【実施例】
【0031】
実施例1
1.混合物の調製
市販のコイの鱗を落とし、骨を抜き、内臓を取り、洗浄した後、18メッシュに粉砕して5kgの魚肉ミンチを得た。15Lの脱イオン水を魚肉ミンチに加え、混合物を得た。
【0032】
2.熱変性
混合物を80℃に加熱し、この温度を保ちながら40分間連続的に撹拌し、変性タンパク質溶液を得た。
【0033】
3.スラリーの調製
変性タンパク質溶液を5000回転/分の回転速度で30分間遠心分離し、遠心分離後、上清液を捨て、4.9kgの下層固体を得た。
【0034】
4.9kgの下層固体に15Lの脱イオン水を加え、得られた混合物を撹拌しながら均一に混合し、4000回転/分の回転速度で30分間遠心分離して、下層固体を得た。得られた下層固体に対して、上記工程を2回繰り返した。最終的に4.85kgの沈殿物が得られた。
【0035】
脱イオン水15Lを4.85kgの沈殿物に加え、粉砕し、沈殿物を25メッシュに叩解してスラリーを得た。
【0036】
4.酵素分解
スラリーを20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調整し、中性プロテアーゼ、パパインおよびアルカリプロテアーゼをスラリーに加えたが、ここで、中性プロテアーゼ、パパインおよびアルカリプロテアーゼの量は全て、魚肉1gあたり約50Uであった。酵素分解を約50℃の温度で約2時間行い、それから温度を110℃に上げ、酵素不活化を10秒間行って、酵素加水分解物を得た。
【0037】
5.遠心分離および膜濾過
酵素加水分解物を6000回転/分の回転速度で遠心分離し、後の使用のために遠心上清を回収した。
【0038】
遠心分離した上清を限外濾過するために、孔径約50nmの限外濾過膜を使用し、限外濾過の際の絶対圧を約0.3MPa、温度を約50℃に調節して、限外濾過液を得た。
【0039】
6.脱色、濃縮および滅菌
10:100の活性炭粉末と限外濾過物の質量比で、活性炭粉末を限外濾過液に添加した。それから、約80℃で約30分間、撹拌下で脱色を行い、脱色後、活性炭粉末を板枠式圧濾機によって除去して、脱色溶液を得た;
【0040】
蒸気圧を約0.1MPaに調節し、蒸発温度を約60℃に調節して、脱色した溶液を蒸発させて元の体積の1/2に濃縮した。濃縮液に対して滅菌および噴霧乾燥を行い、それによりアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを調製した。
【0041】
7.特性検出と味の評価
未処理の魚肉の混合物を対照として用いて、Bio-check社のFish-Check ELISA Kitにより、上で調製したアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチド中の種々のアレルゲンを検出した。結果を表1に示した。
【0042】
上記のようにして調製したアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドの各成分の分子量分布を、海産魚オリゴペプチド粉末についての国家基準(GB/T 22729−2008)に記載の方法を用いて検出した。結果を表2に示した。
【0043】
上記のようにして調製したアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚オリゴペプチドを水に溶解させて、アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを10重量%含有する溶液を得た;アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチド溶液の苦味と魚臭さを評価するために、20名(半数は男性、半数は女性)の評価チームが設置された。
【0044】
苦味は以下のようにして評価した:アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチド溶液1mLを取り、苦味がちょうど識別可能となるまで勾配希釈を行い、希釈倍数を苦味値として取ることによって20人の平均苦味値を計算する。結果を表3に示した。
【0045】
魚臭さは以下によって評価した:20人の平均的な魚臭さ値を、0−魚臭さがない;1−微々たる魚臭さ;2−わずかな魚臭さ;3−魚臭さがある;4−中程度の魚臭さ;5−比較的強い魚臭さ;6−強い魚臭さ;7−非常に強い魚臭さ、として計算する。結果を表3に示した。
【0046】
実施例2
1.混合物の調製
市販のサケの魚皮廃棄物を回収し、洗浄した後、20メッシュに粉砕して5kgの魚肉ミンチを得た。10Lの脱イオン水を魚肉ミンチに加え、混合物を得た。
【0047】
2.熱変性
混合物を75℃に加熱し、この温度を保ちながら60分間連続的に撹拌し、変性タンパク質溶液を得た。
【0048】
3.スラリーの調製
変性タンパク質溶液を3500回転/分の回転速度で45分間遠心分離し、遠心分離後、上清液を捨て、4.7kgの下層固体を得た。
【0049】
10Lの脱イオン水を4.7kgの下層固体に加えた。得られた混合物を撹拌しながら均一に混合し、4000回転/分の回転速度で20分間遠心分離して、下層固体を得た。得られた下層固体に対して、上記工程を2回繰り返した。最終的に4.5kgの沈殿物が得られた。
【0050】
脱イオン水15Lを4.5kgの沈殿物に加え、粉砕し、沈殿物を30メッシュに叩解してスラリーを得た。
【0051】
4.酵素分解
スラリーを15重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.5に調整し、中性プロテアーゼ、パパインおよびアルカリプロテアーゼをスラリーに加えたが、ここで、中性プロテアーゼ、パパインおよびアルカリプロテアーゼの量は全て、魚廃棄物1gあたり約70Uであった。酵素分解を約30℃の温度で約5時間行い、それから温度を110℃に上げ、酵素不活化を10秒間行って、酵素加水分解物を得た。
【0052】
5.遠心分離および膜濾過
酵素加水分解物を8000回転/分の回転速度で遠心分離し、後の使用のために遠心上清を回収した。
【0053】
遠心分離した上清を限外濾過するために、孔径約20nmの限外濾過膜を使用し、限外濾過の際の絶対圧を約0.4MPa、温度を約80℃に調節して、限外濾過液を得た。
【0054】
6.脱色、濃縮および滅菌
5:100の活性炭粉末と限外濾過物の質量比で、活性炭粉末を限外濾過液に添加した。それから、約80℃で約30分間、撹拌下で脱色を行い、脱色後、活性炭粉末を板枠式圧濾機によって除去して、脱色溶液を得た;
【0055】
蒸気圧を約0.1MPaに調節し、蒸発温度を約80℃に調節して、脱色した溶液を蒸発させて元の体積の1/3に濃縮した。濃縮液に対して滅菌および噴霧乾燥を行い、それによりアレルゲン性が低く、魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを調製した。アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドの特性検出結果、分子量分布および味評価結果をそれぞれ表1から表3に示した。
【0056】
実施例3
1.混合物の調製
市販のコイの鱗を落とし、骨を抜いて、魚肉と内蔵を得た。洗浄後、魚肉および内臓を20メッシュに粉砕して、5kgの魚肉および内臓を得た。20Lの脱イオン水を魚肉および内蔵に加えて、混合物を得た。
【0057】
2.熱変性
混合物を90℃に加熱し、この温度を保ちながら20分間連続的に撹拌し、変性タンパク質溶液を得た。
【0058】
3.スラリーの調製
変性タンパク質溶液を4500回転/分の回転速度で35分間遠心分離し、遠心分離後、上清液を捨て、4.6kgの下層固体を得た。
【0059】
20Lの脱イオン水を4.6kgの下層固体に加えた。得られた混合物を撹拌しながら均一に混合し、4000回転/分の回転速度で25分間遠心分離して、下層固体を得た。得られた下層固体に対して、上記工程を2回繰り返した。最終的に4.4kgの沈殿物が得られた。
【0060】
脱イオン水20Lを4.4kgの沈殿物に加え、粉砕し、沈殿物を30メッシュに叩解してスラリーを得た。
【0061】
4.酵素分解
スラリーを10重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.5に調整し、中性プロテアーゼ、パパインおよびアルカリプロテアーゼをスラリーに加えたが、ここで、中性プロテアーゼ、パパインおよびアルカリプロテアーゼの量は全て、魚肉および魚廃棄物1gあたり約20Uであった。酵素分解を約50℃の温度で約3.5時間行い、それから温度を110℃に上げ、酵素不活化を10秒間行って、酵素加水分解物を得た。
【0062】
5.遠心分離および膜濾過
酵素加水分解物を7500回転/分の回転速度で遠心分離し、後の使用のために遠心上清を回収した。
【0063】
遠心分離した上清を限外濾過するために、孔径約50nmの限外濾過膜を使用し、限外濾過の際に絶対圧を約0.2MPa、温度を約30℃に調節して、限外濾過液を得た。
【0064】
6.脱色、濃縮および滅菌
8:100の活性炭粉末と限外濾過物の質量比で、活性炭粉末を限外濾過液に添加した。それから、約80℃で約30分間、撹拌下で脱色を行い、脱色後、活性炭粉末を板枠式圧濾機によって除去して、脱色溶液を得た;
【0065】
蒸気圧を約0.1MPaに調節し、蒸発温度を約60℃に調節して、脱色した溶液を蒸発させて元の体積の1/3に濃縮した。濃縮液に対して滅菌および噴霧乾燥を行い、それによりアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを調製した。アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドの特性検出結果、分子量分布および味評価結果をそれぞれ表1から表3に示した。
【0066】
比較例1
実施例1で調製したスラリーのpHを約7に調整した。中性プロテアーゼを魚肉1gあたり約150Uの量でスラリーに加えて、約40℃の温度で約2時間、酵素分解を行った。酵素加水分解物を実施例1の方法(膜濾過と脱色は無し)に従って遠心分離し、濃縮して滅菌し、アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを得た。特性検出の結果を表1および表3に示した。
【0067】
比較例2
実施例1で調製したスラリーのpHを約8に調整した。トリプシンを魚肉1gあたり約200Uの量でスラリーに加えて、約40℃の温度で約2時間、酵素分解を行った。酵素加水分解物を実施例1の方法(膜濾過と脱色は無し)に従って遠心分離し、濃縮して滅菌し、アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを得た。特性検出の結果を表1および表3に示した。
【0068】
比較例3
実施例1で調製したスラリーのpHを約7に調整した。55℃において、魚材料の重量に基づき0.2%の中性プロテアーゼをスラリーに加えて、0.5時間、酵素分解を行った;温度を45℃に下げ、魚材料の重量に基づき0.1%のブロメラインを加えて、0.5時間、酵素分解を行った。酵素加水分解物を実施例1の方法に従って遠心分離し、濃縮、脱色、滅菌し、アレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドを得た。特性検出の結果を表1および表3に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果から、以下のように結論されうる:
【0071】
1.本発明により調製されたアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドでは、主要なアレルゲン性タンパク質であるパルブアルブミンの質量含有率が99%以上低減されることができ、これは顕著な効果である。これは、本発明の方法が、魚タンパク質のアレルゲン性を完全に排除することができ、良好なアレルゲン除去効果を有することを示唆した。
【0072】
2.魚タンパク質を処理するための中性プロテアーゼおよびブロメラインの使用は、魚タンパク質のアレルゲン性をある程度まで除去することができたが、満足できるアレルゲン性除去効果は得られなかった。魚タンパク質を処理するためのトリプシンの使用には、明らかなアレルゲン性除去効果はなかった;逆に、アレルゲン性パルブアルブミンがわずかに増加した含量を有することが検出された。
【0073】
これは以下を示した:魚タンパク質を処理するために使用する場合、任意のプロテアーゼまたはその組み合わせでは、魚タンパク質のアレルゲン性を低減または排除できず、特定の組成を有するプロテアーゼを使用し、それと同時に特定のプロセス(例えば、酵素分解のpH環境、温度など)を使用することによってのみ、魚タンパク質のアレルゲン性を完全に排除することができた。
【0074】
【表2】
【0075】
表2の結果から、以下のように結論されうる:
【0076】
本発明によって調製されるアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドにおいては、5000Da未満の分子量を有するペプチドの質量含有量は>85%であり、1000Da未満の分子量を有するペプチドの質量含有率は>60%である。したがって、本発明のアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドは、人体によく吸収されることができ、このように高いタンパク質含量を有する。
【0077】
【表3】
【0078】
表3の結果から、以下のように結論されうる:
【0079】
本発明により調製されるアレルゲン性が低く魚臭さのわずかな魚タンパク質オリゴペプチドは、苦味と魚臭さが少なく、味が優れており、本発明の方法が、酵素分解産物における苦味物質の生成を効果的に抑制でき、魚タンパク質中の魚臭さを有する物質を有意に除去できることを示した;魚タンパク質を処理するためにプロテアーゼを使用するだけでは、魚タンパク質からの苦味成分の放出を効果的に防ぎ、魚臭さを有する物質を除去することができず、特定の組成を有するプロテアーゼと特定のプロセス(例えば、予めの変成や膜濾過)の組み合わせの使用のみが、魚臭さと苦味を完全に除去し、魚製品の味を保証することができる。
【0080】
最後に、上記の実施形態は、本発明の技術的解決法を限定するものではなく、単に説明することを意図したものであることが表明される;そして、本発明は、上記の実施形態に関連して説明されているが、当業者は、上記の実施形態において記載された技術的解決法をなお改変してもよいし、または、技術的特徴の一部もしくは全てを等価なものに置換してもよいことを理解すべきである;そして、これらの改変または置換は、本発明の各実施例における技術的解決法の範囲から、対応する技術的解決法の本質を逸脱させるものではない。