特許第6483297号(P6483297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483297プログラム消去装置およびプログラム消去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6483297
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】プログラム消去装置およびプログラム消去方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20190304BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 R
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-7335(P2018-7335)
(22)【出願日】2018年1月19日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐嵜 光
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−062429(JP,A)
【文献】 特開2007−290831(JP,A)
【文献】 特開2003−095553(JP,A)
【文献】 特開2002−265160(JP,A)
【文献】 特開2010−157011(JP,A)
【文献】 特開2016−216151(JP,A)
【文献】 米国特許第04512442(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00─ 5/28
B66B 3/00─ 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの保守作業が行われる間隔に基づいて設定される設定時間を保持し、カウントした時間が前記設定時間に達すると制御信号を出力するタイマと、
前記タイマが前記制御信号を出力した場合に、前記エレベータの設置現場に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを消去する制御部と、
前記保守作業を行う保守作業員が操作可能なリセットスイッチと、を備え
前記タイマがカウントした時間は、前記リセットスイッチの操作に応じてリセットされるプログラム消去装置。
【請求項2】
エレベータの保守作業が行われる間隔に基づいて設定される設定時間を保持し、カウントした時間が前記設定時間に達すると制御信号を出力するタイマと、
前記タイマが前記制御信号を出力した場合に、前記エレベータの設置現場に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを消去する制御部と、
前記保守作業を行う保守作業員が携帯する保守端末が接続される接続部と、を備え、
前記タイマがカウントした時間は、前記保守端末から前記接続部を介してリセット信号が入力されるとリセットされるプログラム消去装置。
【請求項3】
前記タイマがカウントした時間は、前記遠隔監視装置と監視センタに設けられた遠隔監視サーバとの間の通信が確立していることを条件としてリセットされる
請求項またはに記載のプログラム消去装置。
【請求項4】
前記保守作業を行う保守作業員が携帯する保守端末が接続される接続部をさらに備え、
前記タイマの設定時間は、前記保守端末から前記接続部を介して入力される設定信号に応じて設定される
請求項1乃至のいずれか一項に記載のプログラム消去装置。
【請求項5】
前記タイマは、前記エレベータの設置現場に設けられたエレベータ制御盤から取得した時間情報に基づいて時間をカウントする
請求項1乃至のいずれか一項に記載のプログラム消去装置。
【請求項6】
タイマと制御部とを用いて実行されるプログラム消去方法であって、
前記タイマは、エレベータの保守作業が行われる間隔に基づいて設定される設定時間を保持し、カウントした時間が前記設定時間に達すると制御信号を出力し、
前記タイマがカウントした時間は、前記保守作業を行う保守作業員が操作可能なリセットスイッチの操作に応じてリセットされ、
前記制御部は、前記タイマが制御信号を出力した場合に、前記エレベータの設置環境に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを消去する
プログラム消去方法。
【請求項7】
タイマと制御部とを用いて実行されるプログラム消去方法であって、
前記タイマは、エレベータの保守作業が行われる間隔に基づいて設定される設定時間を保持し、カウントした時間が前記設定時間に達すると制御信号を出力し、
前記タイマがカウントした時間は、前記保守作業を行う保守作業員が携帯する保守端末から、当該保守端末が接続される接続部を介してリセット信号が入力されるとリセットされ、
前記制御部は、前記タイマが制御信号を出力した場合に、前記エレベータの設置環境に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを消去する
プログラム消去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プログラム消去装置およびプログラム消去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの保守は、保守契約に基づいて実施される。保守契約期間中は、一般に、エレベータの遠隔監視と保守作業員による定期的な現場での保守作業とが行われる。保守契約が締結されると、エレベータの遠隔監視を行えるようにするために、エレベータの設置現場に遠隔監視装置が設けられ、この遠隔監視装置と監視センタに設けられた遠隔監視サーバとが通信回線を介して接続される。遠隔監視装置は、予め記憶した遠隔監視用プログラムに従って、例えば、エレベータ制御盤から診断に用いる情報を収集して遠隔監視サーバに送信したり、収集した情報を用いてエレベータの自己診断を行って診断結果を遠隔監視サーバに送信したりする。
【0003】
保守契約が更新されずに終了すると、エレベータの遠隔監視が行われなくなるため遠隔監視装置は不要になる。しかし、保守契約の終了後は、保守作業員などがエレベータの設置現場に立ち入ることができない場合も多く、この場合、遠隔監視装置が回収されずに放置されることになる。そして、エレベータの設置現場に遠隔監視装置が放置されると、遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムが第三者により解析されて、秘匿すべき技術情報が流出する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−216151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、保守契約の終了後に遠隔監視装置を回収できない場合であっても、遠隔監視用プログラムが解析されて技術情報が流出してしまうといった不都合を有効に防止することができるプログラム消去装置およびプログラム消去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のプログラム消去装置は、タイマと、制御部と、リセットスイッチと、を備える。タイマは、エレベータの保守作業が行われる間隔に基づいて設定される設定時間を保持し、カウントした時間が前記設定時間に達すると制御信号を出力する。制御部は、前記タイマが前記制御信号を出力した場合に、前記エレベータの設置現場に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを消去する。リセットスイッチは、前記保守作業を行う保守作業員が操作可能である。前記タイマがカウントした時間は、前記リセットスイッチの操作に応じてリセットされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るプログラム消去装置を備えたエレベータ遠隔監視システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係るプログラム消去装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、第2実施形態に係るプログラム消去装置を備えたエレベータ遠隔監視システムの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、第2実施形態に係るプログラム消去装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のプログラム消去装置およびプログラム消去方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、保守契約が終了した後にエレベータの設置現場に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを自動で消去することにより、遠隔監視装置を回収できない場合であっても、遠隔監視用プログラムが解析されて技術情報が流出してしまうといった不都合を有効に防止できるようにしたものである。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るプログラム消去装置10Aを備えたエレベータ遠隔監視システムの構成例を示すブロック図である。このエレベータ遠隔監視システムは、図1に示すように、プログラム消去装置10Aと、遠隔監視装置20と、エレベータ制御盤30と、遠隔監視サーバ40とを備える。プログラム消去装置10A、遠隔監視装置20およびエレベータ制御盤30は、エレベータの設置現場に設けられている。遠隔監視サーバ40は、監視センタに設けられている。エレベータ設置現場に設けられた遠隔監視装置20と監視センタに設けられた遠隔監視サーバ40とは、通信回線50を介して通信可能に接続される。
【0010】
遠隔監視装置20は、エレベータの遠隔監視に必要な処理を実行するための遠隔監視用プログラム21を記憶する。この遠隔監視装置20は、エレベータの遠隔監視を含む保守契約が締結されることに応じてエレベータの設置現場に設置され、遠隔監視用プログラム21に従って、エレベータの遠隔監視に必要な各種の処理を実行する。例えば、遠隔監視装置20は、エレベータ制御盤30から診断に用いる情報を収集して遠隔監視サーバ40に送信したり、エレベータ制御盤30から収集した情報を用いてエレベータの自己診断を行い、診断結果を遠隔監視サーバ40に送信したりする。その他、遠隔監視装置20は、記憶する遠隔監視用プログラム21に応じて、エレベータの遠隔監視に関わる様々な処理を実行することができる。例えば、遠隔監視装置20がエレベータ制御盤30から収集した情報を解析することで故障の予兆を検知し、故障の程度に応じた情報を遠隔監視サーバ40に送信する構成としてもよい。
【0011】
エレベータ制御盤30は、エレベータの各種動作を制御する制御装置である。このエレベータ制御盤30は、一般的なエレベータの動作制御を行う機能に加え、遠隔監視装置20からの要求に応じてエレベータの動作状態を表す各種情報を遠隔監視装置20に伝送する機能を持つ。例えば、エレベータ制御盤30は、エレベータの動作状態を表す各種情報を保持し、遠隔監視装置20からの要求に応じて保持した情報を遠隔監視装置20に伝送する。また、エレベータ制御盤30は、遠隔監視装置20からの要求に応じてエレベータを診断モードで動作させ、そのときのエレベータの動作状態を表す各種情報を遠隔監視装置20に伝送してもよい。
【0012】
遠隔監視サーバ40は、遠隔監視装置20との協働によりエレベータの遠隔監視を行う。例えば、遠隔監視サーバ40は、遠隔監視装置20から受信した情報をもとにエレベータの診断を行い、故障が検知されると異常発報したり、遠隔監視装置20から受信した診断結果をもとに故障の有無を判断し、故障が検知されると異常発報したりする。その他、遠隔監視サーバ40は、遠隔監視装置20との協働により様々な遠隔監視サービスを提供することができる。なお、遠隔監視サーバ40と遠隔監視装置20とが協働してエレベータの遠隔監視を行うためには、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間で通信回線50を介した通信が確立されている必要がある。
【0013】
プログラム消去装置10Aは、エレベータの保守契約が終了した後に、エレベータの設置現場に設けられた遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21を自動で消去する機能を持つ。このプログラム消去装置10Aは、図1に示すように、タイマ11と、制御部12と、リセットスイッチ13とを備える。
【0014】
タイマ11は、設定時間Tsを保持するレジスタ14と、プログラム消去装置10Aの内部で生成されるクロックをもとに時間をカウントするカウンタ15と、カウンタ15がカウントした時間Tcをレジスタ14が保持する設定時間Tsと比較する比較器16を有し、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達すると制御信号を出力する。ここで、レジスタ14が保持する設定時間Tsは、エレベータの設置現場において保守作業員による保守作業が行われる間隔(周期、インターバル)Tiに基づいて設定される。保守作業が行われる間隔Tiは例えば保守契約に基づいて定められ、この保守作業が行われる間隔Tiに所定のマージンαを加えた時間(Ti+α)が設定時間Tsとしてレジスタ14に設定される。例えば、保守作業が行われる間隔Tiが30日(720時間)であれば、この間隔Tiにマージンαとして例えば5日(120時間)を加えた35日(840時間)が、設定時間Tsとしてレジスタ14に設定される。この場合、タイマ11は、カウンタ15がカウントした時間Tcが840時間に達すると、制御信号を出力する。
【0015】
制御部12は、タイマ11から制御信号が出力された場合に、遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21を消去する。例えば、制御部12は、遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21をランダムなデータで上書きすることにより、この遠隔監視用プログラム21を消去することができる。
【0016】
リセットスイッチ13は、エレベータの設置現場で保守作業を行う保守作業員が操作可能なスイッチである。保守作業員によりこのリセットスイッチ13が操作されると、タイマ11のカウンタ15がカウントした時間Tcがリセット(Tc=0)される。レジスタ14が保持する設定時間Tsは、上述のように保守作業が行われる間隔Tiに基づいて設定されるため、保守作業員が保守作業を行うタイミングでは、カウンタ15がカウントした時間Tcは設定時間Tsに達していない。保守作業員は、例えば保守作業が完了したときにリセットスイッチ13を操作してカウンタ15がカウントした時間Tcをリセットすることにより、次回の保守作業を行うまでの間に遠隔監視用プログラム21が消去されないようにする。保守契約期間中は、保守作業員が保守作業を行うたびにリセットスイッチ13を操作することにより、保守契約期間中に遠隔監視用プログラム21が消去されないようにすることができる。
【0017】
リセットスイッチ13は、以上のようにタイマ11のカウンタ15がカウントした時間Tcをリセットするためのスイッチであるが、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間で通信回線50を介した通信が確立されていなければ、リセットスイッチ13が操作されても、カウンタ15がカウントした時間Tcはリセットされない。つまり、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間で通信回線50を介した通信が確立されていることを条件として、リセットスイッチ13の操作に応じて、カウンタ15がカウントした時間Tcがリセットされる。
【0018】
例えば、制御部12がリセットスイッチ13の操作を監視し、リセットスイッチ13が操作されたときに遠隔監視装置20の動作状態を確認する。そして、遠隔監視装置20が遠隔監視サーバ40との間の通信を確立している状態であれば、リセットスイッチ13の操作を有効として、カウンタ15がカウントした時間Tcをリセットする。これにより、保守契約が終了した後(つまり、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が遮断された後)、タイマ11のカウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達する前に、第三者によりリセットスイッチ13が操作されることで遠隔監視用プログラム21が消去されずに遠隔監視装置20が記憶したままになることを防止することができる。
【0019】
以上のように構成されるプログラム消去装置10Aは、例えば、エレベータの遠隔監視を含む保守契約が締結されることに応じて、遠隔監視装置20とともにエレベータの設置現場に設置される。また、このプログラム消去装置10Aは、既設の遠隔監視装置20に対して後付けで設置することもできる。プログラム消去装置10Aを設置する際に、保守契約に応じて定まる間隔Tiに基づいて、タイマ11のレジスタ14に設定時間Tsが設定される。
【0020】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るプログラム消去装置10Aの動作の概要を説明する。図2は、プログラム消去装置10Aの動作例を示すフローチャートである。
【0021】
プログラム消去装置10Aの動作が開始されると、まず、タイマ11のカウンタ15が時間のカウントを開始する(ステップS101)。その後、比較器16によって、カウンタ15がカウントした時間Tcとレジスタ14が保持する設定時間Tsとが比較され、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達したか否かが判定される(ステップS102)。
【0022】
ここで、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達していなければ(ステップS102:No)、リセットスイッチ13が操作されたか否かが判定される(ステップS103)。そして、リセットスイッチ13が操作されていなければ(ステップS103:No)、ステップS102に戻って、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達したか否かの判定が繰り返される。
【0023】
一方、リセットスイッチ13が操作された場合は(ステップS103:Yes)、次に、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されているか否かが判定される(ステップS104)。そして、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されていれば(ステップS104:Yes)、カウンタ15がカウントした時間Tcがリセットされ(ステップS105)、ステップS101に戻って時間のカウントが再開される。一方、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されていなければ(ステップS104:No)、リセットスイッチ13の操作は無効とされ、ステップS102に戻って、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達したか否かの判定が繰り返される。
【0024】
カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達すると(ステップS102:Yes)、タイマ11は制御信号を出力する(ステップS106)。そして、制御部12が、タイマ11が出力する制御信号に応じて、遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21を消去する(ステップS107)。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るプログラム消去装置10Aは、タイマ11のカウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達すると、制御部12が遠隔監視用プログラム21を消去するように構成されている。したがって、遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21を、保守契約が終了した後に自動で消去することができ、保守契約の終了後に遠隔監視装置20を回収できない場合であっても、遠隔監視用プログラム21が解析されて技術情報が流出してしまうといった不都合を有効に防止することができる。
【0026】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、設定時間Tsの設定およびカウンタ15のリセットを、保守作業員が携帯する保守端末を用いて行えるようにしたものである。また、上述の第1実施形態では、カウンタ15がプログラム消去装置10Aの内部で生成されるクロックをもとに時間をカウントするようにしていたが、本実施形態では、エレベータ制御盤30から取得される時間情報に基づいて時間をカウントする。以下では、上述の第1実施形態と同様の構成要素については共通の符号を付して説明を適宜省略し、本実施形態に特徴的な部分についてのみ説明する。
【0027】
図3は、第2実施形態に係るプログラム消去装置10Bを備えたエレベータ遠隔監視システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るプログラム消去装置10Bは、上述の第1実施形態に係るプログラム消去装置10Aと比較して、リセットスイッチ13の代わりに、保守端末60が接続される接続部17を備えた構成である。遠隔監視装置20、エレベータ制御盤30および遠隔監視サーバ40の構成は、上述の第1実施形態と同様である。
【0028】
プログラム消去装置10Bは、保守作業員が携帯する保守端末60が接続部17に接続されると、保守端末60と連携して動作する。例えば、保守作業員が保守端末60を用いてカウンタ15のリセットを指示する操作を行うと、保守端末60から接続部17を介してプログラム消去装置10Bにリセット信号が入力される。このとき、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されていれば、入力されたリセット信号が有効とされてこのリセット信号に応じて、カウンタ15がカウントした時間Tcがリセットされる。なお、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されているかどうかは、例えば第1実施形態と同様に、制御部12が遠隔監視装置20の動作状態を確認することにより判定できる。
【0029】
また、保守作業員が保守端末60を用いて設定時間Tsを設定する操作を行うと、保守端末60から接続部17を介してプログラム消去装置10Bに設定信号が入力される。そして、この設定信号に応じて、保守作業員が指定した設定時間Tsがレジスタ14に設定される。保守作業員は、例えば、エレベータの設置現場で最初に保守作業を行うときに、保守端末60をプログラム消去装置10Bの接続部17に接続し、保守端末60を操作することで設定時間Tsを設定することができる。保守作業員が設定する設定時間Tsは、例えばその現場で保守作業を行う間隔Tiに所定のマージンαを加えた時間である。また、次回の保守作業を行う時期を変更したい場合は、保守端末60の操作により、レジスタ14が保持する設定時間Tsを変更することもできる。
【0030】
本実施形態に係るプログラム消去装置10Bは、例えば、エレベータ制御盤30から遠隔監視装置20を介して時間情報を取得する。そして、タイマ11のカウンタ15が、エレベータ制御盤30から取得した時間情報に基づいて、時間Tcをカウントする。時間情報は、エレベータ制御盤30のシステムクロックやグローバルタイムなど、時間を表す情報であればよい。なお、本実施形態ではエレベータ制御盤30から時間情報を取得するようにしているが、他の外部装置から時間情報を取得してもよい。
【0031】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るプログラム消去装置10Bの動作の概要を説明する。図4は、プログラム消去装置10Bの動作例を示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態では、まず、プログラム消去装置10Bの接続部17に保守端末60が接続され、保守端末60を用いた保守作業員の操作に応じて、タイマ11のレジスタ14に設定時間Tsが設定される(ステップS201)。レジスタ14に設定時間Tsが設定されると、タイマ11のカウンタ15が時間のカウントを開始する(ステップS202)。その後、比較器16によって、カウンタ15がカウントした時間Tcとレジスタ14が保持する設定時間Tsとが比較され、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達したか否かが判定される(ステップS203)。
【0033】
ここで、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達していなければ(ステップS203:No)、保守端末60から接続部17を介してリセット信号が入力されたか否かが判定される(ステップS204)。そして、リセット信号が入力されていなければ(ステップS204:No)、ステップS203に戻って、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達したか否かの判定が繰り返される。
【0034】
一方、リセット信号が入力された場合は(ステップS204:Yes)、次に、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されているか否かが判定される(ステップS205)。そして、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されていれば(ステップS205:Yes)、カウンタ15がカウントした時間Tcがリセット信号に応じてリセットされ(ステップS206)、ステップS202に戻って時間のカウントが再開される。一方、遠隔監視装置20と遠隔監視サーバ40との間の通信が確立されていなければ(ステップS205:No)、リセット信号が無効とされ、ステップS203に戻って、カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達したか否かの判定が繰り返される。
【0035】
カウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達すると(ステップS203:Yes)、タイマ11は制御信号を出力する(ステップS207)。そして、制御部12が、タイマ11が出力する制御信号に応じて、遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21を消去する(ステップS208)。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るプログラム消去装置10Bは、上述の第1実施形態に係るプログラム消去装置10Aと同様に、タイマ11のカウンタ15がカウントした時間Tcが設定時間Tsに達すると、制御部12が遠隔監視用プログラム21を消去するように構成されている。したがって、遠隔監視装置20が記憶する遠隔監視用プログラム21を、保守契約が終了した後に自動で消去することができ、保守契約の終了後に遠隔監視装置20を回収できない場合であっても、遠隔監視用プログラム21が解析されて技術情報が流出してしまうといった不都合を有効に防止することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るプログラム消去装置10Bは、保守作業員が携帯する保守端末60を用いてカウンタ15がカウントした時間Tcをリセットできるようにしているので、リセットスイッチ13を不要として構成を簡単なものとすることができる。また、本実施形態に係るプログラム消去装置10Bは、保守作業員が携帯する保守端末60を用いて設定時間Tsの設定や変更を行えるようにしているので、様々な条件に柔軟に対応することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るプログラム消去装置10Bは、エレベータ制御盤30などの外部装置から時間情報を取得してカウンタ15による時間のカウントを行うようにしているので、プログラム消去装置10Bの構成をより簡単なものとして、プログラム消去装置10Bを小型化することができる。
【0039】
なお、上述の第1実施形態および第2実施形態では、プログラム消去装置10A,10Bを遠隔監視装置20とは別の独立した装置として構成することを想定したが、プログラム消去装置10A,10Bは、遠隔監視装置20の一機能として実現することもできる。また、プログラム消去装置10A,10Bは、エレベータ制御盤30の一機能として実現することもできる。
【0040】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、保守契約の終了後に遠隔監視装置20を回収できない場合であっても、遠隔監視用プログラム21が解析されて技術情報が流出してしまうといった不都合を有効に防止することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
10A,10B プログラム消去装置、11 タイマ、12 制御部、13 リセットスイッチ、17 接続部、20 遠隔監視装置、21 遠隔監視用プログラム、30 エレベータ制御盤、40 遠隔監視サーバ、60 保守端末。
【要約】
【課題】保守契約の終了後に遠隔監視装置を回収できない場合であっても、遠隔監視用プログラムが解析されて技術情報が流出してしまうといった不都合を有効に防止することができるプログラム消去装置およびプログラム消去方法を提供する。
【解決手段】実施形態のプログラム消去装置は、タイマと、制御部と、を備える。タイマは、エレベータの保守作業が行われる間隔に基づいて設定時間が設定され、計測時間が前記設定時間に達すると制御信号を出力する。制御部は、前記タイマが前記制御信号を出力した場合に、前記エレベータの設置現場に設けられた遠隔監視装置が記憶する遠隔監視用プログラムを消去する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4