【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(原料液の作製)
La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3を形成するように、和光純薬工業株式会社製のLa源(硝酸ランタン(III)六水和物(La(NO
3)
3・6H
2O)、 126―03112)、Sr源(硝酸ストロンチウム(Sr(NO
3)
2)、37348―00)、Co源(硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)、034―12831)、Fe源(硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO
3)
3・9H
2O)、097―02812)をモル比でLa:Sr:Co:Fe=3:2:1:4の量でそれぞれ秤量し、ホットプレート上60℃に加熱した純水に添加、マグネチックスターラーで混合し溶解させて水溶液を作製した。
【0037】
次いで上記水溶液中へ、キレート剤として和光純薬工業株式会社製(クエン酸一水和物(C
6H
8O
7・H
2O)、0738―00)を添加してマグネチックスターラーで撹拌、溶解させた。なおその際、キレート剤の添加量は、上記水溶液中のLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3 への換算量に対して等モル量とした。
【0038】
次いで、キレート剤を添加した上記溶液に、アニオン性界面活性剤として和光純薬工業株式会社製(オレイン酸ナトリウム(C
17H
33COONa、194―02635)を添加してマグネチックスターラーで撹拌、溶解させて空気極材料の[実施原料液]を作製した。なおその際、アニオン性界面活性剤の添加量は、上記溶液中のLa
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3 への換算量に対して等モル量とした。
【0039】
また、アニオン性界面活性剤を加えない他は空気極材料の原料液と同様にして、空気極材料の[比較原料液]を作製した。
【0040】
空気極材料の[実施原料液]及び[比較原料液]のpHを、HNO
3又はNH
3を用いて2〜12に調整し、温度条件25℃でゼータ電位を測定し、表面電位が0を超えているか否かを確認した。
測定結果を
図2に示す。
図2の結果から、pHが3以上であれば、表面電荷が0を超え、pH7以上で界面活性剤の電離が促進され、高分散状態となっていること、及び、界面活性剤の添加による静電的反発が大きくなり凝集が防止されることがわかる。
【0041】
また、pH9に調整した[実施原料液]と[比較原料液]の粒度分布を測定した。測定結果を
図3に示す。
界面活性剤を加えた[実施原料液]は、粒子径が小さくかつシャープな粒度分布を示しているのに対し、[比較原料液]では粒子径が大きくかつ粒子径のピークが複数あることから凝集が生じており、原料液に界面活性剤を加えた効果が確認された。
【0042】
(空気極前駆体の作製)
<空気極前駆体1>
pH3に調整した空気極材料の[実施原料液]をホットプレート上、マグネチックスターラーで撹拌しながら、60℃から80℃に徐々に加熱し2時間程度乾燥することで、[空気極前駆体1]を得た。
【0043】
<空気極前駆体2>
pH9に調整する以外は、[空気極前駆体1]と同様にして[空気極前駆体2]を得た。
【0044】
<空気極前駆体3>
空気極材料の[実施原料液]を[比較原料液]に変える他は[空気極前駆体2]と同様にして[空気極前駆体3]を得た。
【0045】
[実施例1]
[空気極前駆体1]を大気中において、乳鉢、乳棒を用いて粉砕した後に、アルミナ製のるつぼに移し、電気炉で大気中において、130℃で1時間、200℃で1時間、900℃で2時間(昇温レート2℃/分)の条件で焼成することで、[空気極材料1]を得た。
【0046】
[実施例2]
[空気極前駆体1]を[空気極前駆体2]に変える他は実施例1と同様にして[空気極材料2]を得た。
【0047】
得られた[空気極材料1]、[空気極材料2]の粉末を乳鉢で粉砕し、2θ/θ法,Cu Kα,40kV/40mA,サンプル間隔2θ=0.02°の条件でX線回折(XRD)により結晶構造を測定した。
測定結果を
図4に示す。
図4より、pHが3で、表面電荷が0付近の分散性が低いものは混相が生じているのに対し、pHが7で静電的反発が十分得られるものは単一の組成物からなる単相となっていることがわかる。
【0048】
[実施例3]
焼成温度を800℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料3]を得た。
【0049】
[実施例4]
焼成温度を700℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料4]を得た。
【0050】
[実施例5]
焼成温度を600℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料5]を得た。
【0051】
[実施例6]
焼成温度を500℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料6]を得た。
【0052】
[比較例1]
空気極前駆体1を空気極前駆体3に変える他は、実施例6と同様にして、[空気極材料7]を得た。
【0053】
[比較例2]
焼成温度を800℃に変える他は、比較例1と同様にして[空気極材料8]を得た。
【0054】
[比較例3]
焼成温度を900℃に変える他は、比較例1と同様にして[空気極材料9]を得た。
【0055】
得られた[空気極材料3〜7、9]の粉末を乳鉢で粉砕し、[空気極材料1,2]と同様にして結晶構造を測定した。
[空気極材料2〜6]の測定結果を
図5に、[空気極材料7、9]の測定結果を
図6に示す。
図5より、本発明の製造方法によれば、500℃の低温で焼成しても不純物相がなく、単相の空気極材料が得られているのに対し、比較例では混相となっていることがわかる。
【0056】
[空気極材料2,3]、[空気極材料5〜9]について、XRDの結果より、以下のシェラーの式を用いて結晶子径を算出し、また、[空気極材料3、6、7、8]についてBET比表面積を測定した結果を表1に示す。
さらに、[空気極材料3〜6(実施例3〜6)]のTEM写真を
図7に示す。
【0057】
結晶子径の計算式 シェラーの式D=Kλ/βcosθ
β:積分幅、K:1.33
【0058】
BET比表面積の測定条件
試料重量:0.2g、(脱気処理300℃6h)
吸着質N
2
吸着温度77K
平衡時間300h
【0059】
【表1】
<MG SRC="表1.bmp">
【0060】
表1及び
図7より、低温で焼成することで、結晶子径が小さく、比表面積が大きい空気極材料が得られることが確認された。
【0061】
[実施例7]
[空気極材料3]を以下の条件でペレット状に成型・焼結して[空気極3]を作製した。
[ペレット作製条件]
粉末量:0.22g
成型圧:200MPa
ペレット寸法:直径10mm 厚さ1mm
上記の条件で成型したペレット900℃で4時間焼結させた。
【0062】
[実施例8]
[空気極材料3]を[空気極材料6]に替える他は実施例7と同様にして[空気極6]を作製した。
【0063】
[比較例4]
[空気極材料3]を[空気極材料8]に替える他は実施例7と同様にして[空気極8]を作製した。
【0064】
[評価]
上記空気極3、6,8それぞれの焼結性及び導電率を評価した。
【0065】
<焼結性評価>
空気極のペレットの重量を電子天秤で測定し、ノギスで寸法を測定して、空気極ペレットの密度を測定した。
測定密度と理論密度との比(測定密度/理論密度)から焼結性(相対密度)を評価した。
なお、理論密度は、XRDの結果からリートベルト解析することで求めた。評価結果を表2に示す。また、[空気極3、6、8]のSEM写真を
図8に示す。
【0066】
【表2】
<MG SRC="表2.bmp">
【0067】
[空気極8]は、圧粉状態のままで粒成長・粒間焼結が進んでおらず、焼結性が劣ることがわかる。また、空気極材料の粒径が不均一のためか焼結の進行が不均一で全体的に構造が不均一であることがわかる。
これに対し、本発明の[空気極3]は[空気極材料8]と同じ温度で焼成した[空気極材料3]を用いたものであるが、粒成長・粒間焼結が進んでいる。また、構造も全体的に均一である。
このように、本発明の微粒子化された空気極材料によれば、構造が均一かつ焼結性が優れる空気極が得られることがわかる。
さらに、[空気極材料3]よりも低温で焼成された[空気極材料6]を用いた[空気極6]は、[空気極3]よりもさらに粒成長・粒間焼結が進行していることがわかる。
【0068】
<導電率評価>
空気極ペレットの両面に白金金網(100メッシュ、線径0.08mm)を配置し、白金導線を片面に二本ずつ両面に設置し直流四端子法で導電率を測定した。
評価は電気炉を用いて試料温度500℃〜800℃(熱電対にて試料上部約2cmで計測)、±200、300、400mAの一定電流を印加の下、電圧を計測。
導電率は、オームの法則により計測電圧―印加電流曲線の傾き(抵抗値)を算出し、抵抗値と試料寸法とから、次式により算出した。
【0069】
導電率=(1/抵抗値)×(ペレット厚/ペレット断面積)
各空気極ペレットの導電率―温度依存性(アレニウスプロット)を
図9に示す。
図9より本発明の空気極は導電性が優れるものであり、低温で焼成した空気極材料を用いることでさらに空気極の導電性が向上することがわかる。