(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態によるショベルの側面図である。ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられる。アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられる。
【0012】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0013】
上部旋回体3には、運転室としてキャビン10が搭載される。上部旋回体3においてキャビン10の後方に、ショベルの動力源としてエンジン11が搭載される。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンのような内燃機関である。
【0014】
キャビン10内には、運転席100及び操作レバーが設けられたコンソール120が設置される。さらに、キャビン10内には、コントローラ30及びカメラC1が設置される。
【0015】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU及びメモリ30cを含む演算処理装置で構成される。そして、コントローラ30の各種機能は、CPUがメモリ30cに格納されたプログラムを実行することで実現される。後述のエンジン回転数制御は、コントローラ30により行われる。
【0016】
カメラC1は、コンソール120の上方に設置され、操作レバーの近傍を撮影して画像情報をコントローラ30に供給する。コントローラ30は、カメラC1からの画像情報において操作レバーと操作者の手とを認識し、認識結果から操作レバーの操作を推定又は判断する。
【0017】
図2は、
図1のショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは太破線、電気駆動・制御系は点線でそれぞれ示している。
【0018】
ショベルの駆動系は、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、圧力センサ29a,29b、及びコントローラ30を有している。
【0019】
エンジン11は、エンジンコントロールユニット74(以下、ECUという)により駆動制御される。エンジン11は、ショベルの駆動源である。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に接続されている。メインポンプ14及びパイロットポンプ15はエンジン11の動力により駆動され、油圧を発生する。
【0020】
メインポンプ14は、高圧油圧ライン16を介して高圧の作動油をコントロールバルブ17に供給する。このメインポンプ14としては、斜板式可変容量型油圧ポンプを用いることができる。
【0021】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するための装置である。レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出圧、又はコントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節する。すなわち、メインポンプ14からの作動油の吐出量は、レギュレータ13により制御される。
【0022】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して各種油圧制御機器に作動油を供給する。パイロットポンプ15として、例えば固定容量型油圧ポンプを用いることができる。
【0023】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1A、右側走行用油圧モータ1B、旋回用油圧モータ2Aに対し、メインポンプ14から吐出される作動油を選択的に供給する。
【0024】
操作装置26は、各種シリンダ7〜9、走行用油圧モータ1A,1B、及び旋回用油圧モータ2Aを含む各種油圧アクチュエータを操作するために用いられる。本実施形態では、操作装置26は、ブーム4の上げ下げ、アーム5の開閉、バケット6の開閉、上部旋回体3の旋回を操作するための左右一対のレバー26A,26B(操作部材)と、下部走行体1の走行を操作する一対のペダル26C,26D(操作部材)とを含む。操作装置26は、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17に接続されている。
【0025】
また、操作装置26は、油圧ライン28を介して圧力センサ29a,29bに接続されている。圧力センサ29a,29bは、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出するセンサであり、検出値をコントローラ30に対して出力する。なお、操作装置26の操作内容の検出は、各種操作レバーの傾きを検出する傾きセンサ等、圧力センサ以外の他のセンサを用いて行うこととしてもよい。
【0026】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30はCPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、各種機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0027】
また、コントローラ30は、圧力センサ29a,29bの出力に基づいて操作装置26のそれぞれの操作内容(例えば、レバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等)を検出する。更に、コントローラ30は、カメラC1から供給される画像情報等に基づき、エンジン11の回転数制御を処理行う。この回転数制御処理を達成するために、コントローラ30は、
図2に示すように機能部として操作判定部30aと回転数制御部30bとを有している。操作判定部30aと回転数制御部30bが行なう処理については後述する。ここで、操作判定部30aは必ずしもコントローラ30により実現されなくてもよく、コントローラ30とは別のコントローラにより実現されてもよい。
【0028】
図3は、
図1に示すショベルの電気制御系の構成を示す図である。
【0029】
上述のようにエンジン11は、ECU74により制御される。ECU74からは、エンジン11の状態を示す各種データがコントローラ30に常時送信される。コントローラ30は、一時記憶部(メモリ)30cにこのデータを蓄積する。
【0030】
エンジン11に設けられた水温センサ11cからは、冷却水温のデータがコントローラ30に供給される。メインポンプ14のレギュレータ13へは、斜板角度の指令値がコントローラ30から供給される。吐出圧力センサ14bからは、メインポンプ14の吐出圧力を示すデータがコントローラ30に供給される。
【0031】
また、メインポンプ14が吸入する作動油が貯蔵されたタンクとメインポンプ14との間の管路14−1には、油温センサ14cが設けられている。この油温センサ14cからは、管路14−1を流れる作動油の温度データがコントローラ30に供給される。
【0032】
操作装置26は圧力センサ29a、29bを有しており、操作レバー26A,26Bを操作した際にコントロールバルブ17に送られるパイロット圧は圧力センサ29a、29bで検出される。この圧力センサ29a、29bで検出されたパイロット圧を示すデータもコントローラ30に供給される。
【0033】
また、本実施形態に係るショベルは、キャビン10内にエンジン回転数調整ダイヤル75を有している。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジンの回転数を調整するためのダイヤルである。
【0034】
具体的には、エンジン回転数調整ダイヤル75はSPモード、Hモード、Aモード、及びアイドリングモードを含む4段階以上の多段階でエンジン回転数の切り換えができるよう構成されている。このエンジン回転数調整ダイヤル75からは、エンジン回転数の設定状態を示すデータがコントローラ30に常時供給される。
【0035】
なお、SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数(運転時回転数)を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数(運転時回転数)を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数(運転時回転数)を利用する。アイドリングモードは、エンジンをアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数(アイドル運転時回転数)を利用する。そして、エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードのエンジン回転数で一定に回転数制御される。また、後述の如く、所定の条件が満たされると、設定されたエンジン回転数の指令値が出力され、エンジン回転数は変更される。
【0036】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、キャビン10内に設置された運転席100及び操作装置26について説明する。
図4はキャビン10の内部の左側コンソールが回動した状態を示す側面図である。
図5は運転席100の周囲を上から見た平面図である。
【0037】
キャビン10内には運転席100が設置される。運転席100は操作者が着座するシート102と背もたれ104とを含む。運転席はリクライニングシートであり、背もたれ104の傾斜角度を調節可能となっている。運転席100の左右両側にアームレスト106が配置される。アームレスト106は回動可能に支持されている。ショベルの操作者が運転席100から離れるときには、
図4に示すようにアームレスト106は後方に回動されて邪魔にならないようになっている。
【0038】
運転席100の左右両側にコンソール120A及びコンソール120Bがそれぞれ配置される。運転席100及びコンソール120A,120Bは、キャビン10の床面に固定されたレール150上を移動可能に支持されている。したがって、操作レバー26E,26Fやキャビン10のフロントガラスに対し、操作者は運転席100及びコンソール120A,120Bを好みの位置に移動して固定することができる。また、運転席100のみを前後にスライドさせることができ、コンソール120A,120Bの位置に対する運転席の位置も調節することがきる。
【0039】
左側のコンソール120Aの前側に操作レバー26Aが設けられる。同様に、右側のコンソール120Bの前側に操作レバー26Bが設けられる。運転席100に着座した操作者は、左手で操作レバー26Aを把持しながら操作レバー26Aを操作し、且つ右手で操作レバー26Bを把持しながら操作レバー26Bを操作する。なお、コンソール120A,120Bの各々は回動可能に支持されおり、操作者はコンソール120A、120Bの角度を調整することで、操作レバー26A,26Bの中立位置における角度を調整することができる。
【0040】
運転席100の前方の床面に操作ペダル26C,26Dが配置される。運転席100に着座した操作者は、左足で操作ペダル26Cを操作して左側走行用油圧モータ1Aを駆動する。また、運転席100に着座した操作者は、右足で操作ペダル26Dを操作して右側走行用油圧モータ1Bを駆動する。
【0041】
操作ペダル26Cの近傍から操作レバー26Eが上方に向けて延在している。運転席100に着座した操作者は、左手で操作レバー26Eを把持しながら操作することで、操作ペダル26Cでの操作と同様に、左側走行用油圧モータ1Aを駆動することができる。また、操作ペダル26Dの近傍から操作レバー26Fが上方に向けて延在している。運転席100に着座した操作者は、右手で操作レバー26Fを把持しながら操作することで、操作ペダル26Dでの操作と同様に、右側走行用油圧モータ1Bを駆動することができる。
【0042】
なお、キャビン10内の右前部には、ショベルの作業条件や動作状態などの情報を表示するモニタ130が配置される。運転席100に着座した運転者はモニタ130に表示された各種情報を確認しながらショベルによる作業を行なうことができる。
【0043】
また、運転席100の左側(すなわち、キャビンの乗降用ドアがある側)には、ゲートロックレバー140が設けられる。ゲートロックレバー140を引き上げることで、エンジン11の起動が許可され、ショベルを操作することができる。ゲートロックレバー140を引き下げると、エンジン11を含む作動部は起動できなくなる。したがって、操作者が運転席に着座してゲートロックレバー140を引き上げた状態にしない限り、ショベルは作動できず、安全性が保たれる。
【0044】
ここで、本実施形態では、キャビン10内の運転席の上方に、カメラC1が取り付けられている。カメラC1は、操作レバー26A,26B,26E,26F及び操作ペダル26C,26Dを上方から撮影することができる位置に配置されている。
【0045】
カメラC1は、動画を撮影するビデオカメラのような撮像装置でもよく、あるいは、一定の短時間間隔で静止画を連続的に撮影するような撮像装置であってもよい。カメラC1が撮影して得られた画像は、コントローラ30に送られ、以下に説明するエンジン回転数制御処理に用いられる。
【0046】
本実施形態によるエンジン回転数制御処理は、ショベルの操作者の手又は足(操作者の可動部分)が操作レバー又は操作ペダル(操作部材)を操作する状態であるか否かの判定に基づいて、エンジン11の回転数を制御する処理である。
【0047】
図6はエンジン回転数制御処理のフローチャートである。エンジン回転数制御処理は、コントローラ30がプログラムを実行することで行なわれる処理である。コントローラ30の機能部である操作判定部30a(
図2参照)は、カメラC1からの画像情報に基づいて、ショベルの操作者の手又は足(操作者の可動部分)が操作レバー又は操作ペダル(操作部材)を操作する状態であるか否かの判定を行う。そして、コントローラ30の機能部である回転数制御部30b(
図2参照)は、操作判定部30aの判定結果に基づいて、エンジン11の回転数を所定の回転数に設定するようにECU74に指示を送る。
【0048】
図6に示すエンジン回転数制御処理が開始されると、コントローラ30の操作
判定部30aは、カメラC1から画像情報を取得する(ステップS1)。
【0049】
そして、操作
判定部30aは、取得した画像情報において例えば操作レバー26Aと操作者の手を認識し、操作レバー26Aが含まれる所定の領域に操作者の手が入っているか否かを判定する(ステップS2)。より具体的には、操作判定部30aは、取得した画像情報において例えば操作レバー26Aの中心から所定の半径で規定される領域(例えば
図5における点線円A1の内側の領域)に操作者の手の一部が入っているか否かを判定する。あるいは、操作判定部30aは、操作レバー26Aの外形と操作者の手の外形を画像情報から認識し、操作者の手の外形が操作レバー26Aの外形に接触しているか否かを判定してもよい。
【0050】
ステップS2において、操作判定部30aが、操作レバー26Aが含まれる所定の領域内に操作者の手が入っていると判定すると(ステップS2のYES)、処理はステップS3に進む。ステップS3では、コントローラ30の回転数制御部30bは、操作判定部30aの判定に基づいて、エンジン11の回転数を通常の運転時の設定回転数に設定する。例えば、エンジン11の回転数が通常の運転時の設定回転数に設定されていた場合は、回転数制御部30bは、その設定回転数を維持するようにECU74に指示を送る。ここで、ステップS2の判定は、左右それぞれの操作レバーの所定領域内に左右の手がそれぞれ入っている時のみ、ステップS3に進むようにしても良い。
【0051】
すなわち、操作レバー26Aが含まれる所定の領域内に操作者の手が入っている場合は、コントローラ30は、操作者が操作レバー26Aを操作しているか、あるいは操作しようとしていると判断し、エンジン11の回転数を通常の運転時の回転数に維持させる。これにより、例えば操作者が操作レバー26Aを中立位置に保持したまま、周囲や作業状態を確認しているときであっても、オートアイドリングモードに設定されることなく、エンジンは作業時の回転数に維持される。したがって、操作者がすぐに操作レバー26Aを操作したとしても、エンジン回転数をアイドル運転時回転数から作業時の運転回転数まで復帰させる必要はなく、迅速に作業を再開することができる。
【0052】
図7は以上のエンジン回転数制御処理が行なわれた際の、エンジン回転数の変化を示すタイムチャートである。
図7において、上述のエンジン回転数制御処理が行なわれている場合に、操作者が操作レバー26Aの操作を短時間だけ一時的に休止したときのエンジン回転数の推移が実線で示されている。また、
図7において、上述のエンジン回転数制御処理が行なわれない通常のオートアイドリングが行なわれている場合に、操作者が操作レバー26Aの操作を短時間だけ一時的に休止したときのエンジン回転数の推移が点線で示されている。
【0053】
図7において、時刻t1までは、操作レバー26Aが操作されてショベルの作業が行なわれていたものとする。そして、時刻t1において操作者が操作レバー26を中立位置に維持して操作を休止し、そのまま操作レバー26Aから手を離さずに、時刻t2において操作を再開したものとする。
【0054】
本実施形態によるエンジン回転数制御処理が行なわれない場合は、通常のオートアイドル機能が働き、時刻t1を過ぎてからエンジン11の回転数はアイドル回転数に設定される。したがって、
図7の点線で示すようにエンジン回転数は急激に減少する。そして、時刻t2で操作者が再び操作レバー26Aの操作を開始すると、アイドル運転モードは解除され、エンジン回転数は上昇に転じ、時刻t3において作業時の設定回転数に到達する。この場合、時刻t2から時刻t3までの間は、エンジン11の出力が通常の作業時より小さいため、操作レバー26Aの操作量に見合った操作が行なわれないことがある。すなわち、エンジン11の回転数が回復するまでは、通常の作業を行なうことができず、操作者が違和感を抱いたり、不満感を抱くおそれがある。
【0055】
一方、本実施形態によるエンジン回転数制御処理を行なった場合は、
図7の実線で示すように、エンジン11の回転数は時刻t1以降も作業時の回転数に維持される。すなわち、操作者は時刻t1以降も操作レバー26Aから手を離していないので、ステップS2からS3の処理により、エンジン11の回転数は作業時の回転数に維持される。このため、時刻t2において再び操作レバー26Aの操作を始めたときには、エンジン11は通常の作業時の回転数における動力を直ちに出力することができ、操作者は何ら不都合を感じることは無い。
【0056】
図6のエンジン回転数制御処理に戻り、ステップS2において、操作判定部30aが、操作レバー26Aが含まれる所定の領域内に操作者の手が入っていないと判定すると(ステップS2のNO)、処理はステップS4に進む。ステップS4では、コントローラ30の回転数制御部30bは、操作判定部30aの判定に基づいて、エンジン11の回転数をアイドリング運転時の回転数に設定する。例えば、エンジン11の回転数が通常の運転時の設定回転数に設定されていた場合は、回転数制御部30bは、エンジン11の回転数をアイドリング回転数に下げるようにECU74に指示を送る。
【0057】
すなわち、操作レバー26Aが含まれる所定の領域内に操作者の手が入っていない場合は、コントローラ30は、操作者が操作レバー26Aを操作していないか、あるいは操作する意思は無いと判断し、エンジン11の回転数をアイドリング回転数に設定する。これはいわゆるオートアイドリング機能に相当する。これにより、例えば操作者が操作レバー26Aを操作して作業を行なわない場合には、エンジン11の回転数を自動的にアイドリング回転数に落とすことができ、エンジン11の燃料消費量を低減することができる。
【0058】
ステップS4の処理の後、操作判定部30aは、再びカメラC1から画像情報を取得する(ステップS5)。このときに取得する画像情報は、操作者の手の動きを確認するための画像情報であり、所定の短い間隔で撮影した複数の画像情報であることが好ましい。
【0059】
そして、操作判定部30aは、取得した画像情報に基づいて、操作者の手が操作レバー26A(あるいは、操作レバー26Aを含む所定の領域)に近づいているか否かを判定する(ステップS6)。より具体的には、操作判定部30aは、時間間隔をおいた得複数の画像のうち、取得時刻が早いほうの画像における手の位置と、取得時間が遅いほうの画像における手の位置を認識する。そして、例えば、取得時刻が早いほうの画像における手が操作レバーを中心とする第1の領域(例えば
図5における点線円A2の内側の領域)に含まれており、取得時間が遅いほうの画像における手が、第1の領域より小さな第2の領域(例えば
図5における点線円A1の内側の領域)に含まれていた場合、操作者の手が操作レバー26Aに近づいている(操作レバーに向かって移動している)と判断する。あるいは、操作判定部30aは、取得時間が遅いほうの画像における手と操作レバー26Aとの間の距離より短い場合に、操作者の手が操作レバー26Aに近づいている(操作レバーに向かって移動している)と判断する。ここで、A1は例えば半径約50mmであり、A2は例えば半径約100mm程度で形成される。また、第1の領域A2は無くてもよい。
【0060】
ステップS6において、操作判定部30aが、操作者の手が操作レバー26A(あるいは、操作レバー26Aを含む所定の領域)に近づいていると判定すると(ステップS6のYES)、処理はステップS3に進む。ステップS3では、コントローラ30の回転数制御部30bは、操作判定部30aの判定に基づいて、エンジン11の回転数を通常の運転時の設定回転数に設定する。この場合、エンジン11の回転数はアイドル回転数に設定されているので、回転数制御部30bは、エンジン11の回転数を作業時の回転数まで上げるようにECU74に指示を送る。
【0061】
一方、ステップS6において、操作判定部30aが、操作者の手が操作レバー26A(あるいは、操作レバー26Aを含む所定の領域)に近づいていないと判定すると(ステップS6のNO)、処理はステップS5に戻り、ステップS5及びS6の処理を繰り返す。
【0062】
図8は以上のエンジン回転数制御処理が行なわれた際の、エンジン回転数の変化を示すタイムチャートである。
図8において、上述のエンジン回転数制御処理が行なわれている場合に、操作者が操作レバー26Aの操作を開始してから終了するまでの間のエンジン回転数の推移が実線で示されている。また、
図8において、上述のエンジン回転数制御処理が行なわれない通常のオートアイドリングが行なわれている場合に、操作者が操作レバー26Aの操作を開始してから終了するまでの間のエンジン回転数の推移が点線で示されている。
【0063】
図8において、時刻t1までは、操作レバー26Aが操作されておらず、エンジン11の回転数はアイドル回転数であったものとする。そして、時刻t1において操作者が操作レバー26Aに手を近づけ、時刻t2において操作レバー26Aを把持し、時刻t3において操作レバー26Aの操作を開始したものとする。
【0064】
本実施形態によるエンジン回転数制御処理が行なわれない場合は、通常のオートアイドル機能が働き、時刻t3以降に操作レバー26Aの操作が検出された時刻t4の後に、エンジン11の回転数を作業時の回転数に復帰させる処理が開始される。したがって、
図8の点線で示すように、エンジン回転数は時刻t4を過ぎてから上昇し始め、時刻t5においてようやく作業時の回転数に到達する。したがって、作業者は時刻t5までは通常の動力で作業を行うことができない。
【0065】
一方、上述の本実施形態によるエンジン回転数制御処理が行なわれる場合、作業者が手を操作レバー26Aに近づけた時刻t1の時点においてステップS5→S6→S3の処理が行なわれ、エンジン11の回転数が作業時の回転数に設定される。したがって、エンジン11の回転数は、
図8の実線で示すように、まだ作業者が操作レバー26Aの操作を開始していない時刻t1から上昇し始め、時刻t5のはるか手前の時刻t4において作業時の回転数に復帰する。このように、本実施形態によるエンジン回転数制御処理によれば、操作レバー26Aの操作を開始する際に、エンジン11の回転数を迅速に上昇させて通常の作業を直ちに行なうことができる。
【0066】
また、作業を中止する際には、時刻t6で作業者は操作レバー26Aを中立位置に戻してすぐに操作レバー26Aから手を離すこととする。本実施形態によるエンジン回転数制御処理が行なわれない場合には、操作レバー26Aが時刻t6において中立位置になってから、その状態が所定の時間後の時刻t7まで継続したときに、エンジン回転数をアイドル回転数に下げる制御が行なわれる。したがって、エンジン回転数は、
図8の点線で示すように、時刻t6から所定時間経過した時刻t7から下降し始めてアイドル回転数になる。
【0067】
一方、本実施形態によるエンジン回転数制御処理が行なわれる場合には、時刻t6において直ちにアイドル回転数への設定が行なわれ、
図8の実線で示すように、エンジン回転数は、作業者が操作レバー26Aから手を離した時刻t6から減少してアイドル回転数になる。すなわち、操作レバー26Aが中立位置になってから所定の時間が過ぎても中立位置のままであるという判断を待つ必要はなく、迅速にアイドル運転に移行することができる。
【0068】
操作レバー26Aのみの操作に関するエンジン回転数制御処理について説明したが、他の操作部材(操作レバー及び操作ペダル)に対する操作に関しても、同様なエンジン回転数制御処理を適用することができる。
【0069】
例えば、上述のエンジン回転数制御処理を操作レバー26Bの操作に対して適用してもよい。また、操作レバー26Aに対するエンジン回転数制御処理と操作レバー26Bに対するエンジン回転数制御処理とを同時に行なうこととしてもよい。
【0070】
また、上述のエンジン回転数制御処理を、操作ペダル26C,26Dのいずれか一方又は両方の操作に適用してもよい。この場合、操作者の足を画像認識してペダル26C,26Dとの位置関係に基づいて操作の有無を判断することとなる。
【0071】
さらに、上述のエンジン回転数制御処理を、操作レバー27E,27Fのいずれか一方又は両方の操作に適用してもよい。
【0072】
複数の操作部材に上述のエンジン回転数制御処理を適用する場合は、複数の処理結果が競合しないようにする。例えば、いずれか一つの操作部材に関する処理において操作されているとの判断がなされた場合に、他の操作部材に関する判断は無視し、その操作されているという判断を優先して作業時の回転数を維持することとしてもよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明が、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形・変更が可能である。
【0074】
本国際出願は、2015年3月20日に出願した日本国特許出願2015−058709号に基づく優先権を主張するものであり、2015−058709号の全内容をここに本国際出願に援用する。