(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2標的核酸を、HAVと並行して、HAVを含まない別のバイアル内において同じサイクリング条件下で同じ割合の増幅試薬を含む反応混合物中で検出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
第1および第2プライマーならびにプローブを含み、第1プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:7であり、第2プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:11であり、プローブの核酸配列はSEQ ID NO:13〜14から選択される、HAVを検出するための反応混合物。
【背景技術】
【0002】
HAV(A型肝炎ウイルス)は、肝炎、すなわち肝臓の急性感染症を引き起こす可能性があるヘパトウイルスとして分類されるRNAウイルスである。HAVは通常は糞便経路により拡散し、汚染された食品もしくは水の摂取により、または感染者との直接接触により、人から人へ伝播される。
【0003】
A型肝炎は約4週間の潜伏期間をもつ。そのウイルスは肝臓内で複製する。臨床症状が発症する前の潜伏期間中に比較的大量のウイルスが糞便中へ排出され、短期間のウイルス血症が起きる。疾病の重症度は無症候性のものから無黄疸性または黄疸性の肝炎までに及ぶ。そのウイルスは、細胞培養において増殖した場合には非細胞変性性である。インビボでのそれの病原性は柔細胞の壊死および組織球性門脈周囲炎を伴い、細胞性免疫応答により仲介されている可能性がある。症状の発症時点までに、糞便中へのウイルスの排出は次第に低下し、停止している場合があり、抗HAV IgMの力価が上昇する。抗HAV IgGが1〜2週間後に検出される場合があり、数年間持続する。HAVゲノムは約7,500ヌクレオチド(nt)のプラスセンスRNAを含み、それは3’末端でポリアデニル化されており、5’末端に結合したポリペプチド(VPg)をもつ。単一の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)がゲノムの大部分を占め、M
r 252,000の理論的分子質量をもつポリプロテインをコードする。HAVポリプロテインは、プロセシングされて構造性(アミノ末端に位置する)および非構造性のウイルスポリペプチドを生成する。ピコルナウイルスの複製の特徴の多くは始原型であるエンテロウイルスおよびライノウイルス、特に1型ポリオウイルスの研究から推測された。
【0004】
A型肝炎ウイルスは摂食および腸感染により体内に侵入する。次いでウイルスはおそらく血流によって拡散して標的臓器である肝臓に達する。潜伏期間中に、既に被曝後10〜14日目から一般に血清アミノトランスフェラーゼのピーク上昇時まで続けて、多数のウイルス粒子を糞便中に検出できる。ウイルスは疾病急性期の初期にも糞便中に検出されるが、臨床性黄疸の発症後は頻度が比較的低くなる。興味深いことに、A型肝炎ウイルスに対する持続性抗体は潜伏期間の後期にも検出され、これは肝臓損傷の生化学的証拠の発現とほぼ一致する。免疫蛍光法によれば、A型肝炎抗原はチンパンジーに実験的に伝播させた後に肝細胞の細胞質に局在していた。この抗原は、静脈内接種後に肝臓以外のいかなる組織にも見いだされていない。
【0005】
A型肝炎については種々の血清学的検査法があり、それには免疫電子顕微鏡検査、補体結合、免疫粘着血球凝集反応、ラジオイムノアッセイ、およびエンザイムイムノアッセイが含まれる。広く用いられている免疫粘着血球凝集反応は中等度の特異性および感度である。幾つかのラジオイムノアッセイ法が記載されている;これらのうち、固相型のアッセイ法が特に簡便であり、感度がきわめて高く、かつ特異的である。感度がきわめて高いエンザイムイムノアッセイ法は広く用いられている。わずか1種類の血清型のA型肝炎ウイルスが、実験的にA型肝炎MS−1株に感染させたボランティア、種々の地域での種々の大発生からの患者、およびランダムなA型肝炎症例において同定された。組織培養におけるウイルスの分離には長期間の適応を必要とし、したがってそれは診断には適さない。
【0006】
分子生物学的手法、たとえばウイルスRNAの逆転写およびそれのPCR増幅に基づく手法により、あらゆる種類の臨床試料または環境試料からのごく少量のウイルスRNAを検出できる。HAV感染は、本発明において提供する核酸検査法により検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
生物試料中のHAVを検出する方法であって、HAVの配列を含む標的核酸を反応混合物中で増幅することを含む方法を開示する。その反応混合物は、標的核酸を含有する可能性のある生物試料、ならびにオリゴヌクレオチドセットまたはプライマー対を含む。第1プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:5〜8から選択でき、第2プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:10〜11から選択できる。増幅工程によって、増幅した標的核酸を生成させることができる。本方法はさらに、増幅した核酸を検出する工程を含む。
【0013】
用語“生物試料”は、核酸を標的とする診断アッセイを施すことができる、通常は生物源に由来する材料に関する。ある態様において、そのような生物試料はヒトに由来し、体液である。本発明の1態様において、生物試料はヒトの血液、尿、喀痰、汗、スワブ、ピペット操作できる糞便、または脊髄液である。生物試料は、それから標的核酸を抽出できる組織であってもよい。
【0014】
本明細書中で用いる用語“増幅する”は、一般に、標的核酸から複数の核酸分子を生成することを表わし、その際、ポリメラーゼによる延長のための開始部位を提供するために、プライマーを標的核酸分子上の特異的な部位にハイブリダイズさせる。増幅は当技術分野で一般に知られているいずれかの方法、たとえば下記により実施できるが、それらに限定されない:標準PCR、ロングPCR(long PCR)、リアルタイムPCR、ホットスタートPCR(hot start PCR)、qPCR、RT(逆転写)PCR、および等温増幅。他の増幅反応は、特にリガーゼ連鎖反応、ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応、Gap−LCR、修復連鎖反応、3SR、NASBA、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)、転写仲介増幅(Transcription Mediated Amplification)(TMA)、およびQβ−増幅を含む。増幅プロセスにより、たとえばアンプリコンまたは増幅核酸または増幅した標的核酸と呼ばれる増幅生成物が形成される。
【0015】
たとえば、核酸増幅方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、それは参考文献のうち特にU.S.Patent No. 4,683,202、4,683,195、4,800,159、および4,965,188に開示されている。PCRには一般に、選択した核酸鋳型(たとえば、DNAまたはRNA)に結合する2種類以上のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。核酸分析に有用なプライマーには、標的核酸の核酸配列内で核酸合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドが含まれる。プライマーは制限消化物から常法によって精製でき、あるいはそれは合成によって作製できる。プライマーは増幅において最大効率を得るために一本鎖であってもよいが、プライマーは二本鎖であってもよい。二本鎖プライマーはまず変性される;すなわち、それらの鎖を分離するために処理される。二本鎖核酸を変性させる1方法は加熱による。
【0016】
“熱安定ポリメラーゼ”は、熱安定性であるポリメラーゼ酵素である;すなわち、それは鋳型に対して相補的なプライマー延長生成物の形成を触媒する酵素であって、二本鎖鋳型核酸を変性させるのに必要な期間、高められた温度を付与された際に、不可逆的に変性することのない酵素である。一般に、合成は各プライマーの3’末端において開始し、鋳型鎖に沿って5’から3’方向に進行する。熱安定ポリメラーゼは、たとえばサーマス・フラブス(Thermus flavus)、サーマス・ルーバー(T. ruber)、サーマス・サーモフィラス(T. thermophilus)、サーマス・アクアティカス(T. aquaticus)、サーマス・ラクテウス(T. lacteus)、サーマス・ルーベンス(T. rubens)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、およびメタノサーマス・フェルビダス(Methanothermus fervidus)から単離された。他の代表的ポリメラーゼはZ05である。ポリメラーゼは、たとえば追加の機能を行なうために、および/または改善された機能性をもつために、それらの元の状態から修飾されてもよい。たとえば、Z05はたとえばUS 2009/0148891に記載される修飾Z05ポリメラーゼである。“逆転写活性をもつポリメラーゼ”は、RNA鋳型に基づいてDNAを合成できる核酸ポリメラーゼである。それは、RNAが逆転写されて一本鎖cDNAになると、二本鎖DNAを形成することもできる。本発明の態様において、ポリメラーゼは熱安定性である。熱安定性でないポリメラーゼも、その酵素が補充される限りPCRアッセイに使用できる。多数のポリメラーゼを1反応混合物中でブレンドして、多数の機能を得ることもできる。
【0017】
“標的核酸”は、当業者に既知のヌクレオチド高分子化合物である。“標的核酸”は、本明細書中で、試料中の分析すべき核酸、すなわち試料中のそれの存在、不存在および/または量を測定すべき核酸を表わすために用いられる。標的核酸はゲノム配列、たとえば特定の遺伝子の一部、またはRNAもしくはDNAであってもよい。他の態様において、標的核酸はウイルスまたは微生物であってもよい。特定の態様において、標的核酸はHAVまたはパルボウイルスB19であってもよい。標的核酸は対照標的であってもよい。
【0018】
用語“反応混合物”は、その中で増幅反応が行われる媒体に関する。その媒体は液体、粒子懸濁液、または固相と連携した液体であってもよい。媒体は、標的核酸を増幅するのに必要な塩類、試薬、たとえばdNTP、酵素、およびオリゴヌクレオチド、ならびに標的核酸を含有する可能性がある試料を含む。
【0019】
1態様において、反応混合物はさらに、増幅した標的核酸を検出するための核酸プローブを含む。特定の1態様において、たとえばプローブの核酸配列はSEQ ID NO:14であってもよい。
【0020】
用語“標的核酸を含有する可能性がある”は、標的核酸を含有するかまたは何らかの理由でその疑いがある試料を検査するだけでなく、むしろ結果的にはそれらが標的核酸を含有しないとしても標的核酸を含有する可能性がある試料を検査することを意味する。
【0021】
本明細書中で用いる用語“プライマー”および“プローブ”は、オリゴヌクレオチドに関する。本発明に関して、用語“オリゴヌクレオチド”は、それらのモノマー単位としての複数のヌクレオチドから形成された成分を表わす。用語“オリゴヌクレオチド”には、修飾されたオリゴヌクレオチドも含まれる;すなわち、プライマーおよび/またはプローブは、修飾ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物(ヌクレオチド類似体とも呼ばれる)を含む。用語“プライマー”はさらに、増幅反応に用いられて標的配列にアニールするオリゴヌクレオチドに関する。用語“プローブ”はさらに、定性または定量検出の目的で標的核酸またはアンプリコンにハイブリダイズさせるオリゴヌクレオチドに関する。プローブの場合、修飾には色素、たとえばFAM、HEX、JA270、CY5、CY5.5など、および/またはクエンチャー分子を含めることができる。色素分子をリンカーにカップリングさせてもよい。しかし、そのような色素はプライマー中に存在してもよい。他の代表的な修飾には、3’末端のリン酸基が含まれる。プライマーの一般的な修飾には、非特異的増幅生成物、たとえばプライマー二量体を阻止するための3’ヌクレオチドの修飾が含まれる。そのような修飾は当技術分野で周知であり、限定ではない例としてt−ブチルベンジル−dTまたは−ブチルベンジル−dCが含まれる。そのような修飾体も、用語“プライマー”に含まれる。
【0022】
プライマー対とは、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを表わし、それらは一緒に、アンプリコンの生成が可能な条件下に置かれると、それらがアニールする標的核酸からアンプリコンを生成することができる。2種類より多いプライマーが反応混合物中にあってもよい。増幅のためのオリゴヌクレオチドセットは、多数のプライマーおよび1または2種類以上のプローブを含むことができる。
【0023】
用語“検出する”は、増幅に際して発生する信号の測定に関する。測定は定性的または定量的であってよい。適切な核酸検出方法は当業者に既知であり、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring HarborLaboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989、およびAusubel F. et al.: Current Protocols in Molecular Biology 1987, J. Wiley and Sons, NYなどの標準的テキストブックに記載されている。さらに、核酸検出工程を実施する前に、たとえば沈殿段階などの精製段階があってもよい。検出方法には、二本鎖DNA中へインターカレートしてその後にそれの蛍光を変化させる臭化エチジウムなどの特定の色素の結合またはインターカレーションを含めることができるが、これらに限定されない。精製した核酸を場合により制限消化後に電気泳動法により分離し、その後に視覚化することもできる。プローブに基づくアッセイ法もあり、これは特異的配列へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよびそれに続くハイブリッド検出を利用する。
【0024】
分析の結果を評価するために、増幅した標的核酸を増幅反応中または反応後に検出することができる。リアルタイムでの検出のための1方法は、核酸プローブまたは多数のプローブの使用である。他のリアルタイム方法は当技術分野で周知であり、たとえばDNA結合色素、たとえばSYBRグリーンまたは臭化エチジウムの使用が含まれる。
【0025】
市販のリアルタイムPCR機器(たとえば、LightCycler(登録商標)またはTaqMan(登録商標)シテスム)の使用により、PCR増幅と増幅生成物の検出を単一の閉鎖容器内で連結することができ、それに伴ってサイクリング時間が劇的に短縮される。検出が増幅と同時に行なわれるので、リアルタイムPCR法は増幅生成物を取り扱う必要性が除かれ、増幅生成物間の交差汚染のリスクが低減する。リアルタイムPCRはターンアラウンドタイムを大幅に短縮し、臨床検査室において一般的なPCR法に代わる魅力的な方法である。ただし、当業者に既知である他の検出方法も採用できる。
【0026】
本発明の方法に従って内部対照核酸を用いることにより、増幅反応および検出反応を妨害する可能性がある試料特異的な阻害作用だけでなく、試料非特異的な阻害作用(標的領域とは無関係な阻害)も均一化されて、より精確な力価が得られる。“内部”とは、別の実験においてではなく、標的核酸と同じ反応混合物内で対照核酸が増幅、検出および定量されることを意味する。たとえば、本発明は、対照オリゴヌクレオチド −フォワードプライマー、リバースプライマーおよびプローブ− を反応混合物に添加することを考慮する。
【0027】
“検出限界”または“LOD”は、前決定したヒット率で検出できる、試料中の核酸の最低濃度または最低量を意味する。低い“LOD”は高い感度に対応し、逆のことも言える。“LOD”は、特に核酸がウイルス核酸である場合は、通常は単位“cp/ml”により、または“IU/ml”として表わされる。“cp/ml”は、“ミリリットル当たりのコピー数”を意味し、ここで、“コピー数”はそれぞれの核酸のコピー数である。IU/mlは“国際単位/ml”であり、WHO基準を表わす。
【0028】
LODを計算するために広く用いられている方法は“プロビット解析”であり、それは刺激(用量)と計数型(quantal)(全か無)応答の関係を解析する方法である。典型的な計数型応答実験では、複数グループの動物に異なる用量の薬物を投与する。各用量レベルでの死亡率を記録する。次いでこれらのデータをプロビット解析により解析することができる。プロビットモデルにより、応答率が累積正規分布としての対数用量に関係することが確認される。すなわち、対数用量は累積正規分布から死亡率を読み取るための変数として使用できる。他の分布確率ではなく正規分布を用いると、可能性のある用量の上端と下端では推定応答率が影響を受けるが、中間付近ではほとんど影響がない。
【0029】
“プロビット解析”は個別の“ヒット率”で適用できる。当技術分野で知られているように、“ヒット率”は一般にパーセント[%]で表わされ、被分析体の特定濃度における陽性結果の百分率を示す。したがって、たとえばLODを95%のヒット率で決定することができ、これは妥当な結果の95%が陽性である設定についてLODを計算することを意味する。
【0030】
1態様において、生物試料中に存在する核酸を逆転写および増幅の前に富化する。
本明細書中で用いる用語“富化する”は、標的核酸を含有する試料を処理するいずれかの方法であって、標的核酸を試料中に存在する他の物質の少なくとも一部から分離させる方法に関する。したがって、“富化”は、他の物質より多量の標的核酸を得ることと理解される。
【0031】
核酸を富化するためには幾つかの方法がある:
配列依存性または生物特異的な方法、たとえば:
・アフィニティークロマトグラフィー
・固定化したプローブへのハイブリダイゼーション
配列非依存性または物理化学的な方法、たとえば:
・たとえばフェノール−クロロホルムによる液−液抽出
・たとえば純エタノールによる沈殿
・濾紙による抽出
・セチル−トリメチル−アンモニウム−ブロミドなどのミセル形成剤による抽出
・固定化したインターカレーション色素、たとえばアクリジン誘導体への結合
・シリカゲルまたは珪藻土への吸着
・カオトロピック条件下での磁性ガラス粒子(MGP)または有機シラン粒子への吸着
標的核酸を富化するための代表的方法は、Quiagenから市販されているPuregene−Kit(たとえば、注文番号158389)を用いる富化である。
【0032】
本発明の他の観点は、前記方法であって、富化の前に、多種多様な流体試料中に存在する可能性がある細胞および/またはウイルスキャプシドのリシス(溶菌)により、核酸をそれらの細胞および/またはウイルス環境から放出させるものである。
【0033】
細胞またはウイルス粒子の内容物を放出させるために、それらを酵素または化学薬品で処理して、細胞壁またはウイルス粒子を溶解、破壊または変性させることができる。このプロセスは一般にリシスと呼ばれる。そのようなリシスした物質を含有する生成溶液はライゼート(溶菌産物)と呼ばれる。
【0034】
1態様において、前記方法の増幅工程および検出工程の前に下記の工程を行なう:異なるタイプの流体試料を入れた複数の容器を用意する。標的核酸を含む核酸が固体支持体材料に固定化されるのに十分な期間および条件下で、固体支持体材料を容器内の複数の異なるタイプの流体試料と混和しておく。次いで、分離ステーションで固体支持体材料を流体試料中に存在する他の物質から単離し、そして分離ステーションで流体試料を固体支持体材料から分離して固体支持体材料を洗浄用緩衝液で1回以上洗浄することにより核酸を精製する。固体支持体材料と複数の異なるタイプの流体試料を混和しておく物理的条件および期間は、複数の異なるタイプの流体試料のいずれについても等しい。
【0035】
本発明の1態様において、上記プロセスにおけるリシス用緩衝液は下記の群から選択される1種類以上の成分を含む:
・カオトロピック剤
・緩衝物質
・アルコール類
・還元剤
一般に溶液中の水分子の規則的構造ならびに分子内および分子間の非共有結合力を攪乱するカオトロピック剤は、試料調製操作に幾つか寄与することができる。特に、ただしそれだけではないが、それらはヌクレアーゼの三次元構造を攪乱することによるRNase阻害剤として適用できる。通常はそれ以上のRNase阻害剤をリシス用緩衝液に付与する必要はない。そのほかに、カオトロピック剤は生物膜、たとえば細胞膜、または細胞内器官が存在する場合にはそれらの膜の破壊に寄与する。また、それらは核酸がガラス(前記を参照)などの表面に粘着結合する際に重要な役割を果たすことができる。本発明に関するカオトロピック剤は、グアニジニウム塩、たとえばチオシアン酸グアニジニウムもしくは塩酸グアニジニウムもしくは塩化グアニジニウムもしくはイソチオシアン酸グアニジニウム、尿素、過塩素酸塩、たとえば過塩素酸カリウム、他のチオシアン酸塩、またはヨウ化カリウムである。ただし、他のカオトロピック剤も本発明の範囲において使用できる。
【0036】
ある態様において、HAVの検出をパルボウイルスB19の検出と同時に同じ反応混合物中で実施できる。パルボウイルスB19を検出するためのオリゴヌクレオチド配列は、たとえばUS 2007-0281294に開示されている。ある態様において、第2標的核酸の増幅および検出を、HAVの増幅および検出と一緒に同じ反応混合物中で実施できる。ある態様において、HAVとパルボウイルスB19を同じ反応混合物中で増幅および検出する。ある態様において、HAVおよび第2標的を増幅するためのオリゴヌクレオチドセットを含むキットが提供される。ある態様において、たとえば第2標的はパルボウイルスB19である。他の態様において、キットは、さらに他の標的に対するオリゴヌクレオチドセットをさらに含む。
【0037】
ある態様において、増幅した核酸の検出は、増幅中に、たとえばリアルタイムPCR法を用いて行なうことができる。他の態様において、増幅した核酸の検出は、増幅が完了した後に行なうことができる。
【0038】
本発明の他の態様において、第2標的核酸をHAVと並行して、HAVを含有しない別のバイアル内において同じサイクリング条件下で同じ割合の増幅試薬を含む反応混合物中で検出する。用語“並行して”は、HAVと第2標的核酸を別のバイアル内において、ただし同時に同じ条件下で、その方法により処理することを意味する。
【0039】
本発明はまた、オリゴヌクレオチドセット、または第1および第2プライマーを含むプライマー対を提供し、その際、第1プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:5〜8のうちのひとつを含み、第2プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:10〜11のうちのひとつを含む。このプライマー対は、相補的核酸とのハイブリダイゼーション反応に使用できる。さらに、本明細書に記載するプライマー対およびプローブは、HAVを検出するために使用できる。
【0040】
本発明はさらに、第1および第2プライマー(第1プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:5〜8のうちのひとつを含み、第2プライマーの核酸配列はSEQ ID NO:10〜11のうちのひとつを含む)ならびにプローブ(プローブの核酸配列はSEQ ID NO:13〜14のうちのひとつを含む)を含む、オリゴヌクレオチドセットを提供する。
【0041】
本発明はまた、本明細書に記載するポリメラーゼ、ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。1態様において、キットはさらにプローブを含み、その際、プローブの核酸配列はSEQ ID NO:13〜14のうちのひとつを含む。キットはHAVの検出のために使用できる。さらに他のキット構成要素の態様は、本明細書に記載されている。
【0042】
本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:2であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:2であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:3であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:3であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:4であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。
【0043】
本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:4であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:5であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:5であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:6であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:6であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。
【0044】
本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:7であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:7であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:8であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:10である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。本明細書に記載する方法、プライマー対、オリゴヌクレオチドセット、およびキットについての1態様において、フォワードプライマーはSEQ ID NO:8であり、リバースプライマーはSEQ ID NO:11である。1態様において、プローブはSEQ ID NO:13または14である。
【0045】
以下に記載する実施例において、さらに表2に示すように、R2−HAVrefオリゴヌクレオチドセットと比較して、R2−HAVオリゴヌクレオチドセットによる感度増大がSEQ ID NO:7、11についてみられた。1態様において、SEQ ID NO:7、11および14を使用する。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は本発明を説明するために提示され、それを限定するためのものではない。
2種類のオリゴヌクレオチドセットの比較
HAVについて2種類のオリゴヌクレオチドセットを比較する並行した検出限界(LOD)試験を実施する。
【0047】
試薬MMx R2−HAVは、SEQ ID NO:5〜8のうちのひとつ、SEQ ID NO:10〜11のうちのひとつ、およびSEQ ID NO:13〜14のうちのひとつの核酸配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。
【0048】
試薬MMx R2−HAVref(参照セット)は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:12の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。
【0049】
試験レベルノードを作成するために用いたHAV陽性検体に、さらにウイルスバックグラウンドレベルとしてパルボウイルスB19を添加する。表1に示す検体希釈パネルを調製する。
【0050】
表1:検体希釈パネル
【0051】
【表1】
【0052】
ノード1〜7の各検体について、850μlの試料を手動でディープウェルプレート(処理プレート)にピペット装入する。これらの処理プレートに、半自動機能モジュール(Roche)で、US 2012-9945751に記載された一般的な試料調製法を用いて、核酸抽出のための試料調製処理を施す。
【0053】
試料の最終調製段階(溶出液の冷却)で、増幅試薬MMx R1およびMMx R2(R2−HAVまたはR2−HAVref)を含有するマスターミックス(MMx)をマイクロウェルプレート(増幅−検出プレート)の各ウェルに手動で添加する。増幅試薬R1およびR2は、さらに後記に定義される。次いで溶出液(単離された核酸を含有する)を機器により処理プレートからマイクロウェルプレートへ移し、MMxと混合する。次いでマイクロウェルプレートを自動シールし、増幅および検出のための独立型分析用サイクラー内へ手動で移す。増幅および検出(リアルタイムPCR)を、適切なPCRプロフィールを用いて両方のマスターミックスについて同時に同一条件下で実施する。
【0054】
増幅および検出
増幅のために、下記の方法で2種類の試薬MMx R1およびMMx R2(R2−HAVまたはR2−HAVref)を混和し、単離された核酸と混合して、全反応体積50μlにする:
10μlのMMx R1試薬(3.3mMのMnOAc,pH6.1、および0.02%のナトリウムアジド,pH7.0)、15μlのMMx R2試薬(R2−HAVまたはR2−HAVref)、および25μlの単離された核酸を混和して、反応溶液を得る。
【0055】
MMx R2−HAVとMMx R2−HAVrefの配合は、それらのHAVオリゴヌクレオチド組成においてのみ異なる。この例では、MMx R2−HAVはオリゴヌクレオチドセット1(SEQ ID NO:7、11および14)を含み、MMx R2−HAVrefはオリゴヌクレオチドセット2(SEQ ID NO:1、9および12)を含む。両セットを同じプライマー/プローブ濃度で試験する。
【0056】
この例について、オリゴヌクレオチドセット1を含む反応混合物は、下記のものを含む:0.03%のナトリウムアジド,pH7.0、5.4%のDMSO、120mMのKOAc,pH7.0、3%のグリセロール、0.02%のTween 20、60mMのトリシン,pH8.0、0.222uMのアプタマー、10UのUNG、0.4mMのdGTP、0.4mMのdATP、0.4mMのdCTP、0.8mMのdUTP、45UのZ05Dポリメセーゼ、0.35uMのHAVフォワードプライマー、0.15uMのHAVセンスプローブ、0.35uMのHAVリバースプライマー;0.3uMの内部対照フォワードプライマー、0.3uMの内部対照リバースプライマー、0.15uMの内部対照プローブ。HAVrefについての反応混合物は、HAV反応混合物と同じ濃度のオリゴヌクレオチドを含む。
【0057】
データ分析
分析サイクラーの生データファイルを、自動ソフトウェアを用いて分析する。プロビット−用量応答ツールを用いてLODを決定する。計算したプロビットデータ(95%)を表2に挙げる。
【0058】
表2:MMx R2-HAVおよびMMx R2-HAVrefのプロビットデータ(95%)
【0059】
【表2】
【0060】
このプロビットデータは、MMx R2−HAVrefオリゴヌクレオチドセット(1.97)と比較して、R2−HAVオリゴヌクレオチドセットが高い感度(1.27)を生じることを示す。
【0061】
本明細書に記載した例および態様は説明のためのものにすぎず、それからみて当業者には多様な改変および変更が示唆され、それらは本発明および特許請求の範囲の精神および範囲に含まれると理解される。本明細書中に引用したすべての刊行物、配列寄託番号、特許、および特許出願を、全体としてあらゆる目的で本明細書に援用する。