第1処理部40から第2処理部50へ案内するガイドローラ31が配置されている。ガイドローラ31は、壁板18から前方に向かって突出する円筒形状の部材であり、図示しない回転軸を中心にして回転可能となっている。ガイドローラ31は、熱せられた金属膜14及び離型剤が接触して付着するおそれがあるため、表面に細かい凹凸形状を設けるか、あるいはシリコン製など付着しにくい材料によって形成するとよい。ガイドローラ31の上端は、接触面41bの最下流位置でのフィルム高さよりも高い位置に配置されており、ガイドローラ31の上端に積層フィルム11が架け渡されている。また、フィルム供給部20において、巻回体12からの積層フィルム11の引き出し位置12aは、曲げ部41の接触面41bの最上流位置でのフィルム高さよりも低い位置に配置されている。積層フィルム11は、金属板41aの外側表面に巻き付けられた状態となり、ベースフィルム13が接触面41bに効率良く密着する。
【0050】
曲げ部41では、積層フィルム11がその移動方向に引っ張られた状態で、接触面41bにベースフィルム13側の面13aが接触される。本実施形態では、フィルム回収部90の回転速度(周速度V2)をフィルム供給部20の回転速度(周速度V1)よりも速くし、これらの回転速度差により、曲げ部41において積層フィルム11が密着しながら移動方向に引っ張られた状態としている。なお、周速度V1及び周速度2はそれぞれ、フィルム供給部20の巻回体12のロール表面での速度、フィルム回収部90の巻回体のロール表面での速度を意味する。
【0051】
曲げ部41には、積層フィルム11と接触面41bとが接触した状態と、積層フィルム11と接触面41bとが非接触の状態とを切り替える切替機構43が設けられている。
【0052】
具体的には、切替機構43は、空気の流れを形成するブロワ44と、金属板41aに設けられ、金属板41aの厚み方向に貫通する貫通穴45と、ブロワ44から送り出された空気を貫通穴45に導く送風通路46と、を備えている。ブロワ44は、所定温度の空気を送り出す送風機であり、制御装置99によりその駆動が制御される。貫通穴45は、所定径(例えば2〜5mm)を有する開口であり、金属板41aの面全体に、所定間隔で複数形成されている。
【0053】
送風通路46は、一方の端部がブロワ44に接続された主通路47と、主通路47の他方の端部から分岐する分岐通路48とを有し、分岐通路48の先端が、複数の貫通穴45のそれぞれに接続されている。ブロワ44が駆動されると、ブロワ44から送り出された空気が主通路47及び分岐通路48を経由して貫通穴45に導入され、貫通穴45の外部、すなわち積層フィルム11のベースフィルム13側の面13aに向かって供給される。ブロワ駆動に伴う送風により、積層フィルム11が接触面41bから浮いた状態になるようにブロワ風量が設定されている。
【0054】
なお、本実施形態では、送風通路46が主通路47と分岐通路48とを備え、分岐通路48が貫通穴45に接続される構成としたが、機械が停止した時に加熱した金属板41aの接触面41bに接触したまま積層フィルム11の移動が数秒でも停止した場合に、加熱した金属板41aの接触面41bの熱による積層フィルム11の変形や焼き付きを防止する機構であればよい。例えば、ブロワ44と貫通穴45とを接続する送風通路46が貫通穴45ごとに設けられており、各貫通穴45に対してブロワ44から送風される構成としてもよい。
【0055】
次に、第1処理部40の作用について
図1、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0056】
制御装置99により金属片製造装置10の運転が開始されると、フィルム供給部20から積層フィルム11が引き出され、曲げ部41に搬送される。曲げ部41では、
図4(a)に示すように、積層フィルム11のベースフィルム13側の表面が、金属板41aの曲面(接触面41b)に接触して接触面41bに対応する曲面形状とされた状態で、フィルム移動方向に引っ張られながら下流側に搬送される。
【0057】
このとき、第1処理部40において、加熱によって、剥離困難な水溶性の離型剤層15が軟化され、その軟化された状態でベースフィルム13側が内側となるように曲げられることで、積層フィルム内部に大きい歪みを生じさせることができる。また、積層フィルム11がフィルム移動方向に引っ張られながら下流側に移動されることでベースフィルム13が延伸され、積層フィルム内部にフィルム移動方向のずれ応力が作用することが重畳して、ベースフィルム13と離型剤層15との境界部分でフィルム移動方向のずれが起きる。こうした歪み効果と横ずれ効果との重畳と離型剤層15の軟化により、ベースフィルム13と離型剤層15との密着性を十分に低下させることができる。また、ベースフィルム13側の面13aを金属板41aの表面に接触させた状態で積層フィルム11を下流側に引っ張りながら移動させることによって、ベースフィルム13と金属板41aとの間に摩擦力が発生する。この摩擦力により、歪み効果、横ずれ効果及び離型剤層15の軟化をさらに高め、金属膜14に離型剤の少なくとも一部が付着した状態で、金属膜14のベースフィルム13からの剥離を容易にすることができる。
【0058】
金属膜14の剥がし処理を終了するべく、金属片製造装置10を運転状態から運転停止状態に切り替える場合には、制御装置99はまず、フィルム供給部20よりも下流側のフィルム移動機構の駆動を停止し、その後、フィルム供給部20の駆動を停止する。これにより、曲げ部41の上流側の積層フィルム11が弛むように引き出された状態にする。
【0059】
続いて、制御装置99はブロワ44を駆動し、積層フィルム11のベースフィルム13側に向けて、複数の貫通穴45の各々から空気を急速供給する。これにより、
図4(b)に示すように、積層フィルム11が金属板41aの表面から浮いた状態になり、積層フィルム11と金属板41aとが非接触の状態になって、積層フィルム11が加熱した金属板41aによる変形や焼き付きが防止される。
【0060】
金属片製造装置10の運転停止後暫くの間は、加熱部42の通電を停止した後も金属板41aが熱く、積層フィルム11の移動が停止された状態で積層フィルム11と金属板41aとを接触させたままの状態とすると、積層フィルム11が過熱によって変形したり焼き付きが生じたりするおそれがある。この点、切替機構43を備える本システムによれば、制御装置99によって積層フィルム11の移動を停止した場合には、積層フィルム11と金属板41aとを非接触の状態に切り替えることができ、積層フィルム11の過熱による変形や焼き付きが防止される。
【0061】
次に、第2処理部50の構成について、
図1に加え、
図5〜
図7を用いて説明する。第2処理部50は、積層フィルム11の金属膜14側の面に対し、第1方向に延びる切込みを形成する第1切込み部51と、第1方向とは異なる第2方向に延びる切込みを形成する第2切込み部52と、を備えている。
【0062】
第1切込み部51は、積層フィルム11を挟んで配置された一対の回転体を備えており、当該一対の回転体として、金属膜14側に配置された第1ローラ56と、ベースフィルム13側に配置された第2ローラ57とを備えている。
【0063】
第1ローラ56は、壁板18から前方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回転軸58を中心にして回転可能になっている。回転軸58にはモータ59が取り付けられており、制御装置99によってモータ59の駆動が制御される。これにより、第1ローラ56が周方向に回転駆動される。なお、モータ59は、第1ローラ56の回転を継続させるための補助的な駆動源であり、曲げ部41において積層フィルム11が引っ張られている状態が維持されるように(例えば、周速度V2となるように)回転軸58に回転トルクを付与している(第2切込み部52についても同じ)。
【0064】
第1ローラ56の外周面には、所定幅θ1(例えば1.5〜2mm程度)の刃部55が周方向に複数設けられている。各刃部55は、所定高さ(例えば5mm〜15mm程度)を有し、第1ローラ56の外周面54の面全体において、刃部55の幅方向とフィルム移動方向とが一致するように、回転軸方向及び周方向にそれぞれ規則的に所定間隔(例えば1.5〜2mm程度)を設けて並べて配置されている(
図5参照)。なお、
図5では便宜上、刃部55の一部を点線で示すことにより、刃部55の一部の図示を省略している(第2切込み部52についても同じ)。
【0065】
第2ローラ57は、壁板18から前方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回転軸を中心にして回転可能となっている。第2ローラ57の外周面には、第1ローラ56の各刃部55に対応する位置に各刃部55が入り込むように形成された凹み部62が、第2ローラ57の外周面全体に複数配置されている。凹み部62は、刃部55の幅及び形状に合わせて、断面形状が台形状、四角形状等となっている。刃部55が凹み部62に入り込んだ状態では、
図7(a)に示すように、刃部55の先端部が凹み部62の上面62aに非接触の状態となるように凹み部62の深さが定められている。なお、
図7(a)において、刃部55はフィルム幅方向に直交する方向に延びている。
【0066】
第2切込み部52は、積層フィルム11を挟んで配置された一対の回転体を備えており、当該一対の回転体として、金属膜14側に配置された第1ローラ64と、ベースフィルム13側に配置された第2ローラ65とを備えている。
【0067】
第1ローラ64は、壁板18から前方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回転軸66を中心にして回転可能になっている。回転軸66にはモータ67が取り付けられており、制御装置99によってモータ67の駆動が制御されることにより、第1ローラ64が周方向に回転駆動される。
【0068】
第1ローラ64の外周面には、所定幅θ2(例えば1.5〜2mm程度)の刃部63が周方向に複数設けられている。各刃部63は、所定高さ(例えば5mm〜15mm程度)を有する。各刃部63は、
図5に示すように、第1ローラ64の外周面の面全体において、刃部55の幅方向とフィルム幅方向とが一致するように、回転軸方向及び周方向にそれぞれ規則的に所定間隔(例えば1.5〜2mm程度)を設けて並べて配置されている。刃部63は、第1切込み部51の第1ローラ56と第2ローラ57とによってミシン目状に断続的にカットしたラインと交差して十字形状にカットするように設けられており、積層フィルム11を金属膜14側から断続的に十字形状に緻密に微細状(例えば、1.5mm角〜2mm角)にカットする。
【0069】
第2ローラ65は、壁板18から前方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回転軸を中心にして回転可能となっている。第2ローラ65の外周面には、外周面から内側に凹む凹み部68が複数設けられている。凹み部68は、第1ローラ64の各刃部63に対応する位置に、各刃部63が入り込むように形成されており、第2ローラ65の外周面全体に複数配置されている。凹み部68は、刃部63の幅及び形状に合わせて、断面形状が台形状、四角形状等となっている。刃部63が凹み部68に入り込んだ状態では、
図7(b)に示すように、刃部63の先端部が凹み部68の上面68aに非接触の状態となるように凹み部68の深さが定められている。なお、
図7(b)において、刃部63はフィルム移動方向に直交する方向に延びている。
【0070】
次に、第2処理部50の作用について
図1、
図5〜
図7を参照しながら説明する。
【0071】
第1切込み部51において、第1ローラ56と第2ローラ57との間はフィルム移動経路となっており、第1ローラ56の刃部55と第2ローラ57の凹み部62とが最も近接する位置では、
図7(a)に示すように、刃部55と凹み部62との間に積層フィルム11が挟み込まれる。
【0072】
モータ59の回転駆動により、第1ローラ56が回転軸58を中心にフィルム移動方向に回転されると、これに伴い第2ローラ57がフィルム移動方向に回転する。これら2つのローラ56、57の回転に伴い、刃部55が凹み部62に入り込み、刃部55が積層フィルム11を金属膜14側から押圧する。これにより、積層フィルム11の金属膜14側の面全体に、フィルム移動方向に延びる断続的な切込み14a(例えば、ミシン目状の切込み)が形成される。本実施形態では、ベースフィルム13の厚み方向の途中まで刃部55を進入させるハーフカットにより、フィルム移動方向(フィルム長さ方向)に沿って断続的な切込み14aを離型剤層15と金属膜14に形成する。このため、切込み14aを入れた離型剤層15及び金属膜14はバラバラに飛散せず、離型剤層15と金属膜14がベースフィルム13に担持された状態が保持される。
【0073】
続いて、第2切込み部52では、第1ローラ64と第2ローラ65との間を積層フィルム11が通過する。第1ローラ64がフィルム移動方向に回転駆動されると、第2ローラ65がフィルム移動方向に回転され、刃部63と凹み部68とが最も近接する位置では、
図7(b)に示すように、刃部63と凹み部68との間に積層フィルム11が挟み込まれる。
【0074】
第1ローラ64及び第2ローラ65の回転に伴い、刃部63が凹み部68に入り込み、刃部63が積層フィルム11を金属膜14側から押圧する。これにより、積層フィルム11の金属膜14側の面全体に、フィルム幅方向に延びる断続的な切込み14b(例えば、ミシン目状の切込み)が形成される。本実施形態では、第1切込み部51と同様、ベースフィルム13の厚み方向の途中まで刃部63を進入させるハーフカットにより、フィルム幅方向に沿って断続的な切込み14bを離型剤層15及び金属膜14に形成する。このとき、第1切込み部51によってフィルム移動方向(フィルム長さ方向)に延びる方向に形成される切込み14aと、第2切込み部52によってフィルム幅方向に延びる方向に形成される切込み14bとが交差するように、積層フィルム11の長さ方向及び幅方向にミシン目状の切込みを入れる(
図6参照)。
【0075】
積層フィルム11が第2切込み部52を通過するときには、積層フィルム11の金属膜14側の面には、第1切込み部51によってフィルム移動方向に長い切込みが断続的に複数形成されている。そのため、第2切込み部52において、刃部63によって積層フィルム11が金属膜14側から押圧されると、第1切込み部51によって形成された切込み14aの部分で、離型剤層15が金属膜14に付着したままの状態で浮き上がりやすい。こうした離型剤層15と金属膜14の浮き上がりによっても、離型剤層15とベースフィルム13との密着性を低下させることができ、その後の剥離工程において、金属膜14に離型剤が付着した状態で金属膜14を剥離することがより容易になる。
【0076】
前処理部30において、第1処理部40と第2処理部50との間には、積層フィルム11に光を照射する光照射部35が設けられている。光照射部35は、積層フィルム11の金属膜14側の面に対向する位置に配置されており、金属膜14表面に対して光を照射する。本実施形態では、
図1に示すように、複数の照明灯36がフィルム移動方向に沿って並べて配置されている。照明灯36の各々は長尺形状であり、壁板18から前方に向かう方向に延びた状態で壁板18の前面18aに取り付けられている。照明灯36には、その上面に紫外線ランプが取り付けられており、積層フィルム11の下方から金属膜14に向けて紫外光を照射する。照明灯36から照射される紫外線の波長は、例えば200〜300nmである。
【0077】
フィルム移動経路において、光照射部35によって金属膜14に光が照射されると、金属膜14を構成する銀ナノ粒子において表面プラズモン共鳴が励起されて、発熱とイオン放出が促進される。この発熱によって離型剤層15とベースフィルム13との境界付近が加熱され、離型剤層15の軟化が促進されることで、ベースフィルム13と離型剤層15との密着性をさらに低下させることが可能となる。
【0078】
なお、ベースフィルム13が透明樹脂で形成されている場合には、光照射部35をベースフィルム13側に配置し、積層フィルム11に対してベースフィルム13側から光を照射してもよい。この場合、光はベースフィルム13を透過して金属膜14に照射され、銀粒子のプラズモン共鳴の励起により熱を発生して、金属膜14に光を直接照射する場合と同様の効果が得られる。金属膜14に照射される光は、照明光に替えて自然光としてもよい。
【0079】
前処理部30の上流側及び下流側には、壁板18から前方に向かって突出する円筒状のガイドローラ32、33がそれぞれ配置されている。ガイドローラ32、33の上端は、第1切込み部51の第1ローラ56と第2ローラ57との接触面、及び第2切込み部52の第1ローラ64と第2ローラ65との接触面と略同じ高さに位置している。積層フィルム11は、前処理部30の下流側に配置されたガイドローラ33によってフィルム移動方向が水平方向から下方向に変えられて、剥がし機構70へと誘導される。ガイドローラ32、33には、金属板41aによって熱せられた金属膜14が接触されるため、付着防止のためにガイドローラ32、33の表面を凹凸状に形成するか、又は材質にシリコンなどを用いて形成するとよい。
【0080】
(剥がし機構70)
次に、剥がし機構70の構成について、
図1、
図8及び
図9を用いて詳細に説明する。なお、
図8は、壁板18の前面18aに沿った方向の断面図に相当する。
【0081】
剥がし機構70は、
図1及び
図8に示すように、積層フィルム11の移動経路を内部空間に有するフィルム移動部71と、ベースフィルム13から剥がした金属片を回収する回収容器72と、を備えている。
【0082】
フィルム移動部71は、断面が略半円形状の中空体であり、下方に凸となる曲面を有する側板73と、側板73の上部を覆う上板74とを備えている。側板73は、壁板18から前方に向かって突出した状態で壁板18の前面18aに取り付けられ、上板74は、側板73の左右を架け渡した状態で側板73の上部に取り付けられている。これら側板73及び上板74と壁板18とによって囲まれた空間に、積層フィルム11の移動経路が形成されている。
【0083】
上板74の下面には、下方に凸となる曲面によって外周面が形成されている基部75が設けられている。基部75の外周面75aには、その外周面75aから突出する突起76(例えば、高さ20mmの突起)が、周方向に所定間隔をあけて(例えば90mm間隔で)複数設けられている。突起76は、壁板18から前方に向かう方向に沿って延びる突条部であり、壁板18から前方に向かう方向の全域に亘って延びている。各突起76の先端は曲面となっている。
【0084】
複数の突起76には、隣り合う2つの突起76の間に積層フィルム11が架け渡されており、複数の突起76の先端を繋ぐ経路にフィルム移動経路が形成されている。積層フィルム11は、複数の突起76の各先端にベースフィルム13側の面13aを接触させた状態で配置されている。
図8中、矢印Pは積層フィルム11の移動方向を示す。
【0085】
なお、突起76を突条部としたが、例えば、フィルム幅方向に沿って並べて配置された複数の突起によって構成されていてもよい。この場合、20mm〜50mm幅を3mm〜5mm間隔に形成した突起としてもよい。
【0086】
フィルム移動部71において、積層フィルム11の金属膜14側の面に対向する位置には、外周面に刃部83を有する刃付きローラ80が設けられている。刃付きローラ80は、壁板18から前方に向かって突出する円筒形状のローラ本体81と、ローラ本体81の外周面に配置された刃部83と、を備えている。
【0087】
ローラ本体81は、壁板18に取り付けられた回転軸81aを中心に回転可能になっている。回転軸81aにはモータ84が取り付けられており、制御装置99によってモータ84の駆動が制御され、ローラ本体81が周方向に回転駆動される。本実施形態では、積層フィルム11の移動方向とは逆方向にローラ本体81が回転可能になっている。
【0088】
刃部83は、積層フィルム11の幅方向に沿った方向に延びる薄刃であり、本実施形態では、その刃先がフィルム幅方向の全域に亘って延びている。本実施形態の刃部83は、刃の先端が断面にカットされ角が90°に形成された薄刃である。ローラ本体81の外周面には刃部83が複数配置されており、それら複数の刃部83が、ローラ本体81の外周面全体に亘って周方向に所定間隔で配置されている。
【0089】
刃付きローラ80は、
図9に示すように、刃部83が基部75の外周面75aに対向する位置において、刃部83の刃先が積層フィルム11の金属膜14側の面に接触し、かつ基部75の外周面75aには非接触の状態となるように配置されている。本実施形態では、基部75の外周面75aから突起76の高さの3分の2程度の位置に刃先が到達するように、刃付きローラ80が壁板18に取り付けられている。これにより、刃付きローラ80が回転した状態では、刃部83は、その刃先で積層フィルム11の金属膜14側の面を擦るようにして積層フィルム11に接触する。刃付きローラ80は、隣り合う2つの突起76の間に1個ずつ配置されている。本実施形態では、突起76の高さを20mm、突起76と突起76の間隔を90mmに設定することにより、刃付きローラ80が回転して突起76の高さの中程まで積層フィルム11を押さえ込んで回転しても、刃部83の先端が基部75の外周面75a面に接触しないようになっている。
【0090】
なお、刃付きローラ80の数は特に限定されず、例えば、隣り合う2つの突起76の高さを40mmに形成して突起76と突起76との間に刃付きローラ80を複数個ずつ配置してもよい。また、隣り合う2つの突起76の間で刃付きローラ80の数を異ならせてもよい。例えば、隣り合う2つの突起76の間の空間につき、刃付きローラ80を設ける空間と設けない空間とを有するようにしてもよい。
【0091】
フィルム移動部71には、回収容器72に向かう方向への空気の流れを形成する送風機構77が設けられている。送風機構77は例えばブロワであり、ブロワに設けられた複数の小孔77aから回収容器72に向かう方向へ空気を送り出す。これにより、ベースフィルム13から剥がした金属片を効率良く回収容器72に回収する。本実施形態では、壁板18に送風機構77が取り付けられており、壁板18の前方に向けて小孔77aから冷風を送り出す。
【0092】
回収容器72は中空容器であり、回収容器72の上面に設けられた開口と、側板73に設けられた開口とが吸引装置78によって連通された状態で側板73の下方に取り付けられている。本実施形態では、回収容器72の上面及び側板73のそれぞれに複数個の開口が設けられており、それぞれの開口が吸引装置78で連結されている。
【0093】
吸引装置78は、例えばエジェクタ式、歯車式、ピストン式等のバキューム装置であり、フィルム移動部71の内部に負圧を発生させ、ベースフィルム13から剥がした金属片を効率良く回収容器72に回収する。回収容器72は、吸引装置78に対して着脱可能であり、回収容器72を吸引装置78から取り外すことによって、回収容器72内に回収した金属片を取出し可能になっている。
【0094】
剥がし機構70の下流側には、壁板18から前方に向かって突出する円筒状のガイドローラ94、95が配置されている。ガイドローラ94,95は、回転軸を中心として、フィルム移動方向に回転可能になっている。離型剤が付着した状態の金属膜14を剥がした後のベースフィルム13は、ガイドローラ94、95によって誘導されて、最終的にフィルム回収部90に回収される。なお、本実施形態では、ベースフィルム13から剥がし取られた後の金属膜14には、離型剤層15の全体がベースフィルム13から剥がされて金属膜14に付着した状態になっている。ただし、離型剤層15の一部がベースフィルム13から剥がされて金属膜14に付着した状態になっていてもよい。
【0095】
次に、剥がし機構70の作用について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
【0096】
剥がし機構70において、前処理部30を通過した積層フィルム11は、
図8に示すように、複数の突起76によって、基部75の外周面75aから浮いた状態で下流側に搬送される。このとき、積層フィルム11には、モータ93によって移動方向に引っ張られることで張力が作用する。この引っ張られた状態で移動中の積層フィルム11に対し、刃付きローラ80の各刃部83の刃先が、フィルム移動方向とは逆方向に回転しながら金属膜14側の面を擦るように接触する。これにより、ベースフィルム13から金属を叩き出すようにして、ベースフィルム13から、離型剤が金属膜14に付着した状態で金属膜14が剥がし取られる。本実施形態では、金属膜14としての銀薄膜に離型剤が付着した状態で剥がされることにより、離型剤が付着して凝集しにくい銀粉が得られる。
【0097】
剥がし機構70を通過する積層フィルム11には、第1処理部40によって積層フィルム11を加熱しながら湾曲させる処理が施され、紫外線によってさらに加熱され、さらに第2処理部50によって積層フィルム11に切込みを入れる処理が施されている。そのため、積層フィルム11の金属膜14側の面に対して、刃部83の刃先を擦るように接触させ、金属膜片を叩き出すようにすることで、離型剤が一方の面に付着した金属膜14がバラバラの状態でベースフィルム13から剥がされる。
【0098】
ここで、本明細書において「バラバラな状態に剥がす」とは、ベースフィルム13から剥がした後の一切れあたりの金属の大きさが、剥がす前の金属膜14の大きさよりも小さくなるようにベースフィルム13から金属膜14を剥がすことを意味する。具体的には、剥がす前の金属膜14の大きさの50分の1以下になるように剥がすことが好ましく、100分の1以下になるように剥がすことがより好ましい。剥がした後の離型剤層15と金属膜14との積層体の大きさは、10nm〜2mmの大小混合した金属片であることが好ましい。積層体の大きさは、1mm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。得られる金属片(本実施形態では銀粉)の形状は特に限定されず、例えば扁平状、粉末状等である。
【0099】
なお、銀ナノ粒子の10nm〜100nmを抗生物質と一緒に摂取すると、抗生物質が菌細胞内部に入って殺菌する確率が10倍〜1000倍となるための銀ナノ粒子の製法は、金属片製造装置10によって得られた金属片を、別工程のナノ粉砕機で数分という短時間で銀ナノ粒子が形成される。
【0100】
また、刃付きローラ80によって金属膜14を剥がす際には、外周面75a面に形成した突起76によって浮いた状態の積層フィルム11に対して刃部83の刃先を接触させるため、外周面75aや突起76に刃先が接触して刃先が破損してしまうことを抑制することができる。また、突起76の先端は曲面であるため、複数の突起76の先端によってフィルム移動経路を形成する構成において、モータ93の回転駆動によって積層フィルム11を下流側へスムーズに移動させることができる。
【0101】
<金属膜の剥がし方法及び金属片の製造方法>
本実施形態の剥がし方法は、以下の曲げ工程を含む。また、本実施形態の金属片の製造方法は、以下の曲げ工程と剥がし工程とを含む。
曲げ工程:ベースフィルム13から、金属膜14に離型剤が付着した状態で金属膜14を剥がす前に、加熱中の積層フィルム11を、ベースフィルム13側の面13aが内側に曲げられた状態となるように曲げる工程。
剥がし工程:所定間隔をあけて設けられた複数の突起76の各先端とベースフィルム13側の面13aとが接触するように複数の突起76の間に架け渡された状態の積層フィルム11の金属膜14側の面と、積層フィルム11の金属膜14側の面に対向する位置に配置され外周面に複数の刃部83を有する刃付きローラ80における刃部83の刃先と、を接触させることにより、金属膜14に離型剤が付着した状態で金属膜14をバラバラな状態に剥がす工程。
【0102】
金属膜の剥がし方法及び金属片の製造方法については、上述した金属片製造装置10を用いることによって実施することができる。曲げ工程及び剥がし工程については、上述した第1処理部40及び剥がし機構70の説明がそれぞれ適用される。
【0103】
<金属片>
金属片製造装置10によれば、ベースフィルム13上に形成された離型剤層15及び金属膜14を乾燥した状態のまま一緒に剥がすことにより、薄膜状、粉末状又はこれらの混合物の金属片として、銀粉や金粉といった金属粉を製造することができる。得られる金属片の大きさは、第2処理部50よって形成する切込みの大きさや、刃付きローラ80の刃数等によって適宜設定できるが、例えば0.5nm〜2mm程度である。また、金属片の厚みは、ベースフィルム13上に形成した離型剤層15及び金属膜14の厚みに準じ、例えば3〜5μmである。金属片製造装置10によれば、厚さがマイクロメートルオーダーの金属薄膜であっても、乾燥した状態のままで金属片を回収でき、銀粉や金粉等の極薄の凝集しにくい金属粉を得ることができる。
【0104】
金属片製造装置10によって得られた金属片をナノ粉砕機によって粉砕することにより、10nm〜100nmの銀や金等の極薄膜ナノ微粒子を得ることができる。10nm〜30nmの銀ナノ微粒子は、抗生物質錠剤の外側周りやカプセル剤、注射剤、透析用消毒剤に5〜10ppbの極微量濃度を付着あるいは混入するだけで、多剤耐性菌を死滅させることが可能である。また、抗生物質の効力を10倍〜1000倍にする添加剤になり得る。10nm〜30nmの大きさの銀のナノ微粒子は、グラム陰性菌、グラム陽性菌、MRSA、サルモネラ菌、プロテウス菌、レジオネラ菌、緑膿菌、白癬菌、変性ノロウイルス、麻疹ウイルス、結核菌、ペスト菌、インフルエンザウイルス、SARSウイルス、風疹ウイルス、肺炎ウイルス等に対し、銀ナノ微粒子が消滅しない限り、銀ナノ微粒子に光が照射され、永久にプラズモン共鳴が励起されて熱を発生して殺菌作用が継続し持続される。
【0105】
回収した金属片は、そのまま各種用途に用いてもよいし、例えば高速ミキサー、ナノ粉砕機等で所望の大きさ(例えば、3nm〜300μm)に揃える処理を行い、その後、各種用途に用いてもよい。得られた金属片については、低温保存したり、乾燥剤で乾燥状態を保持したりすることによって金属片の凝集を抑制するとよい。
【0106】
金属片製造装置10により得られた金属片は、乾燥した状態のまま、単独で又は他の固体物と混合して使用してもよく、液体に含有させた状態で使用してもよい。使用する液体は特に限定されず、例えば水、化粧液、飲料水、調味料、医薬用液体等の各種分散媒が挙げられる。当該液体は、保存安定性の観点では、金属片を不溶であることが好ましい。また、得られた金属片を、高圧の空気等のガスとともに容器に充填し、対象物に噴射する使用方式に適用してもよい。
【0107】
金属片製造装置10により得られた金属片は、乾燥した状態のまま移送できるため、包装形態が簡略に済み、また安全で安価に全世界へ配布できる。キトサンとの併用は強い抗菌性があり、銀ナノ微粒子の大きさが10nm〜30nmに形成し、錠剤の周囲に付着したり液状薬剤に混合したりして薬剤と同時に摂取すると、例えば医学界で現在深刻な多剤耐性菌、OXA−48を産生する肺炎桿菌による血流感染症、コンプロマイズドホスト、ペスト菌の耐性菌、狂犬病ウイルス、あるいは変異ノロウイルス等の抗菌薬、治療薬、ワクチンがない病原菌に、10nm〜30nmの銀イオンの触媒作用で溶存酸素が活性酸素に変化する、その活性酸素により細胞壁が壊されて、細菌、ウイルスを死滅させる療法やそれらの細菌、ウイルスの蔓延阻止に使用してもよい。使用する薬剤は特に限定しない。その他にも水、化粧液、飲料水、調味料、噛みタバコ、医薬用液体等の各種分散媒として広範に渡って殺菌剤としての利用が挙げられる。あるいは、銀ナノ微粒子は5〜10ppbの極微量濃度で細菌、ウイルスを死滅させる効力がある。例えば水泳プールの中へ僅かさじ一杯の銀ナノ微粒子を入れるだけで、大腸菌、黄色ブドウ球菌の絶滅を計ることも可能である。当該銀ナノ微粒子は、保存安定性、効力継続性の観点では、金属片が不溶で変質しないことが好ましい。また、得られた10nm〜1mm角の銀粉を、高圧の圧縮空気とともに容器に充填し、対象物に噴射するための製品としてもよい。例えば鳥インフルエンザ対策として、鶏舎及び近辺に銀粉を噴霧しておくと、空気中の水分により銀イオンとして溶出する抗菌作用により、光の当たらない鶏舎の隅々、周りの鳥が止まる森林の枝にまで銀粉を付着させることができ、鳥がもたらす鳥インフルエンザ菌の蔓延を抑制することが可能となる。
【0108】
金属片製造装置10を用いて得られる金属片は、食用、医療用、工業用等の殺菌作用を含め種々の用途に適用することができる。例えば、穀物類、麺類、パン類、煮物、焼きもの、揚げもの、炒めもの、大豆製品、乾物、調味料、製菓材料等の各種食品を製造若しくは調理する過程で、又は調理後の食品に対して、混ぜたりふりかけたりして使用するための食用製品、または石鹸、洗剤、消毒剤、化粧品、制汗剤、消臭剤等の生活用品;和紙、不織布、合成紙等の紙又は布製品;抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、解熱鎮痛剤、抗アレルギー剤、鎮咳去痰薬、抗リウマチ剤、降圧剤、向精神薬等の各種医薬;金属片を構成する金属成分による薬効の発揮を目的とする健康補助食品;工芸用材料、等の各種用途に適用することができる。金属膜14が銀の薄膜である場合、銀による殺菌効果を期待でき、食用をはじめとする上記各種用途に適用可能である。
【0109】
凝集防止用の離型剤層15と金属膜14の積層体の銀の薄膜片の場合、銀の高度な光反射率によるプラズモン共鳴励起による殺菌効果の学術論文は世界的に証明され、天然食材の銀の殺菌剤としての使用が奨励されている。食用をはじめとする上記各種用途にも適用可能である。現況の銀粉、銀ナノ微粒子が十分に普及されないのは、乾燥状態で裏面に凝集防止用の水溶性極薄膜の離型剤が介在する銀粉の量産製造技術がなかったためであると考えられる。特に医薬品への使用には、水、アルコールを混入した製造方法の銀微粒子は最も回避したい重要な要件であった。アルコール混入の回避はハラルにも対処できる食材となり得る。
【0110】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0111】
ベースフィルム13から、金属膜14に離型剤が付着した状態で金属膜14を剥がす前に、加熱部42によって積層フィルム11を加熱しながら、ベースフィルム13側が内側に曲げられた状態となるように積層フィルム11を曲げる曲げ処理を行う構成とした。加熱によって離型剤層15が軟化され、その軟化された状態でベースフィルム13側が内側となるように積層フィルム11が曲げられることにより、積層フィルムのベースフィルム13側より外周面側の離型剤層及び金属膜14側に大きい歪みを生じさせることができる。これにより、ベースフィルム13と離型剤層15との密着性を低下させることができ、その後の剥がし工程においてベースフィルム13から、金属膜14に離型剤が付着した状態で金属膜14を剥がしやすくすることができる。また、積層フィルム11を加熱しながら曲げるため、ベースフィルム13側がより歪みやすく、歪み効果による密着性低下の効果をより高めることができる。
【0112】
曲げ部41では、フィルム移動方向に引っ張られた状態の積層フィルム11と、接触面41bとを接触させることにより、ベースフィルム13側の面13aが内側に曲げられた状態となるように積層フィルム11を湾曲させる構成とした。積層フィルム11が移動方向に引っ張られた状態で積層フィルム11を接触面41bに接触させることにより、ベースフィルム13と離型剤層15との境界でフィルム移動方向のずれが起きやすく、ベースフィルム13と離型剤層15との密着性をより低下させることができる。
【0113】
曲げ処理として、積層フィルム11を湾曲部A〜Cで湾曲させる処理を行うため、積層フィルム11が破れにくく、また、下流側への移動を滑らかに行わせることができる。またさらに、金属膜14については、曲げ部41ではベースフィルム13の外側に配置されているため、フィルム移動方向への引っ張りにより弛みにくく、金属膜14に皺が発生したり金属膜14同士がくっついてしまったりすることを抑制することができる。これにより、厚みが薄くかつ均一な金属片を製造することができる。また、湾曲部Cは、頂点Rよりも上流側のフィルム移動方向を示す線分と、頂点Rよりも下流側のフィルム移動方向を示す線分とが交差する角度が鋭角をなしており、その先端部が丸みを帯びた形状を有しているため、積層フィルム11がより大きく湾曲され、ベースフィルム13と離型剤層15との密着性をより低下させることができる。
【0114】
また、曲げ部41は、フィルム移動方向にみて離間した位置に、積層フィルム11を加熱しながら互いに異なる曲率で湾曲させる部分を有しているため、積層フィルム11内部においてベースフィルム13側の歪みをより大きくでき、その結果、ベースフィルム13から、離型剤が付着した状態で金属膜14をより剥がれやすくすることができる。
【0115】
加熱部42によって接触面41bの面全体を加熱し、積層フィルム11のベースフィルム13側の面の全体を接触面41bに加熱しながら接触させる構成とした。この構成によれば、積層フィルム11のベースフィルム13側の面全体に熱が万遍なく行き渡り、離型剤層15の軟化をフィルム面全体に生じさせることができる。また、ベースフィルム13側から加えた熱が金属膜14によって遮蔽されることで、積層フィルム11内部に熱が籠りやすく、低温加熱によっても離型剤層15の軟化を促すことができる。
【0116】
また、積層フィルム11の移動に伴い、積層フィルム11の面全体と接触面41bとの間に発生する摩擦力により、ベースフィルム13と離型剤層15との境界で、フィルム移動方向のずれの差をより生じやすくすることができる。さらに、加熱部42による加熱と摩擦熱とによって、離型剤層15の軟化を積層フィルム11の全体に直接的に促すことができる。これにより、加熱部42による加熱の温度を低く設定でき、ベースフィルム13及び金属膜14の保護を図ることができる。また、金属片製造装置10の運転に伴う消費エネルギー低減の観点からも好適である。
【0117】
積層フィルム11と接触面41bとの接触/非接触を切り替える切替機構43を設けた。この構成によれば、装置が停止した場合に、積層フィルム11の一部の領域で加熱部42による加熱が継続されないようにすることができる。これにより、積層フィルム11の過熱による変形や焼き付きを抑制することができる。また、切替機構43につき、送風機から空気を供給することによって、積層フィルム11と接触面41bとを非接触の状態にする構成としたため、積層フィルム11を傷付けないようにしつつ熱からの保護を図ることができる。
【0118】
ベースフィルム13から、離型剤が付着した状態で金属膜14をバラバラな状態に剥がして金属片を得るため、金属片の製造に際して、金属片を乾燥させる乾燥工程を設けなくて済む。また、得られた金属片の表面には離型剤が付着しているため、銀箔等の金属箔を細かくして金属片を製造する方法や、キャリアフィルムとしての不織布と共に溶解して混濁溶液から金属片を取り出し乾燥することにより金属片を製造する方法に比べて、金属片同士の凝集が抑制されており、金属膜14の取り扱い性に優れ、大量生産に適している。したがって、金属片製造装置10によれば、乾燥した状態の凝集抑制された金属片を高い生産効率で製造でき、単価の安い乾燥状態の金属片を得ることができる。
【0119】
剥がし機構70によってベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14を剥がす前には、第1処理部40による前処理が施されているため、積層フィルム11の金属膜14側の面を強く擦らなくても、刃付きローラ80を回転させながら刃部83の刃先を接触させるという簡便な操作によって、ベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14を剥がすことができる。このとき、複数の突起76によって浮いた状態の積層フィルム11に刃部83を接触させるため、周辺の金属部位から刃先が離れており、刃部83の損傷を防ぐことができる。これにより、得られる金属片に刃部83の欠片が混入しないようにすることができ、食用や医療用でも安全に使用することができる。
【0120】
剥がし機構70につき、下に凸の曲面を有する外周面75aに複数の突起76を設けたため、積層フィルム11が下流側に搬送されているときには積層フィルム11が引っ張られた状態になり、この引っ張りにより、金属膜14側において、刃付きローラ80の回転によって刃部83の刃先を逆回転させながら接触させても、積層フィルム11のがたつきを抑制することができる。また、複数の突起76を平面に設ける場合に比べて金属片製造装置10のコンパクト化を図ることができる。
【0121】
ベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14を剥がす前に、積層フィルム11の金属膜14側の面に対して、当該面に沿った方向に延びる断続的な切込みを形成する機構として第2処理部50を設けた。この構成によれば、その後の剥がし工程でベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14を剥がしやすくしつつ、ベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14を剥がす前に、これらがバラバラに飛散しないようにすることができる。これにより、金属片の製造を容易にしつつ、金属片の回収効率をより高くすることができる。
【0122】
第2処理部50では、第1切込み部51の第1ローラ56の刃部55と、第2ローラ57の凹み部62との間に積層フィルム11を通して、金属膜14側の面に複数の切込みを形成し、また、第2切込み部52の第1ローラ64の刃部63と、第2ローラ65の凹み部68との間に積層フィルム11を通して、金属膜14側の面に複数の切込みを形成した。積層フィルム11に切込みを形成する際には、第1ローラ56,64の刃部55,63が、第2ローラ57,65の凹み部62,68に入り込むことにより、切込みと切込みとの間において離型剤層15及び金属膜14を浮き上がらせやすくすることができ、離型剤層15及び金属膜14をベースフィルム13から剥がしやすくすることができる。
【0123】
また、第2切込み部52によって積層フィルム11の下流側へ移動する流れに対して直交する方向に切込みを形成する前に、第1切込み部51によって積層フィルム11上に第1方向に延びる切込みを形成しているため、第2切込み部52の第1ローラ64の刃部63が凹み部68に入り込んだときには、第1切込み部51によって形成した切込みの部分で離型剤層15及び金属膜14が浮き上がりやすい。これにより、離型剤層15及び金属膜14をベースフィルム13からより剥がしやすくすることができる。また、ベースフィルム13に与えるダメージを極力少なくしつつ、金属膜14を、離型剤が付着した状態でかつ乾燥した状態でベースフィルム13から剥がし取ることができる。
【0124】
曲げ部41の下流側に光照射部35を設けた。これにより、光照射によって積層フィルム11をさらに加熱することができ、離型剤層15の軟化を促進させることができる。また、ナノ単位の金属粒子からなる薄膜によって金属膜14を形成してあるため、金属膜14に光が照射されることによって、金属膜14を構成する金属ナノ粒子の表面でプラズモン共鳴が励起され、熱が発生する。特に銀の場合は、98%の反射率によるプラズモン共鳴励起の発熱の効率は良好である。これにより、離型剤層15の軟化を一層促進させることができる。また、金属膜14は、スパッタ蒸着により離型剤層15上に形成されているため、離型剤層15との密着性が高く、金属膜14に離型剤が付着した状態で剥がれやすく、より凝集しにくい金属片を得ることができる。
【0125】
積層フィルム11として、ベースフィルム13と金属膜14との間の離型剤層15が、軟化が困難な水溶性離型剤であるHPMCによって形成されている積層フィルムを使用した。これによれば、金属膜14に積層した水溶性離型剤膜HPMCは、ベースフィルム13の表面上で軟化が困難な離型剤ながら、薄膜は医療薬に使用しても安全かつ安心感があり、薄膜状でも強靭で金属膜14に付着する量を少量に抑制することができる。金属膜14以外の付着物を極力避けるため、安全安心を得るために敢えて軟化困難で剥離が困難な水溶性の離型剤層15にHPMCを使用した。また、金属膜14が剥がれた際に、離型剤が金属膜14の表面に付着した状態となることにより、ベースフィルム13から剥がした後の金属薄膜片が薄膜でも凝集しにくくなるようにすることができる。
【0126】
また、ロール巻きの積層フィルムを用いた生産方式であるため、離型剤が付着し凝集しにくい金属片の大量生産に適している。
【0127】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0128】
・第1処理部40において、加熱部42によって積層フィルム11を加熱しながら、ベースフィルム13側の面が内側になるように曲げたが、加熱部42によって加熱した直後の積層フィルム11を、ベースフィルム13側の面が内側になるように曲げてもよい。ここで、「加熱した直後」とは、加熱部42による加熱によって離型剤層15が軟化された状態が継続している期間をいう。具体的には、積層フィルム11が加熱前よりも高温の状態である期間を表すものである。
【0129】
・上記実施形態では、曲げ部41が湾曲部A〜Cを有する構成としたが、積層フィルム11を屈曲させる屈曲部を有する構成としてもよい。一例としては、
図10に示すように、曲げ部41は、複数の屈曲部D〜Fを有し、これら複数の屈曲部D〜Fがフィルム移動方向にみて離間した位置に配置されている。各屈曲部D〜Fには、フィルム移動方向に沿って鈍角に折れ曲がる角部が形成されている。
図10の例では、屈曲部D〜Fのうち上流側に配置された屈曲部D、及び中間位置に配置された屈曲部Eには、それぞれ2個の角部(D1及びD2、E1及びE2)が形成され、下流側に配置された屈曲部Fには3個の角部F1〜F3が形成されている。これら複数の屈曲部D〜Fは、屈曲角度が互いに異なっており、積層フィルム11を互いに異なる角度で屈曲させる。
【0130】
屈曲部D〜Fにおいて積層フィルム11が曲げられると、加熱によって軟化された離型剤層15が角部に当たる。これにより、積層フィルム11では、接触面41bから外側に向かう方向の力によって内部歪みがより大きくなる。また、積層フィルム11において、下流側に引っ張られた状態で移動されることにより、積層フィルム11が互いに異なる角度で曲げられる。このとき、角部との当接によって比較的大きな摩擦熱が発生し、離型剤層15の軟化が促進される。したがって、これらの効果が相まって、ベースフィルム13から離型剤層15及び金属膜14をより剥がしやすくすることができる。また、屈曲部D〜Fの角部が鈍角に折り曲がっていることにより、積層フィルム11を下流側へスムーズに移動させることができ、積層フィルム11が破れないようにすることができる。
【0131】
なお、
図10には、曲げ部41が屈曲部のみを有している場合を示したが、曲げ部41が湾曲部と屈曲部とを有していてもよい。また、屈曲部は、フィルム移動方向に沿って鋭角又は直角に折り曲げられていてもよい。屈曲部における角部の数は特に限定されず、1個でもよく、4個以上でもよい。
【0132】
・上記実施形態では、フィルム供給部20にモータ23を設けたが、モータ23を設けなくてもよい。この場合、例えば、フィルム供給部20の内部に弾性体(例えば板バネ)を設けておき、フィルム回収部90を回転駆動させた状態では、その弾性体の付勢力に抗してフィルム供給部20から積層フィルム11が引き出されることにより、積層フィルム11が下流側に搬送され、フィルム回収部90の回転駆動を停止した場合には、フィルム供給部20に設けられた弾性体の付勢力によって積層フィルム11が上流側に戻り、フィルム供給部20に巻き戻されるようにすることで、曲げ部41において積層フィルム11が引っ張られている状態が維持されるようにしてもよい。
【0133】
・曲げ部41において、金属片製造装置10の運転停止の際に切替機構43により積層フィルム11と接触面41bとを非接触の状態にするには、フィルム回収部90のモータ93の駆動を停止する前にブロワ44を駆動して貫通穴45から空気を供給し、積層フィルム11と接触面41bとを非接触の状態にしてから、ブロワ44の駆動を継続したままモータ93の駆動を停止して積層フィルム11の移動を停止させてもよい。
【0134】
・曲げ部41において、積層フィルム11から接触面41bに向かう方向へ負圧を発生させた状態で、積層フィルム11を加熱しながら曲げる構成としてもよい。この場合、積層フィルム11のベースフィルム13側の面と接触面41bとをより密着させた状態とすることができ、離型剤層15の軟化を促進させることができる。また、積層フィルム11に対して、接触面41bから外側に向かう方向の力と、接触面41bから内側に向かう方向との力が作用することによって内部歪みが大きくなり、ベースフィルム13と離型剤層15との密着性を低下させることが可能である。積層フィルム11から接触面41bに向かう方向へ負圧を発生させるには、例えば、切替機構43において、ブロワ44に替えて、送風と吸引とが可能な圧力調整装置を配置し、圧力調整装置によって空気を吸引する構成とする。
【0135】
・切替機構43につき、上記実施形態では送風機(ブロワ44)を用いたが、送風機以外の手段によって、積層フィルム11と接触面41bとが接触している状態と、これらが非接触の状態とを切り替える構成としてもよい。例えば、長尺部材を貫通穴45から積層フィルム11に向けて突出させる機構を設け、長尺部材によって積層フィルム11をベースフィルム13側の面から押し上げることにより、接触状態/非接触状態を切り替える構成とする。
【0136】
・上記実施形態では、第1切込み部51の第1ローラ56及び第2切込み部52の第1ローラ64にモータ59、67をそれぞれ設けたが、これらのモータの少なくとも一方を設けない構成としてもよい。
【0137】
・フィルム回収部90の回転速度(周速度V2)と、フィルム供給部20の回転速度(周速度V1)とを同じにして、積層フィルム11を移動方向に引っ張らないようにしてもよい。
【0138】
・第2処理部50において、積層フィルム11への切込みの入れ方は、金属膜14がベースフィルム13から剥がれてバラバラに散乱しないようにすればよく、例えば、第1切込み部51によって形成される切込みと、第2切込み部52によって形成される切込みとを交差させないように、隣接する切込みとの間隔を1.5mm〜2mm程度空けて形成してもよい。あるいは、積層フィルム11の厚み方向に刃部55、63の間隔を1mm〜2mm空けて、全てをミシン目状刃にして厚み方向に刃部55、63を貫通させるようにしてもよい。
【0139】
・第2処理部50においては、第1切込み部51によって積層フィルム11の長さ方向に沿って延びるミシン目状の切込みを形成し、第2切込み部52によって積層フィルム11の幅方向に沿って延びるミシン目状の切込みを形成したが、切込みを形成する方向(第1方向及び第2方向)は特に限定されない。例えば、第1方向と第2方向とが斜めに交差するように積層フィルム11にミシン目状の切込みを形成してもよい。
【0140】
・第2処理部50につき第1切込み部51と第2切込み部52とを設けたが、第1切込み部51及び第2切込み部52のいずれか一方のみを設ける構成としてもよい。また、第1切込み部51及び第2切込み部52のいずれか一方のみによって、第1方向と第2方向との切込みを同時に形成可能な構成としてもよい。例えば、第1切込み部51の第1ローラ56につき、断面形状がクロス状(例えば十文字状)である刃部を外周面に1.5mm〜2mm間隔をあけて複数有する構成とする。
【0141】
・第2処理部50において、刃部と凹み部との間に積層フィルム11を通して切込みを形成する構成としたが、刃部と平面との間に積層フィルム11を通して切込みを形成する構成としてもよい。
【0142】
・剥がし機構70に設けた刃付きローラ80につき、ローラ本体81を回転可能に支持するとともに、バネの弾性力によりローラ本体81を積層フィルム11に向かう方向に付勢する押圧機構が設けられていてもよい。刃部83が積層フィルム11の金属膜14側の面に強い力で接触するとベースフィルム13が損傷したりベースフィルム13が金属片に混入したりするおそれがある。この点に鑑み、上記押圧機構を設けることにより、弾性力によって刃部83を適度な力で積層フィルム11に接触させることができる。これにより、刃部83の摩耗や破損、及びベースフィルム13の損傷を抑制することができ、刃部83の破片やベースフィルム13の破片が金属片に混入しないようにすることができる。
【0143】
・剥がし機構70において、下に凸の曲面を有する外周面75aに複数の突起76を設けたが、平面に対して複数の突起76を設けてもよい。
【0144】
・上記実施形態では、ベースフィルム13から金属膜14を剥がす剥がし装置を金属片製造装置10に適用したが、ベースフィルム13から剥がした金属膜14を、ベースフィルム13とは異なる第三のフィルム(キャリアフィルム)に転写して保持させる装置に適用してもよい。この場合、ベースフィルム13から金属膜14を剥がしてキャリアフィルムに転写する前に、加熱中の積層フィルム11を、又は加熱した直後の積層フィルム11を、ベースフィルム13側の面が内側に曲げられた状態となるように曲げる処理を行う。こうした構成において、金属膜14を剥がしてキャリアフィルムに転写する前に、ベースフィルム13に支持された金属膜14を切断する処理を行ってもよい。あるいは、金属膜14を剥がしてキャリアフィルムに転写した後に、キャリアフィルムに支持された金属膜14を切断する処理を行ってもよい。