(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.半導体装置の製造方法
2.実施例
【0013】
<1.半導体装置の製造方法>
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、熱硬化性接着剤を介して、貫通電極と一方の面に形成されたはんだ付き電極とを有する半導体チップを複数積層配置させる配置工程と、熱硬化性接着剤と半導体チップとが複数積層配置された半導体チップ群を300℃〜400℃の温度の熱圧着ツールにて押圧し、熱硬化性接着剤を硬化させる硬化工程とを有するものである。
【0014】
また、熱硬化性接着剤は、示差走査熱量計を用いた小沢法により算出された5秒間に200℃まで温度を上げたときの反応率が40%以上60%以下である。これにより、はんだ溶融前に、バンプをある程度固定させることができ、実装ズレを抑制することができる。
【0015】
また、熱硬化性接着剤は、示差走査熱量計を用いた小沢法により算出された5秒間に250℃まで温度を上げたときの反応率が75%以上85%以下である。これにより、はんだ溶融後のはんだの良好な流動性及び濡れ性が得られ、良好な接合性を得ることができる。
【0016】
温度を上げる前の初期温度は、はんだ付き電極のはんだの溶融温度未満、且つ熱硬化性接着剤の最低溶融粘度到達温度と略同一であることが好ましく、具体的には50℃〜150℃であることが好ましく、60℃〜100℃であることがより好ましい。また、はんだ付き電極のはんだの融点は、220℃〜240℃であることが好ましい。
【0017】
このような半導体装置の製造方法によれば、積層配置された半導体チップ群を、例えば10秒間、一括圧着することにより、良好なはんだ接合性を実現することができるとともに、より高信頼性の半導体積層パッケージを得ることができる。
【0018】
以上を換言すれば、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法に使用される熱硬化性接着剤は、所定の昇温速度にてはんだの融点より30℃低い温度まで上げたときの反応率が40%以上60%以下であり、所定の昇温速度にてはんだの融点より20℃高い温度まで上げたときの反応率が75%以上85%以下である。このようにはんだの溶融前及び溶融後の熱硬化性接着剤の反応率を所定範囲とすることにより、はんだ溶融前に、バンプをある程度固定させて実装ズレを抑制するとともに、はんだ溶融後のはんだの良好な流動性及び濡れ性により、良好な接合性を得ることができる。
【0019】
また、積層配置された半導体チップ群を300℃〜400℃の温度の熱圧着ツールにて押圧した際、最上層の熱硬化性接着剤の温度と最下層の熱硬化性接着剤の温度との差は、40℃以上、好ましくは40℃以上60℃以下、より好ましくは40℃以上80℃以下、さらに好ましくは40℃以上100℃以下である。多くの半導体チップを積層配置させるほど、最上層の熱硬化性接着剤の温度と最下層の熱硬化性接着剤の温度との差は大きくなる。
【0020】
また、前述の配置工程において、熱硬化性接着剤を介して、インターポーザ上に半導体チップを複数積層配置させ、硬化工程において、インターポーザを含む半導体チップ群を熱圧着ツールにて押圧し、熱硬化性接着剤を硬化させてもよい。
【0021】
また、熱硬化性接着剤として、フィルム状の熱硬化性接着フィルムを用い、配置工程において、熱硬化性接着フィルムがはんだ付き電極の形成面に貼り合わされた半導体チップを複数積層配置させてもよい。
【0022】
また、配置工程において、同じ熱硬化性接着剤を使用して半導体チップを複数積層配置させてもよい。これにより、例えば、1段目用、2段目用といった熱硬化性接着剤の管理を行わなくてもよい。
【0023】
また、熱硬化性接着剤は、アクリル硬化系とエポキシ硬化系とを含有し、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比が、70:30〜30:70であることが好ましい。速硬化のアクリル硬化系と、遅硬化のエポキシ硬化系とを配合することにより、はんだの溶融前及び溶融後の熱硬化性接着剤の反応率を所定範囲とすることができる。
【0024】
[具体例]
以下、半導体チップを4段積層実装させる具体例について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、搭載前の複数の半導体チップを模式的に示す断面図であり、
図2は、搭載時の半導体チップ群を模式的に示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、具体例として示す配置工程において、インターポーザ10上に、中間層の第1〜第3の半導体チップ11〜13と、最上層の第4の半導体チップ14とを、第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24を介して積層配置させる。
【0026】
ステージ1は、インターポーザ10を保持する機能を有するとともに、インターポーザ10を含む積層体を加熱する機能を有する。ステージ1の温度は、はんだ付き電極aのはんだcの溶融温度未満、且つの最低溶融粘度到達温度と略同一であることが好ましく、具体的には50℃〜150℃であることが好ましく、60℃〜100℃であることがより好ましい。
【0027】
インターポーザ10は、半導体チップを機械的に支持する機能と、半導体チップ上の端子を再配線してパッケージの端子(例えば、プリント基板実装用のはんだボール)に電気的に接続する機能とを有する。
【0028】
中間層の第1〜第3の半導体チップ11〜13は、シリコン貫通電極(TSV:through silicon via)と、一方の面に形成されたはんだ付き電極aと、他方の面に形成された電極bとを有する。シリコン貫通電極は、半導体チップの内部を垂直に貫通する電極であり、上下のチップ同士の接続を行う。はんだ付き電極aは、例えばCuピラー頂上にはんだをメッキしたものである。はんだ付き電極aのはんだcは、所謂Pbフリーはんだであり、はんだcとしては、例えば、Sn/Ag/Cuはんだ(融点:220℃〜240℃)、Sn/Agはんだ(融点:220℃)などが挙げられる。電極bは、他の半導体チップのはんだ付き電極と接続されるものであり、電極bとしては、例えばCuピラーなどが挙げられる。
【0029】
最上層の第4の半導体チップ14は、一方の面に形成されたはんだ付き電極aを有する。はんだ付き電極aは、中間層の第1〜第3の半導体チップ11〜13と同様、例えばCuピラー頂上にはんだをメッキしたものである。
【0030】
また、第1〜第4の半導体チップ11〜14のはんだ付き電極aが形成された一方の面には、それぞれ熱硬化性接着剤である第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24が予め貼り合わされている。これにより、半導体チップ11〜14を積層配置する工程数を削減することができる。
【0031】
これらの第1〜第4の半導体チップ11〜14は、第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24に流動性は生じるが、本硬化は生じない程度の所定の温度、圧力、時間の条件で積層配置される。
【0032】
次に、
図2に示すように、具体例として示す硬化工程において、第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24と第1〜第4の半導体チップ11〜14とが複数積層配置された半導体チップ群を300℃〜400℃の温度の熱圧着ツールにて押圧し、第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24を硬化させる。
【0033】
半導体チップ群を熱圧着ツールにて押圧した際、最上層の第4のアンダーフィルフィルム24の温度と最下層の第1のアンダーフィルフィルム21の温度との差は40℃以上であることが好ましい。多くの半導体チップを積層配置させるほど、最上層の第4のアンダーフィルフィルム24の温度と最下層の第1のアンダーフィルフィルム21の温度との差は大きくなる。
【0034】
この硬化工程では、例えば第1の温度から第2の温度まで所定の昇温速度で昇温させるボンディング条件で、はんだ付き電極のはんだを溶融させて金属結合を形成させるとともに、120℃〜200℃の温度条件でキュアし、第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24を完全硬化させる。
【0035】
第1の温度は、第1〜第4のアンダーフィルフィルム21〜24の最低溶融粘度到達温度と略同一であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることが好ましい。これによりアンダーフィル材の硬化挙動をボンディング条件に合致させることができ、ボイドの発生を抑制することができる。
【0036】
また、昇温速度は、50℃/sec以上150℃/sec以下であることが好ましい。また、第2の温度は、はんだの種類にもよるが、200℃以上280℃以下であることが好ましく、より好ましくは220℃以上260℃以下である。これにより、はんだ付き電極aと電極bとをはんだcにより結合させるとともに、アンダーフィルフィルム21〜24を完全硬化させ、インターポーザ10と、第1〜第4の半導体チップ11〜14とを電気的、機械的に接続させることができる。
【0037】
このような半導体装置の製造方法によれば、インターポーザ10と、中間層の第1〜第3の半導体チップ11〜13と、最上層の第4の半導体チップ14とを一括圧着した際の実装ズレを抑制し、良好な接合性を得ることができる。
【0038】
また、従来のように半導体チップを1段ずつ圧着実装する方法では、例えば1段圧着5sec×4段=20secの実装タクトであったのに対し、本法では、例えば一括圧着10secの実装タクトとすることができる。また、本法では、例えば10secの実装とすることにより、従来よりも良好なはんだ付け性を得ることができる。
【0039】
なお、具体例では、アンダーフィルフィルム21〜24を介して、インターポーザ10上に第1〜第4の半導体チップ11〜14を複数積層配置させ、一括圧着させたが、インターポーザ10と第1の半導体チップ11とを圧着させた後、第1の半導体チップ11上に、第2〜第4の半導体チップ12〜14を複数積層配置させ、一括圧着させるようにしてもよい。また、例えば4段の半導体チップを複数積層配置させて一括圧着させた後、さらに、4段の半導体チップを複数積層配置させて一括圧着させ、8段の半導体チップの積層体を得るようにしてもよい。
【0040】
[アンダーフィルフィルム]
次に、前述した具体例として示す半導体装置の製造方法に用いられるアンダーフィルフィルムについて説明する。アンダーフィルフィルムは、熱硬化性接着剤であるアンダーフィル材をフィルム状に成形したものである。
【0041】
アンダーフィル材は、アクリル硬化系とエポキシ硬化系とを含有する。また、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比は、70:30〜30:70であることが好ましい。速硬化のアクリル硬化系と、遅硬化のエポキシ硬化系とを配合することにより、はんだの溶融前及び溶融後の熱硬化性接着剤の反応率を所定範囲とすることができる。
【0042】
アクリル硬化系は、(メタ)アクリレートと、有機過酸化物とを含有することが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル(アクリレート)とメタクリル酸エステル(メタクリレート)とを包含する意味である。
【0043】
(メタ)アクリレートとしては、単官能(メタ)アクリレート、2官能以上の(メタ)アクリレートを使用可能である。単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、フルオレン型(メタ)アクリレート、ビスフェノールF―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、フルオレン型(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0044】
有機過酸化物としては、例えば、パーオキシケタール、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。これらの有機過酸化物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、パーオキシケタールが好適に用いられる。
【0045】
エポキシ硬化系は、エポキシ化合物と、酸無水物とを含有することが好ましい。エポキシ化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、高接着性、耐熱性の点から、多官能ノボラック型エポキシ化合物を用いることが好ましい。
【0046】
酸無水物は、はんだ表面の酸化膜を除去するフラックス機能を有するため、優れた接続信頼性を得ることができる。酸無水物としては、例えば、テトラプロペニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸などの脂肪族酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物などを挙げることができる。これらのエポキシ硬化剤は、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸無水物の中でも、脂環式酸無水物を用いることが好ましい。
【0047】
また、アンダーフィル材は、膜形成樹脂を含有することが好ましい。膜形成樹脂は、重量平均分子量が10×10
4以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10×10
4〜100×10
4の重量平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、アクリルゴムポリマー、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の種々の樹脂を用いることができる。これらの膜形成樹脂は、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、膜強度及び接着性の観点から、アクリルゴムポリマーが好適に用いられる。
【0048】
また、アンダーフィル材は、硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾ−ル類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7塩(DBU塩)、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。
【0049】
また、アンダーフィル材は、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーを含有することにより、圧着時における樹脂層の流動性を調整することができる。無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0050】
また、その他の添加組成物として、必要に応じて、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などのシランカップリング剤を添加してもよい。
【0051】
このような構成からなるアンダーフィル材は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)を用いた小沢法により算出された5秒間に200℃まで温度を上げたときの反応率が40%以上60%以下であり、5秒間に250℃まで温度を上げたときの反応率が75%以上85%以下である。これにより、はんだ溶融前に、バンプをある程度固定させることができ、実装ズレを抑制するとともに、はんだ溶融後のはんだの良好な流動性及び濡れ性が得られるため、良好な接合性を得ることができる。
【0052】
DSC−小沢法による反応率の算出方法は、次の通りである。先ず、サンプルについての等速昇温データよりピーク全体の熱量、ピーク温度及びピークトップまでの変化率を算出する。次に、昇温スピードの常用対数値を縦軸にとり、ピーク温度の逆数値を横軸にとることにより小沢プロットを作成し、サンプルについての活性化エネルギー、頻度因子、及び反応次数を求める。そして、活性エネルギー、頻度因子及び反応次数より反応予測図を作成することにより、所定の昇温速度にて所定温度まで上げたときの反応率を算出することができる。
【0053】
以上を換言すれば、アンダーフィル材は、所定の昇温速度にてはんだの融点より30℃低い温度まで上げたときの反応率が40%以上60%以下であり、所定の昇温速度にてはんだの融点より20℃高い温度まで上げたときの反応率が75%以上85%以下である。このようにはんだの溶融前及び溶融後の熱硬化性接着剤の反応率を所定範囲とすることにより、はんだ溶融前に、バンプをある程度固定させて実装ズレを抑制するとともに、はんだ溶融後のはんだの良好な流動性及び濡れ性により、良好な接合性を得ることができる。
【実施例】
【0054】
<2.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、アンダーフィルフィルムを作製し、DSC−小沢法により所定の昇温速度で所定温度まで温度を上げたときの反応率を算出した。そして、アンダーフィルフィルムを用いて3次元実装体を作製し、3次元実装体の実装ズレ、及び接合性について評価した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
アンダーフィルフィルムの反応率の算出、3次元実装体の作製、実装ズレの評価、及び接合性の評価は、次のように行った。
【0056】
[所定温度における反応率の算出]
所定温度における反応率の算出は、以下の手順により算出した。
(1)示差走査熱量計(DSC)を使用して、同装置に添付されているDSC小沢法ソフトウエアのマニュアルの記述に従い、各試料についての等速昇温データ(昇温スピード5℃/min,10℃/min,20℃/min)よりピーク全体の熱量、ピーク温度、及びピークトップまでの変化率を求めた。変化率は、ピーク温度までの熱量をピーク全体の熱量で除した値である。
(2)昇温スピードの常用対数値を縦軸にとり、ピーク温度の逆数値を横軸にとることにより小沢プロットを作成後、各試料についての活性化エネルギー、頻度因子、反応次数を求めた。
(3)(2)で求めた活性エネルギー、頻度因子及び反応次数より反応予測図を作成し、この図より、5秒間に80℃から200℃まで温度を上げたときの反応率、及び5秒間に80℃から250℃まで温度を上げたときの反応率を算出した。
【0057】
[3次元実装体の作製]
図1及び
図2に示すように、アンダーフィルフィルムを用いて、インターポーザ上に積層配置された中間層の3個の半導体チップと最上層の半導体チップとを含む半導体チップ群を熱圧着ツールにて押圧し、シリコン貫通電極(TSV:through silicon via)にて接続させ、3次元実装体を作製した。インターポーザ、中間層の半導体チップ、及び最上層の半導体チップは、次のものを使用した。
インターポーザ(Si)
大きさ:8×8mm□、厚み:200μm
バンプ仕様:Cuピラー(7μm)、Ni/Auメッキ、φ20μm、バンプ数1000pin
中間層の半導体チップ
大きさ:6×6mm□、厚み:50μm
上側バンプ仕様:Cuピラー(7μm)、φ20μm、バンプ数1000pin
下側バンプ仕様:Cuピラー(7μm)+Sn/Agはんだ(5μm)、φ20μm、バンプ数1000pin、
アンダーフィル厚み:20μm
最上層の半導体チップ
大きさ:6×6mm□、厚み:50μm
バンプ仕様:Cuピラー(7μm)+Sn/Agはんだ(5μm)、φ20μm、バンプ数1000pin
アンダーフィル厚み:20μm
【0058】
フリップチップボンダーを用いて、80℃のステージに保持されたインターポーザ上に、アンダーフィルフィルムが貼り合わされた中間層の半導体チップを3段、及びアンダーフィルフィルムが貼り合わされた最上層の半導体チップを1段、順次積層配置した。
【0059】
そして、実装装置(FCB3、Panasonic(株))を用いて、350℃−10秒の条件にて押圧した。さらに、170℃−2時間の条件でキュアし、3次元実装体を作製した。
【0060】
図3は、インターポーザ上に積層配置された中間層の3個の半導体チップと最上層の半導体チップとを含む半導体チップ群を350℃の温度の熱圧着ツールにて30秒間押圧したときの最上層のアンダーフィルフィルム(ポイントA)の温度、及び最下層のアンダーフィルフィルム(ポイントB)の温度を示すグラフである。なお、ポイントA及びポイントBは、
図1及び
図2において、それぞれ第4のアンダーフィルフィルム24及び第1のアンダーフィルム21に対応する。また、アンダーフィルフィルムの温度は、熱電対により実温を測定したものである。
【0061】
最上層の半導体チップと中間層の半導体チップとの間にあるポイントAのアンダーフィルフィルムの温度は、5秒において約250℃であった。また、インターポーザと中間層の半導体チップとの間にあるポイントBのアンダーフィルフィルムの温度は、5秒において約200℃であった。すなわち、ポイントAとポイントBのアンダーフィルムの温度差は約50℃であり、この温度差は、30秒でもほとんど変わらなかった。
【0062】
[実装ズレの評価]
バンプ部分をX線観察し、実装後のバンプのズレが10μm以上あった場合の評価を「×」とし、実装後のバンプのズレが10μm未満である場合の評価を「○」とした。
【0063】
[接合性の評価]
デジタルマルチメーター(商品名:デジタルマルチメーター7561、横河電機社製)を用いて、実装後のバンプのズレが10μm未満である3次元実装体の導通抵抗(Ω)を測定した。導通抵抗が70Ω±20%未満の場合の評価を「○」、それ以外の場合の評価を「×」とした。
【0064】
<比較例1>
表1に示すように、アクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、2官能フルオレン型アクリレート(品名:オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル(株))を98質量部、有機過酸化物(品名:パーヘキサV、日油(株))2質量部、DBU系テトラフェニルボレート塩(品名:U−CAT−5002、サンアプロ(株))を1質量部、及びフィラー(品名:アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を15質量部配合し、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比が、100:0であるアンダーフィルフィルムの樹脂組成物を調製した。DSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率は70%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率は95%であった。
【0065】
これを、剥離処理されたPET(Polyethylene terephthalate)にバーコーターを用いて塗布し、80℃のオーブンで3分間乾燥させ、厚み20μmのアンダーフィルフィルムを作製した(カバー剥離PET(25μm)/アンダーフィルフィルム(20μm)/ベース剥離PET(50μm))。
【0066】
比較例1のアンダーフィルフィルムを用いて3次元実装体を作製したところ、実装ズレの評価は○、及び接合性の評価は×であった。
【0067】
<実施例1>
表1に示すように、アクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、2官能フルオレン型アクリレート(品名:オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル(株))を68質量部、有機過酸化物(品名:パーヘキサV、日油(株))2質量部、ノボラック型エポキシ化合物(4官能)(品名:JER1031S、三菱化学(株))20質量部、脂環式酸無水物(品名:JER1031S、三菱化学(株))10質量部、DBU系テトラフェニルボレート塩(品名:U−CAT−5002、サンアプロ(株))を1質量部、及びフィラー(品名:アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を15質量部配合し、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比が、70:30であるアンダーフィルフィルムの樹脂組成物を調製した。DSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率は60%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率は85%であった。これ以外は、比較例1と同様にして、アンダーフィルフィルムを作製した。実施例1のアンダーフィルフィルムを用いて3次元実装体を作製したところ、実装ズレの評価は○、及び接合性の評価は○であった。
【0068】
<実施例2>
表1に示すように、アクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、2官能フルオレン型アクリレート(品名:オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル(株))を49質量部、有機過酸化物(品名:パーヘキサV、日油(株))1質量部、ノボラック型エポキシ化合物(4官能)(品名:JER1031S、三菱化学(株))30質量部、脂環式酸無水物(品名:JER1031S、三菱化学(株))20質量部、DBU系テトラフェニルボレート塩(品名:U−CAT−5002、サンアプロ(株))を1質量部、及びフィラー(品名:アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を15質量部配合し、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比が、50:50であるアンダーフィルフィルムの樹脂組成物を調製した。DSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率は50%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率は80%であった。これ以外は、比較例1と同様にして、アンダーフィルフィルムを作製した。実施例2のアンダーフィルフィルムを用いて3次元実装体を作製したところ、実装ズレの評価は○、及び接合性の評価は○であった。
【0069】
<実施例3>
表1に示すように、アクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、2官能フルオレン型アクリレート(品名:オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル(株))を29質量部、有機過酸化物(品名:パーヘキサV、日油(株))1質量部、ノボラック型エポキシ化合物(4官能)(品名:JER1031S、三菱化学(株))40質量部、脂環式酸無水物(品名:JER1031S、三菱化学(株))30質量部、DBU系テトラフェニルボレート塩(品名:U−CAT−5002、サンアプロ(株))を1質量部、及びフィラー(品名:アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を15質量部配合し、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比が、30:70であるアンダーフィルフィルムの樹脂組成物を調製した。DSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率は40%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率は75%であった。これ以外は、比較例1と同様にして、アンダーフィルフィルムを作製した。実施例3のアンダーフィルフィルムを用いて3次元実装体を作製したところ、実装ズレの評価は○、及び接合性の評価は○であった。
【0070】
<比較例2>
表1に示すように、アクリルゴムポリマー(品名:テイサンレジンSG−P3、ナガセケムテックス社製)を40質量部、ノボラック型エポキシ化合物(4官能)(品名:JER1031S、三菱化学(株))60質量部、脂環式酸無水物(品名:MH−700、新日本理化(株))40質量部、DBU系テトラフェニルボレート塩(品名:U−CAT−5002、サンアプロ(株))を1質量部、及びフィラー(品名:アエロジルRY200、日本アエロジル(株))を15質量部配合し、アクリル硬化系とエポキシ硬化系との配合比が、0:100であるアンダーフィルフィルムの樹脂組成物を調製した。DSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率は30%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率は70%であった。これ以外は、比較例1と同様にして、アンダーフィルフィルムを作製した。比較例2のアンダーフィルフィルムを用いて3次元実装体を作製したところ、実装ズレの評価は×、及び接合性の評価は○であった。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例1のようにDSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率が70%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率が95%であるアンダーフィルフィルムを用いた場合、良好な接合性が得られなかった。また、比較例2のようにDSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率が30%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率が70%である場合、実装ズレが生じた。
【0073】
一方、実施例1〜3のように、DSC−小沢法により算出された5秒間で200℃まで温度をあげたときの反応率が40%〜60%であり、5秒間で250℃まで温度をあげたときの反応率が75%〜85%であるアンダーフィルフィルムを用いた場合、実装ズレを抑制し、良好な接合性が得られた。