特許第6483501号(P6483501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483501
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20190304BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20190304BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20190304BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K13/02
   C08K3/36
   C08K5/10
   C08K5/548
   C08K5/098
   B60C1/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-72849(P2015-72849)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191008(P2016-191008A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡一郎
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−251448(JP,A)
【文献】 特開2007−217465(JP,A)
【文献】 特開2005−162778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部と、シリカ10〜150質量部と、前記シリカ100質量部に対して1〜20質量部のメルカプトシランカップリング剤と、モノメタクリル酸亜鉛0.1〜10質量部と、(メタ)アクリル酸エステル0.1〜10質量部と、を含有するタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルである、請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリル酸エステルが、ビスフェノールF EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びジグリセリンEO変性(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも一種である、請求項2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いてなる空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ用ゴム組成物においては、転がり抵抗性能を改善するために、充填剤としてシリカを配合する場合があり、その場合、シリカの分散性を向上するために、シランカップリング剤が併用されている。シランカップリング剤としては、スルフィドシランが一般的であるが、転がり抵抗性能の面で有利であるメルカプトシランを用いることも提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、タイヤ用ゴム組成物にメルカプトシランカップリング剤を配合すると、転がり抵抗性能には優れるものの、耐オゾン性と硬度が低下する。
【0003】
ところで、特許文献2には、タイヤ用ゴム組成物において、転がり抵抗性能と操縦安定性とチッピングを両立させるために、シリカとともにメタクリル酸亜鉛を所定の順序で混合する方法が開示されている。しかしながら、メルカプトシランカップリング剤を配合した場合における上記特有の問題を解決するために、モノメタクリル酸亜鉛とともに(メタ)アクリル酸エステルを併用することは開示されていない。タイヤ用ゴム組成物に(メタ)アクリル酸エステルを配合することについては、特許文献3に開示されているが、この文献では、高温加硫時のリバージョンを抑制するために配合されており、上記特有の問題の解決を示唆するものではない。
【0004】
なお、特許文献4には、ジエン系ゴムに、シリカ及びメルカプトシランカップリング剤ともに、モノメタクリル酸亜鉛やステアリルメタクリレートなどの加工助剤を配合することが開示されている。しかしながら、この文献は、防振ゴム組成物に関するものであってタイヤ用ゴム組成物に関するものではなく、また、上記加工助剤は防振ゴムの耐熱性向上のために配合されており、該加工助剤により耐オゾン性と硬度が改善されることは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−270247号公報
【特許文献2】特開2010−095670号公報
【特許文献3】特開2014−028887号公報
【特許文献4】特開2011−195807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メルカプトシランカップリング剤による優れた転がり抵抗性能を発揮しつつ、耐オゾン性と硬度の低下を抑えることができるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部と、シリカ10〜150質量部と、前記シリカ100質量部に対して1〜20質量部のメルカプトシランカップリング剤と、モノメタクリル酸亜鉛0.1〜10質量部と、(メタ)アクリル酸エステル0.1〜10質量部と、を含有するものである。本発明に係る空気入りタイヤは、該ゴム組成物を用いてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリカ配合のタイヤ用ゴム組成物において、メルカプトシランカップリング剤とともに、モノメタクリル酸亜鉛と(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせて配合したことにより、メルカプトシランカップリング剤による優れた転がり抵抗性能を発揮しつつ、耐オゾン性と硬度の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、(A)ジエン系ゴムと、(B)シリカと、(C)メルカプトシランカップリング剤と、(D)モノメタクリル酸亜鉛と、(E)(メタ)アクリル酸エステルと、を含有するものである。
【0011】
(A)ジエン系ゴム
ゴム成分としてのジエン系ゴムについては、特に限定されない。使用可能なジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体などが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、いずれか1種単独で用いてもよく、あるいはまた2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、NR、SBR、及びBRよりなる群から選択された少なくとも1種である。
【0012】
ジエン系ゴムとしては、また、上記で列挙したものをヘテロ原子を含む官能基で変性してなる変性ジエン系ゴムを用いてもよい。変性ジエン系ゴムとしては、変性SBR及び/又は変性BRが好ましく用いられ、特には変性SBRが好適である。その官能基は、分子末端に導入されてもよく、あるいはまた分子鎖中に導入されてもよい。一実施形態において、ゴム成分としてのジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量部中、変性SBRを30質量部以上含むものでもよく、変性SBRを50〜90質量部と他のジエン系ゴム(例えば、BR及び/又はNR)を50〜10質量部含むものでもよい。
【0013】
変性ジエン系ゴムの官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基、スズ含有基、及びハロゲンなどが挙げられる。これらはそれぞれ1種のみ導入されてもよく、あるいはまた2種以上組み合わせて導入されてもよい。これらの官能基は、シリカ表面のシラノール基(Si−OH)と相互作用があるものであり、すなわち、シラノール基との間で化学結合し得る反応性又は水素結合などの親和性を持つ。そのため、シリカの分散性向上に寄与する。ここで、アミノ基は、1級、2級又は3級アミノ基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。アルコキシシリル基は、シリル基の3つの水素のうち少なくとも1つがアルコキシ基で置換されたものをいい、これには、トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基が含まれる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。スズ含有基は、スズ化合物を用いて変性することにより導入することができ、スズ化合物としては、四塩化スズ、メチル三塩化スズ、ジブチルジクロロスズ、トリブチルクロロスズ等のハロゲン化スズ化合物、テトラアリルスズ、ジエチルジアリルスズ等のアリルスズ化合物等が挙げられる。これらの官能基の中でも、シリカのシラノール基との相互作用を高める点から、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基及びアルコキシシリル基などの、酸素原子を含む官能基が好ましい。
【0014】
(B)シリカ
充填剤としてのシリカとしては、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカのコロイダル特性は特に限定しないが、BET法による窒素吸着比表面積(BET)が90〜250m2/gであるものが好ましく用いられ、より好ましくは150〜230m2/gである。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。
【0015】
シリカの配合量は、特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対して、10〜150質量部でもよく、20〜120質量部でもよく、30〜100質量部でもよい。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物において、充填剤としては、シリカ単独でもよく、シリカとカーボンブラックを併用してもよい。カーボンブラックを併用する場合、その配合量は特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜50質量部でもよく、10〜40質量部でもよい。また、シリカとカーボンブラックの合計量で、ジエン系ゴム100質量部に対して、20〜180質量部でもよく、30〜130質量部もよい。
【0017】
(C)メルカプトシランカップリング剤
メルカプトシランカップリング剤としては、シリカ表面の水酸基と反応し得るアルコキシ基と、ジエン系ゴムと反応し得る官能基としてメルカプト基(−SH)を有するカップリング剤であれば特に限定されない。具体的には、下記一般式(1)で表されるものが好ましく用いられる。
【0018】
(R1m(R2nSi−R3−SH …(1)
式中、R1は、炭素数1〜3のアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。R2は、炭素数1〜40のアルキル基、アルケニル基又はアルキルポリエーテル基であり、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルケニル基、又は、−O−(R4−O)k−R5(ここで、R4は、炭素数1〜4、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基であり、R5は、炭素数1〜16、好ましくは炭素数10〜16のアルキル基であり、k=1〜20、好ましくは2〜10である。)で表されるアルキルポリエーテル基である。R3は、炭素数1〜16のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。m=1〜3、m+n=3である。R2がアルキルポリエーテル基の場合、mが1又は2であることが好ましい。なお、R1,R2は、それぞれ1分子中に複数有する場合、それらは同一でも異なってもよい。
【0019】
一般式(1)で表されるメルカプトシランカップリング剤の具体例としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、及びエボニック・デグサ社製「VP Si363」(R1:OC25、R2:O(C24O)k−C1327、R3:−(CH23−、m=平均1、n=平均2、k=平均5)などが好ましいものとして挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
メルカプトシランカップリング剤としては、一般式(1)で表されるものには限定されない。一般式(1)以外の、シリカ表面の水酸基と反応し得るアルコキシ基と、ジエン系ゴムと反応し得る官能基としてメルカプト基(−SH)を有するシランカップリング剤の具体例としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル製「NXT−Z」が挙げられる。
【0021】
メルカプトシランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカの分散性改良による転がり抵抗性能の改善効果を高めるという点より、シリカ100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量部であり、5〜13質量部でもよい。
【0022】
(D)モノメタクリル酸亜鉛
モノメタクリル酸亜鉛としては、公知のものを用いることができ、例えばCRAY VALLEY社から「SR709」として市販されているものが挙げられる。また、塩基過剰でメタクリル酸と酸化亜鉛とを反応させて得られたものを用いることもできる。メルカプトシランカップリング剤とともにモノメタクリル酸亜鉛を配合することにより、メルカプトシランカップリング剤による優れた転がり抵抗性能を維持しつつ、硬度の低下を改善することができる。
【0023】
モノメタクリル酸亜鉛の配合量は、特に限定されないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜8質量部であり、0.5〜5質量部でもよい。
【0024】
(E)(メタ)アクリル酸エステル
本実施形態では、メルカプトシランカップリング剤とともに(メタ)アクリル酸エステル(モノマー)を配合する。(メタ)アクリル酸エステルを配合することにより、メルカプトシランカップリング剤による優れた転がり抵抗性能を維持しつつ、主として耐オゾン性の低下を改善することができる。また、モノメタクリル酸亜鉛と(メタ)アクリル酸エステルとを併用することにより、転がり抵抗性能を改善しつつ、耐オゾン性と硬度を改善する効果を高めることができる。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリル酸エステルでもよく、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステルでもよい。好ましくは、多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いることであり、その豊富な官能基および二重結合数により耐オゾン性を向上することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0026】
単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
多官能(メタ)アクリル酸エステルは、水酸基を2つ以上含む多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られるエステル化合物であり、多価アルコールの種類は特に限定されない。分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数は2〜6個であることが好ましい。多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、ビスフェノールF EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジグリセリンEO変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。ここで、EOはエチレンオキサイドであり、POはプロピレンオキサイドである。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステルの配合量は、特に限定されないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜8質量部であり、0.3〜5質量部でもよい。
【0029】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記の成分の他に、オイル、亜鉛華、老化防止剤、ステアリン酸、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量はジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0030】
実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、シリカ、メルカプトシランカップリング剤、モノメタクリル酸亜鉛及び(メタ)アクリル酸エステルとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0031】
このようにして得られたタイヤ用ゴム組成物は、乗用車用、トラックやバスなどの重荷重用など、各種用途及びサイズの空気入りタイヤにおいて、トレッド部やサイドウォール部などの各部位に適用することができる。すなわち、本実施形態に係るゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。好ましくは、タイヤのトレッドゴムに用いることであり、一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物からなるトレッドを備えたものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。表2中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0034】
・SBR:アミノ基及びアルコキシ基末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR(株)製「HPR350」
・BR:ブタジエンゴム、宇部興産(株)製「BR150B」(Tg:−104℃)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET:205m2/g)
・オイル:JX日鉱日石エネルギー製「プロセスNC140」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6PPD)
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS20」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・スルフィドシランカップリング剤:エボニック・デグサ社製「Si75」
・メルカプトシランカップリング剤1:エボニック・デグサ社製「VP Si363」
・メルカプトシランカップリング剤2:東京化成(株)製「3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン」
・モノメタクリル酸亜鉛:CRAY VALLEY社製「SR709」
・ジメタクリル酸亜鉛:三新化学工業(株)製「サンエステルSK−30」
・単官能アクリル酸エステル:東京化成(株)製「2−エチルヘキシルアクリレート」
・多官能アクリル酸エステル1:ペンタエリスリトールトリアクリレート、東洋ケミカルズ(株)製「Miramer M340」
・多官能アクリル酸エステル2:トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業(株)製「A−TMPT」
・多官能アクリル酸エステル3:トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業(株)製「APG−200」
・多官能メタクリル酸エステル:トリメチロールプロパントリメタクリレート、新中村化学工業(株)製「TMPT」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
【0035】
得られた各ゴム組成物について、160℃で30分間加硫した所定形状の試験片を用いて、転がり抵抗性能、硬度、及び耐オゾン性を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0036】
・転がり抵抗性能:JIS K6394に準じて、東洋精機(株)製粘弾性試験機を用いて、温度60℃、周波数10Hz、初期歪み10%、動歪み1%の条件で損失係数tanδを測定し、比較例2の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低発熱性能の指標として一般に用いられているものであり、該指数が小さいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、即ち低発熱性能に優れ、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0037】
・硬度:JIS K6253に準拠したタイプAデュロメータを使用し、23℃で測定し、比較例2の値を100とした指数で示した。該指数が大きいほど硬度が大きいことを示す。
【0038】
・耐オゾン性:JIS K6259に準拠し、加硫ゴム片(長さ60mm×幅10mm×厚み2.0mm)を20%伸張させ、オゾン濃度50pphmにて16時間放置させる静的オゾン劣化試験を行った(雰囲気温度40℃)。試験後のクラックの発生状態を目視により観察し、下記表1の基準で耐オゾン性を評価し、亀裂の数と大きさ及び深さとを組み合わせて表記した。
【0039】
【表1】
【0040】
結果は、下記表2に示す通りである。スルフィドシランカップリング剤を用いた比較例1に対し、メルカプトシランカップリング剤を用いた比較例2,6では、転がり抵抗性能は改善されたものの、硬度が低下し、耐オゾン性も悪化した。比較例3では、モノメタクリル酸亜鉛を配合したことで、硬度は改善されたが、耐オゾン性に劣っていた。比較例4,5では、(メタ)アクリル酸エステルを配合したことで、耐オゾン性は改善されたが、硬度の改善効果に劣っていた。これに対し、メルカプトシランカップリング剤とともに、モノメタクリル酸亜鉛と(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせて配合した実施例1〜11であると、転がり抵抗性能を向上しつつ、硬度と耐オゾン性が改善されていた。特に、(メタ)アクリル酸エステルとして、多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いた実施例1〜3及び5〜11であると、耐オゾン性の改善効果に優れていた。
【0041】
【表2】