(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483234
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】塩混合物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/12 20060101AFI20190304BHJP
F24S 10/30 20180101ALI20190304BHJP
F24S 20/20 20180101ALI20190304BHJP
F24S 23/74 20180101ALI20190304BHJP
F24S 23/77 20180101ALI20190304BHJP
F24S 50/20 20180101ALI20190304BHJP
F24S 60/10 20180101ALI20190304BHJP
F28D 20/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
C09K5/12 E
F24S10/30
F24S20/20
F24S23/74
F24S23/77
F24S50/20
F24S60/10
F28D20/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-502675(P2017-502675)
(86)(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公表番号】特表2017-523284(P2017-523284A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2015061159
(87)【国際公開番号】WO2016008617
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】14177276.4
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ハイルマン
(72)【発明者】
【氏名】エトヴィン ローファース
(72)【発明者】
【氏名】ステーフェン デ ヴィスペレーレ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス イュープラー
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0258760(US,A1)
【文献】
特開2013−224343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/
F24S
F28D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸カリウムKNO3及び硝酸ナトリウムNaNO3を含む無水二成分塩混合物であって、KNO3含有率が65質量%〜68質量%の範囲にある、熱エネルギーを伝達及び/又は貯蔵するための前記塩混合物。
【請求項2】
KNO3含有率が66.6質量%であり、NaNO3含有率が33.4質量%である、請求項1に記載の塩混合物。
【請求項3】
液相線温度が235℃〜250℃の範囲にある、請求項1又は2に記載の塩混合物。
【請求項4】
融解熱が100J/g未満である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の塩混合物。
【請求項5】
平衡状態で600℃での平衡定数Kが20 1/√バール以上である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の塩混合物。
【請求項6】
質量損失が、635℃の温度の場合、初期質量に対して3%より低い、請求項1から5までのいずれか1項に記載の塩混合物。
【請求項7】
熱エネルギーを伝達及び/又は貯蔵するための請求項1から6までのいずれか1項に記載の混合物の使用。
【請求項8】
集光型太陽熱発電プラントにおいて熱エネルギーを伝達及び/又は貯蔵するための請求項7に記載の混合物の使用。
【請求項9】
発電塔レシーバーユニットを備える集光型太陽熱発電プラントにおいて熱エネルギーを伝達及び/又は貯蔵するための請求項8に記載の混合物の使用。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の混合物を含む熱伝達及び/又は熱エネルギー貯蔵流体。
【請求項11】
熱伝達流体が請求項1から6までのいずれか1項に記載の塩混合物を含む熱伝達法であって、250℃〜640℃の温度範囲(境界の値を含む)で稼働することを特徴とする、前記熱伝達法。
【請求項12】
少なくとも575℃のバルク温度及び少なくとも620℃のフィルム温度で稼働することを特徴とする、請求項11に記載の熱伝達法。
【請求項13】
少なくとも585℃のバルク温度及び少なくとも620℃のフィルム温度で稼働することを特徴とする、請求項11に記載の熱伝達法。
【請求項14】
塩混合物が、620℃〜640℃の範囲のフィルム温度(境界の値を含む)まで加熱され、300℃〜640℃の加熱ランプが、非平衡状態の間、100〜1500K/分の範囲にあることを特徴とする、請求項11又は12に記載の熱伝達法。
【請求項15】
内部ポンプ圧力及び/又は適用空気及び/又は純酸素気相圧力が、1〜40バールの範囲にあることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の熱伝達法。
【請求項16】
請求項10に記載の熱伝達流体が流れる少なくとも1つのレシーブパイプ、及び/又は請求項10に記載の熱エネルギー貯蔵流体が蓄積される少なくとも1つの集熱デバイスを含む集光型太陽熱発電プラント。
【請求項17】
蓄積された熱エネルギー貯蔵流体が、575℃〜595℃の範囲のバルク温度(境界の値を含む)に加熱され、水/蒸気サイクルの熱交換器中に後で送るために定常状態で集熱デバイスに貯蔵される、請求項16に記載の集光型太陽熱発電プラント。
【請求項18】
蓄積された熱エネルギー貯蔵流体が、585℃のバルク温度に加熱され、水/蒸気サイクルの熱交換器中に後で送るために定常状態で集熱デバイスに貯蔵される、請求項16に記載の集光型太陽熱発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、硝酸ナトリウムと硝酸カリウムを一定の割合で含む無機硝酸塩の混合物に関し、これは例えば集光型太陽熱発電(CSP)プラント内で、熱エネルギーの貯蔵のために及び熱伝達流体として使用することができる。好ましくは、本発明は、地上にあるヘリオスタットミラー形状を利用する点集束レシーバー型発電塔を備えた熱力学太陽光システムで使用され得る。
【0002】
本発明は更に、広い温度範囲で熱交換を伴う工業プロセスの多くの用途で熱伝達流体として使用され得る。
【0003】
太陽光発電塔からの再生可能エネルギーは、今後数十年間でエネルギー需要の大部分を満たすことができると期待されている。この形のゼロエミッション式集光型太陽熱発電(CSP)は、多数のいわゆるヘリオスタット、即ち、太陽を追尾する平面ミラー形状を利用しており、これは隣接する太陽塔の最上部に位置する地点に入射太陽光を反射させることによって集光する。このいわゆるレシーバーは、閉じ込められた熱伝達流体を高いバルク温度、通常、約565℃まで加熱する高度に洗練されたアセンブリである。次に熱い熱伝達流体が、通常の水/蒸気サイクルの熱交換器にポンプ輸送され、そこで、供給された水がエコノマイザー部、エバポレーター部及びスーパーヒーター部による3段階プロセスを介して気化される。次に蒸気がタービンを通って供給され、発電機によって電気がもたらされる。供給されたエネルギーは次いで電力網に供給される。
【0004】
太陽がない場合(例えば、夜間、日陰又は長期間の悪天候の場合)にも電気を生成できるようにするために、熱伝達流体は発電塔内のレシーバーシステムで熱を集めるだけでなく、熱エネルギーを蓄えるためにも使用される。この目的のために、熱い熱伝達流体の大部分は大型タンクに貯蔵されている。日照時間の間、このようにすることで、熱い熱伝達流体を水/蒸気サイクルに供給することにより後で送るための熱が蓄熱システムに溜まる。このセットアップは、ダイレクト2タンクCSPシステムとして知られている。
【0005】
熱伝達流体は1日のサイクルで約565℃の温度まで加熱されているため、媒体は熱安定性、比熱容量、動的粘度、熱伝導率、蒸気圧、通常30年間の寿命の連続運転コストなどの複数の要件を満たさなければならない。
【0006】
従来技術のダイレクト2タンクCSPシステムは、通常、熱伝達流体や熱エネルギー貯蔵媒体として溶融塩混合物を使用している。「ソーラーソルト(solar salt)」と呼ばれることの多い、周知の塩の混合物は、硝酸ナトリウム(NaNO
3)と硝酸カリウム(KNO
3)を含み、その際、NaNO
3含有率は60質量%であり、KNO
3含有率は40質量%である。この混合物は、238℃の液相線温度を有し、約585℃までの温度での高い熱安定性、0.5W/m・kの熱伝導率で約1.55kJ/kg・Kの大きな比熱容量、及び300℃で約3mPa・sの動的粘度を併せ持ち、非毒性で、オーステナイト系ステンレス鋼に対する腐食性が低く、塩の投資コストが比較的安い。これはタワーCSPシステムで使用されるだけでなく、蓄熱機能を備えた公知の放物型トラフCSPプラントにおける熱エネルギー貯蔵媒体としても使用されている。
【0007】
ソーラーソルトは、空気に曝されると約600℃で亜硝酸塩を介してアルカリ金属酸化物に不可逆的に分解し始める。同じことが、他の既知のNaNO
3/KNO
3混合物、例えば、約223℃の液相線温度を有する共晶NaNO
3/KNO
3にも当てはまる。
【0008】
より高い最高温度を維持できる流体を使用することは、システム全体のカルノー効率がサイクルの最高温度とともに増加するので非常に望ましい。
【0009】
有望なクラスの流体は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及び/又はストロンチウムの塩化物を適切な共晶組成で含有する。このような流体は、約250℃の温度で液化し、700℃までの温度で、場合によってはそれを上回る温度で分解しない。しかしながら、これらの液体には幾つかの欠点がある。LiCl又はCsClなどの成分は高価であるか又は大量に入手できない場合もある。また、塩化物は、液状塩化物の攻撃に伴う腐食やクロムの減損に対処するため、高価なステンレス鋼を必要とする。水分との接触時に腐食の傾向が激しくなり、過熱時に危険なガス状塩化水素を同時に生成するので、タンクシステムは、水と接触してはならない。一般的に言えば、塩化物を含有する塩混合物を使用する際の欠点は利点を上回る。
【0010】
従って、本発明の課題は、良く知られたNaNO
3とKNO
3との60/40(質量)混合物よりも高い温度を維持し、同時にかかる塩混合物における塩化物の使用に伴う欠点を回避し得る塩混合物を提供することである。
【0011】
本発明によれば、KNO
3含有率が60質量%〜75質量%、好ましくは63質量%〜70質量%、更に好ましくは65質量%〜68質量%の範囲にある硝酸カリウムKNO
3及び硝酸ナトリウムNaNO
3を含む、無水二成分塩混合物が提供される。
【0012】
好ましい一実施形態ではKNO
3含有率は66.6質量%であり、NaNO
3含有率は33.4質量%である。
【0013】
本発明はまた、エネルギーを伝達及び/又は貯蔵するための塩混合物;熱伝達及び/又は熱エネルギー貯蔵流体;熱伝達法;及び集光型太陽熱発電プラントの使用に関する。
【0014】
有利には、本発明による塩混合物は、同じ安価な成分、即ち、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウムを周知のソーラーソルトとして利用し、従って低コストで製造され得る。
【0015】
驚くべきことに、本発明による塩混合物は、ほぼ同一の熱物性(融点、比熱容量、熱伝導率及び動的粘性)を有するが、分解なしで又は最小限の分解で640℃までの温度(フィルム温度)を維持することができる。従って安全域を考慮して、最大システム温度は620℃のフィルム温度まで上げることができる。蓄熱温度を585℃のバルク温度まで上げることができるので、565℃のバルク温度及び600℃の最高フィルム温度で稼働する従来技術とは対照的に、熱エネルギー伝達と熱エネルギー貯蔵の両方のために、20ケルビンの余剰が得られる。
【0016】
有利には、従来技術と比較して、本発明による混合物は、実質的に減少した、ほぼ半減したNaNO
3含有率を示し、従って特に速い加熱速度が適用される場合、高温では著しく安定である。これは、NaNO
3及びKNO
3の中で、NaNO
3が安定性の低い化合物であるという事実に起因する。下記式:
【化1】
として表される硝酸塩/亜硝酸塩の平衡は、より高い温度ではNO
2−に有利にシフトする。加熱速度が速いほど、非平衡状態により混合物の安定性が更に高まり得る。
【0017】
本発明の更なる利点及び課題は、非限定的な例として提供される以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、ソーラーソルトと比較した本発明による混合物の溶融・固化挙動を示す。
【
図2】
図2は、温度に対してプロットした本発明による混合物の比重を示す。
【
図3】
図3は、温度に対してプロットした本発明による混合物の動的粘度を示す。
【
図4】
図4は、温度に対してプロットした本発明による混合物の熱伝導率を示す。
【
図5】
図5は、温度に対してプロットした本発明による混合物の比熱容量を示す。
【
図6】
図6は、ソーラーソルトと比較した本発明による混合物の主要な特徴を表形式で示す。
【0019】
本発明は、少なくとも60質量%のKNO
3含有率を有するNaNO
3/KNO
3二成分系のKNO
3に富んだ配合物に関する。好ましい実施形態では、KNO
3含有率は66.6質量%であり、NaNO
3含有率は33.4質量%である。好ましい比率から逸脱する技術的な理由又はその他の理由が存在し得るが、そのような逸脱は十分に本発明の範囲内にあることに留意すべきである。
【0020】
例えば、成分NaNO
3又はKNO
3のいずれかの製造プロセスの各工程に不完全さが存在してよく、そして2つの固体成分を混合する際に更なる不完全さが存在してもよい。これらの成分はさらに、例えば、使用されている原材料の品質に応じて、ある程度まで不純であってもよい。このような不完全さ又は不純物は混合物の性能を若干低下させることにつながり、さらに不完全な製造プロセスを利用し且つ低下した性能を受け入れるための総コストを少なくし得る。本発明の目的のために、N%のNaNO
3とM%のKNO
3との混合物の二成分塩混合物は、Nが±nだけずれ且つMが±mだけずれ、ここでn及びmは前述の不純物及び不完全さを表すという意味で実質的にN%のNaNO
3とM%のKNO
3との混合物を意味する。実際の適用では、例えば、不純物の存在のために、N+Mは常に100%になるとは限らないことに留意されたい。
【0021】
図1を参照すると、66.6質量%のKNO
3含有率と33.4質量%のNaNO
3含有率を有する混合物の溶融・固化挙動が示されている(破線)。また、
図1に、40質量%のKNO
3含有率と60質量%のNaNO
3含有率を有するソーラーソルトの溶融・固化挙動も示されている(実線)。両方の混合物は、ほぼ同じ温度(それぞれ225.5℃及び226℃)で溶融・固化し、このことは新規混合物による既存のシステムの改造を容易にするので重要な事実である。更に重要なことに、新規混合物はソーラーソルトと比較して融解熱が20%低く、このことは固体から液体への相変化に影響を与えるのに必要なエネルギーが少ないことを意味する。
【0022】
ここで
図2を参照すると、温度に対してプロットした本発明による混合物の比重が示されている。新規混合物の比重は、温度が上がるにつれてほぼ直線的に減少する。
【0023】
図3を参照すると、温度に対してプロットした本発明による混合物の動的粘度が示されている。
図3からわかるように、温度が上がるにつれて動的粘度が非線形的に減少する。
【0024】
図4を参照すると、温度に対してプロットした本発明による混合物の熱伝導率が示されている。詳細には、熱伝導率は温度と共に若干上昇する。
【0025】
図5を参照すると、温度に対してプロットした本発明による混合物の比熱容量が示されている。比熱容量も温度と共に若干上昇する。
【0026】
図6を参照すると、ソーラーソルトと比較した本発明による混合物の幾つかの主要な特徴が示されている。特に、新規混合物の比熱容量は、ソーラーソルトの比熱容量よりも約4%低く、このことは蓄熱エンタルピーに関して所定量のソーラーソルトと置き換えるのに約4%多くの新規混合物が必要とされることを意味する。
【0027】
上記のように、新規混合物は、620℃以上のフィルム温度でより良い(即ち、より低い)ニトリルへの分解傾向を有する。CSPシステムのレシーバーユニットにおいて20〜30バール以上のポンプ圧力を加えることで、この傾向を更に減少させることができる。
【0028】
新規混合物の熱物性を利用すると、定常状態の間に最大稼働温度で20ケルビンの余剰を達成することができ、バルク温度として585℃まで熱安定限界を上げることができる。また、大気圧下で空気又は純粋な酸素を用いて貯蔵タンクを覆う及び/又はバブリングすることで、1日の装入の間、混合物を前記585℃のバルク温度に(幾つかの実施形態では575℃〜595℃の範囲のバルク温度に、他の実施形態では580℃〜590℃の範囲のバルク温度に、更に別の実施形態では583℃〜587℃の範囲のバルク温度に)維持しながら亜硝酸塩の生成速度を顕著に低下させる。稼働温度スパンが増加することで塩の必要が減るため、システムの蓄熱能力は、本発明を用いて強化することができ、こうして
図6を参照して説明した効果がある程度まで補償される。
【0029】
また、発電塔レシーバーにおいて約620℃〜640℃のフィルム温度まで溶融塩配合物を最終的に昇温する段階は、非常に短時間の鋭い温度過渡(急速昇温に相当)によって実現されるため、この過熱の非平衡過程は非常に短い時間枠に制限され得る。本発明は、先行技術と比較してより高いフィルム温度まで強化された加熱を可能にする。ポンプ圧力を適用すること及び/又は加圧空気及び/又は酸素で覆うことにより、硝酸塩分解の平衡状態(上記化学式(1)を参照)に達しないので、熱による劣化が制限又はさらには回避され得る。
【0030】
式(1)で表される化学反応の平衡定数Kは、以下のように表すことができる:
【数1】
(式中、P
O2は酸素圧力を表し、Kは1/√バールの単位で表される)。ほぼ等モル部分のKNO
3とNaNO
3からなる共融混合物の場合、Kは600℃で18..20 1/√バールである。
【0031】
明らかに、最大許容バルク温度及びフィルム温度の上昇により、システムのカルノー効率が増加し、その結果、等量の出力を生成して蓄積するのに必要な塩の量が減少する。
【0032】
図1を参照して説明されるように、本発明の混合物はまた、その減少したNaNO
3含有率のために見掛けの融解熱が20%減少するが、
図6を参照して説明されるように、比熱容量は4%低く、その影響は温度範囲の拡大によってある程度まで補償される。その結果として、本発明による混合物をソーラーソルトの代わりに使用した場合、最初のメルトアップ手順(即ち、貯蔵タンク中で初めて溶融塩を調製する工程)では、約16.5%少ない天然ガスが消費される。
【0033】
次の例を検討する:
従来のソーラーソルトを約100kJ/kg(27.8kWh/トンに相当)の融解熱で利用する1300MWhの(熱)エネルギー貯蔵容量(50MW(電気)出力で8時間の蓄熱に相当し、約40%の電力ブロック正味効率を有する)を有するCSPプラントには約11415メートルトンの塩が必要であるだろう。
【0034】
本発明の混合物を約80J/g(22.2kWh/トンに相当)の融解熱で使用する等しい寸法のCSPプラントの場合、(その4%減少した比熱容量のために)約11917メートルトンの塩混合物が必要とされるだろう。さらに、偶発的な凍結の場合、本発明による混合物は、ソーラーソルトよりも迅速かつ容易に液化するだろう。