(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
男性が直面する老化に関する問題の1つに、男性更年期の発現がある。40代〜60代の男性の約40%が、ある程度の男性更年期を経験すると推測されている。
【0003】
男性更年期障害になると、様々な症状(例えば、抑うつ、落胆、苛立ち、不安、神経過敏、疲労感、生気消失、筋肉炎、関節炎、筋力低下、ほてり、発汗、記憶力低下、睡眠障害、集中力低下、肉体的消耗感、勃起障害(ED)、性欲低下、射精感の消失等)が強く発現する。男性更年期障害であるか否かを確認する方法としては、血液検査による血中テストステロン濃度の測定及びアンケートによる方法がある。男性更年期障害の発症には働き盛りの男性が抱える仕事及び家庭における様々なストレスが大きく関与していると指摘されており、近年、更年期障害と疑われる中高年男性が増加傾向にある。
【0004】
男性更年期障害は加齢性のアンドロゲン低下を背景として、女性の更年期障害に類似した自律神経失調症状及び精神神経症状が出現し、更にほとんどの場合に男性機能低下を合併するといった病態を示している(奥山 明彦 著書 男性更年期障害 LOH症候群 I男性更年期障害とは D.心療内科の視点から 24頁 ((株)南山堂) 2007.)。一方で、テストステロンを始めとする性ホルモンの分泌は、視床下部‐下垂体‐精巣系を介してテストステロンを含めたホルモン分泌がネガティブフィードバックを介して調整されている(奥山 明彦 著書 男性更年期障害 LOH症候群 II男性更年期障害の診断 C.ホルモン測定とその評価 65頁 ((株)南山堂) 2007.)。そのため、テストステロンの測定値だけで男性更年期障害と判断することは難しい。
【0005】
一般的に、活力低下を自覚しており血液中の遊離テストステロンの低下傾向がみられる被験者は、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)と診断され、QOLを維持するためにはアンドロゲン補充療法の適応となりえる。しかしながら、女性におけるホルモン補充療法が国際的に普及しているのに対し、男性に対する治療はEDに対するPDE5阻害剤などの普及以外、医療の対象となっていない。
【0006】
例えば、特許文献1〜3では、テストステロンを上昇させる各種成分が報告されている。
【0007】
特許文献1では、ツルニンジン属植物に含まれるTangshenoside類、Lancemaside-A及びSyringinに血中テストステロンの低下を抑制する作用があることが報告されている。
【0008】
特許文献2では、ゲラニルゲラニオールがテストステロン増強作用を有することが報告さている。
【0009】
特許文献3では、黒酢関連素材及び該素材と特定素材との組み合わせがテストステロンの分泌を顕著に促進することが報告されている。
【0010】
しかしながら、アンドロゲン補充療法も副作用の可能性があり、特に前立腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)に関しては注意を要するため、アンドロゲン様作用のない更年期症状緩和剤が求められている。
【0011】
また、ED治療薬としてはPDE5阻害剤である「シルデナフィル」が使用されている。しかしながら、シルデナフィルには、一過性であるとはいえ副作用及び薬物相互作用が報告されている。例えば、ニトログリセリンなどの硝酸剤の血圧降下作用に対して、シルデナフィルは促進的に働くため、それらとの併用は禁忌とされており、また、眼に対する作用についても、青視症、複視、赤視症等が認められている。
【0012】
ところで、蜂の子は古来より様々な国及び地域でタンパク質等の栄養源として食されてきた。近年では、蜂の子を乾燥して粉砕させた粉末を原料とする健康食品が知られている。この健康食品は、蜂の子の有するタンパク質、アミノ酸、ビタミン及びミネラルを豊富に含有している。蜂の子には特許文献4に開示されているように、抗酸化作用が知られているが、そのほかの作用については知られていないことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、アンドロゲンを上昇させず、安全性の高い強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、蜂の子に強壮強精作用、性機能改善作用、男性更年期症状の改善作用及び抗疲労作用があり、その上、蜂の子はアンドロゲンを上昇させず、安全性が高いという知見を得た。
【0016】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤、抗疲労剤等を提供するものである。
【0017】
項1.蜂の子を含む強壮強精剤。
項2.蜂の子を含む性機能改善剤。
項3.蜂の子を含む男性更年期症状改善剤。
項4.蜂の子を含む抗疲労剤。
項5.蜂の子を含む活力向上剤。
項6.前記蜂の子がタンパク質加水分解酵素処理されたものである、項1に記載の強壮強精剤、項2に記載の性機能改善剤、項3に記載の男性更年期症状改善剤、項4に記載の抗疲労剤、又は項5に記載の活力向上剤。
項7.蜂の子を含む強壮強精用、性機能改善用、男性更年期症状改善用、抗疲労用及び/又は活力向上用組成物。
項8.蜂の子を含む強壮強精用、性機能改善用、男性更年期症状改善用、抗疲労用及び/又は活力向上用食品組成物。
項9.前記蜂の子がタンパク質加水分解酵素処理されたものである、項7又は8に記載の組成物。
項10.蜂の子の有効量を哺乳動物に投与する工程を含む、強壮強精方法、性機能改善方法、男性更年期症状改善方法、疲労改善方法又は活力向上方法。
項11.前記蜂の子がタンパク質加水分解酵素処理されたものである、項10に記載の方法。
項12.強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤、抗疲労剤、又は活力向上剤の製造における蜂の子の使用。
項13.前記蜂の子がタンパク質加水分解酵素処理されたものである、項12に記載の使用。
【発明の効果】
【0018】
蜂の子は、強壮強精作用の改善作用、性機能改善作用、男性更年期症状及び抗疲労作用を有することから、強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤の有効成分として有用である。その上、蜂の子は、アンドロゲンを上昇させないため、安全性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、蜂の子を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、アンドロゲンを上昇させないため、安全性が高い。
【0023】
アンドロゲンとは、男性ホルモンとも呼ばれるステロイド・ホルモンの総称で、その中には、代表的なテストステロンのほか、ジヒドロテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステロン、アンドロステンジオン、エピアンドロステロンなどがある。
【0024】
ここで蜂の子とは、蜂の幼虫及びさなぎを意味する。蜂の種類は特に制限されず、ニホンミツバチ、西洋ミツバチ等のミツバチ、アフリカ蜂化ミツバチ、スズメバチ(クロスズメバチを含む)、アシナガバチ、マルハナバチ等、公知の蜂を広く用いることができる。好ましくはミツバチであり、より好ましくは入手の容易性から西洋ミツバチである。なお、雄と雌との別は問わず、好ましくは雄である。
【0025】
幼虫及びさなぎは、卵から孵化したものであれば特に制限されない。中でも好ましくは孵化後16〜23日経過した蜂の幼虫及びさなぎ、より好ましくは孵化後18〜21日経過した蜂の幼虫及びさなぎが用いられる。
【0026】
蜂の子は、体内に栄養素を蓄積している。特に、ミツバチの雄は古くから漢方の素材として使用されており、必須アミノ酸を含む各種アミノ酸をバランスよく含むほか、タンパク質、脂質、糖類、ビタミンB類、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸等のビタミン類、及び亜鉛、セレン(セレニウム)等のミネラルを豊富に含んでいる。蜂の子の生理活性及び薬理作用としては、抗菌作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗原虫作用、耳鳴り解消作用等が知られている。
【0027】
本発明において蜂の子は、生の蜂の子及び生の蜂の子を加工処理した状態で使用される。蜂の子を加工処理したものとして、具体的には、蜂の子(生又は乾燥物)を粉砕したもの、蜂の子(生又は粉砕物)を乾燥したもの、蜂の子(生、乾燥物又は粉砕物)を加熱処理したもの、蜂の子を水、含水エタノール等により抽出したもの等が含まれる。好ましくは、蜂の子(生)を乾燥した後、粉砕することによって調製される蜂の子の乾燥粉末を挙げることができる。
【0028】
本発明でいう「蜂の子」という用語には、特に言及しない限り、生の蜂の子に加えて、当該蜂の子に乾燥、粉砕又は加熱の処理を施した加工物、蜂の子(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を水、含水エタノール等により抽出したもの、並びに蜂の子及びその加工物をタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)で処理したものが含まれる。
【0029】
乾燥方法としては、通風乾燥、天日乾燥などの自然乾燥、電気などで加熱して乾燥させる強制乾燥、凍結乾燥など、一般食品加工で採用される公知の方法を使用することができる。好ましくは、凍結乾燥である。なお、乾燥時間は特に制限されず、例えば、通風、天日乾燥などの自然乾燥の場合は、約3日程度、電気等で加熱して強制乾燥させる場合は、50℃程度で1〜3日程度を挙げることができる。通常、水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるように乾燥させることが好ましい。なお、通風、天日乾燥などの自然乾燥の場合のように水分含量を10質量%以下にすることが難しい場合は、その後、凍結乾燥機にかけて更に水分を下げる処理を行い得る。
【0030】
粉砕処理(粉末化処理)は、粉砕器(ミル)を用いて粉砕する方法、石臼を用いてすりつぶす方法等、公知の方法を使用して行い得る。
【0031】
蜂の子を加熱する方法は、特に制限されず、好ましくは70〜120℃で熱処理する方法を挙げることができる。簡便には沸騰した水中に蜂の子(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を投入して加熱処理することもでき、各種のビタミン、アミノ酸等の有効成分の溶出をできるだけ避けるためには、加熱処理として蜂の子を蒸気で蒸す方法が好適に使用される。
【0032】
抽出方法は、蜂の子(生、乾燥物及び粉砕物を含む)に水、含水エタノール等を添加し、攪拌した後、遠心分離により上清を得る方法、ろ紙によるろ過を行い、ろ液を得る方法等が用いられる。
【0033】
蜂の子及びその加工物はタンパク質分解酵素で処理されることにより蜂の子及びその加工物に含まれるタンパク質が低分子化され、当該タンパク質に起因するアレルギー反応が抑制されてなる酵素処理物(低アレルゲン化酵素処理物)が得られることが期待される。
【0034】
蜂の子及びその加工物を酵素処理するのに使用されるタンパク質分解酵素としては、ペプチダーゼを好適に挙げることができる。使用されるペプチダーゼは、エンドペプチダーゼ作用及びエキソペプチダーゼ作用の少なくとも一方を有していればよい。
【0035】
少なくともエンドペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素としては、動物由来(例えば、トリプシン、キモトリプシン等)、植物由来(例えば、パパイン等)、微生物(例えば、乳酸菌、酵母、カビ、枯草菌、放線菌等)由来のエンドペプチダーゼなどが挙げられる。
【0036】
少なくともエキソペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素としては、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、微生物(例えば、乳酸菌、アスペルギルス属菌、リゾープス属菌等)由来のエキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ活性も併せて有するパンクレアチン、ペプシン等が挙げられる。
【0037】
このような各種酵素の内、エキソペプチダーゼ活性及びエンドペプチダーゼ活性の両方を有する酵素の好ましい例としては、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)産生ペプチダーゼ(商品名:アクチナーゼAS)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus orizae)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼA、フレーバーザイム)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼP)等を挙げることができる。
【0038】
また、エキソプロテアーゼ作用を有する酵素の好ましい例としては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus orizae)産生ペプチダーゼ(商品名:ウマミザイムG、Promod 192P、Promod 194P、スミチームFLAP)、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)産生ペプチダーゼ(商品名:Sternzyme B15024)、アスペルギルス属産生ペプチダーゼ(商品名:コクラーゼP)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)産生ペプチダーゼ(商品名:ペプチダーゼR)等を挙げることができる。
【0039】
さらに、エンドプロテアーゼ作用を有する酵素の好ましい例としては、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)産生ペプチダーゼ(商品名:オリエンターゼ22BF、ヌクレイシン)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)産生ペプチダーゼ(商品名:アルカラーゼ)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)産生ペプチダーゼ(商品名:プロテアーゼS)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)産生ペプチダーゼ(商品名:ニュートラーゼ)、バチルス属産生ペプチダーゼ(商品名:プロタメックス)等を挙げることができる。
【0040】
蜂の子及びその加工物のアレルギー性を低減するための酵素処理は、例えば、特開2009-159997号公報の記載に従い行うことができる。
【0041】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、本発明の効果が妨げられない限り、追加の成分を含み得る。かかる追加の成分を含む場合、強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤中の蜂の子の割合としては、0.01〜99質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜50質量%を例示することができる。
【0042】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、その形態を特に問うものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状、液状、懸濁液状、乳液状などの製剤形態を有し得る。
【0043】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、食品組成物、医薬部外品及び医薬品(特に、経口医薬)の成分として、好適に使用することができる。
【0044】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、保健、健康維持、増進等を目的とする飲食品(例えば、健康食品、機能性食品、栄養組成物(nutritional composition)、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品)、医薬部外品及び医薬品(特に、経口医薬)の意味も包含するものである。また、本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、強壮強精作用、性機能改善作用、男性更年期症状改善作用、抗疲労作用及び活力向上作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0045】
上記の飲食品には、必要に応じて、賦形剤、光沢剤、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0046】
上記の飲食品の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実種のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0047】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択でき、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0048】
上記の飲食品に含まれる蜂の子の割合は、例えば、0.01〜99質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜50質量%の濃度を挙げることができる。
【0049】
上記の飲食品の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【0050】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤を、医薬部外品又は医薬品として調製する場合、蜂の子製剤と称することができる。医薬部外品又は医薬品には、上記蜂の子は単体で使用することもでき、ビタミン、生薬など日本薬局方に記載の他の医薬成分と混合して使用することもできる。
【0051】
本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤を、医薬部外品又は医薬品として調製する場合、蜂の子を、医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペーストなどの形態に調製して、経口用の製剤にすることが可能である。
【0052】
上記の医薬部外品又は医薬品の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができ、一日当たり蜂の子0.5 g以上、好ましくは0.7 g以上、より好ましくは1 g以上とすることが望ましい。
【0053】
上記の医薬部外品又は医薬品に含まれる蜂の子の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されず、例えば、0.01〜99質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは20〜50質量%の濃度を挙げることができる。
【0054】
以上説明した本発明の強壮強精剤、性機能改善剤、男性更年期症状改善剤及び抗疲労剤は、ヒトを含む哺乳動物(好ましくはヒト、特に男性)に対して適用されるものである。
【0055】
本発明の飲食品、医薬部外品及び医薬品は、強壮強精作用、性機能改善作用、男性更年期症状の改善作用、抗疲労作用及び活力向上作用を有する。また、本発明の飲食品、医薬部外品及び医薬品は、アンドロゲンを上昇させないため、安全性が高い。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0057】
[試験例]
<被験者>
アンケート及び検査(理学的検査、医師の問診、血液検査、アンケート等)を行い、(1) 35歳以上60歳以下の男性で、(2) 男性更年期問診表(以下AMS)において27点以上49点以下の者で、(3) 遊離テストステロンが8.5 pg/mL以上11.8 pg/mL未満の者で、(4) 既婚者もしくは異性のパートナーを持つ者11名を被験者とした。
【0058】
<試験方法>
被験者11名は、1カプセルあたり蜂の子180 mgを含む、ソフトカプセル形状の蜂の子含有食品6カプセルを12週間連日摂取した。被験食品1カプセルあたりの栄養成分を下表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
なお、被験者は試験開始日の1週間前から摂取終了まで、毎日の早朝勃起の有無を含む自覚症状、生活情報などを日誌に記録した。
【0061】
試験開始時及び摂取開始後12週目に、医師による診察、アンケート調査、理学的検査、血液検査及び尿検査を行い、総テストステロン(以下TT)、遊離テストステロン(以下FT)、加齢男性症状調査票(以下AMS)、Self-rating depression scale (以下SDS)、国際勃起機能スコア簡易版(以下IIEF5)及び疲労感VASを評価した。また、試験期間中の早朝勃起回数も評価項目とした。
【0062】
AMSスコアはLOH症候群の症状問診に広く用いられている自己記入式の質問紙で、心理的因子が5項目(25点)、身体的因子が7項目(35点)、性機能因子が5項目(25点)の合計17項目(85点)から構成されている。各項目とも、「ない」、「軽い」、「中程度」、「重い」、「非常に重い」の5段階で評価し、それぞれ1〜5点の点数をつける。スコアが高いほど症状が重いことを表す。
【0063】
SDSは抑うつ状態の程度を示す指標であり、抑うつ症状を問う20の質問項目からなる。スコアが高いほど症状が重いことを表す。
【0064】
IIEF5はIIEF International Index of Erectile Function (国際勃起機能スコア)を5項目に簡略化したものであり、EDのスクリーニング及び治療の効果判定に使われている国際的な指標である。スコアが低いほど症状が重いことを表す。
【0065】
疲労感はVAS法に従い、10 cmの直線の左端を「これまで経験したことのないような、疲れを全く感じない最良の感覚」、右端を「これまで経験したことのないような、何もできないほど疲れきった最悪の感覚」として、直線上に該当する箇所を×印で記録し、左端から記録した箇所までの距離を数値化したものであり、数値が低下した場合に改善を表す。
【0066】
<統計解析>
各データは群毎に平均値及び標準偏差を求め、AMSスコア、IIEF5、SDS、早朝勃起回数及び疲労感VASは、Wilcoxonの符号順位和検定を行った。
【0067】
TT、FT、理学的検査、血液学的検査及び血液生化学的検査は、対応のあるt検定を行った。
【0068】
いずれの統計解析法も両側検定とし、危険率は5%及び1%とした。
【0069】
<結果>
1 有効性評価項目
1)AMS
AMSスコアは、摂取開始時と比較して「合計」(
図1−a)「性的要因」(
図1−b)「身的要因」(
図1−c)で摂取終了時に有意な低下が見られた。
【0070】
2)IIEF5
試験食品摂取前後の比較においてIIEF5は、摂取終了時で有意な増加が見られた(
図2)。
【0071】
3)早朝勃起回数
試験食品摂取前後の比較において早朝勃起回数は、摂取終了時で有意な増加が見られた(
図3)。
【0072】
4)疲労感VAS
試験食品摂取前後の比較において疲労感は、摂取終了時で有意な低下が見られた(
図4)。
【0073】
5)SDS
試験食品摂取前後の比較においてうつ症状は、摂取終了時で有意な低下が見られた(
図5)。
【0074】
2 安全性評価項目
TT及びFT(
図6)、理学的検査、血液学的検査、血液生化学的検査及び尿検査において被験者ごとに確認したところ、臨床上問題となる変動は認められなかった。
【0075】
試験期間中、被験者に自覚症状は認められなかった。また、摂取期間に行った診察でも、有害事象に相当するものは認められなかった。
【0076】
<結論>
日常生活で活力に不満がある35歳以上60歳以下の男性11名に対し蜂の子含有食品のソフトカプセルを1日6粒12週間摂取させると、AMSで有意な低下、IIEF5及び早朝勃起回数で有意な増加、疲労に対する評価のVAS及びSDSアンケートにおいて有意な低下が見られた。一方、総及び遊離テストステロン値に変化はなかった。つまり、蜂の子にはテストステロン値を上昇させることなく、男性更年期症状の改善効果、抗疲労効果、及び抗ストレス効果が見られた。
【0077】
処方例
以下、本発明の処方例を示す。
【0078】
処方例1 ソフトカプセル剤
1080 mgの1/6量の蜂の子に、食用油脂、ミツロウ、及び大豆由来植物レシチンを加え、ゼラチン及びカラメル色素を含むソフトカプセルに充填し、ソフトカプセル製剤を得た。
【0079】
処方例2 ソフトカプセル剤
180 mgの蜂の子に、食用油脂、γ-アミノ酪酸、グリセリン、大豆由来植物レシチン、ミツロウ、ビタミンB2、及びビタミンB12を混合し、ゼラチン及びカラメル色素を含むソフトカプセルに充填し、ソフトカプセル製剤を得た。
【0080】
処方例3 ソフトカプセル剤
100 mgの蜂の子に、食用油脂、マカエキス末、トンカットアリエキス末、冬虫夏草菌糸体末、亜鉛含有酵母、ヒハツエキス末、ミツロウ、及び大豆由来植物レシチンを混合し、ゼラチン及びカカオ色素を含むソフトカプセルに充填し、ソフトカプセル製剤を得た。