(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483477
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】カルシウム塩の製造方法及び炭素多孔体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/41 20060101AFI20190304BHJP
C01B 32/342 20170101ALI20190304BHJP
C07C 63/28 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
C07C51/41
C01B32/342
C07C63/28
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-43717(P2015-43717)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-160251(P2016-160251A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】久米 哲也
(72)【発明者】
【氏名】東恩納 靖之
(72)【発明者】
【氏名】望月 雄二
【審査官】
鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−047877(JP,A)
【文献】
特開2006−016270(JP,A)
【文献】
特開2006−016271(JP,A)
【文献】
宮下節男ほか,廃棄物焼却炉排ガス中のダイオキシン類吸着用活性炭の開発(第1報),福井県工業技術センター研究報告書,2004年,No.20,Page.90-92
【文献】
宮下節男, 林小太郎, 近藤幸江,アルカリ減量加工排液中のテレフタル酸を原料とする炭素材の開発,福井県工業技術センター研究報告書,1997年12月,No.13(1996),Page.89-91
【文献】
宮下節男, 林小太郎, 近藤幸江,地球環境を考えた染色工業 アルカリ減量加工排液中のテレフタル酸の利用,加工技術,1998年 5月,Vol.33, No.5,Page.315-318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/41
C01B 32/342
C07C 63/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸Tに対する一価カチオンの水酸化物Hのモル比H/Tが0.01以上0.05以下の範囲となるようテレフタル酸と水酸化カルシウムと一価カチオンの水酸化物とを混合したのち、前記一価カチオンの水酸化物のモル濃度が0.015mol/L以上0.07mol/L以下の範囲となるよう水を加えて混合することによりテレフタル酸カルシウムを生成する生成工程、を含む、カルシウム塩の製造方法。
【請求項2】
前記生成工程では、前記テレフタル酸Tに対する前記水酸化物Hのモル比H/Tが0.01以上0.03以下の範囲でテレフタル酸カルシウムを生成する、請求項1に記載のカルシウム塩の製造方法。
【請求項3】
前記生成工程では、前記水酸化物のモル濃度が0.03mol/L以上0.05mol/L以下の範囲となるよう水を加えて前記混合する、請求項1又は2に記載のカルシウム塩の製造方法。
【請求項4】
前記生成工程では、前記テレフタル酸Tに対する前記水酸化カルシウムCのモル比C/Tが1以上1.2以下の範囲でテレフタル酸カルシウムを生成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルシウム塩の製造方法。
【請求項5】
前記生成工程では、前記水酸化物として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムのうち1以上を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカルシウム塩の製造方法。
【請求項6】
前記生成工程では、テレフタル酸と水酸化カルシウムと前記一価カチオンの水酸化物とを粉末混合したのち、水を加えて混合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカルシウム塩の製造方法。
【請求項7】
前記生成工程では、無機酸を加えない、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカルシウム塩の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のカルシウム塩の製造方法で生成したテレフタル酸カルシウムを不活性雰囲気中、550℃以上700℃以下で加熱することで炭素/炭酸カルシウム複合体を形成し、前記形成した炭素/炭酸カルシウム複合体から炭酸カルシウムを溶解除去し、炭素多孔体を得る処理工程、を含む炭素多孔体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム塩の製造方法及び炭素多孔体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素多孔体としては、例えば、炭素骨格の一部が窒素原子で置換されたものが提案されている(特許文献1)。この炭素多孔体は、平均細孔径が2nm以下のミクロ細孔構造を有している。また、セルサイズが約0.1μmの低密度の炭素発泡体も提案されている(特許文献2)。この炭素発泡体は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの重縮合によって得られるポリマークラスタを共有結合的に架橋してゲルを合成し、そのゲルを超臨界条件で処理してエアロゲルとし、そのエアロゲルを炭素化することによって合成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−051828号公報
【特許文献2】米国特許第4873218号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メソ細孔構造でありながら相対圧力の比較的大きな領域において相対圧力差に対する窒素吸着量差が大きい炭素多孔体は知られておらず、当然、こうした炭素多孔体を容易に製造する方法も知られていなかった。このような炭素多孔体は、特定ガスの脱着材への利用のほか、電気化学キャパシタの電極材料やバイオ燃料電池の酵素電極を担持する材料、キャニスタの吸着材、燃料精製設備の吸着材などへの利用が期待される。
【0005】
このような多孔体の炭素材料の原料として芳香族化合物、特に、芳香族カルボン酸化合物のカルシウム塩を用いる場合がある。このとき、芳香族カルボン酸とカルシウム化合物とを反応させて芳香族カルボン酸化合物のカルシウム塩を作製するが、芳香族カルボン酸やカルシウム化合物は、溶媒への溶解度が低いことなどがあり、未反応の芳香族カルボン酸が残存するなど、例えば、収率を高めてカルシウム塩を得ることが困難であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、テレフタル酸のカルシウム塩をより効率よく得ることができるカルシウム塩の製造方法を提供することを主目的とする。また、効率よく得られたカルシウム塩を用いて炭素多孔体を得る炭素多孔体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、一価のカチオンの水酸化物と水とを少量添加して混合すると、テレフタル酸のカルシウム塩をより効率よく得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のカルシウム塩の製造方法は、
テレフタル酸と水酸化カルシウムと一価カチオンの水酸化物とを混合してテレフタル酸カルシウムを生成する生成工程、を含むものである。
【0009】
また、本発明の炭素多孔体の製造方法は、
上述のカルシウム塩の製造方法で生成したテレフタル酸カルシウムを不活性雰囲気中、550℃以上700℃以下で加熱することで炭素/炭酸カルシウム複合体を形成し、形成した炭素/炭酸カルシウム複合体から炭酸カルシウムを溶解除去し、炭素多孔体を得る処理工程、を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカルシウム塩の製造方法では、テレフタル酸のカルシウム塩をより効率よく得ることができる。この理由は、以下のように推測される。例えば、テレフタル酸および水酸化カルシウムは水への溶解度が低いため、そのまま反応させると、テレフタル酸のカルシウム塩の生成が不充分となることがある。本発明では、少量の一価カチオンの水酸化物(水酸化リチウムなど)を添加することにより、まず、テレフタル酸の一価カチオン塩が生成し、テレフタル酸の水中への溶解度が大きく向上する。この溶解したテレフタル酸塩と水酸化カルシウムとが、カチオン交換することによりテレフタル酸カルシウムとなり、全てのテレフタル酸がカルシウム塩となるものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】LiOHのモル濃度に対するTGの質量減少率の関係図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のカルシウム塩の製造方法は、テレフタル酸と水酸化カルシウムと一価カチオンの水酸化物(以下、単に水酸化物ともいう)とを混合してテレフタル酸カルシウムを生成する生成工程、を含むものである。この工程においては、まず、テレフタル酸が一価カチオンと反応し、テレフタル酸の一価カチオンの塩が生成する。次に、このテレフタル酸塩が水酸化カルシウムのカルシウムと置換し、テレフタル酸カルシウムが生成するものと考えられる。テレフタル酸は、溶媒(例えば水)への溶解度が比較的低いが、一価カチオンの塩となることにより、溶解度が高まり、水酸化カルシウムとの反応性がより高まると考えられる。
【0013】
生成工程では、テレフタル酸のモル数Tに対する水酸化物のモル数Hであるモル比H/Tが0.01以上0.05以下の範囲とすることが好ましい。この範囲では、テレフタル酸の一価カチオン塩からテレフタル酸カルシウムへの置換反応をより円滑に進めることができる。このモル比H/Tは、0.01以上0.03以下の範囲とすることがより好ましい。また、テレフタル酸のモル数Tに対する水酸化カルシウムのモル数Cであるモル比C/Tが1以上1.2以下の範囲とすることが好ましい。
【0014】
生成工程では、水酸化物のモル濃度が0.015mol/L以上0.07mol/L以下の範囲となるよう水を加えてテレフタル酸と水酸化カルシウムと水酸化物とを混合することが好ましい。このモル濃度の範囲では、テレフタル酸カルシウムの収率をより高めることができる。なお、上記モル比H/Tが0.01未満では、水酸化物の添加量が極めて少ないため、テレフタル酸の溶解が進みにくく、良好なカルシウム塩を得にくい。一方、モル比H/Tが0.05を超えると、このモル濃度の範囲での水の添加量は極めて少ないのでテレフタル酸と水酸化カルシウムと水酸化物との混合が均一に進みにくくなる。この水酸化物のモル濃度は、0.03mol/L以上0.05mol/L以下の範囲であることがより好ましく0.04mol/Lとすることが更に好ましい。この生成工程では、固相反応により進行してテレフタル酸カルシウムを生成するものとしてもよい。即ち、この生成工程は、微量の水の存在下で行うものとしてもよい。
【0015】
生成工程では、一価カチオンの水酸化物であれば特に限定されないが、水酸化物として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムのうち1以上を用いることが好ましい。このうち、水酸化リチウムを用いることがより好ましい。例えば、ナトリウムやカリウムは、炭素の賦活剤として機能してしまうことがあるが、水酸化リチウムは、その後の炭素多孔体を作製する際に、影響を与えにくく、好ましい。
【0016】
生成工程において、混合するときの温度は、100℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは40℃以下の範囲で行うことができ、室温としてもよい。水酸化物を添加することにより、テレフタル酸の反応性が高まるため、より低い温度でテレフタル酸カルシウムを生成することができる。混合時間は、テレフタル酸の量にもよるが、例えば、6時間以上、72時間以下の範囲とすることが好ましい。
【0017】
本発明の炭素多孔体の製造方法は、上述したカルシウム塩の製造方法で生成したテレフタル酸カルシウムを不活性雰囲気中、550℃以上700℃以下で加熱することで炭素/炭酸カルシウム複合体を形成し、形成した炭素/炭酸カルシウム複合体から炭酸カルシウムを溶解除去し、炭素多孔体を得る処理工程、を含むものである。
【0018】
処理工程において、不活性雰囲気としては、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気などが挙げられる。加熱温度については、550℃〜700℃の範囲では、良好な多孔体が得られるため、好ましい。加熱後に得られる炭素/炭酸カルシウム複合体は、層状炭化物の層間に炭酸カルシウムが入り込んだ構造をとっていると推察される。加熱温度での保持時間は、例えば50時間以下としてもよい。このうち、0.5〜20時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。0.5時間以上では、炭素と炭酸カルシウムとの複合体の形成が十分に行われる。20時間以下では、BET比表面積の比較的大きな炭素多孔体が得られる。
【0019】
処理工程において、炭酸カルシウムを溶解除去する方法としては、炭素/炭酸カルシウム複合体を液体で洗浄することが挙げられる。洗浄液としては、例えば、水や酸性水溶液を用いることが好ましい。酸性水溶液としては、例えば、塩酸、硝酸及び酢酸などの水溶液が挙げられる。この洗浄を行うことにより、複合体中の炭酸カルシウムが存在していた箇所は空洞(気孔)になると推察される。
【0020】
得られた炭素多孔体は、吸着材として利用することができる。吸着する物質は、例えば、アンモニアなどが挙げられる。この吸着材は、アンモニア圧力が390kPaのときのアンモニア吸着量からアンモニア圧力が300kPaのときのアンモニア吸着量を差し引いた値が0.50g/g以上であることが好ましい。こうすれば、アンモニア圧力を調節することにより、多量のアンモニアを吸着させたりそれを放出させたりすることができる。
【0021】
以上詳述した本実施形態のカルシウム塩の製造方法では、テレフタル酸のカルシウム塩をより効率よく得ることができる。この理由は、以下のように推測される。例えば、テレフタル酸および水酸化カルシウムは水への溶解度が低いため、そのまま反応させると、テレフタル酸のカルシウム塩の生成が不充分となることがある。本発明では、少量の水酸化物(水酸化リチウムなど)を添加することにより、まず、テレフタル酸の一価カチオン塩が生成し、テレフタル酸の水中への溶解度が大きく向上する。この溶解したテレフタル酸塩と水酸化カルシウムとが、カチオン交換することでテレフタル酸カルシウムとなり、全てのテレフタル酸がカルシウム塩となるものと推察される。また、モル比H/Tが0.01以上0.05以下の範囲で水酸化物を添加するため、テレフタル酸の一部が一価カチオン塩になるなど、徐々に反応が進むため、テレフタル酸カルシウムへの反応をより促進することができる。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0023】
以下には、本発明のカルシウム塩及び炭素多孔体を具体的に製造した例を実験例として説明する。なお、実験例1〜9、11が本発明の実施例に相当し、実験例10が比較例に相当する。
【0024】
[実験例1]
テレフタル酸(以下PTA)0.1molと、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2:水酸化Ca)0.1molとを粉末混合した。混合比はモル比でPTA:水酸化Ca=1:1とした。これに水酸化リチウム(LiOH)0.001molを添加し、混合した。この組成比は、PTA:水酸化Ca:LiOH=1:1:0.01である。これに水をLiOH濃度が0.04mol/Lになるように添加し、混合して静置した。生成塩をAr気流中で熱重量分析(TG測定)を行った。200℃〜400℃の区間における質量値から、質量減少率(質量%)を求めた。
【0025】
[実験例2〜6]
PTA:水酸化Ca:LiOHのモル比をそれぞれ1:1:0.02、1:1:0.03とした以外は、実験例1と同様に作製したものを実験例2,3とした。また、PTA:水酸化Ca:LiOHのモル比を1:1.2:0.01とした以外は、実験例1と同様に作製したものを実験例4とした。また、PTA:水酸化Ca:LiOHのモル比を1:1:0.01とし、LiOHのモル濃度をそれぞれ0.01mol/L、0.08mol/Lとした以外は、実験例1と同様に作製したものを実験例5、6とした。
【0026】
[実験例7〜9]
PTA:水酸化Ca:MOH(M=1価のカチオン)のモル比を1:1:0.02とし、MOHをそれぞれNaOH、KOH、NH
4OHとした以外は、実験例1と同様に作製したものを実験例7〜9とした。
【0027】
[実験例10]
PTA0.1molと、水酸化Ca0.1molとを、水100ml中に分散させ、80℃の水浴で4時間加熱することで、テレフタル酸Ca塩の結晶を生成させた。結晶を濾過で分取して、室温で風乾し、得られたものを実験例10とした。
【0028】
(結果と考察)
図1は、実験例1、10の質量減少測定結果である。
図2は、水を加えたLiOHのモル濃度(mol/L)に対するTGの質量減少率(質量%)の関係図である。
図1に示すように、室温〜150℃の低温領域において、質量減少が見られた。これは、結晶水の脱離によるものと推察された。また、200℃〜400℃の高温領域において質量減少が見られた。これは、未反応のテレフタル酸が昇華することによるものと推察された。したがって、この高温領域の質量減少が少ないものが、良好にCa塩となっていると評価することができる。また、実験例1〜10におけるこの高温領域での質量減少の測定結果を表1に示す。実験例10では、質量減少が12.3質量%と大きく、未反応のテレフタル酸が比較的多く残っていると推察された。一方、PTAの1molに対しLiOHが0.01〜0.03molの範囲で含む実験例1〜4では、特に質量減少率が5質量%以下と少なく、未反応の原料成分(PTA)をより減少することができることがわかった。なお、PTAの1molに対しCaのモル数が1〜1.2molでも同じであった(実験例4)。また、LiOHのモル濃度は、
図2に示すように、0.015〜0.07mol/Lの範囲において質量減少率が5質量%以下と少なく、未反応の原料成分(PTA)をより減少することができることがわかった。また、MOHのMをNa,K,NH
4とした実験例7〜9においても、質量減少率がより小さく、未反応の原料成分(PTA)をより減少することができることがわかった。
【0029】
【表1】
【0030】
(炭素多孔体の作製)
テレフタル酸のカルシウム塩(4g)を電気管状炉内に配置し、その管状炉内を不活性ガス(流速0.1L/分)でフロー置換した。不活性ガスとしては窒素ガスを用いたが、アルゴンガスを用いてもよい。ガスフローを維持したまま、管状炉温度を設定温度まで1時間かけて昇温した。ここでは、設定温度を550℃にした。昇温完了後、ガスフローを維持したまま、その設定温度で2時間保持し、その後室温まで冷却した。これにより、管状炉内には、炭素と炭酸カルシウムとの複合体が生成した。複合体を管状炉から取り出し、水500mLに分散させた。分散液に2mol/Lの塩酸を50mL添加し、撹拌した。すると、炭酸カルシウムの分解により発泡が見られた。分散液をろ過後、乾燥して得られた炭素多孔体を実験例11とした(収量約1g)。
【0031】
(炭素多孔体の特性値測定)
実験例11の炭素多孔体について、液体窒素温度(77K)における窒素吸着測定を行い、比表面積を求めた。
図3は、実験例11の77Kでの窒素吸着等温線である。BET比表面積は、BET解析から算出した。実験例11の炭素多孔体は、BET比表面積が1389m
2/gであった。また、
図3に示す実験例11の炭素多孔体の窒素吸着等温線は、IUPAC分類のIV型(メソ細孔を持つことを示す型)に属するものであった。したがって、実験例11の炭素多孔体は、ほぼメソ細孔から構成されていると推察された。
【0032】
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、炭素材料の原料製造に関する技術分野に利用可能である。