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特許6483293端末の方向推定のためのビーム生成装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483293
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】端末の方向推定のためのビーム生成装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20190304BHJP
   H01Q 25/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H04B7/06 950
   H04B7/06 958
   H01Q25/00
   H04B7/06 954
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-567695(P2017-567695)
(86)(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公表番号】特表2018-524919(P2018-524919A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】KR2016007076
(87)【国際公開番号】WO2017007177
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2018年1月11日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0095511
(32)【優先日】2015年7月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500310672
【氏名又は名称】エスケーテレコム株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK TELECOM CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヘサン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チャンスン
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0136963(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0133173(US,A1)
【文献】 特開2016−057165(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/111142(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H01Q 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム生成装置において、
多数の受信ビームの中で、端末から最も大きい大きさを有する受信信号が受信される第1の受信ビームと前記端末から二番目に大きい大きさを有する受信信号が受信される第2の受信ビームを導出するビーム導出部と、
前記第1の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさと前記第2の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさの比率値に基づいて前記端末の方向を推定する制御部
を含
前記多数の受信ビームの中で、前記第1の受信ビームが最も大きい利得を有し、前記第2の受信ビームが二番目に大きい利得を有する領域での方向別前記第1の受信ビームの利得と前記第2の受信ビームの利得の比に関する情報を格納する格納部をさらに含み、
前記制御部は、
前記格納部に格納された、前記領域での方向別前記第1の受信ビームの利得と前記第2の受信ビームの利得の比に関する情報;及び
前記第1の受信ビームを介して受信された受信信号の大きさと前記第2の受信ビームを介して受信された受信信号の大きさの前記比率値に基づいて前記端末の方向を推定することを特徴とする
ビーム生成装置。
【請求項2】
前記情報は、前記第1の受信ビームの利得と前記第2の受信ビームの利得の比と、方向との関係に関する数学式を含むことを特徴とする請求項に記載のビーム生成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさを前記第2の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさで割って前記比率値を計算し、前記比率値を基に前記端末の方向を推定することを特徴とする請求項1に記載のビーム生成装置。
【請求項4】
前記推定された端末の方向を指向角とする受信ビームを生成するビーム生成部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のビーム生成装置。
【請求項5】
前記多数の受信ビーム各々を介して前記端末から受信するRACH(Random Access Channel)プリアンブルまたはサウンディング参照信号(Sounding Reference Signal;SRS)の大きさを算出する信号強度測定部
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のビーム生成装置。
【請求項6】
多数の受信ビームの中で、端末から最も大きい大きさを有する受信信号が受信される第1の受信ビームと前記端末から二番目に大きい大きさを有する受信信号が受信される第2の受信ビームを導出する段階と、
前記第1の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさと前記第2の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさの比率値を用いて前記端末の方向を推定する段階と、
前記推定された端末の方向で最も大きいサイズを有する受信信号が受信される受信ビームを生成する段階と、
を含
前記端末の方向を推定する段階は、
前記多数の受信ビームの中で、前記第1の受信ビームが最も大きい利得を有し、前記第2の受信ビームが二番目に大きい利得を有する領域での方向別前記第1の受信ビームの利得と前記第2の受信ビームの利得の比に関する情報;及び
前記第1の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさと前記第2の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさの前記比率値に基づいて前記端末の方向を推定する段階であることを特徴とする
ビーム生成方法。
【請求項7】
前記端末の方向を推定する段階は、
前記第1の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさを前記第2の受信ビームを介して受信した受信信号の大きさで割って前記比率値を計算する段階を含むことを特徴とする請求項に記載のビーム生成方法。
【請求項8】
前記多数の受信ビーム各々を介して前記端末から受信されるRACHプリアンブルまたはサウンディング参照信号の大きさを算出する段階をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のビーム生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム生成装置及び方法に関し、特に多数のアンテナビームを利用する高周波帯域基盤の無線通信システムにおけるビーム生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の移動通信において主に使用している6GHz未満の低周波帯域の場合、移動通信、放送、衛星通信などの既存のシステムによって飽和しているか断片化(Fragmentation)されており、大容量データ転送などのための超広帯域周波数の確保が難しい。
【0003】
これにより、6GHz以上のセンチ波(centimeter wave:波長がセンチ単位の電磁波であって、通常3〜30GHz帯域)またはミリ波(millimeter wave:波長がミリメートル単位の電磁波であって、通常30〜300GHz帯域)などの高周波帯域が5Gの主なスペクトルとして浮かび上がってきている。
【0004】
このような高周波帯域は、中心周波数が高くなるほど運用帯域幅を広げることができるRFシステムの具現の観点から有利であり、アンテナの高密度化が可能である。すなわち、高周波帯域では、同じアンテナの物理的な大きさを想定した場合、周波数が高くなるにつれてアンテナを構成する輻射素子(Radiator)間の物理的な間隔が減り、より多くの輻射素子を集積させることができる。このとき、このような多数の輻射素子は、RF信号の大きさ(Amplitude)と位相(Phase)を制御して、様々な形態のアンテナビームを生成する3Dビームフォーミング(Beamforming)、及び多重伝送を可能にするMassive MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術のハードウェア基盤となる。
【0005】
なお、高周波帯域の場合、前述のように現在のセルラー帯域に比べて広帯域周波数を使用することができるという大きな利点があるが、相対的に増加した経路損失と高周波帯域の特徴である高直進性、低回折性を克服することが最も大きな課題である。このため、高周波の使用により増加した多数のアンテナ輻射素子を利用して利得の高いペンシルビーム(Pencil Beam)を形成することにより、増加した経路損失を克服することになる。
【0006】
しかし、高周波帯域ではビーム幅が非常に狭くなり電波の直進性が強くなる半面、回折性は弱くなるため、端末の位置変化に応じて基地局と端末がそれぞれ適切な送受信ビームを運用していなければ、通信が円滑でなくなるという問題が発生する。
【0007】
図1は、従来の低周波帯域基盤の無線通信システムにおけるアンテナ運用方式の例示図である。図2は、従来の低周波帯域基盤の無線通信システムにおけるアンテナビームパターンの例示図である。
【0008】
図1及び図2を参照すると、従来の低周波帯域基盤の無線通信では、基地局と端末間の送受信距離による電磁波の減衰、つまり、経路損失が少ない6GHz未満の低周波帯域を主に利用して相対的に広いビーム幅を有するアンテナを適用しても円滑な通信リンクの形成が可能であった。
【0009】
しかし、第5世代移動通信で大容量伝送のために考慮している6GHz以上の高周波帯域で広いビーム幅のアンテナを使用すると高い経路損失のために受信電界を確保することができない。
【0010】
図3は、高周波帯域基盤の無線通信で最適のアンテナビームを導出する従来の方式を示したものである。図3に図示されている方式は、あらかじめ設定された多数のアンテナビーム集合(例えば、基地局アンテナ受信ビーム#1〜基地局アンテナ受信ビーム#N)の中で最も優れた無線リンクを確保するビームを選択するビームスイッチング(Beam Switching)技法である。
【0011】
しかし、事前に定義されたアンテナビーム集合において候補アンテナビームの数が少なかったり、候補アンテナビームのビーム幅が広い場合には、アンテナビーム内メインローブ(main lobe)に電磁波が送受信されても電界に損失が発生する問題点があった。
【0012】
以下、図4図6を参照して、従来のビームスイッチング技法における問題点をより詳しく説明する。
【0013】
図4は、高周波帯域基盤の無線通信におけるアンテナビームインデックス別アンテナビームパターンの例示図である。図5図4の−10度から10度の部分を拡大した図である。図4及び図5に示されたアンテナビームパターンのデータは、連続的な(continuous)値ではなく一定角度間隔別の離散(discrete)値を有する。
【0014】
図6は、高周波帯域無線通信において最適のアンテナビームを導出する従来の方式をより具体的に示した図である。最適のアンテナビームを導出する従来の方式によると、図6に示すように、各アンテナ受信ビーム別に端末から受信される受信信号の大きさを比較することにより、最も大きい受信信号サイズを有するアンテナビームが最適のアンテナ受信ビームとして選択される。この方式によると、端末からの信号の到来角(angle of arrival; AoA)(すなわち、基準方向に対する端末から基地局への方向の角度)が選択された最適のアンテナ受信ビームの指向角(つまり、受信信号の大きさが最大となる角度)と一致しない場合(図6では、基地局アンテナ受信ビーム#3が最適の受信ビームに選択され、端末が基地局アンテナ受信ビーム#3の指向角である0度に位置しない場合)、端末からの信号の到来角と最適のアンテナ受信ビームの指向角とが一致する場合に比べて電磁波の損失が発生する。このような損失は、最大、最適のアンテナ受信ビームの指向角における電磁波の大きさと、最適のアンテナ受信ビームと隣接ビーム(基地局アンテナ受信ビーム#2)との交差点での電磁波の大きさとの違いだけ発生し得る。
【0015】
これにより、従来はビームスイッチング技法の問題点に対応するための他の方法として、韓国公開特許第2014−0065630号(2014年5月30日公開)に開示されたように、最初はビーム幅が広い形態のアンテナビームで基地局と端末間の最適のビームを探し、選択されたビーム領域を狭いビーム幅を有するアンテナビームで細分化する再帰的繰り返しを通じて適合したビームを探す方式や、各ステージ(stage)で端末の位置推定のためにMaximum Likelihood(ML)基盤のDirection of Arrival(DoA)方式などが提案されている。
【0016】
しかし、上記のように提案された他の方法では、基本的に各ステージで使用する全体ビームにおける受信データを活用しなければならず、これに対するマトリックス(Matrix)演算などを通じて端末の角度(つまり、端末からの信号の到来角)を推定する必要があることから、計算量が相対的に高い問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の一実施例は、高周波帯域基盤の無線通信において多数のアンテナビームのうち、端末から送信して基地局に受信された受信信号の大きさが最も大きい第1のアンテナビームと二番目に大きい第2のアンテナビームを導出し、第1のアンテナビームと第2のアンテナビームの受信信号の大きさの比率値を計算し、計算された比率値と、あらかじめ格納された角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比に対応する関数を用いて、相対的に少ない計算量でより正確に端末の角度を推定し、これを利用して端末に対する最適のアンテナビームを生成するビーム生成装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態に係るビーム生成装置は、多数の受信ビームの中で、端末から最も大きいサイズを有する受信信号が受信される第1の受信ビームと前記端末から二番目に大きいサイズを有する受信信号が受信される第2の受信ビームを導出するビーム導出部と、前記第1の受信ビームを介して受信された受信信号の大きさと前記第2の受信ビームを介して受信された受信信号の大きさの比率値に基づいて前記端末の方向を推定する制御部とを含む。
【0019】
本発明の一実施形態に係るビーム生成方法は、多数の受信ビームの中で、端末から最も大きいサイズを有する受信信号が受信される第1のアンテナビームと前記端末から二番目に大きいサイズを有する受信信号が受信される第2の受信ビームを導出する段階と、前記第1の受信ビームを介して受信された受信信号の大きさと前記第2の受信ビームを介して受信された受信信号の大きさとの比率値を用いて前記端末の方向を推定する段階と、前記推定された端末の方向で最も大きいサイズを有する受信信号が受信される受信ビームを生成する段階とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によれば、高周波帯域基盤の無線通信で多数のアンテナビームのうち、端末から送信して基地局に受信された受信信号の大きさが最も大きい第1のアンテナビームと二番目に大きい第2のアンテナビームを導出して、第1のアンテナビームと第2のアンテナビームの受信信号の大きさの比率値を計算し、計算された比率値と、あらかじめ格納されたアンテナパターンサイズの比率に対応する関数を用いて、相対的に少ない計算量でより正確に端末の角度(すなわち、端末からの信号の到来角)を推定し、これを利用して端末に対する最適のアンテナビームを生成することができる。
【0021】
また、本発明の一実施例によれば、端末の角度推定を通じて高周波帯域基盤の無線通信において高い経路損失の問題を克服して、高受信電界強度を確保することができ、基地局と端末間の最適の無線リンクを形成及び維持させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の低周波帯域基盤の無線通信システムにおけるアンテナ運用方式の例示図である。
図2】従来の低周波帯域基盤の無線通信システムにおけるアンテナビームパターンの例示図である。
図3】高周波帯域基盤の無線通信での最適のアンテナビームを導出する従来の方式を示す図である。
図4】高周波帯域基盤の無線通信でのアンテナビームインデックス別アンテナビームパターンの例示図である。
図5図4の−10度から10度の部分を拡大した図である。
図6】高周波帯域無線通信において最適のアンテナビームを導出する従来の方式をより具体的に示した図である。
図7】本発明の一実施形態に係る端末の方向推定のためのビーム生成装置のブロック構成図である。
図8】本発明の一実施形態に係るアンテナビームインデックス別ビームパターン及び角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比の例を示す図である。
図9図8の角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比に関するドリフト曲線を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る受信信号の大きさの比率値及び図9のドリフト曲線を利用して端末の方向を推定する方法を説明する図である。
図11】本発明の一実施形態によって推定された端末の方向に受信ビームを生成するときに改善される利得を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係る端末の方向を推定し、これをもとに最適の受信ビームを生成する方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付する図面を参照し、本発明の動作原理を詳細に説明する。下記に本発明を説明するにおいて公知の機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にする恐れがあると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明での機能を考慮して定義された用語であって、これはユーザ、運用者の意図又は慣例などによって変わることができる。従って、その定義は本明細書全般の内容に基づいて下されるべきである。
【0024】
図7は、本発明の一実施形態に係る端末の方向推定のためのビーム生成装置のブロック構成図である。ビーム生成装置700は、ビームパターン測定部702、格納部704、ビーム生成部706、信号強度測定部708、制御部710及びビーム導出部712などを含むことができる。ビーム生成装置700は、複数のアンテナを有する基地局の一部であり得る。ビーム生成装置700の少なくとも一部は、マイクロプロセッサによって具現され得る。
【0025】
以下、図7を参照して、本発明の一実施形態に係るビーム生成装置700の各構成要素を詳細に説明する。
【0026】
まず、ビームパターン測定部702は、ビーム生成部706が生成する多数の受信ビームそれぞれのビームパターン(例えば、図5に示すように)を測定する。ビームパターンは角度(つまり、方向)に沿った利得を意味する。ビームパターンの測定は、有限な数の角度に対して遂行され得る。ビームパターン測定部702は、測定されたビームパターンから角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比、及びこれに対するドリフト曲線の数式を導出する。特定角度に対する対象ビームは、多数の受信ビームのうち該当角度で最も大きな利得を有する受信ビームである。特定の角度に対する隣接ビームは、多数の受信ビームのうち該当角度で二番目に大きな利得を有する受信ビームである。このとき、ビームパターン測定部702は、このように導出した角度別の対象ビームと隣接ビームの利得の比、及びこれに対するドリフト曲線の数式に関する情報を格納部704に格納することにより、本発明の一実施例による端末の方向推定及びそれに基づく最適ビーム生成過程で制御部710が格納部704に格納された情報を利用できるようにすることができる。ビームパターン測定部702は、マイクロプロセッサを含んだり、マイクロプロセッサによって具現され得る。
【0027】
格納部704は、上述したように角度別の対象ビームと隣接ビームの利得の比及びドリフト曲線数式などに関する情報を格納することができる。
【0028】
ビーム生成部706は、高周波帯域(例えば、6GHz以上のセンチ波またはミリ波)の多重ビームを生成することにより、端末側にビームフォーミングを遂行する。すなわち、ビーム生成部706は、端末への信号送信のために多重送信ビームを生成し、端末からの信号受信のために多重受信ビームを生成することができる。このようなビーム生成部706は、アナログビームフォーミング(analog beamforming)、デジタルビームフォーミング(digital beamforming)、またはこの二つを組み合わせたハイブリッドビームフォーミング(hybrid beamforming)を通じて多重ビームを生成することができる。このとき、アナログビームフォーミングとは、それぞれ互いに異なるベースバンド(baseband)で順次一つのビームを生成することを言うことができ、デジタルビームフォーミングとは、それぞれ互いに異なるベースバンドで並列的に多数のビームを同時に生成することを言うことができる。
【0029】
また、ビーム生成部706は、上記のようなアナログビームフォーミング、デジタルビームフォーミングまたはハイブリッドビームフォーミングのためにベースバンド部、位相変換部、低ノイズ増幅部及びミキサー部などのさまざまな構成要素を含むことができ、これらの各々の構成要素はビームフォーミング関連分野において既に適用されている一般的な構成に該当するため、これらに関する詳細な説明は省略することにする。
【0030】
また、ビーム生成部706は、制御部710の制御によって推定された端末の方向に受信ビームを生成することができ、これについては後述する。
【0031】
信号強度測定部708は、端末から伝送される信号を受信する。例えば、端末がRACH(Random Access Channel)プリアンブルまたはサウンディング参照信号(Sounding Reference Signal;SRS)を送信すると、信号強度測定部708はビーム生成部706が生成した多重受信ビームそれぞれに対して端末から受信した受信信号(つまり、RACHプリアンブルまたはSRS)の大きさ(amplitude)(つまり、電界強度)を算出する。つまり、信号強度測定部708は、基地局の各アンテナの受信ビームを介して端末から受信する受信信号の大きさを算出することができる。
【0032】
このとき、信号強度測定部708は、ビーム生成部706で生成された受信ビームがアナログビームフォーミングによって生成された場合には、各受信ビーム別受信信号の大きさを順次導出することができ、デジタルビームフォーミングによって生成された場合には、各受信ビーム別受信信号の大きさを並列的に同時に導出することができる。
【0033】
ビーム導出部712は、信号強度測定部708を介してビーム生成部706が生成した受信ビーム別端末からの受信信号サイズについての情報を受信する場合、各受信ビームの受信信号サイズを比較して最も大きいサイズを有する受信信号が検知された受信ビームである対象ビーム(つまり、第1の受信ビーム)と、対象ビームと隣接して二番目に大きいサイズを有する受信信号が検知された隣接ビーム(つまり、第2の受信ビーム)についての情報を導出する。ビーム導出部712は、導出された対象ビーム及び隣接ビームについての情報を制御部710に伝達する。ビーム導出部712は、マイクロプロセッサを含んだり、マイクロプロセッサによって具現され得る。
【0034】
制御部710は、対象ビームを介して端末から受信した受信信号の大きさと隣接ビームを介して端末から受信した受信信号の大きさの比率値を計算する。制御部710は、格納部704に格納された角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比及びドリフト曲線の数式に関する情報の中からビーム導出部712によって導出された対象ビームと隣接ビームの対(pair)に該当する情報を抽出し、抽出された情報に計算された比率値を適用して、端末の方向(すなわち、ビーム生成装置700から端末への方向)を推定する。端末の方向は角度で表示されることもできる。また、制御部710は、対象ビームの方向(すなわち、対象ビームを介して電磁波が最も強く受信され得る方向)に対して端末の方向が反れた角度であるオフセット値を算出することができる。
【0035】
また、制御部710は、推定された端末の方向に受信ビームを生成するように(つまり、オフセット値が0になるように)ビーム生成部706を制御する。このために制御部710は、推定された端末の方向に関する情報、または算出されたオフセット値に関する情報をビーム生成部706に伝達することができる。ビーム生成部706は、推定された端末の方向で最も大きい受信信号が受信される(つまり、強く電磁波を受信することができる)受信ビーム、すなわち、推定された端末の方向を指向角とする受信ビームを生成することにより、端末とビーム生成装置700(すなわち、基地局)との間の送受信電界強度が改善され得る。ビーム生成部706は、算出されたオフセット値を基に、オフセット値がゼロになるように端末からの受信信号に対する対象ビームをシフトさせることにより、最適の受信ビームを生成することもできる。制御部710は、マイクロプロセッサを含んだり、マイクロプロセッサによって具現され得る。
【0036】
上述したように、本発明の一実施例では、多重受信ビームの中から端末から受信する受信信号の大きさが最も大きい受信ビーム(つまり、対象ビーム)と二番目に大きい受信ビーム(つまり、隣接ビーム)を導出した後、対象ビームと隣接ビームを介して受信した受信信号の大きさ比の計算を通じて、相対的に少ない計算量で、端末の方向及び端末の方向と対象ビームの方向との間の角度であるオフセット値を求めることができる。すなわち、ビームパターン測定部702を介して事前に多重受信ビーム間のビームパターンを測定し、角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比を計算しておいて、これをデータベース(database)化するか、またはカーブフィッティング(curve fitting)を通じて単純化されたドリフト曲線の数式を作成して格納部704に格納しておき、端末から信号を受信したとき、該当信号に対する対象ビームと隣接ビームの受信信号の大きさの比率値をドリフト曲線の数式に代入することにより、複雑な計算をしなくても端末の方向及び端末の方向と対象ビームの方向との間の反れたオフセット値の推定が可能である。すなわち、従来の高周波帯域無線通信システムでは、最適のアンテナビームを推定するために複雑な計算及びそのための長い時間が必要だったため、低遅延(low latency)を確保することができなかったことに比べて、本発明の一実施例では、相対的に少ない計算量を通じて精密に端末の方向及び端末の方向と対象ビームの方向との間の反れたオフセット値を推定することができる。
【0037】
以下、図8図11を参照して、本発明の一実施形態に係るビーム生成装置700の動作の例をより詳細に説明する。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態に係るアンテナビームインデックス別ビームパターン及び角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比の例示を図示している。
【0039】
具体的には、図8の下段には図5と同一のアンテナビームインデックス別ビームパターンが図示されている。図8の下段のアンテナビームインデックス別ビームパターンから角度別に最大の利得を有する対象ビームと二番目に大きい利得を有する隣接ビームとの組み合わせを導出することができる。同じ対象ビーム及び隣接ビームを有する角度領域(例えば、−6度から−4度の間の領域、−4度から−2度の間の領域、−2度から0度の間の領域、0度から2度の間の領域、2度から4度の間の領域及び4度から6度の間の領域)が、図8に表示されている。たとえば、−6度から−4度の間の領域では、受信ビーム#2の利得が最も大きいため、受信ビーム#2が対象ビームであり、受信ビーム#1の利得が二番目に大きいため、受信ビーム#1が隣接ビームである。
【0040】
図8の下段のビームパターンを基に、図8の上端に示されているように、角度別(つまり、方向別)対象ビームと隣接ビームの利得の比(すなわち、対象ビームの利得を隣接ビームの利得で割った値)が計算され得る。このような計算は、ビームパターン測定部702によって行われることができ、その結果は格納部704に格納され得る。このとき、ビームパターンデータは離散値であるため、計算された利得の比も一定の角度間隔で離散値を示す。
【0041】
図9は、図8の角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比に関するドリフト曲線を示している。
【0042】
図9のドリフト曲線は、角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比に関するデータをカーブフィッティング(curve fitting)して導出され得る。このようなドリフト曲線は、対象ビームと隣接ビームの利得の比と角度の関係を示す関数として線形関数、多項式関数、指数関数など、さまざまな数式で表されることができる。また、このようなドリフト曲線は、アンテナ製作後システムを運用する前にビームパターンの測定を通じてデータベース化され得る。
【0043】
例えば、図9に示した離散的な利得の比のデータから導出された対象ビームが受信ビーム#3、隣接ビームが受信ビーム#2である領域(すなわち、−2度から0度の間)でのドリフト曲線は下記の数式1のような数式で表されることができる。
【0044】
[数式1]
x=log(y/121.3)/2.6
xは角度であり、yは受信ビーム#2(すなわち、隣接ビーム)に対する受信ビーム#3(すなわち、対象ビーム)の利得の大きさ比である。各角度領域に対するドリフト曲線の数式は、ビームパターン測定部702によって導出され、格納部704に格納され得る。
【0045】
図10は、本発明の一実施形態に係る受信信号の大きさの比率値、及び図9のドリフト曲線を利用して端末の方向を推定する方法を説明する図である。
【0046】
図9に示された角度領域別ドリフト曲線に関する数式が事前に導出された状況で、図10に示すような角度(すなわち、方向)に位置した端末800がRACH PreambleまたはSounding Reference Signalを送信することを想定すると、受信ビーム#3で最も強い信号が受信されることができ、受信ビーム#2で二番目に強い信号が受信されることができる。
【0047】
これにより、対象ビームが受信ビーム#3、隣接ビームが受信ビーム#2である領域810に対して事前に導出されたドリフト曲線820、あるいはドリフト曲線820についての数式を利用して端末の方向、すなわち、端末から受信した信号の到来角(Angle of Arrival)を推定することができる。
【0048】
具体的には、領域810に対するドリフト曲線上で対象ビームである受信ビーム#3を介して受信された端末からの受信信号の大きさを、隣接ビームである受信ビーム#2を介して受信した端末からの受信信号の大きさで割った値(以下、比率値830)を縦軸で探し、それに対応する横軸での角度値θを導出することができる。つまり、角度値θに該当する方向を端末の方向で推定することができる。
【0049】
この場合、対象ビーム(受信ビーム#3)の指向角が0度であるため、このように導出された角度値θが端末が対象ビーム(受信ビーム#3)の指向角(0度)と反れたオフセット値になり得る。
【0050】
数式1のようなドリフト曲線の数式を利用する場合、例えば、比率値830が60だとすると、端末の方向はlog(60/121.3)/2.6=−0.27(度)と推定され得る。
【0051】
したがって、上記のように予め計算されたドリフト曲線の数式を利用して、端末から送信された信号の到来角(Angle of Arrival)をMaximum Likelihood方式に比べて複雑な計算なしに迅速に推定することができる。
【0052】
図11は、本発明の一実施例により推定された端末の方向に受信ビームを生成するときに改善される利得を示す図である。
【0053】
図11を参照すると、本発明の一実施例により推定された端末800の方向を向くように受信ビーム902を生成する場合、図7及び図8と関連して説明したビームパターンの測定のためにビーム生成部706が生成する多数の受信ビームの中から端末800からの受信信号が最も大きいアンテナビーム900を使用する場合(つまり、ビームスイッチ方式)と比較すると、端末800の方向においてαだけアンテナ利得が改善されることが分かる。
【0054】
したがって、本発明の一実施例によると、既存のビームスイッチ方式で受信ビーム900を選択する方式よりも優れた電波環境を提供することができ、簡単な数式(ドリフト曲線の数式)に基づいて端末の方向の推定が可能であるため、複雑なマトリックス演算を必要とするMaximum Likelihood方式に比べてより迅速に端末の方向を推定することができる。
【0055】
図12は、本発明の一実施形態に係る端末の方向を推定し、これを基に最適の受信ビームを生成する方法に関するフローチャートである。
【0056】
まず、ビーム生成装置700のビームパターン測定部702が、多重受信ビーム各々のビームパターンを測定する(S1200)。本発明の一実施例では、説明の便宜上、端末から送信される信号を受信するために生成される基地局アンテナの受信ビームに対するビームパターンを測定することを例示したが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、ビームパターン測定部702が、多重受信ビーム各々のビームパターンを基に、図8図9に示すように、角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比、及びそれに対するドリフト曲線の数式を導出する(S1202)。
【0058】
このとき、上記のように導出された対象ビームと隣接ビームの組み合わせ別パターンサイズの比率及びドリフト曲線の数式などの情報は、ビーム生成装置700の格納部704に格納されて端末の方向推定の過程で制御部710によって参照されることができる。
【0059】
上記のように、角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比、及びそれに対するドリフト曲線の数式に関する情報が導出されて格納された後、ビーム生成装置700は端末800からRACH PreambleまたはSounding Reference Signalを受信することができる(S1204)。
【0060】
その後、信号強度測定部708は、受信ビーム別端末800から受信した受信信号(RACH PreambleまたはSounding Reference Signal)の大きさを算出する(S1206)。
【0061】
その後、ビーム導出部712は、各受信ビーム別受信信号の大きさを比較し(S1208)、最も大きいサイズを有する受信信号が検知された受信ビームである対象ビーム(すなわち、第1の受信ビーム)と二番目に大きいサイズを有する受信信号が検知された受信ビームである隣接ビーム(すなわち、第2の受信ビーム)の対を導出する(S1210)。
【0062】
続いて、制御部710は、受信信号サイズの比較を通じて導出された対象ビームと隣接ビームの対についての情報と、図8図9のような角度別対象ビームと隣接ビームの利得の比に関するデータ、またはこれに関するドリフト曲線の数式を利用して端末800の方向を推定する(S1212)。
【0063】
続いて、制御部710は、上記のように推定された端末の方向に受信ビームを再度生成する(S1214)。同じように、送信ビームが生成されることもできる。
【0064】
それにより、図11に示すように、端末の方向と正確に一致するアンテナ受信ビーム902を生成するため、従来のビームスイッチング方式による固定された方向の多数のアンテナビームのうちいずれか一つのアンテナビーム900を選択することと比較すると、送受信電界サイズが改善されることができる。
【0065】
上記のように、本発明の一実施例によると、高周波帯域基盤の無線通信において多数のアンテナ受信ビームのうち端末から送信して基地局に受信された受信信号の大きさが最も大きい第1のアンテナビームと二番目に大きい第2のアンテナビームを導出して、第1のアンテナビームと第2のアンテナビームの受信信号の大きさ比率値を計算し、計算された比率値と、予め格納された角度別アンテナ対象ビームと隣接ビームの利得の比に対応する関数を利用して端末の位置追跡のための最適のアンテナビームを生成することにより、相対的に少ない計算量で、より正確に端末の位置(つまり、方向)推定が可能である。また、端末の位置推定を通じて高周波帯域基盤の無線通信において高い経路損失の問題を克服し、受信電界強度を確保することができ、基地局と端末間の最適の無線リンクを形成/維持させることができる。
【0066】
一方、上述した本発明の説明では、具体的な実施例について説明したが、様々な変形が本発明の範囲から逸脱することなく実施され得る。すなわち、本発明の実施例では、説明の便宜上、様々なアンテナビームのうち基地局アンテナ受信ビームを例に挙げて説明したが、端末アンテナ受信ビームにも適用可能である。つまり、信号源は端末だけでなく、基地局になることもあり、その他のものになることもある。すなわち、本発明の一実施例によると、信号源から信号を受信するとき、多数の受信ビームの中から受信信号の大きさが最も大きい受信ビーム(つまり、対象ビーム)と受信信号の大きさが二番目に大きい受信ビーム(つまり、隣接ビーム)の受信信号の大きさ比を利用して信号源の方向を推定することができる。また、逆に端末と基地局のアンテナ送信ビームでも、多重ビームを運用する場合、すべて同じように適用可能である。したがって発明の範囲は、説明された実施例によって定められてはならず、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【0067】
本発明の一実施例によると、5Gのような高周波帯域の移動通信システムにおいて低遅延サービス(low latency service)と安定であり改善された無線リンクの形成がより容易に具現され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12