(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483328
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】センサコイルインダクタンスを求めるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/26 20060101AFI20190304BHJP
【FI】
G01R27/26 L
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-511254(P2018-511254)
(86)(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公表番号】特表2018-526649(P2018-526649A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】EP2016064824
(87)【国際公開番号】WO2017036626
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】102015216479.9
(32)【優先日】2015年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メアツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ライディヒ
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭43−019476(JP,B1)
【文献】
実公昭42−021353(JP,Y1)
【文献】
特開平06−201743(JP,A)
【文献】
米国特許第03942108(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00368128(EP,A2)
【文献】
特公昭43−19475(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LC発振回路(3)によって渦電流センサ(2)のセンサコイルインダクタンスを求めるための方法であって、
前記センサコイルインダクタンスを、前記LC発振回路(3)の振動周波数(fLC)及び共振容量に基づいて積分によって求める、
方法において、
前記積分の間に、前記振動周波数(fLC)を少なくとも1回離調させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記振動周波数(fLC)を離調させるために、前記共振容量を少なくとも1回変化させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共振容量を少なくとも1回、設定可能な値だけ増加させる、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記共振容量を連続的に増加させる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記共振容量を、少なくとも1つの別のコンデンサを追加接続することによって増加させる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記離調のために、発振器(4)のデジタルインバータ(5)のゲート遅延時間を変化させる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記共振容量を、予想される干渉周波数(fex)に基づいて増加させる、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
LC発振回路(3)によって渦電流センサ(2)のセンサコイルインダクタンスを求めるための装置(1)であって、
前記LC発振回路(3)は、少なくとも1つの共振コンデンサ(CR)と、前記LC発振回路(3)の振動周波数(fLC)を検出するための装置とを有する、
装置(1)において、
前記センサコイルインダクタンスを、前記LC発振回路(3)の振動周波数(fLC)及び共振容量に基づいて積分によって求めるための制御装置が設けられており、
前記制御装置は、前記積分の間に、前記振動周波数(fLC)を少なくとも1回離調させる、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項9】
前記制御装置は、前記振動周波数(fLC)を離調させるために、前記共振容量を少なくとも1回変化させる、
請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記制御装置は、前記共振容量を少なくとも1回、設定可能な値だけ増加させる、
請求項8又は9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記制御装置は、前記共振容量を連続的に増加させる、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記制御装置は、前記共振容量を、予想される干渉周波数(fex)に基づいて増加させる、
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記LC発振回路(3)は、前記共振容量を増加させるための、少なくとも1つの追加接続可能なコンデンサを有する、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記LC発振回路(3)は、可変のゲート遅延時間を有するデジタルインバータ(5)を備える発振器(4)を有する、
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LC発振回路によって渦電流センサのセンサコイルインダクタンスを求めるための方法及び装置であって、センサコイルインダクタンスを、LC発振回路の振動周波数及び共振容量に基づいて積分によって求めるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
冒頭に述べた形式の方法及び装置は、従来技術から基本的に公知である。例えば電気機械のロータの回転角度位置を求めるために、種々異なる誘導式の回転角度センサが公知である。励磁コイルと、1つ又は複数のセンサコイルとの間の結合の多くは、例えば電気機械のロータシャフトのような結合要素の回転角度位置によって影響を受ける。対応する解決方法は、例えば独国特許出願公開第19738836号明細書(DE19738836A1)に開示されている。結合係数を評価するには、複雑なエレクトロニクスが必要である。この場合、コイルシステムは、高周波信号によって励起され、これによって単純なスパイラルコイルが電磁界を放射する。この放射は、少なくとも近傍界では、このようなセンサが機能するために必要である。しかしながら、遠方界又は遠距離場では、機能するために磁界はもはや必要ではない。しかも、この磁界は、遠方界では、環境における非電磁両立性を引き起こす可能性がある。放射よりも干渉信号の結合の方がさらに問題である。交番磁界にさらされる単純なスパイラルコイルでは、電圧が誘導され、この電圧は、センサエレクトロニクスと有害な相互作用をする可能性がある。
【0003】
この問題を解決するために、独国特許出願公開第102008012922号明細書(DE102008012922A1)からは既に、コイル内に相異なる巻線方向を有するループを設けることによって、遠方界における磁界を補償し、誘導電圧を無効にすることが公知である。
【0004】
これに代えて、センサの1つ又は複数のセンサコイルのインダクタンスを求めることが公知である。個々のコイルのインダクタンスに基づいて、測定される回転角度を容易に推定することができる。一般に、インダクタンスは、LC発振回路の振動周波数を測定して積分することによって求められ、この場合、振動周波数は、インダクタンスに依存している。従って、検出される振動周波数は、外部から誘導された電圧による影響を受ける可能性もあるので、振動周波数は、もはやLC共振条件だけに依存しているのではなく、電圧を誘導する外部の干渉信号の周波数にも依存している。センサコイルを2つの部分に分割し、巻線方向を逆向きにすることによって、この結合を低減することが可能である。しかしながら、上記の手段によれば一般に、コイル品質と、ひいては周波数安定性とを大きく決定づけるインダクタンスも減少してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19738836号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008012922号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
請求項1に記載の特徴を有する本発明に係る方法は、センサコイルの設計を面倒にも電磁両立性を考慮しながら適合させることなく、センサコイルインダクタンスを正確に求めることによって渦電流センサの安定した動作が保証されるという利点を有する。このために本発明によれば、前記センサコイルインダクタンスを求めるための前記積分の間に、前記振動周波数が少なくとも1回離調される。振動周波数を意図的に離調させることにより、干渉信号又は干渉周波数による誘導電圧によって積分の誤ったカウンタ状態がもたらされることがなくなることが達成される。
【0007】
これにより、コイルインダクタンスを求める際に、干渉信号による影響を受けなくなるか、又は、ほとんど受けなくなる。
【0008】
さらには、前記振動周波数を離調させるために、前記共振容量が少なくとも1回変化される。振動周波数を変化又は離調させるために、共振容量を操作して変化させることによって、LC発振回路の振動挙動が簡単に操作され得る。
【0009】
特に、前記共振容量が少なくとも1回、設定可能な値だけ増加させられる。これにより、増加させられた共振容量の、検出すべき振動周波数の欠如時間が所期のように短縮され、これによって、誘導された外部電圧又は干渉信号による「注入同期(Injection locking)」が回避される。
【0010】
これに代わる形態ではさらに、前記共振容量が連続的に増加させられる。このために好ましくは、LC発振回路の共振コンデンサが、特に、周波数に対して線形に作用する曲線に従って、積分中に連続的に変調される。この場合にも、既に上述した利点が得られる。これにより、積分のカウンタ状態は、干渉信号による影響を受けなくなるか、又は、ほとんど受けなくなる。
【0011】
特に好ましくは、前記共振容量は、少なくとも1つの別のコンデンサを追加接続することによって増加させられる。特に、複数の同じ及び/又は異なるコンデンサによって1つの集積回路内にコンデンサアレイ又はコンデンサフィールドを形成することができ、これらのコンデンサは、半導体スイッチを介してLC発振回路に、特に共振器又は共振コンデンサに接続可能であり、ひいては追加接続可能である。共振容量を連続的又は準連続的に増加させることは、複数の追加接続可能な単一キャパシタ又はコンデンサによっても達成することができる。
【0012】
これに代えて又はこれに加えて、本発明の好ましい発展形態によれば、前記振動周波数の前記離調のために、前記LC発振回路の発振器のデジタルインバータのゲート遅延時間が変化させられる。ゲート遅延時間(Gate-delay)は、LC発振回路の振動周波数にも影響を与える。ゲート遅延時間を変化させることによって、振動周波数を変化又は離調させる位相シフトを達成することができる。ゲート遅延時間を変化させることによって振動周波数を操作することにより、追加的な追加接続可能なコンデンサを省略することができ、従って、製造コストを削減することができる。好ましくは、ゲート遅延時間は、増幅段のバイアス電流を調整するためのプログラミング可能な電流源を使用することによって実現される。振動周波数を離調させるために、遅延素子のカスケードを直列接続することもできる。
【0013】
本発明の好ましい発展形態によれば、前記共振容量は、予想される干渉周波数に基づいて増加させられる。これにより、例えば電気/電子機器による少なくとも1つの干渉信号又は干渉周波数が予想される特定の環境において使用するために、本方法を最適化することができる。これによって、振動周波数の所期の離調が達成され、この離調により、コイルインダクタンスが確実に求められることが保証される。
【0014】
請求項8に記載の特徴を有する本発明に係る装置は、規定通りに使用されたときに本発明に係る方法を実施する、特有に構成された制御装置が設けられていることを特徴とする。これによって上述の利点が得られる。さらなる利点及び好ましい特徴は、上述の説明及び請求項から明らかになる。
【0015】
好ましくは、前記LC発振回路は、前記共振容量を増加させるための、又は、前記振動周波数を操作するため/離調させるための、少なくとも1つの追加接続可能なコンデンサを有する。特に、既に上述したように、複数のコンデンサが形成されており、例えば半導体スイッチを介して追加接続可能である。
【0016】
これに代えて又はこれに加えて、好ましくは、前記LC発振回路は、可変のゲート遅延時間を有するデジタルインバータを備える発振器を有する。ゲート遅延時間を操作することによって、−既に上述したように−振動周波数が離調され、これによってコイルインダクタンスが確実に求められ、特に回転角度センサである渦電流センサの確実かつ正確な動作が保証される。
【0017】
以下では、本発明及び本発明の利点を、実施例に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、渦電流センサを動作させるための装置の概略図である。
【
図2】
図2A乃至
図2Dは、干渉信号が存在しない場合及び存在する場合における、センサの振動周波数を示す図である。
【
図3】
図3A乃至
図3Dは、有利な動作方法を実施した場合における、センサの振動周波数を示す図である。
【
図4】
図4A乃至
図4Dは、代替的な動作方法を実施した場合における、センサの振動周波数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、回転角度センサとして使用される渦電流センサ2を動作させるための装置1、特に、渦電流センサ2のコイルインダクタンスを求めるための装置1の概略図を示す。装置1は、渦電流センサ2のコイルインダクタンスを検出するためのLC発振回路3を有する。これに関して発振回路3は、渦電流センサ2のインダクタンスL又は渦電流センサ2のセンサコイルと、渦電流センサ2の内部抵抗R
Cと、共振コンデンサC
Rとを有する。回路3はさらに、デジタルインバータ5を備える発振器4を有する。モジュール6は、渦電流センサ2によって検出される、例えば電気モータのロータの回転角度を、回路3内で生成された振動周波数fから計算する。このとき、回路3は、LC共振周波数で振動する。コイルインダクタンスは、好ましくは積分時間t
int内の周期をカウントすることによってデジタル化されて、求められる。
【0020】
図2A及び
図2Cは、積分時間t
intにわたる振動周波数fの推移を示し、なお、
図2Aは、干渉信号が存在しない場合を示し、
図2Cは、干渉信号S
exが存在する場合を示す。
図2B及び
図2Dはさらに、積分から生成された、デジタル化された周波数f
Dを示す。ここでは、干渉信号S
exは、CW信号であり、LC共振周波数f
LCから例えば100kHzだけ相違している干渉周波数
fexを有するものと仮定される。コンデンサC
Rの共振容量の値が時間的に一定であると仮定した場合、振動周波数fは、干渉信号S
exが存在しない場合にはLC共振周波数f
LCに一致し、さもなければLC共振周波数と干渉信号S
exの周波数との間に位置する有効周波数f
effに一致する。干渉信号S
exの影響を受けた状態で周期をカウントすれば、干渉が存在しない状況とは異なるカウンタ状態が生じるということは明白である。以下に説明する方法と、装置1の有利な動作と、装置1の有利な回路構成とを用いることにより、干渉信号S
exの影響によって誤ったカウンタ状態(デジタル化された周波数f
D)がもたらされることがなくなり、ひいては、渦電流センサ2によって検出される回転角度に対する影響がなくなるか、又は、少なくとも低減される。第1の実施例によれば有利には、回路3は、特に、コンデンサアレイ7の形態の多数のコンデンサを有する。これらのコンデンサは、
図1に示されているように、集積回路内に形成されており、共振回路の半導体スイッチ又は共振器を介して回路3に接続可能であり、かつ、共振コンデンサC
Rに追加接続可能である。このために、例えば金属−誘電体−金属型のキャパシタが、集積回路の製造のバックエンドプロセスにおいて製造される。少なくとも回路3又は共振コンデンサC
Rには、少なくとも1つの別のコンデンサを追加接続可能である。
【0021】
別のコンデンサを1つだけ設けて追加接続可能である場合には、
図3A乃至
図3Dに示された方法を実施することができる。積分の間に、積分時間の半分の時間(t
int/2)に亘って、渦電流センサ2のセンサコイルの検査は、共振コンデンサC
Rと調整され、又は、共振コンデンサC
Rによって形成される共振容量と調整される。積分時間の後半では、センサコイルは、別のコンデンサが追加接続されることによって追加的な容量(C
R+C
add)と調整される。この追加的な容量C
addは、好ましくは、元の共振周波数が注入同期のロックレンジよりも格段に大きくシフトするように選択されている。有利には、容量は、以下のように選択される:C
R=68pF及びC
add=5pF。注入同期のロックレンジは、約5mmサイズのプリント基板ベース上の平面コイルの場合、典型的には100kHz未満である。別のコンデンサを追加接続することにより、積分時間の少なくとも半分の時間の間、干渉信号S
exによる影響を阻止することができる。これにより、コイルインダクタンスを求める際の測定誤差(周波数誤差)を半分にすることができる。回路3が追加接続可能なコンデンサを複数有する場合には、追加的な段を導入して、干渉信号S
exによって発生し得る影響の時間間隔をさらに短縮することが可能である。
【0022】
図4A乃至
図4Dは、別の1つの実施例を示す。この実施例では、振動周波数f
LCが、例えば
図4Aに示されているように周波数に対して線形に作用する曲線に従って、積分中に連続的に変調される。線形変調の場合に、干渉信号S
exの周波数f
exがf
minとf
maxとの間にあると仮定した場合、積分の間のカウンタ状態は、干渉信号S
exによる影響を受けない。LC共振周波数f
LCが干渉信号の周波数よりも低く、かつ、周波数間隔がロックレンジよりも狭い場合には、干渉信号S
exへのロックによって振動周波数f
LCの増加が引き起こされる。同様にして、LC共振周波数f
LCが干渉周波数f
exよりも高い位相も存在する。積分によって影響が補償され、センサコイルの非活性状態が非常に正確に特定され、これによって回転角度が正確に求められることが保証されている。
【0023】
それにもかかわらず、干渉信号S
exの干渉周波数f
exがf
min及びf
maxの非常に近傍に位置する場合には、影響が発生する可能性がある。なぜなら、干渉信号は、LC共振周波数f
LCを増加させるだけ又は減少させるだけだからである。しかしながら、この影響は、いずれにせよ、共振コンデンサC
Rの値が一定である通常の場合よりも格段に小さい。具体的な例では、共振コンデンサの調整容量又は容量を61.9pFと63.1pFの間で変化させた場合には、予想される角度誤差を0.5°から0.2°に低減することができる。1pF変化させると誤差は0.1°に減少し、5pF変化させると誤差はもはや測定されない程度となる。
【0024】
共振コンデンサを変化させることによる振動周波数の線形若しくは準線形の推移又は連続的な変化は、上述したように追加接続可能である多数の単一コンデンサによって達成することができる。コンデンサは、有利には、コンデンサの容量が0.1pF;0.2pF;0.4pF;0.8pF,・・・を有するように、バイナリパターンに即した容量値を有するように構成される。所期のように組み合わせることによって、0pFと、最大値の2倍から刻み幅を引いた値との間の全ての値を0.1pF刻みで設定することができる。回路3の振動周波数を離調させるために、アナログに調整可能な容量(バラクタ)を使用することも可能である。
【0025】
積分中の振動周波数の離調を、調整容量を変化させることなく実施することもできる。この場合には、回路がデジタルインバータ5を有する発振器によって実現されており、これによって生じているゲート遅延時間(Gate delayed)が、振動周波数に対して影響を与える。インバータ5の出力部における信号が−180°の位相遅れで入力部に供給される場合には、振動が維持される。共振コンデンサC
R又はLC共振器は、共振周波数において正確にこの位相シフトを有する。位相シフトは、ある特定の振動周波数において時間遅延に変換され得る。25MHzの場合には、周期の期間は40nsである。従って、−180°の位相シフトは20nsに相当する。ゲート遅延時間は、通常1乃至6nsである。この遅延時間は、共振器の所要の位相遅延に短縮するように作用する。このことは具体的に、2ns(−18°に相当)の場合に、ゲート遅延時間及び共振器は、さらに−182°の位相シフトを有するだけでよいということを意味する。インダクタンスL及び共振コンデンサC
Rに対してある特定の値を入力した場合には、振動周波数が低下する。なぜなら、共振周波数におけるπ型の共振器の位相応答は、0°から−180°まで変化するので、このような比較的小さい位相シフトは、比較的低い周波数において達成されるからである。この場合、急峻度は、コイル品質に依存している。従って、ゲート遅延時間は、振動周波数に対して明確に定義された(well-defined)影響を与えるので、ゲート遅延時間を操作することによって振動周波数の離調を、このために共振容量を変化させる必要なしに実施することができる。ゲート遅延時間の操作は、実際には例えば、増幅段のバイアス電流を調整するためのプログラミング可能な電流源を使用することによって実現することができる。さらには、これに加えて又はこれに代えて、集積回路内において遅延素子のカスケードを直列接続することができる。
【0026】
このようにして、有利な装置及び上述の方法により、振動周波数が干渉信号にロックされることを阻止するために、回路の振動周波数を所期のように離調させることが可能である。これにより、干渉信号に対する電磁両立性及びロバスト性に関する要求を、装置1によって簡単かつ低コストに満たすことができる。