特許第6483287号(P6483287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483287マルチキャリア通信システムにおいて周波数利用効率を向上させるためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483287
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】マルチキャリア通信システムにおいて周波数利用効率を向上させるためのシステム
(51)【国際特許分類】
   H04J 14/02 20060101AFI20190304BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H04J14/02 198
   H04L27/26 114
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-561694(P2017-561694)
(86)(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公表番号】特表2018-526842(P2018-526842A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016044550
(87)【国際公開番号】WO2017019898
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】14/813,756
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダングイ,ビナヤック
(72)【発明者】
【氏名】コーリー,ビカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブシリカラ,ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマイスター,ラルフ・シオドア
【審査官】 鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−051541(JP,A)
【文献】 特開2014−078834(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0145063(US,A1)
【文献】 Rong Hu, et al.,Direct-detection optical OFDM superchannel for long-reach PON using pilot regeneration,Optics Express,The Optical Society,2013年,Vol.21, Issue 22,pp.26513-26519
【文献】 Xingwen Yi, et al.,Tb/s Coherent Optical OFDM Systems Enabled by Optical Frequency Combs,Journal of Lightwave Technology,IEEE,2010年 7月,Volume.28, Issue:14,pp.2054-2061
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/02
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送受信器であって、
光リンクに連結された光送信器と、
前記光リンクに連結された光受信器とを備え、
前記光送信器は、
周波数軸上に等間隔に並んだ複数の送信器側搬送信号を生成するように構成された送信器側光コム発生器を含み、
任意の2つの隣接する送信器側搬送信号の間の周波数間隔は、複数の送信器側変調搬送信号の各々について変調されたデータのボーレートよりも小さく、
前記送信器側光コム発生器は、リモート送信器から受信する第1パイロット搬送信号を使用して、前記複数の送信器側搬送信号を生成し、
前記光送信器は、さらに、
前記第1パイロット搬送信号を使用して生成された前記複数の送信器側搬送信号のうちの第1部分の各々にのせてデータを変調して、前記複数の送信器側変調搬送信号を生成するように構成された変調器を含み、
前記光送信器は、前記複数の送信器側搬送信号のうちの第2部分、および、前記複数の送信器側変調搬送信号を、前記光リンクを介して前記リモート送受信器に送信するように構成され、前記第2部分は前記第1部分から独立しておりかつ前記リモート送受信器の光受信器によって複数の搬送信号を生成するために用いられ
前記光受信器は、
第2パイロット搬送信号および複数の変調搬送信号を、前記リモート送受信器から受信するように構成され、
前記光受信器は、
前記第2パイロット搬送信号を利用して複数の受信器側搬送信号を生成するように構成された受信器側光コム発生器を含み、
前記複数の受信器側搬送信号は、周波数軸上に等間隔に並んでおり、
前記複数の受信器側搬送信号の各々は、前記複数の受信した変調搬送信号のうちの1つと同じ周波数を有し、
前記光受信器は、さらに、
複数の光混合器を含み、各光混合器は、前記複数の受信器側搬送信号のうちの1つを、前記複数の受信した変調搬送信号のうちの対応する1つと混合して、出力信号のセットを生成するように構成され、
前記光受信器は、さらに、
前記出力信号のそれぞれの振幅および位相に基づいて前記出力信号のセットを復調して出力データを生成するように構成された復調器を含む、光送受信器。
【請求項2】
前記光送信器は、さらに、前記複数の送信器側変調搬送信号と前記複数の送信器側搬送信号のうちの前記第2部分とを、前記光リンクを介して合波するように構成された合波器を含む、請求項1に記載の光送受信器。
【請求項3】
前記光受信器は、さらに、前記第2パイロット搬送信号と前記複数の受信した変調搬送信号とを分波するための分波器を含む、請求項1または2に記載の光送受信器。
【請求項4】
前記復調器は、さらに、前記出力信号のセットをデジタル化し、復調前に波長分散補償を行うために、前記デジタル化された出力信号のセットを処理するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光送受信器。
【請求項5】
光リンクに連結され、前記光リンクを介してパイロット搬送信号および複数の変調搬送信号を受信する光受信器であって、
前記パイロット搬送信号を利用して複数の受信器側搬送信号を生成するように構成された受信器側光コム発生器を備え、各受信器側搬送信号は、受信された変調搬送信号のそれぞれと同じ周波数を有し、任意の2つの隣接する受信器側搬送信号の間の周波数間隔は、前記複数の変調搬送信号の各々について変調されたデータのボーレートよりも小さく、前記複数の受信器側搬送信号の各々は、前記複数の変調搬送信号のうちの1つの搬送周波数と同じ周波数を有し、
複数の光混合器を備え、各光混合器は、前記複数の受信器側搬送信号のうちの1つを、前記複数の変調搬送信号のうちの対応する1つと混合して、出力信号のセットを生成するように構成され、
前記出力信号のそれぞれの振幅および位相に基づいて前記出力信号のセットを復調して出力データを生成するように構成された復調器と、
前記変調搬送信号を送信するリモート送信器に、前記受信器側搬送信号のうちの1つを、第2パイロット搬送信号として送信するための送信器とを備える、光受信器。
【請求項6】
前記複数の変調搬送信号を分波するための分波器をさらに備える、請求項5に記載の光受信器。
【請求項7】
前記受信器側光コム発生器によって生成された前記複数の受信器側搬送信号を分波するための搬送信号分波器をさらに備える、請求項5または6に記載の光受信器。
【請求項8】
前記復調器は、さらに、復調前に波長分散補償を行うために、前記出力信号のセットを処理するように構成される、請求項5〜7のいずれか1項に記載の光受信器。
【請求項9】
光信号の通信方法であって、
光リンクを介して複数の変調搬送信号を受信するステップと、
前記光リンクを介して無変調搬送信号を受信するステップと、
前記無変調搬送信号をシード信号として順に利用するコム発生器を使用して、複数の受信器側搬送信号を生成するステップと備え、任意の2つの隣接する受信器側搬送信号の間の周波数間隔は、前記複数の変調搬送信号の各々について変調されたデータのボーレートよりも小さく、
前記変調搬送信号のそれぞれの振幅および位相に基づいて、前記複数の受信器側搬送信号を用いて前記複数の変調搬送信号を復調するステップと、
前記生成された複数の受信器側搬送信号のうち1つを、前記変調搬送信号を受信した先のリモート送信器へ、当該リモート送信器が送信機側光コム発生器のためのシード信号として使用するために、光学的に伝送するステップとを備える、方法。
【請求項10】
前記光リンクを介して複数の変調搬送信号を受信するステップは、周波数軸上に等間隔に並んだ前記複数の変調搬送信号を受信するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コム発生器を使用して複数の受信器側搬送信号を生成するステップは、前記複数の受信器側搬送信号の各々が前記複数の変調搬送信号のうちの1つと同じ周波数を有するように、前記複数の受信器側搬送信号を生成するステップを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記コム発生器によって生成された前記複数の受信器側搬送信号を分波するステップをさらに備える、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の受信器側搬送信号を使用して前記複数の変調搬送信号を復調するステップは、光混合器を使用して、前記複数の変調搬送信号の各々を前記複数の受信器側搬送信号のうちの対応する1つと混合するステップを含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、通信ネットワーク分野に関し、特に、通信リンクおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
光通信システムなどの通信システムは、通信リンクを介してデータ通信を行うための送信器と受信器とを備える。高帯域幅のデータ送信通信システムは、通常、データを受信器に送信するための、より高位の変調技術を用いる。通信リンクは、ノイズおよびその他の不要なアーティファクトを、送信器と受信器との間で送信されるデータに生じさせてしまう可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
一態様によると、本開示に示す主題は、光リンクに連結された光送信器および光受信器を含む光送受信器に関する。光送信器は、周波数軸上に等間隔に並んだ複数の送信器側搬送信号を生成するように構成された送信器側光コム発生器を備える。光送信器は、さらに、複数の送信器側搬送信号のうちの第1部分の各々にのせてデータを変調して、複数の送信器側変調搬送信号を生成するように構成された変調器を備える。光送信器は、光リンクを介して、複数の送信器側搬送信号のうちの第2部分、および複数の送信器側変調搬送信号を送信するように構成され、第2部分は、第1部分から独立している。光受信器は、パイロット搬送信号および複数の受信した変調搬送信号を受信するように構成される。光受信器は、パイロット搬送信号を利用して複数の受信器側搬送信号を生成するように構成された受信器側光コム発生器を備え、複数の受信器側搬送信号は、周波数軸上に等間隔に並んでおり、複数の受信器側搬送信号の各々は、複数の受信した変調搬送信号のうちの1つと同じ周波数を有する。光受信器は、さらに、複数の光混合器を備え、各光混合器は、複数の受信器側搬送信号のうちの1つを複数の受信した変調搬送信号のうちの対応する1つと混合して、出力信号のセットを生成するように構成される。光受信器は、さらに、出力信号のセットを復調して出力データを生成するように構成された復調器を備える。
【0004】
別の態様によると、本開示に示す主題は、光リンクに連結され、光リンクを介してパイロット搬送信号および複数の変調搬送信号を受信する光受信器に関する。光受信器は、パイロット搬送信号を利用して複数の受信器側搬送信号を生成するように構成された受信器側光コム発生器を備え、複数の受信器側搬送信号の各々は、複数の変調搬送信号のうちの1つの搬送周波数と同じ周波数を有する。光受信器は、さらに、複数の光混合器を備え、各光混合器は、複数の受信器側搬送信号のうちの1つを複数の変調搬送信号のうちの対応する1つと混合して、出力信号のセットを生成するように構成され、光受信器は、さらに、出力信号のセットを復調して出力データを生成するように構成された復調器を備える。
【0005】
別の態様によると、本開示に示す主題は、光信号の通信方法に関する。方法は、光リンクを介して複数の変調搬送信号を受信するステップを含む。方法は、さらに、光リンクを介して無変調搬送信号を受信するステップを含む。また、方法は、無変調搬送信号をシード信号として順に利用するコム発生器を使用して、複数の受信器側搬送信号を生成するステップも含む。方法は、さらに、複数の受信器側搬送信号を用いて複数の変調搬送信号を復調するステップを含む。
【0006】
別の態様によると、本開示に示す主題は、通信リンクを介して通信している光送信器と光受信器とを備える通信システムを介してデータ通信を行うための方法に関する。方法は、含む。
【0007】
本明細書に示す主題の1つ以上の実装形態の詳細を、添付の図面および以下の説明に記載する。その他の特徴、態様、および利点は、本明細書、図面、および請求の範囲から明らかになるだろう。なお、以下の図面の相対的な寸法は、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】通信システム例を示す図である。
図2】別の通信システム例を示す図である。
図3】受信器の例を示すブロック図である。
図4図3に示すプロセッサのブロック図例である。
図5図2に示す受信器などの受信器によって実行するための処理例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
さまざまな図面における同様の参照番号および名称は、同様の構成要素を示す。
詳細な説明
上に紹介されたおよび以下にさらに詳細に説明するさまざまな概念は、いずれの実装方法にも限定されないので、数ある方法のうちのいずれの方法で実装されてもよい。具体的な実装形態および使用例は、主に、例示のために提供されている。
【0010】
図1は、通信システム例100を示す図である。特に、通信システム100は、通信リンク106を介して第2送受信器104と通信を行う第1送受信器102を備える。第1送受信器102および第2送受信器104の各々は、それぞれの装置と連結することができ、装置には、ネットワークスイッチ、コンピュータ、データ記憶装置、ネットワークインターフェースカード、ホストバスアダプタなどがある。第1送受信器102および第2送受信器104は、互いのそれぞれの装置同士を通信させることができる。いくつかの実装形態において、通信リンク106は、有線または無線通信リンクを含むことができる。いくつかの実装形態において、通信リンク106は、光リンクを含むことができる。
【0011】
第1送受信器102は、第1送信器108と、第1受信器110とを備えることができる。同様に、第2送受信器104は、第2送信器112と、第2受信器114とを備えることができる。第1送信器108は、第1通信リンク116を介して第2受信器114と通信することができるのに対して、第2送信器112は、第2通信リンク118を介して第1受信器110と通信することができる。いくつかの実装形態において、第1送受信器102と第2送受信器104とは、帯域外リンクを介して通信することができる。たとえば、第1送受信器102は、第1の帯域外通信リンク120を介しておよび第2の帯域外通信リンク122を介して、第2送受信器104と通信することができる。いくつかの実装形態において、第1の帯域外通信リンク120および第2の帯域外通信リンク122を利用して、通信システム100に関連する管理データを通信することができる。
【0012】
いくつかの実装形態において、通信リンク106は、光通信リンクであり得る。たとえば、第1通信リンク116および第2通信リンク118は、光信号を運ぶための光ファイバを含むことができる。第1送信器108および第2送信器112は、各々、通信リンク116および118をそれぞれ介して送信されるデータを表す光信号を送信するための回路を備えることができる。同様に、第1受信器110および第2受信器114は、第1送信器108および第2送信器112からそれぞれ送信された光信号を受信して処理するための回路を備え、データを取り出すことができる。
【0013】
通信システムの周波数利用効率は、一般的に、データを送信するために使用される帯域幅によって分割された当該データの処理量で説明される。いくつかの実装形態において、通信システムの周波数利用効率は、マルチキャリア送信システムを使用することによって改善することができる。マルチキャリア送信システムでは、別々のデータストリームを使用して、互いに異なる周波数での複数の搬送波を個別に変調し、受信器に同時に送信することができる。一般的に、複数の搬送波は、周波数領域に規則的な間隔で並ぶ。いくつかの実装形態において、互いに隣接する搬送波間のチャネル間干渉を最小限に抑えるために、搬送波は、少なくとも、当該搬送波にのせて送信されているデータのボーレートによって分離される。いくつかの実装形態において、周波数利用効率をさらに向上させるために、チャネル分離をボーレート(ナイキストまたはサブナイキスト間隔としても知られる)以下に維持することができる。たとえば、コム発生器によって生成された搬送信号であって、それらの搬送信号の周波数を実質的に一定に維持するのに良好な安定性を示す当該搬送信号は、チャネル間干渉を大幅に増やすことなく、サブナイキスト間隔で並べることができる。しかしながら、ノイズ、波長分散、および非線形といった要因は、チャネル分離を低減できる範囲を限定してしまう一因となりうる。以下に説明する図2図4の通信システムは、光送信信号に対する位相ノイズの影響を軽減させることによって、通信システムの周波数利用効率の向上を可能にすることができる。
【0014】
図2は、別の通信システム例200を示す図である。特に、通信システム200は、送信器202と、受信器204と、送信器202と受信器204とを通信可能に接続する光リンク206とを備える。送信器202は、送信器側コム発生器208と、変調器210と、合波器212とを備える。受信器204は、分波器214と、復調器216と、受信器側コム発生器218とを備えることができる。さらに後述するが、送信器側コム発生器208は、等間隔に並んだ複数の光搬送信号を生成し、当該複数の光搬送信号は、変調器210によって変調される。変調された搬送信号は、光リンク206を介して送信するために、合波器212によって送信器の光信号220に合波することができる。また、送信器側コム発生器208によって生成される光搬送信号のうちの1つ(「パイロット搬送信号」と呼ぶ)も、光リンク206を介して送信される送信器の光信号220に含めることができる。受信器204側では、パイロット搬送信号を使用して受信器側コム発生器218にシードを与え(seed)て、送信器側コム発生器208によって生成された信号と同じ周波数のセットを有する複数の周波数ロックされた光信号を生成する。受信器側コム発生器218によって生成された光信号は復調器216に送られ、復調器216は、これらの光信号を利用して、受信した変調搬送信号を復調する。受信器側コム発生器218によって使用されるシード信号は、受信した搬送信号と同じ位相ノイズを含むため、復調信号の位相ノイズを実質的に消去することができる。送信器202および受信器204のさらなる詳細については後述する。
【0015】
送信器側コム発生器208は、シード周波数信号fを入力として受信し、等間隔に並んだ複数の搬送信号f〜fを生成する。いくつかの実装形態において、シード周波数信号は、レーザダイオードなど、1つのレーザ光源を使用して生成することができる。複数の搬送信号f〜fのうちの1つ以上がパイロット信号として選択されて、変調器210によって変調されることなく受信器204端へ送信されることになる。たとえば、図2に示すように、搬送信号f〜fn−1は変調器210に送られるが、搬送信号f(「パイロット搬送信号」)は、変調器210に送られるのではなく、合波器212に直接送られる。複数の搬送信号f〜fのうちのいずれも、光リンク206を介して送信するために、復調されずにパイロット搬送信号として合波器212に送ることができるものとする。いくつかの実装形態において、送信器側コム発生器208は、搬送信号f〜fを生成し、1つの導波管またはファイバにのせて変調器210に送ることができる。いくつかのこのような実装形態において、分波器を利用して搬送周波数を複数の光ファイバに分離することができ、各ファイバは、搬送信号を変調器210に送る。いくつかの実装形態において、送信器側コム発生器208は、ファブリペロー型レーザダイオードなど、利得スイッチ(直接変調)レーザダイオードの外部注入などの技術を使用して実現することができる。その他のいくつかの実装形態において、送信器側コム発生器208は、1つのマスターレーザによってシードを与えられた多段パラメトリック混合器設計を利用した技術を使用して実現することができる。
【0016】
変調器210は、データ信号を使用して光搬送信号f〜fn−1を変調するための複数の変調器を含むことができる。たとえば、各変調器は、光搬送信号f〜fn−1の各々を、送信器202によって受信されたn−1個のデータ信号のうちの1つを使用して変調することができる。したがって、変調器210は、n−1個の変調された光搬送信号を生成することができる。n−1個のデータ信号は、受信器204に送信されるデータを表すことができる。いくつかの実装形態において、n−1個のデータ信号は、n−1個の個別の独立したデータストリームをそれぞれ表すことができる。いくつかの実装形態において、n−1個のデータ信号は、1つのデータストリームから得られてもよい。いくつかの実装形態において、n−1個のデータ信号のうちの少なくとも2つは、同じデータストリームを表すことができる。いくつかの実装形態において、データ信号を使用して搬送信号f〜fn−1の各々を変調するために、たとえば、マッハツェンダ変調器(MZM)など、電気光学変調器を利用することができる。その他のいくつかの実装形態において、変調器210は、変調器またはその他の適した光変調器もしくは電気光学変調器に基づいた共振リング発振器を含むことができる。いくつかの実装形態において、限定されないが、音響光学変調器、磁気光学変調器、メカ光学変調器、熱光学変調器、またはそれらの組み合わせなど、電気光学変調器以外の変調器を利用することもできる。いくつかの実装形態において、変調器210は、直交振幅変調(QAM)および位相偏移変調(PSK)など、搬送信号を変調するための技術を利用することができる。
【0017】
合波器212は、変調器210によって変調されたn−1個の光搬送信号、および無変調パイロット搬送信号fを、1つの送信器の光信号220に合波することができ、当該送信器の光信号220は、光リンク206を介して受信器204に送信される。いくつかの実装形態において、光リンク206を介して送信するために、合波器212は、n−1個の変調信号とパイロット搬送信号fとを送信器の光信号220に合成する光信号コンバイナを使用して実現することができる。
【0018】
いくつかの実装形態において、コンバイナは、互いに異なる周波数の光信号を1つの光ビームに合成するダイクロイックコンバイナとすることができる。いくつかの実装形態において、n−1個の変調搬送信号とパイロット搬送信号とを送信器の光信号220に合成するために、光挿入分岐合波装置を利用することもできる。いくつかの実装形態において、2つ以上の光信号を1つの光信号に合成できる任意の装置を利用して、コンバイナを実現することができる。いくつかの実装形態において、コンバイナは、入力された光信号のスペクトルの一部を選択的に合成し、合成光信号を生成できるフィルタを含むことができる。
【0019】
光リンク206は、図1と関連して上述した通信リンク106と同様であってもよい。いくつかの実装形態において、光リンク206は、シングルモードファイバ(SMF)、マルチモードファイバ(MMF)などの光ファイバを使用して実現することができる。いくつかの実装形態において、光リンク206は、それを介して送信される光信号に、不要な信号損失、非線形効果、および分散を生じさせてしまう可能性がある。特に、光リンク206は、変調搬送信号および無変調パイロット搬送信号fに非線形位相ノイズを生じさせてしまう可能性がある。送信器の光信号220およびパイロット搬送信号の両方が同じ光リンク206を介して送信されるため、変調搬送信号に生じた非線形位相ノイズは、無変調パイロット搬送信号fに生じた非線形位相ノイズと実質的に同じ特性を有する可能性がある。
【0020】
光リンク206を介して送信された送信器の光信号220は、受信光信号222として受信器204で受信される。分波器214は、受信光信号222をn−1個の変調光搬送信号およびパイロット搬送信号f’に分波する。分波器214によって利用される分波技術は、送信器202で変調搬送信号および無変調パイロット搬送信号を(たとえば、図2に示す合波器212によって)合波するために使用される合波技術を補完することができる。いくつかの実装形態において、アレイ導波路回折格子(arrayed waveguide grating:AWG)を利用して受信光信号222を分波することができる。その他のいくつかの実装形態において、信号を分波するために、再構成可能型光アッド・ドロップ分波器を利用することができる。いくつかの実装形態において、受信した変調信号とパイロット搬送信号とを分離するために、光スプリッタを利用することができる。分波されたn−1個の変調光搬送信号は復調器216に送ることができるのに対して、分波されたパイロット搬送信号f’は、受信器側コム発生器218に送ることができる。
【0021】
受信器側コム発生器218は、図2に示す送信器側コム発生器208によって生成された光搬送信号と同じ周波数のセットを有する光搬送信号を生成するという点で、送信器側コム発生器208と同様であってもよい。しかしながら、受信器側コム発生器218は、受信したパイロット搬送信号f’をシード光信号として使用して、光搬送信号のセットを生成する。具体的には、受信器側コム発生器218は、パイロット搬送信号f’を使用して、受信器の搬送信号F〜Fn−1のセットを少なくとも1つ生成する。受信器の搬送信号F〜Fn−1は、送信器側コム発生器208によって生成された搬送信号f〜fn−1の周波数とそれぞれ等しい周波数を有する。さらに、受信器側コム発生器218によって生成された搬送信号F〜Fn−1のセットは、受信されたパイロット搬送信号f’と同じ位相ノイズ特性を有する。
【0022】
復調器216は、分波器214からn−1個の変調搬送信号を受信し、受信器側コム発生器218から搬送信号F〜Fn−1を受信する。いくつかの実装形態において、復調器216は、受信した変調搬送信号を検波して復調するために、コヒーレント検波技術を利用することができる。コヒーレント検波技術では、変調光信号の振幅しか検波しない直接検波技術とは対照的に、変調光信号の振幅および位相の両方の検波が可能である。コヒーレント検波における変調光信号の位相についての追加情報によって、変調光信号の再生を向上させることができる。このような受信器の一例については、図3と関連して後述する。
【0023】
図3は、復調器300の例の機能ブロック図である。復調器300は、たとえば、図1に示す受信器110および114に含まれる復調器を実現するために使用することができる。また、復調器300は、図2に示す復調器216を実現するためにも使用することができる。特に、復調器300は、複数の光混合器H〜Hn−1と、複数のプロセッサP〜Pn−1とを備える。復調器300は、分波されたn−1個の変調搬送信号M〜Mn−1を分波器302から受信することができる。分波器302は、図2に示す分波器214と同様であってもよい。
【0024】
合波された状態で搬送信号F〜Fn−1を出力するように受信器側コム発生器218が構成されるいくつかの実装形態において、搬送波分波器304を利用することができる。搬送波分波器304は、図2に示す受信器側コム発生器218などのコム発生器から、合波されたコム搬送信号F〜Fn−1を受信し、これらの搬送信号を分波して出力することができる。搬送波分波器304は、搬送信号F〜Fn−1を生成するために受信器側コム発生器218によって使用された合波技術を補完する任意の適した技術を使用して実現することができる。いくつかの実装形態において、搬送波分波器304は、AWGを使用して実現することができる。受信器側コム発生器218が別々の光ファイバ上の搬送信号F〜Fn−1を生成するその他のいくつかの実装形態では、搬送波分波器304は、なくてもよい。
【0025】
分波器302および搬送波分波器304の出力は、複数の光混合器H〜Hn−1に送られる。たとえば、第1変調搬送信号Mおよび第1搬送信号Fは、第1光混合器Hに送られ、第2変調搬送信号Mおよび第2搬送信号Fは、第2光混合器Hに送られ、以下同様に行われる。各光混合器H〜Hn−1は、それぞれのコム発生させられた搬送信号と、変調搬送信号とを混合し、変調搬送信号の振幅および位相を決定する。具体的には、光混合器によって生成された4つの光出力信号のうちの2つは、変調搬送信号およびコム発生させられた搬送信号のうちの実数部の和と差によって表すことができ、4つの出力信号のうちの残りの2つは、変調搬送信号およびコム発生させられた搬送信号のうちの虚数部の和と差によって表すことができる。変調搬送信号およびコム発生させられた搬送信号の両方の位相ノイズ特性は同じであるため、光混合器の混合動作は、後述するが、出力信号を生成する際の位相ノイズを消去することになる。光混合器H〜Hn−1によって生成された出力信号は、プロセッサP〜Pn−1に送られ、プロセッサP〜Pn−1は、受信した信号を処理してデータを生成する。いくつかの実装形態において、光混合器は、90°光ハイブリッドまたは180°光ハイブリッドなど、光ハイブリッドを使用して実現することができる。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
【数4】
【0030】
図4は、図3に示すプロセッサPのブロック図例である。特に、プロセッサPは、光検出器モジュール402と、AD変換器(ADC)404と、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)406と、前方誤り訂正モジュール(FEC)408とを備える。図3に示す残りのプロセッサP〜Pn−1は、図4に示すプロセッサPと同様であり得る。光検出器モジュール402は、ハイブリッド混合器によって出力された光信号を電気信号に変換する、少なくとも2つの平衡光検出器を含む。光検出器モジュール402によって生成された電気信号は、ADCモジュール404によってデジタル化され、DSP406に送られる。DSP406は、送信器202において使用される復調方式を補完する復調アルゴリズムを使用して、ADCモジュール404から受信したデジタル化信号を処理して復調する。いくつかの実装形態において、DSP406は、さらに、デジタルデータを処理して、復調前に波長分散の影響を補償することができる。いくつかの実装形態において、DSP406は、送信器202によって送信されるデータを効果的に生成するために必要とされ得る追加のフィルタ処理動作を実行することができる。
【0031】
いくつかの実装形態において、データ送信における誤りを制御するために、送信器202は、送信用データを符号化することができる。たとえば、送信器202は、ブロック符号または畳み込み符号など、前方誤り訂正(FEC)コードを利用して、送信するデータを符号化することができる。また、いくつかのこのような実装形態において、DSP406の出力は、符号化されたデータも含むことになるであろう。FECモジュール408は、送信データを符号化するために使用した特定のFECコードを使用して符号化データを復号化し、どのような誤りでも検出することができる。
【0032】
再び図2を参照すると、いくつかの実装形態において、受信器側コム発生器218によって生成された搬送信号のうちの1つを、送信器202側に送信して、送信器側コム発生器208のシード信号fとして使用することができる。いくつかの実装形態において、送信器側コム発生器208および受信器側コム発生器218の各々に、他方によって生成された搬送波を使用してシードを与えることで、これらのコム発生器によって生成された搬送波の同期を向上させることができる。この同期によって、送信器202での光信号の再生をさらに向上させ、搬送波の分離を低減するためのさらなる余地を与えることができる。これによって、通信システムの周波数利用効率を向上させることができる。光ネットワークが複数の光リンクを含むいくつかの実装形態において、当該複数の光リンクの各々に関連する送信器−受信器の対を同期させることができる。たとえば、いくつかの実装形態において、光ネットワークにおける第1ネットワークノードでの送受信器は、当該光ネットワークの第2ノードでのアップリンク送信器と同期する受信器を含むことができ、第2ノードでのダウンリンク受信器と同期する送信器を含むことができる。その他の対のノード間の光リンクは、同様に同期することができる。上述したように、光リンクを介して同期することによって、光リンクの周波数利用効率を向上させることができる。光ネットワークに関しては、光ネットワーク内の複数のリンクを同期することによって、光ネットワークの全体的な周波数利用効率を向上させることができるので、光ネットワークの帯域幅を広げるさらなる余地を与えることができる。
【0033】
図5は、図2に示す受信器204などの受信器によって実行するための処理例500のフロー図である。処理は、光リンクを介して複数の変調搬送信号を受信するステップ(段階502)と、光リンクを介して無変調搬送信号を受信するステップ(段階504)と、無変調搬送信号をシード信号として順に利用するコム発生器を使用して、複数の受信器側搬送信号を生成するステップ(段階506)と、複数の受信器側搬送信号を使用して複数の変調搬送信号を復調するステップ(段階508)とを含む。
【0034】
処理500は、光リンクを介して複数の変調搬送信号を受信するステップを含む(段階502)。この処理段階は、図2を参照しながら上述した。たとえば、図2は、光リンク206を介して分波器214が合波された受信光信号222を受信するステップを示す。合波された受信光信号222は、送信器202において変調器210によって変調されたn−1個の変調搬送信号を含む。処理500は、さらに、光リンクを介して無変調搬送信号を受信するステップ(段階504)を含む。この処理段階の一例を、図2と関連して上述した。たとえば、図2に示すように、受信器204は、無変調搬送信号f’を含んだ受信光信号222を受信する。
【0035】
処理500は、さらに、無変調搬送信号をシード信号として順に利用するコム発生器を使用して、複数の受信器側搬送信号を生成するステップ(段階506)を含む。図2と関連して上述したように、受信器側コム発生器218は、受信無変調搬送信号f’をシード信号として使用して受信器の搬送信号F〜Fn−1を生成する。また、処理500は、複数の受信器側搬送信号を使用して複数の変調搬送信号を復調するステップ(段階508)も含む。この処理段階の一例を、図3と関連して上述した。たとえば、図3に示す復調器300は、変調搬送信号M〜Mn−1の各々を、受信器側コム発生器によって生成された受信器の搬送信号F〜Fn−1を使って復調する。復調器は、復調信号を処理して出力データを生成する。
【0036】
本開示に示す実装形態のさまざまな変更例は、当業者にとって容易に明らかであり、本明細書に定義する包括的原理は、本開示の趣旨または範囲を逸脱することなく、その他の実装形態に適用されてもよい。したがって、添付の請求の範囲は、本明細書に示す実装形態に限定されることを意図せず、本開示、および本明細書に開示の原理および新規の特徴と一致して最も広義な範囲と一致するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5