(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された装置では、複数のベルトによって保持部を吊下げ支持し、複数のベルトがそれぞれ連結されるそれぞれの転動体を回転駆動させることで、転動体の転動動作によりベルトを巻き上げたり、巻き下げさせたりすることで保持部の昇降動作を行っている。そのため、複数の転動体を同期させて駆動させることで保持部の吊下げバランスを保ちながら昇降動作させており、各々のベルトに厚み誤差が生じていたり、転動体の直径に寸法誤差があったりすると、昇降動作中に保持部が傾くなど、昇降時の保持部の吊下げ姿勢に影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
特許文献2に開示された装置では、一対のテレスコ昇降機構を昇降駆動させることで保持部の昇降移動を行っているため、一対のテレスコ昇降機構を同期して作動させるための調整が必要である。また、一対のテレスコ昇降機構の動作距離が大きくなると、それらの動作を同期させるための調整が複雑になる可能性がある。さらに、テレスコ昇降機構によって保持部を支持するため、昇降時の動作(揺れ)を考慮してテレスコ昇降機構の剛性を高くする必要が発生し、装置全体の重量が大きくなる可能性がある。
【0009】
特許文献3に開示された装置では、保持部を三点で支持し、そのうち一つの支持点については、天秤揺動機構を構成し、天秤揺動機構を介して4本のベルト部材で吊り下げて保持部を昇降させている。ベルトのみの吊り下げ支持のため、ロングストロークになるとそれぞれのベルトの製造誤差により振動が増幅され、揺れが大きくなる可能性がある。また、巻き下げ時の保持部の停止位置での安定に時間がかかり、移送効率が低下する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保持部の傾きを防止すると共に、ワーク(被搬送物)を保持する保持部の昇降動作における揺れを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る搬送装置は、被搬送物を保持する保持部と、前記保持部を揺動自在に支持する支持部材と、その先端が前記支持部材に連結され、前記支持部材を介して前記保持部を吊下する複数の吊下部材と、前記複数の吊下部材の各々の基端が、送り出し及び巻き取り自在に接続されるリール部と、複数の前記リール部を搭載するベース部と、前記保持部と係合され、前記保持部の下降又は上昇をガイドするガイド部と、前記リール部における前記吊下部材の送り出し及び巻き取りの動作制御を含む制御部と、を備え
、
前記吊下部材は、所定の幅及び厚みを有するベルト部材であり、前記ベルト部材は、前記保持部を支持する前記支持部材の揺動支持部がその間になるように2本の前記ベルト部材を前記幅の方向に間隔を空けて並べて前記支持部材に接続され、前記2つのベルト部材の吊位置は、前記厚み方向における前記保持部の重心位置の上方の位置に配置されるよう前記支持部材に接続されている。
【0012】
本発明に係る搬送装置において、前記支持部材は、前記吊下部材の各々の先端を保持する吊保持部材と、前記吊保持部材が、前記
吊下部材が枢動自在に連結される揺動連結部と、を備えていてもよい。
【0014】
本発明に係る搬送装置は、前記保持部の前記支持部材に対する傾きを検出する傾き検出部をさらに備えていてもよい。前記制御部は、前記傾き検出部による検出結果に基づいて、前記リール部の動作制御を行う。
【0015】
本発明に係る搬送装置において、前記ガイド部は、前記ベース部に固定され、前記保持部の昇降方向に延在する板状の固定ガイド体と、前記固定ガイド体に前記保持部の昇降方向に移動可能に支持されると共に、前記保持部が係合する板状の移動ガイド体と、を備えていてもよい。
【0016】
本発明に係る搬送装置において、前記移動ガイド体は、前記保持部が係合する先端移動ガイド体と、前記先端移動ガイド体と前記固定ガイド体との間に配置され、前記先端移動ガイド体及び前記固定ガイド体の各々に相対移動可能に設けられた中間移動ガイド体と、を備えていてもよく、前記ガイド部は、前記保持部の昇降動作に応じて前記先端移動ガイド体及び前記中間移動ガイド体を連動させて移動させる連動機構を備えていてもよい。
【0017】
本発明に係る搬送装置
は、被搬送物を保持する保持部と、
前記保持部を揺動自在に支持する支持部材と、
その先端が前記支持部材に連結され、前記支持部材を介して前記保持部を吊下する複数の吊下部材と、
前記複数の吊下部材の各々の基端が、送り出し及び巻き取り自在に接続されるリール部と、
複数の前記リール部を搭載するベース部と、
前記保持部と係合され、前記保持部の下降又は上昇をガイドするガイド部と、
前記リール部における前記吊下部材の送り出し及び巻き取りの動作制御を含む制御部と、を備え、
前記ガイド部は、
前記ベース部に固定され、前記保持部の昇降方向に延在する板状の固定ガイド体と、
前記固定ガイド体に前記保持部の昇降方向に移動可能に支持されると共に、前記保持部が係合する板状の移動ガイド体と、を備え、
前記移動ガイド体は、
前記保持部が係合する先端移動ガイド体と、
前記先端移動ガイド体と前記固定ガイド体との間に配置され、前記先端移動ガイド体及び前記固定ガイド体の各々に相対移動可能に設けられた中間移動ガイド体と、を備え、
前記ガイド部は、前記保持部の昇降動作に応じて前記先端移動ガイド体及び前記中間移動ガイド体を連動させて移動させる連動機構を備え、
前記固定ガイド体は、前記中間移動ガイド体に設けられた中間案内部材が係合され、該中間案内部材の移動をガイドする固定ガイドレールを備え
、
前記中間移動ガイド体は、前記中間案内部材と、前記先端移動ガイド体に設けられた先端案内部材が係合され、該先端案内部材の移動をガイドする中間ガイドレールとを備え
、
前記先端移動ガイド体は、前記先端案内部材と、前記保持部に設けられた保持案内部材が係合され、該保持案内部材の移動をガイドする先端ガイドレールと、前記保持部に設けられた係合部材が係合する被係合部とを備え
、
前記連動機構は、前記中間移動ガイド体の上部及び下部に取り付けられた一対の転動体と、前記一対の転動体に掛け回されて該転動体の輪転に伴い回動する無端のベルト部材とを有し
、
前記ベルト部材は、前記移動ガイド体側のある箇所が前記移動ガイド体側に固定される一方固定部と、前記ある箇所とは異なる前記固定ガイド体側の別の箇所が前記固定ガイド体側に固定される他方固定部と、を
備える。
【0018】
本発明に係る搬送装置において、前記保持部は、前記ベース部に間隔を空けて設けられた一対の前記ガイド部の間に配置されてもよい。前記保持部は前記ガイド部の双方に係合し、前記リール部の作動により昇降する。
【0019】
本発明に係る搬送装置は、前記ベース部に設けられ、昇降方向と交差する方向に設けられた移送路に沿って前記ベース部を走行させる走行部をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、支持部材が保持部を揺動自在に支持しているので、吊下部材に起こり得る形状(厚み)誤差や巻き取り癖などに起因して、支持部材が傾くなどの姿勢変化が生じても、保持部はその影響を受けず、傾くことがないため、常に水平に維持される。加えて、保持部は、ガイド部によってガイドされながら昇降されるので、昇降中の保持部に揺れが生じることもない。これにより、保持部の昇降時の安定性を高く維持して被搬送物を搬送することができる。このように、保持部を昇降させる際に高い安定性を確保することは、吊下部材の長さを長くして保持部の昇降のストロークを大きくする場合にも有効である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る搬送装置について以下に説明する。
図1から
図3に示すように、本発明の第一の実施形態としての搬送装置1は、工場や倉庫などの建屋の内部で床面側に置かれた被搬送物を搬送する装置であって、被搬送物としてのタイヤTを内周部から保持する保持ユニット(保持部)10と、保持ユニット10を建屋の床面に対して昇降させる昇降ユニット20と、保持ユニット10を昇降ユニット20に対して揺動可能に支持する揺動支持ユニット(支持部材)30と、昇降ユニット20により昇降される保持ユニット10の昇降をガイドする昇降ガイドユニット(ガイド部)40と、保持ユニット10及び昇降ユニット20の各動作を制御する制御ユニット(制御部)70とを備える。また、搬送装置1は、建屋の天井に敷設されたレール(移送路)Rに沿って走行移動され、保持ユニット10と共に昇降ユニット20及び昇降ガイドユニット40を移動させる走行ユニット(走行部)60を備える。また、搬送装置1の走行は、制御ユニット70が走行ユニット60を制御することで行われる。また、搬送装置1は、保持ユニット10に保持されたタイヤTの落下を防止する落下防止機構80を備える。
【0023】
保持ユニット10は、筐体11と、筐体11から下方に突き出す3本のバー12と、これら3本のバー12を相互に接近又は離間するように変位させる変位機構13とを有している。3本のバー12は、それぞれタイヤTの中心部に対して60°の位相差をもたせて、正三角形の頂点の位置に位置するように配置されている。制御ユニット70は、変位機構13を制御して3本のバー12を拡径する方向に移動させることによりタイヤTの内周部にバー12を当接させてタイヤTを保持し、また、3本のバー12を縮径する方向に移動させることによりタイヤTの内周部からバー12を離間させてタイヤTを解放する。
【0024】
昇降ユニット20は、保持ユニット10を吊下する一対のベルト部材(吊下部材)21a、21bと、搬送装置1のベース部14に搭載され、ベルト部材21a、21bを同時に送り出したり巻き取ったりして保持ユニット10を昇降させる昇降駆動機構22とを有している。ベルト部材21a、21bは、所定の幅及び厚みを有している。
【0025】
昇降駆動機構22は、ベルト部材21a、21bの各々の基端が送り出し及び巻き取り自在に接続される2つのリール部23a、23bと、これらリール部23a、23bを回転駆動させる駆動モータ部24とを有している。リール部23a、23bは、走行ユニット60による搬送装置1の移動方向と平行な軸部25の周面に、間隔を空けて配置されている。2つのリール部23a、23bには、それぞれベルト部材21a、21bが接続される。また、昇降駆動機構22は、リール部23a、23bのそれぞれ下方位置に設けられ、鉛直方向に垂下するベルト部材21a、21bの、当該ベルト部材21a、21bの厚み方向に一致する水平方向の位置をそれぞれ規定するリール補助部23a1、23b1を備える。リール補助部23a1、23b1は、リール部23a、23bに巻かれるベルト部材21a、21bの厚み方向の一方となる面にそれぞれ当接されるとともに回転軸周りに回転自在に設けられ、巻き径の変化によって変化するベルト部材21a、21bの厚み方向の吊り位置の変化を防止する。ベルト部材21a、21bは、リール補助部23a1、23b1により、その鉛直方向に垂下する位置が後述する第1の揺動連結部34a及び第2の揺動連結部34bの直上に位置するように調整される。リール補助部23a1、23b1は、走行ユニット60に構成される不図示の支持部材に転動可能にそれぞれ支持され、2つのリール部23a、23bと保持ユニット10との間に配置される。
【0026】
制御ユニット70は、駆動モータ部24を制御して軸部25を正方向に回転させることにより2つのリール部23a、23bからベルト部材21a、21bを同時に送り出し、また、軸部25を逆方向に回転させることによりリール部23a、23bにベルト部材21a、21bを同時に巻き取る。
【0027】
揺動支持ユニット30は、吊下接続部(吊保持部材)31と、吊下接続部31に設けられ、ベルト部材21a、21bの各々の先端が枢動自在に連結される第1の揺動連結部34a及び第2の揺動連結部334bとを有している。吊下接続部31は、リール部23a、23bの離間距離と同じ長さを有し、両端にベルト部材21a、21bの先端がそれぞれ枢動自在に連結される水平支持部材32と、水平支持部材32の中央に上端部が固定され、水平支持部材32から垂下される垂直支持部材33とを有している。水平支持部材32には、一方のベルト部材21aの先端が、第1の揺動連結部34aを介して水平支持部材32の一端に枢動自在に接続され、他方のベルト部材21bの先端が、第2の揺動連結部34bを介して水平支持部材32の他端に枢動自在に接続される。
【0028】
垂直支持部材33の垂下位置は、水平面において保持ユニット10の重心位置にほぼ一致するように、後述する固定支持部材35に接続される。これにより、2本のベルト部材21a、21bは、揺動支持ユニット30及び保持ユニット10の重心バランスを保って吊り下げ支持する。
【0029】
保持ユニット10における筐体11の上面に、固定支持部材35が固定される。固定支持部材35は、保持ユニット10の重心バランスを保って保持する吊り下げブラケットである。そして、保持ユニット10及び固定支持部材35の重心位置に、吊下接続部31の垂直支持部材33の下端部が、揺動支持部36を介して固定支持部材35に軸支される。これによって保持ユニット10は揺動支持ユニット30に対して枢動自在に連結される。垂直支持部材33と固定支持部材35との接続点は、保持ユニット10の重心の直上に位置する。
【0030】
揺動支持ユニット30と保持ユニット10との間には、揺動支持ユニット30に対する保持ユニット10の相対的な傾きを検出する姿勢検出ユニット(傾き検出部)37が設けられている。姿勢検出ユニット37は、垂直支持部材33に設けられる被検出体38と、保持ユニット10の筐体11の上面に設けられる状態検出センサ39とを有している。被検出体38は、垂直支持部材33の下端に、下方に突き出させて設けられる。状態検出センサ39は、保持ユニット10を昇降させる間、被検出体38に対する保持ユニット10(筐体11)の位置変化を常時検出する。状態検出センサ39には、例えば光学センサ、機械式の接触センサ、画像認識センサなどが採用される。制御ユニット70は、状態検出センサ39の検出結果に基づいて、被検出体38に対する保持ユニット10の位置変化量がある大きさを超えたとき、駆動モータ部24を制御して軸部25の回転駆動を停止させ、保持ユニット10の昇降を停止させる。
【0031】
昇降ガイドユニット40は、ベース部14の下部に、走行ユニット60による搬送装置1の移動方向に間隔を空けて設けられ、保持ユニット10を間に挟むようにして配置される第1、第2のガイド部40a、40bを有している。保持ユニット10の筐体11が、第1のガイド部40aと第2のガイド部40bとの間に配置され、双方に係合される。なお、第1のガイド部40aと第2のガイド部40bとは同じ構造を有するので、以下では第1のガイド部40aの構造を説明し、第2のガイド部40bについては図中に同じ符号を付して説明は省略する。
【0032】
第1のガイド部40aは、ベース部14の下部に固定され、保持ユニット10の昇降方向に延在する長板状の固定ガイド体41と、固定ガイド体41に対してスライド移動自在に支持される移動ガイド体42とを有している。この移動ガイド体42に、保持ユニット10が係合される。移動ガイド体42は、固定ガイド体41に対してスライド移動自在に支持される中間移動ガイド体44と、その中間移動ガイド体44に対してスライド移動自在に支持される先端移動ガイド体43とを含む。第1のガイド部40aに、保持ユニット10の昇降動作に応じて先端移動ガイド体43及び中間移動ガイド体44を連動させて伸縮させる連動機構50が設けられる。
【0033】
固定ガイド体41は長方形の板状をなし、長さ方向における上端がベース部14の下部に固定されてベース部14から垂下されており、保持ユニット10の昇降動作と同じ方向に延在する2本の固定ガイドレール41a、41bを有している。固定ガイドレール41a、41bは、固定ガイド体41の内側面(保持ユニット10側の面)に、固定ガイド体41の長手方向に沿って平行に固定されている。
【0034】
中間移動ガイド体44も長方形の板状をなしており、中間移動ガイド体44の外側面(固定ガイド体41側の面)に、中間案内部材45a、45bを備えている。これらの中間案内部材45a、45bが、固定ガイドレール41a、41bにそれぞれ摺動可能に係合される。中間案内部材45a、45bが固定ガイドレール41a、41bに沿って滑動することにより、中間移動ガイド体44が固定ガイド体41に対してスライド移動される。これにより、中間移動ガイド体44は固定ガイド体41に対して伸縮される。
【0035】
同様に、中間移動ガイド体44は、保持ユニット10の昇降動作と同じ方向に延在する2本の中間ガイドレール44a、44bを有している。中間ガイドレール44a、44bは、中間移動ガイド体44の内側面(保持ユニット10側の面)に、中間移動ガイド体44の長手方向に沿って平行に固定されている。一方、先端移動ガイド体43も長方形の板状をなしており、先端移動ガイド体43の外側面(中間移動ガイド体44側の面)に、先端案内部材46a、46bを備えている。これらの先端案内部材46a、46bが、中間ガイドレール44a、44bにそれぞれ摺動可能に係合される。先端案内部材46a、46bが中間ガイドレール44a、44bに沿って滑動することにより、先端移動ガイド体43が中間移動ガイド体44に対してスライド移動される。これにより、先端移動ガイド体43は中間移動ガイド体44に対して伸縮される。
【0036】
先端移動ガイド体43は、保持ユニット10の昇降方向に延在する2本の先端ガイドレール43a、43bを有している。先端ガイドレール43a、43bは、先端移動ガイド体43の内側面(保持ユニット10側の面)に、先端移動ガイド体43の長手方向に沿って平行に固定されている。一方、保持ユニット10は、その外側面(先端移動ガイド体43側の面)に、保持案内部材47a、47bを備えている。これらの保持案内部材47a、47bが、先端ガイドレール43a、43bにそれぞれ摺動可能に係合される。保持案内部材47a、47bが先端ガイドレール43a、43bに沿って滑動することにより、保持ユニット10が先端移動ガイド体43に対してスライド移動されるとともに、保持ユニット10の昇降がガイドされる。
【0037】
先端移動ガイド体43は、その長手方向に延びる矩形状の長孔431、431を上下に有する。また、保持ユニット10は、筐体11の長さ方向(
図2中では左右方向)の両端に、先端移動ガイド体43の下側の長孔431に係合される係合部15、15を備える。長孔431、431の間に被係合部48が設けられ、この被係合部48に係合部15が下方から当接することで、保持ユニット10の、先端移動ガイド体43に対する上向きの移動が規制される。
【0038】
連動機構50は、中間移動ガイド体44の上部及び下部に回転自在に取り付けられた一対のプーリ(転動体)51a、51bと、プーリ51a、51b間に掛け回された無端ベルト部材52と、無端ベルト部材52の外周面に設けられる第1のベルト固定部(一方固定部)53及び第2のベルト固定部(他方固定部)54とを有している。無端ベルト部材52は、プーリ51a、51b間に掛け回され、適切な張力が与えられている。第1のベルト固定部53は、無端ベルト部材52の外周面における先端移動ガイド体43の側に設けられる。また、第2のベルト固定部54は、無端ベルト部材52の外周面における固定ガイド体41の側に設けられる。さらに、第1のベルト固定部53及び第2のベルト固定部54は、無端ベルト部材52の周方向長さを等分する対極の位置になるよう、取付位置が調整されている。
【0039】
また、第1のベルト固定部53は先端移動ガイド体43の上端に、第2のベルト固定部54は固定ガイド体41の下端に、それぞれ固定される。これにより、第1のベルト固定部53が上昇(又は下降)されることで、無端ベルト部材52が走行駆動されるとともにプーリ51a及びプーリ51bが回転される。ここで、無端ベルト部材52に固定された第2のベルト固定部54は、固定ガイド体41の下端に固定されているため、実際には下降(又は上昇)されることはない。よって、第2のベルト固定部54が下降(又は上昇)される代わりに、中間移動ガイド体44が固定ガイド体41に対して上昇(又は下降)され、固定ガイド体41に対して中間移動ガイド体44が縮長(又は伸長)される。
【0040】
ここで、先端移動ガイド体43及び中間移動ガイド体44の連動作用を説明する。
図2は、先端移動ガイド体43が、中間移動ガイド体44に対する可動範囲の最も低い位置にあり、さらに中間移動ガイド体44が固定ガイド体41に対する可動範囲の最も低い位置にある状態を示している。このとき、第1のガイド部40a(若しくは第2のガイド部40b)が下方に最も伸長した状態となる。先端移動ガイド体43の上端は中間移動ガイド体44の下端に接近しているので、先端移動ガイド体43の上部に固定された第1のベルト固定部53は、中間移動ガイド体44に取り付けられた下部のプーリ51bに最も接近している。一方、中間移動ガイド体44の上端は固定ガイド体41の下端に接近しているので、固定ガイド体41の下部に固定された第2のベルト固定部54は、中間移動ガイド体44に取り付けられた上部のプーリ51aに最も接近している。
【0041】
この状態から、昇降駆動機構22を動作させ、ベルト部材21a、21bを巻き上げることで保持ユニット10が上昇される。このとき、筐体11における係合部15、15が、先端移動ガイド体43、43における下側の各長孔431の間を移動し、保持ユニット10の上昇が行われる。そして、係合部15、15が、被係合部48、48にそれぞれ下方から当接(係合部15、15の上面が被係合部48、48の下面にそれぞれ当接)することで、先端移動ガイド体43に上向きの力が作用され、先端移動ガイド体43が上昇を始める。この上昇に伴い、第1のベルト固定部53が上方へ移動される。第1のベルト固定部53の上方への移動に伴って無端ベルト部材52が時計回りに回転され、第2のベルト固定部54が下方へ移動される。第2のベルト固定部54は固定ガイド体41の下端に固定されており、それ自身が移動することはない。このため、実際には、無端ベルト部材52を支持するプーリ51a、51bを保持する中間移動ガイド体44が、無端ベルト部材52の時計回りの回転に伴い、固定ガイド体41に対して上方へ移動される。つまり、先端移動ガイド体43に上向きの力を作用させ、中間移動ガイド体44に対して先端移動ガイド体43及び第1のベルト固定部53を上方に移動させると、その移動に同調(連動)して、中間移動ガイド体44が固定ガイド体41に対して上方に移動される。これにより、第1のガイド部40a(若しくは第2のガイド部40b)が上方に向かって縮長される。
【0042】
次に、
図3は、先端移動ガイド体43が、中間移動ガイド体44に対する可動範囲の最も高い位置にあり、さらに中間移動ガイド体44が固定ガイド体41に対する可動範囲の最も高い位置にある状態を示している。すなわち、先端移動ガイド体43に上向きの力が作用し、先端移動ガイド体43及び中間移動ガイド体44が自らに作用する重力に抗して引き上げられ、第1のガイド部40a(若しくは第2のガイド部40b)が最も縮長された状態となる。このとき、先端移動ガイド体43の上端は中間移動ガイド体44の上端に接近しているので、先端移動ガイド体43の上部に固定された第1のベルト固定部53は、中間移動ガイド体44に取り付けられた上部のプーリ51aに最も接近している。一方、中間移動ガイド体44の下端は固定ガイド体41の下端に接近しているので、固定ガイド体41の下部に固定された第2のベルト固定部54は、中間移動ガイド体44に取り付けられた下部のプーリ51bに最も接近している。
【0043】
この状態から、昇降駆動機構22を動作させ、ベルト部材21a、21bを送り出すことで保持ユニット10が下降される。このとき、筐体11における係合部15、15が、先端移動ガイド体43、43における下側の各長孔431において係合部15、15の上面で被係合部48、48の下面をそれぞれ受けているので、保持ユニット10の下降移動に伴って、先端移動ガイド体43が、その自重により下降し始める。この下降に伴い、第1のベルト固定部53が下方へ移動される。第1のベルト固定部53の下方への移動に伴って無端ベルト部材52が反時計回りに回転され、第2のベルト固定部54が上方へ移動される。第2のベルト固定部54は固定ガイド体41の下端に固定されており、それ自身が移動することはない。このため、実際には、無端ベルト部材52を支持するプーリ51a、51bを保持する中間移動ガイド体44が、無端ベルト部材52の反時計回りの回転に伴い、固定ガイド体41に対して下方へ移動される。つまり、先端移動ガイド体43の自重による落下移動により、中間移動ガイド体44に対して先端移動ガイド体43及び第1のベルト固定部53を下方に移動させると、その移動に同調(連動)して、中間移動ガイド体44が固定ガイド体41に対して下方に移動される。これにより、第1のガイド部40a(若しくは第2のガイド部40b)が下方に向かって伸長される。
【0044】
図3に示すように、走行ユニット60は、レールR上を転動する車輪61と、ベース部14に搭載され、車輪61を回転駆動させる駆動モータ部62とを有している。制御ユニット70は、駆動モータ部62を制御して車輪61を回転駆動させ、走行ユニット60を含む搬送装置1を、工場や倉庫の建屋の天井に敷設された移送路としてのレールRに沿って走行させる。
【0045】
図2及び
図3に示すように、落下防止機構80は、第1のガイド部40及び第2のガイド部40bにそれぞれ設けられており、固定ガイド体41の下端に、内側に向けて揺動可能に支持された落下防止枠81と、落下防止枠81を揺動させるワイヤ82をと有している。落下防止枠81の基端は、固定ガイド体41の下端に固定された揺動支持部83に軸支されている。揺動支持部83の下端は水平面に形成され、この水平面が落下防止枠81の回動姿勢、特に閉動時の回動姿勢の規制部となる。ワイヤ82の一端は、中間移動ガイド体44の一方の側部又は両方の側部における中間部に連結され、ワイヤ82の他端は、落下防止枠81の一方の側部又は両方の側部における中間部に連結されている。中間移動ガイド体44が、先端移動ガイド体43と共に固定ガイド体41に対して上方へ移動されると、ワイヤ82の一端が連結された中間移動ガイド体44が上方へ移動される。その結果、ワイヤ82が緊張状態になり、
図2に示す垂直姿勢の落下防止枠81が揺動支持部83を中心に回動され始める。更に中間移動ガイド体44が上方へ移動されることで、ワイヤ82が緊張状態のまま上方へ移動され、落下防止枠81が90°回動されて水平姿勢となり、揺動支持部83によりその姿勢が規制される。中間移動ガイド体44が、固定ガイド体41に対して上方に移動され、固定ガイド体41に対する可動範囲の最も高い位置に達すると、落下防止枠81の先端は、固定ガイド体41の下端に取り付けられた揺動支持部83とほぼ同じ高さとなる。保持ユニット10がタイヤTを保持しているとき、両落下防止枠81の先端上面がタイヤTの下面における両側に位置されるため、タイヤTの落下が防止される。
【0046】
一方、中間移動ガイド体44が、先端移動ガイド体43と共に固定ガイド体41に対して下方へ移動されると、ワイヤ82の一端が連結された中間移動ガイド体44が下方へ移動される。その結果、ワイヤ82が緊張状態のまま下方へ移動されることで、水平姿勢の落下防止枠81が揺動支持部83を中心に回動され始める。更に中間移動ガイド体44が下方へ移動されることで、ワイヤ82の緊張状態が解除され、落下防止枠81が90°回動されて垂直姿勢となる。落下防止枠81の姿勢変換は、先端移動ガイド体43及び中間移動ガイド体44の移動に伴って動作されるため、保持ユニット10及び保持されるタイヤTの昇降動作に干渉することはない。
【0047】
上記のように構成された搬送装置1の動作について説明すると、まず、搬送装置1が、走行ユニット60によりレールR上を走行される。そして、搬送装置1が、床面上に置かれた被搬送物としてのタイヤTの直上に至ると、制御ユニット70が駆動モータ部62を制御し、走行ユニット60の車輪61の回転が停止される。
【0048】
続いて、昇降ユニット20が、軸部25を一方向(正方向)に回転させることにより2つのリール部23a、23bからベルト部材21a、21bの送り出しを開始させると、ベルト部材21a、21bの各々の先端が連結された揺動支持ユニット30を介して保持ユニット10の下降が開始される。保持ユニット10における筐体11の両側の係合部15及び一対の先端移動ガイド体43の被係合部48に当接されると、保持ユニット10の下降に伴い、先端移動ガイド体43もまた下方に移動される。このとき、連動機構50の働きにより、一対の中間移動ガイド体44もそれぞれの先端移動ガイド体43に同調(連動)して下方へ移動される。つまり、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bは、保持ユニット10の下降に伴い下方へ伸長される。また、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの伸長過程で一対の落下防止機構80が作動し、それぞれの落下防止枠81が、水平姿勢から垂直平姿勢に変換され、タイヤTの落下防止が解除される。
【0049】
一対の先端移動ガイド体43がそれぞれの中間移動ガイド体44に対する可動範囲の最も低い位置に達すると共に、一対の中間移動ガイド体44がそれぞれの固定ガイド体41に対する可動範囲の最も低い位置に達したとき、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bが最大に伸長された状態となる。それ以降もリール部23a、23bからベルト部材21a、21bを送り出すと、保持ユニット10の係合部15が一対の先端移動ガイド体43の被係合部48からそれぞれ離れ、保持ユニット10が先端移動ガイド体43に対して下方へ移動される。保持ユニット10が先端移動ガイド体43に対する可動範囲内において、床面に置かれたタイヤTの内周に3本のバー12が差し込まれた時点で、制御ユニット70は昇降ユニット20における軸部25の回転を停止させ、ベルト部材21a、21bの送り出し動作が停止される。これにより、保持ユニット10の下降が停止される。その後、制御ユニット70は変位機構13を動作させ、3本のバー12の相互の距離を拡げることにより、各バー12がタイヤTの内周に当接されてタイヤTが保持される。
【0050】
ここで、保持ユニット10の昇降する範囲は、昇降ユニット20がリール部23a、23bからベルト部材21a、21bを送り出す長さにほぼ等しい。よって、昇降ユニット20がベルト部材21a、21bを所定長分送り出し、保持ユニット10が先端移動ガイド体43の最も低い位置で停止した状態においても、揺動支持ユニット30及び保持ユニット10の重量は、ベルト部材21a、21bにより均等に負担される。したがって、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bが、揺動支持ユニット30及び保持ユニット10の重量を負担することはない。
【0051】
続いて、昇降ユニット20が、軸部25を他方向(逆方向)に回転させることにより2つのリール部23a、23bにベルト部材21a、21bの巻き取りを開始させると、保持ユニット10が上昇を開始する。保持ユニット10が先端移動ガイド体43に対して上方に移動し、保持ユニット10の両側の係合部15、15が一対の先端移動ガイド体43の被係合部48に下方からそれぞれ係合(当接)すると、保持ユニット10に先端移動ガイド体43が係止される。その後も継続してリール部23a、23bにベルト部材21a、21bを巻き取らせると、先端移動ガイド体43は自身の重力に抗して上方へ移動される。このとき、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの連動機構50、50の働きにより、中間移動ガイド体44、44もそれぞれの先端移動ガイド体43、43に同調して上方へ移動される。つまり、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bは、保持ユニット10の上昇に伴い上方へ縮長される。その過程で一対の落下防止機構80が作動し、それぞれの落下防止枠81、81が、垂直姿勢から水平姿勢に変換され、保持ユニット10の下側へ張り出してタイヤTの落下が防止される。
【0052】
先端移動ガイド体43、43がそれぞれの中間移動ガイド体44、44に対する可動範囲の最も高い位置に達すると共に、中間移動ガイド体44、44がそれぞれの固定ガイド体41、41に対する可動範囲の最も高い位置に到達されると、それぞれの、固定ガイド体41、41、中間移動ガイド体44、44及び先端移動ガイド体43、43が重なり、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの縮長が終わる。昇降ユニット20は保持ユニット10の上昇位置を検出する不図示の検出ユニットにより保持ユニット10を検出し、軸部25の回転駆動を停止させ、ベルト部材21a、21bの巻き取り動作を終了させる。これにより、保持ユニット10の上昇が停止される。
【0053】
その後、走行ユニット60が動作し、搬送装置1がレールR上を走行することで、保持ユニット10に保持されたタイヤTを搬送先へ搬送させる。搬送装置1が搬送先の直上に到達したら、上記の下降動作の要領で保持ユニット10を下降させ、タイヤTを所定の位置に載置させる。続いて、変位機構13を動作させ、3本のバー12の相互の距離を接近させることによりタイヤTの保持を解除させる。そして、再び上記の上昇動作の要領で保持ユニット10を上昇させる。
【0054】
上記のように構成された搬送装置1によれば、以下の効果を奏する。
例えば先行技術にあるように、複数のベルトによって保持部を吊下げ支持する場合、吊下部材であるベルトの形状(厚み)誤差や巻き取り癖、転動体の直径の寸法誤差などに起因して、ベルトの各々の先端の高さに相違が生まれる可能性がある。もし、ベルトの各々の先端の高さが相違すると、ベルトに吊り下げられた支持部材が傾くなど姿勢を変化させ、支持部材に固定された保持部の姿勢も変化してしまう。このような保持部の姿勢変化は、保持部に保持された被搬送物の安定を損ねてしまう。このような被搬送物の不安定さは、ベルトの形状誤差、巻き取り癖などに起因するので、ベルトを長くするほど、すなわち保持部の昇降ストロークを長くするほど顕著に現れる。
【0055】
先行技術において懸念されるこのような問題に対し、上記の搬送装置1によれば、保持ユニット10が、揺動支持ユニット30に揺動自在に支持されているので、保持ユニット10は、ベルト部材21a、21bの上記の諸要因に依存して、揺動支持ユニット30に上記のような姿勢変化が生じても、保持ユニット10はその影響を受けず、自らが傾くことはなく常に水平を維持する。加えて、保持ユニット10は、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bによってガイドされながら昇降動作を行うので、昇降中の保持ユニット10の揺れを防止できる。これにより、保持ユニット10の昇降時の安定性を高く維持してタイヤTの移送効率の向上ができる。このような、保持ユニット10を昇降させる際に高い安定性を確保することは、ベルト部材21a、21bを長くして保持ユニット10の昇降のストロークを伸す場合にも有効である。また、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bが、保持ユニット10を間に挟むようにして保持ユニット10をガイドするので揺れが生じ難い。つまり、タイや取出し位置または、タイや載置位置において、保持ユニット10の位置合わせのために揺れが収まるまで待つ必要がないので、移送効率が低下することはない。
【0056】
図4に示すように、上記の搬送装置1によれば、ベルト部材21a、21bの各々の先端が、第1の揺動連結部34a及び第2の揺動連結部34bを介して、吊下接続部31の両端に枢動自在に連結されているので、ベルト部材21a、21bの各々の先端の高さに相違が生まれたとしても、ベルト部材21a、21bの各々の先端は吊下接続部31に拘束されない。したがって、揺動支持ユニット30が傾くなど姿勢が変化しても、揺動支持ユニット30の姿勢変化の影響がベルト部材21a、21bの幅方向には及び難い。これにより、ベルト部材21a、21bがリール部23a、23bに対して捩れや傾きを生じないので、ベルト部材21a、21bとリール部23a、23bとが摺れることはない。その結果、保持ユニット10を安定して保持することができ、また、ベルト部材21a、21bの摩耗など搬送装置1の耐久性を低下させる要因を排除することができる。
【0057】
上記の搬送装置1によれば、ベルト部材21a、21bがベルト部材自身の幅方向に間隔を空けて並べて吊下接続部31の両端に接続される。保持ユニット10を支持する揺動支持部36は、2本のベルト部材21a、21bの間にあって双方から等距離に位置する。さらに2つのベルト部材21a、21bは、それらの吊位置(ベルト部材21a、21bと吊下接続部31との接続点)がベルト部材自身の厚み方向における保持ユニット10の重心位置の上方の位置に配置されるようにして吊下接続部31に接続される。このように、保持ユニット10の重量が2本のベルト部材21a、21bに等分に作用し、2本のベルト部材21a、21bに適切な張力が作用するように構成される。これにより、2本のベルト部材21a、21bの送り出し又は巻き上げが双方均一にスムーズに行われるので、保持ユニット10を昇降させる際に高い安定性を確保することができる。
【0058】
上記の搬送装置1においては、揺動支持ユニット30が極端に傾くなど揺動支持ユニット30の姿勢のバランスが崩れた場合、保持ユニット10の吊下げ状態に異常がある。そこで、上記の搬送装置1によれば、保持ユニット10を昇降させる間、姿勢検出ユニット37は、状態検出センサ39の検出子39aと被検出体38との位置関係の変化状態を検出(監視)する。具体的には、保持ユニット10が揺動支持ユニット30に対して傾きを生じていないとき、すなわち水平支持部材32と固定支持部材35とが平行であるとき、状態検出センサ39の検出子39aは、
図5Aに示すように、正面(垂直)に位置する被検出体38の存在を検出している。つまり、状態検出センサ39は、保持ユニット10がバランス状態で支持されている状態の検出子39aの位置を検出している。この状態では、制御ユニット70は、昇降ユニット20を定常に運行する制御を行う。
【0059】
何らかの原因により保持ユニット10または揺動支持ユニット30がお互いに対して傾きが生じると、状態検出センサ39の検出子39aは、
図5B又は
図5Cに示すように、正面(垂直)の被検出体38の存在を検出しなくなる。このとき、制御ユニット70は、状態検出センサ39の検出結果に基づき、リール部23a、23bの動作を制御する。例えば、保持ユニット10に大きな傾きが生じたことを検知したら、制御ユニット70は、リール部23a、23bの動作を停止させて保持ユニット10の昇降を停止する。その後、保持ユニット10の揺動支持ユニット30に対する傾きの原因が解消された後、制御ユニット70は搬送装置1の運転を再開する。これにより、搬送装置1を安全に運用することができる。また、正面(垂直)の被検出体38の検出の際、状態検出センサとして検出感度量で検出可能な機器を状態検出センサに採用すれば、制御ユニット70は、検出感度量に基づき、リール部23a、23bの動作の速度を制御することができ、これまでよりも更に遅い昇降速度で保持ユニット10の昇降動作を制御することができる。
【0060】
上記の搬送装置1によれば、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bは、保持ユニット10の昇降動作に従動(連動)して伸長又は縮長する構造を有しているので、保持ユニット10の昇降動作と、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの伸長又は縮長の動作とを同期させるための調整が不要であり、構造が単純でメンテナンス性が高い。しかも、保持ユニット10の重量はベルト部材21a、21bを介して昇降ユニット20が負担し、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bにかかる保持ユニット10の重量の負担が軽減されるので、第12のガイド部40a及び第2のガイド部40bに高い剛性をもたせる必要がなく、装置が軽量化される。
【0061】
また、第12のガイド部40a及び第2のガイド部は、保持ユニット10の昇降動作に応じて先端移動ガイド体43、43及び中間移動ガイド体44、44をそれぞれ連動させて移動させる連動機構50、50を含んでいるので、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの伸縮可能な長さを拡大させることが可能である。このことは、昇降ユニット20によるリール部23a、23bからのベルト部材21a、21bの送り出し長さを長く確保することで保持ユニット10の昇降のストロークを伸す場合に有効である。
【0062】
また、中間移動ガイド体44及び連動機構50は、必要に応じて増減させてよい。第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bが縮長された際の搬送装置1の昇降方向の寸法が所定の範囲内に制限されて構成されていたとしても、それぞれの中間移動ガイド体44及び連動機構50の組数を増やすことで、昇降方向における収縮時の寸法を所定の範囲内に収めつつ、伸長時の全長を所定の長さに設定させることができる。例えば、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの先端移動ガイド体43、43と既に構成されている中間移動ガイド体44、44との間に新たな中間移動ガイド体(新たな、中間ガイドレール及び中間案内部材を含む)及び連動機構のセットをそれぞれ追加する場合は、既存の先端移動ガイド体43に固定される第1のベルト固定部53の固定先を追加される中間移動ガイド体の上端に固定させる。また、追加される中間移動ガイド体の第2のベルト固定部は、既存の中間移動ガイド体44の下端に固定され、追加される中間移動ガイド体の第1のベルト固定部は、先端移動ガイド体43の上端に固定される。このように中間移動ガイド体を増やすことで、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bの昇降のストロークを延ばすことが可能となる。
【0063】
上記の搬送装置1によれば、搬送装置1は、走行ユニット60を備えるので、保持ユニット10に保持されたタイヤTをレールRに沿って搬送可能になり、タイヤTの搬送を立体的な範囲で搬送することができる。これにより、搬送装置1を設置すべき建屋内の作業エリアに対してレイアウトの自由度を格段に増すことができる。なお、本実施例では、搬送装置1に走行ユニット60を構成して作業エリアの上方でタイヤTを移動する場合を説明したが、走行ユニット60を構成せずに、昇降ユニット20による昇降搬送として採用してもよい。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
まず、本実施形態においては、被搬送物としてタイヤTを例に説明したが、本発明の搬送装置はタイヤだけでなくあらゆる物品の搬送が可能であり、保持ユニット10の被搬送物を保持する機構は、被搬送物の形態に応じて適切な構造を採用してもよい。
【0065】
本実施形態においては、吊下部材としてベルト部材を採用したが、ベルト部材ではなくワイヤ、チェーンなどを採用してもよい。また、本実施形態においては、2本のベルト部材を使って保持ユニット10の昇降を行うが、吊下部材の数は2本には限定されず、それ以上の数の吊下部材を使って保持ユニット10の昇降を行ってもよい。
【0066】
また、リール部23a、23bは共に軸部25に固定されており、駆動モータ部26によって双方一緒に回転駆動されるが、リール部23a、23bの各々を個別に回転駆動する構造を採用し、リール部23a、23bの回転駆動をそれぞれ別に制御してもよい。例えば、姿勢検出ユニット37が、保持ユニット10の揺動支持ユニット30に対する傾きを検出したら、制御ユニット70は、一方のリール部の回転速度を他方のリールの回転速度よりも少しだけ速くするか、又は遅くするかして揺動支持ユニット30の保持ユニット10に対する僅かな傾きを解消する。すなわち、水平支持部材32の両端に設けられた2つの揺動連結部34a、34bの高さを比較したとき相対的に下に位置する揺動連結部に接続されたベルト部材が巻かれたリール部の回転速度を少しだけ速くするか、相対的に上に位置する揺動連結部に接続されたベルト部材が巻かれたリール部の回転速度を少しだけ遅くすることにより、2つの揺動連結部34a、34bの高さの相違が解消され、揺動支持ユニット30(水平支持部材32)の姿勢が水平に回復する。
【0067】
本実施形態においては、保持ユニット10は揺動支持ユニット30に揺動支持部36を介して軸支されているが、揺動支持部36にはボールジョイントを採用してもよい。
【0068】
本実施形態においては、傾き検出部として、揺動支持ユニット30側に固定した被検出体38に対する保持ユニット10の位置を常時検出する状態検出センサ39を採用し、被検出体38に対する保持ユニット10の位置変化量がある大きさを超えた場合、保持ユニット10の昇降を停止させるようにしたが、揺動支持ユニット30の水平方向に対する傾きの大きさを検出する傾斜角センサを採用してもよい。保持ユニット10は揺動支持ユニット30に枢動自在に連結されており、タイヤT自体の重量バランスに偏りがある場合を除いて保持ユニット10は常に水平を維持するので、傾斜角センサによって揺動支持ユニット30の傾きを検出することで保持ユニット10との干渉が予測できる。
【0069】
本実施形態においては、第1のガイド部40a及び第2のガイド部40bは、それぞれが、固定ガイド体41と先端移動ガイド体43との間に1枚の中間移動ガイド体44が介在する構造を採用したが、固定ガイド体41と先端移動ガイド体43との間に複数の中間移動ガイド体44が介在する構造を採用してもよい。
また、連動機構50として、中間移動ガイド体に一対のプーリ51a、51bと無端のベルト部材52とを設けたが、ベルト部材52に代えてチェーンを、プーリ51a、51bに代えてスプロケットを採用してもよい。