【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「広帯域短パルスレーザーを用いたテラヘルツ電場検出技術の開発と応用」に関する研究開発に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チャープパルス波とテラヘルツ波との差周波光及び/又は和周波光によってテラヘルツ波のテラヘルツ電場波形に基づくチャープパルス波を強度変調し、当該強度変調によってテラヘルツ波からテラヘルツ電場波形のスペクトル情報及び位相情報をチャープパルス波に重畳させたチャープパルス変調波を出射するチャープ波変調部と、
前記チャープ波変調部のチャープパルス変調波を時間方向に伸張させて低波数側に波数シフトする波形伸張部と、
前記波形伸張部で時間方向に伸張したチャープパルス変調伸張波をアナログ信号に変換する光−電気変換部と、
前記光−電気変換部で変換したアナログ信号からテラヘルツ電場波形のスペクトル情報及び/又は位相情報を検出する電場波形検出部と
を備え、
前記チャープ波変調部は、
電気光学結晶(EO結晶)に対して前記チャープパルス波とテラヘルツ波の光軸を非同軸に配置し、差周波光によるチャープパルス変調波と和周波光によるチャープパルス変調波とを前記チャープパルス波の光軸方向に対してそれぞれ異なる方向から出射することを特徴とする、テラヘルツ電場波形検出装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したポンプ・プローブ方式によるテラヘルツパルス波の波形計測では、繰り返し現象を利用して時間掃引することでテラヘルツパルス波の時間波形とスペクトルを得るため、相移転や破壊現象といった毎回挙動が異なる現象、絶えず変化する現象、運動する物体、測定に長時間を要する現象などの測定対象には適していない。
【0007】
これを解決するために、チャープパルスを用いて時間情報を波長にマッピングし、分光器と二次元検出器を用いて検出することが提案されているが、検出速度は二次元検出器の検出速度に制限されるという問題がある。また、検出速度に問題がある他、和周波光と差周波光が同時に検出されるために、観測される波形が歪むことや、デジタル信号に変換するため、波形の乗算(ミキシング)などの演算が困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本願発明は前記した従来の問題点を解決し、ポンプ・プローブ方式によるテラヘルツ波の波形計測において、1ショット(シングルショット)のテラヘルツ波のテラヘルツ電場波形を検出することを目的とする。
【0009】
ここで、テラヘルツ波はテラヘルツパルス波及び連続テラヘルツ波を含む。また、1ショット(シングルショット)のテラヘルツパルス波は測定対象が一つのパルス信号波形であることを意味し、1ショット(シングルショット)の連続テラヘルツ波は測定対象が一つの連続信号波形であることを意味している。
【0010】
また、本願発明は、テラヘルツ波とチャープ付プロープパルス波とを用いたポンプ・プローブ方式によるテラヘルツ波の波形計測において、1ショットのテラヘルツ波のテラヘルツ電場波形を単一の検出器(シングルフォトダイオード)で検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、テラヘルツパルス波又は連続テラヘルツ波を含むテラヘルツ波のテラヘルツ電場波形のスペクトル情報及び位相情報をチャープパルス波に書き込むことによってテラヘルツ電場波形を検出する部分と、テラヘルツ電場の情報が書き込まれたチャープパルス波を時間方向に伸張させることによってアナログ信号として検出可能な周波数まで低周波化する部分の構成によって、1ショットのテラヘルツ波の単一検出器による検出を可能とする。
【0012】
本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置は、チャープパルス波とテラヘルツ波との差周波光及び/又は和周波光によってテラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形に基づくチャープパルス波を強度変調し、この強度変調によってテラヘルツ波からテラヘルツ電場のスペクトル情報及び位相情報をチャープパルス波に重畳させたチャープパルス変調波を出射するチャープ波変調部と、チャープ波変調部で得られるチャープパルス変調波を時間方向に伸張させる波形伸張部と、波形伸張部で時間方向に伸張したチャープパルス変調伸張波をアナログ信号に変換する光−電気変換部と、光−電気変換部で変換したアナログ信号からテラヘルツ電場波形のスペクトル情報及び/又は位相情報を検出する電場波形検出部とを備える。
【0013】
チャープ波変調部において、電気光学結晶(EO結晶)に対してチャープパルス波とテラヘルツ波を入射すると、電気光学結晶の二次非線形光学効果によって和周波過程による和周波光と差周波過程による差周波光が発生する。二つの異なる光周波数の光が電気光学結晶に入射されると、二つの光周波数の和となる光周波数を持ち、二つの光の強度の積に比例した光強度の和周波光が発生し、二つの光周波数の差となる光周波数を持つ差周波光が発生する。
【0014】
和周波光と差周波光は、非同軸に入射した場合プローブパルスに対してそれぞれ異なる方向の波数を持つ。従来知られているチャープパルス波及びテラヘルツ波の照射では光軸を同軸配置しているため、和周波過程と差周波過程とによってチャープパルス波は二重に変調され、得られるチャープ変調波の波形には歪みが生じる。
【0015】
チャープ変調波の波形歪に対する一構成として、本願発明のチャープ変調波部は、電気光学結晶(EO結晶)に対するチャープパルス波とテラヘルツ波の入射において、チャープパルス波とテラヘルツ波の光軸を非同軸に配置することによって、差周波過程によるチャープパルス変調波と和周波過程によるチャープパルス変調波とをチャープパルス波の光軸方向に対してそれぞれ異なる方向に出射する。
【0016】
チャープ変調波の波形歪に対する他の構成として、本願発明のチャープ変調波部は、電気光学結晶(EO結晶)の出射側に1/4波長板と偏光分離素子(ウォラストンプルズム)の構成を配置することによって、差周波過程によるチャープパルス変調波と和周波過程によるチャープパルス変調波とをチャープパルス波の光軸方向に対してそれぞれ異なる方向に出射する。
【0017】
出射方向が異なることから和周波波と差周波波とを選択的に検出することができる。和周波波および差周波波のチャープ変調波には、それぞれテラヘルツ電場波形が互いに干渉することなく書き込まれているため、チャープ変調波を選択して検出することによってテラヘルツ電場波形を互いの干渉を受けること無く測定することができる。
【0018】
本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置は、和周波光のチャープパルス変調波と差周波光のチャープパルス変調波とを出射方向の違いによって個別に取り出し、取り出した差周波光によるチャープパルス変調波と和周波光によるチャープパルス変調波の何れか一方又は両方を用いてテラヘルツ電場波形のスペクトル情報及び/又は位相情報を検出する。
【0019】
本願発明の波形伸張部は、群速度分散が波長に対して単調なファイバを用いることによって、チャープパルス変調波を時間方向に伸張させる。時間方向に伸張されたチャープパルス変調波の周波数は低周波数側に低周波化される。チャープパルス変調波を低周波化することによって、光−電気変換して得られたアナログ信号はスペクトルアナライザーやオシロスコープ等の測定機器での測定が可能となり、サンプリングによる測定時間の長時間化を解消し1ショットによる測定が可能となる。
【0020】
本願発明の光−電気変換部は、単一の光検出器(シングルフォトダイオード)を使用することができる。波形伸張部によってチャープパルス変調波は低周波化され、光−電気変換部で得られるアナログ信号は測定機器で測定可能な周波数となっているため、複数のサンプリングデータを、二次元検出器を用いることなく、単一の光検出器(シングルフォトダイオード)によってアナログ信号に変換することができる。
【0021】
本願発明の電場波形検出部は、チャープパルス変調波に重畳されたテラヘルツ電場波形の検出を複数の形態で行うことができる。電場波形検出部の形態は、テラヘルツ波としてテラヘルツパルス波を用いる形態と連続テラヘルツ波を用いる形態を含む。以下に示す第1,4の形態はテラヘルツパルス波による形態であり、第2,3の形態は連続テラヘルツパルス波による形態である。
【0022】
(電場波形検出部の第1の形態)
電場波形検出部の第1の形態は、テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを用いる形態であり、差周波光又は和周波光によるチャープパルス変調波を時間方向に波形伸張したチャープパルス変調伸張波と参照信号とを積算演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する形態である。
【0023】
第1の形態の電場波形検出部は、差周波光によるチャープパルス変調波又は和周波光によるチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を光−電気変換してアナログ信号とし、このアナログ信号に対して、参照信号を第1の積算器で積算演算する。参照信号は、チャープパルス波の周波数に基づいて定めることができる。
【0024】
この第1の積算器の積算演算によってテラヘルツパルス波の周波数成分を抽出し、テラヘルツ電場波形を検出する。
【0025】
第1の形態において、積算演算に使用する参照信号をチャープパルス波の周波数に基づいて定めることによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出(特に位相情報)を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行う。
【0026】
また、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。
【0027】
(電場波形検出部の第2の形態)
電場波形検出部の第2の形態は、連続テラヘルツ波とチャープパルス波とを用いる形態であり、差周波光又は和周波光によるチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を、所定周期の周期信号と積算演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する形態である。
【0028】
第2の形態の電場波形検出部は、差周波光によるチャープパルス変調波又は和周波光によるチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を光−電気変換してアナログ信号とし、このアナログ信号に対して、チャープパルス波の繰り返し周期で定まる周波数の定数倍の周波数を有する周期信号を第2の積算器で積算演算する。
【0029】
この第2の積算器の積算演算によってテラヘルツパルス波の周波数成分を抽出し、テラヘルツ電場波形を検出する。
【0030】
第1の形態において、波形伸張部で時間方向に伸張されたチャープパルス変調伸張波の時間幅をチャープパルス波の繰り返し周期の時間幅以内とし、積算演算に使用するアナログ信号の周期信号の周波数を、チャープパルス波の繰り返し周期で定まる周波数の定数倍の周波数とすることによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出(特に位相情報)を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行う。
【0031】
また、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。これによって、測定時ごとのテラヘルツCWレーザーの位相変化を測定することができ、連続波テラヘルツレーザーの絶対周波数測定に応用できる。
【0032】
(電場波形検出部の第3の形態)
電場波形検出部の第3の形態は、連続テラヘルツ波とチャープパルス波とを用いる形態であり、第2の形態と同様に、差周波光又は和周波光によるチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波と、所定周期の周期信号とを積算演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する形態であり、周期信号は、チャープパルス変調伸張波の時間幅を検出し、検出した時間幅に基づいて生成する。
【0033】
第3の形態の電場波形検出部は、時間幅検出器において光−電気変換部のアナログ信号の時間幅を検出し、周期信号形成器において時間幅検出器が検出した時間幅を一周期とする周期信号を形成する。差周波光のチャープパルス変調波又は和周波光のチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を光−電気変換してアナログ信号とし、このアナログ信号に対して、周期信号形成器の周期信号を第3の積算器で積算演算する。
【0034】
この第3の積算器の積算演算によってテラヘルツパルス波の周波数成分を抽出し、テラヘルツ電場波形を検出する。
【0035】
第3の形態において、波形伸張部で波形伸張したチャープパルス変調伸張波の時間幅を時間幅検出器で検出し、積算演算に使用するアナログ信号の周期信号の周波数を、時間幅検出器で検出した時間幅で定まる周波数とすることによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行う。
【0036】
また、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。
【0037】
(電場波形検出部の第4の形態)
電場波形検出部の第4の形態は、テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを用いる形態であり、第1の形態〜第3の形態では差周波光又は和周波光によるチャープパルス変調波の何れか一方を用いるのに対して、電場波形検出部の第4の形態は差周波光によるチャープパルス変調波光と和周波光によるチャープパルス変調波をそれぞれ波形伸張したチャープパルス変調伸張波を用い、両チャープパルス変調伸張波を差分演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する形態である。
【0038】
第4の形態の電場波形検出部は、差周波光のチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を光−電気変換したアナログ信号と、和周波光のチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を光−電気変換したアナログ信号とし、この二つのアナログ信号を差分演算器で差分演算することによって、テラヘルツパルス波の信号のみを検出する。
【0039】
差分演算器で検出した差分信号はテラヘルツパルス波の電場波形に対応するので、ここからテラヘルツパルス波の周波数成分を抽出する。
【0040】
第4の形態において、差分演算器の差分演算を、チャープパルス波の1ショットを単位として行うことによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行う。
【0041】
また、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置によれば、テラヘルツ波とチャープ付プロープパルス波とを用いたポンプ・プローブ方式によるテラヘルツ波の波形計測において、1ショットのテラヘルツ波のテラヘルツ電場波形を検出することができる。
【0043】
また、本願発明は、テラヘルツ波とチャープ付プロープパルス波とを用いたポンプ・プローブ方式によるテラヘルツ波の波形計測において、1ショットのテラヘルツ波のテラヘルツ電場波形を単一の検出器(シングルフォトダイオード)で検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本願発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置の概略構成について
図1を用いて説明し、構成例について
図2〜
図10を用いて説明する。
図2,3は本願発明の第1の構成例を説明するための図であり、
図4,5は第2の構成例を説明するための図であり、
図6,7は第3の構成例を説明するための図であり、
図8〜10は第4の構成例を説明するための図である。
【0046】
(テラヘルツ電場波形検出装置の概略構成)
図1は本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置の概略構成を説明するための図である。テラヘルツ電場波形検出装置1は、チャープパルス波とテラヘルツ波とからチャープパルス変調波を出射するチャープ波変調部2と、チャープパルス変調波を時間方向に波形伸張して周波数化したチャープパルス変調伸張波を生成する波形伸張部3と、チャープパルス変調伸張波をアナログ信号に変換する光−電気変換部4と、アナログ信号からテラヘルツパルス電場波形を検出する電場波形検出部5を備える。テラヘルツ波として、テラヘルツパルス波又は連続テラヘルツ波を適用することができる。以下では、第1の構成例の波形例(
図3)を参照して説明する。
【0047】
電場波形検出部5で検出したテラヘルツパルス波電場波形は、オシロスコープ6において波形表示する他、スペクトラムアナライザ7においてスペクトルや位相を解析し表示することができる。
【0048】
テラヘルツパルス波は、0.1〜10THz(波数にして3.3〜333cm
−1)のテラヘルツ領域と呼ばれるパルス波周波数領域の電磁波であり、テラヘルツ時間領域分光法(THz time-domain spectroscopy,THz-TDS)は、テラヘルツパルス波をサンプルに入射し、サンプルを透過した後のテラヘルツパルス波の電場波形を時間分解計測し、電場波形をフーリエ変換することにより周波数毎の振幅と位相を計測する。
【0049】
フェムト秒テーザーから放射された光パルスを、テラヘルツパルス波を発生させるためのポンプ光と、テラヘルツパルス波を検出するためのプローブ光とに分け、ポンプ光をテラヘルツパルス発生装置(
図1には示していない)に導入してテラヘルツ波(
図3(a))を発生し、プローブ光を光路上に設けた遅延時間素子を通すことによってチャープパルス波(
図3(b))を生成する。テラヘルツパルス発生装置として、非線形光学結晶にフェムト秒の光パルスを照射してテラヘルツパルス波発生させる構成や、光伝導アンテナによる構成を用いることができる。
【0050】
チャープ波変調部2は電気光学結晶(EO結晶)を備え、電気光学結晶に対してチャープパルス波とテラヘルツス波を入射してチャープパルス変調波(
図3(c))を出射する。二つの異なる光周波数の光が電気光学結晶に入射されると、電気光学結晶の二次非線形光学効果によって和周波光及び差周波光が発生する。和周波光の光周波数は入射した二つの光周波数の和となり、一方、差周波光の光周波数は入射した二つの光周波数の差となる。差周波光の波数はチャープパルス波の波数からテラヘルツパルス波の波数を減算した波数であり、和周波光の波数は前記チャープパルス波の波数にテラヘルツパルス波の波数を加算した波数である。和周波光及び差周波光の光強度は二つの光の強度の積に比例する。電気光学結晶は例えばZnTe結晶やGaP、LiNbO
3等を用いることができる。
【0051】
チャープ波変調部2は、チャープパルス波(
図3(b))とテラヘルツ波(
図3(a))との差周波光、和周波光によってテラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形に基づいてチャープパルス波を強度変調する。この強度変調によってテラヘルツ電場のスペクトル情報及び位相情報をチャープパルス波に重畳させたチャープパルス変調波(
図3(c))を発生する。
【0052】
チャープ波変調部2は、電気光学結晶に対するチャープパルス波とテラヘルツパルス波の照射において、チャープパルス波とテラヘルツパルス波の光軸をずらして非同軸配置とする。この非同軸配置によって、差周波光によるチャープパルス変調波と和周波光によるチャープパルス変調波とはチャープパルス波の光軸方向に対してそれぞれ異なる方向から出射される。なお、
図1では差周波光のテラヘルツパルス変調波と和周波光によるテラヘルツパルス変調波とを一つのテラヘルツパルス変調波で示している。
【0053】
テラヘルツ電場波形検出装置1は、和周波光のチャープパルス変調波と差周波光のチャープパルス変調波とを出射方向の違いによって個別に取り出し、取り出した差周波光によるチャープパルス変調波と和周波光によるチャープパルス変調波の何れか一方又は両方を用いてテラヘルツ電場波形のスペクトル情報及び/又は位相情報を検出する。
【0054】
波形伸張部3は、チャープ波変調部2で得たチャープパルス変調波を時間方向に伸張させて低周波数側に波形伸張したチャープパルス変調伸張波(
図3(d))を生成する。チャープパルス変調伸張波は低周波化することによって、アナログ信号化した検出信号の周波数をスペクトルアナライザーやオシロスコープ等の測定機器による測定が可能な周波数まで下げることができ、これによって、従来測定において高周波測定のために必要であったサンプリング測定を不要とし、測定時間の長時間化を解消して1ショットによる測定が可能である。波形伸張部3は、群速度分散が波長に対して単調なファイバを用いることができる。
【0055】
光−電気変換部4は、波形伸張部3で時間方向に伸張したチャープパルス変調伸張波をアナログ信号に変換する。光−電気変換部4として、単一の光検出器(シングルフォトダイオード)を用いることができる。
【0056】
波形伸張部3によって波形伸張されたチャープパルス変調伸張波は低周波化されているため、複数のサンプリングデータを、二次元検出器を用いることなく、単一の光検出器(シングルフォトダイオード)によって測定機器で測定可能な周波数のアナログ信号に変換することができる。
【0057】
電場波形検出部5は、光−電気変換部4で変換したアナログ信号からテラヘルツ電場波形のスペクトル情報、位相情報を検出する。
【0058】
電場波形検出部5は、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形の検出において、差周波光又は和周波光の何れか一方のチャープパルス変調波を時間方向に波形伸張したチャープパルス変調伸張波のアナログ信号を参照信号と積算演算する形態の他、和周波光のチャープパルス変調波を時間方向に波形伸張したチャープパルス変調伸張波のアナログ信号とを差分算する形態とすることができる。参照信号は、チャープパルス信号の周波数に基づいて定まる信号や、所定周期の周期信号と積算演算する形態、差周波光のチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波のアナログ信号を用いることができる。
【0059】
(テラヘルツ電場波形検出装置の第1の構成例)
図2,3は本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置の第1の構成例を説明するための図及び波形図である。
【0060】
電場波形検出部の第1の構成例は、テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを用いる前記第1の形態に対応し、差周波光又は和周波光の何れか一方のチャープパルス変調波を時間方向に波形伸張し、得られたチャープパルス変調伸張波を参照信号と積算演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する。
【0061】
チャープパルス波を発生する構成としてチャープパルス波形成部8Aを備える。チャープパルス波形成部8Aはサブ10fs広帯域レーザー8aと一次分散媒質8bとを備え、サブ10fs広帯域レーザー8aで発生したパルス幅が10fs(フェムト秒)以下の約数百THzのパルス波(
図3(b))を一次分散媒質8bに通すことによってチャープを付したチャープパルス波(
図3(c))を発生させる。ここでは、チャープパルス波の周波数をfoで表す。
【0062】
図3(b)は、チャープパルス波の1パルスを発生する例を示している。テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形の検出は、テラヘルツパルス波の1パルス(
図3(a))に対応して発生させた1チャープパルス波で行うことができる。
【0063】
テラヘルツパルス波(
図3(a))は、サブ10fs広帯域レーザー8aで発生したサブ10fs波(
図3に示していない)を図示しないテラヘルツパルス発生装置に導くことで発生することができる。テラヘルツパルス発生装置としては、非線形光学結晶にフェムト秒の光パルスを照射してテラヘルツパルス波発生させる構成や、光伝導アンテナによる構成を用いることができる。ここでは、テラヘルツパルス波の周波数をfTHzで表す。
【0064】
チャープ波変調部2Aは、電気光学結晶(EO素子)2aと偏光素子2bとを備える。電気光学結晶2aに対して、ポンプ光としてテラヘルツパルス波(波数κTHz)を照射し、プローブ光としてチャープパルス波(周波数fo)を照射すると、和周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo +fTHz))と差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))が発生する。
【0065】
電気光学結晶(EO素子)2aに対する照射において、テラヘルツパルス波(周波数fTHz)を照射する光軸を、チャープパルス波(周波数fo)を照射する光軸からずらして非同軸となるように配置する。テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを非同軸に配置することによって、和周波光のチャープパルス変調波と差周波光のチャープパルス変調波はチャープパルス波とそれぞれ異なる波数を持つため、各チャープパルス変調波はチャープパルス波の光軸方向に対して異なる方向に放射される。
【0066】
偏光素子2bは、電気光学結晶2aから放射される和周波光のチャープパルス変調波又は差周波光のチャープパルス変調波の何れか一方のチャープパルス変調波を入射し、偏光状態を直線偏光から円偏光に変換する。
図2は差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fκo−fTHz))(
図3(c))を選択する例を示している。
【0067】
波形伸張部3Aは群速度分散が波長に対して単調なファイバ3aを備え、チャープ波変調部2のチャープパルス変調波(
図3(c))を時間方向に伸張して低周波数側に波形伸張したチャープパルス変調伸張波(
図3(d))を生成する。波形伸張することによって、チャープパルス変調伸張波の周波数はfTHz/mに低減される。
【0068】
なお、ここでmはファイバ3aによって時間方向に伸張する割合を表し、ファイバ3aの光学特性及び長さ等に依存する。
【0069】
光−電気変換部4Aは単一の光検出器(シングルフォトダイオード)を備え、チャープパルス変調伸張波をアナログ信号(
図3(e))に変換する。アナログ信号はオシロスコープ6Aで表示することができる。
【0070】
電場波形検出部5Aは第1の積算器5aを備える。第1の積算器5aは、チャープパルス変調伸張波を変換したアナログ信号(
図3(e))と参照信号とを積算演算する。チャープパルス変調伸張波のアナログ信号との積算演算によってアナログ信号に含まれるチャープパルス波の周波数成分を除去するために、参照信号の周波数はチャープパルスの周波数foに基づいて定める。
【0071】
ここで、積算演算の概略を、差周波光のチャープパルス変調伸張波を変換して得られるアナログ信号の周波数をfTHz/mで表した場合で示す。mの大きさは、アナログ信号の周波数がオシロスコープ等の測定装置が対応できる程度の応答速度となるように設定される。
【0072】
信号F(周波数fTHz/m)と信号G(周波数fref)のミキサにおける乗算演算は式(1)で表される。
F×G=sin(2π(fTHz)t/m+φ)×sin(2πn×fref) ・・・(1)
【0073】
ここで、fTHz/mとfrefが略等しいとすると、式(1)は以下の式(2)で表される。
F×G=
1/2[cos(2πt(fTHz/m-fref)+φ)-cos(2πt(fTHz/m+fref+φ))]
・・・(2)
【0074】
式(2)から、frefは既知であることから第1の積算器5aの出力は(fref−fTHz/m),(fref+fTHz/m)の周波数に係る情報を含んでいる。また、式(2)からfrefの位相が既知であれば、φの値も決定できる。
図3(f)は積算演算で得られる信号波形を示している。
【0075】
したがって、第1の積算器5aで積算演算された演算結果に基づいて、スペクトラムアナライザによってテラヘルツ電場波形の振幅成分および位相成分を検出することができる。なお、上記説明では差周波光を用いて説明したが、和周波光を用いる構成としてもよい。
【0076】
(テラヘルツ電場波形検出装置の第2の構成例)
図4,5は本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置の第2の構成例を説明するための図及び波形図である。
【0077】
電場波形検出部の第2の構成例は、連続テラヘルツ波とチャープパルス波とを用いた第2の形態に対応する構成であり、差周波光又は和周波光の何れか一方のチャープパルス変調波を時間方向に波形伸張し、得られたチャープパルス変調伸張波を所定周期の周期信号と積算演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する。
【0078】
チャープパルス波を発生する構成としてチャープパルス波形成部8Bを備える。チャープパルス波形成部8Bはサブ10fs広帯域レーザー8aと一次分散媒質8bとを備え、サブ10fs広帯域レーザー8aで発生したパルス幅が10fs(フェムト秒)以下の約数百THzのパルス波(
図5(a))を一次分散媒質8bに通すことによってチャープを付したチャープパルス波(
図5(c))を発生させる。ここでは、チャープパルス波の波数をκoで表す。
【0079】
図5(c)は、示したチャープパルス波を1/frepの周期で繰り返して発生する例を示している。テラヘルツ電場波形の検出は、一周期内で発生した一チャープパルス波で行うことができるため、チャープパルス波を繰り返して発生させることによって異なる測定時点でのテラヘルツ電場波形を検出する。
【0080】
連続テラヘルツ波(
図5(b))は、サブ10fs広帯域レーザー8aで発生したサブ10fs波(
図5(a))を図示しないテラヘルツパルス発生装置に導くことで発生することができる。テラヘルツパルス発生装置としては、非線形光学結晶にフェムト秒の光パルスを照射してテラヘルツパルス波発生させる構成や、光伝導アンテナによる構成を用いることができる。ここでは、テラヘルツパルス波の周波数をfTHzで表す。
【0081】
チャープ波変調部2Bは、電気光学結晶(EO素子)2aと偏光素子2bとを備える。電気光学結晶2aに対して、ポンプ光としてテラヘルツパルス波(周波数fTHz)を照射し、プローブ光としてチャープパルス波(周波数fo)を照射すると、和周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo +fTHz))と差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))が発生する。
【0082】
電気光学結晶(EO素子)2aに対する照射において、テラヘルツパルス波を照射する光軸を、チャープパルス波を照射する光軸からずらして非同軸となるように配置する。テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを非同軸に配置することによって、和周波光のチャープパルス変調波と差周波光のチャープパルス変調波はチャープパルス波とそれぞれ異なる波数を持つため、各チャープパルス変調波はチャープパルス波の光軸方向に対して異なる方向に放射される。
【0083】
偏光素子2bは、電気光学結晶2aから放射される和周波光のチャープパルス変調波又は差周波光のチャープパルス変調波の何れか一方のチャープパルス変調波を入射し、偏光状態を直線偏光から円偏光に変換する。
図5は差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))(
図5(d))を選択する例を示している。
【0084】
波形伸張部3Bは群速度分散が波長に対して単調なファイバ3aを備え、チャープ波変調部2のチャープパルス変調波(
図5(d))を時間方向に伸張して低周波数側に波形伸張したチャープパルス変調伸張波(
図5(e))を生成する。波形伸張することによって、チャープパルス変調伸張波の周波数はfTHz/mに低減される。
【0085】
なお、ここでmはファイバ3aによって時間方向に伸張する割合を表し、ファイバ3aの光学特性及び長さ等に依存する。波形伸張によって時間方向に伸張するチャープパルス変調伸張波の時間幅と、チャープパルス波を繰り返す周期(1/frep)の時間幅とは、一つのチャープパルス波の周期で生成されるチャープパルス変調伸張波が、次のチャープパルス波の周期で生成されるチャープパルス変調伸張波と重ならないように設定する。
【0086】
例えば、チャープパルス波の周期(1/frep)が既定である場合にはチャープパルス波の波形伸張の程度mを調整し、チャープパルス波の波形伸張の程度mが既定である場合には、チャープパルス波の周期(1/frep)を調整する。
【0087】
光−電気変換部4Bは単一の光検出器(シングルフォトダイオード)を備え、チャープパルス変調伸張波をアナログ信号(
図5(f))に変換する。アナログ信号はオシロスコープ6Bで表示することができる。
【0088】
電場波形検出部5Bは第1の積算器5aと周波数変換器5bとを備える。周波数変換器5bは、サブ10fs広帯域レーザー8aのサブ10fs波(
図5(a))と同期して発生させた繰り返し波frep(
図5(g))をn倍に逓倍してn×frepの周波数の信号(
図5(h))を発生する。
【0089】
積算器5aは、チャープパルス変調伸張波を変換したアナログ信号(
図5(f))と、n×frepの周波数の信号(
図5(h))とを積算演算する。積算演算を行う周期信号は、チャープパルス波の繰り返し周期で定まる周波数frepを周波数変換器5bによって定数倍(n倍)して周波数(n×frep)とする。
【0090】
ここで、積算演算の概略を、差周波光のチャープパルス変調伸張波を変換して得られるアナログ信号の周波数をfTHz/mで表した場合で示す。
【0091】
信号F(周波数fTHz/m)と信号G(周波数n×frep)のミキサ(積算器)における乗算演算は式(3)で表される。
F×G=sin(2π(fTHz)t/m+φ)×sin(2πn×frep t) ・・・(3)
【0092】
ここで、fo/mとn×frepが略等しいため、式(3)は以下の式(4)で表される。
F×G=
1/2[cos(2πt(fTHz/m-n×fren)+φ)-cos(2πt(fTHz/m+n×frep+φ))]
・・・(4)
【0093】
式(4)は、(n×frep)は既知であることから積算器5aの出力は(n×frep−fTHz/m)の周波数に係る情報を含んでいることを示している。
【0094】
また、式(4)から(n×frep)の位相が既知であれば、φの値も決定できる。
【0095】
したがって、積算器5aで積算演算された演算結果に基づいて、スペクトラムアナライザ7Bによってテラヘルツ電場波形の振幅成分および位相成分を検出することができる。
図5(i)は位相信号 を表している。
【0096】
波形伸張部3Bで時間方向に伸張されるチャープパルス変調伸張波の時間幅をチャープパルス波の繰り返し周期の時間幅以内とし、積算演算に使用するアナログ信号の周期信号の周波数を、チャープパルス波の繰り返し周期で定まる周波数の定数倍(n倍)の周波数とすることによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行う。また、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。なお、上記説明では差周波光を用いて説明したが、和周波光を用いる構成としてもよい。
【0097】
(テラヘルツ電場波形検出装置の第3の構成例)
図6,7は本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置の第3の構成例を説明するための図及び波形図である。
【0098】
電場波形検出部の第3の構成例は、連続テラヘルツ波とチャープパルス波とを用いた第3の形態に対応する構成であり、差周波光又は和周波光によるチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を所定周期の周期信号と乗算演算することによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する構成であり、乗算演算を行う所定周期の周期信号として、チャープパルス変調伸張波の繰り返し時間幅に基づいて生成した信号を用いる。
【0099】
第3の構成例のテラヘルツ電場波形検出装置1Cは、第1,2の構成例のテラヘルツ電場波形検出装置1A,1Bと同様に、チャープ波変調部2C、波形伸張部3C、光-電気変換部4C、及び電場波形検出部5Cを備える。これら構成の内、チャープ波変調部2C、波形伸張部3C、及び光-電気変換部4Cの各構成は第2の構成例のテラヘルツ電場波形検出装置1Bが備える各構成と同様であるため、ここでの説明は省略し電場波形検出部5Cについてのみ説明する。
【0100】
電場波形検出部5Cは、時間幅検出器5f、周期信号形成器5g、及び第3の積算器5dを備える。
【0101】
時間幅検出器5fは、光−電気変換部4Cのアナログ信号の時間幅Tを検出する。時間幅Tの検出は、チャープパルス波形成部8Cのサブ10fs広帯域レーザー8aからパルス波をパイロット信号(
図7(g))として発生し、時間幅検出器5fはこのパイロット信号のパルス波を受けて時間幅の計測を開始する。時間幅検出器5fは、光−電気変換部4Cのアナログ信号(
図7(h))をモニタし、アナログ信号が終了した時点で時間幅の計測を終了し、時間幅出力T(
図7(i))を出力する。
【0102】
周期信号形成器5gは、時間幅検出器5fが検出した時間幅Tを一周期とする周期信号Frep(
図7(j))を形成する。
【0103】
第3の積算器5dは、差周波光にチャープパルス変調波又は和周波光のチャープパルス変調波を波形伸張したチャープパルス変調伸張波を光−電気変換してアナログ信号(
図7(f))と、周期信号形成器5gの周期信号Frepとを積算演算する。第3の積算器5dは、積算演算によってテラヘルツパルス波の周波数成分を抽出し、テラヘルツ電場波形を検出する。
【0104】
第3の構成では、波形伸張部3Cで波形伸張されたチャープパルス変調伸張波の時間幅Tを時間幅検出器5fで検出し、積算演算に使用するアナログ信号の周期信号の周波数Frepとして、時間幅検出器5fで検出した時間幅Tで定まる周波数を用いることによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行う。
【0105】
また、第1の構成と同様に、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。
【0106】
(テラヘルツ電場波形検出装置の第4の構成例)
図8,9は本願発明のテラヘルツ電場波形検出装置の第4の構成例を説明するための図及び波形図である。
【0107】
電場波形検出部の第4の構成例は、テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを用いた第4の形態に対応する構成であり、差周波光によるチャープパルス変調波光と和周波光によるチャープパルス変調波をそれぞれ時間方向に波形伸張したチャープパルス変調伸張波を用い、両チャープパルス変調伸張波の差分演算を行うことによって、チャープパルス変調伸張波に重畳されているテラヘルツ電場波形を検出する構成である。
【0108】
第4の構成例のテラヘルツ電場波形検出装置1Dは、第1〜3の構成例のテラヘルツ電場波形検出装置1A〜1Cと同様に、チャープ波変調部2D、波形伸張部3D、光-電気変換部4D、及び電場波形検出部5Dを備える。
【0109】
チャープ波変調部2Dは、電気光学結晶(EO素子)2aと二つの偏光素子2b、2cとを備える。電気光学結晶2aに対して、ポンプ光としてテラヘルツパルス波(周波数fTHz)を照射し、プローブ光としてチャープパルス波(周波数fo)を照射すると、和周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo +fTHz))と差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))が発生する。
【0110】
偏光素子2b,2cは、それぞれ電気光学結晶2aから放射される和周波光のチャープパルス変調波又は差周波光のチャープパルス変調波の一方を入射し、偏光状態を直線偏光から楕円偏光に変換する。
図8では、偏光素子2bから差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))を選別して出射し、偏光素子2cから和周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo+fTHz))を選別して出射する例を示している。
図9は差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))(
図9(d))を選択する例を示している。
【0111】
波形伸張部3Dは群速度分散が波長に対して単調なファイバ3a,3bを備える。ファイバ3aは、チャープ波変調部2Dのチャープパルス変調波(
図9(d))を時間方向に伸張した差周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo−fTHz))(
図9(e))を生成し、
【0112】
ファイバ3bは、チャープ波変調部2Dの和周波光のチャープパルス変調波(周波数(fo+fTHz))(
図9(g))を時間方向に伸張したチャープパルス変調伸張波(
図9(h))を生成する。波形伸張することによって、差周波光及び和周波光のチャープパルス変調伸張波の周波数はfTHz/mに低減される。
【0113】
光−電気変換部4Dは単一の光検出器(シングルフォトダイオード)4a,4bを備え、光検出器4aは差周波光のチャープパルス変調伸張波をアナログ信号(
図9(f))に変換し、光検出器4bは和周波光のチャープパルス変調伸張波をアナログ信号(
図9(i))に変換する。アナログ信号はそれぞれオシロスコープ6Dで表示することができる。
【0114】
電場波形検出部5Dは、差分演算器5hとファイバ5iと単一の光検出器(シングルフォトダイオード)5jと周波数変換器5iと除算器5kを備える。
【0115】
差分演算器5hは、チャープパルス変調伸張波のアナログ信号I1と、和周波光のチャープパルス変調伸張波のアナログ信号I2とを差分演算して差分信号(I1−I2)(
図9(j))を出力する。差分信号(I1−I2)は、テラヘルツ電場波形無しのチャープパルス波の波形を参照することによってテラヘルツ電場波形を求めることができる。
【0116】
ファイバ5iは、一次分散媒質8bを通過したチャープパルス波(周波数fo)を時間方向に伸張したチャープパルス変調伸張波(周波数fo/m)を生成する。単一の光検出器(シングルフォトダイオード)5jは、チャープパルス変調伸張波(周波数fo/m)を光−電気変換して周波数(fo/m)のアナログ信号Irefを出力する。除算器5kによって、アナログ信号Irefを参照信号として差分信号(I1−I2)を除算する。得られた(I1−I2)/Irefはテラヘルツ電場波形を表し、オシロスコープ6Dで表示することができる。
【0117】
第4の構成例において、差分演算器の差分演算を、チャープパルス波の1ショットを単位として行うことによって、テラヘルツパルス波のテラヘルツ電場波形検出を、チャープパルス波の1ショットを測定周期として行うことができる。また、チャープパルス波の発生を繰り返すことによって1ショット測定を複数回行うことができ、各周期内において1ショットの測定が完了するため、隣接する周期間において1ショット測定の干渉を避けることができる。
【0118】
第4の構成例の、差周波と和周波との差分によってテラヘルツ電場波形を求める構成は、テラヘルツパルス波とチャープパルス波とを電位光学結晶に対して非同軸に入射する構成の他、同軸に入射する構成にも適用することができる。
図10を用いて第4の構成例の非同軸配置の適用例を説明する。ここでは、テラヘルツ電場波形検出装置1Eにおいて、チャープ波変調部2E、及び波形伸張部3Eについてのみ説明する。
【0119】
チャープ波変調部2Eは、サブ10fs広帯域レーザー8aで発生したパルス波を一次分散媒質8bに通すことによってチャープを付したチャープパルス波foを発生させると共に、テラヘルツパルスfTHzを発生する。
【0120】
波形伸張部3Eは、電気光学結晶2aと1/4波長板2dと偏光分離素子2eとを備える。偏光分離素子2eはウォラストンプルズムを用いることができる。この構成を配置することによって、差周波過程によるチャープパルス変調波と和周波過程によるチャープパルス変調波とを1/4波長板で偏光させた後に偏光分離素子2eで分離し、チャープパルス波の光軸方向に対してそれぞれ異なる方向に出射する。