特許第6483241号(P6483241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483241基板上の導電性構造を接続するための電気接続エレメントを有するウィンドウガラスおよびその製造方法ならびに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483241
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】基板上の導電性構造を接続するための電気接続エレメントを有するウィンドウガラスおよびその製造方法ならびに使用
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20190304BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20190304BHJP
   H05B 3/84 20060101ALI20190304BHJP
   H01R 12/55 20110101ALI20190304BHJP
   H01R 12/57 20110101ALI20190304BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H05B3/02 B
   B60S1/02 B
   H05B3/84
   H01R12/55
   H01R12/57
   H01R13/03 A
【請求項の数】26
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-508748(P2017-508748)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公表番号】特表2017-520899(P2017-520899A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2015055007
(87)【国際公開番号】WO2015165632
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】14166290.8
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(73)【特許権者】
【識別番号】516324847
【氏名又は名称】エフ・エー・ヴェー ファールツォイクエレクトリク ヴェアク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】FEW Fahrzeugelektrik Werk GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス シュマールブーフ
(72)【発明者】
【氏名】ミーチャ ラタイチャク
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ロイル
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン シュナイダー
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202013006775(DE,U1)
【文献】 特開2004−104946(JP,A)
【文献】 特表2010−539661(JP,A)
【文献】 特開平06−290855(JP,A)
【文献】 実開昭56−005394(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
B60S 1/02
H01R 12/55
H01R 12/57
H01R 13/03
H05B 3/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気接続エレメントを有するウィンドウガラスであって、基板(6)と、
前記基板(6)の所定領域上の導電性構造(5)と、
少なくとも1つの電気接続エレメント(1)と、
を含み、
前記電気接続エレメント(1)は、少なくとも、異なる材料から形成される2つの中実の部材(2,3)を含み、第1の部材(2)は鉛フリーのはんだ材(7)によって前記導電性構造(5)の所定の領域に接続されており、第2の部材(3)は電気接続ケーブルへの接続のために設けられており、前記基板(6)の熱膨張係数と前記第1の部材(2)の熱膨張係数との差は、5×10−6/℃未満であり、
前記第2の部材(3)が、2つの脚部領域とその間に配置されるブリッジ領域とを有するブリッジ形状で構成されており、前記第1の部材(2)は平坦なプレート状に形成されており、かつ、2つの前記脚部領域の双方に対してそれぞれに設けられており、前記第1の部材(2)は、前記第2の部材(3)と前記基板(6)との間の脚部領域の下側に配置されており、
前記第1の部材(2)と前記第2の部材(3)とが、少なくとも1つのリベット(4)によって相互に接続されており、前記第1の部材(2)は、はんだ付け面に凹部を有しており、当該凹部の領域内に、前記リベット(4)がこれを通って案内される孔を有する、ウィンドウガラス。
【請求項2】
前記凹部は、前記はんだ面の中央に配置されている、
請求項1に記載のウィンドウガラス。
【請求項3】
前記第1の部材(2)の材料の溶融温度と前記第2の部材(3)の材料の溶融温度との差は、200℃超である、
請求項1又は2に記載のウィンドウガラス。
【請求項4】
前記第1の部材(2)の材料の溶融温度と前記第2の部材(3)の材料の溶融温度との差は、300℃超である、
請求項3に記載のウィンドウガラス。
【請求項5】
前記第1の部材(2)の材料の溶融温度と前記第2の部材(3)の材料の溶融温度との差は、400℃超である、
請求項3に記載のウィンドウガラス。
【請求項6】
前記第1の部材(2)は、少なくとも1つの鉄含有合金を含む、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項7】
前記第1の部材(2)は、少なくとも1つのクロム含有鋼を含む、
請求項6に記載のウィンドウガラス。
【請求項8】
前記第1の部材(2)は、66.5重量%から89.5重量%までの鉄と、10.5重量%から20重量%までのクロムと、0重量%から1重量%までの炭素と、0重量%から5重量%までのニッケルと、0重量%から2重量%までのマンガンと、0重量%から2.5重量%までのモリブデンと、0重量%から2重量%までのニオブと、0重量%から1重量%までのチタンとを含む、
請求項7に記載のウィンドウガラス。
【請求項9】
前記第2の部材(3)は、少なくとも、銅もしくは銅含有合金を含む、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項10】
前記リベット(4)は、少なくとも、銅、真鍮、青銅、鋼、アルミニウム合金及び/又はチタンを含む、
請求項1から9までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項11】
前記リベット(4)は、銅もしくは銅含有合金を含む、
請求項10に記載のウィンドウガラス。
【請求項12】
前記リベット(4)は、前記第2の部材(3)と一体に形成されている、
請求項1から11までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項13】
前記第1の部材(2)及び前記第2の部材(3)の材料厚さは、0.1mmから4mmまでである、
請求項1から12までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項14】
前記第1の部材(2)及び前記第2の部材(3)の材料厚さは、0.2mmから2mmまでである、
請求項13に記載のウィンドウガラス。
【請求項15】
前記第1の部材(2)及び前記第2の部材(3)の材料厚さは、0.5mmから1mmまでである、
請求項13に記載のウィンドウガラス。
【請求項16】
前記第2の部材(3)は、電気接続ケーブルに接続されている、
請求項1から15までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項17】
前記基板(6)の熱膨張係数と前記第1の部材(2)の熱膨張係数との差は、3×10−6/℃未満である、
請求項1から16までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項18】
前記基板(6)は、ガラスを含む、
請求項1から17までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項19】
前記基板(6)は、ソーダ石灰ガラスを含む、
請求項18に記載のウィンドウガラス。
【請求項20】
前記導電性構造(5)は、少なくとも銀を含み、5μmから40μmまでの層厚さを有する、
請求項1から19までのいずれか1項に記載のウィンドウガラス。
【請求項21】
前記導電性構造(5)は、銀粒子及びガラスフリットを含む、
請求項20に記載のウィンドウガラス。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項に記載の、少なくとも1つの接続エレメントを有するウィンドウガラスの製造方法であって、
(1)基板(6)上の導電性構造(5)の電気的接続のための電気接続エレメント(1)を製造する際に、
(a)中実の第1の部材(2)と中実の第2の部材(3)とを用意し、各部材(2,3)をそれぞれ異なる材料から製造し、前記第1の部材(2)を前記導電性構造(5)とのはんだ付けのために設け、前記第2の部材(3)を電気接続ケーブルとの接続のために設け、
(b)前記第1の部材(2)と前記第2の部材(3)とを上下に配置し、
(c)前記第1の部材(2)と前記第2の部材(3)とを少なくとも1つのリベット(4)によって相互に接続し、
(2)前記接続エレメントの前記第1の部材の接続面にはんだ材を塗布し、
(3)前記はんだ材を含む前記接続エレメントを、前記基板の所定領域に被着されている前記導電性構造の所定領域に配置し、
(4)エネルギを印加することで前記接続エレメントを前記導電性構造に接続する、
方法。
【請求項23】
建物における、又は、陸上交通もしくは空中交通もしくは水上交通用の移動手段における、請求項1から21までのいずれか1項に記載のウィンドウガラスの使用。
【請求項24】
鉄道車両もしくは自動車における、請求項23に記載のウィンドウガラスの使用。
【請求項25】
フロントガラス、リアガラス、サイドガラス及び/又はルーフガラスとしての、請求項23に記載のウィンドウガラスの使用。
【請求項26】
加熱可能なウィンドウガラスとしてのもしくはアンテナ機能を有するウィンドウガラスとしての、請求項23に記載のウィンドウガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続エレメント、電気接続エレメントを有するウィンドウガラス、電気接続エレメントの製造方法、及び、電気接続エレメントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は特に、車両用のウィンドウガラス上の導電性構造、例えばヒータ導体もしくはアンテナ導体の接続形成のための電気接続エレメントに関する。この場合、導電性構造は、はんだ付けされた接続エレメントを介して搭載電気システムに接続されている。使用されている材料の熱膨張係数が種々に異なるため、製造時及び動作時に機械的応力が発生し、この応力によってウィンドウガラスに負荷がかかってその破損が生じることがある。
【0003】
鉛含有はんだは高い延性を有し、電気接続エレメントとウィンドウガラスとの間に発生する機械的応力を可塑変形によって補償できる。ただし、使用済み車両に関する指令2000/53/ECに基づいて、欧州内では、鉛含有はんだを鉛フリーはんだへ置換しなければならない。当該指令はまとめてELV(End of life vehicles)と略称される。ここでの目的は、電子回路廃棄物の大規模拡散に関して、製品からの問題のきわめて大きい成分の廃棄を禁止することである。該当する物質は、鉛、水銀及びカドミウムである。このことは、とりわけ、電気的分野の鉛フリーのはんだ材をガラス分野へ応用し、対応する置換製品を導入することに関する。
【0004】
鉛フリーのはんだは典型的には著しく小さな延性しか有さないので、鉛含有はんだと同等の規模で機械的応力を補償することはできない。したがって、特に鉛フリーはんだ材料によるはんだ付けの際には機械的応力を回避する措置が講じられ、これは例えば接続エレメントの材料を適切に選定することにより可能となる。通常はソーダ石灰ガラスから形成される基板の熱膨張係数と接続エレメントの熱膨張係数との差が小さい場合には、小さな機械的応力しか生じない。
【0005】
特に好適な材料として、国際公開第2012/152543号(WO2012/152543A1)では、例えば、さらに有利に低コストのクロム含有鋼(もしくはステンレス鋼)が提案されている。発展形態として、多部材から構成される接続エレメントも想到可能である。こうした接続エレメントは、例えば、種々の材料から形成される複数の中実の部材によって形成でき、ここで、1つの部材はウィンドウガラスとの接続のために設けられ、別の部材は電気接続ケーブルとの接続のために設けられる。この場合、ウィンドウガラスとの接続形成のための部材の材料は、第一義的には適切な熱膨張係数を基準として選定することができる。これに対して、電気接続ケーブルとの接続形成のための部材の材料は、最適な導電率もしくは良好な変形性などの他の基準によって選定することができる。
【0006】
各部材は、持続的に安定に相互接続しなければならない。この場合に当業者が最初に考察するのは各部材の溶接である。しかし、各部材が材料の相違のために大きく異なる溶融温度を有する場合、溶接は容易には行えない。特に、一方の部材の溶融に要する温度が他方の部材に損傷を与えうるケースがそうである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/152543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、各部材を改善された形式及び手法で相互接続できる、多部材から成る電気接続エレメント、及び、こうした電気接続エレメントを有するウィンドウガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
こうした本発明の課題は、本発明の独立請求項1に記載の電気接続エレメントを有するウィンドウガラスによって解決される。好ましい実施形態は各従属請求項から得られる。
【0010】
本発明の、基板上の導電性構造の電気的な接続形成のための電気接続エレメントは、少なくとも、異なる材料(又は異なる材料組成)から形成される2つの中実の部材を含み、第1の部材は導電性構造とのはんだ付けのために設けられており、第2の部材は電気接続ケーブルへの接続のために設けられている。本発明によれば、第1の部材と第2の部材とは少なくとも1つのリベットによって相互に接続されている。
【0011】
リベットによる接続は持続的に安定であり、中実の部材に対するさらなる要求を課さない。したがって各部材の材料はその相互の接続性を考慮せずに選定可能である。特に、第1の部材に対して、基板の熱膨張係数と最小限の差だけしか異ならない熱膨張係数を有する材料を選定できる一方、第2の部材に対しては、できるだけ高い導電率及び/又はできるだけ良好な撓み性を有する材料を選定できる。他の基準、例えば溶接が行われる場合の融点の類似性などを考慮に入れる必要はない。このことは本発明の大きな利点である。
【0012】
接続エレメントの部材は、本発明によれば中実に構成される。ここでは、最大限良好に成形可能であるが剛性であって可撓性を有さない構成が想定されている。部材は、成形後、所望の形状及び位置を維持する。従来のケーブルもしくはフラット導体のような、中実でなく可撓性を有する形態は、本発明における接続エレメントの部材としては考えないものとする。
【0013】
第1の部材の材料の溶融温度と第2の部材の材料の溶融温度との差は、有利な実施形態では、200℃超、好ましくは300℃超、特に好ましくは400℃超である。こうした接続エレメントでは、容易に想到される溶接による接続を、溶融温度に差がある場合には満足のいくように行えないため、本発明の利点を特に活用できる。
【0014】
本発明はさらに、少なくとも1つの電気接続エレメントを有するウィンドウガラスに関する。このウィンドウガラスは、少なくとも、基板と、基板の所定領域上の導電性構造と、少なくとも1つの本発明の電気接続エレメントとを含み、ここで、第1の部材ははんだ材によって導電性構造の所定領域に接続されている。
【0015】
第2の部材は、好ましくは、第1の部材の、基板とは反対側の表面に配置される。当該第2の部材は、電気接続ケーブルとの接続のために設けられている。電気接続ケーブルは、基板上の導電性構造を、外部の機能性要素、例えば給電部もしくは受信装置に接続する。このために、電気接続ケーブルは、接続エレメントから、ウィンドウガラスの外へ向かって好ましくはウィンドウガラスのサイドエッジを超えて引き出される。当該電気接続ケーブルは基本的には、例えばフラット導体もしくはコイルワイヤ導体もしくはフルワイヤ導体など、導電性構造の電気的な接続形成のために当業者に公知のあらゆる電気接続ケーブルであってよい。接続エレメントの第2の部材と接続ケーブルとは、例えばはんだ付け、溶接もしくはねじ止めなどを介して、又は、導電性接着剤もしくはプラグインコネクタによって、接続可能である。
【0016】
基板は、好ましくはガラス、特に好ましくはソーダ石灰ガラスを含む。基板は、好ましくは、ガラスプレート、特にウィンドウガラスである。ただし、当該基板は、基本的には他の種類のガラス、例えば石英ガラス、又は、ホウケイ酸ガラス、又は、ポリマー、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチルメタクリレート、ポリスチロール、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、及び/又は、コポリマー又はこれらの混合物を含んでよい。
【0017】
当該基板は好ましくは透明もしくは半透明である。当該基板は、好ましくは、0.5mmから25mmまで、より好ましくは1mmから10mmまで、特に好ましくは1.5mmから5mmまでの厚さを有する。
【0018】
好ましい実施形態では、基板の熱膨張係数と第1の部材の熱膨張係数との差は、5×10−6/℃未満、好ましくは3×10−6/℃未満である。このように小さな差によって、はんだ付け過程に起因する臨界的な熱応力を有利に回避でき、良好な接着力が得られる。
【0019】
基板の熱膨張係数は、好ましくは8×10−6/℃から9×10−6/℃までである。基板は、好ましくはガラス、特にソーダ石灰ガラスを含み、これらは好ましくは0℃から300℃までの温度範囲において8.3×10−6/℃から9×10−6/℃までの熱膨張係数を有する。
【0020】
本発明の接続エレメントの第1の部材の熱膨張係数は、有利な実施形態では、0℃から300℃までの温度範囲において、4×10−6/℃から15×10−6/℃まで、好ましくは9×10−6/℃から13×10−6/℃まで、より好ましくは10×10−6/℃から11.5×10−6/℃まで、さらに好ましくは10×10−6/℃から11×10−6/℃まで、特に好ましくは10×10−6/℃から10.5×10−6/℃までである。
【0021】
本発明の接続エレメントの第1の部材は、好ましくは、少なくとも1つの鉄含有合金を含む。第1の部材は、特に好ましくは、少なくとも、50重量%から89.5重量%までの鉄と、0重量%から50重量%までのニッケルと、0重量%から20重量%までのクロムと、0重量%から20重量%までのコバルトと、0重量%から1.5重量%までのマグネシウムと、0重量%から1重量%までのケイ素と、0重量%から1重量%までの炭素と、0重量%から2重量%までのマンガンと、0重量%から5重量%までのモリブデンと、0重量%から1重量%までのチタンと、0重量%から1重量%までのニオブと、0重量%から1重量%までのバナジウムと、0重量%から1重量%までのアルミニウム及び/又は0重量%から1重量%までのタングステンとを含む。
【0022】
第1の部材は、通常約5×10−6/℃の熱膨張係数を有するコバール(FeCoNi)など、例えば鉄ニッケルコバルト合金を含むことができる。コバールの組成は、例えば、54重量%の鉄、29重量%のニッケル及び17重量%のコバルトである。
【0023】
特に好ましい実施形態では、接続エレメントの第1の部材はクロム含有鋼を含む。クロム含有鋼、特にいわゆるステンレス鋼もしくは非ステンレス鋼は低コストで利用可能である。また、クロム含有鋼から形成される接続エレメントは、例えば銅から形成される多数の従来の接続エレメントに比べて高い剛性を有しており、このため、接続エレメントの有利な安定性が得られる。したがって、例えば、第2の部材の変形時のねじれを回避できる。さらに、クロム含有鋼は、例えばチタンから形成される多数の従来の接続エレメントに比べて、より高い熱伝導性から得られる改善されたはんだ付け性を有する。
【0024】
第1の部材は、好ましくは、10.5重量%以上の割合のクロムを含む、クロム含有鋼を含む。モリブデン、マンガンもしくはニオブなどの他の合金成分により、改善された腐食耐性が得られるか、又は、引張り耐性もしくは冷間変形性などの機械的特性の変更が可能となる。
【0025】
接続エレメントの第1の部材は、特に好ましくは、少なくとも、66.5重量%から89.5重量%までの鉄と、10.5重量%から20重量%までのクロムと、0重量%から1重量%までの炭素と、0重量%から5重量%までのニッケルと、0重量%から2重量%までのマンガンと、0重量%から2.5重量%までのモリブデンと、0重量%から2重量%までのニオブと、0重量%から1重量%までのチタンとを含む。接続エレメントは、付加的に、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含む他の元素の添加物を含んでもよい。
【0026】
第1の部材は、特に好ましくは、少なくとも、73重量%から89.5重量%までの鉄と、10.5重量%から20重量%までのクロムと、0重量%から0.5重量%までの炭素と、0重量%から2.5重量%までのニッケルと、0重量%から1重量%までのマンガンと、0重量%から1.5重量%までのモリブデンと、0重量%から1重量%までのニオブと、0重量%から1重量%までのチタンとを含む。接続エレメントは、付加的に、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含む他の元素の添加物を含んでもよい。
【0027】
本発明の接続エレメントは、特に、少なくとも、77重量%から84重量%までの鉄と、16重量%から18.5重量%までのクロムと、0重量%から0.1重量%までの炭素と、0重量%から1重量%までのマンガンと、0重量%から1重量%までのニオブと、0重量%から1.5重量%までのモリブデンと、0重量%から1重量%までのチタンとを含む。接続エレメントは、付加的に、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含む他の元素の添加物を含んでもよい。
【0028】
特に好適なクロム含有鋼は、EN10088−2に準拠した材料番号1.4016,1.4113,1.4509及び1.4510の鋼である。
【0029】
本発明の接続エレメントの第2の部材は、好ましい実施形態では、銅、例えば電解銅を含む。こうした第2の部材は、有利には高い導電率を有する。また、こうした第2の部材は、有利には、接続ケーブルとの接続のために所望されうるもしくは必要とされうる変形を行える。したがって、第2の部材に例えば所定の角度をつけ、これにより接続ケーブルの接続方向を調整可能にすることができる。
【0030】
第2の部材は、例えばニッケル銀もしくはコンスタンタンである真鍮合金又は青銅合金など、銅含有合金を含むこともできる。
【0031】
第2の部材は、好ましくは0.5μΩ・cmから20μΩ・cmまで、より好ましくは1.0μΩ・cmから15μΩ・cmまで、さらに好ましくは1.5μΩ・cmから11μΩ・cmまでの電気抵抗率を有する。
【0032】
第2の部材は、特に好ましくは、45.0重量%から100重量%の銅、0重量%から45重量%の亜鉛、0重量%から15重量%のスズ、0重量%から30重量%のニッケル及び0重量%から5重量%のケイ素を含む。
【0033】
第2の部材の材料として特に好適なのは、材料番号CW004A(従前の2.0065)の電解銅、及び、材料番号CW505L(従前の2.0265)のCuZn30である。
【0034】
本発明のリベットの材料は、基本的には、適用の必要に応じて当業者が任意に選定可能である。リベットは、例えば、銅又は真鍮もしくは青銅などの銅含有合金、鉄又は鋼もしくはクロム含有鋼もしくはステンレス鋼などの鉄含有合金、アルミニウム又はアルミニウム含有合金、又は、チタンを含むことができる。
【0035】
好ましい実施形態では、リベットは銅もしくは銅含有合金、特に銅を含む。このことは、導電率及びリベット止めに必要なリベットの変形性の点で特に有利である。
【0036】
リベットは、接続エレメントの第1の部材もしくは第2の部材と一体に形成することもできる。この場合、リベットの材料は対応する部材の材料に応じて無理のないように定められる。
【0037】
リベットのジオメトリ寸法は、有意には、接続エレメントの寸法に応じて定められる。典型的な接続エレメントでは、リベットの長さは例えば0.2mから12mmまで、好ましくは0.8mmから3mmまでであり、リベットの幅は例えば0.5mmから5mmまで、好ましくは1mmから3mmまでである。
【0038】
本発明は、接続エレメントの所定の形状に限定されない。本発明はむしろ、中実の多部材から成る任意の接続エレメントに適用できる。この場合もちろん、第1の部材のはんだ付け面、すなわち、基板への接続面として機能するように構成された面を、突出するリベットによって損なわないように注意しなければならない。
【0039】
第1の部材及び第2の部材の材料厚さは、好ましくは0.1mmから4mmまで、特に好ましくは0.2mmから2mmまで、特に好ましくは0.5mmから1mmまでである。当該材料厚さは好ましくは一定であり、これにより各部材の製造を簡単化できる点で特に有利である。
【0040】
接続エレメントの寸法は、当業者が個々のケースの必要に応じて任意に選定可能である。接続エレメントは、例えば、1mmから50mmまでの長さ及び幅を有する。接続エレメントの長さは、好ましくはからまで、特に好ましくはからまでである。接続エレメントの幅は、好ましくは10mmから30mmまで、特に好ましくは2mmから10mmまでである。こうした寸法を有する接続エレメントは、特に良好に取り扱い可能であり、ウィンドウガラス上の導電性構造の電気的接続に特に適する。
【0041】
好ましい実施形態では、第1の部材がブリッジ状に構成される。ブリッジ状の接続エレメント自体は当業者によく知られている。ブリッジ状の接続エレメントは、典型的には、基板に向かう表面に接続面を配置した2つの脚部領域を含み、この接続面で接続エレメントがはんだ材によって基板に接続される。脚部領域間には、この脚部領域に対して平行に配置されかつ典型的には隆起した中央部分を有するブリッジ領域が設けられている。当該ブリッジ領域は、はんだ材による導電性構造への接続が直接になされないようにするために設けられている。第2の部材は、好ましくは、脚部領域とは反対側のブリッジ領域の表面に配置される。第2の部材の形状も同様に当業者が任意に選定可能である。第2の部材は、好ましくは、第1の部材への最適な取り付けのための平坦面を有する細長い形状、特に切石状の形状を有する。
【0042】
ブリッジ状の接続エレメントは、ウィンドウガラス上の導電性構造の接続のために設けられる。さらに、はんだ付けすべき脚部領域間のブリッジ部分において、第2の部材をリベット止めするための有利な手段が得られる。
【0043】
好ましくは、第1の部材及び第2の部材はそれぞれ、用意されたリベットの大きさに適合化された少なくとも1つの孔、特に好ましくは正確に1つの孔を有する。第1の部材及び第2の部材の孔は相互に重なるように設けられ、これによりリベットを2つの孔を通るように案内して各部材を持続的かつ安定に相互接続することができる。この構成では、第1の部材の表面から基板の方向へ突出するリベット部分は問題とならない。なぜなら、第1の部材のブリッジ部分は基板に直接には接続されず、ブリッジ部分と基板表面との間の中間空間をなしているからである。
【0044】
特に有利な発展形態では、第2の部材は、0.8mmの高さと4.8mmもしくは6.3mmもしくは9.5mmの幅とを有する、規格に沿った車両用圧着端子が、部材の自由端に差し込み可能となるように、設計される。第2の部材が6.3mmの幅を有する実施形態は、当該分野で通常使用されているDIN46244準拠の車両用圧着端子に対応するため、特に好ましく使用できる。現行の車両用圧着端子の大きさに適する接続ウェブの規格によって、基板の導電性構造を車両搭載電源システム電圧に接続する簡単かつ可逆の手段が得られる。これに代えて、接続エレメントの電気的接続は、はんだ接続部もしくはクランプ接続部を用いて又は導電性接着剤によっても行うことができる。
【0045】
これに代わる好ましい実施形態では、接続エレメントの第2の部材が2つの脚部領域とその間に配置されるブリッジ領域とを有するブリッジ形状で構成される。第1の部材は、例えば長方形の輪郭もしくは円形の輪郭を有する平坦なプレート状に形成され、第2の部材の脚部領域の下側に配置される。第1の部材は、第2の部材と基板との間の補償プレートを形成する。好ましくは、2つの脚部領域の双方に対してそれぞれ1つずつ第1の部材が設けられ、つまり全部で2つの第1の部材が設けられる。
【0046】
当該構成では、市販入手可能な従来の低コストの、銅から形成されるブリッジ状の接続エレメントを第2の部材として使用可能である。これに対して、補償プレートとしての第1の部材は、基板上の熱応力を回避できるように選定可能である。
【0047】
補償プレートとしての第1の部材は通常はんだ材によって全面で直接に基板に接続されるので、単純なリベット止めでは、リベットの一部がはんだ面から突出するという問題が生じる。したがって、好ましい構成では、リベットと第1の部材とが一体に構成され、リベットが、第1の部材の、はんだ付け面の反対側の表面に配置される。この場合、リベットは、第2の部材内の適切な孔を通して案内される。
【0048】
これに代わる好ましい実施形態では、補償プレートとしての第1の部材は、好ましくはほぼ中央に、はんだ付け面に対する凹部を有する。第1の部材は当該凹部の領域に、リベットを案内するための孔を有する。リベットの変形によって各部材の形状結合を形成した後、リベットの突出部分は凹部内に位置し、それ以外の平坦なはんだ付け面から突出しない。
【0049】
本発明の導電性構造は、好ましくは、5μmから40μmまで、より好ましくは5μmから20μmまで、さらに好ましくは8μmから15μmまで、特には10μmから12μmまでの層厚さを有する。本発明の導電性構造は、好ましくは銀、特に好ましくは銀粒子及びガラスフリットを含む。
【0050】
本発明のはんだ材は、好ましい構成では鉛フリーである。このことは、本発明の電気接続エレメントを備えたウィンドウガラスの環境調和性の点で特に有利である。鉛フリーのはんだ材として、本発明では「電気電子機器における特定有害物質使用制限指令2002/95/EC」にしたがって、0.1重量%以下の割合の鉛を含むはんだ材、好ましくは鉛を全く含まないはんだ材を意味すると理解されたい。
【0051】
本発明の多部材から構成される接続エレメントは、鉛フリーのはんだ付けにとって特に有利である。直接に基板上の導電性構造にはんだ付けされる第1の部材の材料は、典型的な鉛フリーのはんだ材の延性が小さいせいで臨界的となりうる熱応力が回避されるよう、基板の材料に合わせて調整可能である。
【0052】
はんだ材は、好ましくはスズ及びビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀もしくはこれらの組み合わせを含む。本発明のはんだの組成におけるスズの割合は、3重量%から99.5重量%まで、好ましくは10重量%から95.5重量%まで、特に好ましくは15重量%から60重量%までである。本発明のはんだの組成におけるビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀もしくはこれらの組み合わせの割合は、0.5重量%から97重量%まで、好ましくは10重量%から67重量%までであり、ここで、ビスマス、インジウム、亜鉛、銅もしくは銀の割合は0重量%であってもよい。はんだの組成には、0重量%から5重量%までの割合のニッケル、ゲルマニウム、アルミニウムもしくはリンが含まれてもよい。本発明のはんだ組成は、特に好ましくは、Bi40Sn57Ag3,Sn40Bi57Ag3,Bi59Sn40Ag1,Bi57Sn42Ag1,In97Ag3,Sn95.5Ag3.8Cu0.7,Bi67In33,Bi33In50Sn17,Sn77.2In20Ag2.8,Sn95Ag4Cu1,Sn99Cu1,Sn96.5Ag3.5,Sn96.5Ag3Cu0.5,Sn97Ag3もしくはこれらの混合物を含む。
【0053】
有利な実施形態では、はんだ材はビスマスを含む。ビスマスを含有するはんだ材は、本発明の接続エレメントをウィンドウガラスに特に良好に接着することができると判明しており、ウィンドウガラスの損傷を回避できる。はんだ材の組成におけるビスマスの割合は、好ましくは0.5重量%から97重量%まで、より好ましくは10重量%から67重量%まで、さらに好ましくは33重量%か67重量%まで、特に50重量%から60重量%までである。はんだ材は、ビスマスのほか、好ましくは、スズ及び銀、又は、スズ及び銀及び銅を含む。特に好ましい構成では、はんだ材は少なくとも、35重量%から69重量%までのビスマス、30重量%から50重量%までのスズ、1重量%から10重量%までの銀、及び、0重量%から5重量%の銅を含む。特に好ましい構成では、はんだ材は少なくとも、49重量%から60重量%までのビスマス、39重量%から42重量%までのスズ、1重量%から4重量%までの銀、及び、0重量%から3重量%の銅を含む。
【0054】
別の有利な実施形態では、はんだ材は、90重量%から99.5重量%のスズを含み、好ましくは95重量%から99重量%まで、特に好ましくは93重量%から98重量%までのスズを含む。当該はんだ材は、スズのほか、好ましくは0.5重量%から5重量%の銀及び0重量%から5重量%の銅を含む。
【0055】
はんだ材の層厚さは、好ましくは、6.0×10−4m以下、特に好ましくは3.0×10−4m未満である。
【0056】
はんだ材は、好ましくは1mm未満の流出幅で、接続エレメントのはんだ付け領域と導電性構造との間の中間空間から流出する。好ましい構成では、最大流出幅は0.5mm未満であり、特には約0mmである。これは、ウィンドウガラスでの機械的応力の低減、接続エレメントの接着性及びはんだの節約の点で特に有利である。最大流出幅は、はんだ付け領域の外縁からはんだ材が層厚さ50μmを下回るはんだ材溢れ位置までの距離として定義される。当該最大流出幅は、はんだ付け過程の後、固化したはんだ材で測定される。所望の最大流出幅は、はんだ材体積と接続エレメントから導電性構造までのはんだ垂直距離とを適切に選定することによって得られ、これは簡単な試行によって求めることができる。接続エレメントから導電性構造までの垂直距離は、相応のプロセスツール、例えば組み込まれたスペーサを有するツールによって設定可能である。最大流出幅は負の値、すなわち、電気接続エレメントのはんだ付け部分と導電性構造とから形成される中間空間での後退を表す負の値であってもよい。本発明のウィンドウガラスの有利な構成では、最大流出幅は、電気接続エレメントのはんだ付け領域と導電性構造とから形成される中間空間において凹状メニスカスとなるように後退される。凹状メニスカスとは、例えば、はんだがいまだ流動しているはんだ付け過程においてスペーサから導電性構造までの垂直距離を増大することにより得られる。これにより、ウィンドウガラス、特に大きなはんだ材溢れがあるときに生じる臨界領域において、機械的応力が低減されるという利点が得られる。
【0057】
有利な実施形態では、第1の部材のはんだ付け面はスペーサを有する。スペーサは、例えば型押しもしくは深絞りによって、好ましくは第1の部材と一体に形成される。スペーサは、好ましくは、0.5×10−4mから10×10−4mまでの幅と0.5×10−4mから5×10−4mまでの高さ、特に好ましくは1×10−4mから3×10−4mまでの高さとを有する。スペーサによって、均等な厚さを有しかつ均等に溶融したはんだ材の層が得られる。これにより、接続エレメントとウィンドウガラスとの間の機械的応力を低減でき、接続エレメントの接着性を改善できる。このことは、鉛を含有するはんだ材に比べて延性が小さいために機械的応力をほとんど補償できない鉛フリーのはんだ材を使用する場合に特に有利である。
【0058】
有利な実施形態では、接続エレメントの、基板とは反対側の表面に、はんだ付け過程中にはんだ付けツールによって接続エレメントの接続に用いられる少なくとも1つの接続隆起部を配置できる。当該接続隆起部は、好ましくは、少なくとも接続領域においてはんだ付けツールによって凸状に湾曲するように成形される。当該接続隆起部は好ましくは0.1mmから2mmまで、好ましくは0.2mmから1mmまでの高さを有する。接続隆起部の長さ及び幅は、好ましくは0.1mmから5mmまで、特に好ましくは0.4mmから3mmまでである。当該接続隆起部は、例えば型押しもしくは深絞りによって、好ましくは接続エレメントと一体に形成される。はんだ付けに際して、接続側が平坦に成形された電極を使用可能である。この場合、電極面は接続隆起部と接続される。電極面は、基板表面に対して平行に配置される。電極面と接続隆起部との間の接続領域がはんだ付け箇所を形成する。この場合、はんだ付け箇所の位置は、接続隆起部の凸面のうち、基板表面に対する垂直距離が最大となる点によって定められる。当該はんだ付け箇所の位置は、接続エレメントのはんだ付け電極の位置には依存しない。このことは、はんだ付け過程中、再現性の高い均等な熱分布が得られる点で特に有利である。はんだ付け過程中の熱分布は、接続隆起部の位置、大きさ、配置及び形状によって定められる。
【0059】
接続隆起部は、特にリベット頭部が球セグメント、例えば半球として構成される場合、本発明のリベットのうち、接続エレメントから突出する部分によっても形成できる。この場合、接続隆起部を、有利にさらなるコストなしで形成できる。
【0060】
電気接続エレメントの第1の部材及び/又は第2の部材には、例えばニッケル、銅、亜鉛、スズ、銀、金もしくはこれらの合金又はこれらの層体を含むコーティング(濡れ層)、好ましくは銀を含有するコーティング(濡れ層)を設けることができる。これにより、はんだ材による接続エレメントの濡れ性の改善、ひいては接続エレメントの接着性の改善を達成できる。また、こうしたコーティングによって接続エレメントの導電率を高めることもできる。
【0061】
有利な構成では、第1の部材及び/又は第2の部材に、好ましくはニッケル及び/又は銅から成りかつ付加的に銀を含有する層を有する接着媒介層が設けられる。本発明の接続エレメントは、特に好ましくは、0.1μmから0.3μmまでのニッケル層と、その上方の3μmから20μmまでの銀層とによってコーティングされる。
【0062】
電気接続エレメントの形状によって、この接続エレメントと導電性構造との間の中間空間に1つもしくは複数のはんだデポを形成できる。はんだデポと接続エレメントに対するはんだの濡れ特性とにより、中間空間からのはんだ材の流出が防止される。はんだデポは、直角形状もしくは丸みを帯びた形状もしくは多角形状に構成できる。
【0063】
本発明の課題はさらに、基板上の導電性構造を電気的に接続するための電気接続エレメントを製造する方法によって解決される。ここでは、
(a)中実の第1の部材と中実の第2の部材とが用意され、各部材はそれぞれ異なる材料から製造され、第1の部材は導電性構造とのはんだ付けのために設けられ、第2の部材は電気接続ケーブルとの接続のために設けられ、
(b)第1の部材と第2の部材とが相互に配置され、
(c)第1の部材と第2の部材とが少なくとも1つのリベットによって相互に接続される。
【0064】
本発明の課題はさらに、少なくとも1つの接続エレメントを備えたウィンドウガラスを製造する方法によって解決される。ここでは、
a)本発明の接続エレメントの第1の部材の接続面にはんだ材が塗布され、
b)基板の所定領域に被着されている導電性構造の所定領域に、はんだ材を含む接続エレメントが配置され、
c)エネルギ印加によって接続エレメントが導電性構造に接続される。
【0065】
はんだ材料は、好ましくは、定められた層厚さ、体積及び形状及び接続エレメント上の位置で、小片又は平坦な滴として施与される。はんだ材小片の層厚さは、好ましくは0.6mm以下である。はんだ材小片の形状は、接続エレメントの接続面の形状に応じて定められ、例えば長方形状、円形状、楕円形状、角が丸みを帯びた長方形状、又は、向かい合う2つの側辺が半円状となった長方形状である。
【0066】
電気接続エレメントと導電性構造とを電気的に接続する際のエネルギ印加は、好ましくは、スタンプはんだ、サーモードはんだ、ピストンはんだ、レーザーはんだ、熱風はんだ、誘導はんだ、抵抗はんだ及び/又は超音波によって行われる。
【0067】
導電性構造は、それ自体公知の方法、例えばスクリーンプリンティングプロセスによって、基板上に被着することができる。
【0068】
本発明はさらに、基板上の導電性構造を電気的に接続する電気接続エレメントの使用を含む。ここでは、基板(6)は、好ましくはウィンドウガラスであり、特に自動車のフロントガラス、リアガラス、サイドガラス及び/又はルーフガラスである。
【0069】
本発明の接続エレメントを備えた本発明のウィンドウガラスは、好ましくは、建物における、又は、陸上交通もしくは空中交通もしくは水上交通用の移動手段、特に鉄道車両もしくは自動車における、好ましくはフロントガラス、リアガラス、サイドガラス及び/又はルーフガラス、特に加熱可能なウィンドウガラスとしてもしくはアンテナ機能を有するウィンドウガラスとして用いられる。
【0070】
本発明を、図及び実施形態に即して詳細に説明する。図は概略図であって縮尺通りに描かれていない。なお、図は本発明をいかなる意味においても制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明の電気接続エレメントの構成を示す斜視図である。
図2図1の接続エレメントをA−A’線で切断した断面図である。
図3図1の接続エレメントを有する本発明のウィンドウガラスを示す斜視図である。
図4】本発明の接続エレメントの別の実施形態を示す斜視図である。
図5図4の接続エレメントの第1の部材を示す断面図である。
図6】第1の部材の代替的な構成を示す断面図である。
図7】本発明の接続エレメントを製造する本発明の方法の構成を示すフローチャートである。
図8】本発明の接続エレメントを有するウィンドウガラスの本発明の製造方法の構成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1及び図2には、それぞれ、本発明の電気接続エレメント1の詳細が示されている。接続エレメント1は、多部材から構成されており、第1の部材2及び第2の部材3から成る。第1の部材2は、基板上、特にガラス製の車両ウィンドウガラス上の導電性構造とのはんだ付けのために設けられている。第2の部材3は接続ケーブルとの接続のために設けられており、これにより、導電性構造は接続エレメント1を介して外部の給電電圧に接続可能となる。
【0073】
温度変化による臨界的な機械的応力を回避するために、第1の部材2の熱膨張係数は第2の部材3の熱膨張係数に合わせて調整されている。第1の部材2は、20℃から300℃までの温度範囲での熱膨張係数10.5×10−6/℃を有するEN10088−2準拠の材料番号1.4509のクロム含有鋼(ThyssenKrupp Nirosta(登録商標)4509)から形成されている。車両用ウィンドウガラスは典型的にはソーダ石灰ガラスから製造され、このため約9・10−6/℃の熱膨張係数を有する。熱膨張係数相互の差が小さいことにより、臨界的な熱応力を回避できる。
【0074】
第1の部材2は、ブリッジ形状を有する。第1の部材2は、その下側にそれぞれ1つずつの平坦な脚部領域を有する。脚部領域間にブリッジ領域が配置されている。はんだ材を用いた導電性構造との接続のために接続面が設けられており、ブリッジ領域にははんだ材は施与されない。第1の部材2は、ブリッジ領域において24mmの長さと4mmの幅とを有し、脚部領域において8mmの幅を有する。第1の部材2の材料厚さは0.8mmである。
【0075】
第2の部材3は、導電性構造に対して直接にはんだ付けされないので、熱膨張係数の考慮は必要ない。第2の部材3は高い導電率と良好な変形性を有し、このため接続ケーブルとの接続にとって有利である。したがって、第2の部材3は、1.8μΩ・cmの電気抵抗率を有する材料番号CW004A(Cu‐ETP)の銅から形成される。第2の部材3には、導電率をさらに改善するために、銀製の濡れ層が設けられる。
【0076】
第2の部材3は、第1の部材2の表面でブリッジ領域に配置されている。ここでは、第2の部材3は、第1の部材2の一方の外縁と同一平面になり、かつ、各脚部領域の延長部の方向で向かい側の外縁を越えるように配向される。第2の部材3は、0.8mmの材料厚さ、6.3mmの幅及び27mmの長さを有する。
【0077】
各部材2,3を相互に接続する際に当業者がすぐに想到するのは、これらを相互に溶接することである。ただし、こうした溶接は、ここでの例では容易に行うことができない。材料番号1.4509の鋼は約1505℃の溶融温度を有し、これに対して銅の溶融温度は約1083℃である。融点の差が大きいために、溶接の際に重大な問題が発生する。つまり、第1の部材2の溶融のために接続エレメント1をきわめて高い温度まで加熱しなければならない。その際に、第2の部材3がダメージを受けることがある。例えば、銀を含有する濡れ層が損傷を受けることがある。
【0078】
第1の部材2と第2の部材3とは、本発明によれば、リベット4を用いて相互に接続されている。リベット4により、部材2,3を、使用される材料に関係なく、持続的かつ安定に接続できる。リベットは例えばこの場合も同様にCu‐ETPから形成されている。
【0079】
第1の部材2及び第2の部材3のそれぞれには、適切な孔が設けられる。各孔は相互に重なるように設けられるので、リベット4は両方の孔を通して案内可能である。続いてリベット4が変形されることにより、部材2,3の形状結合が形成され、リベットの厚み部分がそれぞれ上側と下側とに突出する。第1の部材2のブリッジ領域は、図示の実施形態では、基板表面に対して充分な距離を有するので、リベット4の下側での突出部分は問題とならない。
【0080】
図3には、本発明のウィンドウガラスの電気接続エレメント1の領域の構成が示されている。ここでのウィンドウガラスは乗用車のリアガラスであり、基板6、すなわち、3mmの厚さの、熱的に事前バイアスされたソーダ石灰ガラス製の安全シングルガラスを含む。当該基板6は、150cmの幅と80cmの高さとを有する。基板6上には、ヒータ構造体の形態の導電性構造5が印刷されている。導電性構造5は、銀粒子とガラスフリットとを含む。ウィンドウガラスの縁領域では、導電性構造5が約10mmの幅まで拡大され、電気接続エレメント1の接続面を形成する。接続エレメント1は、図示されていない接続ケーブルを介した導電性構造5と外部の給電電圧部との電気的接続に用いられる。当該電気的な接続部は、乗用車の外にいる観察者に対しては、導電性構造5と基板6との間のカバースクリーンプリント8によって隠されている。
【0081】
接続エレメント1の第1の部材2の接続面は、はんだ材7によって、電気的かつ機械的に、導電性構造5に持続的に接続されている。はんだ材7は鉛フリーであり、57重量%のビスマスと40重量%のスズと3重量%の銀とを含む。はんだ材4は250μmの厚さを有する。
【0082】
図4には、本発明の接続エレメント1の別の構成が示されている。ここでは、第2の部材3がブリッジ状に構成されており、銅から成っている。第2の部材3の各脚部領域の下側には、材料番号1.4509のクロム含有鋼から形成される第1の部材2が配置されている。第1の部材2は補償プレートを形成しており、これにより、熱膨張係数の差が大きい場合に欠点となりうる、銅を含有するブリッジとガラス基板との直接の接触が生じない。第1の部材は既に予成形されており、はんだ材7を担持する。
【0083】
図1の実施形態のような第1の部材2のリベット止め、すなわち、第1の部材2全体を貫通するようにリベット4を案内して行うリベット止めは、この場合には不可能である。なぜなら、突出するリベット4が第1の部材2のはんだ付け面(はんだ材との接続面)に損傷を与えかねないからである。
【0084】
図5には、図4の第1の部材2の断面図が示されている。リベット4は、この実施形態では、第1の部材2と一体に構成されて、第1の部材2の、はんだ付け面の反対側に配置されている。したがって平坦なはんだ付け面が得られる。
【0085】
図6には、第1の部材2の別の代替的な構成が示されている。第1の部材2は、図5に示されているようにほぼ平坦に構成されており、はんだ付け面のほぼ中央に凹部が形成されている。当該凹部の領域にはリベットを通すために設けられた孔が形成されている。リベットの突出部分は凹部に収容されるので、この突出部分がはんだ付け面から突出して接続エレメントと基板との接続を邪魔することはない。また、凹部によって、はんだ付け前の接続エレメントでのはんだ材の施与が容易となる。さらに、はんだ付け過程中に溢れたはんだ材を当該凹部に収容できるので、はんだ付け面の側縁を越えるはんだ材の流出幅を低減できる。機械的応力もいっそう小さくすることができる。
【0086】
当該凹部の成形は、はんだ材の施与と同様に、さらなる機能のために最適化可能である。図示の構成では、凹部のプロフィルは、はんだ材の冷間プレスの際に安定した接続を生じさせるための小さな後退部分を有する。ただし、凹部の他の形状、例えば扇形状もしくは長方形状のプロフィルも可能である。
【0087】
図4図6の接続エレメントの構成では、リベット4のうち、基板とは反対側の表面から突出する部分を、接続隆起部として使用可能である。当該接続隆起部により、はんだ付け電極との接続位置が定められ、はんだ付けの際に再現性の高いエネルギ印加が達成される。特に好ましくは、リベットの突出部分はほぼ球セグメントの形状を有する。
【0088】
図7には、電気接続エレメント1を製造する本発明の方法の一実施例が示されている。
【0089】
図8には、本発明の電気接続エレメント1を備えた本発明のウィンドウガラスを製造する本発明の方法の一実施例が示されている。
【符号の説明】
【0090】
1 電気接続エレメント、 2 エレメント1の第1の部材、 3 エレメント1の第2の部材、 4 リベット、 5 導電性構造、 6 基板、 7 はんだ材、 8 カバープリント、 A−A’ 切断線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8