特許第6483205号(P6483205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483205表面改質シリカ粒子の製造方法及びフィラー含有組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483205
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】表面改質シリカ粒子の製造方法及びフィラー含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20190304BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20190304BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190304BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20190304BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C01B33/18 C
   C08K9/06
   C08L101/00
   C09C1/28
   C09C3/08
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-137410(P2017-137410)
(22)【出願日】2017年7月13日
(62)【分割の表示】特願2013-73510(P2013-73510)の分割
【原出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-222569(P2017-222569A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義明
(72)【発明者】
【氏名】楊原 武
(72)【発明者】
【氏名】永野 幸恵
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−059380(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/093142(WO,A1)
【文献】 特開2012−207112(JP,A)
【文献】 特開2005−170771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上、D50が250nm以下であって、
吸水性が全体の質量を基準として1.0%以下、
アルカリ金属、アルカリ土類金属の総量が100ppm以下、
であるシリカ粒子に対して、
水を含む液状媒体中でシランカップリング剤およびオルガノシラザンによって表面処理する表面処理工程と、
粒径が1μm以上の粗粒を除去する粗粒除去工程とを持ち、
該シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基と、を持ち、
該シランカップリング剤と該オルガノシラザンとのモル比は、該シランカップリング剤:該オルガノシラザン=1:2〜1:10であり、
前記シリカ粒子は、金属シリコン粒子を酸素含有雰囲気中に0.1kg/Nm以下の速度で投入して燃焼させて製造され
製造された表面改質シリカ粒子は、前記粗粒の含有量が50個以下である、
表面改質シリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
表面処理後の表面改質シリカ粒子の表面には、式(1):−OSiXで表される官能基と、式(2):−OSiYで表される官能基とを有する請求項1に記載の表面改質シリカ粒子の製造方法。(上記式(1)、(2)中;Xはフェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基であり;X、Xは−OSiR及び−OSiYよりそれぞれ独立して選択され;YはRであり;Y、YはR及び−OSiYよりそれぞれ独立して選択される。YはRであり;Y及びYは、R及び−OSiRからそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1〜3のアルキル基から独立して選択される。なお、X、X、Y、Y、Y、及びYの何れかは、隣接する官能基のX、X、Y、Y、Y、及びYの何れかと−O−にて結合しても良い。)
【請求項3】
ウランの含有量が2ppb以下、トリウムの含有量が3ppb以下である請求項1又は2に記載の表面改質シリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記表面処理工程は、
前記シリカ粒子を前記シランカップリング剤で処理する第1の処理工程と、
前記シリカ粒子を前記オルガノシラザンで処理する第2の処理工程と、を持ち、
該第2の処理工程は、該第1の処理工程後に行う請求項1〜のうちの何れか1項に記載の表面改質シリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの何れか1項に記載の表面改質シリカ粒子の製造方法にて表面改質シリカ粒子を製造してフィラーとするフィラー製造工程と、
前記フィラーと、前記フィラーを分散する樹脂材料及び/又は樹脂材料前駆体からなるマトリックスとを混合してフィラー含有組成物を製造する混合工程と、
を有するフィラー含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質シリカ粒子の製造方法及びフィラー含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器(電子部品も含む)の微細化は止まる所を知らない。そのような電子機器に採用される材料はその大きさに応じた非常に高い性能が求められることになる。例えば、電機部品の1つである半導体デバイスは半導体素子を封止材にて封止して製造する方法が一般的である。封止材は半導体素子を外部から隔離したり、放熱を確保したりなどの多岐にわたる性能が求められているが、半導体デバイスの微細化に伴い非常に高い性能が要求される。
【0003】
封止材としては物理的、化学的な安定性が高く、熱変動による体積変動を小さくするために、シリカをフィラーとして分散させたものが汎用されている。封止材は半導体素子と基板との間などの微細な隙間に充填する必要があるため、分散されているフィラーについても微細なものが要求される。また、隙間への充填性を向上させるためにはフィラーの粒度分布についても検討する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-247726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、半導体デバイスの封止材などに好適に採用できるフィラー含有組成物及びその組成物のフィラーに適用することが好適な表面改質シリカ粒子の製造方法及びフィラー含有組成物の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決する表面改質シリカ粒子の製造方法にて製造される表面改質シリカ粒子は、粒径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上、D50が250nm以下であって、
吸水性が乾燥時の質量を基準として1.0%以下、
アルカリ金属、アルカリ土類金属の総量が100ppm以下、
であり、
表面に炭素を含む官能基が表面に導入されている。
【0007】
封止材に適用されるフィラー含有組成物のフィラーに適用されるシリカ粒子には種々の性質が要求される。具体的には(a) α線生成量が少ないこと、(b)ナトリウムなどのアルカリ金属・アルカリ土類金属の含有量が少ないこと、(c)吸水性が低いことである。
【0008】
本発明者らはシリカ粒子は製造方法の相違によって結晶構造や原子間の結合状態が異なり、吸水性にも多寡が生ずることを見出した。例えば、上記粒度分布をもつシリカ粒子を製造する方法としてはVMC法、水ガラス法、アルコキシド法が挙げられる。VMC法は上述した(a)〜(c)すべてを満足するシリカ粒子を安価に製造することが可能である。
【0009】
水ガラス法ではアルカリ金属などを原料中に必然的に含むために(b)の要件を満たすことは困難であり、(a)の要件についても原料の精製が困難であるためにα線生成量を必要な値にまで低減させることは困難であった。更に、吸水性についてはアルコキシド法にて製造したシリカ粒子と比較すると、幾分吸水性が低いものの、充分小さいものであるとは言い難かった。アルコキシド法で製造したシリカ粒子は原料が低分子であるため原料の精製が容易であり、またアルカリ金属などを原理的に含む必要が無いため(a)、(b)の要件については満足する物を提供することができるものの、(c)の吸水性については大きくなっていた。
【0010】
以上説明したように、VMC法によると、優れた性質をもつシリカ粒子が提供できるものではあるが、望ましい粒度分布を実現することは困難であった。例えば一般的なVMC法によると、平均粒径がサブミクロンからミクロンオーダーになるが金属シリコンの濃度を低下させることにより、それよりも小さな粒径をもつシリカ粒子が得られ、そのシリカ粒子を所定以上の粒径をもつ粗粒を除去することで粒度分布が本願発明の範囲に入ることを見出し本発明を完成した。
【0011】
上述した(1)の発明は以下の(2)に記載の構成要素を加えることができ、(2)の構成を採用したときには(3)の構成を、(3)の構成も採用した場合には(4)の構成をされに採用することが出来る。
【0012】
(2)前記官能基は、式(1):−OSiXで表される官能基と、式(2):−OSiYで表される官能基とである。
(上記式(1)、(2)中;Xはフェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基であり;X、Xは−OSiR及び−OSiYよりそれぞれ独立して選択され;YはRであり;Y、YはR及び−OSiYよりそれぞれ独立して選択される。YはRであり;Y及びYは、R及び−OSiRからそれぞれ独立して選択され;Rは炭素数1〜3のアルキル基から独立して選択される。なお、X、X、Y、Y、Y、及びYの何れかは、隣接する官能基のX、X、Y、Y、Y、及びYの何れかと−O−にて結合しても良い。)
【0013】
(3)粒径が1μm以上の粗粒が50個以下である。本明細書中において粗粒量の測定は0.5質量%の分散液を作製し、画像処理装置(スペクトリス株式会社:FPIA−3000)を用いて3.5μL中の円形度0.99以上かつ1μm以上で観察されるシリカ粒子の個数をカウントする。
【0014】
(4)ウランの含有量が2ppb以下、トリウムの含有量が3ppb以下である。
【0015】
(5)上記課題を解決する本発明の表面改質シリカ粒子の製造方法は、粒径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上、D50が250nm以下であって、吸水性が全体の質量を基準として1.0%以下、アルカリ金属、アルカリ土類金属の総量が100ppm以下であるシリカ粒子に対して、水を含む液状媒体中でシランカップリング剤およびオルガノシラザンによって表面処理する表面処理工程を持ち、該シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基と、を持ち、該シランカップリング剤と該オルガノシラザンとのモル比は、該シランカップリング剤:該オルガノシラザン=1:2〜1:10であり、前記シリカ粒子は、金属シリコン粒子を酸素含有雰囲気中に0.1kg/Nm以下の速度で投入して燃焼させて製造されている。
【0016】
本方法によれば、上述した(1)〜(4)に記載の表面改質シリカ粒子を簡易に得ることができる。(5)に記載の製造は以下の(6)に記載の構成要素を加えることができる。
【0017】
(6)前記表面処理工程は、
前記シリカ粒子を前記シランカップリング剤で処理する第1の処理工程と、
前記シリカ粒子を前記オルガノシラザンで処理する第2の処理工程と、を持ち、
該第2の処理工程は、該第1の処理工程後に行う。
【0018】
(7)上記課題を解決するフィラー含有組成物の製造方法は、(5)もしくは(6)に記載のシリカ粒子の製造方法により製造された表面改質シリカ粒子からなるフィラーを製造するフィラー製造工程と、
前記フィラーと、前記フィラーを分散する樹脂材料及び/又は樹脂材料前駆体からなるマトリックスとを混合してフィラー含有組成物を製造する混合工程とを有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法にて製造された表面改質シリカ粒子はフィラー含有組成物に適用すると充填性に優れ、且つ、安定性にも優れた封止材などへの応用が可能である。本発明の表面改質シリカ粒子の製造方法は本発明の表面改質シリカ粒子を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】試験例1の試験試料のSEM写真である。
図2】試験例2の試験試料のSEM写真である。
図3】試験例3の試験試料のSEM写真である。
図4】実施例で使用した製造装置の概略図である。
図5】実施例で使用した製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の表面改質シリカ粒子の製造方法並びにフィラー含有組成物の製造方法について実施形態に基づき以下詳細に説明する。
【0022】
本製造方法にて製造される表面改質シリカ粒子)
本実施形態の表面改質シリカ粒子は粒径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上(望ましくは2.3以上、2.5以上)、D50が250nm以下である。更に、D90/D50が1.5以上であることが望ましい(更に望ましくは1.6以上)。D50/D10が1.5以上であることが望ましい(更に望ましくは1.6以上)。粒径が大きな表面改質シリカ粒子の間隙に粒径が小さな表面改質シリカ粒子が入ることが可能になるため、充填性に優れ、且つ、流動性を高くすることが出来る。特に粒度分布としてはガウス曲線と比較して粒径が小さい側の頻度が大きいことが望ましい。粒径の測定は粒径はレーザ回折散乱方式粒度分布測定装置により測定可能である。また、所定以上の粒径をもつ粗粒をフィルタなどで除去することが望ましい。粗粒の大きさとしては1μm、5μm、10μmなどが採用できる。
【0023】
本実施形態の表面改質シリカ粒子は球形度が0.95以上であり、0.98以上であることが望ましい。球形度はSEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像処理装置(スペクトリス株式会社:FPIA−3000)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。本実施形態の表面改質シリカ粒子は粗粒量が少ないことが望ましく、具体的には1μm以上の粒径をもつ粗粒量が低いことが望ましい。粗粒量の測定は0.5質量%の分散液を作製し、画像処理装置(スペクトリス株式会社:FPIA−3000)を用いて3.5μL中の円形度0.99以上かつ1μm以上で観察されるシリカ粒子の個数をカウントする。
【0024】
本実施形態の表面改質シリカ粒子は吸水性が1.0%以下であり、0.5%以下であることが望ましい。吸水性は乾燥時のシリカ粒子の質量を基準とする。吸水性の測定は乾燥状態にある試料を40℃ 80%RHに1時間放置し、カールフィッシャー水分測定装置で200℃加熱により生成する水分を測定し、算出する。
【0025】
本実施形態の表面改質シリカ粒子はアルカリ金属、アルカリ土類金属の総量が100ppm以下であり、10ppm以下であることが望ましい。アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化されてイオンとして溶出乃至析出などするため、半導体デバイスなどの封止材に適用すると、半導体デバイスへの予期せぬ影響が想定される。例えば、水抽出物の導電率(EC)を想定すると、2μS/cm以下であることが望ましい。この値が低くなるためにはアルカリ金属、アルカリ土類金属の含有量が少なくなることが望ましいため、上述した含有範囲を設定している。ECは以下のように測定する。金属酸化物粒子をイオン交換水(導電率0.1μS/cm以下)に懸濁させて10%スラリーとした状態で耐圧容器中に投入して、室温で30分間震とうする。その後、遠心沈降させた上澄みを株式会社堀場製作所製導電率メータ(EC計)ES−51にて測定したときの導電率である。
【0026】
本実施形態の表面改質シリカ粒子は表面に炭素を含む官能基が表面に導入されている。炭素を含む官能基の具体的な構成及びシリカ粒子表面への導入方法などについては後述する表面改質シリカ粒子の製造方法にて詳述するため、ここでの説明は省略する。
【0027】
本実施形態の表面改質シリカ粒子はα線生成量が0.001c/cm・h以下であることが望ましい。特にα線源としてのウラン、トリウムが3ppb以下(更には1ppb以下)であることが望ましい。
【0028】
(表面改質シリカ粒子の製造方法)
本実施形態の表面改質シリカ粒子の製造方法は、金属酸化物粒子粗材製造工程と、その後に行う表面処理工程と、その他必要な工程とを有する。粗粒を除去する場合にはいつ行っても構わないが、表面処理工程中又は表面処理工程後に行うことが望ましい。
【0029】
・金属酸化物粒子製造粗材工程は金属ケイ素又は金属ケイ素を主成分とする材料からなる金属粒子と酸素とを反応させて金属酸化物粒子粗材を製造する工程である。金属ケイ素を主成分とする材料としては金属ケイ素を質量基準で50%以上含有し、その他の元素としては金属状態の材料であり、例えば、両性元素である。両性元素してはZn, Al, Pb, Sn, Be, Ti, V, Fe, Co, Ge, Zr, Ag, 及びSnの中から選択される1以上が例示される。金属状態の元素以外にも種々の元素を混合しても良い。金属材料に含有可能な元素としては特に限定しないが金属材料に対して原子レベルで混合可能(固溶したり合金化したりできるものなど)なものであれば良い。更に、不可避不純物を含むことがある。
【0030】
金属粒子の粒径は特に限定されない。金属粒子の粒径を変化させると製造される金属酸化物粒子粗材の粒径もある程度変化する。また、粒径が小さい方が反応が進行しやすく残存する金属材料が少なくなることが期待できる。例えば、金属粒子の粒径は100μm以下にすることが望ましい。金属粒子の純度はそのまま製造される金属酸化物粒子の純度に影響を与えるため、先に説明した純度になるように精製される。バーナー付近の燃焼雰囲気濃度を0.1kg/Nm以下にて連続的に燃焼させることにより粒径の小さいシリカ粒子を得られることがわかった。
【0031】
金属粒子と酸素とを反応させる方法としてはいわゆるVMC法と称される方法が採用できる。VMC法は、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより助燃剤(炭化水素ガスなど)を燃やして化学炎を形成し、この化学炎中に金属粒子を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて金属酸化物粒子を得る方法である。
【0032】
VMC法の作用について説明すれば以下のようになる。まず、容器中に反応ガスである酸素を含有するガスを充満させ、この反応ガス中で化学炎を形成する。次いで、この化学炎に金属粒子を投入し高濃度(例えば500g/m以上)の粉塵雲を形成する。すると、化学炎により金属粒子表面に熱エネルギーが与えられ、金属粒子の表面温度が上昇し、金属粒子表面から金属材料の蒸気が周囲に広がる。この蒸気が酸素ガスと反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱は、更に金属粒子の気化を促進し、生じた蒸気と酸素ガスが混合され、連鎖的に発火伝播する。従って、金属粒子の粒径は小さいほど比表面積が大きくなり反応性が向上することから投入するエネルギーを少なくできる。
【0033】
このように連鎖的な発火が進行することによって金属粒子自体も破壊して飛散し、火炎伝播を促す。燃焼後に生成ガスが自然冷却されることにより、金属酸化物粒子の雲ができる。得られた金属酸化物粒子は、バグフィルターや電気集塵器等により捕集される。
【0034】
VMC法は粉塵爆発の原理を利用するものである。VMC法によれば、瞬時に大量の金属酸化物粒子が得られる。得られる金属酸化物粒子は、略真球状の形状をなす。投入する金属粒子の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られる金属酸化物粒子の粒子径分布を調整することが可能である。また、原料物質としては金属粒子単独に加えて、金属酸化物粒子も添加することができる。同時に投入する金属酸化物粒子は本方法により得られる金属酸化物粒子を採用することで得られる金属酸化物粒子の純度を保つことができる。
金属粒子は表面処理を行うことができる。表面処理は疎水性基(アルキル基など)を採用可能である。
【0035】
・表面処理工程は、上述の方法にて得られたシリカ粒子に対して、式(1):−OSiXで表される官能基と、式(2):−OSiYで表される官能基とが表面に結合した表面改質シリカ粒子を得る工程である。以下、式(1)で表される官能基を第1の官能基と呼び、式(2)で表される官能基を第2の官能基と呼ぶ。
【0036】
第1の官能基におけるXは、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基である。X、Xは、それぞれ、−OSiR又は−OSiYである。YはRである。Y、Yは、それぞれ、R又は−OSiRである。
【0037】
第2の官能基におけるYはRである。Y、Yは、それぞれ、−OSiR又は−OSiYである。
【0038】
第1の官能基および第2の官能基に含まれる−OSiRが多い程、表面改質シリカ粒子の表面にRを多く持つ。第1の官能基および第2の官能基に含まれるR(炭素数1〜3のアルキル基)が多い程、本発明の表面改質シリカ粒子は凝集し難い。
【0039】
第1の官能基に関していえば、X、Xがそれぞれ−OSiRである場合に、Rの数が最小となる。また、XおよびXがそれぞれ−OSiYであり、かつ、Y、Yがそれぞれ−OSiRである場合に、Rの数が最大となる。
【0040】
第2の官能基に関していえば、Y、Yがそれぞれ−OSiRである場合に、Rの数が最小となる。また、YおよびYがそれぞれ−OSiYであり、かつ、Y、Yがぞれぞれ−OSiRである場合に、Rの数が最大となる。
【0041】
第1の官能基に含まれるXの数、第1の官能基に含まれるRの数、第2の官能基に含まれるRの数は、RとXとの存在数比や、表面改質シリカ粒子の粒径や用途に応じて適宜設定すれば良い。
【0042】
なお、X、X、Y、Y、Y、及びYの何れかは、隣接する官能基のX、X、Y、Y、Y、及びYの何れかと−O−にて結合しても良い。例えば、第1の官能基のX、X、Y、及びYの何れかが、この第1の官能基に隣接する第1の官能基のX、X、Y、及びYの何れかと−O−にて結合していても良い。同様に、第2の官能基のY、Y、Y、及びYの何れかが、この第2の官能基に隣接する第2の官能基のY、Y、Y、及びYの何れかと−O−にて結合していても良い。さらには、第1の官能基のX、X、Y、及びYの何れかが、この第1の官能基に隣接する第2の官能基のY、Y、Y、及びYの何れかと−O−にて結合していても良い。
【0043】
本発明の表面改質シリカ粒子において、第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12〜1:60であれば、表面改質シリカ粒子の表面にXとRとがバランス良く存在する。このため、第1の官能基と第2の官能基との存在数比が1:12〜1:60である表面改質シリカ粒子は、樹脂に対する親和性および凝集抑制効果に特に優れる。また、Xが表面改質シリカ粒子の単位表面積(nm)あたり0.5〜2.5個であれば、表面改質シリカ粒子の表面に充分な数の第1の官能基が結合し、第1の官能基および第2の官能基に由来するRもまた充分な数存在する。したがってこの場合にも、樹脂に対する親和性および表面改質シリカ粒子の凝集抑制効果が充分に発揮される。
【0044】
何れの場合にも、表面改質シリカ粒子の単位表面積(nm)あたりのRは、1個〜10個であるのが好ましい。この場合には、表面改質シリカ粒子の表面に存在するXの数とRの数とのバランスが良くなり、樹脂に対する親和性および表面改質シリカ粒子の凝集抑制効果との両方がバランス良く発揮される。
【0045】
本発明の表面改質シリカ粒子においては、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基の全部が第1の官能基または第2の官能基で置換されているのが好ましい。第1の官能基と第2の官能基との和が、表面改質シリカ粒子の単位表面積(nm)あたり2.0個以上であれば、本発明の表面改質シリカ粒子において、シリカ粒子の表面に存在していた水酸基のほぼ全部が第1の官能基または第2の官能基で置換されているといえる。
【0046】
本発明の表面改質シリカ粒子は、表面にRを持つ。これは、赤外線吸収スペクトルによって確認できる。詳しくは、本発明の表面改質シリカ粒子の赤外線吸収スペクトルを固体拡散反射法で測定すると、2962±2cm−1にC−H伸縮振動の極大吸収がある。
【0047】
また、上述したように本発明の表面改質シリカ粒子は凝集し難い。
【0048】
なお、本発明の表面改質シリカ粒子は、例え僅かに凝集した場合にも、超音波処理することによって再度分散可能である。詳しくは、本発明の表面改質シリカ粒子をメチルエチルケトンに分散させたものに、発振周波数39kHz、出力500Wの超音波を照射することで、本発明の表面改質シリカ粒子を実質的に一次粒子にまで分散できる。このときの超音波照射時間は10分間以下で良い。本発明の表面改質シリカ粒子が一次粒子にまで分散したか否かは、粒度分布を測定することで確認できる。詳しくは、この表面改質シリカ粒子のメチルエチルケトン分散材料をマイクロトラック装置等の粒度分布測定装置で測定し、表面改質シリカ粒子の粒度分布があれば、本発明の表面改質シリカ粒子が一次粒子にまで分散したといえる。
【0049】
本発明の表面改質シリカ粒子は、凝集し難いため、水やアルコール等の液状媒体に分散されていない表面改質シリカ粒子として提供できる。この場合、液状媒体の持ち込みがないために、樹脂材料用のフィラーとして好ましく用いられる。
【0050】
また、本発明の表面改質シリカ粒子は凝集し難いために、水で容易に洗浄できる。このため、本発明の表面改質シリカ粒子は、電子部品用の表面改質シリカ粒子に適用できる。
【0051】
本発明の表面改質シリカ粒子の製造方法は、水を含む液状媒体中で、シランカップリング剤およびオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理する工程(表面処理工程)を持つ。シランカップリング剤は、3つのアルコキシ基と、フェニル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、又はアクリル基(すなわち上記のX)とを持つ。
【0052】
シランカップリング剤で表面処理することで、シリカ粒子の表面に存在する水酸基がシランカップリング剤に由来する官能基で置換される。シランカップリング剤に由来する官能基は式(3);−OSiXで表される。式(3)で表される官能基を第3の官能基と呼ぶ。第3の官能基におけるXは式(1)で表される官能基におけるXと同じである。X、Xは、それぞれ、アルコキシ基である。オルガノシラザンで表面処理することで、第3の官能基のX、Xがオルガノシラザンに由来する−OSiY(式(2)で表される官能基、第2の官能基)で置換される。シリカ粒子の表面に存在する水酸基の全てが第3の官能基で置換されていない場合には、シリカ粒子の表面に残存する水酸基が第2の官能基で置換される。このため、表面処理された表面改質シリカ粒子の表面には、式(1):−OSiXで表される官能基(すなわち第1の官能基)と、式(2):−OSiYで表される官能基と(すなわち第2の官能基)が結合する。なお、シランカップリング剤とオルガノシラザンとのモル比は、シランカップリング剤:オルガノシラザン=1:2〜1:10であるため、得られた表面改質シリカ粒子における第1の官能基と第2の官能基との存在数比は理論上1:12〜1:60となる。
【0053】
表面処理工程においては、シリカ粒子をシランカップリング剤及びオルガノシラザンで同時に表面処理しても良い。または、先ずシリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理し、次いでオルガノシラザンで表面処理しても良い。または、先ずシリカ粒子をオルガノシラザンで表面処理し、次いでシランカップリング剤で表面処理し、さらにその後にオルガノシラザンで表面処理しても良い。何れの場合にも、シリカ粒子の表面に存在する水酸基全てが第2の官能基で置換されないように、オルガノシラザンの量を調整すれば良い。なお、シリカ粒子の表面に存在する水酸基は、全てが第3の官能基で置換されても良いし、一部のみが第3の官能基で置換され、他の部分が第2の官能基で置換されても良い。第3の官能基に含まれるX、Xは、全て第2の官能基で置換されるのが良い。
【0054】
なお、オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤で置き換えても良い。第2のシランカップリング剤としては、3つのアルコキシ基と、1つのアルキル基とを持つものを用いることができる。この場合には、第3の官能基に含まれるX、Xが、第2のシランカップリング剤に由来する第4の官能基で置換される。第4の官能基は式(4);−OSiYで表される。Yは第2の官能基におけるYと同じRであり、X、Xはそれぞれアルコキシ基または水酸基である。第4の官能基に含まれるX、Xは、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、または、別の第4の官能基で置換される。この場合には、表面改質シリカ粒子の表面に存在するRの量をさらに多くする事ができる。なお、オルガノシラザンの一部を、第2のシランカップリング剤に置き換える場合、第2のシランカップリング剤で表面処理した後に、再度オルガノシラザンで表面処理する必要がある。第4の官能基に含まれるX、Xを、最終的にはオルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換するためである。
【0055】
オルガノシラザンの一部を第2のシランカップリング剤で置き換える場合、上述した第1の官能基に含まれるX、Xは、オルガノシラザンに由来する第2の官能基で置換されるか、第2のシランカップリング剤に由来する第4の官能基で置換される。X、Xが第4の官能基で置換された場合、第4の官能基に含まれるX、Xは、第2の官能基で置換されるか、別の第4の官能基によって置換される。第4の官能基に含まれるX、Xが別の第4の官能基によって置換された場合、第4の官能基に含まれるX、Xは、第2の官能基で置換される。このため第2のシランカップリング剤は、第1のカップリング剤及びオルガノシラザンのみで表面処理する場合(オルガノシラザンを第2のシランカップリング剤で置き換えなかった場合)に設定されるオルガノシラザンの量(a)molに対して、最大限5a/3mol置き換えることができる。この場合に必要になるオルガノシラザンの量は、8a/3molである。
【0056】
シランカップリング剤および第2のシランカップリング剤のアルコキシ基は特に限定しないが、比較的炭素数の小さなものが好ましく、炭素数1〜12であることが好ましい。アルコキシ基の加水分解性を考慮すると、アルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基の何れかであることがより好ましい。
【0057】
シランカップリング剤として、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0058】
オルガノシラザンとしては、シリカ粒子の表面に存在する水酸基およびシランカップリング剤に由来するアルコキシ基を、上述した第2の官能基で置換できるものであれば良いが、分子量の小さなものを用いるのが好ましい。具体的には、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン等が挙げられる。
【0059】
第2のシランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
なお、表面処理工程において、シランカップリング剤の重合や第2のシランカップリング剤の重合を抑制するため、重合禁止剤を加えても良い。重合禁止剤としては、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、p−メトキシフェノール(メトキノン)
等の一般的なものを用いることができる。
【0061】
本発明の表面改質シリカ粒子の製造方法は、表面処理工程後に固形化工程を備えても良い。固形化工程は、表面処理後の表面改質シリカ粒子を鉱酸で沈殿させ、沈殿物を水で洗浄・乾燥して、表面改質シリカ粒子の固形物を得る工程である。上述したように、一般的なシリカ粒子は非常に凝集し易いため、一旦固形化したシリカ粒子を再度分散するのは非常に困難である。しかし、本発明の表面改質シリカ粒子は凝集し難いため、固形化しても凝集し難く、また、例え凝集しても再分散し易い。なお、上述したように、表面改質シリカ粒子を水で洗浄することで、電子部品等の用途に用いられる表面改質シリカ粒子を容易に製造できる。なお、洗浄工程においては、表面改質シリカ粒子の抽出水(詳しくは、シリカ粒子を121℃で24時間浸漬した水)の電気伝導度が50μS/cm以下となるまで、洗浄を繰り返すのが好ましい。
【0062】
固形化工程で用いる鉱酸としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが例示でき、特に塩酸が望ましい。鉱酸はそのまま用いても良いが、鉱酸水溶液として用いるのが好ましい。鉱酸水溶液における鉱酸の濃度は0.1質量%以上が望ましく、0.5質量%以上が更に望ましい。鉱酸水溶液の量は、洗浄対象である表面改質シリカ粒子の質量を基準として6〜12倍程度にすることができる。
【0063】
鉱酸水溶液による洗浄は複数回数行うことも可能である。鉱酸水溶液による洗浄は表面改質シリカ粒子を鉱酸水溶液に浸漬後、撹拌することが望ましい。また、浸漬した状態で1時間から24時間、更には72時間程度放置することができる。放置する際には撹拌を継続することもできるし、撹拌しないこともできる。鉱酸含有液中にて洗浄する際には常温以上に加熱することもできる。
【0064】
その後、洗浄して懸濁させた表面改質シリカ粒子をろ取した後、水にて洗浄する。使用する水はアルカリ金属などのイオンを含まない(例えば質量基準で1ppm以下)ことが望ましい。例えば、イオン交換水、蒸留水、純水などである。水による洗浄は鉱酸水溶液による洗浄と同じく、表面改質シリカ粒子を分散、懸濁させた後、ろ過することもできるし、ろ取した表面改質シリカ粒子に対して水を継続的に通過させることによっても可能である。水による洗浄の終了時期は、上述した抽出水の電気伝導度で判断しても良いし、表面改質シリカ粒子を洗浄した後の排水中のアルカリ金属濃度が1ppm以下になった時点としても良いし、抽出水のアルカリ金属濃度が5ppm以下になった時点としても良い。なお、水で洗浄する際には常温以上に加熱することもできる。
【0065】
表面改質シリカ粒子の乾燥は、常法により行うことができる。例えば、加熱や、減圧(真空)下に放置する等である。
【0066】
乾燥以外で表面改質シリカ粒子を脱水する方法として、含水している表面改質シリカ粒子に対して、水よりも沸点が高い水系有機溶媒を添加後、その水系有機溶媒に溶解可能な混合材料を混合し、水を除去する方法を用いることができる。水系有機溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテル(プロピレングリコール−1−メチルエーテル、沸点119℃程度;プロピレングリコール−2−メチルエーテル、沸点130℃程度)、ブタノール(沸点117.7℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点204℃程度)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃程度)などが例示できる。
【0067】
混合材料は、水系有機溶媒よりも沸点が高い有機化合物である。沸点が水系有機溶媒及び水よりも高いので、最終的に表面改質シリカ粒子と共に残存することになる。混合材料はそのまま、又は、反応することで高分子にすることもできる。混合材料は、表面改質シリカ粒子を分散するマトリクスを形成することもできる。混合材料は、含水した表面改質シリカ粒子に対して水系有機溶媒を添加した状態で、分散乃至溶解できる化合物である。混合材料は高分子であっても低分子であっても良い。混合材料は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ブロックされたイソシアネート基、アミノ基、ハーフエステル基、アミック基、カルボキシ基、及び炭素-炭素二重結合基を化学構造中に有することが望ましい。これらの官能基は好適な反応条件を設定することで互いに結合可能な官能基(重合性官能基)であり、混合材料の分子量を向上できる。好適な反応条件としては単純に加熱や光照射を行ったり、熱や光照射によりラジカルやイオン(アニオン、カチオン)などの反応性種を生成したり、それらの官能基間を結合する反応開始剤(重合開始剤)を添加して加熱や光照射を行うことなどである。重合反応に際して必要な化合物を硬化剤として添加したり、その反応に対する触媒を添加することもできる。
【0068】
混合材料としては重合により高分子材料を形成する単量体や、上述したような重合性官能基により修飾した高分子材料が好ましいものとして挙げられる。例えば、硬化前の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのプレポリマーが好適である。
【0069】
水(更には水系有機溶媒も)を除去することで、混合材料中に表面改質シリカ粒子が混合乃至分散した状態とすることができる。
【0070】
(フィラー含有組成物)
本実施形態のフィラー含有組成物は上述の表面改質シリカ粒子と樹脂材料(及び/又は樹脂材料前駆体、以下「樹脂材料等」と記載する)とを混合したものである。表面改質シリカ粒子と樹脂材料等との混合比は特に限定しないが、表面改質シリカ粒子の量が多い方が熱的安定性に優れたものになる。
【0071】
更に上述の表面改質シリカ粒子は球形度が高いため樹脂材料等中への充填性が高く、金属材料の含有量、Na、Kなどのイオン性物質の量などを好適に制御することが容易なため水による抽出物により電気伝導性を示すことがなくなり電子機器に好適に用いることができる。
【0072】
樹脂材料等は何らかの条件下で硬化可能な組成物である。例えば、プレポリマーと硬化剤との混合物である。硬化剤は硬化直前に混合しても良い。樹脂材料等としてはその種類は特に限定しない。例えば、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ブロックされたイソシアネート基、アミノ基、ハーフエステル基、アミック基、カルボキシ基及び炭素-炭素二重結合基を化学構造中に有することが望ましい。これらの官能基は好適な反応条件を設定することで互いに結合可能な官能基(重合性官能基)であり、適正な反応条件を選択することにより樹脂材料等を硬化させることができる。硬化させるための好適な反応条件としては単純に加熱や光照射を行ったり、熱や光照射によりラジカルやイオン(アニオン、カチオン)などの反応性種を生成したり、それらの官能基間を結合する反応開始剤(重合開始剤)を添加して加熱や光照射を行うことなどである。重合反応に際して必要な化合物を硬化剤として添加したり、その反応に対する触媒を添加することもできる。
【0073】
樹脂材料等としては重合により高分子材料を形成する単量体や、上述したような重合性官能基により修飾した高分子材料が好ましいものとして挙げられる。例えば、硬化前の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などのプレポリマーが好適である。特に熱的安定性の高いものにする場合にはエポキシ樹脂を主体として組成物を構成することが望ましい。
【実施例】
【0074】
本発明の表面改質シリカ粒子について実施例に基づき説明を行う。
(表面改質シリカ粒子の製造)
・シリカ粒子の製造
試験例1:VMC法によりシリカ粒子を製造した。以下、具体的に説明する。図4に本工程で使用した製造装置の概要を示す。この製造装置は、反応室10をもつ反応容器1と、反応容器1の上部に設けられ反応室10に開口する燃焼器2と、反応容器1の下部側壁に設けられ反応室10と連通する捕集装置3と、ホッパー4と、ホッパー4内の原料粉末を燃焼器2へ供給する粉末供給装置5とから構成されている。
燃焼器2は、図5に拡大して示すように、軸中心に設けられ反応室10に開口する粉末供給路20と、粉末供給路20と同軸的に設けられ反応室10にリング状に開口する可燃ガス供給路21と、可燃ガス供給路21の外側に同軸的に設けられ反応室10にリング状に開口する酸素供給路22とから構成されている。捕集装置3は、反応室10に開口する排気管30と、排気管30の他端に接続されたバグフィルタ31と、ブロア32とからなり、ブロア32の駆動により反応室10内の燃焼排ガスを吸引して排気するとともに、生成した球状シリカを捕集する。なお、ブロア32の吸引により、反応室10内は負圧に保たれる。
【0075】
上記した製造装置を用い、以下に示す製造方法により球状シリカを製造した。シリコン粒子をホッパ4に投入し、粉末供給装置5から空気とともに反応室10内に供給した。このときシリコン粒子は30kg/hrの割合で供給され、搬送空気の量は30Nm3 /hrであった。また、着火用の燃料である可燃ガスは、可燃ガス供給路21から10Nm3 /hrの量で供給され、支燃性ガスである酸素ガスは、酸素供給路22から300Nm3 /hrの量で供給した。
【0076】
すなわち粉末供給装置5から燃焼器2へ供給された混合粉末は、酸素ガスとともに連続的に可燃ガスの燃焼により形成された着火炎で着火され、爆発的に燃焼して火炎を生成した。この火炎は燃焼器2から反応室10に延び、生成した球状シリカが捕集装置3により捕集される。
【0077】
このシリカ粒子を水中に分散し固形分濃度20質量%の分散液を得た。次に遠心場におけるデカンテーションにより遠心加速度:1700G、角速度:471rad/sec、滞留時間5.5minの条件で粗大粒子の沈降・除去を実施した、さらに1μmフィルタリングによる除去を実施した。
【0078】
(表面処理工程)
(1)準備工程
シリカ粒子が20質量部の濃度で水に分散したスラリー100質量部にイソプロパノール40質量部を加え、室温(約25℃)で混合することで、シリカ粒子が液状媒体に分散されてなる分散液を得た。
【0079】
(2)第1工程
この分散液に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM503)0.26質量部とを加え、さらにこのシランカップリング剤に加えて重合禁止剤(3.5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン (BHT)、関東化学工業製)を0.02質量部加え、40℃で72時間混合した。この工程により、シリカ粒子の表面に存在する水酸基をシランカップリング剤で表面処理した。なお、このとき3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは必要な量の水酸基(一部)が表面処理されず残存するように計算して加えた。
【0080】
(3)第2工程
次いで、この混合物にヘキサメチルジシラザン0.42質量部を加え、40℃で72時間放置した。この工程によって、シリカ粒子が表面処理され、シリカ粒子材料が得られた。表面処理の進行に伴い、疎水性になったシリカ粒子が水及びイソプロパノールの中に安定に存在できなくなり、凝集・沈殿した。なお、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとメキサメチルジシラザンとのモル比は2:5であった。
【0081】
(4)固形化工程
表面処理工程で得られた混合物に35%塩酸水溶液を2.3質量部加え、シリカ粒子材料を沈殿させた。沈殿物をろ紙(アドバンテック社製 5A)で濾過した。濾過残渣(固形分)を純水で洗浄した後に100℃で真空乾燥して、シリカ粒子材料の固形物を得た。
【0082】
得られたシリカ粒子はD10が103.5nm、D50が167.6nm、D90が280.2nmであった。比表面積は38.2m/g、ウラン濃度が0.2ppb、トリウム濃度が0.3ppbであった。アルカリ金属、アルカリ土類金属の総量は1ppm以下であった。吸水性は0.3質量%であった。ウラン、トリウム濃度及びナトリウム濃度、吸水性の値が充分に小さかった。1μm以上の粗大粒子量は21個であった。
【0083】
この試料を試験例1の試験試料とした。SEM写真を図1に示す。
【0084】
試験例2:シリカ粒子としてコロイダルシリカの一種であるカタロイドSI−80P(日揮触媒化成株式会社製、水中に分散されており固形分濃度40%)を用いた。準備工程において、カタロイドSI−80P100質量部に水100質量部とイソプロパノール80質量部を加えた。第1工程においてシランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.58質量部と重合禁止剤0.03質量部を加えた。また、第2工程においてヘキサメチルジシラザン0.94質量部を加えた。固形化工程において35%塩酸水溶液を4.7質量部加えシリカ粒子材料の固形物を得た。得られたシリカ粒子はD10が73.3nm、D50が102.1nm、D90が141.7nmであった。比表面積は35.6m/g、ウラン濃度が3.2ppb、トリウム濃度が120ppbであった。アルカリ金属、アルカリ土類金属の総量は3000ppmであった。吸水性は1.2質量%であった。ウラン及びトリウム濃度が大きかった。また、ナトリウム元素の濃度も高かった。1μm以上の粗大粒子量は0個であった。
【0085】
この試料を試験例2の試験試料とした。SEM写真を図2に示す。
【0086】
試験例3:シリカ粒子としてコロイダルシリカの一種であるクォートロンPL−7(扶桑化学工業株式会社製 水中に分散されており固形分濃度23%)を用いた。第1工程においてシランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.32質量部と重合禁止剤0.02質量部を加えた。また、第2工程においてヘキサメチルジシラザン0.52質量部を加えた。固形化工程において35%塩酸水溶液を2.4質量部加えシリカ粒子材料の固形物を得た。得られたシリカ粒子はD10が79.9nm、D50が107.8nm、D90が144.0nmであった。比表面積は37.6m/g、ウラン濃度が0.05ppb、トリウム濃度が0.1ppbであった。アルカリ金属、アルカリ土類金属の総量は1ppm以下であった。吸水性は5.4質量%であった。ウラン、トリウム、ナトリウム濃度が小さく優れているが、吸水性の値が非常に大きかった。1μm以上の粗大粒子量は0個であった。
【0087】
この試料を試験例3の試験試料とした。SEM写真を図3に示す。
【0088】
試験例4:シリカ粒子としてコロイダルシリカの一種であるスノーテックスOS(日産化学工業株式会社製 水中に分散されており固形分濃度20%)を用いた。第1工程においてシランカップリング剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.28質量部と重合禁止剤0.02質量部を加えた。また、第2工程においてヘキサメチルジシラザン3.71質量部を加えた。固形化工程において35%塩酸水溶液を4.8質量部加えシリカ粒子材料の固形物を得た。比表面積は298.1m/gであった。
【0089】
この試料を試験例4の試験試料とした。
・比較
以上のように、試験例1の試験試料はウラン、トリウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属の量がすべて少なく、且つ、吸水性も低いものであった。
・流動性の評価
試験例1の試験試料と比表面積が同じ程度になるように2種類のシリカ粒子を混合した。同じような粒度分布をもつ場合には比表面積が流動性に与える影響が大きいからである。具体的には試験例2の試験試料(D50が100nm程度)と試験例4の試験試料(D50が10nm程度)とを質量比で99:1に混合した。
【0090】
それぞれの試験試料をシクロヘキサノンに分散させたときの粘度を測定した。濃度は50質量%と60質量%とにした。粘度の測定は振動式粘度計(山一電機工業株式会社:ビスコメイトVM−1G)を用いて25℃で測定を行った。
【0091】
結果、試験例1は50%が31.5mPa・s、60%が75.1mPa・sであり、試験例2及び4の混合物は50%が58.9mPa・s、60%が252.0mPa・sであった。この差異は試験例1の試験試料の粒度分布によりもたらされたものと推測できた。
図1
図2
図3
図4
図5