特許第6483492号(P6483492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483492
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】空撮装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20060101AFI20190304BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20190304BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20190304BHJP
   G03B 37/00 20060101ALI20190304BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20190304BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20190304BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20190304BHJP
   B64C 27/08 20060101ALN20190304BHJP
【FI】
   G03B17/56
   B64D47/08
   B64C39/02
   G03B17/56 Z
   G03B37/00 A
   G03B15/00 P
   G03B15/00 S
   G03B15/00 W
   H04N5/225 100
   H04N5/232 380
   !B64C27/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-60958(P2015-60958)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-180866(P2016-180866A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】森時 悠
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】レ クオク ズン
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08874283(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0153916(US,A1)
【文献】 特開2015−023470(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0120017(US,A1)
【文献】 特開2006−197068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
B64C 39/02
B64D 47/08
G03B 15/00
G03B 37/00
H04N 5/225
H04N 5/232
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行を遠隔操作可能な無人飛行体と、
この無人飛行体の周囲を取り囲むように設けられ、前記無人飛行体の中心の真上及び真下をそれぞれ極点としたとき、前記上下の極点で互いに交差して子午線方向へ延びる同一半径の環状をなす複数の子午線枠部と、前記上下の極点の中間位置で前記各子午線枠部と直交するように緯線方向へ延びる赤道枠部と、この赤道枠部の上下両側で前記各子午線枠部と直交するように緯線方向へ延びる緯線枠部とを有するフレームと、
前記上下の極点の位置と、前記子午線枠と前記赤道枠部及び前記緯線枠部との結合部である各格子点との位置に、レンズの光軸を前記フレームの半径方向外側を向けて視点角が互いに重なり合うように取り付けられた複数のカメラと、
を備えることを特徴とする空撮装置。
【請求項2】
前記各カメラで撮像した画像を取り込んで表示する表示手段を備え、
前記各カメラで撮像した画像を切り替え表示可能である
ことを特徴とする請求項に記載の空撮装置。
【請求項3】
前記各カメラで撮像した画像をモザイク状に貼り合わせて広角の球面画像を生成する球面画像生成手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の空撮装置。
【請求項4】
前記球面画像生成手段が全天球画像を生成するものである
ことを特徴とする請求項に記載の空撮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の無人ヘリコプタや無人飛行機など、遠隔操作や自律制御によって飛行する飛行体を利用して撮像する空撮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば集中豪雨による土砂崩れ、土石流や大地震など、自然災害時において人が立ち入ることの困難な被災地の状況を把握したり、あるいは高所を点検したり、上空からの測量を行ったりするための手段として、カメラを搭載した小型の無人ヘリコプタや無人飛行機などの遠隔操作方式の無人飛行体(以下、UAVという)を利用した空撮装置のニーズが高まっている。UAVを利用した空撮は、有人の飛行機やヘリコプタを使用した場合より低コストであり、しかも、狭い場所や山岳地など危険な場所でも撮影することができるので、用途が広がっている。
【0003】
この種の空撮装置は、UAVの下部にカメラを取り付けているため(例えば下記の特許文献1参照)、上方を撮影しようとするとどうしてもUAVが写ってしまい撮影ができない死角となる問題がある。また、ジンバルなどを介してカメラを取り付けることで、カメラの向きを上下左右に変えることはできるが、全方位への回転はできないため、後方を撮影することができないといった問題もある。しかも、カメラは1方向のみの撮影となるため、上部と下部、前方と後方など複数の視点から同時に画像を見ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−27448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、遠隔操作や自律制御によって飛行する飛行体を利用した空撮装置において、死角のない広角あるいは全天球の撮影が可能な空撮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明空撮装置の一態様は、飛行を遠隔操作可能な無人飛行体と、この無人飛行体の周囲を取り囲むように設けられ、前記無人飛行体の中心の真上及び真下をそれぞれ極点としたとき、前記上下の極点で互いに交差して子午線方向へ延びる同一半径の環状をなす複数の子午線枠部と、前記上下の極点の中間位置で前記各子午線枠部と直交するように緯線方向へ延びる赤道枠部と、この赤道枠部の上下両側で前記各子午線枠部と直交するように緯線方向へ延びる緯線枠部とを有するフレームと、
前記上下の極点の位置と、前記子午線枠と前記赤道枠部及び前記緯線枠部との結合部である各格子点との位置に、レンズの光軸を前記フレームの半径方向外側を向けて視点角が互いに重なり合うように取り付けられた複数のカメラと、を備える。
【0008】
発明空撮装置の別の一態様画像を切り替え表示可能である。
【0009】
発明空撮装置の別の一態様、各カメラで撮像した画像をモザイク状に貼り合わせて広角の球面画像を生成する球面画像生成手段を有する。
【0010】
発明空撮装置の別の一態様、球面画像生成手段が全天球画像を生成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空撮装置によれば、無人飛行体の周囲を取り囲むフレームに取り付けた複数のカメラで撮影するため、無人飛行体の存在による死角のない広角あるいは全天球の撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る空撮装置の好ましい実施の形態を示す外観の斜視図である。
図2】本発明に係る空撮装置の好ましい実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る空撮装置の好ましい実施の形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0014】
本発明に係る空撮装置は、図1に示すように、無人飛行体としての小型無人のマルチコプター(以下、UAVという)1と、このUAV1の周囲を取り囲むように設けられたフレーム2と、このフレーム2の各格子点に取り付けられた複数のカメラ3とを備える。
【0015】
詳しくは、UAV1は、機体11と、この機体11から略水平方向へ放射状をなして延びる複数(図示の例では4本)のアーム12と、各アーム12の先端に取り付けられ互いに等間隔で配置されたモータ及びこれによって水平あるいは傾斜した回転面をなして回転されるプロペラからなる複数(図示の例では4基)のロータ13を備え、ロータ13の回転数や傾斜角度、傾斜方向によって、垂直離着陸、ホバリング及び任意の方角への水平飛行、飛行速度の制御が可能となっている。
【0016】
フレーム2は、所要の剛性を有する軽量の金属又は合成樹脂材からなるものであって、格子状の球体をなしており、UAV1の機体11の中心の真上及び真下をそれぞれ極点とみなした場合に、この上下両極点2a,2bにおいて一定角度をなして互いに交差すると共に同一半径の環状をなして子午線方向へ延びる複数の子午線枠部21と、上下両極点2a,2bの中間位置で各子午線枠部21と直交するように緯線方向へ延びる赤道枠部22と、この赤道枠部22の上下両側で各子午線枠部21と直交するように緯線方向へ延び赤道枠部22より小径の複数の緯線枠部23を有する。
【0017】
またこのフレーム2は、UAV1を衝突や墜落による衝撃から保護して損傷を防止するガード手段としての機能を兼備するものであって、UAV1の各プロペラと接触することのない大きさに形成されており、上下両極点2a,2bにおいて、UAV1の機体11に、上下両極点2a,2b間を延びる連結具24及び赤道枠部22の180°対称位置の格子点間を延びる連結具25を介して取り付けられている。
【0018】
カメラ3は、レンズ3aにより取り込んだ光学像をCCDやCMOS等の撮像素子によって画像信号に変換(撮像)し、その画像データを、カメラ3の位置データ(フレーム2上の緯度・経度のデータ)と共に出力するものであり、フレーム2における上下両極点2a,2bと、各子午線枠部21と赤道枠部22や緯線枠部23との結合部である各格子点位置に、互いに異なるアングルで、すなわちレンズ3aの光軸がフレーム2の半径方向外側を向くように、かつ視野角が互いに重なり合うように取り付けられている。また、このカメラ3は、動画像を撮影するもの、あるいは適当な時間間隔で間欠的に静止画像を撮影するものであっても良い。
【0019】
UAV1の機体11には、制御装置101と通信装置102が搭載されている。制御装置101はマイクロコンピュータ等からなるものであって、各ロータ13の駆動を制御する機能や、カメラ3による撮像データの画像処理等を行う機能を有するものであり、通信装置102は、後述するコントロールルーム4の通信装置43との間で種々のデータの送受信を行うものである。
【0020】
なお、UAV1のロータ13や制御装置101、通信装置102、フレーム2に取り付けられた各カメラ3などを駆動させるのに必要な電力は、コントロールルーム4に設置された商用電源などの電力供給源から不図示のケーブルを介して供給しても良いし、UAV1の機体11にバッテリーを搭載して供給しても良い。
【0021】
地上には、例えばコントロールルーム4が設置されており、このコントロールルーム4には、UAV1を遠隔操作するための遠隔操作装置41と、管理用制御装置42と、通信装置43と、画像メモリ44と、画像表示装置45が設置され、これらが互いに接続されている。
【0022】
遠隔操作装置41は、オペレータがコントロールルーム4内からUAV1を遠隔操作するためのものである。管理用制御装置42は、例えば汎用のパーソナルコンピュータからなるものであって、遠隔操作装置41の操作に対応した操作指令信号を出力するほか、UAV1に搭載された制御装置101から通信装置102を介して送信され通信装置43で受信された画像データを取り込んで画像表示装置45へ出力し、あるいは受信された画像データを例えばフレーム2における各カメラ3の緯度・経度のデータに対応させて画像メモリ44に蓄積させるものである。
【0023】
また、管理用制御装置42は、不図示のメモリに格納された所定の制御プログラムを実行することによって、請求項4に記載された球面画像生成手段として機能することができる。すなわちフレーム2に取り付けられた各カメラ3による画像をモザイク状に貼り合わせて広角又は全天球の球面画像を生成して画像表示装置45へ出力し、あるいは画像メモリ44に蓄積させるものである。
【0024】
すなわち、球面画像生成機能においては、UAV1を取り囲むフレーム2に取り付けられた各カメラ3から制御装置101を介して通信装置102により送信されコントロールルーム4の通信装置43で受信された画像データ、あるいは画像メモリ44に蓄積された画像データを、公知の方法で互いに緯度方向及び経度方向に結像処理して貼り合わせることによって、リアルタイムで広角又は全天球の球面画像を生成することができる。
【0025】
画像表示装置45は、請求項3に記載された表示手段に相当するものである。管理用制御装置42の球面画像生成機能は、球面上にマッピングされた画像を生成するものであるため、これを表示する画像表示装置45としては、例えばオペレータの頭部に装着する公知のHMD(Head Mounted Display;頭部装着ディスプレイ)を好適に採用することができる。
【0026】
この場合、HMDからなる画像表示装置45を頭部に装着したオペレータは、全天球の球面画像を同時に見ることができないため、管理用制御装置42は、頭部の旋回角又は俯仰角を検出するジャイロセンサなどの検出手段を用いて、オペレータの頭の向きに追従するように、オペレータの視野の範囲の画像データだけを選択的に貼り合わせて出力するようにしても良い。あるいは画像表示装置45に通常の平面的なLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)などを用いる場合は、上述の球面画像生成機能のほか、各カメラ3で撮影した画像から、表示すべき画像を選択的に切り替えて出力するようにしても良い。
【0027】
以上の構成を備える実施の形態の空撮装置によれば、コントロールルーム4にいるオペレータは、遠隔操作装置41を操作することによって、UAV1のロータ13の駆動(UAV1の飛行制御)やカメラ3の撮影動作等を遠隔操作することができる。そしてこのUAV1は、周囲を取り囲むフレーム2によって保護されているので、衝突や墜落時の衝撃による損傷が有効に防止される。
【0028】
そしてこの実施の形態の空撮装置によれば、UAV1の周囲を取り囲むように設けられたフレーム2の各格子点に、レンズ3aの光軸がフレーム2の半径方向外側を向くように、かつ視野角が互いに重なり合うように取り付けられた複数のカメラ3を有するため、複数のカメラ3のいずれの視野にもUAV1が写ることはなく、フレーム2が写ることもない。しかも、緯度及び経度方向へ互いに隣接したカメラ3は視野角が互いに重なり合うように取り付けられているため、これらの画像の周辺部を互いに重畳するように画像処理して結合することで、死角のない広角あるいは全天球の撮影が可能であり、従来は撮影が不可能であった方向の撮影も可能であり、撮り忘れや撮りこぼしもなくなる。
【0029】
また、UAV1の全周囲の状況を複数のカメラ3で撮影した画像は、地上のコントロールルーム4の画像メモリ44に蓄積される一方、画像表示装置45に表示されるため、オペレータはUAV1の飛行中の周囲の状況をリアルタイムで確認することができる。このため、オペレータは、画像表示装置45に表示された画像を確認しながら、遠隔操作装置41を操作することによって、UAV1の飛行やカメラ3の撮影動作等を遠隔操作することができる。しかもアングルの異なる複数のカメラ3を有することから、特定の被写体の撮影のためにUAV1の向きを変更(パンあるいはティルト)する必要がなくなり、このため、UAV1の操縦を容易にかつ安全に行うことができる。
【0030】
また、例えば各カメラ3からの画像をLCD等による複数の画像表示装置45に出力することによって、複数の監視者が同時に異なる視点の画像(動画像又は静止画像)を確認することができ、あるいは画像メモリ44に蓄積された画像データから、視点の異なる任意の画像を読み出して画像表示装置45に出力表示させることができる。さらに、画像表示装置45として例えばHMDを採用することで、球面画像の3D表示が可能となるため、より臨場感のある映像を確認することができる。
【0031】
さらに、フレーム2における各子午線枠部21と赤道枠部22や緯線枠部23との結合部である各格子点位置に配置された個々のカメラ3自体は視野角が比較的狭いもので良いため、例えば魚眼カメラのように視野が広角の単一のカメラで撮影した場合に比較して解像度の高い画像データを得ることができる。
【0032】
なお、上述の説明では、画像メモリ44を地上のコントロールルーム4に設けることとしたが、UAV1の機体11に搭載しても良い。
【0033】
また、上述の説明では、無人飛行体として複数のロータ13を備えるUAVを挙げたが、例えば小型無人飛行機や小型無人ヘリコプタなども適用することができる。
【0034】
さらに、上述の説明では、フレーム2は子午線枠部21と赤道枠部22及び緯線枠部23からなる球体状としたが、例えば枠を正多面体状に組むことによって、その格子点に位置するカメラ3を等間隔で配置したものや、枠を回転楕円体状に組んだものや、多数の円形穴が開設された球体としたものなど、種々の形状が適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上述のように、本発明に係る空撮装置によれば、無人飛行体の存在による死角のない広角あるいは全天球の撮影が可能となるため、橋梁の橋脚部分、ダムの壁面、その他構造物の健全性を点検する場合や、人の立ち入りが困難な自然災害による被災地などのように、高所や危険な箇所を遠隔地からの操作によって確認する作業に利用することができる。
【0036】
また、アーティストのライブコンサートなどにおいて、会場の状況を撮影して通信ネットワークを介してリアルタイムで配信する場合などに適用すれば、視聴者が、視点の異なる映像を自由に選択することができため、臨場感をもって視聴することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 UAV(無人飛行体)
2 フレーム
3 カメラ
4 コントロールルーム
42 管理用制御装置(球面画像生成手段)
44 画像メモリ
45 画像表示装置(表示手段)
101 制御装置
図1
図2