特許第6483282号(P6483282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483282クロムを含まない近赤外線反射デラフォサイト顔料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483282
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】クロムを含まない近赤外線反射デラフォサイト顔料
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/00 20060101AFI20190304BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C09C3/00
   C01G49/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-556864(P2017-556864)
(86)(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公表番号】特表2018-517805(P2018-517805A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】US2016028577
(87)【国際公開番号】WO2016176102
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】62/154,264
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511193592
【氏名又は名称】ザ シェファード カラー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】コムストック・マシュー・シー
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−156130(JP,A)
【文献】 特開平11−138016(JP,A)
【文献】 特開2000−031463(JP,A)
【文献】 特開2014−192306(JP,A)
【文献】 特表2009−544820(JP,A)
【文献】 特開2010−065201(JP,A)
【文献】 特開2002−331611(JP,A)
【文献】 Journal of Materials Science,2013年12月,48巻,8077−8083
【文献】 INTEGRATED FERROELECTRICS,2014年,156巻,102−114
【文献】 THE,JOERNAL,OF PHYSICAL CHEMISTRY,2012年,115巻,1865−1872
【文献】 Materials Letters,2015年,143巻,91−93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/00
C01G 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線反射顔料としての、式A(Fe1−x)Oを有する鉄置換固溶体デラフォサイトの使用であって、
Aは、Cu、Ag、Li、Na、K、またはCu、Ag、Li、Na、Kのイオンの混合物から選択され、
Mは、B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物であり、
xは0.01〜1.00である、使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用において、
AはCuである、使用。
【請求項3】
請求項1に記載の使用において、
MはAlである、使用。
【請求項4】
請求項1に記載の使用において、
MはGaである、使用。
【請求項5】
請求項1に記載の使用において、
前記鉄置換固溶体デラフォサイトは、式CuFe1−xを有する鉄置換固溶体銅デラフォサイトであり、
式中、xは0.01〜1.00である、使用。
【請求項6】
請求項1または5に記載の使用において、
Mは、Al、Ga、In、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物である、使用。
【請求項7】
請求項1に記載の使用において、
前記鉄置換固溶体デラフォサイトは、式Cu(FeAl1−x)Oを有する鉄置換固溶体銅デラフォサイトであり、
式中、xは0.01〜1.00である、使用。
【請求項8】
請求項7に記載の使用において、
xは0.01〜0.50である、使用。
【請求項9】
請求項1に記載の使用において、
前記鉄置換固溶体デラフォサイトは、式Cu(FeGa1−x)Oを有する鉄置換固溶体銅デラフォサイトであり、
式中、xは0.01〜1.00である、使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用において、
xは0.01〜0.50である、使用。
【請求項11】
請求項1に記載の使用において、
前記鉄置換固溶体デラフォサイトは、式CuFe0.15Ga0.85を有する、使用。
【請求項12】
式CuFe0.15Ga0.85を有する近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔背景〕
日射反射率が高い表面は、日光に当たったとき、より吸収性のある表面よりも冷たい。コーティング、壁板、および屋根材のようなさまざまな基板において、太陽放射を散乱させ反射する顔料を使用することは、ヒートアイランド現象を軽減し(mediate)、熱に関連する機械故障を軽減し、かつ冷却に対するエネルギー需要を減少させるのに役立ち得る。太陽放射照度波長の大部分にわたって反射する白色顔料は、最適なレベルの日射反射率をもたらす。しかしながら、太陽放射照度の大部分は、780nm超の近赤外領域(NIR)に該当する。色が暗く、400〜780nmの可視領域では吸収するものの、780〜2500nmの近赤外領域で日光を反射する、錯体無機顔料がいくつかあり、例えば、クロム鉄ニッケルブラックスピネル(Chrome Iron Nickel Black Spinel)、CIピグメントブラック30、ならびに、CIピグメントグリーン17、ブラウン29、およびブラウン35としてさまざまに認定された、鉄クロムブラウン‐ブラック(Iron Chromium Brown-Blacks)である。白色顔料ほど反射しないが、これらの近赤外線反射顔料により、色の融通性(color flexibility)が高まり、太陽放射照度の波長にわたりさらに強力に吸収する顔料を使用する場合よりも、冷たい表面を提供することができる。
【0002】
多くの近赤外線反射顔料、例えば鉄クロムブラウン‐ブラックは、三価クロムを含有する。場合によっては、クロムを含有する顔料には、無視できないレベルの六価クロムが存在している。健康および規制の問題を回避するためには、同様の色および反射特性を提供するがクロムを含有しない、代替顔料を有することが有用である。本明細書に記載するテクノロジーは、クロムを含まない近赤外線反射黒色顔料である。
【0003】
〔概要〕
本テクノロジーは、鉄置換銅アルミニウムデラフォサイト顔料(iron-substituted copper aluminum delafossite pigment)、ならびにそのガレート型(gallate version)に関する。この物質は、一般式ABOを有し、式中、Aは一価であり、Bは三価であり、二配位のA原子によって分離された8面体配位のB原子の交互層のパターンを有している。具体的には、この物質は、xが0.01〜1.00である式Cu(FeAl1−x)Oを有し得る、近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料、およびxが0.01〜0.50である式Cu(FeAl1−x)Oを有し得る、近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料、として定義され得る。対応する近赤外線反射鉄置換固溶体銅ガレートデラフォサイト顔料(near-infrared reflecting, iron-substituted solid solution copper gallate delafossite pigments)は、xが0.01〜1.00である式Cu(FeGa1−x)Oを有し、また、xが0.01〜0.50である式Cu(FeGa1−x)Oを有することができる。
【0004】
他の近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料は、xが0.01〜1.00の式CuFe1−xを有してよく、式中、Mは、B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物である。さらに、Mは、Al、Ga、In、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物であってよい。
【0005】
他の近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料は、式A(Fe1−x)Oを有してよく、式中、Aは、Cu、Ag、Li、Na、K、またはイオンCu、Ag、Li、Na、Kの混合物から選択され、Mは、AlまたはGaであってよい。Xは、0.01〜1.00の範囲であってよい。Mはやはり、B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物であってよい。Mは、Al、Ga、In、およびこれらの混合物を含む三価イオンに制限されてもよい。Mは、電荷補償比(charge compensated ratios)の一価イオン、二価イオン、四価イオン、五価イオン、および六価イオンを、平均酸化状態がM3+であり、電荷的中性が維持されるような比率で、さらに含んでよく、一価イオンは、Li、Na、K、またはこれらの混合物であってよく、二価イオンは、Mn、Co、Ni、Mg、Ca、Zn、またはこれらの混合物であってよく、四価イオンは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、またはこれらの混合物であってよく、五価イオンは、Sb、Bi、V、Nb、またはこれらの混合物であってよく、六価イオンは、Mo、W、またはこれらの混合物であってよい。
【0006】
〔詳細な説明〕
溶質金属酸化物の金属イオンが金属酸化物溶媒の格子サイトに組み込まれる際に、金属酸化物の置換型固溶体が形成される。均一な固溶体相の形成は、金属イオンの酸化状態、イオン半径、および電気陰性度、ならびに溶質および溶媒金属酸化物の結晶構造を含む、多くの要因のバランスに依存している。場合によっては、固溶体は、CrとAlとの反応から形成される固溶体(CrAl1−xなど、2つの端成分の酸化物の組成範囲全体にわたって形成されることができ、ここでxは0〜1で変化する。他の場合には、固溶体は、所与の範囲X内でのみ、均一相を形成する。CuAlOおよびCuFeOはいずれも、ABOデラフォサイト構造で結晶化し、Al3+およびFe3+のイオン半径は、サイズが似ている。アルミニウム試薬と、鉄試薬と、銅試薬との均質化された出発物質混合物を高温でか焼して、xが0〜1で変化するCu(FeAl1−x)OのABO構造内でFeおよびAlの双方がBサイトに存在する固溶体が形成される。同様に、ガリウム試薬、鉄試薬、および銅試薬は、Cu(FeGa1−x)Oの形態の固溶体生成物をもたらす。AサイトにおけるAg、Pt、もしくはPdなどの一価の陽イオンとの置換により生じる固溶体も、デラフォサイト系では観察されている。
【0007】
溶媒金属酸化物中のサイトにおける同じ酸化状態の金属イオンとの置換は、等原子価置換である。異原子価置換された固溶体では、元の金属酸化物溶媒構造中のイオンは、異なる電荷のイオンと置換される。これにより、陽イオンもしくは陰イオン空格子点、または構造内の通常未実装の空孔(normally unpopulated holes)への侵入的な(interstitially)電荷平衡イオン(charge balancing ions)の組み込みがもたらされ得る。あるいは、2つ以上の金属イオンによる異原子価置換は、電荷平衡を維持することができる。例えば、2つのAl3+イオンを1つのZn2+イオンおよび1つのTi4+イオンで置換することができ、これら2つの金属全体の平均酸化状態はM3+のままであり、電荷的中性が維持される。
【0008】
等原子価および異原子価置換ならびに固溶体の形成は、溶媒金属酸化物の電子的性質に影響を及ぼす場合があり、固溶体は、非置換の金属酸化物とは異なる特性を示し得る。例えば、固溶体のバンド構造および光吸収スペクトルは、溶質または溶媒金属酸化物のものとは異なり得る。Fe3+が等原子価イオンAl3+またはGa3+を置換した、デラフォサイト固溶体Cu(FeAl1−x)OおよびCu(FeGa1−x)Oは、非置換のCuAlOおよびCuGaO物質と比べて可視領域にわたるさらなる吸収特徴を示す。さらに、Fe3+によるAl3+またはGa3+の等原子価置換と共に、例えば2つのAl3+イオンが1つのZn2+イオンおよび1つのTi4+イオンで置換されるなど、2つ以上の金属イオンで同時に異原子価置換すると、等原子価置換された物質と比べて生成物の電子構造および結果として生じる吸収特徴にさらなる影響を及ぼし、また、バンドギャップを移行させ、かつ結果として得られる顔料の色および反射特性をさらに調整する能力を与えることができる。
【0009】
本テクノロジーは、鉄置換銅アルミニウムデラフォサイト顔料、およびそのガレート型を対象としている。特に、これらの物質は、鉄置換固溶体銅アルミニウムデラフォサイトCuFeAl1−xおよびガレートCuFeGa1−xとして定義されてよく、xは0.01〜1.00である。CuFeAl1−xおよびCuFeGa1−x顔料は、暗褐色から黒色であり、ほぼ1.5eVのバンドギャップを示し、可視スペクトルにおける大部分の光を吸収し、また、近赤外領域、特に約700nm〜2500nmの光において、低い吸光度および高い反射率を有している。これらの特性は、ASTM E903により判定されるように、全日射反射率(TSR)値において定量化され、CuFeAl1−xおよびCuFeGa1−x顔料は、太陽放射照度波長にわたり、より多く吸収する顔料より高いTSR値を有している。反射率は、CuFeAl1−xおよびCuFeGa1−x顔料について、ほぼ1000nmで極大に達する。バンドギャップがほぼ1.0eVである鉄クロムブラウン‐ブラック顔料も、700nm付近から反射率の上昇を示し始めるが、反射率曲線は、波長が高くなるにつれて、より緩やかに上昇し、1300nm付近で極大反射率に到達するにすぎない。太陽放射照度は可視領域により近い波長でより高くなるので、CuFeAl1−xおよびCuFeGa1−x物質は、この領域で吸収する顔料よりも多くの太陽エネルギーを反射する。より具体的には、CuFeAl1−xおよびCuFeGa1−x物質は、700nm付近で始まり1150nm以上まで広がる領域で、従来的な業界標準の近赤外線反射鉄クロムブラウン−ブラック顔料より光の吸収が少なく、光の反射が多い。
【0010】
金属酸化物が完全な化学量論から逸脱することは珍しくなく、すなわち、式ABOにおける元素比率は変化し得る(A、B、およびOそれぞれの1:1:2の想定比率は変化し得る)が、この物質は依然として同じ構造を示す。これらの不定比の欠陥構造は、本テクノロジーの範囲内であり、明細書および請求項全体を通じて想定されるべきである。
【0011】
以下の形態の置換は、本テクノロジーの範囲内であると考えられる:
デラフォサイト構造を有するABO型の混合酸化物であり、
1. A=一価のM、および/または一価のMイオンの混合物、
2. B=Fe3+と、他の三価のM3+イオンとの混合物、
3. B=平均酸化状態がM3+であり、電荷的中性が維持されるような比率での、Fe3+と、他の三価のM3+イオンとの、および他の金属との、混合物、である。
【0012】
以下は、鉄置換銅アルミニウムデラフォサイト顔料の実施例である。以下のリストは、包括的なものではない。
1. CuFe0.15Al0.85
2. CuFe0.15Ga0.85
3. CuFeAl1−x
a. x=0.01〜1.00
4. CuFeGa1−x
a. x=0.01〜1.00
5. CuFe1−x
a. x=0.01〜1.00
b. M=B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物
6. CuFe1−x
a. x=0.01〜1.00
b. M=平均酸化状態がM3+であり、電荷的中性が維持されるような比率での、三価のM3+イオンと他の金属との混合物
7. Ag、Li、Na、Kを含む他の一価金属で部分的にまたは全体的にCuを置換した、前記の式すべて。
【0013】
〔実施例〕
実施例1
Cu:Al:Feのモル比が1.00:0.85:0.15である、167.1gの酸化銅(I)(CuO)と、154.9gの水酸化アルミニウム(Al(OH))と、28.0gの酸化鉄(III)(Fe)の混合物を、管状炉において流動アルゴン下で、1050℃で6時間、均質化およびか焼した。得られた291.0gを化合させ(combined)、250g部分をジェットミルにかけて、Microtrac S3500レーザー散乱装置で測定したD50粒径が1.02μm(粒子の50%は1.0μmを下回る)の実施例1を生じ、CuFe0.15Al0.85の式の実施例1を得た。
【表1】
【0014】
実施例2〜10
以下の表に記載するようなモル比および試薬の質量を用いて、一連のサンプルを準備した。試薬の混合物を、管状炉において流動アルゴン下で、1050℃で6時間、均質化およびか焼して、式CuFeAl1−xの実施例2〜10を得た。以下の表2に示すとおり、x=0.01〜0.50である。
【表2】
【0015】
実施例11
Cu:Ga:Feのモル比が1.00:0.85:0.15である、1.32gの酸化銅(I)(CuO)と、1.47gの酸化ガリウム(Ga)と、0.22gの酸化鉄(III)(Fe)との混合物を、管状炉において流動アルゴン下で、1200℃で6時間、均質化およびか焼して、CuFe0.15Ga0.85の式の実施例11を得た。
【0016】
X線粉末回折データ:
X線粉末回折測定を、室温で、リガクのX線回折計を用いて、Cu−Kα線により、40kV、40mAで、2θ=10°〜75°までを1°/分で行った。粉末回折測定は、実施例1〜11について行った。実施例1〜11で示される主要な構造は、ピークをCuAlOまたはCuGaOパターンと比較することにより特定される、予想されたCu(Fe,M)O相(M=Al,Ga)であった。微量相(Trace phases)にはCu金属、およびAlまたはGaが含まれた。表3は、実施例1〜11について観察した位相成分を示す。
【表3】
【0017】
色価、%TSR、およびバンドギャップ
【表4】
【表5】
【0018】
例示的な実施例:実施例1と他の顔料との調製用ブレンド
産業的利用においては、所望の色合いを得るために顔料の混合物を使用するのが一般的である。黒色顔料を深緑色の顔料に加えることは、暗緑色またはオリーブ色の迷彩色にする1つの手段である。Shepherd Color顔料GR0410(CIピグメントグリーン26 コバルトクロマイトスピネル(Cobalt Chromite Spinel))および実施例1の双方が、700〜1100nmの領域で高い反射率を有している。逆に、標準的な近赤外線顔料BK0010P922(CIピグメントグリーン17 クロムグリーン‐ブラックヘマタイト(Chromium Green-Black Hematite))は、この領域では、反射が少なく、より強力に吸収する。その結果、実施例1を用いたGR0410の調製用ブレンドは、GR0410とBK0010P922とのブレンドに比べて、同様の色を有するが、表では760nmで定量化されている700〜1100nm領域で、より高い反射率を有しており、また、高い全日射反射率を有する。
【表6】
【0019】
〔実施の態様〕
(1) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式Cu(FeAl1−x)Oを有し、
式中、xは0.01〜1.00である、顔料。
(2) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式Cu(FeGa1−x)Oを有し、
式中、xは0.01〜1.00である、顔料。
(3) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式Cu(FeAl1−x)Oを有し、
式中、xは0.01〜0.50である、顔料。
(4) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式Cu(FeGa1−x)Oを有し、
式中、xは0.01〜0.50である、顔料。
(5) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式CuFe0.15Al0.85を有する、顔料。
【0020】
(6) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式CuFe0.15Ga0.85を有する、顔料。
(7) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式CuFe1−xを有し、
式中、xは0.01〜1.00である、顔料。
(8) 実施態様7に記載の顔料において、
Mは、B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物である、顔料。
(9) 実施態様7に記載の顔料において、
Mは、Al、Ga、In、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物である、顔料。
(10) 近赤外線反射鉄置換固溶体銅デラフォサイト顔料において、
式A(Fe1−x)Oを有する、顔料。
【0021】
(11) 実施態様10に記載の顔料において、
Aは、Cu、Ag、Li、Na、K、またはイオンCu、Ag、Li、Na、Kの混合物から選択されている、顔料。
(12) 実施態様10に記載の顔料において、
AはCuである、顔料。
(13) 実施態様10に記載の顔料において、
MはAlである、顔料。
(14) 実施態様10に記載の顔料において、
MはGaである、顔料。
(15) 実施態様10に記載の顔料において、
xは0.01〜1.00である、顔料。
【0022】
(16) 実施態様10に記載の顔料において、
Mは、B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物である、顔料。
(17) 実施態様10に記載の顔料において、
Mは、Al、Ga、In、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物である、顔料。
(18) 実施態様10に記載の顔料において、
Mは、B、Al、Sc、V、Cr、Mn、Ga、Y、Nb、In、Sb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、およびこれらの混合物を含む、三価のM3+イオンまたは三価イオンの混合物であり、
Mは、電荷補償比の一価イオン、二価イオン、四価イオン、五価イオン、および六価イオンを、平均酸化状態がM3+で、かつ電荷的中性が維持されるような比率で、さらに含み、
前記一価イオンは、Li、Na、K、またはこれらの混合物であり、
前記二価イオンは、Mn、Co、Ni、Mg、Ca、Zn、またはこれらの混合物であり、
前記四価イオンは、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、またはこれらの混合物であり、
前記五価イオンは、Sb、Bi、V、Nb、またはこれらの混合物であり、
前記六価イオンは、Mo、W、またはこれらの混合物である、顔料。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1のCuFe0.15Al0.85、近赤外線反射鉄クロム酸化物ブラウン‐ブラック顔料のShepherd Color BK0010C909AおよびBK0010P923、ならびに近赤外線反射ニッケル鉄酸化物顔料のShepherd Color BK0010C924の圧粉の反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。
図2】実施例1のCuFe0.15Al0.85、近赤外線反射鉄クロム酸化物ブラウン‐ブラック顔料のShepherd Color BK0010C909AおよびBK0010P923、ならびに近赤外線反射ニッケル鉄酸化物顔料のShepherd Color BK0010C924の、PVDF/アクリル性マストーンのドローダウンの反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。
図3】実施例2、6、8、9、10の、xがそれぞれ0.01、0.05、0.15、0.25、0.50であるCuFeAl1−xの圧粉の反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。xが大きくなるにつれて、バンドギャップは、より低いエネルギーへと移行している。これにより、吸収領域が、より低いエネルギーまで広がる。
図4】実施例1のCuFe0.15Al0.85および実施例11のCuFe0.15Ga0.85の圧粉の反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。ガリウムを含有する実施例11のバンドギャップは、Alを含有する実施例1と比べて、低いエネルギーに移行している。これにより、実施例11の吸収領域が、実施例1と比べて、より低いエネルギーまで広がる。
図5】実施例1のCuFe0.15Al0.85、Shepherd Color GR0410、およびShepherd Color BK0010P922のアクリル性マストーンの反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。
図6】Shepherd Color GR0410および実施例1のCuFe0.15Al0.85、ならびに実施例1とShepherd Color GR0410との調製用ブレンド1および3のアクリル性マストーンの反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。
図7】Shepherd Color GR0410およびShepherd Color BK0010P922、ならびにShepherd Color BK0010P922とShepherd Color GR0410との調製用ブレンド5および7のアクリル性マストーンの反射スペクトル(%R対nm)のオーバーレイである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7