特許第6483301号(P6483301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483301自動車のサンルーフのためのスライド装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6483301
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】自動車のサンルーフのためのスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/02 20060101AFI20190304BHJP
   B60J 7/05 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B60J7/02 B
   B60J7/05 A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-34980(P2018-34980)
(22)【出願日】2018年2月28日
【審査請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】15/716,045
(32)【優先日】2017年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514248868
【氏名又は名称】アイシン テクニカル センター オブ アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AISIN TECHNICAL CENTER OF AMERICA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ハインズ
(72)【発明者】
【氏名】桂 慎太郎
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−247572(JP,A)
【文献】 特開平6−199133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/02
7/043
7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1溝及び第2溝を有してレールにスライド可能に連結されるシューと、
下溝に接続して第1経路を形成する前溝及び上溝に接続して第2経路を形成する後溝を有するガイドブロックと、
第1側面及び第2側面から突出する第1ピン、前記第1側面から突出する第2ピン及び前記第2側面から突出する第3ピンを有するレバーと、
を備え、
前記第1側面において前記第1ピンが前記ガイドブロックの前記前溝に連結されるとともに前記第2ピンが前記ガイドブロックの前記後溝に連結され、前記第2側面において前記第1ピンが前記シューの前記第1溝に連結されるとともに前記第3ピンが前記シューの前記第2溝に連結され、
前記第1ピンは前記ガイドブロックにおいて前記第1経路に沿って移動し、前記第2ピンは前記ガイドブロックにおいて前記第2経路に沿って移動する、
自動車のサンルーフのためのスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記前溝は、前記ガイドブロックの一面において、上向きに延びて前記下溝に対して第1角度をなして前記下溝に接続され、
前記後溝は、前記ガイドブロックの前記一面において、上向きに延びて前記上溝に対して第2角度をなして前記上溝に接続され、
前記第1経路及び前記第2経路は交差領域で交差する、スライド装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記前溝は、下溝から底縁部まで、非直線的に変化しながら増加する可変幅を有する、スライド装置。
【請求項4】
請求項1に記載のガイドブロックであって、
前記後溝は実質的に直線状に延びるとともに一定の幅を有し、前記前溝よりも長さが長いガイドブロック。
【請求項5】
請求項1に記載のガイドブロックであって、
前記下溝及び前記上溝は、前記ガイドブロックの水平方向に実質的に平行に延びる、ガイドブロック。
【請求項6】
請求項5に記載のガイドブロックであって、
前記下溝は前記上溝よりも長さが長く、前記ガイドブロックの垂直方向において前記上溝の下方に位置する、ガイドブロック。
【請求項7】
請求項2に記載のスライド装置であって、
一側面に摺動部を有するとともに他側面に前ピン保持部を有するチェックブロックであって、前記摺動部が前記ガイドブロックの前記前溝に対してスライド可能に連結されるとともに、前記前ピン保持部が、前記前ピン保持部に挿入された前記第1ピンを介して前記レバーに対して回動可能に連結されるチェックブロックと、
前記ガイドブロックの前記後溝にスライド可能に連結されるとともに前記第2ピンを介して前記レバーに回動可能に連結されるローラと、をさらに備えるスライド装置。
【請求項8】
請求項7に記載のスライド装置であって、
前記第1溝は、前記チェックブロックが前記前溝に沿って向きを変えて上向きに移動するように、前記チェックブロックを案内する切欠形状を有する、スライド装置。
【請求項9】
請求項8に記載のスライド装置であって、
前記レバーは、前記シューが前記レールに沿って前記自動車の後方に向けて移動するときに、第1位置、第2位置及び第3位置の間で変位する、スライド装置。
【請求項10】
請求項9に記載のスライド装置であって、
前記第1位置において、前記レバーは水平になり、前記第1ピン、前記第2ピン及び前記第3ピンは一列に並ぶ、スライド装置。
【請求項11】
請求項9に記載のスライド装置であって、
前記第2位置において、前記レバーの前記第1ピンは前記ガイドブロックの前記前溝に保持され、前記レバーの前記第2ピンは前記後溝内を上向きに移動して前記レバーを第1ピンの周りで回動させて上向きに傾ける、スライド装置。
【請求項12】
請求項9に記載のスライド装置であって、
前記第3位置において、前記レバーは傾いた状態になり、前記シューが前記レールに沿って移動するときに前記ガイドブロックから離れる、スライド装置。
【請求項13】
請求項12に記載のスライド装置であって、
前記前溝に配置される前記第1ピンは、前記第1経路に沿って前記前溝から前記後溝に向けて移動するときに、前記交差領域において前記後溝を通過する、スライド装置。
【請求項14】
請求項13に記載のスライド装置であって、
前記第1ピンは、前記後溝に位置する前記第2ピンが前記上溝内に向けて前記第2経路に沿って上向きに移動した後に、前記後溝を横切り、
第1ピン及び前記第2ピンは、同時に移動する、スライド装置。
【請求項15】
請求項8に記載のスライド装置であって、
前記後溝と前記前溝との間に位置する中間溝をさらに備える、スライド装置。
【請求項16】
請求項15に記載のスライド装置であって、
前記中間溝の幅寸法は、前記摺動部の長さ寸法よりも短い、スライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、可動式サンルーフの改良に関する。特に、本開示は、サンルーフを閉位置から開位置へ、また開位置から閉位置へ移動させるスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサンルーフは、固定式または可動式にすることができる。可動式サンルーフはスライドパネルを備え、このスライドパネルは、外光及び外気を車室内に入れるために自動車のルーフに開口を作る。
【0003】
一般的に、可動式サンルーフはスライドパネルを備え、このスライドパネルは、自動車のルーフに対して、チルトアップ及び/またはスライドすることが可能である。スライドパネルは、車の前側から後方に向けて移動可能である。スライドパネルはスライド機構に連結されており、このスライド機構は、スライドパネルを閉位置からチルトアップ位置及び全開位置に移動させるように設計されている。あるいは、スライドパネルは、チルトアップ位置のような中間位置を経ることなく直接開かれるように、ヒンジで連結されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0112498号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スライド機構は、手動で操作されることもあるし、電動モータにより自動で操作されることもある。スライド機構は、ルーフに設けられた開口の両側部に沿って設置される。スライド機構は、レールに沿ってスライドする可動部品と、チルトアップ及び水平な状態でのスライドといった異なる姿勢を実現するためのガイドブロックまたはガイドリンクを備える。また、スライド機構のガイドブロックにより、スライドパネルとルーフとの間に隙間が生じるので、見た目と自動車の空力特性に影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によれば、自動車のサンルーフのためのスライド装置が提供される。この装置は、第1溝及び第2溝を有してレールにスライド可能に連結されるシューと、下溝に接続して第1経路を形成する前溝及び上溝に接続して第2経路を形成する後溝を有するガイドブロックと、第1側面及び第2側面から突出する第1ピン、前記第1側面から突出する第2ピン及び前記第2側面から突出する第3ピンを有するレバーと、を備える。前記第1側面において前記第1ピンが前記ガイドブロックの前記前溝に連結されるとともに前記第2ピンが前記ガイドブロックの前記後溝に連結され、前記第2側面において前記第1ピンが前記シューの前記第1溝に連結されるとともに前記第3ピンが前記シューの前記第2溝に連結され、前記第1ピンは前記ガイドブロックにおいて前記第1経路に沿って移動し、前記第2ピンは前記ガイドブロックにおいて前記第2経路に沿って移動する。
【0007】
前記スライド装置は、さらに、輪郭線が閉じた形状の摺動部を一側面に有するとともに他側面に前記前ピン保持部を有するチェックブロックであって、前記摺動部が前記ガイドブロックの前記前溝に対してスライド可能に連結されるとともに、前記前ピン保持部が、前記前ピン保持部に挿入された前記第1ピンを介して前記レバーに対して回動可能に連結されるチェックブロックと、前記ガイドブロックの前記後溝にスライド可能に連結されるとともに前記第2ピンを介して前記レバーに回動可能に連結されるローラとを備える。
【0008】
以上の一般的な実施の例示及び以下の詳細な説明は、本開示が示唆する例示的な態様に過ぎず、限定的なものではない。
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、明細書の一部を構成し、1つ以上の実施形態を示し、詳細な説明と共に、これらの実施形態を説明する。添付の図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。添付のグラフ及び図に示される値の大きさは、あくまでも説明を目的とするものであり、必ずしも実際の値または大きさ、あるいは好ましい値または大きさを示すものではない。また、基本的な構成を説明するために、構成の全てを図示していない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の例示的な実施形態に係る自動車のサンルーフであり、(a)は第1位置にあるサンルーフ、(b)は第2位置にあるサンルーフ、(c)は第3位置にあるサンルーフを示す。
図2】本開示の例示的な実施形態に係る、レール上にあるスライド機構のガイドブロック及びシューの位置を示す。
図3(a)】本開示の例示的な実施形態に係るスライド機構の分解斜視図。
図3(b)】本開示の例示的な実施形態に係るスライド機構の分解斜視図。
図3(c)】本開示の例示的な実施形態に係るスライド機構のサブアセンブリを示す。
図4】(a)及び(b)は、本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロックにおけるピンの動きを示す図。
図5】本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロックの斜視図。
図6】(a),(b)は、本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロック及び交差領域を複数の方向から見た図。
図6(c)】本開示の例示的な実施形態に係る、ガイドブロックの後溝及び前溝の断面図。
図7】(a)〜(d)は、本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロックのチェックブロック。
図8】(a),(b)は、本開示の例示的な実施形態に係るシューを複数の方向から見た図。
図9(a)】本開示の例示的な実施形態において、第1位置(閉)にあるスライド用サブアセンブリを示す。
図9(b)】本開示の例示的な実施形態において、第2位置(チルトアップ)にあるスライド用サブアセンブリを示す。
図9(c)】本開示の例示的な実施形態において、第3位置(開)にあるスライド用サブアセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面に関連する以下の説明は、開示された主題の様々な実施形態の説明とすることを意図しており、唯一の実施形態を示すことを意図するものではない。
なお、本開示における「左」「右」「上」「底」「前」「後」「側方」「高さ」「長さ」「幅」「上」「下」「内」「外」等の用語は、単に参照の基準を示すものであり、本開示の実施形態を特定の配向または構成として限定するものではない。さらに、「第1の」「第2の」「第3の」等の用語は、単に、本開示における、複数の部分、構成、工程、動作、機能、または基準点のうちの一つを特定するものであり、本開示の実施形態を特定の構成または適応として限定するものではない。
【0011】
さらに、「概ね」「実質的に」「近い」「小さい」等の用語及びこれらと同様の用語は、概して、特定の実施形態または任意の値として、20%または10%、好ましくは5%の範囲内の特定の値を含む範囲を指す。
【0012】
図1(a)〜(c)は、本開示の例示的な実施形態において、それぞれ第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3にあるときの自動車のサンルーフを示す。自動車のサンルーフは、サイドガーニッシュAsideを有する第1パネルAと、第2パネルBとを有する。第1パネルAはスライド機構10(図3(a)に示す)に連結され、このスライド機構10は、第1パネルAを傾けて第2パネルBの上にスライドさせる。スライド機構10により、第1パネルAは第1位置P1(閉位置ともいう)、第2位置P2(チルトアップ位置ともいう)及び第3位置P3(開位置ともいう)に位置することが可能になる。スライド機構10は、第1パネルAの傾動動作及びスライド動作を規定するガイドブロック100を有する。
【0013】
通常、スライド機構10のガイドブロック100は、レール20の上に設置される。スライド機構の従来のガイドブロックにおいては、第1パネルAが摺動するときに、第1パネルAと第2パネルBとの間に隙間が生じる。本開示のガイドブロック100は、第1パネルA、特にサイドガーニッシュAsideが第2パネルBと同一面内に保持されるので、隙間が小さくなる。
【0014】
図2は、本開示の例示的な実施形態における、レール20上にあるスライド機構10のガイドブロック100及びシュー200の位置を示す。ガイドブロック100は、シュー200に対して、内側(左側)に位置する。内側部分は、シュー200が取り付けられている外側(右側)部分と比較して、大きさが小さい。このように、ガイドブロック100の大きさは、レール20の構造によって制限される。ガイドブロック100の高さ寸法をHguideとし、厚さ寸法をtguideとする。高さ寸法Hguideは、シュー200の高さ寸法であるHshoeよりも短い。また、厚さ寸法tguideは、シュー200の厚さ寸法であるtshoeよりも短い。
【0015】
図3(a),(b)は、本開示の例示的な実施形態に係るスライド機構10の分解斜視図である。スライド機構10は、ガイドブロック100、シュー200、チェックブロック300、ローラ400、リンク500及びブラケット600を有する。スライド機構は、組み立てられてブラケット600を介してパネルA(図1参照)に連結されるとよい。一方のスライド機構10をパネルAの左側に取り付けるとともに、他方のスライド機構10をパネルAの右側に取り付けるようにするとよい。
【0016】
図3(a)に示すように、シュー200はガイドブロック100及びリンク500に対して外側に配置される。シュー200は、第1溝201及び第2溝202(図3(b)参照)を有する。シュー200は、レール20(図1参照)に沿って車両の前方から車両の後方に向けてスライド可能な可動部品である。シュー200は、レール20に沿ったシュー200の移動を可能にするモータ(図示しない)に連結するとよい。シュー200は、リンク500及びブラケット600を介して、第1位置P1、第2位置P2及び第3位置P3においてパネルAを駆動させることができる。
【0017】
リンク500は、一体となってナイフのような構造を形成する三角形状部510及びハンドル部515を有する。リンク500は、リンク500の三角形状部510から突出する、第1ピン501(前ピン501ともいう)、第2ピン502(後ピン502ともいう)及び第3ピン503を有する。リンク500は、外側がシュー200に連結されるとともに、内側がガイドブロック100に連結される。さらに、リンク500は、リベット504を介してブラケット600に連結してもよい。これにより、ブラケット600はリンク500の動きに追従して、ブラケット600及び第1パネルAを位置P1、P2及びP3の間で移動させることができる。
【0018】
内側において、第1ピン501はガイドブロックの前溝101に連結され、第2ピン502はガイドブロックの後溝105に連結される。また、外側において、第1ピン501はシュー200の第1溝201に連結され、第3ピン503はシュー200の第2溝202に連結される。
【0019】
ガイドブロック100は、シュー200及びリンク500に対して内側に配置される。ガイドブロック100は複数の溝(図4(a)及び図5を参照して後述する)を有し、これら溝によって前ピン501及び後ピン502の動きを規定することにより、リンク500が第1パネルAを第1位置P1、第2位置P2及び第3位置P3に移動させる。スライド機構10の動作、特に、ガイドブロック100のサブアセンブリ、シュー200及びリンク500の動作の詳細については、図9(a),(b),(c)を参照して後述する。
【0020】
図3(c)は、本開示の例示的な実施形態に係るスライド機構10の部品を示す。シュー200は、第1ピン501及び第3ピン503を介してリンク500に連結される。第1ピン501は、シュー200の第1溝201にスライド可能に連結され、第3ピン503はシュー200の第2溝202にスライド可能に連結される。したがって、リンク500とシュー200との間の相対移動は、第1溝201及び第2溝202によって規定される。
【0021】
また、リンク500は、第1ピン501及び第2ピン502を介してガイドブロック100に連結される。前ピン501は、チェックブロック300に挿入されてガイドブロック100の前溝101に連結される。第2ピン502は、ローラ400に挿入されてガイドブロック100の後溝105に連結される。したがって、リンク500とガイドブロック100との間の相対移動は、前溝101及び後溝105によって規定される。さらに、ガイドブロック100は、ガイドブロック100のクリップ116及び118を介して、ブラケット600に固定した状態で連結される。ガイドブロック100のサブアセンブリ及びリンク500は、図4(b)にも図示されている。
【0022】
図4(a)は、本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロックにおける前ピン501及び後ピン502の移動経路を示す。前ピン501は、図4(b)の上面部にも示すように、チェックブロック300を介して連結された前溝101内に配置されている。ガイドブロック100において、前ピン501は第1経路X1を移動し、後ピン502は第2経路X2を移動する。前ピン501は第1経路X1に沿って移動し、第1経路X1に沿って前溝101から後溝105に向かって移動するときに、交差領域CX1において後溝105を横切る。交差領域CX1は、第1経路X1沿いに配置される。交差領域CX1において、前ピン501は、後ピン502の移動を妨げることなく後溝105を横切り、このとき、後ピン502は前ピン501と同時に後溝105内を経路X2に沿って移動する。第2ピン502は、第1ピン501が交差領域CX1に到達する前に交差領域CX1を通過するので、第2ピン502は第1ピン501の動きを妨げることがない。
【0023】
図5は、本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロック100の斜視図である。ガイドブロック100は、略矩形箱体状をなし、その箱体の側面には複数の溝が形成されている。ガイドブロック100は、前溝101、下溝102、後溝105及び上溝106を有する。さらに、ガイドブロック100は、中間溝103を有してもよい。溝101,102,103,105,106は第1面F1に形成され、y軸(第1面F1に対して垂直な方向軸)に沿う深さを有する。溝101,102,103,105,106の深さは、異なっていてもよい。
【0024】
前溝101は、上向きに延びて、下溝102に対して第1角度θをなすように下溝102に接続されて、第1経路X1を形成する。後溝105は、上向きに延びて、上溝106に対して第2角度θをなすように下溝102に接続され、第2経路X2を形成する。前溝101の第1角度θは後溝105の第2角度θより大きいので、後溝105は前溝101よりも急傾斜になっている。さらに、下溝102及び上溝106は後方に向けて水平に延びて、互いに実質的に平行になっている。
【0025】
中間溝103は、前溝101と後溝105の間に形成するとよい。中間溝103は、Tの字を反転させた形状にすることができる。中間溝103は、ガイドブロック100をレール20に連結させるためのクリップ116(図3(b)参照)のような取付手段を製造するために形成されることがある。例えば、ガイドブロック100の射出成形中に、中間溝103は、クリップを作るための金型を用いて形成される。また、中間溝103を設けると、前溝101の裏側に位置するクリップ116と平行をなすように配置可能な取付手段を容易に追加することができる。
【0026】
さらに、ガイドブロック100は、チェックブロック300及びローラ400に連結されてもよい。チェックブロック300は前溝101に対してスライド可能に連結することができ、ローラ400は後溝105に対してスライド可能に連結することができる。チェックブロック300は経路X1に沿って移動可能であり、ローラ400は経路X2に沿って移動可能である。
【0027】
ガイドブロック100は一体構造を有する。ガイドブロック100は、鋼、鋳鉄、アルミニウム、またはプラスチックなど、金属及び非金属材料を含む種々の材料で作ることができる。溝101,102,103,105,106は、フライス加工、形削り、切断、成形、鋳造などの標準的な機械加工及び製造プロセスを用いて形成することができる。
【0028】
図6(a),(b)は、それぞれ、本開示の例示的な実施形態に係るガイドブロックの立面図及び側面図を示す。前溝101は、側縁部101c,101dを介して、湾曲縁部101bに対して継ぎ目がないように接続された底縁部101aを有する。前溝101は、下溝102から底縁部101aまで、非直線的に変化しながら増加する可変幅を有している。さらに、底縁部101aは、前溝101に連結される要素(例えば、チェックブロック300)の水平移動を妨げるための切欠形状101nを有してもよい。なお、底縁部101aを水平又はx軸に対して第3角度θに傾斜させ、チェックブロック300(図6(a),(b)では図示しない)を上向きに移動しやすくすることもできる。
【0029】
後溝105は、実質的に直線状に形成されるとともに一定の幅を有し、その長さは前溝101の長さよりも長い。図6(c)において、B−B断面は、後溝105の幅寸法Wr及び深さ寸法Drを示す。A−A断面は、下溝102の幅寸法WLC及び深さ寸法DLCを示す。幅比(Wr/WLC)は1よりも大きくすることができ、例えば、比率(Wr/WLC)は1.75:1とすることができ、図示する後溝105の幅寸法は、下溝102の幅寸法よりも大きい。同様に、深さ比率(Dr/DLC)は1よりも大きくすることができ、例えば、比率(Dr/DLC)は1.25:1とすることができ、図示する後溝105の深さ寸法は、下溝102の深さ寸法よりも大きい。
【0030】
後溝105は下溝102と交差領域CX1で交差する。従来、交差領域はガイドブロックに存在しなかったので、前ピンが後ピンの移動経路を横切ることはなかった。交差領域CX1によりガイドブロック100の相対的な長さが短くなるので、ガイドブロック100がコンパクトになる。
【0031】
下溝102及び上溝106は、左方に向かって水平方向に延びる。下溝102は上溝106より長く、下溝102は上溝106の下方に位置する。下溝102の長さ寸法をLLCとし、幅寸法をWLCとする。下溝102は、ガイドブロック100の底から高さHLCの位置に配置される。下溝102と上溝106の間の距離をDとする。
【0032】
図7(a)〜(d)は、本開示の例示的な実施形態に係るチェックブロック300を異なる方向から見た図を示す。図7(a),(d)は、それぞれチェックブロック300の正面図と背面図であり、チェックブロック300は、面取り縁310を有して概ね長方形の形状を有する。図7(a)に示すように、チェックブロック300の前側には、前ピン保持部301が設けられる。前ピン保持部301は、チェックブロック300の矩形の表面から延びる円形の突起である。前ピン保持部301は、前ピン穴305を有する。また、前ピン穴305は、内側に3つの凹部305a,305b,305cを有することにより、前ピン501とチェックブロック300との間に隙間を確保している。また、凹部305a〜305cにより、前ピン501はチェックブロック300に対して回転可能になっている。さらに、前ピン保持部301は、チェックブロック300の中心から面取り縁310に向かって距離Doffsetだけずれた位置にある。
【0033】
さらに、チェックブロック300は、図7(d),(b),(c)に示すように、摺動部321を有する。摺動部321は、チェックブロック300の裏側から延びる、輪郭を有する突起部である。摺動部321は、ガイドブロック100(図4(a)参照)の前溝101に収容される。摺動部321の輪郭形状により、チェックブロック300は、第1位置P1または第2位置P2にあるときに、前溝101内においてロックされた状態に保持される。さらにこの輪郭形状により、チェックブロック300は、第3位置P3に向けて上向きに引き上げられたときに、ガイドブロック100の下溝102に向けて摺動することができる。このように、前ピン保持部301の輪郭形状及び位置のずれにより、チェックブロック300は、レバー500が第1ピン501の周りを回転する間に前溝101内にロックされた状態に保持されるとともに、上向きに引き上げられたときには下溝102に向けて摺動することができるようになる。
【0034】
一実施形態において、摺動部の長さ寸法LSPは、ガイドブロック100の中間溝103の幅寸法よりも大きくして、チェックブロック300がガイドブロック100の中間溝103内に滑り落ちないようにするとよい。
【0035】
また、チェックブロック300は、複数の突起303a,303b,303cを有する。突起303a〜303cにより、前ピン保持部301と前ピン保持部301に連結されるリンク500との間に空間が設けられる。また、各突起303a〜303cはリンク500に対して点接触するので、摩擦が減り、チェックブロック300の摺動が滑らかになる。
【0036】
図4(a)及び(b)に戻って、チェックブロック300は、レバー500を前ピン501の周りで回転させるとともに、前ピン501を前溝101内に引き上げて第1経路X1に向けて移動させる。チェックブロック300の摺動部321は、前溝101内を非直線的に移動できるので、湾曲縁部101bに沿った第1ピンの非直線的な移動を抑制し、第1ピンのための滑らかな経路(例えば、第1経路X1)を実現することができる。チェックブロック300により、前ピン501は第1経路X1に沿って前後に移動可能になる。チェックブロック300の摺動部321が前溝101の非直線部分を補うことによって、第1ピン501が湾曲縁部101bの不規則な形状に沿って滑らかに移動することが可能になる。
【0037】
図7(a)〜(d)に戻って、チェックブロック300の長さ寸法をLCB、厚さ寸法をtCBとする。摺動部321の長さ寸法をLSP、幅寸法をWSP、厚さ寸法をtSPとする。摺動部321の厚さ寸法tSP及び長さ寸法LSPは、ガイドブロック100の下溝102に嵌合されるように設定される。そのため、幅寸法WSPは、下溝102(図6(a))の幅寸法と概ね同じか、それよりも小さい。円形部301の直径をDCPとし、厚さ寸法をtCPとする。
【0038】
図8(a),(b)は、本開示の例示的な実施形態に係るシュー200を複数の方向から見た図である。シュー200は、略矩形箱体状をなし、その箱体の一面には第1溝201が形成されている。第1溝201及び第2溝202は、シュー200の右端において同じ高さで始まる輪郭形状を有する。シュー200の長さをLshoeとし、シュー200の厚さをtshoeとする。
【0039】
第1溝201は、長さL6の水平部と、角度θで傾斜する長さL7の傾斜部とを有する。第1溝201は、概ねシュー200の底から中央部まで上向きに延びるようにするとよい。
【0040】
第2溝202は、各踏面(step)が傾斜部によって連結された階段状の構造を有する。第2溝202は、長さLの第1水平部と、角度θで傾斜する長さLの第2傾斜部と、長さLの第3水平部と、角度θで傾斜する長さLの第4傾斜部と、長さLの第5水平部とを有する。第2溝202は、シュー200の底から上端に向けて、連続的に延びる。
【0041】
図9(a),(b)及び図9(c)に示すように、スライド機構10が作動する間、リンク500の第1ピン501は第1溝201に沿って移動し、第3ピン503は第2溝202に沿って移動する。
【0042】
図9(a)は、本開示の例示的な実施形態において、第1位置P1にあるスライド機構のサブアセンブリを示す。第1位置P1において、シュー200、ガイドブロック100及びレバー500は水平に並ぶ。ガイドブロック100及びレバーは、シュー200の右側に配置される。レバー500の第1ピン501はガイドブロック100の前溝101(ここでは図示略)に収容されているとともに、シュー200の第1溝201にも収容されている。前述したように、第2ピン502はガイドブロック100の後溝105(ここでは図示略)に収容されており、第3ピン503はシュー200の第2溝202に収容されている。ピン501,502,503は実質的に同じ高さにある。シュー200の左端を、レール20沿いにおいて車両の前部に近い第1基準点Y1とする。
【0043】
図9(b)に示すように、シュー200が後方に移動するとき、スライド機構はチルトアップ位置または第2位置P2に位置する。
図9(b)において、シュー200は第2基準点Y2に向けて、ガイドブロック100及びレバー500に対して後方に移動する。例えば、シュー200は、第1基準点Y1から第2基準点Y2までの距離D1(例えば、64mm)だけ、車両の後方に向かって移動する。シュー200が移動するとき、チェックブロック300は切欠形状101n(図示しない)によってロックされたまま保持され、レバー500は角度θtだけ第1ピン501の周りを回転する。レバー500が回転するとき、第2ピン502は経路X2(図4(a)に示す)に沿って移動し、後溝105の交差領域CX1のあたりで停止する。第2ピン502と同時に、第3ピン503はシュー200の第1溝201に沿って上向きに移動し、第1溝201の第2水平部の真ん中あたりで停止する。第1ピン501はガイドブロック100の前溝101内に残ったまま、移動しない。これにより、スライド機構10(図示しない)はチルトアップ位置(すなわち、第2位置P2)に位置する。
【0044】
図9(c)は、本開示の例示的な実施形態において、第3位置P3にあるスライド用サブアセンブリを示す。第3位置P3に向けて、シュー200は、レバー500とともに、第1基準点Y1から第3基準点Y3に向けて距離D2だけ後方に移動する。シュー200が移動するとき、切欠形状101n(図6(a)参照)は、チェックブロック300が第1溝201に沿って向きを代えて上向きに移動するように、補助する。切欠形状101nがない場合、チェックブロック300は側縁部101c(図6(a)参照)によって移動を妨げられ、下溝102に向けて上向きに向きを変えて下溝102に向けて移動することができない。相対的に、シュー200及びレバー500は車両の後側に配置され、ガイドブロック100は車両の前側に位置する。また、レバー500は傾斜した位置に保持される。このように、ガイドブロック100はレバー500及びシュー200から分離される。シュー200は閉位置から車両の後方に向けて距離D2ほど移動して、開位置に位置する。
【0045】
第2位置P2から第3位置P3に向けて移動するときに、ローラ400及びチェックブロック300はガイドブロック100から分離されるが、シュー200及びレバー500に対する連結は維持される。
【0046】
第2ピン502を介してレバー500に連結されたローラ400は、ガイドブロック100の上溝106に沿って移動してガイドブロック100から離れ、引き続きレール20に沿って車両の後方に向けて移動する。同様に、第1ピン501を介してレバー500及びシュー200に連結されたチェックブロック300は、ガイドブロックの下溝102に沿って移動してガイドブロック100から離れ、引き続きレール20に沿って車両の後方に向けて移動する。
【0047】
レバー500はブラケット600(図3参照)を介してスライドパネルAに連結されているので、スライドパネルAは車両の後方に向けて移動して、開位置に位置する。
以上記載された実施形態は、単なる例示として提示されたものであり、本開示の範囲を限定するものではない。そして、ここに記載した新規な方法、装置及びシステムは、様々な形態で具体化することができる。さらに、ここに記載された方法、装置及びシステムの形態においては、本開示の主旨から逸脱しない範囲で、様々な省略、置換及び変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びその均等物は、本開示の範囲及び主旨に含まれる形態または改変を包含するように意図されている。
【要約】
【課題】改良されたスライド装置を提供する。
【解決手段】自動車のサンルーフのためのスライド装置は、第1溝及び第2溝を有してレールにスライド可能に連結されるシューと、下溝に接続して第1経路を形成する前溝及び上溝に接続して第2経路を形成する後溝を有するガイドブロックと、第1側面及び第2側面から突出する第1ピン、前記第1側面から突出する第2ピン及び前記第2側面から突出する第3ピンを有するレバーと、を備える。前記第1側面において前記第1ピンが前記前溝に連結されるとともに前記第2ピンが前記後溝に連結され、第2側面において前記第1ピンが前記第1溝に連結されるとともに前記第3ピンが前記第2溝に連結される。
【選択図】図3(b)
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4
図5
図6
図6(c)】
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】