特許第6483257号(P6483257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483257
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】流体ポンピング及び温度調節
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/00 20060101AFI20190304BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20190304BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G01N15/00 B
   G01N37/00 101
   B81B7/02
【請求項の数】15
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-522492(P2017-522492)
(86)(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公表番号】特表2018-500541(P2018-500541A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2015038313
(87)【国際公開番号】WO2016122706
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】473/CHE/2015
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョシュア,エム
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マシュー,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】サイト,エム・エイ,シャミード
(72)【発明者】
【氏名】ジリ,マニシュ
【審査官】 磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526108(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/106643(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/144548(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0099722(US,A1)
【文献】 特開2004−065110(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/178827(WO,A1)
【文献】 特開2005−088592(JP,A)
【文献】 特開2003−090971(JP,A)
【文献】 TSAI, J.H. et al.,A Thermal Buble Auctuated Micro Nozzle-Diffuser Pump,Journal of Microelectromechanical systemls,2002年12月,Vol. 11, No. 6,pp. 665-671
【文献】 TORNIANEN, E.D. et al.,Bubble-driven inertial micropump,PHYSICS OF FLUIDS,2012年,Vol. 24,pp. 1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
G01N 37/00
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を受けるためのマイクロ流体チャネルと、
前記マイクロ流体チャネル内の検体センサーと、
前記マイクロ流体チャネル内の微小な抵抗と、
前記微小な抵抗を作動させて流体ポンピング状態にし、及び、前記微小な抵抗を選択的に作動させて温度調節状態にするためのコントローラ
を備える装置であって、
前記流体ポンピング状態では、前記検体センサーを横切るように流体を送り出すために、前記微小な抵抗の近傍の流体は、該流体の核生成エネルギーを上回る温度に加熱され、
前記温度調節状態では、前記微小な抵抗を選択的に作動させて、前記微小な抵抗の近傍の流体の温度が、該流体の前記核生成エネルギー未満の所定の温度範囲内に常に維持されるようにし
前記コントローラは、少なくとも前記検体センサーが前記流体を検出しているときには、前記流体の温度を調節するために、前記微小な抵抗を選択的に作動させて前記温度調節状態にすることができることからなる、装置。
【請求項2】
前記流体の温度を表す温度信号を出力するための温度センサーをさらに備え、
前記コントローラは、前記温度信号に基づいて、前記微小な抵抗を選択的に作動させて前記温度調節状態にすることができることからなる、請求項1の装置。
【請求項3】
マイクロ流体診断チップを含むカセットと、
前記コントローラを含む携帯型電子装置
を備え、
前記マイクロ流体診断チップは、前記マイクロ流体チャネル、前記温度センサー、及び前記微小な抵抗を備え、
前記カセットは、前記携帯型電子装置に取り外し可能に接続可能であることからなる、請求項2の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記温度調節状態のときに異なる熱量を加えるために、前記微小な抵抗を選択的に作動させることができることからなる、請求項1〜3のいずれかの装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記微小な抵抗を選択的に作動させて、前記微小な抵抗の特性を調節することによって、前記微小な抵抗が前記温度調節状態にあるときに、前記微小な抵抗によって加えられる熱量を制御することができ、
前記特性は、オン/オフ状態、非ゼロのパルス周波数、電圧、及びパルス幅からなる特性のグループから選択される、請求項4の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記流体の温度を調節するために、予め決められたスケジュールにしたがって、前記微小な抵抗を選択的に作動させて前記温度調節状態にすることができることからなる、請求項1の装置。
【請求項7】
イクロ流体チャネル内の流体が検体センサーを横切るように該流体を送り出すために、前記マイクロ流体チャネル内の微小な抵抗を作動させて、該微小な抵抗の近傍の流体を、該流体の核生成エネルギーを上回る温度に加熱するステップと、
なくとも前記検体センサーが前記流体を検出しているときに、前記微小な抵抗の近傍の流体の温度が、該流体の前記核生成エネルギー未満の所定の温度範囲内に常に維持されるように、前記微小な抵抗を選択的に作動させるステップ
を含む方法。
【請求項8】
前記流体の温度を検出するステップをさらに含み、
前記微小な抵抗は、前記流体の前記検出された温度に基づいて選択的に作動させられることからなる、請求項7の方法。
【請求項9】
前記検出された温度に基づいて前記微小な抵抗に供給される電力の特性を調節するステップをさらに含み、
前記特性は、オン/オフ状態、非ゼロのパルス周波数、電圧、及びパルス幅からなる特性のグループから選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
マイクロ流体診断チップに取り外し可能に接続された携帯型電子装置を用いて、前記検出された温度を監視するステップをさらに含み、
前記携帯型電子装置は、前記微小な抵抗に供給される前記電力の特性を調節することからなる、請求項9の方法。
【請求項11】
前記マイクロ流体チャネル内の前記流体が、前記微小な抵抗を用いて前記流体を送り出すことによって連続的に循環させられる、請求項8〜10のいずれかの方法。
【請求項12】
前記微小な抵抗は、前記流体の温度を調節するために、予め決められたスケジュールにしたがって選択的に作動させられる、請求項8の方法。
【請求項13】
命令を含んでいる非一時的なコンピューター可読媒体を備える装置であって、
前記命令は、プロセッサに、
マイクロ流体チャネル内の流体の温度を示す信号を受け取り、
前記マイクロ流体チャネル内の前記流体の温度に基づいて第1の制御信号を出力し、及び、
前記マイクロ流体チャネル内の前記流体の温度に基づいて第2の制御信号を出力する
ように命令し、
前記第1の制御信号は、前記マイクロ流体チャネル内の流体を送り出すために、前記マイクロ流体チャネル内の微小な抵抗を作動させて、前記微小な抵抗の近傍の流体を、該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで加熱させ、
前記第2の制御信号は、前記微小な抵抗を選択的に作動させて、前記微小な抵抗の近傍の流体の温度を、前記流体の前記核生成エネルギー未満の所定の温度範囲内に常に維持させることからなる、装置。
【請求項14】
前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号は、前記微小な抵抗に供給される電力の特性を調節し、
前記特性は、オン/オフ状態、非ゼロのパルス周波数、電圧、及びパルス幅からなる特性のグループから選択される、請求項13の装置。
【請求項15】
前記命令はさらに、前記マイクロ流体チャネル内の前記流体が連続的に循環するようにするために、前記プロセッサに、前記第1の制御信号を出力するように命令することからなる、請求項13または14の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】(補充可能性あり)
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】例示的な流体試験システムの略図である。
図2】試験される流体を送り込んで、該流体の温度を調節するための例示的な方法のフローチャートである。
図3】別の例示的な流体試験システムの略図である。
図4】試験される流体を送り込んで、該流体の温度を調節するための別の例示的な方法のフローチャートである。
図5】別の例示的な流体試験システムの略図である。
図6】例示的なカセットの透視図(または斜視図)である。
図7A】外形に変更が加えられた図6のカセットの断面図である。
図7B】一部が省かれているかまたは透明にされている図7Aのカセットの透視図(または斜視図)である。
図7C】一部が省かれているかまたは透明にされている図7Aのカセットの上面図である。
図8A】例示的なマイクロ流体カセット及び漏斗を支持する例示的なカセットボードの上面図である。
図8B図8Aのカセットボードの底面図である。
図9図8Aのカセットボードの一部の部分断面図である。
図10図6及び図9Aのカセットの別の例示的なマイクロ流体チップの上面図である。
図11図10のマイクロ流体チップの例示的な検出領域の拡大部分上面図である。
図12】例示的なマイクロ流体チップの部分上面図であり、例示的なマイクロ流体チャネル内の例示的な電気センサーを示している。
図13】例示的な細胞に対するマイクロ流体チャネルの例示的な狭窄部の体積を示す図である。
図14】例示的な電気センサーを備える例示的なマイクロ流体チャネルの図であり、電界の生成、及び該電界を通過しようとしている細胞の相対的な大きさを示している。
図15図8及び図9Aのカセット内で使用可能な別の例示的なマイクロ流体チップの部分上面図である。
図16図8及び図9Aのカセット内で使用可能な別の例示的なマイクロ流体チップの部分上面図であり、例示的なマイクロ流体チャネルの一部を示している。
図17】該マイクロ流体チャネルの一部内の例示的なポンプ及びセンサーを示す、図16のマイクロ流体チップの部分上面図である。
図18図8及び図9Aのカセット内で使用可能な別の例示的なマイクロ流体チップの部分上面図である。
図19】例示的なインピーダンス検出回路の略図である。
図20図5の流体試験システムによって実行される例示的なマルチスレッディング法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
図1は、流体サンプルを分析するための例示的な流体試験(または検査)システム20を概略的に示している。後述するように、流体試験システム20は、抵抗を、(1)流体サンプルの温度を制御または調節するために使用し、及び、(2)該流体サンプルを適切な位置に配置しまたは送り込む(ないし送り出す)ために使用する、という2つのやり方で使用する。流体試験システム20は、マイクロ(微小)流体体積部24、細胞(またはセル。以下同じ)/粒子センサー38、抵抗(器)60、及びコントローラ70を備えている。
【0005】
マイクロ流体体積部24は、試験(ないし検査。以下同じ)される流体サンプルを受け取る。マイクロ流体体積部24は、マイクロ流体容器(マイクロ流体リザーバ)34及びマイクロ流体チャネル36を備えている。マイクロ流体容器34は、血液などの液体上の流体(流動体)がチャネル36内に引き込まれるまで、該液体を受け入れて収容するキャビティ(空洞)またはチャンバー(室)または体積部から構成される。1実施例では、容器34は、チップをサポートするカセットの一部として設けられたより大きな容器から流体を受け取る。
【0006】
チャネル36は、試験される(すなわち試験対象の)流体サンプルの流体を導いて案内するための流体チャネルすなわち流体通路を備えている。1実施例では、流体サンプルの一部が細胞/粒子センサー38を横断する(横切る)ように該流体サンプルの該一部を導くために、チャネル36は、マイクロ流体チップの基板内に形成されて、容器34から延びている。1実施例では、チャネル36は、流体を循環させるために、マイクロ流体チップの容器34に流体を戻すように該流体を導く。別の実施例では、マイクロ流体チャネル36は、排出用容器または排出口に流体を導く。さらに別の実施例では、チャネル36は、流体の他の目的地まで延びている。
【0007】
細胞/粒子センサー38は、センサー38に対向してまたはセンサー38の近傍に配置された細胞または粒子に応答して信号を出力するためのセンサーを備えている。1実施例では、細胞/粒子センサー38は、任意の瞬間(タイミング)にセンサー38を(横切って)通り過ぎる(センサー38に対向する)細胞または粒子の数もしくは量を表す信号を出力する。別の実施例では、細胞/粒子センサー38は、細胞や粒子等のサイズなどの個々の細胞や粒子の特性を表す信号を出力する。
【0008】
図示の例では、細胞/粒子センサー38は、チャネル36内の基板32上に形成された微細加工デバイスを備えている。1実施例では、センサー38は、チャネル36を通る流体及び/もしくは該流体の細胞/粒子の性質もしくはパラメータもしくは特性を表す電気信号を出力するように、または、該電気信号を変化させるように設計されたマイクロデバイスを備える。1実施例では、センサー38は、チャネル36を流れて、チャネル36を横切っているかまたはチャネル36内の電界のインピーダンスに影響を与えるサイズが異なる粒子または細胞によって引き起こされる電気インピーダンスの変化に基づいて信号を出力する電気センサーを備える。1実施例では、センサー38は、チャネル36の表面内に形成されているかまたは該表面内に一体化されている帯電したハイサイド(高位側)電極及びローサイド(低位側)電極を備える。1実施例では、該ローサイド電極は電気的に接地されている。別の実施例では、該ローサイド電極はフローティング電極から構成される。
【0009】
抵抗(器)60は、チャネル36内に形成されているかまたは該チャネル36内に配置されている、抵抗に抗して流れる電流に応答して発熱しまたは熱を生成する微小なデバイス(マイクロデバイス)である。抵抗60は、流体の核生成エネルギーを上回る温度(たとえば核生成を生じる温度を上回る温度)まで近傍の流体を加熱するために、十分な熱量を放出することができる電気抵抗性材料から形成される。近傍にある流体の核生成エネルギーを超えるように該流体を加熱することによって、該流体が気化して、流体サンプルの移動している部分を送り出すのを支援する蒸気泡が生成されるが、これについては後述する。抵抗60はさらに、抵抗60の近傍にある流体を該流体の核生成エネルギーよりも低い温度に加熱することによって、該流体が気化することなくより高い温度まで加熱されるようにするために、より少ない量の熱を放出することができる。
【0010】
コントローラ70は、抵抗60の動作を制御する処理ユニット(処理装置)を備えている。本出願では、「処理ユニット」という用語は、メモリ(記憶装置)に格納されている一連の命令を実行する現在開発されているかまたは将来開発される処理ユニットを意味するものとする。該一連の命令を実行すると、処理ユニットは、制御信号を生成するなどのアクションを実行する。それらの命令を、処理ユニットによって実行するために、プログラム論理(プログラムロジック)もしくは符号化された論理(ロジック)を含む読み出し専用メモリ(ROM)または大容量記憶装置または他の何らかの永続的記憶装置もしくは非一時的なコンピューター可読媒体からランダムアクセスメモリ(RAM)にロードすることができる。他の実施例では、ハードワイヤード回路を機械可読命令の代わりにまたは該命令と組み合わせて用いて、記載されている機能を実施することができる。たとえば、コントローラ70を、特定用途向け集積回路(ASIC)の一部として具現化することができる。特に明示していない限り、コントローラは、ハードウェア回路と機械可読命令の任意の特定の組み合わせにも、処理ユニットによって実行される命令の任意の特定のソースにも限定されない。
【0011】
コントローラ70は、流体のポンピング(流体の送り込みないし送り出し)と流体の温度調節の両方を達成するために抵抗60の二重目的の機能(作動)を容易にする。コントローラ70は、十分な量の電流が抵抗60を通るようにする制御信号を出力することによって抵抗を作動させて(該抵抗を)流体ポンピング状態にし、これによって、抵抗60が、チャネル36内の(抵抗60の近傍の)流体の核生成エネルギーを上回る温度(たとえば核生成を生じる温度を上回る温度)まで該流体を加熱するようにする。この結果、該近傍の流体は気化して、該流体の体積よりも大きい体積を有する蒸気泡が生成される(該蒸気泡は該流体から形成されたものである)。このより大きな体積は、チャネル36内の気化しなかった残存している流体を押して、センサー38を横切って該流体を移動させるように作用する。蒸気泡が崩壊すると、流体は、容器34からチャネル36中へと引き込まれて、崩壊した蒸気泡の(崩壊する)前の体積を占有する。図1の破線によって示されているように、チャネル36の幾何学的形状ないし配置、及びセンサー38と抵抗60の相対的な位置に依存して、センサー38を横切って流体を押すか引き込むために、抵抗60を、センサー38の一方(または両方)の側に、または、容器34とセンサー38の間、または、センサー38と容器34もしくは排出用容器への戻り通路などの下流側の位置との間に配置することができる。
【0012】
コントローラ70は、間欠的にまたは定期的に抵抗60を作動させて該抵抗60をポンピング状態にする。1実施例では、コントローラ70は、チャネル36内の流体が連続的に移動するかまたは連続的に循環するように、定期的に抵抗60を作動させて該抵抗60をポンピング状態にする。
【0013】
抵抗60がポンピング状態に作動されていない、すなわち、流体の核生成エネルギーを上回る温度まで作動されていない期間中は、コントローラ70は、同じ抵抗60を使用して、流体が、センサー38の近傍またはセンサー38に対向する位置に延びておりかつセンサー38によって検出されている期間中は少なくとも、該流体の温度を調節する。抵抗60がポンピング状態にはない期間中は、コントローラ70は、抵抗60を選択的に作動させて該抵抗60を温度調節状態にする。該温度調節状態では、(抵抗60の)近傍の流体は気化することなく加熱される。コントローラ70は、十分な量の電流が抵抗60を通るようにする制御信号を出力することによって抵抗60を作動させて該抵抗60を流体加熱状態または温度調節状態にし、これによって、抵抗60が、チャネル36内の(抵抗60の)近傍の流体を気化させることなく、該流体の核生成エネルギー未満の温度まで該流体を加熱するようにする。たとえば、1実施例では、コントローラは、該近傍の流体の温度が該流体の核生成エネルギー未満の第1の温度まで上昇するように抵抗を作動させて該抵抗を動作状態にし、その後、該近傍の流体の温度が該核生成エネルギー未満の一定の温度に維持されるかまたは該エネルギー未満の所定の温度範囲内に常に維持されるように該動作状態を維持もしくは調節する。これとは対照的に、抵抗60がポンピング状態に作動されているときには、抵抗60は、抵抗60の近傍の流体の温度が、一定の温度に維持されるわけでも、所定の温度範囲内に常に維持される(温度が該所定の温度範囲内で上昇及び下降する)わけでもないが、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで急速かつ連続的に上昇または増加させるようにする動作状態にある。
【0014】
1実施例では、コントローラ70は、抵抗60が、温度調節状態(該近傍の流体の温度は、該流体の核生成エネルギーを上回る温度には加熱されない)にあるときに、2値的に動作するように、抵抗60を制御する。抵抗60が、温度調節状態において2値的に動作する実施例では、抵抗60は、「オン」か「オフ」のいずれかである。抵抗60が「オン」のときには、抵抗60が所定の熱量を所定の(単位時間当たりの)熱流量ないし速さで放出するように、所定量の電流が抵抗60を流れる。抵抗60が「オフ」のときは、抵抗60が追加の熱を生成もしくは放出しないように、電流は抵抗60を流れない。このような2値の温度調節動作モードでは、コントローラ70は、抵抗60を「オン」状態と「オフ」状態間で選択的に切り替えることによって、チャネル36内の流体に加えられる熱量を制御する。
【0015】
別の実施例では、コントローラ70は、抵抗60が温度調節状態にあるときに、抵抗60を、複数の異なる「オン」動作状態のうちの1つとなるように制御し、または該1つの動作状態に設定する。この結果、コントローラ70は、抵抗60によって熱が生成されて放出される速さを選択的に変える。この場合、熱放出速度は、複数の異なる使用可能な非ゼロの熱放出速度の中から選択される。たとえば、1実施例では、コントローラ70は、抵抗60の特性を調整することによって、抵抗60によって熱(量)が変更される速さを選択的に変更ないし制御する。調整することができる抵抗60の(オン/オフ状態以外の)特性の例には、非ゼロのパルス周波数、電圧、及びパルス幅(ただしこれらには限定されない)が含まれる。1実施例では、コントローラ70は、複数の異なる特性を選択的に調整して、抵抗60によって熱が放出される速さを制御ないし調節する。
【0016】
1実施例では、コントローラ70は、所定のすなわち予め決められたスケジュールにしたがって、抵抗60を選択的に作動させて温度調節状態にし、これによって、流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る一定の温度に維持し、または、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る所定の温度範囲内に常に維持する。1実施例では、該所定のスケジュールは、予め決められた定期的なスケジュールまたはタイム(時間)スケジュールである。たとえば、流体試験システム20の特定の温度特性に関する履歴データの収集を通じて、流体試験システム20内の特定の流体サンプルの温度は、試験される流体のタイプ、抵抗60が作動されてポンピング状態になる速さ/頻度、個々の蒸気泡が生成されるポンピングサイクル中に温度調節器(抵抗)60によって放出される熱量、流体試験システム20の種々の構成要素の熱的性質及び熱伝導率、抵抗60とセンサー38との間隔(距離)、流体サンプルが容器34内または流体試験システム20に最初に置かれたときの該流体サンプルの初期温度などの要因に依存して、予測可能な態様もしくはパターンで変化することがわかった。システム20内で流体サンプルの温度が変化しまたは該流体サンプルが熱(温度)損失を被る既に発見されている予測可能な態様もしくはパターンに基づいて、コントローラ70は、発見された温度変化もしくは熱(温度)損失のパターンに適合させ、並びに、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る一定の温度に維持し、もしくは、該流体の温度を該核生成エネルギーを下回る所定の温度範囲内に常に維持するために、上述したように、抵抗60がいつオンまたはオフであるかを選択的に制御し、及び/又は、抵抗60が「オン」状態であるときの抵抗60の特性を選択的に調整する制御信号を出力する。かかる実施例では、コントローラ70が抵抗60を作動させて温度調節状態にし、及び、コントローラ70が、抵抗60の熱放出速度を調整するために抵抗の動作特性を選択的に調整する所定の定期的なタイミングスケジュールが、コントローラ70によってアクセスされる非一時的なコンピューター可読媒体に格納され、または、特定用途向け集積回路などの集積回路の一部としてプログラムされる。
【0017】
1実施例では、コントローラ70が抵抗60を作動させて温度調節状態にし、及び、コントローラ70が温度調節状態において抵抗60の動作状態を調整する所定のタイミングスケジュールは、試験システム20への流体サンプルの導入に基づき、または該導入によって起動される。別の実施例では、該所定のタイミングスケジュールは、ある抵抗60による流体サンプルのポンピングに関連するイベントに基づき、または該イベントによって起動される。さらに別の実施例では、該所定のタイミングスケジュールは、センサー38からの信号もしくはデータの出力に基づき、または該出力によって起動され、または、センサー38が該流体を検出してデータを出力するスケジュールもしくは頻度に基づき、または該スケジュールもしくは該頻度によって起動される。
【0018】
さらに別の実施例では、コントローラ70は、抵抗60を選択的に作動させて温度調節状態にし、及び、温度調節状態にある間に、試験対象の流体の検出された温度に基づいて、抵抗60を選択的に作動させて異なる動作状態にする。1実施例では、コントローラ70は、試験対象の流体の温度を表す受信した信号に基づいて、抵抗60をポンピング状態と温度調節状態との間で切り替える。1実施例では、コントローラ70は、該信号に基づいて、試験対象の流体の温度を決定ないし判定する。1実施例では、コントローラ70は、閉ループ方式で動作し、該閉ループにおいて、コントローラ70は、1つのセンサーまたは2以上のセンサーから連続的にもしくは定期的に受信される流体温度表示信号(流体の温度を表す信号)に基づいて、温度調節状態にある抵抗60の動作特性を連続的にもしくは定期的に調整する。
【0019】
図2は、コントローラ70によって実行することができる例示的な方法100のフローチャートである。ブロック104に示されているように、コントローラ70は、非一時的なコンピューター可読媒体に(プログラム論理(プログラムロジック)や符号化された論理(ロジック)や機械可読命令もしくは回路の形態で)格納されている命令にしたがって、診断チップのマイクロ流体チャネル36内で試験される流体サンプルを細胞/粒子センサー38を横切るように送り込む(ないし送り出す)ための制御信号を抵抗60に対して出力する。具体的には、該制御信号は、抵抗60に、マイクロ流体チャネル36内の該近傍の流体を該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで加熱するのに十分な熱量及び速さ(もしくは単位時間当たりの熱流量)で熱を放出させる。蒸気泡の発生によって、チャネル36内の流体を押して送り込む。その後の蒸気泡の崩壊によって、流体はチャネル36内に引き込まれて該チャネル内を移動する。
【0020】
ブロック106に示されているように、コントローラ70は、非一時的なコンピューター可読媒体に(プログラム論理(プログラムロジック)や符号化された論理(ロジック)や機械可読命令もしくは回路の形態で)格納されている命令にしたがって、少なくとも細胞/粒子センサー38が流体を検出しているときに(すなわち、流体を検出しているときには少なくとも)、該流体の温度を調節するために、抵抗60に対して制御信号を出力する。具体的には、コントローラ70は、該近傍の流体を、該流体の核生成エネルギーを下回る一定の温度まで加熱するように、または、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る所定の温度範囲内に常に維持するように、抵抗60を作動させるための制御信号を出力する。上述したように、コントローラ70は、(抵抗60が)温度調節状態にあるときに抵抗60を2値的に制御することができ、または、抵抗60を動的に制御して、抵抗60の動作状態を複数の異なる使用可能な動作「オン」状態の中から選択することができる。上述したように、コントローラ70は、予め決められた加熱スケジュールに基づいて、または、リアルタイムで検出された温度のフィードバックに基づいて、そのような制御を行うことができる。
【0021】
図3は、流体試験システム20の例示的な実施例である流体試験システム220を概略的に示している。流体試験システム220は、流体試験システム220が温度センサー140をさらに備えている点、及び、コントローラ70が、温度センサー140からの信号に基づいて流体の温度を調節する点を除いて、流体試験システム20に類似している。流体試験システム20の構成要素ないし要素に対応する流体試験システム220の残りの構成要素ないし要素には同じ番号が付されている。
【0022】
温度センサー140は、マイクロ流体チャネル36内の流体サンプルの一部の温度を示す信号を直接もしくは間接に出力するための温度検出デバイスを備えている。図示の例では、温度センサー140は、チャネル36内のサンプル流体の温度を直接検出するためにチャネル36内に配置されている。別の実施例では、破線で示されているように、温度センサー140は、マイクロ流体容器34内のサンプル流体の温度を直接検出するために該容器34内に配置される。さらに別の実施例では、温度センサー140は、マイクロ流体体積部24内のサンプル流体の温度を間接的に検出するために、該体積部24を画定する基板またはチップ内などの該体積部24の外部に配置される。さらに別の実施例では、温度センサー140を、その他の場所に配置することができるが、この場合、そのような他の場所における温度は、試験されるサンプル流体の温度と相互に関連している。
【0023】
流体試験システム220は、単一の温度センサー140を備えるものとして示されているが、他の実施例では、システム220は、体積部24内の様々な位置における流体サンプルの温度を示す信号を出力する複数の温度センサー140を備え、この場合、該出力信号は、集められて、1つのグループとして統計的に分析されて、試験対象のサンプル流体の温度の統計値(たとえば、試験対象のサンプル流体の平均温度)が特定される。たとえば、1実施例では、システム220は、容器34内に複数の温度センサー140を備え、及び/又は、チャネル36内に複数の温度センサー140を備え、及び/又は、体積部24を形成する基板もしくはチップ内の体積部24の外部に複数の温度センサーを備えている。
【0024】
1実施例では、温度センサー140の各々は、電気抵抗温度センサーを備えており、該センサーの抵抗は、温度の変化に応じて変化し、これによって、該センサーの現在の電気抵抗を示す信号は、該センサーの近傍の環境の現在の温度を示すかまたは該温度に対応するようになっている。他の実施例では、センサー140は、他のタイプの微細加工された温度検出デバイスまたは微小な温度検出デバイスを備えている。
【0025】
コントローラ70は、抵抗60を選択的に作動させて温度調節状態にし、及び、該温度調整状態にあるときに、試験対象の流体の検出された温度に基づいて、抵抗60を選択的に作動させて異なる動作状態にする。1実施例では、コントローラ70は、試験対象の流体の温度を示すセンサー140から受け取った信号に基づいて、抵抗60を、ポンピング状態と温度調節状態との間で切り替える。1実施例では、コントローラ70は、該信号に基づいて試験対象の流体の温度を決定ないし判定する。1実施例では、コントローラ70は、閉ループ方式で動作し、該閉ループにおいて、コントローラ70は、1つのセンサー140または2以上のセンサー140から連続的にもしくは定期的に受信される流体温度表示信号(流体の温度を表す信号)に基づいて、温度調節状態にある抵抗60の動作特性を連続的にもしくは定期的に調整する。
【0026】
1実施例では、コントローラ70は、温度センサー140から受け取った信号の値を、抵抗60の対応する動作状態、及び/又は、抵抗60の該動作状態が開始された特定の時刻、及び/又は、抵抗60の該動作状態が終了した時刻、及び/又は、抵抗60の該動作状態の継続時間に相互に関連付けるかまたは索引付けする。かかる実施例では、コントローラ70は、索引付けされた流体温度表示信号、及び該信号に関連する抵抗動作状態情報を格納する。コントローラ70は、格納されている索引付けされた情報を用いて、抵抗60の異なる動作状態と、チャネル36内の流体の温度の変化との間の現在の関係を決定ないし特定する。この結果、コントローラ70は、チャネル36内の特定の流体サンプルもしくは特定のタイプの流体の温度が、温度調節状態にある抵抗60の動作状態の変化にどのように応答するかを特定する。1実施例では、コントローラ70は、オペレータが、抵抗60の動作特性の変化に流体がどのように応答するかに影響を与えうる試験システム220の構成要素の経年劣化やその他の要因を考慮に入れるために、試験システム220の動作を調整できるようにするための(表示される)情報を表示する。別の実施例では、コントローラ70は、抵抗60の異なる動作状態に対する特定された温度応答に基づいて、温度調節状態にある抵抗60の動作をコントローラ70が制御するやり方を自動的に調整する。たとえば、1実施例では、コントローラ70は、流体サンプルと抵抗60との間の特定されて格納されている熱応答関係に基づいて、抵抗60を、「オン」状態と「オフ」状態間で(切り替えて)作動させ、または、異なる「オン」動作状態間で(切り替えて)作動させる予め決められたスケジュールを調整する。別の実施例では、コントローラ70は、コントローラ70が、温度センサー140から受け取った温度信号にリアルタイムで応答するやり方を制御する手法またはプログラムを調整する。
【0027】
図4は、流体試験システム220によって実行することができる例示的な方法300のフローチャートである。ブロック302に示されているように、コントローラ70は、非一時的なコンピューター可読媒体に(プログラム論理(プログラムロジック)や符号化された論理(ロジック)や機械可読命令もしくは回路の形態で)格納されている命令にしたがって、リアルタイムで、温度センサー140に対しポーリングし、すなわちセンサー140から流体信号を受け取る。該流体信号は、マイクロ流体診断チップのマイクロ流体チャネル36内の流体の温度を表している。
【0028】
ブロック304に示されているように、コントローラ70は、、非一時的なコンピューター可読媒体に(プログラム論理(プログラムロジック)や符号化された論理(ロジック)や機械可読命令もしくは回路の形態で)格納されている命令にしたがって、診断チップのマイクロ流体チャネル36内で試験される流体サンプルを細胞/粒子センサー38を横切るようにポンピングする(すなわち送り込みないし送り出す)ための制御信号を抵抗60に対して出力する。具体的には、該制御信号は、抵抗60に、マイクロ流体チャネル36内の該近傍の流体を該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで加熱するのに十分な熱量及び速さ(もしくは単位時間当たりの熱流量)で熱を放出させる。蒸気泡の発生によって、チャネル36内に流体を押して送り込む。その後の蒸気泡の崩壊によって、流体はチャネル36内に引き込まれて該チャネル内を移動する。
【0029】
ブロック306に示されているように、コントローラ70は、非一時的なコンピューター可読媒体に(プログラム論理(プログラムロジック)や符号化された論理(ロジック)や機械可読命令もしくは回路の形態で)格納されている命令にしたがって、少なくとも細胞/粒子センサー38が流体を検出しているときに(すなわち、流体を検出しているときには少なくとも)、該流体の温度を調節するために、抵抗60に対して制御信号を出力する。具体的には、コントローラ70は、該近傍の流体を、該流体の核生成エネルギーを下回る一定の温度まで加熱するように、または、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る所定の温度範囲内に常に維持するように、抵抗60を作動させるための制御信号を出力する。上述したように、コントローラ70は、(抵抗60が)温度調節状態にあるときに抵抗60を2値的に制御することができ、または、抵抗60を動的に制御して、抵抗60の動作状態を複数の異なる使用可能な動作「オン」状態の中から選択することができる。
【0030】
図5は、例示的なマイクロ流体診断もしくは試験システム1000を示している。システム1000は、携帯型の電子デバイス駆動のインピーダンスベースのシステムから構成され、該システムによって、血液サンプルなどの流体のサンプルが分析される。本開示においては、「流体」という用語は、細胞や粒子やその他の生体物質などの流体中の検体もしくは該流体によって運ばれる検体を含む。流体のインピーダンスは、該流体のインピーダンス及び/又は該流体中の任意の検体を指す。システム1000(該システムの一部が概略的に図示されている)は、マイクロ流体カセット1010、カセットインターフェース1200、モバイルアナライザー1232、及びリモートアナライザー1300を備えている。全体としては、マイクロ流体カセット1010は、流体サンプルを受け取って、該流体サンプルの検出された特性に基づいて信号を出力する。インターフェース1200は、モバイルアナライザー1232とカセット1010間の仲介をする。インターフェース1200は、カセット1010に取り外し可能に接続し、及び、カセット1010上のポンプ及びセンサーを動作させるためにモバイルアナライザー1232からカセット1010への電力の伝送を容易にする。インターフェース1200はさらに、モバイルアナライザー1232によるカセット1010上のポンプ及びセンサーの制御を容易にする。モバイルアナライザー1232は、インターフェース1200を介してカセット1010の動作を制御し、及び、カセット1010によって生成された試験対象の流体サンプルに関するデータを受け取る。モバイルアナライザー1232は、データを分析して出力を生成する。モバイルアナライザー1232はさらに、処理したデータを、以後のより詳細な分析及び処理のために、リモートアナライザー1300に送る。システム1000は、血液サンプルなどの流体サンプルを試験するための携帯型の診断プラットフォームを提供する。
【0031】
図6図19は、マイクロ流体カセット1010を詳細に示している。図6図8に示されているように、カセット1010は、カセットボード1012、カセット本体1014、膜(たとえば薄膜)1015、及びマイクロ流体チップ1030を備えている。カセットボード1012は、図8A及び図8Bに示されているように、パネル(板)もしくは台(プラットホーム)を備えており、該パネルもしくは台の中または該パネルもしくは台の上に流体チップ1030が取り付けられている。カセットボード1012は、導電性の線すなわちトレース1015を備えており、該線1015は、マイクロ流体チップ1030の電気的コネクタから、カセットボード1012の端部にある電気コネクタ1016まで延びている。図6に示されているように、電気コネクタ1016は、外部のカセット本体1014に露出している。図5に示されているように、露出した電気コネクタ1016は、インターフェース1200に挿入されて、インターフェース1200内の対応する電気コネクタと電気的に接触する位置に配置されて、マイクロ流体チップ1030とカセットインターフェース1200の間に電気的接続をもたらすように設計されている。
【0032】
カセット本体1014は、カセットボード1012及びマイクロ流体チップ1030を覆って保護するために、カセットボード1012を部分的に囲んでいる。カセット本体1014は、カセット1010の手動操作を容易にし、これによって、カセット1010をインターフェース1200に取り外し可能に相互接続するための手動による位置決めを容易にする。カセット本体1014はさらに、受け取った流体サンプル(または血液サンプル)をマイクロ流体チップ1030に向けて送っているときの流体サンプルの取得中に人の指を位置決めして該指に対して密封する。
【0033】
図示の例では、カセット本体1014は、つまみ部1017、サンプル受容ポート1018、レジデンス通路(residence passage)1020、サンプル保持チャンバー1021、チップファンネル(チップ漏斗)1022、排出口1023、及び排出用容器1024を備えている。つまみ部1017は、電気コネクタ1016が配置されているカセット1010の端部の反対側にある本体1014の薄い部分を含んでいる。つまみ部1017は、カセット1010をカセットインターフェース1200の受容ポート1024(図5に示されている)に接続または挿入する際にカセット1010を把持するのを容易にする。図示の例では、つまみ部1017は、2インチ以下の幅Wと、2インチ以下の長さLと、0.5インチ以下の厚さを有する。
【0034】
サンプル受容ポート1018は、血液サンプルなどの流体サンプルを受け入れることができる開口を備えている。図示の例では、サンプル受容ポート1018は、つまみ部1017とカセットボード1012の露出した部分の間に延びる高くされた台(プラットホーム)すなわち盛り上がった部分(「マウンド」という)1026の上面1027に形成された開口部1025を有している。マウンド1026は、カセット1010を直感的に使用できるようにするために、サンプル受容ポート1018の位置を明確に識別する。1実施例では、上面1027は、人の指の底面(該底面からサンプルが取得される)に対して強化されたシールを形成するために、該指の凹状の下面に合致するか概ね合致するように湾曲するか凹状をなしている。毛管作用によって、該指からサンプルを形成する血液が引き込まれる。1実施例では、血液サンプルは5〜10マイクロリットル(の量)である。他の実施例では、ポート1018は、別の位置に配置されるか、または、たとえば、図7Aに示されているように、マウンド1026が省かれる。図7Aに示されているカセット1010は、図6に示されているカセット本体1014と外形が少し異なるカセット本体1014を有しており、図7Aに示されているカセット本体1014にはマウンド1026がないが、図6及び図7Aに示されている残りの要素ないし構成要素は、図6及び図7Aに示されているカセット本体の両方に存在する。
【0035】
図7A図7Cに示されているように、レジデンス通路1020は、入力ポート1018とサンプル保持チャンバー1021との間に延びる流体チャネルもしくは導管(コンジット)もしくは管もしくは他の通路から構成される。レジデンス通路1020は、ねじれた状態、もしくは曲線状、もしくは非直線状、もしくは曲がりくねった状態で、サンプル入力ポート1018とサンプル保持チャンバー1021の間に延びており、これによって、サンプルが、サンプル入力ポート1018を通って、チップ1030まで進む(または流れる)のに要する時間が長くなるようにしている。レジデンス通路1020は体積部を提供し、試験される流体サンプルがチップ1030に達する前に、該体積部内で、該流体サンプルと流体試薬を混合することができる。図示の例では、レジデンス通路1020は、ポート1018とチップ1030の間のカセット本体1014の空間内で曲がりくねった円形またはらせん形の通路を含む迂回通路である。別の実施例では、レジデンス通路1020は、サンプル入力ポート1018とチップ1030の間の空間内で、曲がりくねっており、及び/又はジグザグになっており、及び/又はうねっており、及び/又は蛇行しており、及び/又はジグザグに曲がりくねっている。
【0036】
図示の例では、レジデンス通路1020は、マイクロ流体チップ1030に向かって下方(重力の方向)に延び、その後、マイクロ流体チップ1030から遠ざかるように上方(重力の方向とは反対方向)に延びている。図9A及び図9Bに示されているように、たとえば、上流側の部分1028は、サンプル保持チャンバー1021の近傍にありかつ該チャンバーに直接接続されたレジデンス通路1020の下流側の端部1029の下方に垂直に延びている。上流側の部分は、端部1029より先に、入力ポート1018からの流体を受けるが、端部1029の方が、垂直方向において入力ポート1018に物理的に近い。その結果、該上流側の部分から流れる流体は、下流側の端部1029へと重力に逆らって流れる。後述するように、いくつかの実施例では、レジデンス通路1020は、試験される流体サンプルまたは血液サンプルと反応する試薬1025を含んでいる。いくつかの状況では、この反応は、残留物または副産物を生じる。たとえば、溶解した血液などの流体サンプルは、溶解細胞または溶解物(ライセート)を有するだろう。レジデンス通路1020の端部1029は、レジデンス通路1020の上流側の部分1028の上に延びているので、流体サンプルと試薬1025の反応によって生じたそのような残留物や副産物は、沈降して、上流側の部分1028内に閉じ込められるかまたは保持される。換言すれば、レジデンス通路1020を通ってマイクロ流体チップ1030に進むそのような残留物や副産物の量が少なくされる。他の実施例では、レジデンス通路1020は、全体を通じて、サンプル保持チャンバー1021に向かって下方に延びる。
【0037】
サンプル保持チャンバー1021は、チャンバー(室)または内部体積部から構成され、該チャンバーまたは内部体積部内で、試験される流体サンプルまたは血液サンプルがチップ1030の上に集まる。チップファンネル1022は、チャンバー1021のより大きな領域をチップ1030のそれより小さな流体受容領域に通すために、チップ1030に向かって狭くなる漏斗状の装置(デバイス)から構成される。図示の例では、サンプル入力ポート1018、レジデンス通路1020、サンプル保持チャンバー1021及びチップファンネル1022は、内部流体準備(または調合)領域を形成し、該領域内で、流体サンプルまたは血液サンプルがチップ1030に入る前に、該流体サンプルまたは血液サンプルを試薬と混合することができる。1実施例では、該流体準備領域の全体積は20〜250マイクロリットル(μL)である。他の実施例では、かかる内部キャビティ(内部空洞)によって提供される流体準備領域は、それ以外の体積を有することができる。
【0038】
1実施例では、図7Aに点描で示されているように、試験されるサンプル流体をポート1018に導入する前に、カセット1010は流体試薬1025で予め満たされている。流体試薬1025は、試験される流体と相互作用する組成を含んでおり、試験される流体の選択された特性または一群の選択された特性を分析するマイクロ流体チップ1030の能力を高める。1実施例では、流体試薬1025は、試験される流体を希釈するための組成を含む。1実施例では、流体試薬1025は、試験される流体または血液を溶解するための組成を含む。さらに別の実施例では、流体試薬1025は、試験される流体の選択された部分の標識付けを容易にする組成を含む。たとえば、1実施例では、流体試薬1025は、磁気ビーズ(magnetic beads)または金ビーズまたはラテックスビーズを含んでいる。他の実施例では、流体試薬1025は、試験されるサンプル流体とは異なる、その他の液組成または固体組成または液体を含み、それらは、マイクロ流体チップ1030によってサンプル流体が受け取られ、処理され、及び分析される前に、サンプル入力ポート1018内に配置された該サンプル流体と相互作用しまたは該サンプル流体に変更を加える。
【0039】
排出口1023は、サンプル保持チャンバー1021とカセット本体1014の外部との間を連絡する通路から構成される。図6に示されている例では、排出口1023は、マウンド1026の側面を通って延びている。排出口1023は、毛管作用によってサンプル保持チャンバー1021内に流体を保持するのに十分な小さいサイズであるが、保持チャンバー1021が流体で満たされるときに、保持チャンバー1021内の空気を逃すことができるようにするのに十分な大きさである。1実施例では、それらの排出口の各々は、直径が50〜200マイクロメートルの開口を有する。
【0040】
排出用容器1024は、本体1014内にチップ1030から排出された流体を受けるように構成されたキャビティまたはチャンバーを備えている。排出用容器1024は、チップ1030を通過して、処理または試験された流体を収容することができる。排出用容器1024は、同じ流体が複数回試験されないように、処理または試験された流体を受け取る。図示の例では、チップ1030がチップファンネル1022と排出用容器1024の間に挟まれるように、排出用容器1024は、チップ1030の下の本体1014内に、または、チップファンネル1022及びサンプル保持チャンバー1021の側とは反対側のチップ1030の側部に形成される。1実施例では、排出用容器1024は、本体1014内に完全に収容されて、(切断やドリルによる穴あけなどによる本体1014の破壊、または、その他の本体1014の永久的な破壊もしくは破損による以外には)(進入などの)アクセスができないようになっており、本体1014内の処理または試験された流体を、保管するために、または、カセット1010の破棄と共にその後に衛生的に処分するために、閉じ込める。さらに別の実施例では、排出用容器1024は、ドアまたは隔壁を通じてアクセス可能であり、試験された流体のさらなる分析のために、または、別個の容器に試験された流体を保管するために、または、容器1024をからにしてカセット1010の継続的な使用を容易にするために、処理または試験された流体を容器1024から排出することが可能である。
【0041】
いくつかの実施例では、マイクロ流体容器1024は省かれる。かかる実施例では、マイクロ流体チップ1030によって試験または処理された流体サンプルまたは血液サンプルの部分は、再循環してマイクロ流体チップ1030の入力側または入力部に戻る。たとえば、1実施例では、マイクロ流体チップ1030は、マイクロ流体チップ1030によって提供される1つまたは複数のセンサーの入力側に、チップファンネル1022を通る流体を受けるマイクロ流体容器を備える。試験された流体サンプルまたは血液サンプルのそれらの部分は、マイクロ流体チップ1030の該1つまたは複数のセンサーの入力側にある該マイクロ流体容器に戻される。
【0042】
膜1015は、ポート1018の開口部1025を完全に横断して延びかつ開口部1025を完全に覆うように適切な位置に接着しているかまたは他のやり方で固定されている、穴のあいていない液体不透過性のパネルもしくは薄膜もしくはその他の材料の層から構成されている。1実施例では、膜1015は、カセット1010の内部体積及びその意図されている内容物が不正な操作または変更を受けているか否かを識別するタンパーインジケータとして機能する。カセット1010のサンプル準備(または調合)領域が、上記の試薬1025などの試薬で予め満たされている実施例では、膜1015は、流体準備領域内の流体試薬1025、ポート1018、レジデンス通路1020、流体保持チャンバー1021及びチップファンネル1022を密閉(封止)する。いくつかの実施例では、膜1015はさらに、排出口1023を横断して(またはその全体にわたって)延在する。いくつかの実施例では、膜1015はさらに、気体不透過性または空気不透過性である。
【0043】
図示の例では、膜1015は、少なくとも流体サンプルがサンプル入力ポート1018内に置かれるまでは、流体試薬1025をカセット1010内に閉じ込めるかまたは収容する。この場合、膜1015をはがすか、もしくは引き裂くか、もしくはそれに穴をあけて、流体サンプルを開口部1018を通して導入することができる。他の実施例では、膜1015は、隔壁を備えることができ、針を該隔壁に通して挿入することによって、開口部1018を通じて流体サンプルまたは血液サンプルが置かれる。膜1015は、カセット1010の一部としての流体試薬1025の事前パケージングを容易にし、この場合、流体試薬1025は、その後の試験される流体サンプルの配置と共に使用する準備ができている。たとえば、第1の流体試薬1025を収容している第1のカセット1010を、流体の第1のサンプルの第1の特性を試験するために予め設計しておくことができ、第1の流体試薬1025とは異なる第2の流体試薬1025を収容している第2のカセット1010を、流体の第2のサンプルの第2の特性を試験するために予め設計しておくことができる。換言すれば、異なるそれぞれのカセット1010を、それに含まれている流体試薬1025のタイプまたは量に応じて、異なる特性を試験するために個別に設計することができる。
【0044】
図8A図8B及び図9は、マイクロ流体チップ1030を示している。図8Aは、カセットボード1012、チップファンネル1022、及びマイクロ流体チップ1030の上面を示している。図8Aは、チップファンネル1022とカセットボード1012の間の挟まれたマイクロ流体チップ1030を示している。図8Bは、カセットボード1012とマイクロ流体チップ1030の底面を示している。図9は、チップファンネル1022の下のマイクロ流体チップ1030の断面図である。図9に示されているように、マイクロ流体チップ1030は、シリコン(ケイ素)などの材料から形成された基板1032を備えている。マイクロ流体チップ1030は、基板1032に形成されたマイクロ流体容器1034を備えており、該容器は、チップ1003に入る流体サンプルを(いくつかの試験では試薬と共に)受けるためにチップファンネル1022の下に延びている。図示の例では、マイクロ流体容器は、1mm未満(公称では0.5mm)の幅Wを有する口すなわち上部開口を有している。容器1030は、0.5mmと1mmの間の深さD(公称では0.7mmの深さD)を有している。後述するように、マイクロ流体チップ1030は、領域1033内にチップ1030の底部に沿ってポンプ及びセンサーを備えている。
【0045】
図10及び図11は、マイクロ流体チップ1030の例示的な実施例であるマイクロ流体チップ1130の拡大図である。マイクロ流体チップ1130は、1つの低電力プラットフォームに、流体ポンピング、インピーダンス検出、及び温度検出の各機能を組み込んでいる。マイクロ流体チップ1130は、排出用容器1024が省かれているカセット本体1014を有するカセット1010と共に使用するために特に設計されている。後述するように、マイクロ流体チップ1130は、試験された流体サンプルの部分を再循環させて、マイクロ流体チップ1130のセンサーの入力すなわち上流側に戻す。図10に示されているように、マイクロ流体チップ1130は基板1032を備えており、該基板内に、(上記の)マイクロ流体容器1034が形成されている。さらに、マイクロ流体チップ1130は、複数の検出領域1135を有しており、該検出領域の各々は、マイクロ流体チャネル1136、微細加工された集積センサー1138、及びポンプ1160を備えている。
【0046】
図11は、図10に示されているチップ1130の検出領域1135のうちの1つを示す拡大図である。図11に示されているように、マイクロ流体チャネル1136は、流体サンプルを流すために基板1032内を延びるまたは該基板内に形成された通路を備えている。チャネル1136は、中央部分1162を含むポンプ、及び、枝部分1164、1166を含む一対のセンサーを備えている。枝部分1164、1166の各々は、マイクロ流体容器1134に向かって広くなる漏斗形状の開口を有している。中央部分1162は、容器1134から延びており、容器1134に対して該開口よりも狭い開口を有している。中央部分1162はポンプ1160を備えている。
【0047】
枝部分1164、1166を含むセンサーは、中央部分1162の互いに反対の側に分岐すなわち枝分かれして、容器1134に戻るように延びている。枝部分1164、1166の各々は、流体が流れる狭くなっている部分、すなわちのど部もしくは狭窄部1140を備えている。本開示において「狭窄部」は、少なくとも1つの方向の寸法が狭くなっている部分を意味する。「狭窄部」を、(A)チャネルの一方の側に向かって突き出した突出部を有する該チャネルの他方の側、または(B)チャネルのそれぞれの他方の側に向かって突き出した少なくとも1つの突出部を有する該チャネルの両側(これらの複数の突出部は、互いに整列しているか、または該チャネルに沿って互い違いに配置されている)、または(C)該チャネルを流れることができるものとできないものを区別するために該チャネルの2つの壁の間に突き出した少なくとも1つの柱状物もしくは円柱状物によって形成することができる。
【0048】
1実施例では、枝部分1164、1166は互いに類似している。別の実施例では、枝部1164、1166は、異なる流動特性を容易にするために互いに異なる形状またはサイズ(大きさ)にされている。たとえば、第1のサイズの粒子または細胞が(そのような粒子または細胞がある場合には)、部分1164、1166の一方よりもその他方の部分1164、1166をより容易に流れるように、狭窄部1140、または部分1164、1166の他の領域を異なるサイズとすることができる。部分1164、1166は中央部分1162の反対の側から分岐しているので、予め他の部分に流体を吸い上げることなく、部分1164、1166の両方が、部分1162から流体を直接受け取ることができる。
【0049】
微細加工された集積センサー1138の各々は、狭窄部1140内の基板1032上に形成された微細加工された装置(デバイス)を備えている。1実施例では、センサー1138は、電気信号を出力しまたは電気信号を変化させるように構成された微小デバイス(マイクロデバイス)を備えており、該電気信号または電気信号の変化は、狭窄部1140を通る流体及び/又は該流体の細胞/粒子の性質もしくはパラメータもしくは特性を表す。1実施例では、センサー1138の各々は、流体に含まれている細胞または粒子の性質ないし特性を検出し、及び/又は、センサー1138を横切って通る流体中の細胞または粒子の数を検出する細胞/粒子センサーを備えている。たとえば、1実施例では、センサー1138は、狭窄部1140を流れて、狭窄部1140を横切っているかまたは狭窄部1140内の電界のインピーダンスに影響を与えるサイズが異なる粒子または細胞によって引き起こされる電気インピーダンスの変化に基づいて信号を出力する電気センサーを備える。1実施例では、センサー1138は、狭窄部1140内のチャネル1136の表面内に形成されているかまたは該表面内に一体化されている帯電したハイサイド(高位側)電極及びローサイド(低位側)電極を備えている。1実施例では、該ローサイド電極は電気的に接地されている。別の実施例では、該ローサイド電極はフローティングローサイド電極から構成される。本開示では、「フローティング」ローサイド電極は、(該電極が)有している全ての接続アドミタンス(connecting admittance)がゼロである電極を意味する。換言すれば、フローティング電極は、切り離されおり、別の回路またはアースには接続されていない。
【0050】
図12図14は、センサー1138の1例を示している。図12に示されているように、1実施例では、センサー1138は、ローサイド電極1141、1143、及び、帯電したすなわちアクティブなハイサイド電極1145を含む電気センサーを備えている。ローサイド電極は、接地されているかまたはフローティング状態である。アクティブな電極1145は、接地電極1141、1143間に挟まれている。電気センサー1138を形成する電極1141、1143、及び1145は、チャネル1136内に形成された狭窄部1140内に配置されている。狭窄部1140は、チャネル1136の近傍の2つの領域である、狭窄部1140の上流側と下流側よりも断面積が小さいチャネル1136の領域を有している。
【0051】
図13は、狭窄部1140のサイズまたは寸法の1例を示している。狭窄部1140は、狭窄部1140を通って試験される個々の粒子または細胞の断面積と同様の断面積を有している。試験される細胞1147の全体寸法または平均最大寸法が6μmである1実施例では、狭窄部1140の断面積は100μmである。1実施例では、狭窄部1140は1000μmの検出体積を有している。たとえば、1実施例では、狭窄部1140は、長さが10μm、幅が10μm、及び高さが10μmの領域を形成する検出体積を有している。1実施例では、狭窄部1140の幅は、30μm以下である。狭窄部1140のサイズまたは寸法は、任意の時点において狭窄部1140を通ることができる粒子または個々の細胞の数を制限して、狭窄部1140を通る個々の細胞または粒子の試験を容易にする。
【0052】
図14は、電気センサー1138の電極によって電界を形成する様子を示している。図14に示されているように、ローサイド電極1141、1143は、アクティブな電極すなわちハイサイド電極1145を共用しており、電界は、アクティブなハイサイド電極1145と2つのローサイド電流1141、1143の各々との間に形成されている。1実施例では、ローサイド電極1141、1143は接地される可能性が高い。別の実施例では、ローサイド電極1141、1143は、フローティングローサイド電極である。流体が、電極1141、1143、及び1145を横切って電界中を通って流れると、該流体内の粒子もしくは細胞もしくは他の検体は、該電界のインピーダンスに影響を与える。それらの細胞や粒子の特性を特定するために、または、該電界中を通る細胞もしくは粒子の数を数えるために、このインピーダンスが検出される。
【0053】
ポンプ1160は、マイクロ流体チャネル1136中を流体を移動させて、該流体が狭窄部1140を通ってセンサー1138の1つを横切って移動するようにするためのデバイス(装置)から構成される。ポンプ1160は、流体をマイクロ流体容器1134からチャネル1136内へと引き込む。ポンプ1160はさらに、狭窄部1140を通ってセンサー1138を横切った流体を循環させて容器1134に戻す。
【0054】
図示の例では、ポンプ1160は、ポンピング状態または温度調節状態へと作動可能な抵抗(器)を備えている。抵抗1160は、(該抵抗の)近傍の流体の核生成エネルギーを上回る温度まで該流体を加熱するのに十分な熱量を放出することができる電気抵抗性材料から形成される。抵抗1160はさらに、抵抗1160の近傍にある流体を該流体の核生成エネルギーよりも低い温度に加熱することによって、該流体が気化することなくより高い温度まで加熱されるようにするために、より少ない量の熱を放出することができる。
【0055】
ポンプ1160を形成する抵抗がポンピング状態にあるときは、該抵抗を流れる電流のパルスが、抵抗に熱を生じさせ、これによって、該抵抗の近傍の流体を、該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで加熱して、流体が狭窄部1140を横断して容器34に戻るように該流体を強力に放出する蒸気泡が生成される。該蒸気泡が崩壊すると、負圧が、流体をマイクロ流体容器1134からチャネル1136内に引き込んで、崩壊した蒸気泡の(崩壊する)前の体積を占有させる。
【0056】
ポンプ1160を形成する抵抗が温度調節状態すなわち流体加熱状態にあるときは、(該抵抗の)近傍の流体の温度は、該流体の核生成エネルギー(たとえば該核生成エネルギーを生じる温度)未満の第1の温度まで上昇し、その後、該流体の温度が、該核生成エネルギー(たとえば該核生成エネルギーを生じる温度)より低い一定の温度に維持されるかまたは該核生成エネルギーより低い所定の温度範囲内に常に維持されるように、該動作状態が維持もしくは調整される。これとは対照的に、抵抗1160がポンピング状態に作動されているときには、抵抗1160は、抵抗1160の近傍の流体の温度が、一定の温度に維持されるわけでも、所定の温度範囲内に常に維持される(温度が該所定の温度範囲内で上昇及び下降する)わけでもないが、該流体の温度を、該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで急速かつ連続的に上昇または増加させるようにする動作状態にある。
【0057】
さらに他の実施例では、ポンプ1160は、他のポンピングデバイスを備えることができる。たとえば、他の実施例では、ポンプ1160は、印加された電流に応じて形状を変えまたは振動して、振動板を揺らし、これによって、近傍の流体が狭窄部1140を横断して容器1134に戻るようにするピエゾ(圧電)抵抗デバイスを備えることができる。さらに他の実施例では、ポンプ1160は、マイクロ流体チャネル1136と流体連絡する他のマイクロ流体ポンピングデバイスを備えることができる。
【0058】
図11の矢印によって示されているように、ポンプ1160を作動させて流体ポンピング状態にすることによって、流体サンプルは、矢印1170によって示されている方向に中央部分1162を通って移動する。流体サンプルは、狭窄部1140中を流れてセンサー1138を横切るが、この場合、該流体サンプル内の細胞は、(図14に示されている)電界に影響を与え、そのインピーダンスを測定または検出することによって、該細胞もしくは粒子の特性を特定し、及び/又は、特定の時間期間中にセンサー1138の検出体積部を横切って流れる細胞の数を数える。狭窄部1140を通過した該流体サンプルの部分は、矢印1171で示されているように、流れを継続してマイクロ流体容器1134に戻る。
【0059】
図10にさらに示されているように、マイクロ流体チップ1130はさらに、温度センサー1175、電気接触パッド1177、及びマルチプレクサ回路1179を備えている。温度センサー1175は、検出領域1135内の種々の位置に配置されている。温度センサー1175の各々は、マイクロ流体チャネル1136内の流体サンプルの部分の温度を示す信号を直接または間接に出力するための温度検出デバイスを備えている。図示の例では、温度センサー1175の各々は、チャネル1136内のサンプル流体の温度を間接的に検出するためにチャネル36の外部に配置されている。他の実施例では、温度センサー1175は、容器1134内のサンプル流体の温度を直接検出するためにマイクロ流体容器1134内に配置される。さらに別の実施例では、温度センサー1175は、チャネル1136内に配置される。さらに他の実施例では、温度センサー1175をそれら以外の場所に配置することができ、この場合、それらの位置における温度は、試験されるサンプル流体の温度に相互に関連付けられる。1実施例では、温度センサー1175は信号を出力し、この場合、該出力信号は、集められて、1つのグループとして統計的に分析されて、試験対象のサンプル流体の温度の統計値(たとえば、試験対象のサンプル流体の平均温度)が特定される。1実施例では、チップ1130は、容器1134内に複数の温度センサー1175を備え、及び/又は、チャネル1136内に複数の温度センサー1175を備え、及び/又は、チップ1130の基板内に容器1134及びチャネル1136によって提供されている流体受容体積部の外部に複数の温度センサーを備えている。
【0060】
1実施例では、温度センサー1175の各々は、電気抵抗温度センサーを備えており、該センサーの抵抗は、温度の変化に応じて変化し、これによって、該センサーの現在の電気抵抗を示す信号は、該センサーの近傍の環境の現在の温度を示すかまたは該温度に対応するようになっている。他の実施例では、センサー1175は、他のタイプの微細加工された温度検出デバイスまたは微小な温度検出デバイスを備えている。
【0061】
電気接触パッド1177は、マイクロ流体チップ1130の端部に、互いから3mm未満(公称では2mm未満)の距離だけ間隔をおいて配置されており、これによって、マイクロ流体チップ1130の長さを短くして、カセット1010のサイズのコンパクト化を容易にしている。電気接触パッド1177は、マイクロ流体検出領域1135を間に挟んでおり、センサー1138、ポンプ1160、及び温度センサー1175に電気的に接続されている。電気接触パッド1177はさらに、(図7B図7C図8A、及び図8Bに示されている)カセットボード1012の電気コネクタ1016に電気的に接続されている。
【0062】
マルチプレクサ回路1179は、電気接触パッド1177、センサー1138、ポンプ1160、及び温度センサー1175間に電気的に結合されている。マルチプレクサ回路1179は、チップ1130上の個々の電気接触パッド1177の数よりも多い複数のセンサー1138、ポンプ1160、及び温度センサー1175を制御し及び/又はそれらと通信するのを容易にする。たとえば、チップ1130がn個の接触パッドを有しているにもかかわらず、n個より多い数の異なる別個の構成要素との通信を使用できる。この結果、貴重な空間または面積が節約され、チップ1130、及びチップ1130が使用されるカセット1010のサイズの低減が容易になる。他の実施例では、マルチプレクサ回路1179を省くことができる。
【0063】
図15は、マイクロ流体チップ1030の別の例示的な実施例であるマイクロ流体チップ1230の一部の拡大図である。マイクロ流体チップ1130と同様に、マイクロ流体チップ1230は、マイクロ流体チップ1130に関して図示し説明した温度センサー1175、電気接触パッド1177、及びマルチプレクサ回路1179を備えている。マイクロ流体チップ1130と同様に、マイクロ流体チップ1230は、電気センサー1138及びポンプ1160を含む検出領域(センサー領域)を有している。マイクロ流体チップ1230はさらに、該チップの全体に分散した温度センサー1175を備えている。マイクロ流体チップ1230は、マイクロ流体チップ1230が異なるサイズまたは寸法のマイクロ流体チャネルを有している点を除いてマイクロ流体チップ1130と同様である。図示の例では、マイクロ流体チップ1230は、U字形のマイクロ流体チャネル1236A及び1236B(これらを合わせてマイクロ流体チャネル1236という)を備えている。マイクロ流体チャネル1236Aは第1の幅を有し、マイクロ流体チャネル1236Bは該第1の幅よりも小さい第2の幅を有している。
【0064】
マイクロ流体チャネル1236は(互いに)異なる幅または異なる断面積を有しているので、該チャネル1236は、試験のために、流体サンプル中の異なるサイズの細胞もしくは粒子を受容する。かかる実施例の1つでは、(互いに)サイズが異なるチャネル1236内の異なるセンサー1138は、異なる周波数の交流(電流)で動作し、これによって、(互いに)サイズが異なるチャネル1236中の異なるサイズの細胞に対して異なる試験が実施されるようにする。別のかかる実施例では、(互いに)サイズが異なるチャネル1236は、(互いに)サイズが異なるチャネル1236を通るサイズが異なる細胞もしくは粒子もしくはその他の検体の異なる特性を検出するために、タイプもしくは形状もしくはサイズが異なる電気センサー1138を含んでいる(収容している)。
【0065】
図16及び図17は、マイクロ流体チップ1030の別の例示的な実施例であるマイクロ流体チップ1330の一部を示す拡大図である。マイクロ流体チップ1130と同様に、マイクロ流体チップ1330は、マイクロ流体チップ1130に関して図示し説明した温度センサー1175、電気接触パッド1177、及びマルチプレクサ回路1179を備えている。マイクロ流体チップ1330は、マイクロ流体チップ1330が、幅がそれぞれ異なるマイクロ流体チャネル部分1336A、1336B及び1336C(これらを合わせてチャネル1336という)を備えている点でマイクロ流体チップ1230に類似している。マイクロ流体チップ1330は、マイクロ流体チップ1230とは異なる幾何学的形状ないし寸法を有している。マイクロ流体チップ1230と同様に、マイクロ流体チップ1330は、種々の検出領域を有しており、該検出領域は、電気センサー1138及びポンプ1160を有している。
【0066】
図16では、チャネル1336を明瞭に示すためにセンサー1138及びポンプ1160が省かれている。図16に示されているように、チャネル部分1336Aの幅はチャネル部分1336Bの幅よりも広い。チャネル部分1336Bの幅はチャネル部分1336Cの幅よりも広い。チャネル部分1336Aはマイクロ流体容器1134から延びている。チャネル部分1336Bは、チャネル部分1336Aから延びてマイクロ流体容器1134まで続いている。チャネル部分1336Cは、チャネル部分1336Bから分岐して、チャネル部分1336Bに戻っている。図17に示されているように、ポンプ1160は、チャネル部分1336A内に配置されている。センサー1138は、チャネル部分1336B及びチャネル部分1336C内に配置されている。この結果、単一のポンプ1160が、流体サンプルを、サイズが異なるそれらのチャネル内に含まれているそれぞれのセンサー1138を横切って通るように、該流体サンプルをチャネル部分1336B及び1336Cの両方内にポンピングする(すなわち送り込む)。送り込まれた全ての流体中の細胞は、チャネル部分1336B内のセンサー1138を横切って該センサー1138によって検出される。(チャネル部分1336Bよりも狭い)チャネル部分1336Cを通過するのに十分小さな細胞は、チャネル部分1336C内のセンサー1138を(横切って)通って該センサー1138によって検出される。この結果、センサー1138及びチャネル部分1336Cは、ポンプ1160によって送り込まれた細胞及び流体のサブセット(一部)または該細胞及び流体の全てよりは少ない部分を検出する。
【0067】
図18は、マイクロ流体チップ1030の別の例示的な実施例であるマイクロ流体チップ1430の一部の拡大図である。マイクロ流体チップ1430は、図7Aに示されている排出用容器1024などの排出用容器を備えるカセット1010などのカセットと共に使用するために特に設計されまたは製造される。マイクロ流体チップ1130と同様に、マイクロ流体チップ1430は、マイクロ流体チップ1130に関して図示し説明した温度センサー1175、電気接触パッド1177、及びマルチプレクサ回路1179を備えている。
【0068】
図18は、マイクロ流体チップ1430の例示的な検出領域1435を示しており、この場合、マイクロ流体チップ1430は、複数のそのような検出領域1435を有している。マイクロ流体検出領域1435は、マイクロ流体チャネル1436、流体センサー1138、ポンプ1460、及び排出用容器1462を備えている。マイクロ流体チャネル1436は、基板1032内に形成され、入口部分1466及び枝部分1468を備えている。入口部分1466は、マイクロ流体容器1134から延び得る漏斗形の開口を有している。入口部分1466は、細胞または粒子を含む流体が、チャネル1436に流入して枝部分1468の各々を通るのを容易にする。
【0069】
枝部分1468(のそれぞれ)は、中央部分1466の互いに反対の側から延びている。枝部分1468の各々は、関連する排出通路1462で終了している。図示の例では、枝部分1468の各々は、センサー1138が配置されている狭窄部1140を有している。
【0070】
ポンプ1460は、流体を、排出通路1462を通して(図7Aに示されている)下にある排出用容器1024に送り込むために、排出通路1462に近接して(及び公称では排出通路1462に対向して)配置されている。ポンプ1460は、上記のポンプ1160の抵抗に類似の抵抗を備えている。ポンピング状態において、ポンプ1460は、ポンプ1460と排出通路1462の間の流体を、排出通路1462を通して排出用容器1024内に押し出す蒸気泡を生成するために、電流を受け取って、近傍の流体の核生成エネルギー(たとえば該エネルギーを生じる温度)を上回る温度まで該流体を加熱する。蒸気泡が崩壊すると、マイクロ流体容器1134から流体サンプルの一部が引き込まれて、該一部は、中央部分1466を通って枝部分1468内のセンサー1138を横切る。
【0071】
排出通路1462は、ポンプ1460の近傍の通路1436の一部から排出用容器1024まで延びている。排出通路1462は、排出用容器1024内の流体が排出通路1462を通ってチャネル1436内に後退または逆流するのを阻止する。1実施例では、排出通路1462の各々はノズルを備え、この場合、流体は、ポンプ1460によって該ノズルを通って排出用容器1024内に送り込まれる。別の実施例では、排出通路1462は、一方弁(一方向弁)を備えている。
【0072】
図5に戻ると、カセットインターフェース1200は、「リーダー」または「ドングル」と呼ばれることもあり、カセット1010とモバイルアナライザー1232を相互接続してそれらの間のインターフェースとして機能する。カセットインターフェース1200は、マイクロ流体カセット1010の構成要素を制御するための専用のもしくはカスタマイズされたもしくは該制御に特に適合する構成要素ないし回路を含んでいる。カセットインターフェース1200は、適切な機械可読命令及びアプリケーションプログラムインターフェースが組み込まれた一般的な携帯型電子装置の使用を容易にするが、この場合、該携帯型電子装置は、カセット1010の構成要素の制御を可能にするために特に使用されるハードウェアまたはファームウェアを省くことができる。この結果、カセットインターフェース1200は、アプリケーションプログラム及びアプリケーションプログラミングインターフェースのアップロードによって簡単にアップデートされている複数の異なる携帯型電子装置1232の使用を容易にする。カセットインターフェース1200は、特定のマイクロ流体カセット1010だけと使用するために特別に設計またはカスタマイズされてはいないモバイルアナライザー1232の使用を容易にする。換言すれば、カセットインターフェース1200は、異なるカセットインターフェース1200の接続を通じてそれぞれ異なる試験能力を有する複数の異なるカセット1010と共にモバイルアナライザー1232を使用するのを容易にする。
【0073】
カセットインターフェース1200には、カセット1010の電子コンポーネント(電子部品)を制御するという特定の用途専用のまたは該用途用にカスタマイズされた回路及び電子コンポーネント(電子部品)が搭載されている。カセットインターフェース1200には、カセット1010自体に搭載されている電子コンポーネントが搭載されているのではなく、カセット1010のそのような電子コンポーネントを制御するための専用の電子回路または電子コンポーネントの多くが搭載されているので、カセット1010を、より少ない電子コンポーネントで製造することができ、これによって、カセット1010のコスト、複雑さ及びサイズを低減することができる。この結果、カセット1010の基本価格がより安いことに起因して、カセット1010を使用後に使い捨てにすることがより容易である。同様に、カセットインターフェース1200はカセット1010に取り外し可能に接続されるので、カセットインターフェース1200は、複数のカセット1010を交換しながら再使用することが可能である。カセットインターフェース1200に搭載されて、特定のカセット1010の電子コンポーネントの制御という特定の用途に専用のもしくは該用途用にカスタマイズされている電子コンポーネントは、異なる患者やサンプル提供者からの流体サンプルに対して流体試験または血液検査を実行するときに、異なるカセット1010の各々と共に再使用可能である。
【0074】
図示の例では、カセットインターフェース1200は、電気コネクタ1204、電気コネクタ1206、及び(インターフェース1200の外側ハウジングの外部に概略的に示されている)ファームウェア1208を備えている。電気コネクタ1204は、カセットインターフェース1200をカセット1010の電気コネクタ1016に取り外し可能に電気的に直接接続するデバイスを備えている。1実施例では、電気コネクタ1204によって提供される電気的接続は、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430の(電気センサー1138やマイクロ流体ポンプ1160などの)電子コンポーネントに電力を供給するための電力の伝送を容易にする。1実施例では、電気コネクタ1204によって提供される電気的接続は、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430のコンポーネント(構成要素)の制御を容易にするために、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430へのデータ伝送を提供する電気信号の形態での電力の伝送を容易にする。1実施例では、電気コネクタ1204によって提供される電気的接続は、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430からモバイルアナライザー1232へのデータの伝送(たとえば、センサー1138からの信号の伝送)を容易にするために、電気信号の形態での電力の伝送を容易にする。1実施例では、電気コネクタ1204は、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430の各々への電力供給、並びに、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430への及びそれらのマイクロ流体チップからのデータ信号の伝送を容易にする。
【0075】
図示の例では、電気コネクタ1204は、メス型ポートに配置された複数の電気接触パッドを備えており、この場合、それらの電気接触パッドは、カセット1010の対応するパッド1016に接触する。さらに他の実施例では、電気コネクタ1204は、複数の電気プロング(electrical prong)すなわち電気ピン、または複数の電気ピンソケットすなわち電気プロングソケット、またはそれらの組み合わせを備えている。1実施例では、電気コネクタ1204は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタコードの一方の端部を受けるためのUSBコネクタポートを備えており、この場合、該USBコネクタコードの他方の端部は、カセット1010に接続される。さらの他の実施例では、電気コネクタ1204を省くことができ、その場合、カセットインターフェース1200は、インターフェース1200とカセット1010の間で無線通信するための赤外やRFやブルートゥースやその他の無線技術などを使用する無線通信装置を備える。
【0076】
電気コネクタ1204は、カセット1010へのカセットインターフェース1200の取り外し可能な電気的接続を容易にし、これによって、カセットインターフェース1200をカセット1010から分離して、カセットインターフェース1200を複数の交換可能なカセット1010と共に使用すること、並びに血液などの分析された流体を有するマイクロ流体カセット1010の破棄もしくは保管を容易にすることができるようにしている。電気コネクタ1204は、モジュール化を容易にし、これによって、カセット1010が保管や破棄のために分離されているときに、カセットインターフェース1200及び関連する回路を繰り返し再使用することが可能になる。
【0077】
電気コネクタ1206は、モバイルアナライザー1232へのカセットインターフェース1200の取り外し可能な接続を容易にする。この結果、電気コネクタ1206は、カセットインターフェース1200を複数の異なる携帯型電子装置1232と共に使用するのを容易にする。図示の例では、電気コネクタ1206は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタコード1209の一方の端部を受けるためのUSBコネクタポートを備えており、この場合、該USBコネクタコード1209の他方の端部は、モバイルアナライザー1232に接続される。他の実施例では、たとえば、インターフェース1200とモバイルアナライザー1232の一方が、インターフェース1200とモバイルアナライザー1232の他方に直接プラグインする(差し込まれる)ように、電気コネクタ1206は、モバイルアナライザー1232の対応する(血液)コネクタに接触する複数の別個の電気接触パッドを備えている。別の実施例では、電気コネクタ1206は、プロングまたはプロング受けソケットを備えている。さらに他の実施例では、電気コネクタ1206を省くことができ、その場合、カセットインターフェース1200は、インターフェース1200とモバイルアナライザー1232の間で無線通信するための赤外やRFやブルートゥースやその他の無線技術を使用する無線通信装置を備える。
【0078】
ファームウェア1208は、カセットインターフェース1200に搭載された電子コンポーネント及び回路を具備する、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430及びカセット1010の電子コンポーネント及び回路の制御専用のハードウェアコントローラを備えている。図示の例では、ファームウェア1208は、電気センサー1138を制御するためのコントローラの一部として機能する。
【0079】
図5に概略的に示されているように、ファームウェア1208は、周波数源1212、インピーダンス抽出器1214、及びバッファ1216を支持する少なくとも1つのプリント基板1210を備えており、インピーダンス抽出器1214は、センサー1138からの第1の複合信号すなわちベース(基本)信号を受け取って、該ベース信号からインピーダンス信号を取り出し、バッファ1216は、それらのインピーダンス信号がモバイルアナライザー1232に伝送されるときにまたは伝送されるまで、それらのインピーダンス信号を格納する。たとえば、1実施例では、インピーダンス抽出器1214は、無線周波数(RF)成分を利用して、該周波数成分を取り出して、試験対象デバイス(特定のセンサー1138)のインピーダンスによって引き起こされた実際の位相シフトを利用できるようにするアナログ直交振幅変調(QAM)を実行する。
【0080】
図19は、周波数源1212及びインピーダンス抽出器1214を提供する例示的なインピーダンス検出回路1500の略図である。回路ブロック1510において、マイクロ流体チャネル1136(試験対象デバイス(DUT))内の高位電極及び低位電極からの信号が測定される。回路ブロック1512において、該回路は、高位及び低位電極(試験対象デバイス)を流れる電流を電圧に変換する。回路ブロック1514において、該回路は、該電圧信号がミキサーの前後で適切な位相及び振幅をそれぞれ有するように、該電圧信号を調整する。回路ブロック1516において、該回路は、入力電圧信号及び出力電圧信号を実数部と虚数部に分ける。回路ブロック1518において、該回路は、それぞれの信号の振幅を回復する。回路ブロック1520において、該回路は高周波信号をフィルタリングして除去する。回路ブロック1522において、該回路は、該アナログ信号をデジタル信号に変換し、この場合、該デジタル信号は、フィールドプログラマブルゲートアレイなどによるバッファ1216によってバッファ(一時的に格納)される。
【0081】
1実施例では、ファームウェア1208は、周波数源コントローラ及びバッファ1216として機能するフィールドプログラマブルゲートアレイを備えている。別の実施例では、ファームウェア1208は、周波数源コントローラ、インピーダンス抽出器1214、及びバッファ1216として機能する特定用途向け集積回路(ASIC)を備えている。いずれの場合にも、センサー1138からの生のインピーダンス信号すなわちベースインピーダンス信号が、該フィールドプログラマブルゲートアレイまたは該ASICによって使用される前に、アナログ−デジタル変換器によって増幅されて変換される。ファームウェア1208がフィールドプログラマブルゲートアレイまたはASICを備える実施例では、該フィールドプログラマブルゲートアレイまたは該ASICはさらに、マイクロ流体チップ1130上の他の電子コンポーネント(たとえば、マイクロ流体ポンプ1160(抵抗など)、温度センサー1175、及び該マイクロ流体チップ上のその他の電子コンポーネント)用のドライバとして機能することができる。
【0082】
モバイルアナライザー1232は、カセット1010からデータを受け取るための可動性すなわち携帯型の電子装置である。モバイルアナライザー1232は、カセットインターフェース1200を介してカセット1010に取り外し可能にすなわち脱着可能に間接的に接続される。モバイルアナライザー1232は、カセット1010から受け取ったデータを用いて種々の機能を実行する。たとえば、1実施例では、モバイルアナライザー1232は該データを格納する。図示の例では、モバイルアナライザー1232はさらに、該データを操作または処理し、該データを表示し、及び、該データを、ローカルエリアネットワークまたはワイドエリアネットワーク(ネットワーク1500)を介して追加の格納及び処理を提供するリモートのアナライザー1300に伝送する。
【0083】
図示の例では、モバイルアナライザー1232は、電気コネクタ1502、電源1504、ディスプレイ(表示装置)1506、入力部1508、プロセッサ1510、及びメモリ(記憶装置)1512を備えている。図示の例では、電気コネクタ1502は、電気コネクタ1206に類似している。図示の例では、電気コネクタ1502は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタコード1209の一方の端部を受けるためのUSBコネクタポートを備えており、この場合、該USBコネクタコード1209の他方の端部は、カセットインターフェース1200に接続される。他の実施例では、たとえば、インターフェース1200とモバイルアナライザー1232の一方が、インターフェース1200とモバイルアナライザー1232の他方に直接プラグインする(差し込まれる)ように、電気コネクタ1502は、インターフェース1200の対応する電気コネクタに接触する複数の別個の電気接触パッドを備えている。別の実施例では、電気コネクタ1502は、プロングまたはプロング受けソケットを備えている。さらに他の実施例では、電気コネクタ1502を省くことができ、その場合、モバイルアナライザー1232とカセットインターフェース1200の各々は、インターフェース1200とモバイルアナライザー1232の間の無線通信を容易にするための赤外やRFやブルートゥースやその他の無線技術を使用する無線通信装置を備える。
【0084】
電源1504は、カセットインターフェース1200及びカセット1010に電力を供給するためにモバイルアナライザー1232に搭載されている電力のソースである。電源1504は、種々の電力制御電子コンポーネントを備えており、該コンポーネントは、カセットインターフェース1200及びカセット1010の種々の電子コンポーネントに供給される電力(電圧や電流)の特性を制御する。カセットインターフェース1200及びカセット1010の両方に対する電力はモバイルアナライザー1232によって供給されるので、カセットインターフェース1200及びカセット1010のサイズ、コスト及び複雑さが低減される。他の実施例では、カセット1010及びカセットインターフェース1200用の電力は、カセットインターフェース1200に配置されたバッテリーによって供給される。さらに別の実施例では、カセット1010用の電力は、カセット1010に搭載されているバッテリーによって供給され、インターフェース1200用の電力は、カセットインターフェース1200専用の別個のバッテリーによって供給される。
【0085】
ディスプレイ1506は、データを視覚的に提示するモニターまたはスクリーン(画面)を備えている。1実施例では、ディスプレイ1506は、カセット1010から受け取ったデータに基づくグラフィカルプロットの提示を容易にする。いくつかの実施例では、ディスプレイ1506を省くことができ、または、ディスプレイ1506を、カセット1010から受け取った信号またはデータに基づいて結果を示す発光ダイオードや聴覚装置やその他の要素などの他のデータ通信要素で置き換えることができる。
【0086】
入力部1508はユーザーインターフェースを備えており、該ユーザーインターフェースによって、人が、モバイルアナライザー1232にコマンドや選択やデータを入力することができる。図示の例では、入力部1508は、ディスプレイ1506に設けられたタッチスクリーンを含んでいる。1実施例では、入力部1508は、さらにまたは代替的に、キーボード、トグルスイッチ、プッシュボタン、スライダーバー、タッチパッド、マウス、関連する音声認識アプリケーションを有するマイクロホンなど(ただしこれらには限定されない)を含む他の入力デバイスを使用することができる。1実施例では、入力部1508は、モバイルアナライザー1232で動作するアプリケーションプログラムによって提供されるプロンプトにしたがって、異なる流体試験の入力または特定の流体試験のモードを容易にする。
【0087】
プロセッサ1510は、センサー1138の動作を制御し、及び、センサー1138からのデータの取得を制御する制御信号を生成するための少なくとも1つの処理ユニットを備えている。プロセッサ1510はさらに、ポンプ1160及び温度センサー1175の動作を制御する制御信号を出力する。図示の例では、プロセッサ1510はさらに、チップ1130から受け取ったデータを分析して出力を生成し、該出力は、メモリ1512に格納され、及び/又はディスプレイ1506に表示され、及び/又は、さらにネットワーク1500を介してリモートアナライザー1300に送信される。
【0088】
メモリ1512は、プロセッサ1510の動作を指示するための命令を含む非一時的なコンピューター可読媒体から構成される。図5に概略的に示されているように、メモリ1512は、アプリケーションプログラミングインターフェース1520及びアプリケーションプログラム1522を含んでいるかまたは格納している。アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、カセット1010を用いて種々の機能または試験を実行するためのビルディングブロック(building block)として機能するルーチン、プロトコル、及びツールのライブラリを備えている。アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、該ライブラリにアクセスして「ビルディングブロック」すなわちモジュールを組み立てて、カセット1010を用いて種々の機能または試験のうちの選択されたものを実行するプログラムロジック(論理)を含んでいる。たとえば、1実施例では、アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、異なる周波数の交流(電流)を印加するなどによって、電気センサー1138を選択された動作状態に配置するようにファームウェア1208に指示するためのルーチンを含むアプリケーションプログラミングインターフェースライブラリを含む。図示の例では、該ライブラリはまた、ファームウェア1208に、温度センサー1175からの試験対象の流体の検出された温度に応じて、流体ポンプ1160を動作させ、またはポンプ1160ないし電気センサー1138の動作を動的に調整するように指示するためのルーチンを含んでいる。1実施例では、モバイルアナライザー1232は、複数のアプリケーションプログラミングインターフェース1520を備えており、それぞれのアプリケーションプログラミングインターフェース1520は、特定の流体ないし検体の全体的な試験用に特に設計されているかまたは該試験専用のものである。たとえば、あるアプリケーションプログラミングインターフェース1520を細胞学検査(細胞診検査)(cytology test)を実行するためのものとすることができる。別のアプリケーションプログラミングインターフェース1520を、凝固試験を実行するためのものとすることができる。かかる実施例では、それらの複数のアプリケーションプログラミングインターフェース1520は、ルーチン、プロトコル及びツールのライブラリを共有することができる。
【0089】
アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、異なるアプリケーションプログラムの指示の下でカセット1010を用いた流体の試験を容易にする。換言すれば、アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、種々の異なる任意のアプリケーションプログラムが使用することができる汎用的なプログラミングコマンドセットないし機械可読コマンドセットをファームウェア1208に提供する。たとえば、モバイルアナライザー1232のユーザーは、いくつかの異なるアプリケーションプログラムのうちの任意のものをダウンロードないしインストールすることができ、この場合、それらの異なるアプリケーションプログラムの各々は、カセット1010を用いて試験を実行するために、該アプリケーションプログラミングインターフェースを使用するように設計されている。上記したように、ファームウェア1208は、アプリケーションプログラミングインターフェース1520と、カセット1010にある実際のハードウェアすなわち電子コンポーネント、特に、マイクロ流体チップ1030、1130、1230、1330、1430とをインターフェース接続する。
【0090】
アプリケーションプログラム1522は、ユーザーと、メモリ1512に格納されている1つのアプリケーションプログラミングインターフェース1520または複数のアプリケーションプログラミングインターフェース1520との対話を容易にする、メモリ1512に格納されている包括的なプログラム(overarching program)を含んでいる。アプリケーションプログラム1522は、ディスプレイ1506に出力を表示し、及び、入力部1508を介して入力を受け取る。アプリケーションプログラム1522は、入力部1508を介して受け取った入力に応答してアプリケーションプログラミングインターフェース1520と通信する。たとえば、1実施例では、ある特定のアプリケーションプログラム1522は、種々の異なる試験オプションのうちのどれを、カセット1010を用いて実行するかを選択するようにユーザーに促すグラフィカルユーザーインターフェースをディスプレイ1506に表示する。アプリケーションプログラム1522は、その選択に基づいて、アプリケーションプログラミングインターフェース1520のうちの選択された1つと相互作用して、カセット1010の電子コンポーネントを用いて選択された試験オプションを実行するようにファームウェア1208に指示する。選択された試験オプションを用いてカセット1010から受け取られた検出値は、ファームウェア1208によって受け取られて、該選択されたアプリケーションプログラミングインターフェース1520によって処理される。アプリケーションプログラミングインターフェース1520の出力は、種々の異なる任意のアプリケーションプログラムが使用できるようにフォーマットされた包括的データ(ジェネリックデータ)である。アプリケーションプログラム1522は、該ベースとなる包括的データを提示し、及び/又は該ベースとなるデータの追加的な操作ないし処理を実行して、最終出力をディスプレイ1506においてユーザーに提示する。
【0091】
アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、アプリケーションプログラム1522と共にメモリ1512に格納されているものとして図示されているが、いくつかの実施例では、アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、リモートの(離れたところにある)サーバーまたはリモートのコンピューティング装置に格納されており、その場合、モバイルアナライザー1232上のアプリケーションプログラム1522は、ローカルエリアネットワークまたはワイドエリアネットワーク(ネットワーク1500)を介して該リモートのアプリケーションプログラミングインターフェース1520にアクセスする。いくつかの実施例では、アプリケーションプログラミングインターフェース1520は、メモリ1512に局所的に格納され、アプリケーションプログラム1522は、サーバー1300などのリモートのサーバーに格納されて、ネットワーク1500などのローカルエリアネットワークもしくはワイドエリアネットワークを介してアクセスされる。さらに他の実施例では、アプリケーションプログラミングインターフェース1520とアプリケーションプログラム1522の両方が、リモートのサーバーまたはリモートのコンピューティング装置に格納されて、ローカルエリアネットワークもしくはワイドエリアネットワークを介してアクセスされる(これはクラウドコンピューティングと呼ばれることもある)。
【0092】
図示の例では、システム1000は、インターフェース1200またはモバイルアナライザー1232に設けられたマルチプレクサ回路1179及び関連するマルチプレクサ回路を利用することによってチップ1130のサイズの低減を容易にする。システム1000はさらに、チップ1130の全伝送帯域幅を、流体センサー1138、ポンプ1160、及び温度センサー1175などのチップ1130の異なる被制御デバイスに適切に割り当てることを通じてチップ1130のサイズの低減を容易にする。伝送帯域幅は、コネクタポート1204及び1177を介してそれらの間で信号を伝送させるための全能力を含む。プロセッサ1510は、制御信号を出力して、該制御信号を、コネクタポート1204及びコネクタ1177を通して、流体センサー1138、ポンプ1160、及び温度センサー1175などの種々の被制御デバイスに送るタイミング及び速度、並びに、被制御デバイスをデータ信号に関してポーリングするタイミング及び速度またはそれらの被制御デバイスからデータを受け取るタイミング及び速度を制御することによって、全伝送帯域幅を割り当てる。被制御デバイス1138、1160、1175の全てに、または、流体センサー、温度センサー、及びポンプなどの異なるタイプないしクラスの被制御デバイスに該帯域幅を等しく分配する代わりに、プロセッサ1510は、メモリ1512に格納されている命令にしたがって、それらの異なる被制御デバイス間に伝送帯域幅を異なるように割り当てる。
【0093】
被制御デバイス1138、1160、1175間の全伝送帯域幅の異なる割り当ては、被制御デバイスのクラス(部類)に基づくか、または、異なる被制御デバイスによって実行される一般的な機能に基づく。たとえば、1実施例では、全伝送帯域幅の第一の部分はセンサー1138に割り当てられ、該第1の部分とは異なる、全伝送帯域幅の第2の部分は温度センサー1175に割り当てられ、及び、該第1及び第2の部分とは異なる、全伝送帯域幅の第3の部分は、ポンプ1160に割り当てられる。1実施例では、センサー1138に割り当てられた全伝送帯域幅の第1の部分は、異なるそれぞれのセンサー1138に均等にすなわち等しく割り当てられ、温度センサー1175に割り当てられた全伝送帯域幅の第2の部分は、異なるそれぞれの温度センサー1175に均等にすなわち等しく割り当てられ、ポンプ1160に割り当てられた全伝送帯域幅の第3の部分は、異なるそれぞれのポンプ1160に均等にすなわち等しく割り当てられる。
【0094】
別の実施例では、全伝送帯域幅の第1の部分、第2の部分、及び第3の部分は、それぞれ、被制御デバイスの各クラス1138、1175、1160の個々の被制御デバイス間に不均一にすなすち異なるように割り当てられる。1実施例では、異なる流体センサー1138は、互いに異なるやり方で動作して、流体サンプルに対して異なる試験を実行する。たとえば、センサー1138が電気センサーである1実施例では、流体センサー1138の1つには第1の周波数の交流(電流)が供給され、別の流体センサー1138には(該第1の周波数とは異なる)第2の周波数の交流(電流)が供給され、これによって、それら2つのセンサーが、検出対象の細胞または粒子の異なるパラメータまたは特性を示す信号を出力するようになっている。かかる実施例では、プロセッサ1510は、それらの異なる試験に基づいて、または、それらの異なるセンサーに加えられる異なる周波数の交流(電流)に基づいて、それらの異なるセンサーの各々に、全伝送帯域幅の異なる割合すなわち割り当て分を割り当てる。
【0095】
1実施例では、個々の被制御デバイス間の全伝送帯域幅の割り当てすなわち分配はさらに、同じクラスのデバイス内の他の被制御デバイスと比較したときの個々の被制御デバイス自体の特性に基づく。たとえば、1実施例では、異なるそれぞれのセンサー1138は、サイズが異なる狭窄部内に配置されている。このようなサイズが互いに異なる狭窄部間では、該狭窄部を通って流れる流体中の細胞または粒子の濃度ないし密度、細胞または粒子が該狭窄部を通って流れる頻度(または、該狭窄部を流れる流量ないし流速)、また、センサー1138が配置される流体チャネル1136の部分の幾何学的形状ないし寸法が異なりうる。1実施例では、狭窄部内に配置されたそれらのセンサー1138のうち、細胞または粒子がセンサーを横切って流れる流量ないし流速がより大きくまたは頻度がより高いところの該センサーには、該クラスの他のセンサー(細胞または粒子が該センサーを横切って流れる流量ないし流速がより小さくまたは頻度がより低い)に比べて、該(センサーの)クラスに配分された全伝送帯域幅のうちのより大きな割合が割り当てられる。
【0096】
同様に、いくつかの実施例では、異なるそれぞれのポンプ1160は、形状またはサイズが異なるマイクロ流体チャネル1136内、すなわち、幾何学的形状ないし寸法が異なるチャネル1136の異なるそれぞれの部分に配置される。その結果、異なるそれぞれのポンプ1160に求められる流体流れまたは流体ポンピングの要求も異なりうる。かかる実施例では、より大きなポンピング要求が求められている特定のポンプ1160には、それより小さなポンピング要求が求められている(チャネル1136内に配置された)該(ポンプの)クラス内の他のポンプに比べて、該クラスに配分された全伝送帯域幅のうちのより大きな割合が割り当てられる。たとえば、1実施例では、より長いマイクロ流体チャネルまたはより曲がりくねったマイクロ流体チャネル中を流体を移動させることができるポンプには、流体を移動させることができるマイクロ流体チャネルがそれより短いかまたはそれより曲がりくねっていない別のポンプに比べて全伝送帯域幅のうちのより大きな割合が割り当てられて、より頻度(または周波数)が高いパルス及びより頻度が高いポンピングが可能になる。
【0097】
1実施例では、プロセッサ1510は、プロセッサ1510が、センサー1138の各々から少なくとも2μsに1回の頻度でデータをポーリングして受信するように全伝送帯域幅を割り当てる。かかる実施例では、プロセッサ1510は、抵抗を含むポンプ1160に、少なくとも100μsに1回(ただし、50μs毎に1回を超えない)の頻度でパルスを送信する。かかる実施例では、プロセッサ1510は、温度センサー1175から、少なくとも10msに1回(ただし、1msに1回の頻度を超えない)の頻度でデータ信号をポーリングして受信する。さらに他の実施例では、他の全伝送帯域幅割り当てが使用される。
【0098】
1実施例では、プロセッサ1510は、信号品質/信号分解能に基づいて、異なるそれぞれの被制御デバイス1138間の帯域幅割り当てをフレキシブル(柔軟)にまたは動的に調整する。たとえば、信号品質/信号分解能が、格納されている所定の信号品質/信号分解能閾値を満たさないほどに、細胞または他の検体があまりに速くセンサー1138を通り過ぎるために、センサー1138によるインピーダンス検出に割り当てられた第1の量の帯域幅が不十分である場合には、プロセッサ1510は、自動的に、または、ユーザーに帯域幅割り当ての増加を提案して該ユーザーから承認を受け取ったことに応答して、該特定のセンサー1138への帯域幅割り当てを増やすことができる。これとは逆に、割り当てられている帯域幅が、十分な信号品質/信号分解能を達成する量を超えるほどに、ポンピング速度に起因して、特定のセンサー1138を通り過ぎる流体または細胞の流速が遅い場合には、プロセッサ1510は、自動的に、または、ユーザーに帯域幅割り当ての減少を提案して該ユーザーから承認を受け取ったことに応答して、該特定のセンサーへの帯域幅割り当てを減らし、この場合、プロセッサ1510は、これによって解放された帯域幅を別のセンサー1138の1つに割り当てる。
【0099】
センサー1138が電気センサーである図示の例では、アプリケーションプログラム1522及びアプリケーションプログラミングインターフェース1520は協働して、プロセッサ1510に、チップ1130上のセンサー1138の各々に加えられる交流(電流)の周波数を制御するように指示する。個々のセンサー1138に関して、プロセッサ1510は、個々のセンサー1138にそれぞれ異なる非ゼロの周波数の交流(電流)を加えるように指示される。1実施例では、プロセッサ1510は、システムの性能を高めるために、電気センサー1138のリアルタイムすなわち今現在の性能に基づいて、電気センサー1138に加えられる交流(電流)の周波数を動的に調整する。たとえば、1実施例では、コントローラ1510は、選択された電気センサー1138に第1の非ゼロの周波数の交流(電流)を加える制御信号を出力する。該第1の非ゼロの周波数の交流(電流)が加えられている間に選択された電気センサー1138から受け取った信号に基づいて、コントローラ1510は、次に電気センサー1138に加える交流(電流)の周波数の値を調整する。プロセッサ1510は、周波数源1212が、選択された電気センサー1138に第2の非ゼロの周波数の交流(電流)を加えるように、制御信号を出力し、この場合、該選択された電気センサー1138に周波数源1212によって加えられる交流(電流)の該第2の非ゼロの周波数の値は、該第1の非ゼロの周波数の交流(電流)が加えられている間に該電気センサー1138から受け取った信号に基づく。
【0100】
1実施例では、プロセッサ1510は、流体サンプルに対して異なる試験を実施するために、(それぞれに)異なる非ゼロの周波数の交流(電流)を選択的に加える。プロセッサ1510が、周波数源1212に、電気センサー1138に異なる非ゼロの周波数の交流(電流)を加えさせる結果として、電気センサー1138は、異なる(それぞれの)試験を実行して、該流体のまたは該流体に含まれている細胞の異なる性質または特性を示すことができる異なる(それぞれの)信号を出力する。かかる異なるテストは、流体サンプルを1つの試験装置から別の試験装置に移動させることなく、単一の流体試験プラットホーム上の単一の流体サンプルに対して実行される。この結果、流体サンプルの完全性が維持され、複数の異なる試験を実行するコスト及び複雑さが低減され、及び、生物学的に危険な可能性がある廃棄物の量も低減される。
【0101】
1実施例では、アプリケーションプログラム1522は、プロセッサ1510に、システム1000によって実行される特定の流体試験の選択をユーザーに促すように指示する。1実施例では、アプリケーションプログラム1522は、プロセッサ1510に、ユーザーによる選択のために、異なるそれぞれの試験の異なるそれぞれの名称や異なるそれぞれの特性や細胞/粒子の異なるそれぞれのパラメータをディスプレイ1506に表示させる。たとえば、プロセッサ1510は、入力部1508を用いたユーザーによる選択のために、細胞の数や細胞のサイズや他の何らかのパラメータを表示させることができる。
【0102】
1実施例では、アプリケーションプログラム1522は、ユーザーに特定の流体試験の選択を促す前に、どのような流体試験またはどのような周波数範囲が使用可能であるか、または、それらの流体試験または周波数範囲のうちのどれを流体試験装置が提供できるかを決定すなわち特定するために、プロセッサ1510に、電気センサー1138を提供する流体試験装置に問い合わせるように指示する。かかる実施例では、プログラム1522は、特定のカセット1010によって提供することができない流体試験を、ユーザーに提示される流体試験の選択肢のリストまたはメニューから自動的に除去する。さらに別の実施例では、アプリケーションプログラム1522は、流体試験の全メニューを提示するが、現在のカセット1010がアナライザー1232に接続された場合には現在利用できないかまたは選択できない特定の流体試験をユーザーに知らせる。
【0103】
プロセッサ1510は、どの流体試験を実行するかについての受け取った選択に基づいて、アプリケーションプログラム1522に含まれている命令にしたがって、電気センサー1138による試験の間横断されるすなわちカバーされる交流(電流)の周波数の走査範囲を選択する。該走査範囲は、所定の走査プロファイルにしたがってある(周波数)範囲にわたって複数の異なる周波数の交流(電流)が電気センサー1318に加えられるところの該ある範囲である。該走査範囲は、試験の間電気センサー1138に加えられる交流(電流)の一連の異なる周波数の端点(たとえば下限と上限)を特定する。1実施例では、1kHz〜10MHzの走査範囲がセンサー1138に加えられる。
【0104】
走査プロファイルは、走査範囲の端点間の特定のAC(交流)周波数値、及び、電気センサー1138に該周波数値の交流を加えるタイミングを示す。たとえば、走査プロファイルは、該走査範囲の端点間の連続した途切れない一連のAC周波数値を含むことができる。代替的には、走査プロファイルは、該走査範囲の端点間の一連の間欠的なAC周波数値を含むことができる。異なる周波数の数や異なる周波数間の時間間隔、及び/又は、該周波数値自体の増分は、異なるそれぞれの走査プロファイルにおいて(または異なるそれぞれの走査プロファイル間で)同じであっても同じでなくてもよい。
【0105】
1実施例またはユーザーが選択した動作モードにおいて、プロセッサ1510は、特定された走査範囲及び走査プロファイルを実行して、実行された特定の試験に最大の信号対雑音比をもたらす周波数を特定する。流体サンプルが加えられて、該流体サンプルの一部が検出領域に達して、該検出領域で検出されると、関連するポンプ1160は、検体(細胞または粒子)が、近傍にあるセンサー1138の検出領域において静止するすなわち動かないように、動作を停止させられる。この時点で、プロセッサ1510は走査を実行する。走査中に、特定のセンサー1138に加えられて最大の信号対雑音比をもたらす交流(電流)の周波数が、プロセッサ1510によって特定される。その後、該特定のセンサー1138を横切って流体を送り込むポンプ1160が再び作動させられ、該特定された周波数の交流(電流)を該センサー1138に加えて、該センサー1138を用いて、流体サンプルが試験される。別の実施例では、交流(電流)の所定の公称周波数が、実行される特定の流体試験に基づいて特定され、この場合、該公称周波数の近辺の複数の周波数がセンサー1138に加えられる。
【0106】
1実施例またはユーザーが選択した動作モードにおいて、プロセッサ1510は、選択された流体試験に最も適した特定の範囲を特定する。この場合、走査プロファイルは、異なるそれぞれの範囲について同じであるデフォルトのプロファイルである。別の実施例またはユーザーが選択した動作モードにおいて、プロセッサ1510は、選択された流体試験に最も適した特定の走査範囲を自動的に特定する。この場合、(該動作モードを選択した)ユーザーは走査プロファイルを選択するように促される。別の実施例またはユーザーが選択した動作モードにおいて、プロセッサ1510は、アプリケーションプログラム1522によって提供された命令にしたがって、ユーザーによって選択された特定の流体試験に最適な範囲だけでなく、該ユーザーによって選択された特定の流体試験用の特定の範囲に対する特定の走査プロファイルも自動的に特定する。さらに別の実施例またはユーザーが選択可能な動作モードにおいて、該ユーザーは、特定の走査プロファイルを選択するように促され、この場合、プロセッサ1510は、特定の選択された流体試験用の走査プロファイルが選択されると、最適な走査範囲を特定する。1実施例では、メモリ1512、またはメモリ1604などのリモートのメモリは、利用可能なまたは選択可能な異なるそれぞれの流体試験または(流体試験を実行することができる)流体/細胞/粒子パラメータに対してそれぞれ異なる走査プロファイルにおけるそれぞれ異なる走査範囲を特定するルックアップテーブルを含んでいる。
【0107】
センサー1138が電気センサーである1実施例では、アプリケーションプログラミングインターフェース1520及びアプリケーションプログラム1522は協働して、プロセッサ1510に、カセット1010の同じマイクロ流体チップ1130上の異なるそれぞれのセンサー1138に異なる周波数の交流(電流)を加えるように指示する。1実施例では、プロセッサ1510は、ユーザーに、異なるそれぞれの電気センサー1138に加えられる交流(電流)の異なる非ゼロの周波数の選択を提供する。プロセッサ1510は、周波数源1212に、異なるそれぞれの電気センサー1138にそれぞれ異なる非ゼロの周波数の交流(電流)を加えるように指示するので、それらの異なる電気センサー1138は、異なる(それぞれの)試験を実行して、該流体のまたは該流体に含まれている細胞の異なる性質または特性を示すことができる異なる(それぞれの)信号を出力する。かかる異なるテストは、流体サンプルを1つの試験装置から別の試験装置に移動させることなく、単一の流体試験プラットホーム上の単一の流体サンプルに対して実行される。この結果、流体サンプルの完全性が維持され、複数の異なる試験を実行するコスト及び複雑さが低減され、及び、生物学的に危険な可能性がある廃棄物の量も低減される。
【0108】
図示の例では、アプリケーションプログラム1522及びアプリケーションプログラミングインターフェース1520はさらに協働して、プロセッサ1510に、カセット1010によって試験される流体サンプルの温度を調節するように指示する。アプリケーションプログラム1522、アプリケーションプログラミングインターフェース1520、及びプロセッサ1510は、流体ポンピングと流体温度の調節の両方を達成するために、ポンプ1160として機能する抵抗の2つの目的を兼ねた機能を容易にするコントローラとして機能する。具体的には、プロセッサ1510は、ポンプ1160に十分な量の電流が流れるようにする制御信号を出力することによって、抵抗を作動させて(該抵抗を)流体ポンピング状態にし、これによって、ポンプ1160の該抵抗がマイクロ流体チャネル1136、1236、1336、及び1436内の(該抵抗の)近傍の流体を該流体の核生成エネルギー(たとえば、該エネルギーを生じる温度)を上回る温度まで加熱するようにする。この結果、該近傍の流体が気化して、該流体の体積より大きな体積を有する蒸気泡を生成する(該蒸気泡は該流体から形成されたものである)。このより大きな体積は、該チャネル内の気化しなかった残存している流体を押して、センサー1138または複数のセンサー1138を横切って該流体を移動させるように作用する。蒸気泡が崩壊すると、流体は、容器1134から該チャネル中へと引き込まれて、崩壊した蒸気泡の(崩壊する)前の体積を占有する。プロセッサ1510は、間欠的にまたは定期的にポンプ1160の抵抗を作動させて該抵抗をポンピング状態にする。1実施例では、プロセッサ1510は、該マイクロ流体チャネル内の流体が連続的に移動するかまたは連続的に循環するように、定期的にポンプ1160の抵抗を作動させて該抵抗をポンピング状態にする。
【0109】
ポンプ1160の抵抗がポンピング状態に作動されていない、すなわち、流体の核生成エネルギーを上回る温度まで作動されていない期間中は、プロセッサ1510は、ポンプ1160の同じ抵抗を使用して、流体が、センサー1138の近傍またはセンサー38に対向する位置に延びておりかつセンサー1138によって検出されている期間中は少なくとも、該流体の温度を調節する。ポンプ1160の抵抗がポンピング状態にはない期間中は、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗を選択的に作動させて該抵抗を温度調節状態にする。該温度調節状態では、(該抵抗の)近傍の流体は気化することなく加熱される。プロセッサ1510は、十分な量の電流がポンプ1160の抵抗を流れるようにする制御信号を出力することによってポンプ1160の該抵抗を作動させて該抵抗を流体加熱状態または温度調節状態にし、これによって、ポンプ1160の該抵抗が、該マイクロ流体チャネル内の(該抵抗の)近傍の流体を気化させることなく、該流体の核生成エネルギー(たとえば、該エネルギーを生じる温度)未満の温度まで該流体を加熱するようにする。たとえば、1実施例では、コントローラは、該近傍の流体の温度が該流体の核生成エネルギー未満の第1の温度まで上昇するように抵抗を作動させて該抵抗を動作状態にし、その後、該近傍の流体の温度が該核生成エネルギー未満の一定の温度に維持されるかまたは該エネルギー未満の所定の温度範囲内に常に維持されるように該動作状態を維持もしくは調節する。これとは対照的に、ポンプ1160の抵抗がポンピング状態に作動されているときには、ポンプ1160は、ポンプ1160の抵抗の近傍の流体の温度が、一定の温度に維持されるわけでも、所定の温度範囲内に常に維持される(温度が該所定の温度範囲内で上昇及び下降する)わけでもないが、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを上回る温度まで急速かつ連続的に上昇または増加させるようにする動作状態にある。
【0110】
1実施例では、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗が、温度調節状態(該近傍の流体の温度は、該流体の核生成エネルギーを上回る温度には加熱されない)にあるときに、該抵抗が2値的に動作するように、該抵抗を流れる電流の供給を制御する。ポンプ1160の抵抗が、温度調節状態において2値的に動作する実施例では、ポンプ1160の抵抗は、「オン」か「オフ」のいずれかである。ポンプ1160の抵抗が「オン」のときには、ポンプ1160抵抗が所定の熱量を所定の(単位時間当たりの)熱流量ないし速さで放出するように、所定量の電流がポンプ1160の抵抗を流れる。ポンプ1160の抵抗が「オフ」のときは、該抵抗が追加の熱を生成もしくは放出しないように、電流は該抵抗を流れない。このような2値の温度調節動作モードでは、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗を「オン」状態と「オフ」状態間で選択的に切り替えることによって、マイクロ流体チャネ内の流体に加えられる熱量を制御する。
【0111】
別の実施例では、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗が温度調節状態にあるときに、該抵抗を、複数の異なる「オン」動作状態のうちの1つとなるように制御し、または該1つの動作状態に設定する。この結果、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗によって熱が生成されて放出される速さを選択的に変える。この場合、熱放出速度は、複数の異なる使用可能な非ゼロの熱放出速度の中から選択される。たとえば、1実施例では、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗の特性を調整することによって、ポンプ1160の該抵抗によって熱(量)が変更される速さを選択的に変更ないし制御する。調整することができるポンプ1160の抵抗の(オン/オフ状態以外の)特性の例には、該抵抗に加えられる電流の非ゼロのパルス周波数、電圧、及びパルス幅(ただしこれらには限定されない)が含まれる。1実施例では、プロセッサ1510は、複数の異なる特性を選択的に調整して、ポンプ1160の抵抗によって熱が放出される速さを制御ないし調節する。
【0112】
ユーザーが選択可能な動作モードにおいて、プロセッサ1510は、アプリケーションプログラミングインターフェース1520及びアプリケーションプログラム1522からの命令にしたがって、所定のすなわち予め決められたスケジュールにしたがって、ポンプ1160の抵抗を選択的に作動させて温度調節状態にし、これによって、流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る一定の温度に維持し、または、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る所定の温度範囲内に常に維持する。1実施例では、該所定のスケジュールは、予め決められた定期的なスケジュールまたはタイム(時間)スケジュールである。たとえば、流体試験システム1000の特定の温度特性に関する履歴データの収集を通じて、流体試験システム1000内の特定の流体サンプルの温度は、試験される流体のタイプ、ポンプ1160の抵抗が作動されてポンピング状態になる速さ/頻度、個々の蒸気泡が生成されるポンピングサイクル中に温度調節器(抵抗)60によって放出される熱量、流体試験システム20の種々の構成要素の熱的性質及び熱伝導率、ポンプ1160の抵抗とセンサー1138との間隔(距離)、流体サンプルがサンプル入力ポート1018または試験システム1000に最初に置かれたときの該流体サンプルの初期温度などの要因に依存して、予測可能な態様もしくはパターンで変化することがわかった。システム1000内で流体サンプルの温度が変化しまたは該流体サンプルが熱(温度)損失を被る既に発見されている予測可能な態様もしくはパターンに基づいて、プロセッサ1510は、発見された温度変化もしくは熱(温度)損失のパターンに適合させ、並びに、該流体の温度を該流体の核生成エネルギーを下回る一定の温度に維持し、もしくは、該流体の温度を該核生成エネルギーを下回る所定の温度範囲内に常に維持するために、上述したように、ポンプ1160の抵抗がいつオンまたはオフであるかを選択的に制御し、及び/又は、ポンプ1160の抵抗が「オン」状態にあるときの1つまたは複数のポンプ1160の抵抗の特性を選択的に調整する制御信号を出力する。かかる実施例では、プロセッサ1510がポンプ1160の抵抗を作動させて温度調節状態にし、及び、プロセッサ1510が、ポンプ1160の抵抗の熱放出速度を調整するために抵抗の動作特性を選択的に調整する所定の定期的なタイミングスケジュールが、メモリ1512に格納され、または、特定用途向け集積回路などの集積回路の一部としてプログラムされる。
【0113】
1実施例では、プロセッサ1510がポンプ1160を作動させて温度調節状態にし、及び、プロセッサ1510が温度調節状態においてポンプ1160の動作状態を調整する所定のタイミングスケジュールは、試験システム1000への流体サンプルの導入に基づき、または該導入によって起動される。別の実施例では、該所定のタイミングスケジュールは、ポンプ1160の抵抗による流体サンプルのポンピングに関連するイベントに基づき、または該イベントによって起動される。さらに別の実施例では、該所定のタイミングスケジュールは、センサー1138からの信号もしくはデータの出力に基づき、または該出力によって起動され、または、センサー1138が該流体を検出してデータを出力するスケジュールもしくは頻度に基づき、または該スケジュールもしくは該頻度によって起動される。
【0114】
ユーザーが選択可能な別の動作モードでは、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗を選択的に作動させて温度調節状態にし、及び、温度調節状態にある間に、試験対象の流体の温度を示す温度センサー1175からの信号に基づいて、ポンプ1160の抵抗を選択的に作動させて異なる動作状態にする。1実施例では、プロセッサ1510は、試験対象の流体の温度を示す温度センサー1175から受信した信号に基づいて、ポンプ1160の抵抗をポンピング状態と温度調節状態との間で切り替える。1実施例では、プロセッサ1510は、該信号に基づいて、試験対象の流体の温度を決定ないし判定する。1実施例では、プロセッサ1510は、閉ループ方式で動作し、該閉ループにおいて、プロセッサ1510は、1つのセンサー1175または2以上のセンサー1175から連続的にもしくは定期的に受信される流体温度表示信号(流体の温度を表す信号)に基づいて、温度調節状態にあるポンプ1160の抵抗の動作特性を連続的にもしくは定期的に調整する。
【0115】
1実施例では、プロセッサ1510は、温度センサー1175から受け取った信号の値を、ポンプ1160の抵抗の対応する動作状態、及び/又は、該抵抗の該動作状態が開始された特定の時刻、及び/又は、該抵抗の該動作状態が終了した時刻、及び/又は、該抵抗の該動作状態の継続時間に相互に関連付けるかまたは索引付けする。かかる実施例では、プロセッサ1510は、索引付けされた流体温度表示信号、及び該信号に関連する抵抗動作状態情報を格納する。プロセッサ1510は、格納されている索引付けされた情報を用いて、ポンプ1160の抵抗の異なる動作状態と、該マイクロ流体チャネル内の流体の温度の変化との間の現在の関係を決定ないし特定する。この結果、プロセッサ1510は、該マイクロ流体チャネル内の特定の流体サンプルもしくは特定のタイプの流体の温度が、温度調節状態にあるポンプ1160の抵抗の動作状態の変化にどのように応答するかを特定する。1実施例では、プロセッサ1510は、オペレータが、ポンプ1160の抵抗の動作特性の変化に流体がどのように応答するかに影響を与えうる試験システム1000の構成要素の経年劣化やその他の要因を考慮に入れるために、試験システム1000の動作を調整できるようにするための(表示される)情報を提示する。別の実施例では、プロセッサ1510は、ポンプ1160の抵抗の異なる動作状態に対する特定された温度応答に基づいて、温度調節状態にある該抵抗の動作をプロセッサ1510が制御するやり方を自動的に調整する。たとえば、1実施例では、プロセッサ1510は、流体サンプルとポンプ1160の抵抗との間の特定されて格納されている熱応答関係に基づいて、該抵抗を、「オン」状態と「オフ」状態間で(切り替えて)作動させ、または、異なる「オン」動作状態間で(切り替えて)作動させる予め決められたスケジュールを調整する。別の実施例では、プロセッサ1510は、プロセッサ1510が、温度センサー1175から受け取った温度信号にリアルタイムで応答するやり方を制御する手法を調整する。
【0116】
図示の例では、モバイルアナライザー1232は、タブレット型コンピューターから構成されるものとして示されているが、他の実施例では、モバイルアナライザー1232は、スマートフォンやラップトップコンピューターやノートブックコンピューターから構成される。さらに他の実施例では、モバイルアナライザー1232は、デスクトップコンピューターやオールインワンコンピューターなどの据置型のコンピューティング装置で置き換えられる。
【0117】
リモートアナライザー1300は、モバイルアナライザー1232から遠隔に配置されたコンピューティング装置である。リモートアナライザー1300にはネットワーク1500を介してアクセス可能である。リモートアナライザー1300は、追加の処理能力/速度、追加のデータ記憶、及び追加のデータソースを提供し、さらに、いくつかの状況では、アプリケーションもしくはプログラムの更新(アップデート)を提供する。(概略的に図示されている)リモートアナライザー1300は、通信インターフェース1600、プロセッサ1602、及びメモリ(記憶装置)1604を備えている。通信インターフェース1600は、ネットワーク1500を介するリモートアナライザー1300とモバイルアナライザー1232間の通信を容易にする送信機を備えている。プロセッサ1602は、メモリ1604に含まれている命令を実行する処理ユニットを備えている。メモリ1604は、プロセッサ1602の動作を指示する機械可読命令もしくはコードもしくはプログラム論理(プログラムロジック)もしくは符号化された論理(ロジック)を含む非一時的なコンピューター可読媒体から構成される。メモリ1604はさらに、システム1000によって実行された流体試験からのデータまたは結果を格納することができる。
【0118】
図5にさらに示されているように、メモリ1512はさらに、バッファモジュール1530、データ処理モジュール1532、及びプロットモジュール1534を備えている。モジュール1530、1532、及び1534は、プロセッサ1510に、図20に示されているマルチスレッド流体パラメータ処理方法を実行するように協働して指示するプログラムやルーチンなどを含んでいる。図20は、プロセッサ1510による単一のデータ受信スレッド1704の受け取り及び処理を説明している。1実施例では、マルチスレッド流体パラメータ処理方法1700は、複数のデータセットが同時にないし並行して受信される複数の同時データ受信スレッドの各々について、プロセッサ1510によって同時にないし並行して実行される。たとえば、1実施例では、プロセッサ1510は、電気パラメータ、熱パラメータ、及び光パラメータに関するデータセットを表すデータ信号を同時にまたは並行して受信する。受信される異なるパラメータのデータセットもしくは一連の信号の各々について、プロセッサ1510は、方法1700を同時にまたは並行して実行する。かかるデータセットは全て、同時にないし並行して、受信され、バッファリングされ、及び分析されて、その後、モバイルアナライザー1232にプロットされるかまたはその他のやり方で提示ないし表示される。
【0119】
プロセッサ1510は、血液サンプルなどの流体サンプルの試験中に、同時にまたは並行してデータ受信スレッド1704を実行し、この場合、少なくとも1つの流体特性を示す信号がプロセッサ1510によって受信される。1実施例では、データ受信スレッド1704にしたがってプロセッサ1510によって受信された信号は、基本データを含んでいる。本開示では、「基本データ」、「基本信号」、「基本流体パラメータデータ」、もしくは「基本流体パラメータ信号」という用語は、増幅や、雑音のフィルタリングもしくは除去や、アナログ−デジタル変換、さらに、インピーダンス信号の場合には直交振幅変調(QAM)といった、信号の使用を容易するためだけに変更を受けた流体センサー1138からの信号を指している。QAMは、験対象デバイス(特定のセンサー1138)のインピーダンスによって引き起こされた実際の位相シフトを識別できるように、無線周波数(RF)成分を利用して該周波数成分を取り出す。
【0120】
1実施例では、データ受信スレッド1704の実行中にプロセッサ1510によって連続的に受信される信号は、電界領域を通る流体の流れに起因して生じる電気インピーダンスの変化を示す電気インピーダンス信号を含んでいる。データ受信スレッド1704の実行中にプロセッサ1510によって連続的に受信される信号は基本データを含んでいるが、これは、それらの信号が、上記のようなそれらの信号の後続の使用及び処理を容易にするための種々の変更を受けていることを意味する。1実施例では、プロセッサ1510によって実行されるデータ受信スレッド1704は、少なくとも500kHzの速さで基本インピーダンスデータもしくは基本インピーダンス信号を受信する。
【0121】
データ受信スレッド1704の下での基本流体パラメータ信号の受信中に、バッファモジュール1530は、所定の時間量の基本信号を繰り返しバッファリングするかまたは一時的に格納するようにプロセッサ1510に指示する。図示の例では、バッファモジュール1530は、1秒の時間間隔中すなわち1秒間中に受け取った全ての基本流体パラメータ信号を、メモリ1512などのメモリもしくは別のメモリに繰り返しバッファリングするかまたは一時的に格納するようにプロセッサ1510に指示する。他の実施例では、該所定の時間量の基本信号は、それより短いかまたは長い時間期間中に受け取った全ての基本流体パラメータ信号を含む。
【0122】
所定の時間量の信号の各々のバッファリングが完了すると、データ処理モジュール1532は、関連する及びたった今(受信を)完了した該時間量の基本流体パラメータ信号中のバッファリングされている基本流体パラメータ信号の各々に対して実行されるデータ処理スレッドを開始して実行するようにプロセッサ1510に指示する。図20の例に示されているように、インピーダンス信号などの基本流体パラメータ信号が、第1の所定の時間期間1720中にカセットインターフェース1200から受信されてバッファリングされた後で、データ処理モジュール1532は、時刻1722において、第1のデータ処理スレッド1724を開始するようにプロセッサ1510に指示して、その間に、時間期間1720中に受け取った基本流体パラメータ信号の各々が処理または分析されるようにする。本開示では、基本流体パラメータ信号に関する「処理」するまたは「分析」するという用語は、増幅や雑音の低減もしくは除去や変更などの作用を行うこと以外にも、いくつかの手法などを適用することによって基本流体パラメータ信号に対して追加の操作を行って、試験対象の流体の実際の特性を決定ないし推定することを意味する。たとえば、基本流体パラメータ信号を処理または分析することは、該信号を用いて、ある時刻にまたはある特定の時間期間中に流体中の個々の細胞の数を推定ないし決定すること、または、細胞のサイズなどの細胞または流体自体のその他の物理的特性を推定ないし決定することを含む。
【0123】
同様に、流体試験装置からの流体パラメータ信号が、第1の時間期間1720に連続して後続する第2の所定の時間期間1726中に受信されてバッファリングされた後で、データ処理モジュール1532は、時刻1728において、第2のデータ処理スレッド1730を開始するようにプロセッサ1510に指示して、その間に、時間期間1726中に受け取った基本流体パラメータ信号の各々が処理または分析されるようにする。図20及び該図中のデータ処理スレッド1732(データ処理スレッドM)に示されているように、データ受信スレッド1704が、カセットインターフェース1200から流体パラメータデータ信号を連続して受信するときに、所定の時間量の信号をバッファリングし、次に、該時間量もしくは時間期間の満了時に該時間期間中に受信した信号に作用しまたは該信号を処理するために関連するデータスレッドを開始するという説明したサイクルが連続的に繰り返される。
【0124】
図20に示されているように、それぞれのデータ処理スレッドが完了すると、処理された信号またはデータ結果が、データプロットスレッド1736に渡される(すなわち送られる)。図示の例では、時間期間1720中に受け取られた流体パラメータ信号の処理が時刻1740に完了すると、かかる処理または分析からの結果もしくは処理データが、データプロットスレッド1736に送られ、それらの結果は、プロットモジュール1534の指示の下でデータプロットスレッド1736によって実行されている進行中のプロット処理に組み込まれる。同様に、時間期間1726中に受け取られた流体パラメータ信号の処理が時刻1742に完了すると、かかる処理または分析からの結果もしくは処理データが、データプロットスレッド1736に送られ、それらの結果は、プロットモジュール1534の指示の下でデータプロットスレッド1736によって実行されている進行中のプロットに組み込まれる。
【0125】
図20に示されているように、それぞれのデータ処理スレッド1724、1730は、所定の時間量の基本信号を処理するために最大量の時間を費やすが、この場合、所定の時間量の信号を処理するためのこの最大の時間量は、該所定の時間量そのものよりも大きい。図20に示されているように、モバイルアナライザー1232は、流体試験中に受け取った流体パラメータ信号の処理をマルチスレッド処理することにより、受信される複数の信号をリアルタイムで並行して処理し、プロットモジュール1534によってリアルタイムでのそれらの結果のプロットを容易にし、長時間の後れを回避または低減することによってモバイルアナライザーとして機能する。プロセッサ1510が、プロットモジュール1534に含まれている命令にしたがって、ディスプレイ1506にデータプロットスレッドの結果を表示する一方で、データ受信スレッド1704は、流体パラメータ信号の受信及びバッファリングを継続する。
【0126】
プロセッサ1510はさらに、データ処理スレッド1724、1730、…、1732によって生成されたデータを、ネットワーク1500を介してリモートアナライザー1300に送る。1実施例では、プロセッサ1510は、関連するデータ処理スレッドにおいて実行された処理の結果を含むデータを、データ処理スレッドの結果が該データ処理スレッドの実行中に生成されるように連続的に、リモートアナライザー1300に送る。たとえば、データ処理スレッド1724の実行中の時刻1740に生成された結果は、データ処理スレッド1730が終了する時刻1742まで待つのではなく、ただちに、リモートアナライザー1300に送られる。別の実施例では、プロセッサ1510は、特定のデータ処理スレッドが完了または終了した後に、データを一括して送る。たとえば、1実施例では、プロセッサ1510は、時刻1740において、データ処理スレッド1724の全ての結果を一括してリモートアナライザー1300に送り、同時に、それらの結果は、データプロットスレッド1736に送られる。
【0127】
リモートアナライザー1300のプロセッサ1602は、メモリ1604によって提供される命令にしたがって、受信したデータを分析する。プロセッサ1602は、分析の結果である分析されたデータをモバイルアナライザー1232に返す。モバイルアナライザー1232は、リモートアナライザー1300から受信した該分析されたデータをディスプレイ1506に表示するかまたはその他のやり方で提示し、または、目で見ることができるやり方かまたは耳で聞くことができるやり方を含む他のやり方で結果を伝える。
【0128】
1実施例では、リモートアナライザー1300は、モバイルアナライザー1232から、該アナライザー1232によって既に分析または処理されたデータを受信する。この場合、モバイルアナライザー1232は、カセット1010から受け取った基本流体パラメータ信号または基本流体パラメータデータに対して何らかの形態の操作を既に実行している。たとえば、1実施例では、モバイルアナライザー1232は、基本流体パラメータデータもしくは信号に対して第1のレベルの分析または処理を実行する。たとえば、センサーを通り過ぎる細胞の数を与えるインピーダンス分析が該モバイルアナライザーで行われる。次に、かかる処理の結果が、リモートアナライザー1300に送られる。リモートアナライザー1300は、モバイルアナライザー1232から受け取った結果に対して第2のレベルの分析または処理を行う。該第2のレベルの分析は、モバイルアナライザー1232から受け取った結果に対して、追加の手法や統計的計算などを適用することを含むことができる。リモートアナライザー1300は、モバイルアナライザー1232において何らかの形態の処理または分析を既に受けているデータに対して、追加のより複雑でより時間がかかるか、または処理能力に対する負荷がより大きい処理または分析を実行する。リモートアナライザー1300において実行されるかかる追加の分析の例には、限定はしないが、凝固(凝結)速度の計算、及び、傾向を見出して有意な提案を提供するために種々のモバイルアナライザーから収集されたデータに対する分析が含まれる。たとえば、リモートアナライザー1300は、大きな地理的領域にわたって数人の患者からデータを集めて、疫学調査を容易にし及び病気の広がりを明らかにすることができる。
【0129】
例示的な実施例を参照して本開示を説明したが、当業者には、特許請求の範囲の主題の思想及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部において変更を行うことが可能であることが理解されよう。たとえば、異なるそれぞれの実施例が、利益をもたらす特徴を含むものとして説明されている場合があるが、説明した特徴を、説明した実施例または他の代替の実施例において、互いと交換することができることまたは互いに組み合わせることができることが考慮されている。本開示の技術は比較的複雑であるので、該技術における全ての変更を予測できるわけではない。いくつかの実施例を参照して説明され及び特許請求の範囲に記載された本開示は、可能限り広義のものであることが明白に意図されている。たとえば、特に明示のない限り、単一の特定の要素を記載している請求項に係る発明は、複数のそのような特定の要素も含んでいる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
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図13
図14
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図18
図19
図20