【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の一つの態様は、配列番号1で表されるポリヌクレオチドにおいて1524番目〜1527番目の塩基を含む5〜300個の連続した塩基で構成されるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドを含む、豚の肉質形質判断用遺伝子マーカー組成物を提供する。
【0015】
本発明では、MYH3遺伝子によって豚の筋内脂肪含量及び赤色度の肉質形質が決定されることを確認し、肉質形質が優れた在来種と優れない外来種間には前記遺伝子に変異が存在するため、前記変異を含む遺伝子マーカーを検出することにより、豚の肉質形質を判断することができるだけでなく、外来豚と韓国在来種豚を区別することができることを確認して、本発明を完成した。
【0016】
本発明の用語、「遺伝子マーカー」は、遺伝子座位の突然変異または変形によってできた多様性を識別するために使用される短いDNA配列を意味する。
【0017】
本発明の目的上、前記遺伝子マーカーは、豚の品種間に塩基変異が示される遺伝子を意味してもよい。
【0018】
本発明の用語、「配列番号1で表されるポリヌクレオチド」は、MYH3遺伝子
を意味する。前記用語、「MYH3遺伝子」は、動物の筋肉を構成するミオシンに含まれる重鎖タンパク質の一つであるミオシン重鎖3(myosin heavy chain 3)をコードする遺伝子を意味し、この塩基配列はNCBIのGenBankなど公知のデータベースから得ることができる(GenBank Accession No. KX549312)。具体的な例として、前記遺伝子は豚から由来した遺伝子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の遺伝子マーカーは、これに限定されないが、配列番号1で表されるポリヌクレオチドにおいて1524番目〜1527番目の塩基を含む、ACGTの連続した塩基であってもよい。
【0020】
また、前記遺伝子マーカーは、これに限定されないが、前記塩基を含む5〜300個、具体的に5〜280個、さらに具体的に5〜260個の連続した塩基で構成されるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の用語、「肉質形質」は、豚から得られた骨を除いた屠畜物の状態を示す様々な表現形質を意味するが、前記表現形質は、特にこれに制限されないが、筋内脂肪含量、肉色、保水力、せん断力などであってもよく、さらに具体的に筋内脂肪含量または肉色であってもよい。筋内脂肪含量は、筋肉内に含まれた脂肪の含量、肉色は、肉眼で判断される肉の色、保水力は、畜肉が水分を保持する能力、せん断力は、肉を裂くときの固い程度であって、筋内脂肪含量は高いほど、肉色は赤色を示すほど、保水力及びせん断力は低いほど肉質の品質が高いものと判断することができる。
【0022】
本発明で、前記マーカーが検出される場合、検出されない場合と対比するとき、筋内脂肪含量は高く、肉色は赤色度が増加したと判断することができる。
【0023】
本発明の具体的な一実施例では、済州在来豚とランドレース(landrace)またはデュロック(duroc)豚を交配して得られた子孫を対象に、豚の肉質形質についてQTL解析及びLALD(Linkage and linkage disequilibrium)マッピングを行った結果、豚の肉質形質に関与する遺伝子は、12番染色体に存在するMYH3遺伝子であることを確認した(
図2〜4)。
【0024】
また、MYH3遺伝子の遺伝型を分析した結果、肉質が良くない外来種であるランドレースと肉質が良い在来種である済州在来豚の間で塩基変異(QTN: i.e., MYH3-1805_-1810delGGACTG)が存在することを確認しており(
図11)、HpyCH4IV制限酵素を用いて前記原因塩基変異を切断した結果、両豚の遺伝子切断様相が異なることを確認した(
図12)。
【0025】
これは、本発明の遺伝子マーカーは、外来豚と在来豚の判別だけでなく、種の区別による肉質形質も判断することができることを示唆しているものである。したがって、本発明の遺伝子マーカーを利用すれば、肉質形質のレベルを正確に判断することができると期待され、前記遺伝子マーカーは、本発明者らによって初めて究明されたものである。
【0026】
もう一つの態様は、前記遺伝子マーカーを検出することができる製剤を含む、豚の肉質形質判断用組成物を提供する。
【0027】
本発明の用語、「遺伝子マーカーを検出することができる製剤」は、本発明の遺伝子マーカーに特異的に結合して認識したり、前記遺伝子マーカーを増幅させることができる製剤として、具体的な例として、前記遺伝子マーカーに特異的に結合するプライマーまたはプローブであってもよい。
【0028】
本発明の用語、「プローブ」(probe)は、mRNAと特異的結合をすることができる、短い場合は数塩基から長い場合は数百塩基に対応するRNAまたはDNAなどのラベルリング(labeling)されている核酸断片を意味する。プローブは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)プローブ、単一鎖DNA(single stranded DNA)プローブ、二重鎖DNA(double stranded DNA)プローブ、RNAプローブなどの形態で製作されることができる。
【0029】
本発明で、遺伝子マーカーに結合及び認識するプローブは、遺伝子マーカーを含むポリヌクレオチド配列に対して相補的な配列を含み、これに限定されないがDNA、RNA、またはDNA-RNAハイブリッド(hybrid)形態であってもよい。また、肉眼で認識可能にするために、プローブの5’または3’末端に蛍光標識因子、放射線標識因子などを追加で取り付けてもよい。
【0030】
本発明の用語、「プライマー」とは、短い自由3’末端水酸基(free 3'hydroxyl group)を有する塩基配列であり、相補的なテンプレート(template)と塩基対(base pair)を形成することができ、鋳型鎖のコピーのための出発点としての機能をする短い配列を意味する。本発明で、遺伝子マーカーの増幅に使用されるプライマーは、適切なバッファー中の適切な条件(例えば、4つの異なるヌクレオシドトリホスフェイト及びDNA、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合剤)及び適切な温度下で鋳型-指示DNA合成の開始点として作用することができる一本鎖オリゴヌクレオチドになることができるが、前記プライマーの適切な長さは、使用目的に応じて異なってもよい。前記プライマー配列は、前記遺伝子マーカーを含むポリヌクレオチドまたはこの相補的なポリヌクレオチドと完全に相補的である必要はなく、混成化する程度に十分相補的であれば使用可能である。
【0031】
さらに、プライマーは変形させることができるが、具体的な例として、メチル化、キャップ化、ヌクレオチドの置換またはヌクレオチド間の変形、例えば、荷電されてない連結体(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホラミデート、カーバメートなど)または荷電された連結体(例:ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)への変形がありうる。
【0032】
本発明では、前記プライマーは、配列番号65及び66で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明の具体的な一実施例では、配列番号65及び66のプライマーを用いて外来豚と在来豚の間に存在する塩基の変異部分を増幅した後、HpyCH4IV制限酵素で前記塩基変異の塩基配列の中から「ACGT」の部分を切断して切断様相を確認した結果、肉質が良くない外来種であるランドレースと肉質が良い在来種である済州在来豚の制限酵素切断様相が明確に区別されることを確認した(
図12)。
【0034】
これは、本発明の豚の肉質形質判断用組成物は、外来豚と在来豚の判断だけではなく、種の区別による肉質形質を判断するのに有用に使用することができることを示唆するものである。
【0035】
もう一つの態様は、前記組成物を含む豚の肉質形質判断用キットを提供する。
【0036】
本発明のキットは、本発明の遺伝子マーカーを増幅することにより確認するか、前記遺伝子マーカーのmRNA発現レベルを確認することにより、豚の肉質形質レベルを判断することができる。具体的な例として、前記キットは、RT-PCRキットまたはDNAチップキットであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0037】
さらに具体的な例として、前記キットは、RT-PCRを実行するために必要な必須要素を含むキットであってもよい。例えば、RT-PCRキットは、前記遺伝子マーカーに対する特異的なそれぞれのプライマーの他、テストチューブまたは他の適切な容器、反応緩衝液(pH及びマグネシウム濃度は多様)、ジオキシヌクレオチド(dNTPs)、ジジオキシヌクレオチド(ddNTPs)、Taqポリメラーゼ及び逆転写酵素のような酵素、DNase、RNAse抑制剤、DEPC水(DEPC-water)、滅菌水などを含んでもよい。。また、定量対照群として使用される遺伝子に特異的なプライマー対を含んでもよい。
【0038】
別の具体的な例として、本発明のキットはDNAチップを実行するために必要な
必須要素を含むDNAチップキットであってもよい。
【0039】
本発明の用語、「DNAチップ」は、数十万個のDNAの各塩基を一度に確認することができるDNAマイクロアレイのいずれかを意味する。前記DNAチップキットは、一般的に平らな固体支持板、典型的には顕微鏡用スライドより大きくないガラス表面に核酸種を格子状配列(gridded array)に付着したもので、チップ表面に核酸が一定に配列され、DNAチップ上の核酸とチップ表面に処理された溶液に含まれた相補的な核酸の間に多重の混成化(hybridization)反応が起き、大量の並列分析を可能にするツールである。
【0040】
本発明のもう一つの態様は、前記の遺伝子マーカーを含む、豚の肉質形質判断用マイクロアレイを提供する。
【0041】
前記マイクロアレイは、DNAまたはRNAポリヌクレオチドを含むものであってもよい。前記マイクロアレイは、プローブポリヌクレオチドに本発明のポリヌクレオチドを含むことを除いては、 通常のマイクロアレイからなってもよい。
【0042】
プローブポリヌクレオチドを基板上に固定化してマイクロアレイを製造する方法は、当業界によく知られている。前記プローブポリヌクレオチドは、混成化することができるポリヌクレオチドを意味するもので、核酸の相補鎖に配列特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドを意味する。本発明のプローブは、対立遺伝子特異的プローブとして、同じ種の二つの構成員から由来した核酸断片中に多形成部位が存在して、一構成員から由来したDNA断片は混成化するが、他の構成員から由来した断片は、混成化しない。この場合、混成化条件は対立遺伝子間の混成化強度において有意な差を示し、対立遺伝子のいずれかのみ混成化するように十分厳格でなければならない。これにより、他の対立遺伝子形態間で良い混成化の違いを誘発することができる。本発明の前記プローブは、対立遺伝子を検出して豚の肉質形質判断方法などに使用することができる。前記識別方法には、サザンブロットなどの核酸の混成化に基づく検出方法が含まれており、DNAチップを利用した方法でDNAチップの基板に予め結合された形態で提供されてもよい。前記混成化とは、厳しい条件、例えば、1M以下の塩濃度及び25℃以上の温度下で行われてもよい。
【0043】
本発明の豚の肉質形質レベルの判断と関連付けられたプローブポリヌクレオチドを基板上に固定化する過程もまた、このような従来技術を使用して容易に行うことができる。また、マイクロアレイ上での核酸の混成化及び混成化結果の検出は、当業界でよく知られている。前記検出は、例えば、核酸試料を蛍光物質、例えば、Cy3及びCy5のような物質を含む検出可能な信号を発生させることができる標識物質で標識した後、マイクロアレイ上で混成化して前記標識物質から発生する信号を検出することにより、混成化結果を検出することができる。
【0044】
もう一つの態様は、(a)個体から分離された試料のDNAから前記遺伝子マーカーを増幅させる段階;及び(b)前記(a)段階の増幅産物の塩基を決定する段階を含む、豚の肉質形質を判断する方法を提供する。
【0045】
本発明では、前記(b)段階の増幅産物にACGTの連続した塩基が含まれた場合、豚の肉質形質が外来豚のものより優れると判断する(c)段階をさらに含むことができる。
【0046】
本発明の用語、「個体」は、肉質形質レベルを確認しようとする対象である豚を意味し、前記豚から得られた検体を用いて、前記遺伝子マーカーに含まれた遺伝子型を分析することにより、前記豚の肉質形質を判断することができる。前記検体には毛、尿、血液、各種体液、分離された組織、分離された細胞または唾液のような試料などがなってもよいが、前記遺伝子を検出することができる限り、これに特に制限されない。
【0047】
本発明の用語、「外来豚」は、韓国土種豚に反対する概念で、韓国以外の国から持ち込んだ豚の品種を意味する。一般的に、外来豚は韓国在来豚に比べて病気に弱く、筋内脂肪、多汁性、柔度などの肉質特性が良くないと知られている。具体的な例として、バークシャー(berkshire)種、ヨークシャー(yorkshire)種、デュロックジャージー(duroc jersey)種、ハンプシャー(hampshire)種、ランドレース(landrace)種などがあり、本発明の目的上、前記外来豚は外来豚と交雑されたすべての品種を意味することができる。
【0048】
本発明で、前記(a)段階のDNAから本発明の遺伝子マーカーを増幅する段階は、当業者に知られているあらゆる方法が使用可能である。具体的な例として、PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅(transcription amplification)、自己維持配列複製、核酸に基づく配列増幅(NASBA)などが使用されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0049】
また、前記(b)段階の増幅産物に含まれた遺伝子マーカーの塩基を決定する段階も当業者に知られているあらゆる方法でも使用可能である。具体的な例として、シーケンシング、ミニシーケンシング、対立遺伝子特異的PCR(allele specific PCR)、ダイナミック対立遺伝子混成化(dynamic allele-specifichybridization; DASH)、PCR延長分析(例えば、単一塩基延長(single base extension; SBE)、PCR-SSCP、PCR-RFLP分析またはTaqMan法、SNPlexプラットフォーム(Applied Biosystems)、質量分析法(例えば、SequenomのMassARRAYシステム)、Bio-Plexシステム(BioRad)、制限酵素切断法などを利用して行うことができるが、前記増幅産物に含まれたACGTの連続した塩基を検出することができる限り、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明の具体的な一実施例では、配列番号65及び66のプライマーを用いて外来豚と在来豚の間に存在する塩基の変異部分を増幅した後、HpyCH4IV制限酵素で前記増幅された塩基配列の中から「ACGT」の部分を切断して切断様相を確認した結果、肉質が良くない外来種であるランドレースと肉質が良い在来種である済州在来豚の切断様相が明確に区別されることを確認した(
図12)。
【0051】
これは、本発明の豚の肉質形質を判断する方法は、外来豚と在来豚の種を識別することができるのみならず、種の区別による肉質形質も判断することができることを示唆するものである。
【0052】
もう一つの態様は、前記遺伝子マーカーを検出することができる製剤を含む、韓国土種豚の判別用組成物を提供する。
【0053】
このとき、前記「遺伝子マーカーを検出することができる製剤」の定義は、前述した通りである。
【0054】
本発明の用語、「韓国土種豚」は、外来豚に反対となる概念で、伝統的に韓国で飼育された豚の品種を意味する。一般的に、韓国土種豚は外来豚に比べて病気に強く、筋内脂肪、多汁性、柔度などの肉質特性に優れたものとして知られている。具体的な例として、チュクジンチャム豚、江原道のサンウリ在来豚、済州在来黒豚、済州糞豚などのいくつかの名前で呼ばれる済州在来豚などがあり、さらに具体的には、済州在来豚であってもよいが、これらに限定されない。本明細書では、前記韓国土種豚は、「土種豚」、「韓国在来豚」または「在来豚」と混用されて命名されうる。
【0055】
本発明で、前記マーカーが検出される場合、検出されない場合と対比すると韓国土種豚であると判別することができる。
【0056】
もう一つの態様は、(a)個体から分離された試料のDNAから請求項1または2に記載の遺伝子マーカーを増幅させる段階;及び(b)前記(a)段階の増幅産物の塩基を決定する段階を含む、韓国土種豚の判別方法を提供する。
【0057】
本発明では、前記(b)段階の増幅産物にACGTの連続した塩基が含まれている場合、韓国土種豚であると判断する(c)段階をさらに含むことができる。
【0058】
このとき、前記「個体」及び「韓国土種豚」の定義は、前述した通りである。
【0059】
本発明で、前記(a)段階のDNAから本発明の遺伝子マーカーを増幅する段階は、当業者に知られているあらゆる方法でも使用可能である。具体的な例として、PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅(transcription amplification)、自己維持配列複製、核酸に基づく配列増幅(NASBA)などが使用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
また、前記(b)段階の増幅産物に含まれた遺伝子マーカーの塩基を決定する段階も当業者に知られているあらゆる方法でも使用可能である。具体的な例として、シーケンシング、ミニシーケンシング、対立遺伝子特異的PCR(allele specific PCR)、ダイナミック対立遺伝子混成化(dynamic allele-specifichybridization; DASH)、PCR延長分析(例えば、単一塩基延長(single base extension; SBE)、PCR-SSCP、PCR-RFLP分析またはTaqMan法、SNPlexプラットフォーム(Applied Biosystems)、質量分析法(例えば、SequenomのMassARRAYシステム)、Bio-Plexシステム(BioRad)、制限酵素切断法などを利用して行うことができるが、前記増幅産物に含まれたACGTの連続した塩基を検出することができる限り、これに制限されるものではない。
【0061】
本発明の具体的な一実施例では、配列番号65及び66のプライマーを用いて外来豚と在来豚間に存在する塩基の変異部分を増幅した後、HpyCH4IV制限酵素で前記増幅された塩基配列の中で「ACGT」の部分を切断して切断様相を確認した結果、肉質が良くない外来種であるランドレースと肉質が良い在来種である済州在来豚の切断様相が明確に区別されることを確認した(
図12)。
【0062】
これは、本発明の豚の肉質形質を判断する方法は、外来豚と在来豚の種を識別することができることを示唆するものである。