(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属製の支持部材が不要である新規なブレードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は以下のとおりである。
1.支持フィルムと、前記支持フィルムに積層された熱硬化性ポリウレタン層とを有することを特徴とするブレード。
2.前記支持フィルムの厚さが、0.02mm以上1mm以下であることを特徴とする1.に記載のブレード。
3.前記熱硬化性ポリウレタンの厚さが、0.1mm以上0.5mm未満であることを特徴とする1.または2.に記載のブレード。
4.前記支持フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂のいずれかであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載のブレード。
5.前記支持フィルムと前記熱硬化性ポリウレタン層のいずれか、または両方が導電材を含有することを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載のブレード。
6.前記支持フィルムの前記熱硬化性ポリウレタン層とは反対側の面に、研磨層を有することを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載のブレード。
7.前記熱硬化性ポリウレタン層が、研磨剤を含有することを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載のブレード。
8.筐体と、
前記筐体内に配置される感光体と1.から7.のいずれかに記載のブレードとを有し、
電子写真装置本体に脱着自在であり、
前記ブレードが、前記筐体に直接固定されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
9.前記ブレードの熱硬化性ポリウレタン層が、前記感光体に接触することを特徴とする8.に記載のプロセスカートリッジ。
10.前記ブレードの支持フィルム、または研磨層のいずれかが、前記感光体に接触することを特徴とする8.に記載のプロセスカートリッジ。
11.支持フィルムと、前記支持フィルムに積層された熱硬化性ポリウレタン層とを有するブレードの製造方法であって、
ポリウレタン組成物を、離間して配置された一対のローラにより送り出される第一および第二の間隙維持部材の間隙に流し込み、
前記ポリウレタン組成物を、前記第一および第二の間隙維持部材の間に保持された状態で熱硬化して前記熱硬化性ポリウレタン層とし、
前記第一および第二の間隙維持部材の一方を前記支持フィルムとすることを特徴とするブレードの製造方法。
12.ポリウレタン組成物を、離間して配置された一対のローラにより送り出される第一および第二の間隙維持部材の間隙に流し込み、
前記ポリウレタン組成物を、前記第一および第二の間隙維持部材の間に保持された状態で熱硬化して熱硬化性ポリウレタン層とし、
前記第一および第二の間隙維持部材の一方を支持フィルムとする製造方法により得られることを特徴とする支持フィルムと、該支持フィルムに積層された熱硬化性ポリウレタン層とを有することを特徴とするブレード。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブレードは、従来使用されている金属製の支持部材と、この支持部材に接合された熱硬化性ポリウレタンかならる弾性体とを有するブレードとは全く異なる新規な構成を有する。すなわち、本発明のブレードは、支持フィルムと熱硬化性ポリウレタン層とを有する。本発明のブレードは、熱硬化性ポリウレタンよりも剛性の高い支持フィルムを有することにより寸法安定性が向上しているため、金属製の支持部材がなくとも取り付け時に変形することなく、対象物に均一に接触することができる。
本発明のブレードは、弾性体と支持部材とを接合するための前処理や、特殊な接着剤、鋼板、また、支持部材そのものを使用しないこともでき、従来のブレードと比較して非常に低コストである。
【0009】
本発明のブレードは、支持フィルムと熱硬化性ポリウレタンの材質、厚さ等により、コシの強さと弾性とを調整することができ、様々な用途のブレードとして用いることができる。また、熱硬化性ポリウレタン層側、支持フィルム側のいずれの角も感光体に接触するエッジ部として用いることができる。熱硬化性ポリウレタン層側の角をエッジ部とする場合、熱硬化性ポリウレタンは、従来、ブレード用弾性体を形成する材料として利用されているため、信頼性が高い。支持フィルム側の角をエッジ部とする場合、支持フィルムとして熱硬化性ポリウレタンよりも高硬度、低摩擦である材料を用いることにより、これまでの熱硬化性ポリウレタンをエッジ部とするブレードでは達成不可能な低摩擦性を付与することができる。エッジ部を低摩擦とすることにより、感光体へのトナー・外添剤などのフィルミング(固着)を防止したり、感光体の摩耗を低減したりすることができ、感光体の長寿命化が達成できる。高硬度、低摩擦である支持フィルム側の角をエッジ部とするブレードは、近年、利用が拡大している低融点トナーに好適に利用することができる。
【0010】
従来の金属製の支持部材を有するブレードを保管、運搬等する際には、ブレード同士が接触し、硬い支持部材により弾性体が傷付かないように、ブレードを1つずつ梱包材等で包む必要があった。それに対し、本発明のブレードは、いずれも柔軟な材料からなる支持フィルムと熱硬化性ポリウレタン層の積層体であるため、接触による傷付きを防ぐことができる。そのため、本発明のブレードは、保管、運搬等する際に梱包材が不要であり、仮に、梱包するにしても、従来のものと比較して梱包を簡素化することができる。また、本発明のブレードは、保管、運搬等に必要なスペース、費用を大幅に減らすことができる。
本発明の製造方法により、支持フィルム/熱硬化性ポリウレタン層/離型フィルム、または第二の支持フィルム、がこの順で積層された積層体を連続的に、いわゆるロールtoロールで製造することができる。この積層体を所定の寸法に裁断するだけで、本発明のブレードを製造することができ、ブレードの製造コストを非常に小さくすることができる。また、ロール状に巻回した積層体は、嵩張らず、取り扱い性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明のブレードの一実施態様の概略図を示す。なお、
図1に示す一実施態様であるブレードにおいて、各層の厚さは実際の厚さを意味するものではない。
一実施態様であるブレード1は、支持フィルム2と、この支持フィルム2に積層された熱硬化性ポリウレタン層3とを有する。一実施態様であるブレード1は、熱硬化性ポリウレタン層3に由来する柔軟性、弾性と、支持フィルム2に由来するコシの強さ、寸法安定性、耐摩耗性、低摩擦係数とを備え、感光体に適度な圧力で接触することができる。
【0014】
「熱硬化性ポリウレタン層」
熱硬化性ポリウレタン層3は、ポリオールとポリイソシアネートとを含有するポリウレタン組成物を熱硬化させて得られる。
【0015】
「ポリオール」
ポリオールとしては、ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類あるいは、ビスフェノールA、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド付加物類のポリエーテル型ポリオール;アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマール酸等の2塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のグリコール類との重合反応により得られるポリエステル型ポリオール;ポリカプロラクトンジオール;ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。
本発明のブレードは、熱硬化性ポリウレタン層3側、支持フィルム2側のどちら角も感光体等に接するエッジ部として用いることができる。熱硬化性ポリウレタン層をエッジ部として用いる場合は、柔軟性、耐摩耗性、コスト等に優れるため、ポリエステル型ポリオールが好ましい。支持フィルムをエッジ部として用いる場合は、粘弾性の環境依存性が少ないポリエーテル型ポリオールが好ましい。
【0016】
「ポリイソシアネート」
ポリイソシアネートとしては、メタキシレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0017】
上記のポリウレタンの製造においては、OH基/NCO基の当量比は生成するポリウレタンの物性から0.8以上1.10以下が好ましく、0.90以上1.05以下がより好ましい。
【0018】
ポリウレタン組成物には、上記したポリオール、ポリイソシアネート以外に、架橋剤(鎖延長剤)、界面活性剤、難燃剤、着色剤、充填剤、可塑剤、安定剤、離型剤、触媒(反応促進剤)等の添加剤を配合することができる。また、導電材、研磨剤を配合することもできる。
【0019】
鎖延長剤として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子量ジオール並びにエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミンを挙げることができる。望ましくは、低分子量ジオールが用いられる。さらに必要に応じて多官能成分としてトリメチロールプロパン等のトリオール、トリエタノールアミン等のトリアミン、グリセリン、及びこれらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物を添加することもできる。
【0020】
ポリウレタン組成物には、必要に応じて一般的なアミン化合物や有機錫系化合物等の反応促進剤を用いることができる。例えば、特許第2942183号公報、第0022〜0023段落に開示されるイミダゾール誘導体等が挙げられる。その具体例としては、化学構造上から反応温度依存性の高い2−メチルイミダゾールや1,2−ジメチルイミダゾール等を挙げることができる。
反応促進剤は、ポリオールとポリイソシアネート合計100重量部に対して、0.001重量部以上0.5重量部以下の範囲で用いることが好ましく、0.01重量部以上0.3重量部以下の範囲で用いることがより好ましい。反応促進剤としては、感温性、あるいは遅効性を有するものが、反応促進剤を混合したウレタン樹脂組成物が成形前に硬化してしまうことを防ぎ、可使時間を長くでき、脱型時間が短くなるため好ましい。具体的には、ブロックアミンと称される1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−有機酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5−有機酸塩、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0021】
ここで、従来の熱硬化性ポリウレタンのみからなるブレード用弾性体は、コシの強さを出すために2mm程度の厚さが要求される。
それに対し、本発明のブレードは、支持フィルムでコシの強さを補完するため、熱硬化性ポリウレタン層の厚さを0.5mm未満とすることができる。熱硬化性ポリウレタン層の厚さが0.5mm以上でもクリーニング性は低下しないが、材料コストが増加し、また、均一に熱硬化するために必要な熱量等が大きくなり、生産コストも増加する。
熱硬化性ポリウレタン層は、支持フィルムに積層した状態で感光体に押し付けて変形させた際に、感光体に密着できるだけの弾性を発揮できる厚さを有していればよく、具体的には0.1mm以上の厚さを有することが好ましい。熱硬化性ポリウレタン層の厚さが0.1mm未満では、感光体表面を押し付ける力が弱くなり、クリーニング性が低下する。熱硬化性ポリウレタン層は、厚いほど弾性が大きくなるため、0.2mm以上の厚さを有することがより好ましい。
【0022】
「支持フィルム」
支持フィルム2は、熱硬化性ポリウレタン層3を支持するものである。支持フィルム2を構成する材料は、使用環境下での寸法安定性に優れ、コシの強さを補完するための弾性率を満足するものであれば特に制限することなく用いることができ、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)などを好適に用いることができる。支持フィルム2側の角をエッジ部とする場合は、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が小さい超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。なお、超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量を100万以上に高めたポリエチレンであり、商品名Dyneema(蘭DSM社)、Spectra(米ハネウェル社)等から市販されているものを用いることができる。
【0023】
支持フィルム2と熱硬化性ポリウレタン層3との接着性を高めるために、支持フィルム2の熱硬化性ポリウレタン層3側の面に、表面処理を施すことが好ましい。表面処理の方法としては特に制限されず、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、オゾン処理、化学処理、粗面化処理等が挙げられる。また、支持フィルム2に接着剤層を設け、接着剤層上に熱硬化性ポリウレタン層3を形成することもできる。
支持フィルム2が、導電材を含有する、または、導電材を含有する層を有することにより、ブレード1に帯電防止性を付与することもできる。
【0024】
支持フィルムの厚さは、0.02mm以上1mm以下であることが好ましく、0.025mm以上0.5mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上0.2mm以下であることがさらに好ましい。支持フィルムの厚さが0.02mmより薄いと、ブレードとした時にコシが弱く、クリーニング性能が低下する。また、下記「ブレードの製造方法」で詳述するが、製造工程の加熱時に変形してしまう可能性がある。支持フィルムの厚さが1mmより厚いと、ブレードが硬くなりすぎて、感光体に押し付けた際に変形しにくくなり、クリーニング性が低下する。
【0025】
「離型フィルム」
一実施態様であるブレード1を、生産からプロセスカートリッジの筐体内に設置するまで保護するために、熱硬化性ポリウレタン層3の表面に離型フィルム(図示せず)を設けることができる。離型フィルムは、熱硬化性ポリウレタン層3と貼り合わせる側の表面に離型処理が施されたフィルムであり、熱硬化性ポリウレタン層3の汚れや埃付着等を防止する。離型フィルムは、擦れた際に支持フィルム2を傷つけないように、支持フィルム2よりも硬度の低い材料を用いることが好ましい。
下記「ブレードの製造方法」で詳述するが、熱硬化性ポリウレタン層3は、離型フィルム上に直接成形することもできる。この製造方法により離型フィルム上に直接熱硬化性ポリウレタン層3を成形する場合は、熱硬化性ポリウレタンを熱硬化させて熱硬化性ポリウレタン層3とする際の加熱時の変形防止と、離型フィルムの可撓性とを両立させるために、離型フィルムの厚さは、0.018mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0026】
「ブレード」
一実施態様であるブレード1は、支持フィルム2と熱硬化性ポリウレタン層3を有する。この二層からなるブレード1は、熱硬化性ポリウレタン層3側、支持フィルム2側のどちら角も感光体等に接するエッジ部として用いることができる。熱硬化性ポリウレタンは、これまでエッジとして利用されてきた素材であり、信頼性が高い。他方、支持フィルムは、熱硬化性ポリウレタンよりも高硬度、耐摩耗性、低摩擦等を有する材料を用いることにより、これまでのエッジ部が熱硬化性ポリウレタンからなるブレードでは達成不可能な性能を発揮することができる。例えば、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂等の耐摩耗性に優れ、摩擦係数が小さい材質からなる支持フィルム2の角をエッジ部とすることにより、感光体へのトナー・外添剤などのフィルミング(固着)を防止したり、感光体の摩耗を低減したりすることができる。なお、エッジ部は、鋭利に成形するために裁断により新たに生じた角を用いる。
【0027】
本発明のブレードは、一実施態様である二層からなるブレードに限定されず、支持フィルムと熱硬化性ポリウレタン層以外の層を有することもできる。例えば、離型フィルムに変えて、第二の支持フィルムを用いることにより、第一の支持フィルムと第二の支持フィルムで熱硬化性ポリウレタン層が挟まれた三層の積層体からなるブレードとすることができる。この三層の積層体からなるブレードは、第一の支持フィルムと第二の支持フィルムとに同一の部材を用いることにより上下対称構造となるため、取り付け時の作業性に優れる。また、下記で述べるように、ブレードの支持フィルム側表面に研磨層を設けることもできる。
【0028】
一実施態様であるブレード1は、支持フィルム2側、熱硬化性ポリウレタン層3側のいずれかに接着剤、粘着テープ、両面テープ等を適用することにより、金属製の支持部材を用いることなく所定の位置に直接固定することができる。一実施態様であるブレード1を固定する箇所に、ブレード1と嵌合する凹部を設けることにより、位置精度よくブレード1を固定することができる。一実施態様であるブレード1は、支持フィルム2を備えることにより寸法安定性に優れているため、取り付け時に圧力が加わっても熱硬化性ポリウレタン層3が変形しにくく、ブレード1を感光体等の対象物に均一に接触させることができる。
なお、本発明のブレードは、上記したように支持部材を用いることなく直接固定することができるが、従来の支持部材を用いることもできる。従来の支持部材に本発明のブレードを接合することにより、筐体や支持部材を設計変更することなく、本発明のブレードを導入することができる。
【0029】
本発明のブレードは、クリーニングブレード、現像ブレード、導電ブレード、研磨ブレード、塗布ブレード等の各種ブレードに制限することなく利用することができる。
研磨ブレードとする際は、熱硬化性ポリウレタン層側の角をエッジ部とするのであれば、ポリウレタンに研磨剤を含有させればよい。また、支持フィルム側の角をエッジ部とするのであれば、支持フィルム側表面に塗布等により研磨層を設ければよい。研磨剤としては、酸化セリウム、シリカ、セリウム、ジルコニウム、ストロンチウム等が挙げられる。
【0030】
「プロセスカートリッジ」
本発明のブレードは、プロセスカートリッジ内部に取付けられる用途に好適に利用することができる。プロセスカートリッジは、感光体ドラム、帯電手段、現像ブレード、クリーニングブレード等の複数本のブレードを一体構造としたものであり、電子写真装置に脱着自在に構成されている。本発明のブレードを支持部材を用いることなくプロセスカートリッジに取付けることにより、複数本の金属製の支持部材が不要となり、交換部材であるプロセスカートリッジに求められる軽量化、小型化、低コスト化を達成することができる。
【0031】
「ブレードの製造方法」
本発明のブレードは、少なくともポリオール、ポリイソシアネート(または、これらからなるウレタンプレポリマー)を含有するポリウレタン組成物を、離間して配置された一対のローラの間に送り出される長尺状の第一および第二の間隙維持部材の間隙に流し込み、ポリウレタン組成物を第一および第二の間隙維持部材の間に保持された状態で硬化して熱硬化性ポリウレタン層のシート状物とした後に、裁断することにより製造することができる。
【0032】
図2に、本発明のブレードの製造方法の模式図を示す。以下、
図2を用いてブレードの製造方法を説明する。この製造例では、間隙維持部材として、長尺状支持フィルムと長尺状離型フィルムを用いる。
少なくともポリオール、ポリイソシアネート(または、これらからなるウレタンプレポリマー)を含有するポリウレタン組成物40aを、注型機41を介して、離間して配置された一対の搬送ローラ43a、43bの間に送り出される長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bの間隙に流し込む。長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bは、その間にポリウレタン組成物40aを保持した状態で加熱装置46内に導かれる。ポリウレタン組成物40aは、長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bの間に保持された状態で熱硬化して、熱硬化性ポリウレタンのシート状物40となる。
なお、
図2において、44は長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bを送り出すための搬送ローラ、45は補助ローラ、47はポリウレタン組成物40aを保持した長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bを加熱装置46内で搬送するためのコンベアベルトである。
【0033】
長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bは、その間にポリウレタン組成物40aを保持しながら同一の張力で引っ張られて搬送されるため、その間隙を一定の大きさに維持することができる。ポリウレタン組成物40aは、長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bに挟まれ、一定の厚さを維持した状態で硬化するため、厚さ精度に優れたシート状物40となる。この製造方法により、塗布では困難な0.1mm以上の厚さを有するシート状物40を高い厚さ精度で連続的に成形することができる。
【0034】
注型機41のヘッド部41aの位置は、搬送ローラ43a、43bの中央部(長尺状支持フィルムと長尺状離型フィルム42a、42bがなす間隙の中央部)より、いずれか一方の搬送ローラ側に偏在していることが好ましく、また、偏在距離が搬送ローラの半径以下であることが好ましい。すなわち、注型機41のヘッド部41aの直下は、一対の搬送ローラ43a、43bの中央部から一方の搬送ローラの中心軸までの間に位置することが好ましい。また、ヘッド部41aの先端部と、搬送ローラの表面との最短距離は、5cm以下であることが好ましい。ヘッド部41aをこのように配設することにより、熱硬化性ポリウレタン層40の厚さ精度がより向上するとともに、長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bの間隙に流し込まれた未硬化のポリウレタン組成物40aに気泡が混入しにくく、また、混入した気泡が抜けやすい。
【0035】
搬送ローラ43a、43bは、単に搬送機能のみを有するものでもよいが、加熱ローラであることが好ましい。搬送ローラが加熱ローラであると、ポリウレタン組成物40aを、長尺状支持フィルム42aと長尺状離型フィルム42bの間隙に保持された直後から硬化させることができ、ポリウレタン組成物40aが加熱装置46内に導入されるまでに厚さをより均一に維持することができ、より厚さ精度に優れたシート状物40を成形することができる。搬送ローラを加熱する際の搬送面温度は、10〜60℃に設定することが好ましい。10℃未満では、ポリウレタン組成物40aの粘度が高くなって気泡が抜けにくくなるとともに、硬化反応が遅くなってシート状物40の厚さ精度が低下する。60℃を超えると、搬送ローラ上でポリウレタン組成物40aが硬化したり、シート状物40に気泡が入ったりすることがある。
【0036】
加熱装置46は、ヒータを備えた加熱炉であり、ポリウレタン組成物40aの硬化温度まで炉内温度を上昇させることができるものであればよい。また、加熱装置46内での加熱条件(硬化条件)は特に限定されず、ポリウレタン組成物40aの組成に応じて適宜設定すればよく、例えば、40℃〜160℃、1分〜180分の条件で行えばよい。
【0037】
加熱装置46からは、長尺状支持フィルム42a、熱硬化性ポリウレタンのシート状物40、長尺状離型フィルム42bがこの順で積層した長尺状ブレード前駆体10が搬出される。
加熱装置から搬出された長尺状ブレード前駆体10を所定の寸法に裁断する(図示せず)ことにより、長尺状支持フィルム42aが支持フィルム2、シート状物40が熱硬化性ポリウレタン層3となり、熱硬化性ポリウレタン層3が長尺状離型フィルム42b由来の離型フィルムで保護されている本発明のブレード1が得られる。
本製造方法により、長尺状ブレード前駆体10を、いわゆるロールtoロールで連続的に製造することができ、従来の方法と比較して生産性に優れている。製造された長尺状ブレード前駆体10は、ロール状に巻回して出荷してもよく、裁断してブレード1としてから出荷してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
「実施例1」
ポリテトラメチレングリコールをポリオール成分、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするプレポリマー(NCO%=10%)100gに対して、1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン=60/40の重量比からなるアルコール系硬化剤を11.6g、非アミン系触媒として有機錫化合物触媒を250ppm添加し、撹拌・混合を行った。
その後、長尺状支持フィルムとしてコロナ処理した厚さ100μmのPET(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10)、長尺状離型フィルムとして、シリコン処理した厚さ38μmのPET(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10)を用い、上記製造方法を用いて140℃、1分熱硬化することより、熱硬化性ポリウレタン層の厚さが0.3mmである長尺状ブレード前駆体を得た。このブレード前駆体を幅30mm、長さ320mmに裁断し、離型フィルムを剥離して、ブレード1を得た。
【0039】
「実施例2」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ250μmのPET(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10)を用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード2を得た。
【0040】
「実施例3」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ200μmのUHMWPE(日東電工株式会社製、商品名:No.440)を用いた以外は上記実施例1と同様にして、ブレード3を得た。
「実施例4」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ500μmのUHMWPE(日東電工株式会社製、商品名:No.440)を用いた以外は上記実施例1と同様にして、ブレード4を得た。
「実施例5」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ50μmのUHMWPE(淀川ヒューテック株式会社製、商品名:ウルトラポリマー)を用いた以外は上記実施例1と同様にして、ブレード5を得た。
【0041】
「実施例6」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ100μmのETFE(旭硝子株式会社製、商品名:アフレックス)を使用した以外は上記実施例1と同様にして、ブレード6を得た。
「実施例7」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ25μmのETFE(旭硝子株式会社製、商品名:アフレックス)を使用した以外は上記実施例1と同様にして、ブレード7を得た。
【0042】
「実施例8」
ポリウレタン層の厚さを100μmとした以外は実施例1と同様にして、ブレード8を得た。
「実施例9」
ポリウレタン層の厚さを480μmとした以外は実施例1と同様にして、ブレード9を得た。
【0043】
「実施例10」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ480μmのPET(東レ株式会社製、商品名:ルミラーH10)を用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード10を得た。
「実施例11」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ25μmのPET(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10)を用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード11を得た。
【0044】
「比較例1」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ16μmのPET(東レ、ルミラーFB50)を用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード12を得た。
「比較例2」
支持フィルムとして、コロナ処理した厚さ1.5mmのUHMWPE(日東電工株式会社製、商品名:No.440)を用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード13を得た。
【0045】
「比較例3」
ポリウレタン層の厚さを0.05mmとした以外は上記実施例1と同様にして、ブレード14を得た。
【0046】
<評価>
作製した上記ブレードを、ポリウレタンの角をエッジ部として、市販のデジタルカラー複合機(株式会社リコー製、MP C2503)のクリーニングブレードとして印字走行試験(30000枚)を実施した。また、実施例12として、実施例1で作製したブレードの支持フィルム側の角をエッジ部として、同様に印字走行試験を行った。
試験後のエッジ部の摩耗を目視又はマイクロスコープ等の拡大観察で確認し、下記基準で評価した。また、試験後の帯電ローラおよび印刷物に、ブレード起因の不都合の発生を目視で確認した。結果を下記表1に示す。なお、各評価において、「△」が、従来のポリウレタンのみからなる弾性体を用いたブレードと同等である。
【0047】
・耐摩耗性(エッジ部)
○:エッジ部に変形が見られない。
△:エッジ部に0.01mm以下の摩耗、欠けが見られる。
×:エッジ部に0.01mmより大きな摩耗、欠けが見られる。
・クリーニング性(トナー又は外添剤すり抜け)
帯電ローラの汚れ状態を確認する
○:帯電ローラの汚れなし。
△:帯電ローラが均一に薄ら汚れ。
×:帯電ローラに局所的な汚れ、又は汚れによる不具合画像発生。
【0048】
【表1】
【0049】
「まとめ」
本発明の実施例であるブレードは、いずれも従来品と同等以上の耐摩耗性、クリーニング性を示した。特に、実施例1,3,6,9で作製したブレードは、従来品よりも優れていた。また、実施例12で使用したように、支持フィルム側をエッジ部として用いることもできた。
支持フィルムが0.016mmと薄い比較例1は、コシが弱く、感光体へ十分な圧力で押し付けられなかったため、クリーニング性に劣っていた。
支持フィルムが1.5mmと厚い比較例2は、コシが強すぎて感光体へ押し付けられる圧力が強く、摩耗してしまい、また、摩耗のせいでクリーニング性も劣っていた。また、厚い支持フィルムは、高コストであった。
ポリウレタン層が0.05mmと薄い比較例3は、ブレードの弾性が弱く、感光体へ押し付けられる圧力が弱いため、クリーニング性に劣っていた。