特許第6483544号(P6483544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483544インクジェットヘッドおよび液体噴射記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483544
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20190304BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   B41J2/14 303
   B41J2/16 303
   B41J2/16 401
   B41J2/16 503
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-122239(P2015-122239)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-7117(P2017-7117A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】上月 敦詞
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−44361(JP,A)
【文献】 特開2014−124935(JP,A)
【文献】 特開2005−47261(JP,A)
【文献】 特開2006−231601(JP,A)
【文献】 特開平9−20009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0274686(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔からなるノズル列を有し、透過性のノズルプレートと、
インクが充填されると共に前記ノズル孔に連通する複数のチャネル、および前記複数のチャネルをそれぞれ画成するための壁部を有するアクチュエータプレートと、
前記ノズルプレートの前記アクチュエータプレートが設けられている面とは反対側の吐出面に設けられ、前記ノズルプレートと接合された保護プレートと、
を備え、
前記保護プレートは、前記ノズルプレートよりも剛性の高い材料で、かつ非透過性の材料で前記ノズルプレートの前記吐出面を覆うように形成されていると共に、
前記保護プレートの前記ノズル孔に対応する箇所に、該ノズル孔および該ノズル孔の周囲の前記ノズルプレートを露出させる開口部がそれぞれ形成されており、
前記開口部は、対応する前記ノズル孔に連通する前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部のうち、少なくとも一方の前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記開口部は、対応する前記ノズル孔に連通する前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記開口部は、対応する前記ノズル孔に連通する前記チャネルに隣接する前記チャネルと対向しないように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記保護プレートは、前記開口部とは別に前記ノズルプレートを露出させる窓部を備えており、
前記窓部は、少なくとも1つの前記チャネルと、該チャネルの周囲に形成されている前記壁部の一部と対向するように形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記窓部は、少なくとも1つの前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部のうち、少なくとも一方の前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記窓部は、少なくとも1つの前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記チャネルは、断面四角形状に形成されており、
前記窓部は、前記チャネルの角部と対向するように形成されていることを特徴とする請求項4〜請求項6の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記窓部は、前記ノズル列を中心に両側に形成されていることを特徴とする請求項4〜請求項7の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットヘッドおよび液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射記録装置、例えば各種印刷を行うインクジェットプリンタは、被記録媒体を搬送する搬送装置と、インクジェットヘッドと、を備えている。ここで用いられるインクジェットヘッドは、インクタンクからインク供給管を介してインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェットヘッドに設けられたヘッドチップのノズル孔からインクを被記録媒体に吐出することで記録を行っている。
【0003】
上述したヘッドチップは、複数のノズル孔からなるノズル列を有するノズルプレートと、このノズルプレートに接合され、ノズル孔に連通する複数のチャネルを有するアクチュエータプレートと、を備えている。そして、各チャネルにインクが充填される。また、アクチュエータプレートの複数のチャネルを画成する壁部に、電極が形成されている。この電極に電圧を印加することにより壁部が変形し、チャネル内のインクに圧力変動が生じる。これにより、ノズルプレートのノズル孔を介してインクが吐出される。
【0004】
ここで、ノズルプレートは、ノズル孔を精度よく加工するために樹脂により形成される場合が多い。また、ノズルプレートの吐出面を保護したり、ノズル孔の熱変形を抑制したりするために、金属製の保護プレートを設ける場合がある。保護プレートは、ノズルプレートの吐出面全体を覆うように形成されている。そして、保護プレートのノズル孔に対応する位置に、このノズル孔に連通する貫通孔が形成されている。貫通孔の孔径は、ノズル孔とほぼ同一径に設定されている。
【0005】
このような保護プレート、ノズルプレート、およびアクチュエータプレートの組立手順としては、まず、ノズルプレートに保護プレートを接着剤を用いて接合したり、熱圧着により接合したりする。この後、ノズルプレートにノズル孔を形成することにより、ノズル孔形成時におけるノズルプレートの熱変形を防止できる。さらにこの後、アクチュエータプレートに、ノズルプレートの保護プレートとは反対側の面を接合する。アクチュエータプレートとノズルプレートとの接合には、接着剤が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−284949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アクチュエータプレートにノズルプレートを接合する際、接着剤の中に気泡が残り、接合不良が生じる場合がある。この接合不良により、アクチュエータプレートとノズルプレートとの接合強度が低下してしまう可能性がある。
また、チャネル内のインクが、気泡を介して隣のチャネルに流入してしまう可能性がある。このような場合、隣り合うチャネルにそれぞれ形成されている電極同士が、インクを介して短絡してしまい、アクチュエータプレートが正常に動作しなくなってしまう。
このため、ノズルプレートに保護プレートを接合する際、接合不良の要因となる接着剤の中に気泡が残っていることを発見した場合、気泡を除去する作業が必要になる。
【0008】
ここで、樹脂製のノズルプレートは、薄いシート状のものであるから、接着剤の中に気泡が残っている場合、ノズルプレートを透かして外側から気泡を発見することができる。しかしながら、保護プレートは金属性であるので、この保護プレートでノズルプレートを覆ってしまうと、接着剤の中に気泡が残っているか否かを保護プレートの上から発見することができないという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、保護プレートを用いつつ、アクチュエータプレートにノズルプレートを接合する際の気泡を発見でき、接合不良を防止できるインクジェットヘッドおよび液体噴射記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るインクジェットヘッドは、複数のノズル孔からなるノズル列を有し、透過性のノズルプレートと、インクが充填されると共に前記ノズル孔に連通する複数のチャネル、および前記複数のチャネルをそれぞれ画成するための壁部を有するアクチュエータプレートと、前記ノズルプレートの前記アクチュエータプレートが設けられている面とは反対側の吐出面に設けられ、前記ノズルプレートと接合された保護プレートと、を備え、前記保護プレートは、前記ノズルプレートよりも剛性の高い材料で、かつ非透過性の材料で前記ノズルプレートの前記吐出面を覆うように形成されていると共に、前記保護プレートの前記ノズル孔に対応する箇所に、該ノズル孔および該ノズル孔の周囲の前記ノズルプレートを露出させる開口部がそれぞれ形成されており、前記開口部は、対応する前記ノズル孔に連通する前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部のうち、少なくとも一方の前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、アクチュエータプレートとノズルプレートとを接着剤を用いて接合する際、この接着剤の中に気泡が存在するか否かを、保護プレートの開口部を介してノズルプレートの上から確認することができる。このため、アクチュエータプレートとノズルプレートとの接合不良を防止できる。
【0012】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記開口部は、対応する前記ノズル孔に連通する前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
このように、開口部を大きく形成することで気泡の有無を確認しやすくすることができる。より具体的には、1つの開口部で2つの壁部の気泡を有無を確認できるので、確認作業の効率化を図ることができる。
【0014】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記開口部は、対応する前記ノズル孔に連通する前記チャネルに隣接する前記チャネルと対向しないように形成されていることを特徴とする。
【0015】
開口部を大きく形成しすぎると保護プレートの剛性が弱まってしまう。このため、開口部の最大径を制限することにより、保護プレートの剛性を確保できる。
【0016】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記保護プレートは、前記開口部とは別に前記ノズルプレートを露出させる窓部を備えており、前記窓部は、少なくとも1つの前記チャネルと、該チャネルの周囲に形成されている前記壁部の一部と対向するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように、開口部に加えて窓部を形成することにより、気泡の有無を広範囲に渡って確認することができる。このため、アクチュエータプレートとノズルプレートとの接合不良を、より確実に防止できる。
【0018】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記窓部は、少なくとも1つの前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部のうち、少なくとも一方の前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、窓部を利用し、隣接するチャネル間に存在する壁部の気泡の有無を確認できる。
【0020】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記窓部は、少なくとも1つの前記チャネル、および該チャネルと隣接する前記チャネルとの間に存在する2つの前記壁部と対向するように形成されていることを特徴とする。
【0021】
このように、窓部を大きく形成することで気泡の有無を確認しやすくすることができる。より具体的には、1つの窓部で2つの壁部の気泡の有無を確認できるので、確認作業の効率化を図ることができる。
【0022】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記チャネルは、断面四角形状に形成されており、前記窓部は、前記チャネルの角部と対向するように形成されていることを特徴とする。
【0023】
窓部を介して角部を確認することにより、窓部とチャネル(アクチュエータプレート)の長手方向、および短手方向との相対位置を確認できる。このため、アクチュエータプレートに対するノズルプレートの取り付け位置を精度よく決めることができる。よって、インクジェットヘッドのインク吐出性能を高めることが可能になる。
【0024】
本発明に係るインクジェットヘッドにおいて、前記窓部は、前記ノズル列を中心に両側に形成されていることを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、気泡の有無を広範囲に渡って確認することができる。
また、窓部をバランスよく配置することができる。ここで、ノズルプレートと保護プレートとがそれぞれ異種材料で形成されているので、これらノズルプレートと保護プレートとを接合する際に両者が反発し合って反りが発生してしまうことが考えられる。しかしながら、窓部をバランスよく配置することにより、保護プレートによるノズルプレートの反りの影響を小さくすることができる。
【0026】
本発明に係る液体噴射記録装置は、上記に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とする。
【0027】
このように構成することで、保護プレートを用いつつ、アクチュエータプレートにノズルプレートを接合する際の気泡を発見でき、接合不良を防止可能な液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、アクチュエータプレートとノズルプレートとを接着剤を用いて接合する際、この接着剤の中に気泡が存在するか否かを、保護プレートの開口部を介してノズルプレートの上から確認することができる。このため、アクチュエータプレートとノズルプレートとの接合不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態における液体噴射記録装置の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態におけるヘッドチップの斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態におけるヘッドチップの分解斜視図である。
図5図3のA矢視図である。
図6図5のB−B線に沿う断面図である。
図7】本発明の第1実施形態における要部の製造工程を示す説明図であって、(a)は、ノズルプレートおよび保護プレートの製造工程を示し、(b)は、アクチュエータプレートおよびカバープレートへのノズルプレートの接合工程を示す。
図8】本発明の第2実施形態におけるノズルプレートの吐出面側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
(液体噴射記録装置)
図1は、液体噴射記録装置1の構成を示す斜視図である。なお、以下の図では、説明を分かり易くするために各部材の縮尺を適宜変更している。
同図に示すように、液体噴射記録装置1は、記録紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2,3と、被記録媒体Sに図示しないインクを噴射するインクジェットヘッド4と、インクジェットヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、インクジェットヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向Yと直交する走査方向Xに走査させる走査手段6と、を備えている。
なお、本実施形態では、搬送方向Yおよび走査方向Xの2方向に直交する方向を上下方向Zとする。
【0032】
一対の搬送手段2,3は、搬送方向Yに間隔をあけて配置されており、一方の搬送手段2が搬送方向Yの上流側に位置し、他方の搬送手段3が搬送方向Yの下流側に位置している。これら搬送手段2,3は、走査方向Xに延設されたグリッドローラ2a,3aと、このグリッドローラ2a,3aに対して平行に配置されると共に、グリッドローラ2a,3aとの間で被記録媒体Sを挟み込むピンチローラ2b,3bと、グリッドローラ2a,3aをその軸回りに回転させるモータ等の図示しない駆動機構と、をそれぞれ備えている。
そして、一対の搬送手段2,3のグリッドローラ2a,3aを回転させることで、被記録媒体Sを、搬送方向Yに沿った矢印B方向に搬送することが可能とされている。
【0033】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10とインクジェットヘッド4とを接続するインク配管11と、を備えている。
図示の例では、インクタンク10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の四色のインクがそれぞれ収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10Bが搬送方向Yに並んで配置されている。インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、インクジェットヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。
【0034】
走査手段6は、走査方向Xに延び、搬送方向Yに間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール15と、これら一対のガイドレール15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、このキャリッジ16を走査方向Xに移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール15の間に配置され、走査方向Xに間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、これら一対のプーリ18の間に巻回されて走査方向Xに移動する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0035】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴って走査方向Xに移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド4が走査方向Xに並んだ状態で搭載されている。
図示の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各インクをそれぞれ噴射する4つのインクジェットヘッド4、すなわちインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bが搭載されている。
【0036】
(インクジェットヘッド)
次に、インクジェットヘッド4について詳細に説明する。
図2は、インクジェットヘッド4の斜視図である。
同図に示すように、インクジェットヘッド4は、キャリッジ16に固定される固定プレート25と、この固定プレート25上に固定されたヘッドチップ26と、インク供給手段5から供給されたインクを、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41aにさらに供給するインク供給部27と、ヘッドチップ26に駆動電圧を印加する制御手段28と、を備えている。
【0037】
インクジェットヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の噴出量で吐出する。このとき、インクジェットヘッド4が走査手段6により走査方向Xに移動することにより、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録を行うことができる。この走査を、搬送手段2,3により被記録媒体Sを搬送方向Yに搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0038】
固定プレート25には、アルミ等の金属製のベースプレート30が上下方向Zに沿って起立した状態で固定されていると共に、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41aにインクを供給する流路部材31が固定されている。流路部材31の上方には、インクを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器32がベースプレート30に支持された状態で配置されている。そして、流路部材31と圧力緩衝器32は、インク連結管33を介して連結され、圧力緩衝器32にはインク配管11が接続されている。
【0039】
このような構成のもと、圧力緩衝器32は、インク配管11を介してインクが供給されると、このインクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクをインク連結管33および流路部材31を介してインク導入孔41aに供給する。
なお、これら流路部材31、圧力緩衝器32およびインク連結管33は、上記インク供給部27として機能する。
【0040】
また、固定プレート25には、ヘッドチップ26を駆動するための集積回路等の制御回路(駆動回路)35が搭載されたIC基板36が取り付けられている。この制御回路35と、ヘッドチップ26の後述するコモン電極(駆動電極)およびダミー電極(何れも不図示)は、図示しない配線パターンがプリント配線されたフレキシブル基板37を介して電気接続されている。これにより、制御回路35は、フレキシブル基板37を介してコモン電極とダミー電極との間に、駆動電圧を印加することが可能とされる。
なお、これら制御回路35が搭載されたIC基板36、およびフレキシブル基板37は、上記制御手段28として機能する。
【0041】
(ヘッドチップ)
続いて、ヘッドチップ26について詳細に説明する。
図3は、ヘッドチップ26の斜視図、図4は、ヘッドチップ26の分解斜視図である。
図3図4に示すように、ヘッドチップ26は、アクチュエータプレート40、カバープレート41、支持プレート42、ノズルプレート43、および、このノズルプレート43を保護したり熱変形を防止したりするための保護プレート61を備えている。ヘッドチップ26は、後述する液体噴射チャネル45Aの長手方向端部に臨むノズル孔43aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている。
【0042】
アクチュエータプレート40は、第1アクチュエータプレート40Aおよび第2アクチュエータプレート40Bの2枚のプレートを積層した、いわゆる積層プレートとされている。なお、アクチュエータプレート40は、積層プレートに限らず、1枚のプレートで構成してもよい。
【0043】
第1アクチュエータプレート40Aおよび第2アクチュエータプレート40Bは、共に厚さ方向に分極処理された圧電基板、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス基板であり、互いの分極方向を反対に向けた状態で接合されている。
このアクチュエータプレート40は、厚さ方向L1に直交する第1方向(配列方向)L2に長く、厚さ方向L1および第1方向L2に対して直交する第2方向L3に短い、平面視略長方形状に形成されている。
【0044】
なお、本実施形態のヘッドチップ26はエッジシュート対応であるので、厚さ方向L1が液体噴射記録装置1における走査方向Xに一致し、かつ第1方向L2が搬送方向Y、第2方向L3が上下方向Zに一致する。すなわち、例えばアクチュエータプレート40の側面のうち、ノズルプレート43に対向する側面(インクが吐出される側の側面)は、下端面40aとなり、この下端面40aとは第2方向L3の反対側に位置する側面は、上端面40bとなる。以下の説明では、この上下方向に則して、単に下側、上側と称して説明する場合がある。しかしながら、通常、上下方向については、液体噴射記録装置1の設置角度に応じて変化してしまうことは言うまでもない。
【0045】
アクチュエータプレート40の一方の主面(カバープレート41が重なる面)40cには、第1方向L2に所定の間隔をあけて並んだ複数のチャネル45が形成されている。これら複数のチャネル45は、一方の主面40c側に開口した状態で第2方向L3に沿って直線状に延びる溝部であり、長手方向の一方側がアクチュエータプレート40の下端面40a側に開口している。これら複数のチャネル45の間には、断面略矩形状で第2方向L3に延びる駆動壁(圧電隔壁)46が形成されている。この駆動壁46によって、各チャネル45はそれぞれ区分けされている。そして、各チャネル45のL1−L2平面に沿う断面形状は、厚さ方向L1に長い断面略矩形状に形成されている。
【0046】
また、複数のチャネル45は、インクが充填される液体噴射チャネル(液体吐出溝)45Aと、インクが充填されないダミーチャネル(液体非吐出溝)45Bと、に大別される。そして、これら液体噴射チャネル45Aとダミーチャネル45Bは、第1方向L2に交互に並んで配置されている。
このうち、液体噴射チャネル45Aは、アクチュエータプレート40の上端面40b側に開口することなく、下端面40a側にだけ開口した状態で形成されている。一方、ダミーチャネル45Bについては、アクチュエータプレート40の下端面40a側だけでなく、上端面40b側にも開口するように形成されている。
【0047】
液体噴射チャネル45Aの内壁面、すなわち第1方向L2に向かい合う一対の側壁面および底壁面には、不図示のコモン電極が形成されている。このコモン電極は、液体噴射チャネル45Aに沿って第2方向L3に延び、アクチュエータプレート40の一方の主面40c上に形成されたコモン端子(電極端子部)51に導通している。
一方、ダミーチャネル45Bの内壁面のうち、第1方向L2に向かい合う一対の側壁面には、不図示のダミー電極がそれぞれ形成されている。これらダミー電極は、ダミーチャネル45Bに沿って第2方向L3に延び、アクチュエータプレート40の一方の主面40c上に形成されたダミー端子(電極端子部)53に導通している。
【0048】
なお、ダミー端子53は、アクチュエータプレート40の一方の主面40c上における上端面40b側に形成されている。そして、液体噴射チャネル45Aを挟んだ両側に位置するダミー電極同士(異なるダミーチャネル45B内に形成されたダミー電極同士)を、接続するように形成されている。
【0049】
このような構成のもと、フレキシブル基板37を介して制御回路35がコモン端子51およびダミー端子53を通じて、コモン電極とダミー電極との間に駆動電圧を印加すると、駆動壁46が変形する。そして、液体噴射チャネル45A内に充填されたインクに圧力変動が生じる。これにより、液体噴射チャネル45A内のインクをノズル孔43aより吐出することができ、被記録媒体Sに文字や図形等の各種情報を記録することが可能となる。
【0050】
アクチュエータプレート40の一方の主面40c上には、カバープレート41が重ね合わされている。このカバープレート41には、インク導入孔41aが第1方向L2に長い平面視略矩形状に形成されている。
このインク導入孔41aには、流路部材31を介して供給されてきたインクを液体噴射チャネル45A内に導入させ、かつダミーチャネル45B内への導入を規制する複数のスリット55aが形成されたインク導入板55が形成されている。つまり、複数のスリット55aは、液体噴射チャネル45Aに対応する位置に形成されており、各液体噴射チャネル45A内にのみインクを充填することが可能とされる。
【0051】
なお、カバープレート41は、例えばアクチュエータプレート40と同じPZTセラミックス基板で形成され、アクチュエータプレート40と同じ熱膨張をさせることで、温度変化に対する反りや変形を抑制している。但し、この場合に限られず、アクチュエータプレート40とは異なる材料でカバープレート41を形成しても構わないが、熱膨張係数が近い材料を用いることが好ましい。
【0052】
支持プレート42は、重ね合されたアクチュエータプレート40およびカバープレート41を支持していると共に、ノズルプレート43を同時に支持している。支持プレート42は、アクチュエータプレート40に対応するように、第1方向L2に長く形成された略長方形状の板材で、中央の大部分に、厚さ方向に貫通する嵌合孔42aが形成されている。この嵌合孔42aは、第1方向L2に沿って略長方形状に形成されており、重ね合されたアクチュエータプレート40およびカバープレート41を嵌合孔42a内に嵌め込んだ状態で支持している。
【0053】
また、支持プレート42は、その外形状が厚さ方向下端に向かうに従って段差により小さくなるように段付き板状に形成されている。すなわち、支持プレート42は、厚さ方向上端側に位置するベース部42Aと、ベース部42Aの下端面に配置され、このベース部42Aよりも外形状が小さくなるように形成された段差部42Bと、が一体成形されたものである。そして、支持プレート42は、段差部42Bの端面がアクチュエータプレート40の下端面40aと面一となるように組み合わされている。
【0054】
また、段差部42Bの端面に、ノズルプレート43が、例えば接着等により固定されている。
ノズルプレート43は、例えばポリイミド等のフィルム材からなるシートで、その外形状は、段差部42Bの外形状に対応する大きさに形成されている。すなわち、第1方向L2に長くなるように略長方形状に形成されている。
【0055】
また、ノズルプレート43には、第1方向L2に所定の間隔をあけて複数のノズル孔43aが形成されている。これらノズル孔43aは、複数の液体噴射チャネル45Aに対してそれぞれ対向する位置に形成され、一列に並んでノズル列43bを構成している。そして、各ノズル孔43aは、それぞれ対応する液体噴射チャネル45A内に連通している。なお、通常時にノズル孔43aからインクが吐出されないように、各ノズル孔43aにおいて適切なメニスカスが保たれている。
【0056】
(第1実施形態)
(保護プレート)
図5は、図3のA矢視図、図6は、図5のB−B線に沿う断面図である。
図3図6に示すように、保護プレート61は、ステンレスからなる薄板材にプレス加工やエッチング加工を施して形成されたものであって、ノズルプレート43の吐出面(下端面)43cに接着剤や熱圧着により貼付固定されている。
【0057】
なお、保護プレート61のノズルプレート43とは反対側の表面に、撥水膜を塗布することが望ましい。これにより、保護プレート61上にインクが付着して残留してしまうことを抑制できる。また、ノズルプレート43の吐出面43cと、この吐出面43cと接合される保護プレート61の面は、親水性であることが望ましい。このように構成することで、ノズルプレート43と保護プレート61との接合力を高めることができる。
【0058】
また、保護プレート61は、ノズルプレート43の吐出面43cに対応するように第1方向L2に長い略長方形状に形成されている。すなわち、保護プレート61の外形状は、ノズルプレート43の外形状とほぼ同一になっている。
保護プレート61には、ノズル孔43aに対応する位置に、それぞれ厚さ方向に貫通する円形状の開口部61aが別々に形成されている。開口部61aは、対応するノズル孔43aに連通する液体噴射チャネル45A、およびこの液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46と対向する大きさに形成されている。なお、液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46を換言すると、液体噴射チャネル45Aと、この液体噴射チャネル45Aと隣接するダミーチャネル45Bとの間に存在する駆動壁46ということになる。
【0059】
さらに、開口部61aは、ダミーチャネル45Bと対向しない大きさに形成されている。すなわち、隣り合う開口部61aの間には保護プレート61が存在しており、下側(保護プレート61の正面)からみると、隣り合う開口部61aの間の保護プレート61によって、ダミーチャネル45Bが視認できない(覗けない)。
また、保護プレート61には、開口部61aごとに一対の窓部62が形成されている。一対の窓部62は、それぞれ開口部61aを中心にして厚さ方向L1に沿う両側に等間隔に配置されている。換言すれば、一対の窓部62は、それぞれ液体噴射チャネル45Aの厚さ方向L1の両端部と対向するように形成されている。
【0060】
一対の窓部62は、開口部61aごとに形成されているので、保護プレート61の全体としては、ノズル列43b(図4参照)を中心にして両側に、複数の窓部62が等間隔に形成されている状態になる。そして、各側の複数の窓部62は、第1方向L2に沿って等間隔に並んで配置されている。
【0061】
また、各窓部62は、第1方向L2に長い長方形状に形成されている。より具体的には、各窓部62は、液体噴射チャネル45A、およびこの液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46と対向するように形成されている。さらに、各窓部62は、液体噴射チャネル45Aの厚さ方向L1端部に位置するアクチュエータプレート40、またはカバープレート41に対向するように形成されている。これにより、各窓部62は、液体噴射チャネル45Aの角部63と対向している。
【0062】
このような構成のもと、液体噴射記録装置1により、被記録媒体Sに情報を記録する場合には、図1に示すように、例えば、一対の搬送手段2,3により被記録媒体Sを搬送方向Yに搬送させながら、走査手段6によりキャリッジ16を介して各インクジェットヘッド4を走査方向Xに往復移動させる。この間に、各インクジェットヘッド4において、制御回路35がコモン端子51とダミー端子53との間に駆動電圧を印加する。これにより、駆動壁46に厚みすべり変形を生じさせ、液体噴射チャネル45A内に充填されたインクに圧力波を発生させる。この圧力波により、液体噴射チャネル45Aの内圧が高まるので、インクをノズル孔43aから吐出させることができる。この際、インクはノズル孔43aを通過する際に液滴状のインク滴となり、保護プレート61の開口部61aを介して吐出される。その結果、被記録媒体Sに4色のインクを利用して、文字や図形等の各種情報を記録することができる。
【0063】
ここで、ノズルプレート43の吐出面43cには、熱変形量の小さいステンレスにより形成された保護プレート61が接合されているので、ノズルプレート43がポリイミド等の樹脂により形成されている場合であってもノズル孔43aの熱変形を確実に抑制できる。このため、環境温度等に関わらず、ヘッドチップ26からのインクの吐出量を安定させることができ、被記録媒体Sへの記録を高精度に行うことができる。
【0064】
(ノズルプレートおよび保護プレートの製造方法)
次に、ノズルプレート43および保護プレート61の製造方法について説明する。
図7は、ノズルプレート43および保護プレート61を製造した後、アクチュエータプレート40およびカバープレート41にノズルプレート43を接合する手順を示す説明図であって、(a)は、ノズルプレート43および保護プレート61の製造工程を示し、(b)は、アクチュエータプレート40およびカバープレート41へのノズルプレート43の接合工程を示す。
【0065】
図7(a)に示すように、まず、ノズルプレート43の吐出面43cに保護プレート61を配置し、熱圧着したり、接着剤を用いたりしてノズルプレート43と保護プレート61とを貼り合せる。
次に、エッチングにより保護プレート61に開口部61a、および窓部62を形成する。なお、エッチングの方法としては、ウェットエッチング、ドライエッチングの何れのエッチングの方法を採用してもよい。
【0066】
次に、ノズルプレート43側からレーザ光Lを照射し、開口部61aと同軸上のノズル孔43aを形成する。なお、ノズル孔43aを形成するにあたって、保護プレート61側からレーザ光Lを照射してもよい。
このとき、レーザ光Lによってノズルプレート43が熱せられるが、保護プレート61が貼り付けられているので、ノズルプレート43の熱変形が抑制される。これにより、ノズル孔43aが精度よく形成される。そして、ノズル孔43aを形成してノズルプレート43および保護プレート61の製造が完了する。
【0067】
続いて、図7(b)に示すように、保護プレート61が貼り付けられたノズルプレート43を、接着剤等を用いてアクチュエータプレート40に接合する。このとき、アクチュエータプレート40の下端面40a(カバープレート41の下端面)に接着剤を塗布してノズルプレート43を被せるが、接着剤の中に気泡が生じる場合がある。
【0068】
ここで、ノズルプレート43は、ポリイミド等のフィルム材からなるシートにより形成されているので、ノズルプレート43を透かして気泡の有無を確認することができる。これに対し、保護プレート61は、ステンレスからなる薄板材により形成されているので非透過性であり、保護プレート61を透かして気泡の有無を確認することができない。
【0069】
しかしながら、保護プレート61には、開口部61aや窓部62が形成されている。しかも、開口部61aは、対応するノズル孔43aに連通する液体噴射チャネル45A、およびこの液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46と対向する大きさに形成されている。また、窓部62は、それぞれ液体噴射チャネル45Aの厚さ方向L1の両端部と対向するように形成されている。このため、これら開口部61aや窓部62を介して接着剤の中の気泡の有無を確認することができる。気泡を確認した場合、この気泡を除去する。
【0070】
また、窓部62が各液体噴射チャネル45Aの角部63に対向するように形成されているので、各液体噴射チャネル45Aの厚さ方向L1および第1方向L2に対する窓部62の位置を認識しやすい。このため、アクチュエータプレート40(カバープレート41)に対するノズルプレート43の位置決めを高精度に行うことができる。さらに、保護プレート61に開口部61aや窓部62を形成することにより、保護プレート61の面積が減少する。このため、保護プレート61によるノズルプレート43への反りの影響を低減でき、アクチュエータプレート40(カバープレート41)へのノズルプレート43の貼り付け作業が容易になる。
【0071】
接着剤の中の気泡を除去し、アクチュエータプレート40(カバープレート41)に対するノズルプレート43の位置決め、貼付けを行った後、接着剤を熱硬化させる。これにより、アクチュエータプレート40およびカバープレート41へのノズルプレート43の接合作業が完了する。
【0072】
したがって、上述の第1実施形態によれば、アクチュエータプレート40(カバープレート41)へのノズルプレート43の接合不良を確実に防止できる。しかも、1つの開口部61aで、対応するノズル孔43aに連通する液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46における気泡の有無を確認できる。このため、気泡の有無の確認作業を効率的に行うことができる。
【0073】
また、保護プレート61に形成されている開口部61aは、ダミーチャネル45Bと対向しない大きさに形成されている。すなわち、隣り合う開口部61aの間には保護プレート61が存在しており、隣り合う開口部61aの保護プレート61によって、ダミーチャネル45Bが閉塞されている。このため、保護プレート61の剛性を十分確保することができる。よって、環境温度等に関わらず、ヘッドチップ26からのインクの吐出量を安定させることができ、被記録媒体Sへの記録をさらに高精度に行うことができる。
【0074】
さらに、窓部62が各液体噴射チャネル45Aの角部63に対向するように形成されているので、各液体噴射チャネル45Aの厚さ方向L1および第1方向L2に対する窓部62の位置を認識しやすい。このため、アクチュエータプレート40(カバープレート41)に対するノズルプレート43の位置決めを高精度に行うことができる。よって、インクジェットヘッド4のインク吐出性能を高めることが可能になる。
【0075】
また、保護プレート61の各窓部62は、ノズル列43bを中心にして両側に、等間隔に形成され、かつ第1方向L2に沿って等間隔に並んで配置されている。このため、ノズルプレート43が不均一に変形する(沿ってしまう)ことがなく、アクチュエータプレート40(カバープレート41)へのノズルプレート43の接合不良を、さらに確実に防止できる。
【0076】
(第2実施形態)
(保護プレート)
次に、図8に基づいて、この発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
図8は、第2実施形態におけるノズルプレート43の吐出面43c側の平面図であって、前述の第1実施形態の図5に対応している。
同図に示すように、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態の保護プレート61の形状と、第2実施形態の保護プレート261の形状とが異なる点にある。
【0077】
より詳しくは、第2実施形態の保護プレート261に形成された窓部262は、第1方向L2の全体に渡って長く長方形状に形成されている。そして、窓部262は、ノズルプレート43のノズル列43bを中心に両側に1つずつ(合計2つ)形成されている。各窓部262の第1方向L2の長さは、保護プレート261の第1方向L2の両端に形成されている開口部61aの間の長さとほぼ同一に設定されている。また、各窓部262は、各チャネル45A,45Bの角部63に対向するように形成されている。
【0078】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
これに加え、各窓部262が第1方向L2に長く形成されているので、接着剤の中の気泡の有無をさらに確認しやすくすることができると共に、アクチュエータプレート40(カバープレート41)に対するノズルプレート43の位置決めをさらに行いやすくすることができる。
また、各窓部262を長く形成することにより、保護プレート261の面積が減少するので、保護プレート61によるノズルプレート43への反りの影響をさらに低減できる。
【0079】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0080】
例えば、上述の実施形態では、開口部61aは、対応するノズル孔43aに連通する液体噴射チャネル45A、およびこの液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46と対向するように形成されている場合について説明した。また、開口部61aは、ダミーチャネル45Bと対向しない大きさに形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、少なくとも対応するノズル孔43aに連通する液体噴射チャネル45A、およびこの液体噴射チャネル45Aの第1方向L2の両側に位置する2つの駆動壁46のうちの1つと対向するように形成されていればよい。このように形成されている場合であっても、開口部61aに対応する箇所における接着剤の中の気泡の有無を確認することができる。
【0081】
さらに、上述の実施形態では、開口部61aの形状は円形状で、窓部62,262の形状は長方形状である場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、任意の形状とすることができる。例えば、開口部61aを四角形状に形成し、窓部62,262を長円形状に形成してもよい。
【0082】
また、上述の実施形態では、ノズルプレート43がポリイミド等のフィルム材からなるシートにより形成されたものであり、保護プレート61,261がステンレスからなる薄板材により形成されたものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ノズルプレート43は、透過性を有する材料で形成され、保護プレート61,261は、ノズルプレート43よりも剛性の高い非透過性の材料で形成されていればよい。
【0083】
さらに、上述の実施形態では、ヘッドチップ26は、液体噴射チャネル45Aの長手方向端部に臨むノズル孔43aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、液体噴射チャネル45Aの長手方向中央に臨むノズル孔からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのヘッドチップにも、上述の保護プレート61〜561を採用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…液体噴射記録装置 4…インクジェットヘッド 41…カバープレート 43…ノズルプレート 43a…ノズル孔 43b…ノズル列 43c…吐出面 45…チャネル 45A…液体噴射チャネル(チャネル) 45B…ダミーチャネル(チャネル) 46…駆動壁(壁部) 61,261…保護プレート 61a…開口部 62,262…窓部 63…角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8