(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483384
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】減衰ポケットを有する多層電鋳ノズルプレート
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20190304BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 501
B41J2/14 305
B41J2/14 603
B41J2/14 607
B41J2/16 305
B41J2/16 401
B41J2/16 503
B41J2/16 505
B41J2/16 509
B41J2/14 613
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-192418(P2014-192418)
(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公開番号】特開2015-74228(P2015-74228A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】14/048,196
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ディー・レディング
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・セルラ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・ニストロム
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ダブリュ・ヘイズ
【審査官】
小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−234096(JP,A)
【文献】
米国特許第07766463(US,B2)
【文献】
特開平07−329297(JP,A)
【文献】
特開平08−238769(JP,A)
【文献】
特開平08−238768(JP,A)
【文献】
特開平09−239978(JP,A)
【文献】
特開平07−329304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインクチャンバを備える印刷ヘッド・マニホールドと、
外側表面、
外側表面の反対側の内側表面、
外側表面と内側表面との間の高さにおける中間面、
印刷中にインクを吐出する少なくとも1つのノズル、
前記ノズルに連通し、前記中間面を底面として画定された第1の凹部、および、
前記中間面を底面として画定された第2の凹部、
を備える
ノズルプレートと、
前記第2の凹部を被覆して、ノズルプレートの前記中間面を底面として画定された密封されたポケットを形成する、ノズルプレートの内側表面に取り付けられた適合層と
を備えるインクジェット印刷ヘッド。
【請求項2】
さらに、密封されたポケット内に気体を、インクチャンバ内にインクを備える、
請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッド。
【請求項3】
インクチャンバ内のインクが、適合層によって密封されたポケット内の気体から分離される、
請求項2に記載のインクジェット印刷ヘッド。
【請求項4】
適合層が、印刷ヘッド・マニホールドにノズルプレートを物理的に取り付ける接着剤である、
請求項1または2に記載のインクジェット印刷ヘッド。
【請求項5】
外側表面と、外側表面の反対側の内側表面と、外側表面と内側表面との間の高さにおける中間面と、印刷中にインクを吐出する少なくとも1つのノズルと、前記ノズルに連通し、前記中間面を底面として画定された第1の凹部と、前記中間面を底面として画定された第2の凹部とを備えるノズルプレートを形成することと、
ノズルプレートの内側表面に適合層を取り付けることにより、前記第2の凹部を被覆して、ノズルプレートの前記中間面を底面として画定された密封されたポケットを形成することと
を備える、インクジェット印刷ヘッドを形成する方法。
【請求項6】
前記ノズルプレートを形成することは、
フォトリソグラフィプロセスを使用してマンドレル上に第1のパターニングされたフォトレジスト層を形成することであって、第1のパターニングされたフォトレジスト層がマンドレルの第1の部分を被覆し且つマンドレルの第2の部分を露出させることと、
マンドレル上に第1のパターニングされた電鋳金属層を電鋳することであって、第1のパターニングされたフォトレジスト層が第1の電鋳金属層内に複数のノズルを画定し、第1の電鋳金属層が外側表面を備えることと、
フォトリソグラフィプロセスを使用してマンドレル上に及び第1のパターニングされた電鋳金属層上に第2のパターニングされたフォトレジスト層を形成することであって、第2のパターニングされたフォトレジスト層が第1のパターニングされた電鋳金属層の第1の部分を被覆し且つ第1のパターニングされた電鋳金属層の第2の部分を露出させることと、
第1のパターニングされた電鋳金属層上に第2のパターニングされた電鋳金属層を電鋳することであって、第2のパターニングされたフォトレジスト層が前記第1の凹部および前記第2の凹部を画定し、第2のパターニングされた電鋳金属層が内側表面を備えることと
を備える、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
適合層が熱可塑性接着剤であり、本方法が、さらに、接着剤としての適合層を使用して印刷ヘッド・マニホールドにノズルプレートを取り付けることを備える、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
マニホールドがインク流路を備え、本方法が、さらに、インクによってインク流路を満たすことを備え、熱可塑性接着剤が、密封されたポケット内の気体からインク流路内のインクを分離する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、
印刷ヘッド・マニホールドにダイアフラムを取り付けることと、
ダイアフラムに圧電素子を取り付けることと、
ノズルからインクを吐出するように圧電素子を作動させることとを備え、熱可塑性接着剤がノズルからのインクの吐出中に音響エネルギを減衰させるように構成されている、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
印刷ヘッドを含むインクジェットプリンタであって、
前記印刷ヘッドは、
内部にインクチャンバを備える印刷ヘッド・マニホールドと、
外側表面、
外側表面の反対側の内側表面、
外側表面と内側表面との間の高さにおける中間面、
印刷中にインクを吐出する少なくとも1つのノズル、
前記ノズルに連通し、前記中間面を底面として画定された第1の凹部、および、
前記中間面を底面として画定された第2の凹部、
を備えるノズルプレートと、
前記第2の凹部を被覆して、ノズルプレートの前記中間面を底面として画定された密封されたポケットを形成する、ノズルプレートの内側表面に取り付けられた適合層と
を備える、インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、インクジェット印刷装置の分野に関し、特に、圧電式インクジェット印刷ヘッド及び圧電式インクジェット印刷ヘッドを含むプリンタについての方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドロップオンデマンド・インクジェット技術は、印刷業界において幅広く使用されている。ドロップオンデマンド・インクジェット技術を使用したプリンタは、サーマルインクジェット技術や圧電技術のいずれかを使用することができる。それらは、サーマルインクジェットよりも製造がより高価であるにもかかわらず、圧電式インクジェットは、例えば、多種多様なインクを使用することができるために一般に好まれている。
【0003】
圧電式インクジェット印刷ヘッドは、圧電素子(すなわち、変換器又はPZT)のアレイを含む。アレイを形成するための1つのプロセスは、接着剤によってブランケット圧電層を転送キャリアに着脱可能に接合することと、複数の圧電素子を個々に形成するためにブランケット圧電層をダイシングすることとを含むことができる。隣接する圧電素子間の全ての圧電材料を除去して各圧電素子間の正確な間隔を設けるために、複数のダイシング鋸パスが使用されることができる。
【0004】
圧電式インクジェット印刷ヘッドは、通常、圧電素子のアレイが取り付けられる可撓性ダイアフラムをさらに含むことができる。通常は電源に電気的に結合された電極との電気的接続を介して、電圧が圧電素子に印加されると、圧電素子は、屈曲させる又は撓ませるように作動する。圧電素子の作動は、印刷中に、ダイアフラムを屈曲させ、インクチャンバ内の圧力パルスと、ノズルプレート(すなわち、アパチャープレート)、例えばステンレス製のノズルプレート内の複数のノズル(すなわち、ノズルアパチャー又はノズル開口)のうちの1つを介したチャンバからの所定量のインクの吐出とを順次もたらす。屈曲は、さらに、排出されたインクを置き換えるために開口を介して主インク容器からチャンバ内にインクを引き込む。
【0005】
ノズルからインクを吐出するための圧力波の使用は、様々な問題をもたらすことがある。例えば、圧力波は、インク供給路を介して伝播することができるとともに、隣接するノズルに圧力パルス又は音響エネルギのクロストークをもたらすように固体印刷ヘッド構造体を介して伝達される音響エネルギを生成することもできる。他の時間依存効果はまた、印刷中の一連の吐出されたインク滴間の噴出性能の変化などの音響エネルギから生じることがある。1つのインク滴の吐出中の圧力パルスから生じる圧力変動は、後続の液滴の滴吐出に影響を与えることができ、滴容積、滴速度及び滴指向性の変化の原因となり得る。印刷ヘッドは、圧力波を減衰させることによってクロストーク及び他の副作用を減少させるように設計されることができる。例えば、ステンレス鋼から製造されたノズルプレートを使用するよりもむしろ、ノズルプレートは、クロストークを減少させる所定量だけ圧力波を抑制又は減衰させるが所望のノズルから印刷するのに十分な圧力波をなおも発生させるポリマなどの適合材料から製造されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本教示の実施形態において、インクジェット印刷ヘッドは、内部にインクチャンバを備える印刷ヘッドマニホールドと、外側表面、外側表面の反対側の内側表面、及び、内側表面内の凹部を備えるノズルプレートとを含むことができる。凹部は、外側表面と内側表面との間の高さにおける中間面を含むことができる。インクジェット印刷ヘッドは、さらに、凹部を被覆してノズルプレート内に密封された減衰ポケットを形成する、ノズルプレートの内側表面に取り付けられた適合層を含むことができる。
【0007】
他の実施形態において、インクジェットプリンタは、印刷ヘッドを含むことができ、印刷ヘッドは、内部にインクチャンバ及びノズルプレートを備えた印刷ヘッド・マニホールドを含む。ノズルプレートは、外側表面と、外側表面の反対側の内側表面と、内側表面内の凹部とを含むことができる。凹部は、外側表面と内側表面との間の高さにおいて中間面を含むことができる。印刷ヘッドは、さらに、凹部を被覆してノズルプレート内に密封されたポケットを形成する、ノズルプレートの内側表面に取り付けられた適合層を含むことができる。プリンタは、さらに、印刷ヘッドを包囲するハウジングを含むことができる。
【0008】
他の実施形態において、インクジェット印刷ヘッドを形成する方法は、外側表面と、外側表面の反対側の内側表面とを備えるノズルプレートを形成することと、内側表面内に外側表面と内側表面との間の高さにおいて中間面を備える凹部を形成することと、凹部を被覆してノズルプレート内に密封されたポケットを形成する、ノズルプレートの内側表面に適合層を取り付けることとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本教示の実施形態にかかる印刷ヘッドの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、インクによって構造体を満たした後の
図1の構造体を示す断面図である。
【
図3】
図3は、例えばフォトリソグラフィ電鋳プロセスなどの電鋳プロセスを使用してノズルプレートを形成するための本教示の実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、例えばフォトリソグラフィ電鋳プロセスなどの電鋳プロセスを使用してノズルプレートを形成するための本教示の実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、例えばフォトリソグラフィ電鋳プロセスなどの電鋳プロセスを使用してノズルプレートを形成するための本教示の実施形態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、例えばフォトリソグラフィ電鋳プロセスなどの電鋳プロセスを使用してノズルプレートを形成するための本教示の実施形態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、例えばフォトリソグラフィ電鋳プロセスなどの電鋳プロセスを使用してノズルプレートを形成するための本教示の実施形態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、例えばフォトリソグラフィ電鋳プロセスなどの電鋳プロセスを使用してノズルプレートを形成するための本教示の実施形態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本教示の実施形態にかかる1つ以上の印刷ヘッドを含むプリンタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図のいくつかの詳細は、単純化されており、厳密な構造的正確さ、細部及び縮尺を維持するよりもむしろ本教示の理解を容易とするために描かれていることに留意すべきである。
【0011】
特に断らない限り、本願明細書において使用される場合、語句「プリンタ」は、ディジタル複写機、製本機、ファクシミリ装置、複合機、静電写真装置などの任意の目的で印刷出力機能を実行する任意の装置を包含する。特に断らない限り、語句「ポリマ」は、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性プラスチック、樹脂、ポリカーボネート、エポキシ及び当該技術分野において知られている関連化合物を含む長鎖分子から形成された広範囲の炭素系化合物のいずれかを包含する。
【0012】
ステンレス鋼などの剛性材料からよりもむしろポリイミドなどの適合材料からノズルプレートを形成することは、印刷時の圧力波を減衰させ、印刷中においてノズル間に小さいクロストークを有する印刷ヘッドをもたらすことができる。しかしながら、適合ポリマノズルプレートは、金属などのより剛性の材料と比較して他のより望ましくない特性を有することがある。例えば、ポリマフィルムは、組立時に他の印刷ヘッド構造体によってノズルプレートの配列を妨げることがある寸法変化(例えば、膨張)をもたらす水分を吸収することがある。さらに、適合ポリマ材料は、ポリマノズルプレート内のノズルの形成中に変形して窪むことがあり、印刷中にインク指向性に悪影響を与えることがある。さらに、ポリマノズルプレートは、印刷、組立及び使用中に紙や他の表面との接触からの摩耗や擦り傷の影響をより受けやすいかもしれない。さらに、ポリマプレート内のノズル開口の拡大縮小は、ポリマ内に小さくて明確に画定されたノズル孔を形成することが難しいために、印刷解像度の増加及びノズルサイズの減少にともないより困難となる。さらに、ポリマノズルプレートは、空気に対して透過性であることがあり、負圧が多くの場合はノズルからのインクの漏れや垂れ落ちを減少させるためにノズルプレートの外部に比べて印刷ヘッド内に維持されることから、印刷ヘッド内の気泡の形成をもたらすことがある。
【0013】
本教示の実施形態は、いくつかの従来の金属製のノズルプレートに比べて減衰を低減し、ポリマノズルプレートに関連する課題を解消する金属層を含むノズルプレートをもたらすことができる。
【0014】
本教示の実施形態にかかるノズルプレートアセンブリ12を含む印刷ヘッド10の実施形態が
図1の断面図に示されている。
図1が例示的な印刷ヘッドにみられることができる様々な構造を示している一方で、各図に示されたその実施形態が一般化された概略図であり、他の構成要素が付加されてもよく、又は、既存の構成要素が除去若しくは変更されてもよいことが理解される。印刷ヘッドは、各流路14が印刷中にインクが吐出されるノズルプレート18内のノズル(すなわち、ノズル開口部)16において終わる又は終結している第1の部分14A及び第2の部分14Bを有する、印刷ヘッド10を通る複数のインク流路14を設けた様々な積層構造体を含むことができる。例えば、印刷ヘッド10は、入口/出口プレート20と、微粒子フィルタ又は「ロックスクリーン」22と、垂直入口24と、ダイアフラム又は膜26と、圧電素子(すなわち、圧電変換器、PZT)28とを含むことができる。
図1の印刷ヘッド10が概略図であり、様々な示された構造体が2層以上を使用して形成されることができることが理解される。印刷ヘッド構造体20〜28は、当該技術分野において公知であるように、1つ以上の金属、合金、ポリマ、エポキシ、及び/又は、それらの組み合わせから形成されることができる。さらに、簡略化するために、孤立層、圧電振動子28に結合されたフレキシブル印刷回路、接着層などの様々な構造体が
図1の描写から省略されている。
図1の構造体20〜24は、「印刷ヘッド・マニホールド」と総称されることがあることが理解される。
図1の印刷ヘッド・マニホールド20〜24の設計は例示的であり、他の印刷ヘッド・マニホールドの設計は、当該分野において公知である。
【0015】
使用において、電圧が圧電変換器28に印加され、圧電変換器を撓ませ(すなわち、屈曲させ)、接着剤(簡略化のために図示しない)によって圧電変換器28に取り付けられたダイアフラム26を順次撓ませる。ダイアフラム26の撓みは、容積を減少させ、ノズルプレート18内のノズル16からインクを吐出する流路14B内の圧力を増加させる。ダイアフラム26の撓みはまた、インク流路14Bを逆流する又はインク流路14Aに流入する圧力波を発生させることがあり、これは隣接するインク流路及びノズルまで固体印刷ヘッド構造体を介して音響エネルギによって伝達されることによって他のノズルとのクロストークをもたらす。
【0016】
図1の実施形態は、音響エネルギ及び印刷ヘッド10とのクロストークを減衰させる1つ以上の構造体を含む。実施形態において、例えばニッケル又はニッケル合金などの金属又は金属合金から形成されることができるノズルプレート18は、ノズルプレート18の内部表面29において様々な凹部又は流路を含むようにパターニングされることができる。
図1は、ノズル16の周囲のノズルプレート18における第1の凹部30と、粒子フィルタ22の下方のインク流路14Bに沿ったノズルプレート18における第2の凹部32とを示している。
図1は、さらに、洗浄サイクル中に使用されるインクパージ孔(すなわち、パージアパチャー)35の周囲のノズルプレートにおける第3の凹部34を示している。
【0017】
内部に凹部を有するノズルプレート18に加えて、ノズルプレートアセンブリ12は、適合層36を含むことができる。実施形態において、適合層36は、例えばデュポン(商標)社製のELJなどの熱可塑性接着剤などのポリマから形成されることができる。
図1に示されるように、適合層36は、インク流路14Aの第1の部分に隣接するノズルプレート18における1つ以上の凹部32を被覆し、適合層36とノズルプレート18との間に密封されたポケット38を形成する。適合層36は、さらに、ノズル16及びインクパージ孔35へのインクの通過を可能とする開口を内部に含む。この開示の目的のために、特に断らない限り、適合層は、印刷中にインクチャンバ14内のインク44からの又は印刷中に印刷ヘッド10の固形物20、24を介して伝達された音響エネルギからの圧力下で物理的に撓ませる可撓性ポリマ層である。それゆえに、印刷中において、密封されたポケット38の容積は増加し、適合層36の撓み中に減少する。適合層36の適合性は、有限要素解析(FEA)を行い、適合層にわたって圧力が印加されたときの適合層の容積撓みを計算することによって判定されることができる。
【0018】
印刷ヘッドの使用中に、インク流路14は、
図2に示されるように、インク44によって満たされる一方で、密封されたポケット38は、密封されたエアポケットを提供するように空気又は他の気体によって満たされたままである。圧電素子28がノズル16からのインク滴46を吐出するように作動されると、圧電素子28は、インク流路14B内に及び/又は印刷ヘッド10の固体印刷ヘッド・マニホールド20〜24内に音響エネルギを発生する。音波が固体印刷ヘッド・マニホールド20〜24を介して伝達すると及び/又は密封されたポケット38を形成する適合層36に対してインク44が伝達すると、音響エネルギは、密封されたポケット38を形成する適合層36によって吸収され、抑制され又は減衰されることができる。
【0019】
実施形態において、ノズルプレート18は、ノズルプレートの内側表面29から外側表面40まで測定したとき、約5マイクロメートル(μm)から約100μm、又は、約25μmから約75μm、又は、約40μmから約60μmの厚さを有することができる。ノズルプレート18は、さらに、ノズルプレート18の外側表面40から中間面42まで測定したとき、約5マイクロメートル(μm)から約50μm、又は、約10μmから約40μm、又は、約20μmから約30μmの厚さを有することができる。各凹部30、32、34は、約5μmから約50μm、又は、約10μmから約40μm、又は、約20μmから約30μmの深さを有することができる。適合層36は、約5μmから約50μm、又は、約10μmから約40μm、又は、約20μmから約30μmの厚さを有することができる。中間面42は、ノズルプレートの内側表面29とノズルプレートの外側表面40との間の高さに介在されている。
【0020】
実施形態において、適合層36は、
図1に示されるように、追加の接着剤を必要としないように、印刷ヘッド・マニホールドにノズルプレート18を物理的に接続するための接着剤として機能することができる。それゆえに、適合層36は、印刷ヘッド・マニホールドにノズルプレート18を物理的に接続するための接着剤として機能するとともに、入口/出口プレート20などの密封されたポケット38の一部を形成する。実施形態において、密封されたポケット32内の空気は、適合層36によってのみインクチャンバ14の第1の部分14A内のインクから分離される。
【0021】
実施形態において、密封されたポケット38は、
図1に示されるように、インク流路14に隣接して形成されることができる。実施形態において、各インク流路14は、単一のノズル16のみにインクを供給し、別個の密封されたポケット38は、ノズル16にインクを供給する各インク流路のために形成されることができる。他の実施形態において、単一の密封されたポケット38は、単一の密封されたポケット38が印刷ヘッドの使用中に2つ以上のインク流路14を形成する音響エネルギを減衰するように、複数のインク流路14のために形成されることができる。
【0022】
ノズルプレートにおけるノズル16及びパージ孔35などのアパチャーの形成は、アパチャー幅/径の減少にともないより困難となる。例えば、化学エッチングプロセスは、最小約75〜100ミクロンまで低減した十分に形成されたアパチャー径を提供するために使用されることができる。より小さな径により、アパチャーは、径の減少にともないアパチャーについてのより大きな効果を有する「バーズビーク」効果に部分的に起因して奇形となることがある。奇形のアパチャーは、例えば、印刷中に、信頼性の低いインク吐出軌跡を有することがある。特に次世代の印刷ヘッドは、15ミクロン又はそれ以下にまでのアパチャー径を必要とすることがある。本教示の実施形態は、2μm以下程度の小径を有する複数のノズルプレート・アパチャーを提供することができると予想される。したがって、本教示の実施形態は、
図3〜
図8の断面図に示されたものと同様のものなどの電鋳プロセスを使用して形成されたノズルプレート18内にアパチャー16、35及び凹部30、32、34を含むことができる。
【0023】
図3において、電鋳マンドレル(すなわち、マスタ)50は、第1のパターニングされたフォトレジスト層52及び後続の電鋳層についてのカソードベース電極として使用される。第1のパターニングされたフォトレジスト層52は、当該技術分野において知られているように、フォトリソグラフィプロセスを使用してマンドレル50上に形成されることができる。図示されるように、第1のレジスト層52は、マンドレル50の第1の部分を被覆し、マンドレル50の第2の部分を露出させる。第1のレジスト層52の各部は、約10μmから約20μm又は約15μmの幅又は径(本願明細書においてはまとめて幅)を有することができる。第1のフォトレジスト層52がアパチャー開口16、35を画定するのに使用され、精密なフォトリソグラフィプロセスを使用して形成されることから、アパチャー開口16、35は、ノズルプレート18を介して正確な大きさ、形状及び位置を有するように形成されることができる。
【0024】
続いて、当該技術分野において知られている電鋳プロセスは、
図4に示されるように、メッキ溶液(簡略化のために図示されていない)内に第1のパターニングされた電鋳層54を蒸着(成長)するのに使用されることができる。実施形態において、第1の電鋳層54は、例えば、約5μmから約50μm、又は、約10μmから約40μm、又は、約20μmから約30μmなどの適切な厚さに形成されることができる。第1の電鋳層54を形成した後、マンドレル50は、電気メッキ溶液から除去され、洗浄プロセスは、第1のフォトレジスト層52を除去して第2の電鋳層のために第1の電鋳層54の露出面を準備するために行われることができる。適切な洗浄プロセスは、酸化物及び/又は汚染物質を除去するための方法を含むことができる。
【0025】
次に、第2のパターニングされたフォトレジスト層56は、
図5に示されるように、第1のレジスト層52によって画定される開口によってレジスト層56を位置合わせするようにフォトリソグラフィプロセスを使用して第1の電鋳層54の露出面上に形成されることができる。
図5に示されるように、第2のパターニングされたフォトレジスト層56は、第1のパターニングされた電鋳金属層54の第1の部分を被覆し、第1のパターニングされた電鋳金属層54の第2の部分を露出させる。第2のパターニングされたフォトレジスト層56は、凹部30〜34を及び場合によっては他の構造体も同様に画定するのに使用されることができる。そして、
図5の構造体は、
図6に示されるように、電気メッキ溶液内に配置され、第2の電鋳層60を形成するために電鋳プロセスが使用される。
【0026】
続いて、第2のパターニングされたフォトレジスト層56は、
図7に示されるものと同様の構造体をもたらすために除去され、そして、第1の電鋳層54及び第2の電鋳層60は、
図8のノズルプレート18をもたらすようにマンドレル50から除去される。
【0027】
それゆえに、
図8の電鋳ノズルプレート18は、例えば、化学的にエッチングした金属ストックによって可能であるよりも小さく且つより正確に形成されたターゲットの大きさ及び形状を有するアパチャー16、35を含むことができる。しかしながら、いくつかの用途について、化学的及び/又は機械的なエッチングを使用して形成されたノズルプレートが適切であり得る。
【0028】
それゆえに、ノズルプレート18を形成するために使用される電鋳プロセスは、
図8に示されるように、第1のノズルプレートの位置における凹部30(ノズル16についての予め開口された開口)と、第2のノズルプレートの位置における凹部32(密封されたポケット38の一部を形成するノズルプレートの内側表面における凹部)と、第3のノズルプレートの位置における凹部34(パージ孔35についての予め開口された開口)と、中間面42とを形成する。第1のパターニングされた電鋳金属層54は、ノズルプレート18の外側表面40と中間面42とを提供する。第2のパターニングされた電鋳金属層60は、ノズルプレート18の内側表面29を提供し、中間面42は、外側表面40及び内側表面29の高さの間の高さに介在される。
【0029】
他の実施形態(簡略化のために図示しない)において、レーザパターニングされたマスクが凹部30、32、34を形成するエッチングプロセス中に使用されることができる。ノズル16は、その後、例えば、レーザプロセス又はウェット若しくはドライエッチング液を使用したエッチングプロセスなどの穿設プロセスを使用して形成されることができる。
【0030】
凹部30及び34におけるノズルプレート18の中間面42は、特に
図3〜
図8に示されるように凹部30、32、34がフォトリソグラフィプロセスを使用して画定される場合、ノズル16及びパージ孔35に正確に位置合わせされた予め開口された開口を提供する。ポリマノズルプレートをマニホールドに接続するために、いくつかの現在の印刷ヘッドは、予め開口された開口を提供するように、マニホールドと、アパチャー(例えば、ノズル及びパージ孔)よりも広い開口を有するノズルプレートとの間に、予め形成された接着剤を含む。これらの現在の印刷ヘッドは、ポリマアパーチャプレートを接着層に位置合わせする手動プロセスを使用して組み立てられることができる。例えば、双方の材料が高い吸湿率及び高い熱膨張係数を有することから、予めパターニングされた接着層へのポリマノズルプレートの手動位置合わせプロセスは困難であり得る。これらの特性は、製造エリア内の周囲温度及び湿度の微妙な変化に起因して配置の高い変動をもたらすことができる。この変化は、ノズル密度及び印刷幅に比例して増加する。実施形態において、凹部30、34における予め開口された開口は、高精度なフォトリソグラフィ及び電鋳プロセスを使用して形成されることができ、それゆえに、アパチャー16、35と正確に位置合わせされる。適合層36の端縁は、
図1に示されるように、凹部30、34の端縁から離れて形成されることができる。
【0031】
実施形態において、ノズルプレート18は、例えば、電着金属プロセス(電鋳)を使用して形成されたニッケル又はニッケル合金とすることができる。他の実施形態において、ノズルプレート18は、他の金属、金属合金若しくは非金属材料又はそれらの組み合わせから形成されることができる。
【0032】
それゆえに、本教示の実施形態は、音響エネルギの十分な減衰を提供しつつ、ポリマノズルプレート上の利点を有することができる。例えば、ニッケル又はニッケル合金アパチャープレートは、上述したように高精度なフォトリソグラフィ電鋳プロセスを使用して、ノズル16、パージ孔35又は他のアパチャーに対する予め開口された開口の精密な位置合わせを可能とする。さらに、ノズル16、アパチャー35及び/又は予め開口された開口の形成中に生じ得るポリマノズルプレートの窪みは、高い弾性率を有し、それゆえに窪みにより堅固に抵抗するニッケル又は他の金属ノズルプレートによって低減又は除去される。窪みは、インクがノズルプレートにおけるノズルから吐出されることからインクの指向性の変化を引き起こすことが知られており、したがって回避されるべきである。さらに、金属製のノズルプレートがポリマプレートよりも高い弾性率を有することから、金属プレートは、摩耗や擦り傷に対してより抵抗がある。また、金属製のノズルプレートは、かなり低い吸湿及び膨張率の係数に起因してポリマノズルプレートよりもはるかに寸法的に安定的である。
【0033】
図1は、例示的な印刷ヘッド、単一ノズル及び2つのパージ孔の一部を示す断面図である一方で、
図1の断面図は、印刷ヘッドにわたって数百又は数千回繰り返されてもよく、他の印刷ヘッドの設計が考えられることが理解される。
【0034】
図9は、本教示の実施形態を含む少なくとも1つの印刷ヘッド94が内部に設置されたプリンタハウジング92を含むプリンタ90を示している。ハウジング92は、印刷ヘッド94を包囲することができる。動作中において、インク96は、1つ以上の印刷ヘッド94から吐出される。印刷ヘッド94は、用紙、プラスチックなどの印刷媒体98上に所望の画像を作成するために、ディジタル命令にしたがって動作する。印刷ヘッド94は、帯毎に印刷された画像を生成するために走査動作中に印刷媒体98に対して前後に移動することができる。あるいは、印刷ヘッド94が保持固定され、印刷媒体98がそれに対して移動され、単一経路で印刷ヘッド94と同じ幅の画像を作成してもよい。印刷ヘッド94は、印刷媒体98よりも狭いか又は同じ幅とすることができる。他の実施形態において、印刷ヘッド94は、その後に印刷媒体に転写するための回転ドラム、ベルト又はドレルト(簡略化のために図示しない)などの中間面に印刷することができる。