(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483496
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】固液分離方法及び固液分離システム
(51)【国際特許分類】
B01D 37/02 20060101AFI20190304BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20190304BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20190304BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B01D37/02 D
C02F1/52 Z
C02F1/44 K
B01D37/02 B
B01D37/02 E
B01D63/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-64411(P2015-64411)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-182563(P2016-182563A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】森田 優香子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 曜次朗
【審査官】
小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−128369(JP,A)
【文献】
特開2005−279448(JP,A)
【文献】
特開2001−259317(JP,A)
【文献】
特開2003−103289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 37/00−37/08
C02F 1/52
C02F 1/44
B01D 63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一次側の表面に被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層を形成するダイナミックろ過層形成工程と、
被処理液を前記ダイナミックろ過層形成工程で形成されたダイナミックろ過層でろ過して前記支持体の二次側から処理水を取り出す固液分離工程と、
を含む固液分離方法であって、
前記固液分離工程の後に、前記支持体の表面に形成されたダイナミックろ過層を剥離するために、前記支持体の二次側から一次側へ逆洗水を供給する逆洗工程と、
水流を形成して前記支持体の一次側の表面近傍の逆洗水を被処理液と入れ替える入替工程と、
前記支持体の二次側から一次側へ凝集剤添加溶液を供給して前記ダイナミックろ過層形成工程で前記ダイナミックろ過層を形成するための懸濁物質のフロックを形成する凝集剤添加工程と、
をこの順番で実行することを特徴とする固液分離方法。
【請求項2】
前記支持体が表面に配置された複数の平板状のろ過エレメントを、前記支持体同士が対向するように所定間隔を隔てて配列した固液分離装置を、被処理液中に浸漬して配置して、各ろ過エレメントに各工程が実行されることを特徴とする請求項1記載の固液分離方法。
【請求項3】
支持体の一次側の表面に形成された被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層で被処理液をろ過して前記支持体の二次側から処理水を取り出す固液分離装置を用いた固液分離システムであって、
前記固液分離装置は、前記支持体が表面に配置された平板状のろ過エレメントを備え、前記支持体同士が対向するように各ろ過エレメントを所定間隔を隔てて配列して構成されており、
前記支持体の二次側に連通するように接続され、前記支持体の二次側から一次側に凝集剤添加溶液を供給して前記ダイナミックろ過層を形成するための懸濁物質のフロックを形成する凝集剤添加機構を備えていることを特徴とする固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の一次側の表面に形成された被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層により被処理液をろ過して処理水を得る固液分離方法及び固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)には、ポンプを用いて原水槽1から混和槽2に被処理液である下水、し尿、産業廃水等の汚水を移送し、凝集剤を添加して混和した後に生物処理槽3で活性汚泥を用いて生物処理し、当該生物処理槽3に浸漬配置されたダイナミックろ過層が形成された固液分離装置4を介して固液分離して、処理水槽5にろ液を移送する固液分離方法が示されている。
【0003】
図5(b)には、生物処理槽3で生物処理された被処理液を、ポンプを用いて混和槽2に移送し、凝集剤を添加して混和した後に沈殿槽6に移送して、沈殿槽6に浸漬配置されたダイナミックろ過層が形成された固液分離装置4を介して固液分離して、処理水槽5にろ液を移送する固液分離方法が示されている。
【0004】
図5(c)には、生物処理槽3で生物処理された被処理液を、ポンプを用いて混和槽2に移送し、凝集剤を添加して混和した後に汚泥を中心部に掻き寄せる掻き寄せ機6aが設置された沈殿槽6に移送して、沈殿槽6の周部に浸漬配置されたダイナミックろ過層が形成された固液分離装置4を介して固液分離して、処理水槽5にろ液を移送する固液分離方法が示されている。
【0005】
何れも固液分離装置4に接続された集水管4aの下流側に接続された吸水ポンプによる吸引力を利用してダイナミックろ過層でろ過される。ろ過されたろ液は例えば場内用の処理水等に利用され、或いは必要に応じて消毒処理等の処理が施された後に河川に放流される。
【0006】
図6(a),(b),(c)には、
図5(a),(b),(c)と同様の固液分離方法が示されている。
図5(a),(b),(c)と異なるのは、ダイナミックろ過層が形成された固液分離装置4と処理水槽5との水頭差によりダイナミック膜ろ過される点で、そのため集水管4aにろ過状態を停止または許容するバルブVが設置されている。
【0007】
固液分離装置4は、平均孔径が精密ろ過膜よりも大きな10〜100μm程度の合成樹脂製の不織布やネット、金属製のメッシュ網等の透水性の支持体の表面に形成されたダイナミックろ過層でろ過するように構成された装置であり、ダイナミックろ過層は被処理液中の活性汚泥等が凝集剤でフロック状に凝集した懸濁物質を層状に堆積させることにより形成されるろ過層である。
【0008】
ダイナミックろ過層が閉塞状態に近づき、またはろ過運転を所定時間継続した後に、処理水槽5に備えた逆洗用のポンプ7を用いて集水管4aに洗浄水が供給され、支持体の表面に形成されたダイナミックろ過層が除去され、その後再度懸濁物質を層状に堆積させることにより再生される。集水管4aには洗浄水に洗浄薬液を添加する薬液添加機構が組み込まれている。
【0009】
特許文献1には、高い透過液量で優れたSS除去を長期間に亘って安定に発揮することができるダイナミックろ過法を用いた排水処理方法が開示されている。当該排水処理方法は活性汚泥法による生物反応処理を行う工程と前記工程で得られた生物処理液を固液分離処理する工程を具備し、ろ過体として平均孔径が10〜150μmのネットを用いた袋状ろ過エレメントを固液分離槽内に浸漬し、固液分離槽の液面と袋状ろ過エレメントの透過液取出口との水頭差によりダイナミックろ過する固液分離処理と、凝集剤による凝集処理とを組み合わせた排水処理方法である。
【0010】
当該特許文献1には以下のように記載されている。ろ過エレメントが浸漬配置された固液分離槽に生物処理後の被処理液が導かれ、固液分離槽への凝集剤の添加と並行してろ過エレメントによりダイナミックろ過が行なわれるように構成されている。ろ過エレメントの表面に速やかにダイナミック膜が形成されるので、従来に比べてろ過エレメントを通過するSSの量が減少する。凝集剤の添加量は、ろ過体として用いたネットの目を通過しない程度のフロックが形成される程度で充分であり、固液分離槽の底部に沈降させる大きなフロックを形成させる程の量を添加する必要はないので、上述した
図5,6に示すような原水に直接凝集剤を添加する場合や生物処理槽に凝集剤を添加する場合に比べてスラッジの発生量が少なくなる。
【0011】
特許文献2には、供給管内を流れる被処理液中に凝集剤を供給し凝集物質を形成する工程と、この工程の後に供給管内に空気を供給しこの空気を供給管から処理水槽内で浸漬膜に向けてバブリングさせる工程と、浸漬膜により凝集物質をろ過して処理水を得る工程とを備えた凝集分離方法が開示されている。
【0012】
当該凝集分離方法によれば、供給管内に凝集剤を供給して凝集物質であるマイクロフロックを形成することで独立した中和槽や混合槽が不要となり省スペース化を実現することができ、浸漬膜室内で気泡によって原水を激しく攪拌してマイクロフロックのフロックへの成長を促進すると共にフロックの必要以上の成長を阻止して均一なフロックを分散することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−103289号公報
【特許文献2】特開平11−104657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1に記載された排水処理方法でも、生物処理後の被処理液が導かれた固液分離槽に凝集剤が供給されるように構成されているので、スラッジの発生量を低減できるようになっても、ダイナミックろ過層の形成に必要なフロックを形成するのに必要な量以上に凝集剤が供給される点で、凝集剤が無駄に消費されることに変わりなく、一層の改良の必要があった。
【0015】
また、特許文献2に記載された凝集分離方法はダイナミックろ過層が採用される構成ではないが、仮に浸漬膜に代えてダイナミックろ過層が形成されたろ過膜が用いられる場合を想定すると、特許文献1に記載された構成と同様に、ダイナミックろ過層の形成に必要なフロックを形成するのに必要な量以上に凝集剤が供給される点で、凝集剤が無駄に消費されることに変わりなかった。
【0016】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、凝集剤の使用量を最小限に止めてランニングコストを大幅に低減可能な固液分離方法及び固液分離システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による固液分離方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、支持体の一次側の表面に被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層を形成するダイナミックろ過層形成工程と、被処理液を前記ダイナミックろ過層形成工程で形成されたダイナミックろ過層でろ過して前記支持体の二次側から処理水を取り出す固液分離工程と、を含む固液分離方法であって、
前記固液分離工程の後に、前記支持体の表面に形成されたダイナミックろ過層を剥離するために、前記支持体の二次側から一次側へ逆洗水を供給する逆洗工程と、水流を形成して前記支持体の一次側の表面近傍の逆洗水を被処理液と入れ替える入替工程と、前記支持体の二次側から一次側へ凝集剤添加溶液を供給
して前記ダイナミックろ過層形成工程で前記ダイナミックろ過層を形成するための懸濁物質のフロックを形成する凝集剤添加工程
と、をこの順番で実行する点にある。
【0018】
支持体の二次側から一次側に凝集剤添加溶液を供給すると、支持体を通過してろ過対象となる被処理液に凝集剤が供給され、支持体の近傍で浮遊する懸濁物質が当該凝集剤によってフロック状に凝集されるようになる。そして支持体の一次側から二次側へ被処理液を吸引すると、そのような支持体近傍で凝集されたフロックが支持体の一次側の表面に堆積することによりダイナミックろ過層が形成されるので、支持体の一次側に貯留されている被処理液の全体に凝集剤を供給してダイナミックろ過層を形成するためのフロックを生成する場合に比べて、僅かな凝集剤であっても効果的にダイナミックろ過層が形成されるようになる。
【0019】
また、洗浄工程で支持体の二次側から一次側に逆洗水を供給することにより、閉塞傾向にあるダイナミックろ過層が支持体の表面から剥離され、支持体の表面近傍に浮遊する剥離後の懸濁物質や洗浄液が入替工程で被処理液と入れ替わる。その後、支持体の表面近傍の被処理液に対して凝集剤添加工程が実行されることにより、支持体の一次側の表面近傍に供給される凝集剤によって生成されるフロックが新たなダイナミックろ過層を形成するための懸濁物質として効果的に利用されるようになる。
【0020】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記支持体が表面に配置された複数の平板状のろ過エレメントを、前記支持体同士が対向するように所定間隔を隔てて配列した固液分離装置を、被処理液中に浸漬して配置して、各ろ過エレメントに各工程が実行される点にある。
【0021】
平板状のろ過エレメントに備えられた支持体同士が対向するように所定間隔を隔てて配列され、各支持体にダイナミックろ過層が形成されることにより、支持体の二次側から一次側へ供給された凝集剤添加溶液及び生成したフロックが、隣接するろ過エレメント同士の間隔内に留まり拡散することがなく、僅かな空間であってもダイナミックろ過層を高密度に実装して効率的に被処理液をろ過することができるようになる。
【0022】
本発明による固液分離システムの第一の特徴構成は、同請求項
3に記載した通り、支持体の一次側の表面に形成された被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層で被処理液をろ過して前記支持体の二次側から処理水を取り出す固液分離装置を用いた固液分離システムであって、
前記固液分離装置は、前記支持体が表面に配置された平板状のろ過エレメントを備え、前記支持体同士が対向するように各ろ過エレメントを所定間隔を隔てて配列して構成されており、前記支持体の二次側に連通するように接続され、前記支持体の二次側から一次側に凝集剤添加溶液を供給して
前記ダイナミックろ過層を形成するための懸濁物質のフロックを形成する凝集剤添加機構を備えている点にあ
る。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によれば、凝集剤の使用量を最小限に止めてランニングコストを大幅に低減可能な固液分離方法及び固液分離システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a),(b),(c)は本発明による固液分離方法及び固液分離システムの説明図
【
図2】(a),(b),(c)は本発明による固液分離方法及び固液分離システムの別実施形態を示す説明図
【
図3】(a)は固液分離装置の説明図、(b)はダイナミックろ過層の説明図
【
図4】(a),(b),(c)は凝集剤添加工程の説明図
【
図5】(a),(b),(c)は従来の固液分離方法及び固液分離システムの説明図
【
図6】(a),(b),(c)は従来の固液分離方法及び固液分離システムの他の例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による固液分離方法及び固液分離システムを説明する。
図1(a)には、下水、し尿、産業廃水等の被処理液を生物処理により浄化し、浄化した被処理液から水を取り出す固液分離方法及び固液分離システムの一例が示されている。
【0026】
原水槽1に搬入された被処理液は原水槽1に備えたポンプPを用いて生物処理槽3に定量搬送され、生物処理槽3に貯留された活性汚泥を用いて生物処理される。被処理液の流れ方向に沿って生物処理槽3の下流側に固液分離装置4が浸漬配置され、固液分離装置4で固液分離されたろ液が処理水槽5に貯留される。
【0027】
各固液分離装置4が接続される集水管4aの下流側に接続された吸水ポンプ10による吸引力を利用してろ過される。処理水槽5に貯留されたろ液は例えば場内用の処理水等に利用され、或いは必要に応じて消毒処理等の処理が施された後に河川に放流される。
【0028】
図3(a),(b)に示すように、固液分離装置4は、支持体41が表面に配置された複数の平板状のろ過エレメント40を支持体41同士が対向するように所定間隔dだけ隔てて配列した固液分離装置であり、支持体41の一次側表面にダイナミックろ過層42が形成されている。
【0029】
ろ過エレメント40は薄幅の直方体形状を呈した中空の樹脂フレームの表面に一対の支持体41が張り付けられ、樹脂フレームの上端にノズル43が突出形成され、各ノズル43が集水管4aに接続されている。
【0030】
支持体41は、PET等の合成樹脂を用いた不織布やネット或いはメッシュで構成され、精密ろ過膜よりも大きな平均孔径10〜150μm程度の多数の開口Hが形成されている。ろ過エレメント40に張り付けられた支持体41のうち、被処理液と接する側が一次側、その反対側のろ液と接する側が二次側となる。
【0031】
支持体41の一次側の表面にダイナミックろ過層42が形成される。ダイナミックろ過層42は被処理液中の活性汚泥等が凝集剤によってフロック状に凝集された懸濁物質が層状に堆積されることにより形成されるろ過層である。
【0032】
ダイナミックろ過層42には層状に堆積した懸濁物質に形成される平均孔径が支持体41の開口Hの平均孔径よりも小さな無数の細孔44が形成され、当該細孔44を透過したろ液が開口Hを経由して二次側に流出するように構成されている。
【0033】
図4(a),(b),(c)には、ダイナミックろ過層42の形成プロセスが示されている。活性汚泥中にろ過エレメント40が浸漬された状態で(
図4(a)参照)、ノズル43からろ過エレメント40の内部に凝集剤添加溶液が注入されると、支持体41の開口Hを経由して二次側から一次側に凝集剤添加溶液が拡散される(
図4(b)参照)。
【0034】
活性汚泥に凝集剤が供給されることにより、支持体41の一次側表面近傍には活性汚泥が凝集したフロックFが形成される(
図4(b)参照)。ろ過エレメント40の周囲にある程度のフロックFが形成された後に吸水ポンプ10が駆動されると、支持体41の開口Hを経由して一次側から二次側に向けて被処理液が流入し、同時にフロックFが開口Hに吸い寄せられる。フロックFのうちで平均粒径が支持体41の開口Hの平均孔径より大きいフロックFが先ず堆積し、その上や隙間に平均粒径の小さいフロックFも順次堆積することで、開口H及び開口Hの周部にフロックFが堆積して成長してダイナミックろ過層42が形成される(
図4(c)参照)。
【0035】
つまり、支持体41の二次側から一次側に凝集剤添加溶液を供給する凝集剤添加工程を経ることにより、支持体41の近傍で浮遊する活性汚泥が当該凝集剤によってフロック状に凝集されるようになる。このようなフロックが支持体の一次側の表面に堆積することによりダイナミックろ過層が形成されるので、僅かな凝集剤であっても効果的にダイナミックろ過層42が形成されるようになる。
【0036】
ダイナミックろ過層42を介した固液分離処理がある程度の期間実行されると、ダイナミックろ過層42の層厚が厚くなり、または微小粒子がダイナミックろ過層42の細孔に詰まり透過性能が低下するため、ダイナミックろ過層42を再生処理する必要がある。
【0037】
図1(a)に示すように、そのような場合には、処理水槽5に貯留されたろ液が洗浄水として逆洗用のポンプ7で集水管4aに供給されるように構成されている。集水管4aには洗浄水に膜洗浄薬液を添加する薬液添加機構8及び凝集剤を添加する凝集剤添加機構9が組み込まれている。
【0038】
薬液添加機構8は、洗浄薬液が充填された薬液タンクと薬液タンクから集水管4aに薬液を供給する薬液供給管と、薬液タンクから薬液供給管に薬液を供給する薬液ポンプを備えて構成されている。膜洗浄薬液として、例えば次亜塩素酸ナトリウム水溶液が用いられ、支持体41や管路内が定期的に洗浄される。
【0039】
凝集剤添加機構9は、凝集剤が充填された凝集剤タンクと凝集剤タンクから集水管4aに凝集剤を供給する凝集剤供給管と、凝集剤タンクから凝集剤供給管に凝集剤を供給する凝集剤ポンプを備えて構成されている。凝集剤として硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム塩系の無機系凝集剤や、硫酸第一鉄や塩化第二鉄等の鉄塩系の無機系凝集剤が好適に用いられる。また、これらの凝集剤とともに凝集補助剤を用いることも可能である。
【0040】
逆洗工程は、逆洗用のポンプ7で逆洗水を支持体41の二次側から一次側に供給することで行われ、支持体41の一次側表面に堆積形成されたダイナミックろ過層42は剥離して除去される。
【0041】
そして、上記逆洗工程が行われた後に、固液分離装置4の下方にろ過運転時のダイナミックろ過層42の厚みを調整するために設置された散気装置11で散気を行うことで、散気された気泡の上昇により被処理液に上向流が生じ、上記逆洗工程で剥離したダイナミックろ過層42の層片が上向流に伴って支持体41の近傍から離隔する一方で、未凝集の活性汚泥を含む周辺の被処理液が支持体41の近傍に流れ込んで入れ替わり入替工程が行なわれる。
【0042】
その後、支持体の表面近傍の被処理液に対して凝集剤添加工程が実行されることにより、支持体の一次側の表面近傍に供給される凝集剤によって生成されるフロックが新たなダイナミックろ過層を形成するための懸濁物質として効果的に利用されるようになる。尚、上述の散気装置に換えて、ポンプや攪拌機等の水流形成手段にて、ダイナミックろ過層42の厚み調整や入替工程を行なってもよい。
【0043】
上記入替工程が行なわれた後に散気装置を停止して支持体41の近傍の被処理液の流れを抑えた状態で、上述の凝集剤添加工程が実行され、続いて吸水ポンプ10が駆動されることにより新たなダイナミックろ過層42が形成されるようになる。
【0044】
つまり、本発明による固液分離方法は、支持体41の一次側の表面に被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層42を形成するダイナミックろ過層形成工程と、ダイナミックろ過層形成工程で形成されたダイナミックろ過層42で被処理液をろ過して支持体41の二次側に処理水を取り出す固液分離工程が実行されるように構成されている。
【0045】
さらに、支持体41の表面に形成されたダイナミックろ過層42を剥離するために、支持体41の二次側から一次側に逆洗水を供給する逆洗工程と、支持体41の表面近傍の逆洗水を未凝集の活性汚泥を含む被処理液と入れ替える入替工程と、入替工程の後に支持体41の二次側から一次側に凝集剤添加溶液を供給する凝集剤添加工程が実行されるように構成されている。
【0046】
尚、ダイナミックろ過層42が形成されていない初期には、凝集剤添加工程が実行され、その後吸水ポンプ10が駆動されることにより、支持体41の一次側の表面に被処理液中の懸濁物質からなるダイナミックろ過層42を形成するダイナミックろ過層形成工程が実行された後に固液分離工程が実行される。
【0047】
図1(b)には、生物処理槽3で生物処理された被処理液を沈殿槽6に移送して、沈殿槽6に浸漬配置されたダイナミックろ過層が形成された固液分離装置4を介して固液分離して、処理水槽5に膜透過液を移送する固液分離方法が示されている。
【0048】
図1(c)にも、沈殿槽6に浸漬配置されたダイナミックろ過層が形成された固液分離装置4を介して固液分離して、処理水槽5にろ液を移送する固液分離方法が示されている。沈殿槽6には汚泥を中心部に掻き寄せる掻き寄せ機6aが設置され、固液分離装置4が沈殿槽6の周部に浸漬配置されている。
【0049】
何れも固液分離装置4に接続された集水管4aの下流側に接続された吸水ポンプ10による吸引力を利用してダイナミックろ過層42でろ過するように構成されている。そして、上述した逆洗工程、入替工程と、凝集剤添加工程が実行されることにより、ダイナミックろ過層42のろ過性能が維持されるように構成されている。
【0050】
図2(a),(b),(c)には、
図1(a),(b),(c)と同様の固液分離方法が示されている。
図1(a),(b),(c)と異なるのは、ダイナミックろ過層42が形成された固液分離装置4と処理水槽5との水頭差によりダイナミック膜ろ過されるように構成され、吸水ポンプ10を備えていない点にあり、そのため集水管4aに固液分離工程を実行または停止するバルブVが設置されている。
【0051】
上述した実施形態では、合成樹脂の不織布等で構成される支持体41を備えた平板状のろ過エレメント40からなる固液分離装置4について説明したが、支持体41は、金属製のメッシュ網、セラミック焼結体や合成樹脂等でなる多孔質体、合成樹脂等の環状ディスク片の積層体等でもよく、ろ過エレメント40の形状も、中空糸状、管状、柱状等でもよい。
【0052】
上述した実施形態では、入替工程が行われた後に、凝集剤添加工程が行われているが、槽内の被処理液は常に少なからず流動しており、逆洗工程後に入替工程を省いても十分な時間を取れば、支持体近傍の逆洗水を被処理液と入れ替えることが可能である。
【0053】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1:原水槽
3:生物処理槽
4:膜分離装置(固液分離装置)
4a:集水管
6:沈殿槽
5:処理水槽
10:ポンプ
40:ろ過エレメント
41:支持体
42:ダイナミックろ過層
43:ノズル
44:細孔
H:開口
P:吸水ポンプ