【文献】
Angew. Chem. Int. Ed.,2012年 1月16日,Vol. 51,p. 1962-1965
【文献】
Asian Journal of Chemistry,2013年,Vol. 25, No. 8,p. 4423-4426
【文献】
Microporous and Mesoporous Materials,2010年 3月27日,Vol. 132,p. 428-434
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
その交換可能なカチオン部位は、元素の周期律表のIA、IIA、IIIAおよびIIIB族のイオン、ランタニド系の元素の3価イオン、亜鉛(II)イオン、銅(II)イオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、アンモニウムイオン、ヒドロニウムイオンまたは任意の割合のそれらの2つ以上の混合物によって占有される、請求項1に記載のゼオライト吸着剤。
その交換可能なカチオン部位は、ヒドロニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、プラセオジムおよびランタンならびに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物から選択される1つ以上のイオンによって占有される、請求項1または請求項2に記載のゼオライト吸着剤。
カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリン、ならびに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物から選択される粘土を含むバインダーによって、ゼオライトの結晶が集塊される、請求項1から7のいずれか一項に記載のゼオライト吸着剤。
− 平均体積直径(D50)または長さ(材料が球形でない場合、最大寸法)が1mm未満であって、限界値を除外する材料について、規格ASTM 7084−04に従って測定された1.0MPaから3.5MPaの間のバルク破砕強度(BCS)、
− 平均体積直径(D50)または長さ(材料が球形でない場合、最大寸法)が1mm以上であり、限界値を含む材料について、規格ASTM D4179(2011)およびD6175(2013)に従って測定された1.5daNから30daNの間の粒子粉破砕度、
を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のゼオライト吸着剤。
【背景技術】
【0002】
無機メソ多孔性固体は周知であり、特に界面活性剤の構造化効果を介するその合成は特許US3556725号に初めて記載された。
【0003】
これらのメソ多孔性固体(または他のメソ多孔性ゼオライト、またはメソ多孔性構造を有する他のゼオライト)は、[表面積/体積]比で表されるそれらの大きな多孔度により、それらが接触する分子が粒子のコアに容易に接近し、大きな表面積で反応することが可能になり、従ってこれらの材料の触媒および/または吸着剤特性を高める限りにおいて、触媒および触媒担体の両方としてだけでなく、吸着剤としても多くの産業分野において非常に有用である。
【0004】
Mobil社は、1990年代にメソ多孔性無機固体、特に(アルミノ)ケイ酸化合物、より具体的には化合物MCM 41(物質41のMobil組成)(そのための合成方法はNature、(1992)、359巻、710−712頁に記載されており、その化合物は多数のその後の特許および科学論文の主題であった)に関する広範な研究を行った。
【0005】
このように、これらのメソ多孔性材料は、その細孔構造およびそれらの合成様式の区分の両方に関して、ならびに触媒および/または吸着剤としてのそれらの考えられる用途に関して、実験室規模で周知である。しかし、これらのメソ多孔性無機材料は、水の存在下で熱的に不安定であるという大きな欠点を有し、これにより工業的用途が大きく制限される。
【0006】
メソ多孔性無機固体の調査は、例えば、Feng−Shou Xiaoらによる論文(Hierarchically Structured Porous Materials、(2012)、435−455、Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA、バインハイム、ドイツ978−3−527−32788−1)に記載されているように、様々な方法によって得られたメソ多孔性ゼオライトの開発につながっている。
【0007】
想定される経路の1つは、ゼオライト結晶の後処理の経路であり、これらの後処理は、例えば、水蒸気による処理、脱アルミニウム化をもたらす酸性処理および/または塩基性処理、ならびにネットワーク外の種を除去するための追加の処理であったり、これらのそれぞれの後処理について、またはそれらを一緒に1回以上、同時にまたは連続して行うことが可能である。
【0008】
特許US8486369号、特許出願US2013/0183229号、US2013/0183231号、およびWO2013/106816号は、蒸気、次いで界面活性剤の存在下で酸を用いた様々な連続した後処理によってメソ多孔性構造を有するゼオライトを調製するためのこのような方法を示す例である。
【0009】
このような方法は大きな細孔容積を生成する傾向があるが、対応するものとして、それらは初期のゼオライト粉末の結晶化度を、特定の場合には50%近くまで大きく低下させる。また、ゼオライト骨格を安定化させるために追加の焼灼処理に頼ること、触媒または吸着剤としてのゼオライト材料の大部分の使用に必要な後続の熱処理、特に焼成処理を可能にするためにネットワーク外のアルミニウム原子を除去することが必要である。
【0010】
従って、ゼオライト固体内にある種のメソ多孔性を作り出すことを可能にするこのような方法は、経済性に乏しく、そのため工業化が困難な多数の工程の連続のために実施するのが非常に面倒である。さらに、多数の工程は、ゼオライト構造を脆化させ、その結果、これらのゼオライトの固有の特性を低下させる傾向がある。
【0011】
これが、従来技術でそのようなものとして知られているような後処理のない直接的なメソ多孔性ゼオライト固体の合成が今日好ましいことの理由である。種々の刊行物は、メソ多孔性ゼオライトの実験室での合成の実行可能性を示しており、例として、出願WO2007/043731号およびEP2592049号は、メソ多孔性ゼオライトの合成を界面活性剤、特にTPOAC([3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド)の界面活性剤に基づいて実施しており、特に注目される。
【0012】
さらに、他の刊行物は、例えば、メソ細孔を有するLTAの合成を記載するR.Ryooの研究(Nature Materials、5(2006)、718)または構造化剤としてTPHAC([3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド)を用いたメソ多孔性FAU(X)の合成を記載するA.Inayatら(Angew.Chem.Int.版、(2012)、51、1962−1965)の研究のようなそのような研究を説明する。
【0013】
しかし、現在のところ、これらのメソ多孔性ゼオライトの特定の特性、特にそれらの微孔性が保存されている、メソ多孔性ゼオライトに基づくアグロメレートの調製に関する記載はない。結果として、現時点では、少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトを含み、その転写速度は少なくともメソ多孔性の存在により予想されるものに匹敵する、高い微孔構造を有するそのようなゼオライトアグロメレートを使用する、特に液体および/もしくは気体の分離、イオン交換の分野または触媒の分野における産業用途はない。
【0014】
従って、今日では、高い微孔構造、即ち、大きな吸着容量を有するが、特にメソ細孔の存在によって最適化された転写も可能にするゼオライト吸着剤が必要とされたままである。このように、今日、企業の現在の必要性は、最適な吸着容量および最適な転写速度の両方を兼ね備えたゼオライト吸着剤に向かっている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ゼオライト吸着剤の交換可能なカチオン部位は、ナトリウムイオンおよび/または当業者に知られた、ゼオライトの交換可能なカチオン部位を占めることができる任意のイオン、例えば、元素の周期律表のIA、IIA、IIIAおよびIIIB族のイオン、ランタニド系の元素の3価イオン、亜鉛(II)イオン、銅(II)イオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、アンモニウムイオン、ヒドロニウムイオンまたは任意の割合のそれらの2つ以上の混合物によって占有される。
【0031】
IA族のイオン、特にナトリウムイオン、カリウムイオンおよびリチウムイオンだけでなく、IIA族のイオン、特にマグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオンおよびバリウムイオンが好ましい。IIIA族およびIIB族のイオンの中では、アルミニウムイオン、スカンジウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオンおよびイットリウムイオンが好ましく、ランタニド系の元素の3価イオンの中でランタンイオン、セリウムイオン、プラセオジムイオンおよびネオジムイオンが好ましい。
【0032】
非常に特に好ましい一態様によれば、ゼオライト吸着剤の交換可能なカチオン部位は、ヒドロニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、プラセオジム、およびランタン、より好ましくはヒドロニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウムおよびバリウムイオン、ならびに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物から選択される1つ以上のイオンによって占められる。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、本発明のゼオライト吸着剤は、そのナトリウム交換形態において、0.4g.cm
−3から1.0g.cm
−3の間、好ましくは0.5g.cm
−3から0.9g.cm
−3の間であって、限界値を含む、かさ密度を有する。かさ密度は、規格DIN 8948/7.6に記載されているように測定される。
【0034】
本発明において、「ナトリウム交換形態のゼオライト吸着剤」という表現は、そのカチオン部位が主としてナトリウムイオンによって占められている、即ち、ナトリウムイオン交換度が典型的には90%を超える、好ましくは95%を超えるゼオライト吸着剤を意味することを意図している。交換度の測定については、明細書中で後に説明する。
【0035】
ナトリウム交換形態のゼオライト吸着剤は、以下のプロトコルに従って得ることができ、好ましくは得られる。即ち、ナトリウムで交換されるべきゼオライト吸着剤は、水1リットル当たり1モルのNaClを含有する塩化ナトリウム水溶液中に、90℃で3時間、液体対固体の比が10ml.g
−1で導入される。操作はn回繰り返され、nは少なくとも1に等しく、好ましくは少なくとも2に等しく、好ましくは少なくとも3に等しく、より好ましくは少なくとも4に等しい。
【0036】
n−1およびn回の交換操作で得られた固体を、X線蛍光によって分析される前に、過剰の塩を除去するために20ml.g
−1の割合で水に浸漬することによって4回連続して洗浄し、次いで空気下80℃で12時間乾燥させる。n−1からn回の交換操作の間のゼオライト吸着剤の酸化ナトリウムの重量パーセントが±1%で安定化する場合、前記ゼオライト吸着材料は「ナトリウム交換形態のゼオライト吸着剤」であると考えられる。適宜、±1%の酸化ナトリウムの重量パーセントの安定性が得られるまで、上述のように追加の交換を行う。
【0037】
特に、X線蛍光型の化学分析によって決定されたゼオライト吸着剤の酸化ナトリウムの重量含有率が±1%で安定化するまで、大過剰の塩化ナトリウムを用いて連続的なバッチ式カチオン交換を行うことが可能であろう。この測定方法は明細書中で後に説明する。変形例として、ゼオライト吸着は、後者が専らナトリウムアルカリ媒体中で行われる合成工程の後に、既に本来的にそのナトリウム交換形態であり得る。
【0038】
本発明では、吸着剤は少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトを含み、前記メソ多孔性ゼオライトは有利にはSi/Al原子比が1から5の間のLTA、EMTおよびFAU構造、好ましくはSi/Al原子比が1から1.4の間のLTAおよびFAU構造のメソ多孔性ゼオライトから選択され、限界値を含み、好ましくはX、MSXおよびLSX型のFAU構造のメソ多孔性ゼオライトから選択される。「ゼオライトMSX」(中程度のシリカX)という用語は、約1.05から約1.15の間の限界値を含む、Si/Al原子比を有するFAU型のゼオライトを意味することが意図される。「ゼオライトLSX」(低シリカX)という用語は、約1に等しいSi/Al原子比を有するFAU型のゼオライトを意味することが意図される。
【0039】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明による吸着剤中に存在する前記少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した数平均直径が20μm未満、好ましくは0.1μmから20μmの間、好ましくは0.1から10μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間、より好ましくは0.5μmから5μmの間であって、限界値を含む、結晶の形態である。
【0040】
本発明において、「メソ多孔性ゼオライト」という用語は、後述するt−プロット法によって定義される外部表面積が40m
2.g
−1から400m
2.g
−1の間、好ましくは40m
2.g
−1から250m
2.g
−1の間、より好ましくは40m
2.g
−1から200m
2.g
−1の間であって限界値を含む、ゼオライトを意味することを意図している。延長線上で考えると、本発明の目的に関し、「非メソ多孔性ゼオライト」は、後述するt−プロット法によって定義される外部表面積が、厳密には40m
2.g
−1未満であるゼオライトである場合もある。
【0041】
好ましい一実施形態によれば、本発明による方法は、ゼオライトLTA、EMTおよびFAUならびに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物から選択されたゼオライトのメソ多孔性結晶を含むゼオライト吸着剤を使用する。好ましくは、本発明による方法は、ゼオライトFAUのメソ多孔性結晶を含むゼオライト吸着剤を使用する。
【0042】
本発明のゼオライト吸着剤に含まれるメソ多孔性ゼオライトの結晶は、単独でまたは非メソ多孔性ゼオライトの他の結晶との混合物として、ゼオライト化可能なバインダーおよび5%までの添加剤を用いて集塊される。吸着剤中の非ゼオライト相(NZP)の含有率が、先に示したように、前記吸着剤の総重量に対して重量で、0%<NZP≦6%、好ましくは1%≦NZP≦6%、より好ましくは2%≦NZP≦6%となるように、前記ゼオライト化可能バインダーをゼオライト化する。
【0043】
本発明による吸着剤を調製するために使用されるゼオライト化可能なバインダーは、ゼオライト化可能な粘土を単独で、または1つ以上の他のゼオライト化可能な粘土またはゼオライト化可能でない粘土好ましくはゼオライト化可能な粘土との混合物として含み、好ましくはこれからなる。粘土は、好ましくは、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物から選択され、好ましくはカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、イライトおよびメタカオリン、ならびに任意の割合のそれらの2つ以上の混合物を含むゼオライト化可能な粘土から選択される。
【0044】
本発明では、集塊バインダーが少なくとも1回のゼオライト化工程(バインダーからゼオライトへの変換)を受け、この集塊バインダーのゼオライト化が完全ではないので、本発明の吸着剤が、吸着剤中の非ゼオライト相(NZP)の含有率が、先に示したように、吸着剤の総重量に対する重量で、0%<NZP≦6%、好ましくは0.5%≦NZP≦6%、さらに良好には1%≦NZP≦6%、より好ましくは2%≦NZP≦6%、有利には3%≦NZP≦6%、であるようなゼオライト化されない(即ち、非晶質)ゼオライト化可能なバインダーのある量を含むことは理解するべきである。ゼオライト化されない集塊バインダーにより、とりわけ、本発明の集塊したゼオライト吸着剤中のゼオライトの結晶の凝集を提供することができるようになる。このバインダーはまた、焼成後にゼオライト結晶構造を有さないという点でゼオライトの結晶とは異なり、そのことがゼオライト化されないバインダー(または残留バインダー)がしばしば不活性、より具体的には吸着および/またはイオン交換に対して不活性であるであると記載される理由である。
【0045】
1つの特に好ましい態様によれば、本発明の集塊したゼオライト吸着剤中に存在するバインダーは、もっぱら1つ以上の粘土、好ましくは単一の粘土、好ましくは単一のゼオライト化可能な粘土からなる。
【0046】
本発明によるゼオライト吸着剤はまた、0から5%の間、好ましくは0から1%の間、より好ましくは0から0.5%の間であって、限界値を含む量の1つ以上の他の成分を含むことができ、そのパーセンテージは、前記ゼオライト吸着剤の総重量に対する重量で表される。このまたはこれらの他の成分は、一般に、添加剤の残留物であり、また前記ゼオライト吸着剤の合成のための他の補助剤であり、特に本明細書で後述するものである。
【0047】
このような他の成分の例は、特に焼成後の添加剤の灰、シリカ等を含む。特に、本発明による方法の吸着剤の製造中に場合により使用される添加剤の中で、ゼオライトの合成を専門とする当業者に知られている任意の種類のシリカの供給源、例えば、コロイド状シリカ、珪藻土、パーライト、フライアッシュ、砂、または他の形態の固体シリカの供給源を挙げることができる。
【0048】
これらの他の成分は、一般に、残留物または痕跡の形で存在し、本発明の少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトを含む集塊したゼオライト材料中にいかなる結合または粘着性を導入するために使用されないことを理解すべきである。
【0049】
本発明の吸着剤は、吸着を専門とする当業者に周知のもののような種々の形態であってよく、例えば、非限定的に、本発明のゼオライト吸着剤は、ビーズ、ストランド、押出物のみならず、膜、フィルム等の形態であることができる。
【0050】
本発明によるゼオライト吸着剤は、
− 平均体積直径(D50)または長さ(材料が球形でない場合、最大寸法)が1mm未満であって、限界値を除外する材料について、規格ASTM 7084−04に従って測定された1.0MPaから3.5MPaの間、好ましくは1.2MPaから3.5MPaの間、より好ましくは1.5MPaから3.0MPaの間のバルク破砕強度(BCS)を有し、
− 平均体積直径(D50)または長さ(材料が球形でない場合、最大寸法)が1mm以上であって、限界値を含む材料について、規格ASTM D4179(2011)およびASTM D6175(2013)に従って測定された1.5daNから30daNの間、好ましくは2daNから20daNの間の粒子破砕砕度を有する。
【0051】
別の態様によれば、本発明の主題は、少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトを、場合により1つ以上の添加剤および少なくとも1つのバインダーとを、上で示した割合で混合する工程、当業者に既知の任意の方法、例えば、押出、ペレット化、噴霧化または当業者に周知の他の集塊技術によって、集塊材料を成形する工程、ならびに当業者に周知の技術に従って、集塊バインダーをゼオライト化する工程を少なくとも含む上記のゼオライト吸着剤を調製する方法でもある。
【0052】
好ましい一実施形態によれば、本発明の方法は、少なくとも以下の工程を含む。
a) 0.1μmから20μmの間、好ましくは0.1μmから20μmの間、好ましくは0.1μmから10μmの間、より好ましくは0.5μmから10μmの間、さらにより優先的には0.5μmから5μmの間の数平均直径を有し、1から1.4の間であって、限界値を含むSi/Al原子比を有し、後述するt−プロット法によって定義されるメソ多孔性外部表面積が40m
2.g
−1から400m
2.g
−1の間、好ましくは40m
2.g
−1から250m
2.g
−1の間、より好ましくは40m
2.g
−1から200m
2.g
−1の間であって、限界値を含む少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトの結晶を、少なくとも1つの集塊バインダー、場合により1つ以上の添加剤、およびゼオライト吸着剤の成形を可能にする量の水と共に集塊させる工程;
b) 50℃から150℃の間の温度でアグロメレートを乾燥させる工程;
c) 工程b)のアグロメレートを、150℃を超える温度で数時間焼成する工程;
d) 場合により少なくとも1つの構造化剤の存在下で、工程c)で得られたアグロメレートをアルカリ性水溶液と接触させることにより、集塊バインダーの少なくとも一部をゼオライト化する工程;
e) 場合により存在する構造化剤を除去する任意の工程;
f) 場合により、少なくとも1つのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の溶液と接触させることによって、工程c)または工程d)のアグロメレートのカチオン交換を行う工程;
g) 工程b)に記載の条件下で、工程d)またはe)で得られたアグロメレートを洗浄し、乾燥させる工程;および
h) 工程c)に記載の条件下で、工程f)で得られたアグロメレートを活性化することによりゼオライト吸着剤を製造する工程。
【0053】
工程a)で使用される少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトの結晶は、当業者に既知の様々な方法に従って、例えば、特許出願WO2007/043731号またはA.Inayatら(Angew.Chem.Int.版、(2012)、51、1962−1965)に記載されている合成に従って得ることができる。
【0054】
シーディング(seeding)および/または合成操作条件、例えば、SiO
2/Al
2O
3比、ナトリウム含有率および合成混合物のアルカリ度などの調節による合成によって、または従来のもので当業者には既知であるゼオライト結晶の後処理方法に従って前記結晶を調製することもできる。
【0055】
後処理方法は、一般に、既に形成されたゼオライトネットワークから、固体の脱アルミニウム化をもたらす1つ以上の酸処理であって、前記処理後に、例えば、D.Verboekendら(Adv.Funct.Mater.、22、(2012)、916−928頁)によって記載されているように、形成されたアルミニウム系の残留物を除去するために、水酸化ナトリウム(NaOH)によって1回以上の洗浄が行われる酸処理、あるいは、例えば、出願WO2013/106816号に記載されているように、酸の作用と、酸処理の効率を改善する構造化剤の作用とを組み合わせた処理のいずれかによって原子を除去することにある。
【0056】
これらのゼオライトの直接合成のための方法(即ち、後処理以外の合成方法)が好ましく、一般に、犠牲テンプレートとしても知られている1つ以上の構造化剤を含む。
【0057】
使用され得る犠牲テンプレートは、当業者に知られている任意の種類、特に出願WO2007/043731号に記載されているものであり得る。好ましい一実施形態によれば、犠牲テンプレートは、有利には、オルガノシランから、より優先的にはオルガノシランから、より優先的には[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロライド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロライド、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、および任意の割合のそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0058】
上記の犠牲テンプレートの中でも、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、即ち、TPOACが非常に特に好ましい。
【0059】
より高いモル質量の犠牲テンプレート、例えば、PPDA(ポリマーポリジアリルジメチルアンモニウム)、PVB(ポリビニルブチラール)、およびメソ細孔の直径を増加させることがこの分野で知られている他のオリゴマー化合物を使用することもできる。
【0060】
本発明の方法の好ましい一実施形態によれば、工程a)において、除去されることを意図した犠牲テンプレートの存在下で調製された、上述の少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトの結晶の集塊が実施される。
【0061】
この除去は、当業者に既知の方法に従って、例えば、焼成によって実施することができ、非限定的に、犠牲テンプレートを含むゼオライトの結晶の焼成は、酸化性および/または不活性ガスを流しながら、特に、酸素、窒素、空気、乾燥および/または脱炭酸空気、場合により乾燥および/または脱炭酸された酸素枯渇空気等のガスで、150℃を超える、典型的には180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の1つ以上の温度で、数時間、例えば、2から6時間実施することができる。ガスの性質、温度上昇勾配ならびに連続的な温度定常段階およびその持続時間は、犠牲テンプレートの性質に応じて適合されるであろう。
【0062】
任意の犠牲テンプレートを除去する追加の工程は、本発明のゼオライト吸着剤を調製する方法中の任意の時点で行うことができる。従って、犠牲テンプレートの除去は、有利には、集塊工程a)の前にゼオライト結晶を焼成することによって、または工程b)とc)との間に吸着剤を乾燥および/または焼成することと同時に行うことができる。
【0063】
しかし、工程a)の集塊が、異なる態様に従って得られたいくつかのメソ多孔性ゼオライトの集塊を含むことは、本発明の文脈からの逸脱ではないであろう。
【0064】
前記少なくとも1つの集塊バインダーの量は大きな割合で変化することができ、有利には、無水等価物(強熱減量によって補正された重量)で表されるゼオライトおよびバインダーの総重量に対するバインダーの重量で、5%から30%の間、好ましくは5%から25%の間、より好ましくは10%から20%の間である。
【0065】
非常に特に好ましい一実施形態によれば、集塊バインダーは、少なくとも80%のゼオライト化可能な粘土またはゼオライト化可能な粘土の混合物を含み、即ち、これは1つ以上のゼオライト化工程においてゼオライト構造に変換することができる。
【0066】
集塊工程a)で使用される少なくとも1つのメソ多孔性ゼオライトが、1つ以上のカチオン交換を事前に受けていたことは本発明の文脈から逸脱することはないであろう。この場合、イオン交換工程f)を省略することは可能であるが、これは好ましくない。ゼオライト化工程d)は、後述するXRDで測定したNZP値が上記の通りであるように実施される。
【0067】
アグロメレートの乾燥(工程b))は、当業者に既知の任意の方法に従って、有利には従来技術から周知の方法に従って乾燥炉中で、有利には酸化性および/または不活性ガスを流しながら、特に酸素、窒素、空気、乾燥および/または脱炭酸空気、場合により乾燥および/または脱炭酸された酸素枯渇空気のようなガスで50℃を超える、典型的には50℃から150℃の間、優先的には60℃から80℃の間の温度で数時間行うことができる。
【0068】
アグロメレートの焼成の工程c)も、当業者に周知の方法に従って、有利には酸化性および/または不活性ガスを流しながら、特に酸素、窒素、空気、乾燥および/または脱炭酸空気、場合により乾燥および/または脱炭酸された酸素枯渇空気のようなガスで150℃を超える、典型的には180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の温度で数時間、例えば2から6時間行う。
【0069】
同様に、ゼオライト化工程d)は、当業者に周知の工程であり、従来技術に記載された任意の方法に従って行うことができ、使用されるアルカリ水溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムの水溶液、またはリチウム、カリウムもしくはナトリウム塩の水溶液、特にハロゲン化物、有利には塩化物であることができ、水酸化ナトリウムの使用が非常に特に好ましい。
【0070】
原則として、アルカリ性ゼオライト化溶液の濃度は0.5Mから5Mの間である。ゼオライト化は、好ましくは、周囲温度より高い温度、例えば、周囲温度(約20℃)からアルカリ性ゼオライト化溶液の沸点の間、例えば、約80℃から100℃の温度で、熱条件下で行われる。ゼオライト化処理の持続時間は、一般に、数十分から数時間、通常約1時間から8時間の間である。
【0071】
本発明の方法の一実施形態によれば、集塊バインダーの少なくとも一部のゼオライト化の工程d)は、当業者に既知の方法、例えば、焼成に従って除去されることが意図される少なくとも1つの構造化剤または犠牲テンプレートの存在下で実施することができ、構造化剤の存在の目的は、本発明のアグロメレート中にある種のメソ多孔性を作り出し、その結果としてメソ多孔性ゼオライトアグロメレートを得ることである。
【0072】
構造化剤の量は、所望のメソ多孔性の程度に従って大きな割合で変化し得、粘土の重量に対する重量で、有利には0.1%から50%の間、好ましくは0.1%から33%の間、より好ましくは1%から30%の間、有利には5%から30%の間である。
【0073】
構造化剤または犠牲テンプレートの性質は、当業者に既知の任意の種類のものであってよく、これはメソ多孔性ゼオライトの合成について上述したものである。
【0074】
集塊バインダーの一部をメソ多孔性および/または場合により非メソ多孔性ゼオライトに変換することを目的とする、ゼオライト化工程d)の間に場合により導入される構造化剤を除去する任意の工程e)を、当業者に既知の任意の手段、特に、一般には150℃を超える、典型的には180℃から650℃の間、優先的には200℃から600℃の間の温度での熱処理によって行うことができる。この場合、高温で実施される活性化工程h)も、構造化剤の除去を可能にし、それによって有利には、工程h)において活性化の間に実際に除去される前記構造化剤の除去の工程e)を実施しないことが可能になる。
【0075】
活性化工程h)は、それが任意の工程e)の間に除去されなかった場合に、微孔構造(水の除去)およびメソ多孔性(構造化剤の除去)の両方を解放するために必要な工程である。この活性化工程は、当業者に知られている任意の焼成方法に従って、例えば、限定しないが工程c)について記載したように、酸化性および/または不活性ガスを流しながら、特に、酸素、窒素、空気、乾燥および/または脱炭酸空気、場合により乾燥および/または脱炭酸された酸素枯渇空気等のガスで、150℃を超える、典型的には180℃から650℃の間、優先的には200℃から600℃の間の1つ以上の温度で、数時間、例えば、2から6時間実施することができる。ガスの性質、温度上昇勾配ならびに連続的な温度定常段階およびその持続時間は、犠牲テンプレートの性質に応じて適合されるであろう。
【0076】
工程a)で使用されるメソ多孔性ゼオライト結晶および本発明のゼオライト吸着剤中の結晶のサイズは、有利には、例えば、残留バインダー(ゼオライト化工程の間に変換されない)または吸着剤中の他の非晶質相を含む非ゼオライト相の存在を確認することも可能にする走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって測定される。本発明の明細書において、「数平均直径」または「サイズ」という用語は、ゼオライト結晶に使用される。これらの大きさを測定する方法は、明細書中で後述する。
【0077】
集塊および成形(工程a)は、押出、圧縮、造粒プレート上での集塊、造粒ドラム、噴霧化等の当業者に既知の技術のいずれかに従って実施することができる。使用される集塊バインダーおよびゼオライトの割合は、典型的には従来技術のもの、即ち、95重量部から70重量部のゼオライトに対して5重量部から30重量部の間のバインダーである。それらがビーズ、押出物等の形態であるかどうかに関わらず、工程a)から得られるアグロメレートは、一般に、7mm以下、好ましくは0.05mmから7mmの間、さらにより好ましくは0.2mmから5mmの間、より優先的には0.2mmから2.5mmの間である数平均体積直径または長さ(それらが球状でない場合、最大寸法)を有する。
【0078】
工程a)の間に、ゼオライト結晶およびバインダーに加えて、1つ以上の添加剤を添加してもよい。添加剤は、レオロジーおよび/または結合力の改変によりゼオライト/粘土パルプの取り扱いを容易にし、または最終的なアグロメレートに特にマクロ多孔性の点で満足できる特性を与えることを意図した有機物、例えば、リグニン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、界面活性剤(カチオン性、アニオン性、非イオン性または両性)分子である。メチルセルロースおよびその誘導体、リグノスルホネート、ポリカルボン酸およびカルボン酸コポリマー、それらのアミノ誘導体およびそれらの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩が優先的に、しかし非包括的に挙げられる。添加剤は、0%から5%、好ましくは0.1%から2%の割合で導入される。
【0079】
添加剤はまた、好ましくは前記固体の全重量の1%から5%を表す液体および/または固体シリカの供給源を含む。シリカの任意の供給源は、ゼオライトの合成を専門とする当業者に既知の任意の種類のもの、例えば、コロイド状シリカ、珪藻土、パーライト、フライアッシュ、砂、または任意の他の形態の固体シリカであってもよい。
【0080】
一実施形態によれば、本発明の方法の工程a)は、コロイド状シリカ、珪藻土、パーライト、フライアッシュ、砂、または任意の他の形態の固体シリカから選択されるシリカ供給源である少なくとも1つの添加剤の存在下で実施される。
【0081】
焼成(工程c)および工程h))の間に、ガスの性質、温度上昇勾配および連続的な温度定常段階、ならびにそれらのそれぞれの持続時間は、除去されるべき任意の構造化剤の性質に応じて、ならびに本発明のアグロメレートを合成するための方法において使用されるバインダーおよび任意の添加剤の性質に応じて適合されるであろう。
【0082】
このようにして得られたゼオライト吸着剤は、全く意外にも、以下を同時に兼ね備える最適な特性を有する。
− 微小孔体積および、その結果、最適な容量を特徴とする高度の結晶化度、
− そのメソ細孔容積を特徴とする最適な転写速度、および
− 動的吸着方法または静的吸着方法およびイオン交換方法で使用するのに最適な機械的特性。
【0083】
本発明によるゼオライト吸着剤のメソ多孔性は、例えば、US7785563号に記載されているような透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた、例えば、観察によって容易に識別可能なメソ細孔によって視覚化することができる。
【0084】
本発明による集塊したゼオライト材料は、メソ多孔性ゼオライトの特性を同時に有するが、特に従来技術から既知の従来のゼオライトアグロメレートの機械的特性、即ち、ゼオライトが非メソ多孔性であるアグロメレートの機械的特性も有する。
【0085】
より詳細には、本発明の集塊したゼオライト材料は、ゼオライト吸着剤内のゼオライトの結晶化度およびメソ多孔性を維持することができ、分解されずに機械的に強い集塊したゼオライト吸着剤を得ることができることを示す。また、本発明によるメソ多孔性ゼオライトを有する集塊したゼオライト材料を調製する方法は、実施することが容易かつ迅速かつ経済的であり、従って最小限の合成工程で容易に工業化可能な方法である。
【0086】
従って、また別の態様によれば、本発明は、ゼオライトが通常使用される全ての既知の分野における、特に気相または液相分離操作、特に気体流または液体流を分離する方法、気相圧力スイング吸着法、気相または液相温度スイング吸着法、再生を伴わない固定床吸着法、および模擬移動床分離方法における、ちょうど定義されたようなまたは上記の方法に従って得ることができる少なくとも1つのゼオライト吸着剤の使用に関する。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明の主題を説明することを可能にするものであり、例示としてのみ与えられ、本発明の様々な実施形態を限定することを決して意図するものではない。
【0088】
以下の実施例において、アグロメレートの物理的性質は、当業者に既知の方法によって評価され、その主なものを以下に要約する。
【0089】
ゼオライト吸着剤の強熱減量
強熱減量を、規格NF EN 196−2(2006年4月)に記載されているように、950℃±25℃の温度で、空気中で試料を焼成することにより、酸化性雰囲気下で決定する。測定標準偏差は0.1%未満である。
【0090】
結晶(ゼオライト)相の純度および結晶化度の測定−X線回折による定性および定量分析
本発明の吸着剤中のゼオライト相の純度を、当業者には略語XRDで知られているX線回折分析によって評価する。この識別はBruker XRD装置で行う。
【0091】
この分析により、分析された固体中に存在する結晶相を同定することが可能になる。何故ならば、ゼオライト構造の各々は、回折ピークの位置およびそれらの相対強度によって定義される独自の回折スペクトル(またはディフラクトグラム)を有するからである。集塊したゼオライト吸着剤を粉砕し、次に簡単な機械的圧縮によって試料ホルダー上で広げ、平滑化する。
【0092】
Bruker D5000装置で回折スペクトル(ディフラクトグラム)を取得する条件は次のとおりである。
・ 40kV−30mAで使用されるCuチューブ;
・ スリットサイズ(発散、散乱および分析)=0.6mm;
・ フィルター:Ni;
・ 回転する試料装置:15rpm;
・ 測定範囲:3°<2Θ<50°;
・ インクリメント:0.02°;
・ インクリメント毎の計測時間:2秒。
【0093】
得られた回折スペクトル(ディフラクトグラム)の解釈は、2011年公開のベースICDD PDF−2を使用する、相の同定を伴うEVAソフトウェアを用いて行う。
【0094】
ゼオライト吸着剤のゼオライト画分の重量
ゼオライト画分の重量を、XRDの略語で当業者に知られているX線回折分析によって測定する。この分析はBruker装置で実施し、その後、適切な基準(同じ化学的性質、推定では、検討されている吸着剤のカチオン処理条件と同一のカチオン処理下で100%結晶性であると考えられるゼオライト)のピーク強度を基準として取り、ディフラクトグラムピーク強度からゼオライト画分の量を評価する。結晶性に戻ることを可能にするピークは、9°から37°の間の角度ゾーン2Θの最も強いピークであり、例えば、ゼオライトFAUの場合、それぞれ11°から13°の間、22°から26°の間、および31°から33°の間の角度範囲2Θで観察されるピークである。角度ゾーン2Θの最も強いピークは、“Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites”、編集者:M.M.J.TreacyおよびJ.B.Higgins、第4改定版、Elsevier、(2001)中のゼオライトの各ファミリーに対して入手できる。
【0095】
ゼオライト吸着剤の非ゼオライト相(NZP):
非ゼオライト相NZPのレベル、例えば、残留集塊バインダー(即ち、ゼオライト化されない)およびあらゆる他の任意の非晶質相のレベルを、以下の式に従って計算する。
NZP=100−Σ(ZP)
ここで、Σ(ZP)は、本発明の意味におけるゼオライト画分の量の合計を表す。
【0096】
微小孔容積およびメソ細孔容積の測定:
微小孔容積の測定は、Dubinin−Raduskevitch容量(77Kでの液体窒素または87Kでの液体アルゴンの吸着)の測定等の標準的な方法によって評価する。
【0097】
Dubinin−Raduskevitch容量は、ゼオライト構造の細孔開口の関数としての、液化温度での窒素またはアルゴン等の気体の吸着等温線の測定値から決定される。LTAにはアルゴンを選択し、FAUには窒素を選択するであろう。吸着の前に、ゼオライト吸着剤を真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間で9時間から16時間の間脱気する。次いで、吸着等温線の測定は、マイクロメリティクス社のASAP2020型の装置で行い、0.002から1の間のP/P0の相対比圧力で少なくとも35個の測定点を取る。微小孔容積を、得られた等温線からのDubinin−Raduskevitchに従って、規格ISO 15901−3(2007)を適用することによって決定する。Dubinin−Raduskevitch方程式に従って、評価された細小孔容積は、吸着剤1グラム当たりの液体吸着物のcm
3で表される。測定の不確実性は±0.003cm
3.g
−1である。
【0098】
メソ細孔容積は、Barrett−Joyner−Halenda法(BJH法、EP Barrett、LG Joyner、PP Halenda、“The Determination of Pore Volume and Area Distributions in Porous Substances.I.Computations form Nitrogen Isotherms”、J.Am.Chem.Soc.、73(1)、(1951)、373−380)によって、77Kでの窒素物理吸着等温吸着枝から決定する。
【0099】
t−プロット法によるメソ孔の外部表面積(m
2/g)の測定
t−プロット計算方法により、吸着等温線データQ ads=f(P/P0)を利用し、微小孔表面積を計算することができる。外部表面積は、m
2/gで表される全細孔表面積を計算するBET表面積との差を決定することにより、そこから推測することができる(BET S=微小孔表面積+メソ細孔の外部表面積)。
【0100】
t−プロット法により微小孔表面積を計算するために、曲線Q ads(cm
3.g
−1)を、t=参考の非多孔質固体上に形成されるであろう部分圧力P/P0に依存する層の厚さtの関数としてプロットする(log(P/P0)のt関数)。適用されるHarkins−Jura方程式:[13.99/(0.034−log(P/P0))
0.5]。0.35nmから0.5nmの間の間隔tにおいて、吸着された原点Qでy軸を画定する直線をプロットしてもよく、これにより、微小孔表面積を計算することが可能になる。固体が微小孔質でない場合、この直線は0を通過する。
【0101】
ゼオライト吸着剤の外部表面積(m
2/g)の測定:
ゼオライト吸着剤の外部表面積を、0.35nmから0.5nmの間の間隔tでHarkins−Jura方程式を適用することによって、「t−プロット」計算方法を用いる上記の方法に従って測定する。
【0102】
透過型電子顕微鏡によるメソ細孔構造の観察
吸着剤を乳鉢で粉砕した後、得られた粉末を超音波処理しながらエタノールに1分間分散させる。溶液の一滴を顕微鏡のグリッド上に置く。試料を周囲条件下で乾燥させる。
【0103】
観察は透過型電子顕微鏡(FEIのCM200)を用いて120kVの電圧で行う。
【0104】
結晶の粒径:
工程a)で使用したメソ多孔性ゼオライト結晶およびアグロメレートに含まれるゼオライト結晶の数平均直径の評価を、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって先に示されたように実施する。
【0105】
試料上のゼオライト結晶のサイズを評価するために、少なくとも5000の倍率で1組の画像を撮る。次いで、少なくとも200個の結晶の直径を、専用ソフトウェア、例えば、エディターLoGraMiのSmile Viewソフトウェアを用いて測定する。精度は約3%である。
【0106】
バルク破砕強度:
本発明のゼオライト吸着剤の床の破砕強度を、Vinci Technologies社により販売されている「BCSテスタ」装置と組み合わされた、シェル法シリーズSMS1471−74(シェル法シリーズSMS1471−74“Determination of Bulk Crushing Strength of Catalysts.Compression−Sieve Method”)に従って特徴付ける。この方法は、当初は3mmから6mmの間のサイズの触媒の特徴付けることを意図したもので、特に破砕中に生成された微粉を分離することを可能にする425μmの篩の使用に基づいている。425μmの篩の使用は、1mm以上の直径を有する粒子には適したままであるが、特徴付けることが望まれるアグロメレートの粒子サイズに従って適合されなければならない。
【0107】
粒子破砕強度:
機械的粒子破砕強度を、規格ASTM D 4179およびD 6175に従ってVinci Technologiesによって販売されている粒子破砕強度装置で測定する。
【0108】
ゼオライト吸着剤の化学分析−Si/Al比および交換度:
上記の工程a)からf)の最後に得られる最終生成物の元素化学分析は、当業者に既知の様々な分析技術に従って実施することができる。これらの技術の中で、例えば、Bruker社のTiger S8のような波長分散分光計(WDXRF)での規格NF EN ISO 12677:2011に記載されているX線蛍光化学分析技術を挙げることができる。ICPによる方法も挙げられる。
【0109】
X線蛍光は、試料の元素組成を確立するために、X線範囲の原子の光ルミネセンスを利用する非破壊スペクトル技術である。一般にX線ビームまたは電子衝撃による原子の励起は、原子の基底状態に戻った後に特定の放射線を発生させる。X線蛍光スペクトルは元素の化学的組み合わせにはほとんど依存しないという利点を有し、そのことは定量的および定性的の両方で正確な測定を提供する。慣習的に、各酸化物の較正の後、0.4重量%未満の測定の不確実性が得られる。
【0110】
他の分析方法は、例えばPerkin Elmer 4300DV型の装置で、例えば、規格NF EN ISO 21587−3またはNF EN ISO 21079−3に記載の原子吸光分析(AAS)および誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP−AES)によって説明される。
【0111】
X線蛍光スペクトルは元素の化学的組み合わせにはほとんど依存しないという利点を有し、そのことは定量的および定性的の両方で正確な測定を提供する。慣習的に、各SiO
2酸化物およびAl
2O
3酸化物、ならびに様々な酸化物(例えば、交換可能なカチオン、例えば、ナトリウムに由来するもの)の較正後に0.4重量%未満の測定の不確実性が得られる。ICP−AES法は酸化リチウム含有率を測定することを可能にするリチウム含有率を測定するのに特に適している。
【0112】
このように、上述の元素化学分析により、アグロメレート内で使用されるゼオライトのSi/Al原子比、および前記の工程a)からh)の終了時に得られる最終生成物のSi/Al原子比の両方を確認し、工程f)に記載されている任意のカチオン交換の質を確認するだけでなく、ナトリウム交換形態における吸着剤のナトリウム含有率を確認することが可能になる。本発明の明細書において、Si/Al原子比の測定の不確実性は±5%である。
【0113】
イオン交換の質は、交換後のゼオライトアグロメレート中の考慮中のカチオンのモル数に関連する。より具体的には、所与のカチオンとの交換の程度は、前記カチオンのモル数と全ての交換可能なカチオンのモル数との間の比を評価することによって推定される。各々のカチオンのそれぞれの量は、対応するカチオンの化学分析によって評価される。例えば、ナトリウムイオンとの交換の程度は、Na
+カチオンの総数と交換可能なカチオンの総数(例えば、Ca
2+、K
+、Li
+、Ba
2+、Cs
+、Na
+等)との比を評価することによって推定され、各々のカチオンの量は、対応する酸化物(Na
2O、CaO、K
2O、BaO、Li
2O、Cs
2O等)の化学分析によって評価される。この計算方法により、吸着剤の残留バインダー中に存在する考えられる酸化物が計測される。しかし、このような酸化物の量は、本発明による吸着剤のゼオライトの交換可能な部位のカチオンに由来する酸化物と比較して軽微であると考えられる。
【0114】
かさ密度
かさ密度を、規格DIN 8948/7.6に記載されているように測定する。
【0115】
[実施例1:TPOAC/Al
2O
3比=0.04で、核形成ゲルおよび成長ゲルを添加したX型のメソ多孔性ゼオライトの合成]
a)300rpmでアルキメデススクリューを備えた撹拌反応器中での成長ゲルの調製
加熱ジャケット、温度プローブおよび撹拌機を備えたステンレス鋼製反応器中で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(Al
2O
3を65.2重量%含有するAl
2O
3・3H
2O)128gおよび水195.5gを含有するアルミン酸塩溶液を25℃で25分間、300rpmの撹拌速度で、25℃の、珪酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび水1997.5gを含有する珪酸塩溶液中で混合することにより、成長ゲルを調製する。
【0116】
成長ゲルの化学量論は以下の通りである。即ち、3.48Na
2O/Al
2O
3/3.07SiO
2/180H
2O。25℃で25分間、300rpmで攪拌しながら成長ゲルを均質化する。
【0117】
b)核形成ゲルの添加
成長ゲルと同様にして調製した組成12Na
2O/Al
2O
3/10SiO
2/180H
2Oを有し、40℃で1時間熟成した核形成ゲル61.2g(即ち、2重量%)を、25℃で300rpmで攪拌しながら成長ゲルに添加する。300rpmで5分間均質化した後、攪拌速度を100rpmに下げ、30分間攪拌を続ける。
【0118】
c)反応媒体への構造化剤の導入
60%のTPOACメタノール(MeOH)溶液27.3gを、300rpmの撹拌速度で反応媒体中に導入する(TPOAC/Al
2O
3モル比=0.04)。結晶化を開始する前に、熟成工程を25℃で1時間、300rpmで行う。
【0119】
d)結晶化
攪拌速度を50rpmに下げ、反応媒体の温度が80分かけて75℃まで上昇するように反応器ジャケットの公称温度を80℃に設定する。75℃で22時間の定常段階後、ジャケットに冷水を循環させることによって反応媒体を冷却し、結晶化を停止させる。
【0120】
e)ろ過/洗浄
固体を焼結体上で回収し、次いで脱イオン水で中性pHになるまで洗浄する。
【0121】
f)乾燥/焼成
生成物を特徴付けるために、オーブン中で90℃で8時間乾燥を行い、乾燥生成物の強熱減量は23重量%である。
【0122】
構造化剤を除去することによって微孔構造(水)およびメソ多孔性の両方を解放するのに必要な乾燥生成物の焼成は、以下の温度プロファイルで行う。即ち、200℃までの30分間の昇温、次いで、200℃の定常段階で1時間、次いで550℃まで3時間の昇温、および550℃で1.5時間の定常段階である。
【0123】
このようにして255gの無水等価固体のゼオライトXPHを得る。これは、関与するアルミニウムの量に対して99モル%の収率を表す。X線蛍光によって決定したメソ多孔性ゼオライトX(XPH)のSi/Al比は1.24に等しい。この実施例1で調製したこのXPHの特性を、以下の表1にまとめる。
【0124】
【表1】
【0125】
メソ細孔のサイズ分布を、円筒細孔モデルを用いた密度汎関数理論(DFT)法によって計算する。結晶化度のパーセンテージは、ベースICDD PDF−2,2011を用いたTOPASソフトウェアにより計算する。
【0126】
[実施例2:ゼオライト化可能バインダーの存在下でのメソ多孔性ゼオライトXアグロメレートの調製]
以下の本文では、与えられた重量は無水等価物として表される。
【0127】
実施例1で得られたメソ多孔性ゼオライトX結晶1600g、カオリン350g、Klebosol(R) 30の商品名で販売されているコロイド状シリカ130g(SiO
2を30重量%およびNa
2Oを0.5%含有)および混合物の押出しを可能にする水の量からなる均質混合物を調製する。押出前のパルプの強熱減量は44%である。
【0128】
直径1.6mmの押出物を形成する。押出物を80℃の換気オーブン中で一晩乾燥させる。次いで、それらを、窒素を流しながら、550℃で2時間焼成し、次いで乾燥脱炭酸空気を流しながら、550℃で2時間焼成する。
【0129】
メソ多孔性ゼオライトX押出物の機械的粒子破砕強度は2.6daNである。それらのかさ密度は0.64g・cm
−3である。
【0130】
窒素等温線から測定したDubinin−Raduskevitch容量は0.269cm
3.g
−1である。XRDで評価した非ゼオライト相の含有率は、吸着剤の総重量に対して20重量%である。窒素吸着等温線から測定した外部表面積は110m
2.g
−1であり、メソ細孔容積は0.18cm
3.g
−1である。
【0131】
[実施例3:本発明によるゼオライト吸着剤の調製]
実施例2の押出物をゼオライト化処理に供する。
【0132】
この趣旨で、これらの押出物200gを温度100℃±1℃に調整したジャケットを備えたガラス製反応器に入れ、次いで1Mの濃度の水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを添加し、反応媒体を3時間撹拌する。
【0133】
次いで、押出物を水による3回の連続操作の洗浄で洗浄し、続いて反応器を空にする。洗浄の効率を、洗浄水の最終pHを測定することによって確認し、最終pHは10.0から10.5の間であるべきである。
【0134】
本発明による押出物の機械的粒子破砕強度は3.0daNである。それらのかさ密度は0.65g・cm
−3である。窒素等温線から測定したDubinin−Raduskevitch容量は0.322cm
3.g
−1である。
【0135】
XRD分析は、ゼオライト化後にフォージャサイト相以外のいかなる相も示さない。XRDによって評価した非ゼオライト相の含有率は、本発明による吸着剤の総重量に対して4重量%である。窒素吸着等温線から測定した外部表面積は50m
2.g
−1であり、メソ細孔容積は0.07cm
3.g
−1である。従って、メソ多孔性ゼオライトXを含む本発明による集塊したゼオライト材料は、非ゼオライト化吸着剤(バインダーがゼオライト化を受けない比較例2を参照)よりも良好な機械的特性および微小孔容積特性を有することが観察される。
【0136】
このように、本発明により、メソ多孔性ゼオライトの特性、微孔構造に関連する特性、およびこれまでに知られているゼオライトアグロメレートの機械的特性を同時に兼ね備えた集塊したゼオライト材料を有することが可能になることに注目することは全く驚くべきことである。従って、触媒、分離、吸着等のような全ての工業的応用分野において、本発明の集塊したゼオライト材料の使用を困難なく想定することが可能である。