(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出射面は略半円形または略円弧形であり、前記内面反射面は、前記入射面から入射した光を前記出射面の範囲内に反射するよう構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の灯具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る船灯10の正面斜視図である。船灯10は安全な航海を実現するために船に取り付けられる灯具である。船灯10は、主に全周方向に光を照射する白灯として用いられるが、これ以外にも両色灯、げん灯、マスト灯、および船尾灯(スタンライト)として用いられてもよい。
【0019】
船灯10は、アウターレンズ12と、上部シェード11と、下部シェード14と、を備える。アウターレンズ12は略円筒形のレンズであり、シェード14、16は、アウターレンズ12からの光を遮って船灯10の出射範囲を制限するためのものである。
【0020】
アウターレンズ12は、後述するインナーレンズ20の出射面から出射した光を船灯10の上下方向に拡散するように構成されている。アウターレンズ12は無色透明の樹脂によって成形されているが、有色透明の樹脂であってもよいし、ガラスなどの樹脂以外の材料で形成されてもよい。
図1では、簡単のため、アウターレンズ12を通して観察される内部の部品は省略されている。
【0021】
上部シェード11は、アウターレンズ12の上面を覆い、上方への光の漏れを防止する円盤状の部材である。下部シェード14は、アウターレンズ12の下方と後述するベース部材とを覆う、フランジを有した円筒形状の部材である。
【0022】
図2は、上部シェード11、アウターレンズ12、および下部シェード14を取り外した状態の船灯10の上方斜視図である。アウターレンズ12の内部には、主にインナーレンズ20、基板40およびベース部材50から構成されるアセンブリが収納されている。なお、
図2では、各部品間の組み付け状態を分かり易くするために、インナーレンズ20を透過して背後の構造が見えるように描かれている。
【0023】
円盤状の基板40の中心には、例えばLED(Light Emitting Diode)である半導体光源60が光軸を上向きにして配置される。船灯10が白灯として用いられる場合、半導体光源60は白色LEDである。なお、半導体光源は白色に限られず、他の色であってもよい。
【0024】
図示しないが、基板40の半導体光源が配置されている面とは反対側の面には、半導体光源60を駆動するための電子部品が搭載されている。なお、電子部品は、基板に搭載される代わりに例えばベース部材50上に搭載されてもよい。
【0025】
インナーレンズ20は、半導体光源60から入射した光を径方向全周に出射するように構成された、略円盤形の透明樹脂製のレンズである。インナーレンズ20は、半導体光源60の光軸とインナーレンズ20の中心軸とが一致するように、基板40に対して位置決め固定される。この位置決めの方法については後述する。
【0026】
ベース部材50は、インナーレンズ20、基板40、アウターレンズ12および下部シェード14が取り付けられるとともに、組み立てられた船灯10を船体に固定するための部材である。
【0027】
図3はインナーレンズ20の上方斜視図、
図4はインナーレンズ20の下方斜視図である。
【0028】
インナーレンズ20の下面には、半導体光源60から出射された光をレンズ内部に受け入れるための入射面22が設けられている。入射面22は、略半球形の凹面であり、その中心が半導体光源60の光軸上に位置するように設置される。
【0029】
インナーレンズ20の上面には、漏斗状の内面反射面24が形成されている。内面反射面24は、入射面22から入射した上向きの光を略水平方向に反射して出射面26に向ける役割を有している。内面反射面24は、例えば、焦点が半導体光源の光軸上に位置する放物線を、光軸を中心に360度回転させた形状である。
【0030】
出射面26は、下から上に向かってわずかに直径が小さくなる円筒面として形成され、内面反射面24によって反射された光をインナーレンズ20の外周に位置するアウターレンズ12に向けて出射する。
【0031】
インナーレンズ20の下面には、基板40に対してインナーレンズ20を所定位置に位置決めするための第1位置決め部材28と、ベース部材50に対してインナーレンズ20を所定位置に位置決めするための第2位置決め部材30とが設けられている。第2位置決め部材30は、第1位置決め部材28よりも下方に長く延出している。インナーレンズ20の下面には、インナーレンズ20を基板40に固定するための固定部材32と、基板40上でインナーレンズ20を支持する支持部材34も設けられている。
【0032】
第1位置決め部材28、第2位置決め部材30、固定部材32および支持部材34はそれぞれ、インナーレンズ20の下面に二つずつ、二回対称になるように設けられている。なお、各部材が三つ以上設けられていてもよい。
【0033】
図2を参照して、基板40には位置決め用の穴44が形成されている。この穴44にインナーレンズ20の第1位置決め部材28を挿入することで、半導体光源60の光軸上に入射面22が位置するようにインナーレンズ20が位置決めされる。このとき、固定部材32および支持部材34の下面が基板40の面上に接触して、基板40とインナーレンズ20の入射面22との間が所定の距離に保たれる。第1位置決め部材28の挿入後、固定部材32に形成されたボス穴32aに、基板40の裏側からピン46を差し込むことによって、基板40に対してインナーレンズ20が固定される。
【0034】
基板40の周縁にはU字形の切り欠き42が互いに反対側に二箇所形成されている。インナーレンズ20と基板40とを組み付けたとき、インナーレンズ20の第2位置決め部材30がこの切り欠き42を通して基板40よりも下方に延びることができる。
【0035】
ベース部材50には、径方向外側を向いた馬蹄形の受け部52と、ピンを挿通するためのピン穴(図示せず)とが、互いに反対側に二箇所設けられている。基板40の下面を越えて延びる第2位置決め部材30をこの受け部52に合わせることによって、ベース部材50に対してインナーレンズ20が位置決めされる。この後、第2位置決め部材30に形成されたボス穴30aに、ベース部材50の裏側からピン54を挿入することによって、ベース部材50に対してインナーレンズ20が固定される。
【0036】
上記のように、半導体光源60が配置された基板40は、インナーレンズ20の第1位置決め部材28を介して固定されるとともに、ベース部材50は、インナーレンズ20の第2位置決め部材30を介して固定される。つまり、基板40とベース部材50とは直接結合されておらず、インナーレンズ20を介してのみ結合されている。これにより、インナーレンズと基板とを別々にベース部材に固定するような構造とは異なり、ベース部材を取り付ける際にインナーレンズと基板上の半導体光源との間の位置決め精度が損なわれることがない。また、ベース部材に取り付けられるアウターレンズとの位置決め精度も向上する。したがって、船灯10の配光制御の精度を高めることができる。
【0037】
図5は、船灯10のインナーレンズ20およびアウターレンズ12における光線軌跡を表す図である。
【0038】
半導体光源60から出射した光は、インナーレンズ20の下面の入射面22に入射する。入射光の一部は、漏斗状の内面反射面24によってインナーレンズ20の径方向外向きへと反射されて、出射面26に到達し、入射光の一部は、内面反射面を介さずに直接出射面26に到達する。インナーレンズ20の中心24aが半導体光源60の光軸上にあるように基板40に対してインナーレンズ20が位置決めされているので、インナーレンズ20の出射面26の全周からほぼ等しい照度で光を照射することができる。
【0039】
アウターレンズ12の内面は滑らかな曲面であるのに対し、外面には波形に湾曲するステップが設けられたシリンドリカル面が形成されており、各ステップによって出射面からの光が鉛直方向に拡散される。これにより、海上衝突予防法で規定されている垂直範囲50度という白灯の照射範囲をクリアする配光を実現することができる。
【0040】
なお、
図1に示したように、アウターレンズ12の上側は上部シェードによって覆われているので、内面反射面から出射した光が漏れ出すことはない。
【0041】
以下、実施の形態1に係る船灯10の組立手順について説明する。まず、半導体光源60が配置された基板40に形成された取り付け穴44に、インナーレンズ20の第1位置決め部材28を挿入する。基板40の裏側から、固定部材32のボス穴32aにピン46を挿入して、基板40に対してインナーレンズ20を固定する。インナーレンズ20と基板40とが組み付けられた状態で、インナーレンズの第2位置決め部材30をベース部材50の受け部52に挿入する。ベース部材50の裏側から、第2位置決め部材30のボス穴30aにピン54を挿入して、ベース部材50に対してインナーレンズ20を固定する。さらに、ベース部材50にアウターレンズ12を取り付け、上部シェード11をアウターレンズ12に取り付け、最後に下部シェード14をベース部材50に取り付ける。船灯10の内部に水が侵入すると金属製部品の錆の要因となるため、アウターレンズ12および下部シェード14とベース部材50とは超音波溶着によって固定され、内部への水の浸入を防止することが好ましい。
【0042】
以上説明したように、実施の形態1によると、インナーレンズと基板とを組み付けた後に、ベース部材に対してインナーレンズを取り付けるようにしたことで、ベース部材の取り付け時にインナーレンズと基板上の半導体光源との間の位置決め精度が損なわれることがなく、灯具の配光制御の精度が向上する。
【0043】
(実施の形態2)
船舶には、白灯の他に、緑色の右げん灯と赤色の左げん灯を設置することが海上衝突予防法で義務づけられている。
【0044】
光源としてLEDを使用する場合、白色LEDの光束が約100ルーメンであるのに対し、緑色LEDおよび赤色LEDの光束は、およそその半分程度である。このため、白灯の光学系をそのまま使用して、白色LEDを緑色LEDまたは赤色LEDに単に置き換えるだけでは、海上衝突予防法で規定されている4.3カンデラ以上という中心光度を確保することができないという問題がある。
【0045】
そこで、実施の形態2では、光源として緑色LEDまたは赤色LEDを使用する場合でも、海上衝突予防法で規定される中心光度をクリアする光学系を有する灯具を提供する。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態2に係る船灯100の正面斜視図である。船灯100は、主に右げん灯または左げん灯として用いられるが、他の目的で使用されてもよい。
【0047】
船灯100は、アウターレンズ112と、シェード116とを備える。アウターレンズ112は略円筒形のレンズであり、シェード116は、アウターレンズ112からの光を遮って船灯100の出射範囲を制限するためのものである。
【0048】
アウターレンズ112は、後述するインナーレンズ120の出射面から出射した光を船灯100の上下方向に拡散するように構成されている。アウターレンズ112は無色透明の樹脂によって成形されているが、有色透明の樹脂であってもよいし、ガラスなどの樹脂以外の材料で形成されてもよい。
図6では、簡単のため、アウターレンズ112を通して観察される内部の部品は省略されている。
【0049】
シェード116は、開口部116aと、開口部の両側にそれぞれ設けられた遮光板116bと、上底116cとを有している。海上衝突予防法では、げん灯の出射範囲が112.5度と規定されているので、開口部116aの幅はこれに合わせて設定される。上底116cは、アウターレンズ12の上面を覆い、上方への光の漏れを防止する。
【0050】
図7は、シェード116およびアウターレンズ112を取り外した状態の船灯100の上方斜視図である。アウターレンズ112の内部には、主にインナーレンズ120、基板140およびベース部材150から構成されるアセンブリが収納されている。
【0051】
円盤状の基板140の中心には、例えばLED(Light Emitting Diode)である半導体光源160が光軸を上向きにして配置される。船灯100が左げん灯として用いられる場合、半導体光源160は緑色LEDであり、右げん灯として用いられる場合は赤色LEDである。
【0052】
図示しないが、基板140の半導体光源が配置されている面とは反対側の面には、半導体光源160を駆動するための電子部品が搭載されている。なお、電子部品は、基板に搭載される代わりに例えばベース部材150上に搭載されてもよい。
【0053】
インナーレンズ120は、半導体光源160から入射した光を径方向の一部、例えば180度の範囲に出射するように構成された透明樹脂製のレンズ部121と、レンズ部121から互いに反対側に延出するフランジ部129と、で構成される。
【0054】
ベース部材150は、インナーレンズ120、基板140、アウターレンズ112およびシェード116が取り付けられるとともに、組み立てられた船灯100を船体に固定するための部材である。
【0055】
図8は、インナーレンズ120と基板140とを組み付けた状態の正面図、
図9は、インナーレンズ120の上方斜視図である。
【0056】
インナーレンズ120の下面には、半導体光源160から出射された光をレンズ内部に受け入れるための入射面122が設けられている。入射面122は、下方に膨らんだ凸部122aの周りを環状の突起122bで囲んだような断面が略凹字形の面であり(
図11を参照)、その中心が半導体光源160の光軸上に位置するように設置される。
【0057】
入射面122の上方には、内面反射面124が設けられる。内面反射面124の部分124a、124bは、中心軸を含む平面で円錐を半分に切断した形状の凸面であり、部分124a、124bの間には、水平の段差部124eが形成されている。また、内面反射面124の部分124c、124dは、中心軸を含む平面で円錐を半分に切断した形状の凹面であり、部分124c、124dの間には、水平の段差部124fが形成されている。内面反射面124は、入射面122から入射した上向きの光を略水平方向に反射して、入射光のほぼ全てを出射面126に向ける役割を有している。
【0058】
出射面126は、下から上に向かってわずかに直径が小さくなる円筒面であり、インナーレンズ120の中心軸に対して180度の範囲に広がっている。言い換えると、出射面126は、半導体光源160の光軸またはインナーレンズ120の中心軸を法線とする平面である断面において半円形をなしている。出射面126は、内面反射面124によって反射された光をインナーレンズ120の外周に位置するアウターレンズ112に向けて出射する。なお、出射面126の中心軸に対する角度は、180度未満であってもよいし、180度以上であってもよい。この場合、半導体光源の光軸またはインナーレンズの中心軸を法線とする平面である断面において、出射面126は円弧形である。
【0059】
インナーレンズ120の下面には、基板140に対してインナーレンズ120を所定位置に位置決めするための第1位置決め部材128と、ベース部材150に対してインナーレンズ120を所定位置に位置決めするための第2位置決め部材130とが設けられている。第2位置決め部材130は、第1位置決め部材128よりも下方に長く延出している。インナーレンズ120の下面には、インナーレンズ120を基板140に固定するための固定部材132も設けられている。
【0060】
第1位置決め部材128、第2位置決め部材130および固定部材132はそれぞれ、インナーレンズ120の下面に二つずつ、二回対称になるように設けられている。なお、各部材が三つ以上設けられていてもよい。
【0061】
図10を参照して、基板140およびベース部材150に対するインナーレンズ120の位置決めについて説明する。なお、
図10では、インナーレンズを透過して背後の構造が見えるように描かれている。
【0062】
基板140には、位置決め用の穴144が形成されている。この穴144にインナーレンズ120の第1位置決め部材128を挿入することで、半導体光源160の光軸上に入射面122が位置するようにインナーレンズ120が位置決めされる。このとき、固定部材132の下面が基板140の面上に接触して、基板140上の半導体光源160とインナーレンズ120の入射面122との間が所定の距離に保たれる。第1位置決め部材128の挿入後、固定部材132に形成されたボス穴(図示せず)に、基板140の裏側からピン146を差し込むことによって、基板140に対してインナーレンズ120が固定される。
【0063】
基板140の周縁にはU字形の切り欠き142が互いに反対側に二箇所形成されている。インナーレンズ120と基板140とを組み付けたとき、インナーレンズ120の第2位置決め部材130がこの切り欠き142を通して基板140よりも下方に延びることができる。
【0064】
ベース部材150には、径方向外側を向いた馬蹄形の受け部152と、ピンを挿通するためのピン穴(図示せず)とが、互いに反対側に二箇所設けられている。基板140の下面を越えて延びる第2位置決め部材130をこの受け部152に合わせることによって、ベース部材150に対してインナーレンズ120が位置決めされる。この後、第2位置決め部材130に形成されたボス穴(図示せず)に、ベース部材150の裏側からピン154を挿入することによって、ベース部材150に対してインナーレンズ120が固定される。
【0065】
上記のように、半導体光源160が配置された基板140は、インナーレンズ120の第1位置決め部材128を介して固定されるとともに、ベース部材150は、インナーレンズ120の第2位置決め部材130を介して固定される。つまり、基板140とベース部材150とは直接結合されておらず、インナーレンズ120を介してのみ結合されている。これにより、インナーレンズと基板とを別々にベース部材に固定するような構造とは異なり、ベース部材を取り付ける際にインナーレンズと基板上の半導体光源との間の位置決め精度が損なわれることがない。また、ベース部材に取り付けられるアウターレンズとの位置決め精度も向上する。したがって、船灯100の配光制御の精度を高めることができる。
【0066】
図11は、船灯100のインナーレンズ120およびアウターレンズ112における光線軌跡を表す図である。
【0067】
半導体光源160から出射した光は、インナーレンズ120の下面の入射面122に入射する。入射光は、内面反射面124によってインナーレンズ120の径方向外向きに反射されて、周方向の限られた範囲(例えば180度)である出射面126に到達する。
【0068】
アウターレンズ112の内面は滑らかな曲面であるのに対し、外面には波形に湾曲するステップが設けられたシリンドリカル面が形成されており、各ステップによって、出射面からの光が鉛直方向に拡散される。これにより、海上衝突予防法で規定されている垂直範囲15度というげん灯の照射範囲をクリアする配光を実現することができる。
【0069】
なお、
図6に示したように、アウターレンズ112の上側はシェード116によって覆われているので、内面反射面から出射した光が漏れ出すことはない。
【0070】
以下、実施の形態2に係る船灯100の組立手順について説明する。まず、半導体光源が160配置された基板140に形成された取り付け穴144に、インナーレンズ120の第1位置決め部材128を挿入する。基板140の裏側から、固定部材132のボス穴にピン146を挿入して、基板140に対してインナーレンズ120を固定する。インナーレンズ120と基板140とが組み付けられた状態で、インナーレンズの第2位置決め部材130をベース部材150の受け部152に挿入する。ベース部材150の裏側から、第2位置決め部材130のボス穴にピン154を挿入して、ベース部材150に対してインナーレンズ120を固定する。さらに、ベース部材150にアウターレンズ112を取り付け、最後にシェード116をベース部材150に取り付ける。船灯100の内部に水が侵入すると金属製部品の錆の要因となるため、アウターレンズ112およびシェード116とベース部材150とは超音波溶着によって固定され、水の浸入を防止することが好ましい。
【0071】
以上説明したように、げん灯においては全周(360度)にわたり光を出射する必要はなく、海上衝突予防法で規定された112.5度の範囲に出射すればよい。そこで、実施の形態2によれば、入射面から入射した光のほぼ全てが例えば180度の広がりを持つ出射面から出射されるように、インナーレンズの入射面および内面反射面を設計するようにした。これにより、光束が白色LEDの半分程度である緑色LEDまたは赤色LEDを光源として使用した場合でも、げん灯に必要とされる中心光度(4.3カンデラ以上)を実現することができる。
【0072】
また、インナーレンズと基板とを組み付けた後に、ベース部材に対してインナーレンズを取り付けるようにしたことで、ベース部材の取り付け時にインナーレンズと基板上の半導体光源との間の位置決め精度が損なわれることがなく、灯具の配光制御の精度が向上する。
【0073】
(実施の形態3)
実施の形態2では、緑色LEDまたは赤色LEDを光源として使用するげん灯について説明した。実施の形態3では、実施の形態2で説明したような海上衝突予防法で規定される中心光度をクリアする光学系を二つ備え、緑色の右げん灯と赤色の左げん灯の両方の機能を発揮する船灯を提供する。
【0074】
図12は、本発明の実施の形態3に係る船灯200の正面斜視図である。船灯200は緑色光および赤色光を出射する両色灯として用いられるが、他の目的で使用されてもよい。
【0075】
船灯200は、アウターレンズ212と、外側シェード216とを備える。アウターレンズ212は略円筒形のレンズであり、外側シェード216は、アウターレンズ212からの光を遮って船灯200の出射範囲を制限するためのものである。
【0076】
アウターレンズ212は、後述するインナーレンズ220A、220Bの出射面から出射した光を船灯200の上下方向に拡散するように構成されている。アウターレンズ212は無色透明の樹脂によって成形されているが、有色透明の樹脂であってもよいし、ガラスなどの樹脂以外の材料で形成されてもよい。
【0077】
外側シェード216は、二つの開口部216aと、各開口部の両側にそれぞれ設けられた遮光板216bと、上底216cとを有している。海上衝突予防法では、げん灯の出射範囲が112.5度と規定されているので、開口部216aの幅および遮光板216bの径方向長さはこの規定を満足するように設定される。上底216cは、アウターレンズ212の上面を覆い、上方への光の漏れを防止する。
【0078】
図13は、
図12から外側シェード216およびアウターレンズ212を取り外した状態の船灯200の正面図であり、
図14は、
図13からさらに内側シェード270を取り外した状態の船灯200の正面図である。アウターレンズ212の内部には、第1光学ユニット218A、第2光学ユニット218B、基板240、ベース部材250、および内側シェード270から構成されるアセンブリが収納されている。
【0079】
第1光学ユニット218Aは緑色光を発する光学ユニットであり、第2光学ユニット218Bは赤色光を発する光学ユニットである。
【0080】
第1光学ユニット218Aは、第1半導体光源260Aと、第1半導体光源260Aから発せられた光が入射する第1インナーレンズ220Aと、で構成される。第2光学ユニット218Bは、第2半導体光源260Bと、第2半導体光源260Bから発せられた光が入射する第2インナーレンズ220Bと、で構成される。第1光学ユニット218Aと第2光学ユニット218Bは、円盤状の基板240の上に隣接して配置されている。
【0081】
第1および第2インナーレンズ220A、220Bは、実施の形態2で説明したインナーレンズ120と同様の構造を有している。すなわち、第1および第2インナーレンズ220A、220Bは、それぞれ、第1および第2半導体光源260A、260Bから入射した光を径方向の一部、例えば180度の範囲に出射するように構成された透明樹脂製のレンズ部221A、221Bと、レンズ部221A、221Bから互いに反対側に延出するフランジ部(図示せず)と、で構成される。
【0082】
第1および第2インナーレンズ220A、220Bの下面には、第1および第2半導体光源260A、260Bから出射された光をレンズ内部に受け入れるための入射面(図示せず)が設けられている。
図11で説明したものと同様に、入射面は、下方に膨らんだ凸部の周りを環状の突起で囲んだような断面が略凹字形の面であり、その中心が第1および第2半導体光源260A、260Bの光軸上に位置するように設置される。
【0083】
第1および第2半導体光源260A、260Bは、それぞれ光軸を上向きにして同一の基板240上に配置されている。図示の例では、第1半導体光源260Aは緑色LED(Light Emitting Diode)であり、第2半導体光源260Bは赤色LEDである。
【0084】
図示しないが、基板240の半導体光源が配置されている面とは反対側の面には、第1および第2半導体光源260A、260Bを駆動するための電子回路が搭載されている。第1および第2半導体光源260Aと260Bを直列に接続することで、一つの電子回路で半導体光源260A、260Bの両方を駆動してもよいし、それぞれ別の電子回路で駆動してもよい。この電子回路は、基板に搭載される代わりに例えばベース部材250上に搭載されてもよい。
【0085】
図14に矢印で表すように、第1半導体光源260Aから出射した光は、第1インナーレンズ220Aの下面の入射面に入射する。入射光は、レンズ部221Aの内面反射面224Aによって第1インナーレンズ220Aの径方向外向きに反射される。同様に、第2半導体光源260Bから出射した光は、第2インナーレンズ220Bの下面の入射面に入射する。入射光は、レンズ部221Bの内面反射面224Bによって第2インナーレンズ220Bの径方向外向きに反射される。第1および第2インナーレンズ220A、220Bによって反射された光は、アウターレンズ212(
図12参照)に入射する。
【0086】
アウターレンズ212の内面は滑らかな曲面であるのに対し、アウターレンズ212の外面には波形に湾曲するステップが設けられたシリンドリカル面が形成されており、各ステップによって、出射面からの光が鉛直方向に拡散される。これにより、海上衝突予防法で規定されている垂直範囲15度というげん灯の照射範囲をクリアする配光を実現することができる。
【0087】
実施の形態2と同様に、第1および第2インナーレンズ220A、220Bは、ベース部材250に対して位置決め固定されている。なお、第1および第2インナーレンズ220Aは一体に構成されてもよいし、別体に構成されてもよい。
【0088】
ベース部材250は、第1および第2インナーレンズ220A、220B、基板240、内側シェード270、アウターレンズ212、外側シェード216が取り付けられるとともに、組み立てられた船灯200を船体に固定するための部材である。
【0089】
図15は、
図13に示したアセンブリのうち内側シェード270を透過させて内部構造が分かるようにした斜視図である。
図16は、
図13に示したアセンブリの上面図である。
図17(a)は、
図16の内側シェード270を透過させて内部構造が分かるようにした上面図である。
【0090】
図17(a)を参照して、内側シェード270は、第1インナーレンズ220Aと第2インナーレンズ220Bの間に延びる第1遮蔽板272と、第1遮蔽板272から二つに分かれて略Y字形の壁を形成する第2遮蔽板273A、273Bと、第1インナーレンズ220Aおよび第2インナーレンズ220Bの背面側(
図17では上側)を覆う円弧状の第3遮蔽板274A、274Bと、を備えている。第2遮蔽板273Aと第3遮蔽板274Aの間、および第2遮蔽板273Bと第3遮蔽板274Bの間には、それぞれ開口部271A、271Bが画成されている。
【0091】
図17(b)は、内側シェード270を簡略化した上面図であり、第1および第2インナーレンズ220A、220Bから発せられた光の軌跡が矢印で表されている。図から分かるように、内側シェード270の第1〜第3遮蔽板によって第1光学ユニット218Aと第2光学ユニット218Bとが完全に境界されているので、第1および第2光学ユニットから発せられる異なる色の光(すなわち緑色光と赤色光)が混合するのを防止することができる。また、内側シェード270の第1〜第3遮蔽板によって、第1および第2光学ユニットの出射範囲を所定の角度に制限することができる。特に、第3遮蔽板274A、274Bを設けることによって、第1および第2インナーレンズ220A、220Bで内面反射した光が船灯200の後方側(
図17では上側)に漏れるのを防止することができる。
【0092】
第2遮蔽板273A、273Bのうち、第1および第2インナーレンズ側の面275A、275Bには、光の反射を抑制するシボ加工が施されていてもよい。この面の反射を抑えることで、配光中の光ムラを防止することができる。
【0093】
船灯200では、基板240上に搭載されている2個の半導体光源260A、260Bを同時に点灯させると、基板温度が高くなり過ぎる恐れがある。そこで、内側シェード270をアルミダイカスト(例えば、ADC)で成形し、かつ内側シェード270を基板240に接触させるように取り付けてもよい。こうすると、半導体光源260A、260B(および電子回路)から発せられた熱が基板240から内側シェード270に伝熱されるので、基板の放熱性能を向上させることができる。
【0094】
以上説明したように、実施の形態3によると、それぞれ緑色光、赤色光を出射する第1光学ユニットと第2光学ユニットが、互いに隣接するようにアウターレンズ内に組み込まれている。これにより、実施の形態2の緑色の右げん灯と赤色の左げん灯とを二段に積み重ねる場合に比べて小型化された両色灯を提供することができる。
【0095】
実施の形態3では、緑色および赤色の半導体光源を設けることを説明したが、第1半導体光源260Aおよび/または第2半導体光源260Bを白色光源とし、アウターレンズ212を緑色レンズまたは赤色レンズにして、緑色光と赤色光を構成してもよい。あるいは、第1半導体光源260Aおよび/または第2半導体光源260Bを白色光源とし、第1インナーレンズ220Aおよび/または第2インナーレンズ220Bを緑色レンズまたは赤色レンズにして、緑色光と赤色光を構成してもよい。
【0096】
船舶用の白灯、げん灯および両色灯を例に挙げて実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態と同様の構造を有する灯具が、船舶以外の用途、例えば車両用として使用されてもよい。
【0097】
また、上述したインナーレンズはいずれも、船灯以外の灯具での配光制御にも使用することができる。例えば、げん灯に使用されるインナーレンズ120は、入射面に入射した光を光源の光軸に対して略直角方向に反射するとともに、照射範囲を周方向の特定角度範囲に限定することができるので、車両用灯具をはじめとする様々な灯具のレンズとして利用することができる。