特許第6483199号(P6483199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483199
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
   H03H9/19 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-120972(P2017-120972)
(22)【出願日】2017年6月21日
(62)【分割の表示】特願2013-191460(P2013-191460)の分割
【原出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-163613(P2017-163613A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】厳 漢東
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195421(JP,A)
【文献】 特開2006−254210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部に対して薄肉の振動部を有する圧電振動片と、
前記圧電振動片の表面及び裏面に成膜されて前記振動部から離間して前記周辺部と接合する中間膜と、
前記中間膜の表面に成膜されて前記中間膜に積層される封止膜と、を含み、
前記封止膜は、前記中間膜の表面及び側面を覆った状態で形成される圧電デバイス。
【請求項2】
前記振動部は、前記圧電振動片の厚さの中央部分において前記圧電振動片と平行に形成され、
前記振動部の表面側及び裏面側において、前記圧電振動片と前記中間膜とにより画定される空洞を有する請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記封止膜は、前記圧電振動片の表面側及び裏面側に形成され、
前記圧電振動片の表面側の前記中間膜は前記圧電振動片の裏面側の前記中間膜と同一の材料で同一の厚さに形成され、かつ前記表面側の前記封止膜は前記裏面側の前記封止膜と同一の材料で同一の厚さに形成される請求項1または請求項2記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記圧電振動片は、水晶振動片である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や携帯電話、各種情報・通信機器などでは、水晶振動子や水晶発振器などの圧電デバイスが搭載されている。このような圧電デバイスは、リッドやベースで構成されたパッケージ内に水晶振動片などの圧電振動片を搭載して作成されることが知られている。圧電デバイスは、小型化及び低コスト化が求められている。そのため、ウェハレベルのパッケージングにて、水晶振動子を作成することが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。又、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、MEMS振動子を作成することが提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−180169号公報
【特許文献2】特開2013−110623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の振動子パッケージは、ウェハレベルの貼り合わせで振動子を形成することになるが、ウェハの貼り合わせ面に対して、平坦度要求が高く、又、数百或いは数千の箇所を同時に貼り合わせするため、全ての接合部に対し均一かつ信頼性ある接合状態を得るのは困難である。また、特許文献2に記載のMEMS振動子はMEMS技術を用いて形成され、静電気型の振動子となる。しかし、シリコンからなるため、MEMS振動子は水晶振動片等の圧電振動片と比較して共振のQ値を高くするのが難しく、良好な振動特性を得るのが難しいといった課題がある。
【0005】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたもので、ウェハレベルで作成されることにより低コスト化を可能にするとともに、振動部がMEMS構造体を用いたものと比べてQ値を高くできるので振動特性の優れた圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、周辺部に対して薄肉の振動部を有する圧電振動片と、圧電振動片の表面及び裏面に成膜されて振動部から離間して周辺部と接合する中間膜と、中間膜の表面に成膜されて中間膜に積層される封止膜と、を含み、封止膜は、中間膜の表面及び側面を覆った状態で形成される
【0007】
また、振動部は、圧電振動片の厚さの中央部分において圧電振動片と平行に形成され、振動部の表面側及び裏面側において、圧電振動片と中間膜とにより画定される空洞を有してもよい。また、封止膜は、圧電振動片の表面側及び裏面側に形成され、圧電振動片の表面側の中間膜は圧電振動片の裏面側の中間膜と同一の材料で同一の厚さに形成され、かつ表面側の封止膜は裏面側の封止膜と同一の材料で同一の厚さに形成されてもよい。また、圧電振動片は、水晶振動片であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウェハレベルで作成できるので圧電デバイスを低コストで製造することができる。また、振動部として圧電振動片が用いられるので、振動部をMEMS構造体としたものと比べてQ値を高くでき、振動特性の優れた圧電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る圧電デバイスの一例を示し、(a)は中間層と封止層とを透過して見た平面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
図2図1に示す圧電デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
図3】圧電デバイスの製造方法の一工程を示す図であって、(a)は振動部を形成した状態を示す断面図、(b)は犠牲層を形成した状態を示す断面図、(c)は中間層を形成した状態を示す断面図、(d)はレジスト膜を形成した状態を示す断面図である。
図4図3に続いて圧電デバイスの製造方法の一工程を示す図であって、(e)は露光、現像を行った状態を示す断面図、(f)は中間膜のエッチングを行った状態を示す断面図、(g)はレジスト膜の除去及び電極を形成した状態を示す断面図、(h)は犠牲層をエッチングした状態を示す断面図である。
図5図4に続いて圧電デバイスの製造方法の一工程を示す図であって、(i)は加熱を行った状態を示す断面図、(j)は封止層を形成した状態を示す断面図、(k)は電極を形成した状態を示す断面図である。
図6】第2実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、模式的に記載するとともに、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。また、本実施形態において方向を示す場合は、以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系は、圧電デバイス100の表面に平行な平面をXZ平面とする。このXZ平面において圧電デバイス100の長手方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をZ方向と表記する。XZ平面に垂直な方向(圧電デバイス100の厚さ方向)はY方向と表記する。X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0011】
<第1実施形態>
(圧電デバイス100の構成)
第1実施形態に係る圧電デバイス100について図1を用いて説明する。図1は第1実施形態に係る圧電デバイス100を示し、(a)は、+Y側から中間層120と封止層140とを透過して見たときの平面図、(b)は、(a)のA−A線に沿った断面図である。図1(a)及び(b)に示すように、圧電デバイス100は、圧電振動片110と、中間膜120、130と、封止膜140、150と、を有しており、5層構造に構成された圧電振動子である。この圧電デバイス100は、Y方向から見たときに矩形状に形成される。
【0012】
圧電振動片110は、Y方向から見たときに圧電デバイス100と同様の寸法で板状に形成される。圧電振動片110は、例えば、ATカットされた水晶振動片が用いられる。ATカットは、圧電デバイス100が常温付近で使用されるにあたって良好な周波数特性が得られる等の利点があり、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸、機械軸及び光学軸のうち、光学軸に対して結晶軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ただし、圧電振動片110として、ATカットの水晶振動片に限定されず、例えばBTカット等の水晶振動片が用いられてもよい。また、圧電振動片110として水晶片に限定されず、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等が用いられてもよい。
【0013】
圧電振動片110の中央部には、周辺部110aに対して薄肉の振動部110bが形成される。振動部110bは、Y方向から見たときに矩形状に形成される。振動部110bと周辺部110aとの間には傾斜面110cが形成される。ただし、振動部110bと周辺部110aとを傾斜面110cによって接続させるか否かは任意である。このように、振動部110bが周辺部110aより薄肉されることにより、逆メサ型の振動部110bが形成される。
【0014】
振動部110bの厚さ(Y方向の幅)は、圧電デバイス100から取り出される周波数に応じて設定される。振動部110bは、圧電振動片110の表面(+Y側の面)からの深さと、裏面(−Y側の面)からの深さが同一に設定される。ただし、振動部110bの表面及び裏面の深さを同一に設定することに限定されず、例えば、表面側が裏面側より深くなるように形成されてもよい。また、振動部110bは、圧電振動片110と平行に(XZ平面と平行に)形成される。ただし、振動部110bを圧電振動片110と平行とすることに限定されず、例えば、振動部110bの+X側が+Y側に配置され、かつ振動部110bの−X側が−Y側に配置されて、圧電振動片110に対して傾斜するように形成されてもよい。
【0015】
圧電振動片110の表面及び裏面には、励振電極161、162と、励振電極161、162のそれぞれに電気的に接続される引出電極163、164とが形成される。励振電極161、162は、平面視で矩形に形成される。励振電極161、162は、圧電振動片110の振動部110bをY方向に挟んで対向した状態で配置され、ほぼ同一の大きさに形成される。振動部110bは、これら励振電極161、162に所定の交流電圧が印加されることにより、所定の振動数で振動する。
【0016】
引出電極163は、圧電振動片110の表面において励振電極161から+X方向に引き出されて形成される。引出電極164は、圧電振動片100の裏面において励振電極162から−X方向に引き出されて形成される。なお、引出電極163と引出電極164とは、電気的に接続されない。
【0017】
励振電極161、162及び引出電極163、164は、導電性の金属膜により形成される。この金属膜としては、例えば、水晶材との密着性を高めるためにクロム(Cr)や、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、あるいはニッケルクロム(NiCr)や、ニッケルチタン(NiTi)、ニッケルタングステン(NiW)合金などからなる下地膜と、金(Au)や銀(Ag)などからなる主電極膜との2層構造が採用される。この金属膜は、例えば、成膜後にフォトリソグラフィ技術及びエッチングにより形成されるか、またはメタルマスクを介したスパッタ蒸着または真空蒸着等により形成される。なお、金属膜として2層構造に限定するものではなく、1層または3層以上の導電性の金属膜による構成が用いられてもよい。
【0018】
圧電振動片110は、引出電極163に対応してY方向に貫通する貫通穴110dが形成される。この貫通穴110dには、貫通電極165が形成される。また、圧電振動片110の裏面側には、貫通電極165を覆うように矩形状の接続電極166が形成される。貫通電極165によって、引出電極163と接続電極166とは電気的に接続される。貫通電極165は、例えば、銅めっきや導電性ペーストの充填により形成される。接続電極166は、例えば、メタルマスクを介したスパッタ蒸着または真空蒸着等により形成される。
【0019】
中間膜120、130は、圧電振動片110の表面及び裏面のそれぞれに形成され、封止膜140、150の内側に配置されている。中間膜120、130は、Y方向から見たときに圧電振動片110の表面及び裏面においてほぼ同一に形成される。中間膜120、130は、同一の厚さ(Y方向の幅)に形成されるが、これに限定されず、例えば、中間膜120が中間膜130より厚く形成されてもよい。中間膜120、130としては、例えば、ポリシリコン、二酸化ケイ素などが用いられる。
【0020】
中間膜120、130は、図1(b)に示すように、それぞれ振動部110bから離れた状態で形成される。従って、振動部110bの表面側には空洞K1が形成され、振動部110bの裏面側には空洞K2が形成される。これにより、振動部110bの機械的な振動を許容する。空洞K1、K2は、例えば、真空雰囲気に設定されるが、これに代えて、例えば窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気に設定されてもよい。中間膜120、130は、例えば、真空蒸着やスパッタ蒸着により圧電振動片110の表面及び裏面のそれぞれに成膜されることにより形成される。
【0021】
裏面側の中間膜130は、貫通電極165に対応してY方向に貫通する貫通穴130aが形成される。この貫通穴130aには、貫通電極167が形成される。中間膜130の裏面には、貫通電極167を覆うように矩形状の接続電極168が形成される。貫通電極167によって、接続電極166と接続電極168とが電気的に接続される。中間膜130は、引出電極164に対応してY方向に貫通する貫通穴130bが形成される。この貫通穴130bには、貫通電極169が形成される。中間膜130の裏面には、貫通電極169を覆うように矩形状の接続電極170が形成される。貫通電極169によって、引出電極164と接続電極170とが電気的に接続される。貫通電極167、169は、例えば、銅めっきや導電性ペーストの充填により形成される。接続電極168、170は、例えば、メタルマスクを介したスパッタ蒸着または真空蒸着等により形成される。
【0022】
封止膜140、150は、中間膜120、130のそれぞれを覆った状態で形成される。封止膜140、150は、同一の厚さ(Y方向の幅)に形成されるが、これに限定されず、例えば、封止膜140が封止膜150より厚く形成されてもよい。封止膜140、150としては、例えば、窒化シリコン等が用いられる。封止膜140、150は、例えば、真空蒸着やスパッタ蒸着により中間膜120、130上のそれぞれに成膜されることにより形成される。
【0023】
裏面側の封止層150は、貫通電極167、169のそれぞれに対応してY方向に貫通する貫通穴150a、150bが形成される。この貫通穴150a、150bには、貫通電極171、173がそれぞれ形成される。封止膜150の裏面には、貫通電極171、173をそれぞれ覆うように矩形状の外部電極172、174が形成される。貫通電極171によって、接続電極168と外部電極172とが電気的に接続される。また、貫通電極173によって、接続電極170と外部電極174とが電気的に接続される。貫通電極171、173は、例えば、銅めっきや導電性ペーストの充填により形成される。外部電極172、174は、例えば、メタルマスクを介したスパッタ蒸着または真空蒸着等により形成される。
【0024】
外部電極172は、貫通電極171、接続電極168、貫通電極167、接続電極166、及び貫通電極165を介して引出電極163(励振電極161)に電気的に接続される。一方、外部電極174は、貫通電極173、接続電極170、及び貫通電極169を介して引出電極164(励振電極162)に電気的に接続される。
【0025】
このように、圧電デバイス100によれば、圧電振動片110に形成された薄肉の振動部110bから離れた状態で振動部110bの表面及び裏面に中間膜120、130が形成されるので、振動部110bの機械的な振動が中間膜120等によって干渉されない。また、振動部110bは圧電振動片110の一部が用いられるので、MEMS構造体の振動部と比較してQ値を高くすることができ、振動特性に優れた圧電デバイス100を提供できる。また、中間膜120、130上に封止層140、150が形成される内部空間K1、K2の気密を維持することができる。
【0026】
また、振動部110bは、圧電振動片110の厚さの中央部分において圧電振動片110と平行に形成されるので、中間膜120、130から振動部110bを確実に離すことができ、振動部110bが中間膜120等に干渉するのを防止できる。また、また、封止層140、150は、中間層120、130を覆った状態で形成されるので、封止層140、150によって中間層120、130を保護することができる。
【0027】
(圧電デバイス100の製造方法)
次に、圧電デバイス100の製造方法について、図2図5を用いて説明する。図2は、図1に示す圧電デバイス100の製造方法を説明するフローチャートである。図3図5は、図2に示すフローチャートのそれぞれに対応した工程を示している。以下の説明では、図2のフローチャートに沿いつつ、適宜図3図5を参酌して説明する。
【0028】
まず、図2に示すように、圧電ウェハAWの加工が行われる(ステップS01)。圧電ウェハAWとしては、例えば、ATカットされた水晶ウェハが用いられる。圧電ウェハAWの加工では、図3(a)に示すように、振動部110bの形成や、励振電極161、162及び引出電極163、164の形成、貫通穴110dの形成、貫通電極165の形成、接続電極166の形成が行われる。先ず、圧電ウェハAWの表面及び裏面の所定箇所がウェットエッチング等により薄肉化され、周辺部110a及び振動部110bが形成される(振動部形成工程)。なお、圧電ウェハAWをウェットエッチングにより薄肉化することに限定されず、例えばサンドブラスト等が用いられてもよい。
【0029】
次いで、圧電ウェハAW(圧電振動片110)の表面及び裏面に、振動部110bを挟んで励振電極161、162が形成されるとともに、この励振電極161、162から延びる引出電極163、164が形成される。これら励振電極161等は、フォトリソグラフィ法及びエッチングによる手法、またはメタルマスクを介した蒸着等により導電性の金属膜が成膜されることで形成される。
【0030】
次いで、圧電ウェハAWの、引出電極163に対応する部分に、Y方向に貫通する貫通穴110dが形成される。この貫通穴110dは、例えば、ウェットエッチングやサンドブラスト等の機械加工により形成される。次いで、貫通穴110dに、例えば、銅めっきや導電性ペーストの充填によって、貫通電極165が形成される。次いで、この貫通電極165を覆うように接続電極166が形成される。
【0031】
続いて、犠牲層175、176が形成される(ステップS02)。図3(b)に示すように、振動部110bの表面側及び裏面側には、犠牲層175、176が形成される(犠牲層形成工程)。犠牲層175、176としては、例えば、二酸化珪素(SiO)、アモルファスシリコン、フォトレジスト、その他ポリマー材料等が適宜選択可能である。犠牲層175、176として二酸化珪素を用いる場合は、例えば、所定のガスを用いたプラズマCVD法や、スパッタリング法等の真空プロセスにより形成される。なお、二酸化珪素に対するエッチングには、ドライエッチング法では、例えば、フッ酸蒸気によるエッチングが用いられ、ウェットエッチング法では、例えば、バッファフッ酸内に浸漬する等の手法が利用できる。
【0032】
犠牲層175、176としてアモルファスシリコンを用いる場合は、例えば、HやSiH等のガスを用いたプラズマCVD法や、スパッタリング法等の真空プロセスにより形成される。なお、アモルファスシリコンに対するエッチングは、ドライエッチング法あるいはウェットエッチング法が用いられる。ドライエッチング法では、例えば、XeF(フッ化キセノン)ガス等が用いられ、ウェットエッチング法では、例えば、フッ硝酸等が用いられる。
【0033】
続いて、犠牲層175、176の平坦化が行われる(ステップS03)。ステップS02で犠牲層175、176を成膜する際、圧電振動片110の表面及び裏面の全体に犠牲層175等が成膜されている。この膜を平坦化することにより、圧電振動片110の周辺部110aを露出させる(平坦化工程)。この平坦化工程は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing 化学機械研磨)が用いられる。平坦化工程により、振動部110bの表面及び裏面の犠牲層175、176は残り、周辺部110a上の犠牲層が除去される。これにより、犠牲層175、176は、周辺部110aに対して同一面に形成される。
【0034】
ただし、犠牲層175、176を周辺部110aと同一面とすることに限定されず、例えば、犠牲層175、176が周辺部110aに対してY方向に凹んだ状態や盛り上がった状態に形成されてもよい。また、犠牲層175、176は、上記のようにプラズマCVD法等により圧電振動片110の全面に形成されることに限定されず、例えば、インクジェット法等を用いて振動部110bに対して局所的に形成させるようにしてもよい。このように、犠牲層175、176を局所的に形成可能な場合は、上記したステップS03の平坦化工程は行われなくてもよい。
【0035】
続いて、中間膜120、130の形成が行われる(ステップS04)。図3(c)に示すように、平坦化工程が終了した圧電ウェハAWの表面及び裏面のそれぞれに中間膜120、130が形成される(中間膜形成工程)。中間膜120、130としては、例えば、ポリシリコン、二酸化ケイ素が用いられる。中間膜形成工程は、例えば、真空蒸着やスパッタ蒸着、低圧CVD等が用いられる。
【0036】
中間膜120、130の膜厚は任意に設定可能である。ただし、空洞K1、K2(図1参照)が形成された際に、中間膜120、130が振動部110bから離間した状態を維持可能な強度を持つような膜厚に設定される。中間膜120、130は、同一の膜厚に形成されるが、異なってもよい。また、中間膜120、130は、均一な膜厚に形成されることに限定されず、例えば、振動部110bに対向する部分の膜厚を他より大きくするなど、部分的に膜厚を変えてもよい。また、中間膜120、130は、同一の材料で形成されることに限定されず、異なる材料で形成されてもよい。
【0037】
続いて、レジスト膜178、179が形成される(ステップS05)。図3(d)に示すように、中間膜120、130の表面及び裏面の全面にレジスト膜178、179が形成される。レジスト膜178、179としては、例えば、ノボラック樹脂によるネガフォトレジスト等が用いられる。レジスト膜の形成は、例えば、スピンコーターやスリットコーター等が用いられる。
【0038】
続いて、露光、現像が行われる(ステップS06)。図4(e)に示すように、レジスト膜178、179に対して、所定のマスクを用いた露光処理を行った後、現像処理を行うことにより、レジストパターンとして、Y方向に貫通する複数の貫通穴178a、179aが形成される。貫通穴178a、179aは、犠牲層175、176に対応する箇所に形成される。また、裏面側のレジスト膜179には、貫通電極165に対応してY方向に貫通する貫通穴179bが形成されるとともに、引出電極164に対応してY方向に貫通した貫通穴179cが形成される。
【0039】
続いて、中間膜120、130のエッチングが行われる(ステップS07)。図4(f)に示すように、レジストパターンを介して中間膜120、130がエッチングされることにより、中間膜120、130には、レジスト膜178、179の貫通穴178a、179aに連通する貫通穴120a、130cが形成される。このように、上記したステップS05〜ステップS07に示す一連の各工程により、中間膜120、130に貫通穴120a、130cが形成される(貫通穴形成工程)。なお、貫通穴120a、130cの個数や開口径は任意に設定できる。
【0040】
貫通穴120a、130cの形成により、犠牲層175、176は、貫通穴178a、179a及び貫通穴120a、130cを介して外部に露出される。また、裏面の中間膜130には、貫通穴179b、179cに対応してY方向に貫通する貫通穴130a、130bが形成される。
【0041】
続いて、レジスト膜178、179の除去及び電極の形成が行われる(ステップS08)。図4(g)に示すように、先ず、レジスト膜178、179が所定の剥離液等によって除去される。次いで、中間膜130の貫通穴130a、130bに貫通電極167、169が、銅メッキや導電性ペーストの充填等により形成される。次いで、貫通電極167、169を覆うように矩形状の接続電極168、170が形成される。接続電極168、170は、例えば、フォトリソグラフィ法及びエッチング、またはメタルマスクを介したスパッタ蒸着や真空蒸着などにより導電性の金属膜が成膜されて形成される。なお、貫通電極167を介して接続電極166と接続電極168とが電気的に接続され、貫通電極169を介して引出電極164と接続電極170とが電気的に接続される。
【0042】
続いて、犠牲層175、176のエッチングが行われる(ステップS09)。図4(h)に示すように、犠牲層175、176は、中間膜120、130の貫通穴120a、130cを介して、例えば、ドライエッチングあるいは溶解等の処理によって除去される(犠牲層除去工程)。犠牲層175、176の除去と同時に、振動部110bに残存する不純物も貫通穴120a、130cを通じて除去される。犠牲層175、176が除去されることにより、振動部110bの表面側に空洞K1が形成され、振動部110bの裏面側に空洞K2が形成される。
【0043】
また、犠牲層175、176を除去した後、振動部110bの周波数調整を行ってもよい。周波数の調整は、振動部110bの表面及び裏面の励振電極161、162をエッチングすることにより行う。従って、予め、所望の周波数より低くなるように、やや肉厚に励振電極161、162を成膜しておき、空洞K1、K2の形成後にエッチングして所望の周波数に合わせこむようにしてもよい。
【0044】
続いて、高温アニールが行われる(ステップS10)。図5(i)に示すように、犠牲層175、176を除去した後、中間膜120、130が加熱される(加熱工程)。この高温アニールは、例えば、加熱炉内に圧電ウェハAWが投入されて所定の温度まで加熱されることにより行う。この加熱工程により、中間膜120、130が加熱されて貫通穴120a、130cを閉塞させる。なお、加熱工程において、加熱炉内を真空に設定することにより、貫通穴120a、130cを閉塞させた際に、空洞K1、K2内を真空雰囲気に設定できる。
【0045】
なお、ステップS10の加熱工程を行うか否かは任意であり、この加熱工程なしに後段のステップS11が行われてもよい。また、加熱工程において、中間膜120、130の貫通穴120a、130aを完全に閉塞させることに限定されず、貫通穴120a、130aの開口径を縮小させるものでもよい。
【0046】
続いて、封止膜140、150の形成が行われる(ステップS11)。図5(j)に示すように、中間膜120、130の全面を覆うように封止膜140、150が形成される(封止膜形成工程)。封止膜140、150としては、例えば、窒化シリコン等が用いられる。封止膜140、150は、例えば、真空蒸着やスパッタ蒸着等により成膜される。なお、上記したステップS10の加熱工程後に貫通穴120a等がまだ開口している場合は、この封止膜形成工程が真空雰囲気で行われることにより、空洞K1、K2内を真空雰囲気に形成することができる。
【0047】
封止膜140、150の膜厚は任意に設定可能である。ただし、中間膜120、130とともに振動部110bから離間した状態を維持可能な強度を持つような膜厚に設定される。封止膜140、150は、同一の膜厚に形成されるが、異なってもよい。また、封止膜140、150は、均一な膜厚に形成されることに限定されず、例えば、振動部110bに対応する部分の膜厚を他より大きくするなど、部分的に膜厚を変えてもよい。また、封止膜140、150は、同一の材料で形成されることに限定されず、異なる材料で形成されてもよい。
【0048】
続いて、電極が形成される(ステップS12)。図5(k)に示すように、先ず、裏面側の封止膜150に、Y方向に貫通する貫通穴150a、150bが形成される。貫通穴150a、150bは、中間膜130に形成された接続電極168、170に対応した位置に形成される。貫通穴150a、150bは、上記したステップS07と同様に、例えば、レジスト膜を露光及び現像してレジストパターンを形成させ、このレジストパターンを介して封止膜150をエッチングすることにより形成される。次いで、貫通穴150a、150bのそれぞれに貫通電極171、173が形成される。貫通電極171、173は、例えば、銅メッキや導電性ペーストの充填等により形成される。
【0049】
次いで、この貫通電極171、173を覆うように矩形状の外部電極172、174が形成される。外部電極172、174は、例えば、フォトリソグラフィ法及びエッチング、またはメタルマスクを介したスパッタ蒸着や真空蒸着、導電性ペーストの塗布などにより導電性の金属膜が成膜されて形成される。なお、貫通電極171を介して接続電極168と外部電極174とが電気的に接続され、貫通電極173を介して接続電極170と外部電極173とが電気的に接続される。
【0050】
続いて、圧電ウェハAWの切断が行われる(ステップS13)。圧電ウェハAWは、予め設定されたスクライブラインに沿って切断される(切断工程)。この切断工程では、例えば、レーザーやダイシングソーを用いたダイシング装置が利用される。この切断工程によって、個別化された圧電デバイス100が完成する。
【0051】
なお、図5(k)に示すものでは、中間膜120、130の側面が露出したままの状態となっており、図1(b)の圧電デバイス100のように中間膜120、130の側面が封止膜140、150に覆われていない。図1に示すような形態を作成するには、先ず、中間膜120、130の形成後に、これら中間膜120、130をパターニングして島状に形成させる。次いで、その上から封止膜140、150を成膜する。次いで、中間膜120、130がない部分に沿って切断することにより、中間膜120、130の側面を封止膜140、150で覆った形態が作成可能である。
【0052】
このように、圧電デバイス100の製造方法によれば、中間膜120、130及び封止膜140、150によって空洞K1、K2を所定雰囲気に保持するので、従来のようにシリコン基板等を接合して封止することと比較して容易に圧電デバイス100を製造することができる。また、圧電ウェハAWを用いることにより、振動特性の優れた圧電デバイス100をウェハレベルにより低コストで製造することができる。
【0053】
また、犠牲層175、176の形成後に平坦化工程を行うことにより、周辺部110aを除いて振動部110bの表面及び裏面に確実に犠牲層175、176を形成させることができる。また、犠牲層除去工程の後、中間膜120、130を加熱する加熱工程を行うことにより、貫通穴120a、130aを塞ぐ、または開口径を縮小させることができ、その後の封止膜140、150の成膜を容易に行うことができる。
【0054】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について図6を用いて説明する。図6は、第2実施形態に係る圧電デバイス200の一例を示す平面図である。図6では、中間膜及び封止膜(図1参照)を透過した状態で示している。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付けて説明を省略または簡略化する。図6に示すように、圧電デバイス200は、圧電振動片210を有し、第1実施形態の圧電デバイス100と同様に、圧電振動片210の表面及び裏面に中間膜及び封止膜をそれぞれ有しており、5層構造に構成された圧電振動子である。この圧電デバイス200は、Y方向から見たときに矩形状に形成される。
【0055】
圧電振動片210は、Y方向から見たときに圧電デバイス200と同様の寸法で板状に形成される。圧電振動片210は、第1実施形態と同様に、例えば、ATカットされた水晶振動片が用いられる。ただし、圧電振動片210として、ATカットの水晶振動片に限定されず、例えばBTカット等の水晶振動片が用いられてもよい。また、圧電振動片210として水晶片に限定されず、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等が用いられてもよい。
【0056】
圧電振動片210の中央部には、周辺部210aに対して薄肉の振動部210bが形成される。振動部210bは、Y方向から見たときに円形状に形成される。振動部210bと周辺部210aとの間には傾斜面210cが形成される。ただし、振動部210bとして円形状であることに限定されず、例えば、楕円形状、長円形状、多角形状(四角形を除く)に形成されてもよい。また、傾斜面210cが形成されるか否かは任意である。
【0057】
圧電振動片210の表面及び裏面には、励振電極261、262と、励振電極261、262のそれぞれに電気的に接続される引出電極263、264とが形成される。励振電極261、262は、平面視で円形に形成される。励振電極261、262は、圧電振動片210の振動部210bをY方向に挟んで対向した状態で配置され、ほぼ同一の大きさに形成される。振動部210bは、これら励振電極261、262に所定の交流電圧が印加されることにより、所定の振動数で振動する。
【0058】
引出電極263は、圧電振動片210の表面において励振電極261から+X方向に引き出されて形成される。引出電極264は、圧電振動片210の裏面において励振電極262から−X方向に引き出されて形成される。なお、引出電極263と引出電極264とは、電気的に接続されない。なお、この引出電極263、264から外部電極172、174(図1(b)参照)までの電気的な接続は、図1に示す圧電デバイス100と同様である。
【0059】
このように、圧電デバイス200によれば、第1実施形態の圧電デバイス100と同様に、振動部210bの機械的な振動が中間膜等によって干渉されない。また、振動部210bは圧電振動片210の一部が用いられるのでQ値を高くでき、振動特性に優れた圧電デバイス200を提供できる。なお、圧電デバイス200の製造方法は、上記した圧電デバイス100の製造方法と同様である。
【0060】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した各実施形態において、引出電極163、164(263、264)から外部電極172、174までの電気的な接続は図示した形態に限定されない。例えば、貫通電極167等を用いずに、引出電極163、164から圧電デバイス100の側面を介して外部電極172、174に接続させてもよい。
【0061】
また、上記した各実施形態の圧電振動片110、210において、周辺部110a、210aと振動部110b、210bとの間に、Y方向に貫通する貫通部を形成させてもよい。この場合、例えば、−X側の部分を残して振動部110b、210bを囲むように貫通部を形成させ、振動部110b、210bを片持ち状態で保持させてもよい。このような貫通部を形成する場合、引出電極163、164、263、264は、貫通部を避けて配置される。
【符号の説明】
【0062】
100、200・・・圧電デバイス
110、210・・・圧電振動片
110a、210a・・・周辺部
110b、210b・・・振動部
120、130・・・中間膜
140、150・・・封止膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6