(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(予備的事項)
本願発明者は、粉末材料の薄層の形成後、薄層全体の温度がレーザ光(エネルギービーム)の照射を開始することができる温度(レーザ光照射開始下限温度)以上になるまで待機している時間に着目し、その待機時間の短縮を図ることを考えた。
【0023】
本願発明者の調査によれば、
図25(a)に示す粉末材料の薄層59aの形成後、薄層形成容器51内の薄層59a全体の温度がレーザ光照射開始下限温度以上になるまでに、薄層59aの温度分布は
図25(b)に示すように経時的に変化することが分かった。
【0024】
図25(a)は、薄層形成容器51内の粉末材料の薄層59aの表面を示す平面図であり、III-IIIを結ぶ一点鎖線は、薄層形成容器51の中心を通り、薄層形成容器51の前縁51aと後縁51bに平行に引かれた線である。なお、符号51c, 51dは、それぞれ、薄層形成容器51の左縁51aと右縁である。
【0025】
図25(b)は、粉末材料の薄層59aのIII−III線に沿う温度分布が経時的に変化する様子を、時刻t0, t1, t2においてそれぞれ示したグラフである。横軸は、
図25(a)のIII-III線に沿う薄層形成容器51内の位置を線形目盛で示し、縦軸は、薄層59aの温度を線形目盛で示す。図中の符号t0, t1, t2は、順次増大する経過時間を示し、横軸に平行に引かれた一定の温度を示す線は、レーザ光照射開始下限温度を示す。
【0026】
図25(b)に示すように、薄層59aの形成直後(時間t0で示す)、薄層59aの中央領域だけがレーザ光照射開始下限温度を超えており、時間の経過(時間t1〜t2)につれて薄層59aの周辺領域が次第に昇温してきて、時間t2で薄層59a全体がレーザ光照射開始下限温度以上になる。
【0027】
図25の調査結果によれば、レーザ光照射開始下限温度以上になる領域が、経時的に中央領域から周辺領域に向かって広がっていくので、これに合わせて、中央領域から周辺領域に移行しながら、順次、薄層にレーザ光を照射していけば、薄層形成直後から温度安定領域でレーザ光を照射することができるため、待機時間の短縮を図ることができると考えた。
【0028】
上述の知見に基づき、薄層形成容器51内側の上面領域を複数の領域に分割し、薄層59aの形成後、薄層59a全体の温度上昇を待たずに、直ちに、温度安定領域にある中央の分割領域からレーザ光の照射を始め、順次、昇温してくる周辺の分割領域にレーザ光の照射を移行することとする発明に想到した。
【0029】
(第1実施形態)
(1)粉末床溶融結合装置について
図1は、本実施形態に係る粉末床溶融結合装置の構成について示す模式図である。
【0030】
なお、粉末材料を溶融して結合させるエネルギービームを出射するエネルギービーム源として、レーザ光を出射するレーザ光源、電子ビームその他の粒子ビームを出射する電子ビーム源その他の粒子ビーム源があり、本発明に適用できる。以下では、それらのうちレーザ光源を用いて説明する。
【0031】
粉末床溶融結合装置は、
図1に示すように、レーザ光出射部101と、造形が行われる薄層形成部102と、造形を制御する制御部(制御手段)103とを備えている。
【0032】
なお、符号20は、薄層形成部102の上面に設けられたリコータ(粉末材料の運搬部材)である。リコータ20は、薄層形成部102に含める。
【0033】
制御部103は、レーザ光出射部101と、薄層形成部102とに接続され、各部101, 102と電気信号をやり取りして、各部101, 102を制御し、それに基づいて造形を制御する。これにより、自動的に造形を制御することが可能である。
【0034】
以下に、本粉末床溶融結合装置における各部101, 102, 103の詳細について説明する。
【0035】
図2(a)、(b)は、レーザ光出射部101と薄層形成部102の構成を示す図である。
図2(a)は上面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のI−I線に沿う断面図である。なお、
図2(a)では、レーザ光出射部101は省いている。
【0036】
(i)レーザ光出射部201の構成
図2(b)に示すレーザ光出射部101は、レーザ光源と、光学系と、XYZドライバとを備えている。
【0037】
レーザ光源は、主に、波長1,070nm付近のレーザ光を出射するYAGレーザ光源、あるいは、ファイバレーザ光源や、波長10.6μmのレーザ光を出射する高出力のCO
2レーザ光源などが用いられる。粉末材料19の波長吸収率だけでなくコストパフォーマンスなどを考慮して、使用波長を適宜使い分ける。
【0038】
なお、波長700nmから940nm程度の半導体レーザ(LD)は、現在、まだ金属を溶融するのに十分な出力が得られないため、あまり用いられることがないが、将来的に高出力の半導体レーザが得られれば、それを使用することが好ましい。波長が短い方が金属のレーザ光の吸収率が高くなるためである。
【0039】
また、半導体レーザ(LD)は樹脂粉末を使用する場合においても、カーボンブラックのような半導体レーザを吸収する吸収剤もしくは色素を添加することで、利用することが可能である。波長が短い方がレーザビーム径を絞ることができる点で有利である。
【0040】
光学系は、ガルバノメータミラー(XミラーとYミラーで構成される)と、レンズとを有する。
【0041】
なお、エネルギービーム源として、レーザ光源の代わりに、他のエネルギービーム源を用いた場合、エネルギービーム源に応じて光学系を適宜変更できる。例えば、電子ビーム源の場合、電磁レンズ及び偏向系を用いることができる。
【0042】
XYZドライバは、制御部103からの制御信号により、レーザ光源とともに、Xミラーと、Yミラーと、レンズとを動作させる制御信号を送出し、次のような動作を行わせる。
【0043】
即ち、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、XミラーとYミラーの角度を変化させてレーザ光21を走査するとともにレーザ光源を適宜ON/OFFさせる。
【0044】
この間、レーザ光21の動きに合わせて、レーザ光21が粉末材料の薄層19aの表面に焦点を結ぶように絶えずレンズを動かす。
【0045】
このようにして、粉末材料の薄層19aにレーザ光21を選択的に照射して特定の領域を加熱する。レーザ光源に加える電力を制御することで粉末材料の薄層19aを溶融させる。
【0046】
なお、「溶融する」とは、粉末粒子全体を溶融し流動化させる態様と、焼結の場合のように主に粉末粒子の表面を溶融する態様の両方を含むものとする。以下の説明でも同じである。
【0047】
また、以下の説明では、上述の2つの「溶融する」態様が出現する温度を、ともに「溶融温度」と表す。
【0048】
また、上述の2つの態様で薄層19aを溶融した後、固化したものを、ともに「結合層」と表す。
【0049】
(ii)薄層形成部102の構成
薄層形成部102は、
図2(a)、(b)に示すように、造形が行われる薄層形成容器11と、その両側に設置された第1粉末材料収納容器12a及び第2粉末材料収納容器12bと、粉末材料19を運び、粉末材料の薄層19aを形成するリコータ(粉末材料運搬手段)20とを備えている。
【0050】
また、薄層形成容器11と第1粉末材料収納容器12aの間に左側フランジ13aが設けられるとともに、薄層形成容器11と第2粉末材料収納容器12bの間に右側フランジ13bが設けられている。
【0051】
第1粉末材料収納容器12aと、左側フランジ13aと、薄層形成容器11と、右側フランジ13bと、第2粉末材料収納容器12bとは、上面が面一となるように接合されている。これにより、リコータ20は、すべての容器12a, 11, 12bの上面上を全領域にわたってスムーズに移動することができる。
【0052】
薄層形成容器11では、
図2(b)に示すように、容器11の底を兼ねたパートテーブル(第1昇降台)15上に粉末材料の薄層19aが形成され、粉末材料の薄層19aにレーザ光21が照射されて結合層19bが形成される。
【0053】
そして、パートテーブル15を順次下方に移動させて結合層19bを積層し、3次元造形物が作製される。
【0054】
第1粉末材料収納容器12aでは、容器12aの底を兼ねた第1フィードテーブル(第2昇降台)17a上に粉末材料19が収納され、第2粉末材料収納容器12bでは、容器12bの底を兼ねた第2フィードテーブル(第3昇降台)17b上に粉末材料19が収納される。
【0055】
第1粉末材料収納容器12a及び第2粉末材料収納容器12bのうち、いずれか一方を粉末材料19の供給側とした場合、他方が、粉末材料の薄層19aを形成した後に残った粉末材料19の収納側となる。
【0056】
パートテーブル15と、第1フィードテーブル17aと、第2フィードテーブル17bの各下面には、それぞれ、支持軸16、18a及び18bが取り付けられている。支持軸16、18a及び18bは、支持軸16、18a及び18bを上下に移動させる図示しない駆動装置に接続されている。
【0057】
駆動装置は、制御部103からの制御信号により制御されて、供給側のフィードテーブル17a又は17bを上昇させて粉末材料19を供給するとともに、収納側のフィードテーブル17b又は17aを下降させて残った粉末材料19を収納する。
【0058】
リコータ20は、制御部103からの制御信号により制御されて、第1粉末材料収納容器12a、薄層形成容器11及び第2粉末材料収納容器12bの上面上を全領域にわたって移動する。
【0059】
リコータ20は、移動しながら供給側の粉末材料収納容器12a又は12b上で粉末材料19を押し取り、薄層形成容器11に粉末材料19を運び入れながら表面を均してパートテーブル15上に薄層19aを形成する。さらに、余った粉末材料19を収納側の粉末材料収納容器12b又は12aまで運び、フィードテーブル17b又は17a上に収納する。
【0060】
また、容器12a及び12b内に収納された粉末材料19や、容器11内の粉末材料の薄層19aを予備加熱し、昇温するため、容器11、12a及び12bの仕切壁や昇降台15, 17a及び17bに図示しないヒータ(加熱手段)を内蔵し、或いは、容器11、12a及び12bの周囲にヒータ(加熱手段)を設けている。また、赤外線照射手段(加熱手段)を設けてもよい。
図2(a)、(b)には、それらの加熱手段のうち、左側フランジ13aと右側フランジ13bの下にヒータ14a, 14bが表示されている。
【0061】
(粉末材料)
使用可能な粉末材料19として、樹脂粉末或いはセラミック粉末、又は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン或いはその他の金属粉末が挙げられる。
【0062】
(iii)粉末材料の薄層表面の分割態様と粉末床溶融結合を行うための制御方法について
(a)第1の分割態様と第1の分割態様に基づく制御方法
(第1の分割態様)
図3は、薄層形成容器11内の粉末材料の薄層19aに分割領域を設定する第1の分割態様を示す平面図である。
【0063】
図3では、薄層形成容器11の内側上面の温度が時間経過につれて中央部から等方的に広がるという前提で、分割領域が設定されている。
【0064】
すなわち、薄層形成容器11の内側上面の中心Cを中心とする6つの同心円を仮に設定し、その同心円に内接する6つの正方形B
0〜B
5を設定する。
【0065】
各正方形B
0〜B
5は、薄層形成容器11上面の内側縁部の形状に相似する。したがって、薄層形成容器11の内側縁部は温度の広がりに対応した最も外側の正方形B
6に相当する。
【0066】
各正方形B
0〜B
6を、薄層19aの形成直後からの経過時間に対応する分割領域の境界とする。そして、各境界B
0〜B
6より内側の領域は、
図25で説明したレーザ光照射開始下限温度以上の温度安定領域に対応するとみなす。
【0067】
最も内側の分割領域の境界B
0は、粉末材料の薄層19aの形成直後(時間0秒)の温度安定領域の境界を表す。また、その外側の境界B
1〜B
6は、下付きの数字が大きくなるほど薄層19aの形成直後からより時間が次第に経過し、それに応じて広がってきた温度安定領域の境界を表す。
【0068】
なお、粉末材料の種類や加熱手段の配置などに応じて、温度が安定する時間が変化するので、実験結果などを基にして、粉末材料の種類や加熱手段の配置などに応じて各分割領域の境界に対応する経過時間を適宜設定することが好ましい。
【0069】
例えば、粉末材料にチタンを用いた実験結果に基づくと、薄層形成容器11の内側領域はほぼ6秒で全体に温度が安定する。これに対応させて、6つの正方形B
1〜B
6は、薄層19aの形成直後から順次1秒ずつ経過した時点の分割領域の境界を表すようにした。その場合、薄層形成容器11の内側縁部は6秒経過時点の境界B
6となるため、6秒以上で薄層形成容器11の内側はすべてレーザ光照射開始下限温度以上となることを意味している。
【0070】
薄層形成容器11の内側上面の中心Cを通るX軸とY軸を設定すると、X−Y座標上で各分割領域の境界を特定できるので、境界の位置を制御部103に接続された
図1に示すメモリ(記憶装置)104に記憶させることができる。
【0071】
(第1の分割態様に基づく制御方法)
次に、
図3の第1の分割態様に基づき粉末床溶融結合を行うための制御方法について説明する。
【0072】
ところで、レーザ光の照射の仕方で、造形に要する時間が大きく変動するため、待機時間を短縮した効果がなくなる恐れがある。
【0073】
したがって、以下では、最初に、レーザ光の照射の仕方について、
図11(a)、(b)、及び
図12(a)、(b)を参照して説明する。
【0074】
次いで、第1の分割態様に基づく制御方法について、
図4〜
図6(第1例)、
図7〜8(第2例)、
図9(第3例)を参照して説明する。
【0075】
(レーザ光の照射の仕方)
次の説明では、レーザ光の縦方向の移動と横方向の移動は相対的なものである。スライスデータの配置を90度回転させると、縦方向の移動が横方向の移動に相当し、横方向の移動が縦方向の移動に相当することになる。
【0076】
スライスデータは、横に時計回りに倒すとアルファベットの「E」に類似するような形状である。
【0077】
このスライスデータに対して、
図11(a)は、縦方向にレーザ光を移動させる例である。スライスデータの上と下の境界ではレーザ光を横方向に移動させて折り返す。スライスデータの全領域についてレーザ光を途中で消灯することなく移動させることができる。
【0078】
図11(b)は、横方向にレーザ光を移動させる例である。スライスデータの左と右の境界ではレーザ光を縦方向に移動させて折り返す。
【0079】
3つの柱状の部分領域については、実線、長い点線、短い点線で示すように、一つの柱状の部分領域の照射が終わったらレーザ光を消灯して別の柱状の部分領域に移動し、その後にレーザ光を再度点灯して照射を行う。
【0080】
例えば、3つの柱状の部分領域のうち最初に右端で、横方向にレーザ光を移動させ、折り返しながら、上から下に移り、次の中央では下から上に移り、左端では、上から下に移る。このような移動を行うのは、各柱状の部分領域の間を移動する時間を最短にするためである。
【0081】
3つの柱状の部分領域に繋がる横方向に連続する部分領域については、例えば、左端の柱状の部分領域の照射に引き続きレーザ光を途中で消灯することなく連続して照射する。
【0082】
図12(a)では、レーザ光の縦方向の移動と横方向の移動を併用する。この場合、3つの柱状の部分領域のうち、左端と右端の柱状の部分領域については、左端と右端の柱状の部分領域とともにこれに繋がる横方向に連続する部分領域の一部も縦方向にレーザ光を移動させる(実線と短い点線で示す)。中央の柱状の部分領域は、左側の短い境界線に合わせて縦方向にレーザ光を移動させる(長い点線で示す)。残りの横方向に連続する部分領域の一部では、中央の柱状の部分領域への照射が終わったら引き続きレーザ光を点灯させた状態で横方向に移動させ、途中で消灯することなく連続して照射する。
【0083】
図12(b)では、横方向にレーザ光を移動させることは
図11(b)と同様である。一方で、
図11(b)と異なり、一つの柱状の部分領域でレーザ光を移動させるとき移動方向の延長上に1以上の別の柱状の部分領域があれば、レーザ光の非照射領域ではレーザ光を消灯して移動方向の延長上を移動し、別の部分領域に到達してからレーザ光を再度点灯して別の柱状の部分領域を照射する。
【0084】
(制御方法の第1例)
図4〜
図6は、
図1及び
図2の粉末床溶融結合装置を用いた制御方法の第1例を示す平面図である。
【0085】
制御部103による溶融結合の制御の開始前に、
図3の第1の分割態様に示される複数の分割領域を設定し、メモリ104に記憶させる。
【0086】
そのため、まず、予備調査により、例えば1秒刻みの経過時間に対応する薄層形成容器11の上面の中心から温度安定領域の境界までの距離を調べておく。
【0087】
そして、制御部103に接続されたモニタ105に、薄層形成容器11の上面の画像と薄層形成容器11の上面の中心Cを原点とするX−Y座標とを重ねて表示させる。そして、予め調べておいた複数の前記距離に相当するX軸、又はY軸上の位置をタッチペンで触れる。これにより、制御部103によって、それらの距離を半径とする複数の円が算出され、さらに各円に内接する正方形が算出される。各正方形が、
図3の第1の分割態様に示される、経過時間に対応させた複数の分割領域に対応する。このようにして設定された各分割領域の境界B
0〜B
6の位置がメモリ104に記憶される。
【0088】
或いは、キーボード106により、薄層形成容器11の上面の中心Cから温度安定領域の境界までの距離を、例えば1秒刻みの経過時間で、入力してもよい。この場合も、上記と同じ経過をたどり、経過時間に対応させた複数の分割領域が設定され、各分割領域の境界B
0〜B
6の位置がメモリ104に記憶される。
【0089】
スライスデータは、予め、メモリ104に記憶させてある。
図4(a)に示すように、星形柱、ナット、円柱の3つの造形物を一度に作製するためのものが設定されている。中央部に円柱が、左斜め上に星形柱が、右斜め上にナットがそれぞれ配置されている。
【0090】
レーザ光の照射は、時間経過に応じて3つの造形物のうち温度安定領域に平面形状全体が入ったもののみ行うように設定されている。
【0091】
データを記憶させたら、制御部103により次のように溶融結合の制御が行われる。
【0092】
まず、粉末材料の薄層19aを形成する。その直後(0秒時点)には、
図4(a)のように、円柱に係るスライスデータ全体が温度安定領域(境界B
0の内側領域に対応)内にある。
【0093】
したがって、
図4(b)に示すように、円形領域の左端から、縦方向にレーザ光を移動させながら照射する。レーザ光が円形領域の上の境界から下の境界に達したら、次に、レーザ光を下の境界で右側に移動させ、折り返して下の境界から上の境界まで薄層19aにレーザ光を照射する。この操作を順次繰り返し、円形領域全体にわたり、薄層19aを溶融し固化する。最後に、円形の輪郭に沿ってレーザ光を移動させて、薄層19aを溶融し固化する。
【0094】
この間に、薄層19aの形成直後から3秒かかったとすると、
図5(a)に示すように、温度安定領域が広がり、次に、ナットに係るスライスデータ全体が温度安定領域(境界B
3の内側領域に対応)内に入る。
【0095】
そこで、
図5(b)に示すように、ナットの平面形状の左端から、縦方向にレーザ光を移動させ、境界で折り返しながら、ナットの平面形状の領域全体にわたりレーザ光を照射し、薄層19aを溶融し固化する。
【0096】
さらに、この間に、時間が経過し、薄層19aの形成直後から5秒経過したとすると、
図6(a)に示すように、星形柱に係るスライスデータ全体が温度安定領域(境界B
5の内側領域に対応)内に入る。
【0097】
そこで、
図6(b)に示すように、星形形状の左端から、縦方向にレーザ光を移動させ、星形形状の境界で折り返しながら、星形形状の領域全体にわたりレーザ光を照射し、薄層19aを溶融し固化する。
【0098】
なお、上記では、ナットの平面形状や星形形状は円形と異なり単純でないため、ナットの平面形状や星形形状に対してレーザ光の照射方法を具体的に説明していないが、
図11(a)、(b)及び
図12(a)、(b)に従って種々のレーザ光の照射方法を適用できる。この制御方法によれば、温度安定領域内に入ったスライスデータ全体を一時に照射しているため、上記のレーザ光の照射方法のうちそれらの形状に対して通常行われている方法と同じ方法でレーザ光の照射を行うことができる。そうすると、時間短縮の効果を確認することができる。
【0099】
(制御方法の第2例)
次に、
図7〜
図8を参照して、別の形状のスライスデータについて
図3の第1の分割態様に基づき粉末床溶融結合を行うための制御方法について説明する。
【0100】
図7〜
図8は、
図1及び
図2の粉末床溶融結合装置を用いた制御方法の第2例を示す平面図である。
【0101】
スライスデータは、第1例と同様に、予めメモリ104に記憶させてある。
【0102】
スライスデータは、一つの造形物を作製するためのものである。
図7(a)に示すように、鍵のような形状を有し、横長に配置されているが、どのように配置しても薄層19aの形成直後に全体の形状の一部しか温度安定領域(境界B
0の内側領域に対応)に入らないような大きさとなっている。
【0103】
一方で、温度安定領域に入っている部分は、スライスデータの上の境界と下の境界がともに温度安定領域に入っており、縦方向にレーザ光を移動させた場合、一の境界から他の境界まで移動する途中で温度安定領域が途切れることがない。
【0104】
スライスデータの一の境界から他の境界まで移動する途中で温度安定領域が途切れてしまうと、そこでレーザ光の折り返しが必要になる。折り返しの直前ではレーザ光の移動速度を減速する必要があるため、境界でないところで折り返しが必要になると余計な時間がかかってしまう。このため、場合によっては、スライスデータを適切に配置し、又は、レーザ光の照射の仕方を
図11(a)、(b)や、
図12(a)、(b)に従って工夫して、境界でないところでの折り返しを避けることが望ましい。
【0105】
この第2例でも、制御部103による溶融結合の制御の開始前に、第1例と同様にして、分割領域をメモリ104に記憶させる。
【0106】
データを記憶させたら、制御部103により次のように溶融結合の制御が行われる。
【0107】
まず、薄層19aを形成する。その直後(0秒時点)に、
図7(b)に示すように、温度安定領域(境界B
0の内側領域に対応)内に入っているスライスデータの部分領域の薄層19aに対して、レーザ光を縦方向に移動させ、スライスデータの境界で折り返しながら照射し、薄層19aを溶融し固化する。なお、短い点線は直近に行われたレーザ光の照射を示す。以下同じである。
【0108】
この間に、薄層19aの形成直後から1秒かかったとすると、
図8(a)に示すように、拡大した温度安定領域(境界B
1の内側領域に対応)に新たに入ってきたスライスデータの部分領域の薄層19aに対して、レーザ光を縦方向に移動させ、境界で折り返しながら照射し、薄層19aを溶融し固化する。なお、実線はすでに前に行われたレーザ光の照射を示す。以下同じである。
【0109】
この間に、時間が経過し、薄層19aの形成直後から2秒経過したとすると、
図8(b)に示すように、さらに拡大した温度安定領域(境界B
2の内側領域に対応)に新たに入ったスライスデータの部分領域の薄層19aに対して、レーザ光を縦方向に移動させ、境界で折り返しながら照射し、薄層19aを溶融し固化する。
【0110】
さらに、この間に、薄層19aの形成直後から3秒以上経過したとすると、
図8(c)に示すように、スライスデータの形状全体が温度安定領域(境界B
3の内側領域に対応)内に入ってくる。
【0111】
そこで、
図8(c)に示すように、さらに拡大した温度安定領域に新たに入ったスライスデータの部分領域の薄層19aに対して、レーザ光を縦方向に移動させ、スライスデータの境界で折り返しながら照射し、薄層19aを溶融し固化する。
【0112】
そして、最後に、スライスデータの形状の輪郭に沿ってレーザ光を移動させながら薄層19aに照射し、薄層19aを溶融し固化する。
【0113】
以上により、スライスデータの形状の領域全体にわたって結合層19bが形成される。
【0114】
(制御方法の第3例)
図9(a)、(b)は、第2例の変形例である制御方法の第3例を示す平面図である。
【0115】
第3例は、第2例と同じスライスデータについて
図3の第1の分割態様に基づき粉末床溶融結合を行うための制御方法である。
【0116】
第2例では、
図7(b)に示す薄層形成直後の溶融結合が終わるまで1秒かかったとしているが、第3例では、
図9(a)に示す薄層形成直後の溶融結合が終わるまで、もっと長く、3秒以上かかったとする。
【0117】
その場合、
図9(b)に示すように、最初のレーザ光の照射が終わったときにすでにスライスデータの形状全体が温度安定領域(境界B
3の内側領域に対応)内に入ってくる。
【0118】
そこで、一気にスライスデータの残りの全領域の薄層19aに対してレーザ光を照射する。この場合、残りの全領域の薄層19aに対してどこからでもレーザ光を照射することができるので、最後にレーザ光を照射したところに近いところから引き続きレーザ光を照射し始めるとよい。
【0119】
以上により、スライスデータの形状の領域全体にわたって結合層19bが形成される。
【0120】
(b)第2の分割態様と第2の分割態様に基づく制御方法
(第2の分割態様)
次に、
図10(a)、(b)を参照して、薄層形成容器11内の粉末材料の薄層19aに分割領域を設定する第2の分割態様について説明する。
【0121】
図10(a)は、分割の単位領域を示す平面図である。
【0122】
図10(b)は、温度分布の経時変化にしたがって単位領域を基に分割領域を設定した例を示す平面図である。
【0123】
薄層形成容器11内側の上面領域の中心Cを通るX軸とY軸を設定する。このとき、X軸とY軸の交点、すなわちX−Y座標系の原点は、薄層形成容器11内側の上面領域の中心Cに一致する。
【0124】
さらに、X軸とY軸の交点が中央部の分割の単位領域の中心となるように、分割の単位領域を配置する。
【0125】
例えば、
図10(a)の点線で示すように、薄層形成容器11内側の上面領域の横と縦を格子状にそれぞれ14分割し、横と縦にそれぞれ15個づつの分割の単位領域を設定する。分割の単位領域は点線で囲まれた正方形の領域である。
【0126】
このようにすると、薄層形成容器11内側の上面領域の中心Cを原点とするX−Y座標系において、各分割の単位領域の位置が各単位領域の中心座標によって特定できることになる。
【0127】
次に、分割の単位領域を基に、温度分布の経時変化にしたがって分割領域を設定する方法について、第1例と第2例により説明する。
【0128】
設定方法の第1例は、温度安定領域が経時的に等方的に広がっていく場合である。この場合、
図3と同じように、分割領域の境界を設定し、その境界の内側領域を温度安定領域とみなす。
【0129】
この場合、分割領域の境界が単位領域の境界と一致するように分割するとよい。
【0130】
設定方法の第2例は、薄層形成容器11の前の方(
図10(b)では下方に当たる)が冷めやすい場合である。この場合、
図10(b)に示すように、前の方で温度安定領域の広がり方が遅く、横の方と後の方で温度安定領域の広がり方が速くなるように、経過時間に対応する複数の分割領域の境界を設定する。その境界の内側領域を温度安定領域とみなす。
【0131】
図10(b)において、各分割領域の境界は、符号B
10〜B
16で表された太い実線で示される。最も内側の境界B
10は、粉末材料の薄層19aの形成直後の温度安定領域の境界を示す。その外側の境界B
11〜B
16は、下付きの数字が大きくなるほど薄層19aの形成直後から時間が次第に経過し、それに応じて広がってきた温度安定領域の境界を示す。
【0132】
上記の第2の分割態様では、分割の単位領域の位置を単位領域の中心座標によって特定することができるため、各分割領域の境界B
10〜B
16も座標上で特定することができる。
【0133】
したがって、各分割領域の境界B
10〜B
16と経過時間とを対応させ、かつスライスデータを同じ座標上で重ね合わせることで、スライスデータの形状のどの部分がいつ温度安定領域内に含まれるか特定することができるようになる。
【0134】
第2の分割態様は、特に、第2例のように温度安定領域の広がり方が等方的でない場合に分割領域を設定するのに有用である。
【0135】
(第2の分割態様に基づく制御方法)
第2の分割態様に基づき粉末床溶融結合方法を行うために、
図4〜
図9と同様な制御方法を適用することができる。
【0136】
この場合も、制御部103による溶融結合の制御の開始前に、第1の分割態様に基づく制御方法と同様に分割領域の境界B
10〜B
16をメモリ104に記憶させる。
【0137】
そのとき、分割領域がX−Y座標の原点を中心とする対称的な形にならない場合があるため、その場合、モニタ(画像表示装置)105を使う方が容易である。
【0138】
例えば、モニタ105に分割の単位領域とX−Y座標とを重ね合わせて表示させ、1秒刻みの経過時間で順次、温度安定領域に含まれる単位領域をタッチペンで触れることにより行う。
【0139】
或いは、1秒刻みの経過時間で順次、温度安定領域に含まれるすべての単位領域を囲むようにタッチペンで範囲を描くことによっても行うことができる。
【0140】
なお、分割領域をメモリ104に記憶させる方法は、これに限られず、種々の方法で行うことができる。
【0141】
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、薄層19aの形成直後から温度安定領域の経時的な広がりに対応させて複数の分割領域を薄層形成容器11の内側上面に設定することで、経過時間に応じて対応する分割領域を特定し、さらにその分割領域内に含まれるスライスデータの部分領域を特定することができる。
【0142】
したがって、薄層19aの形成直後にすでに温度安定領域内にあるスライスデータの部分領域の薄層19aに対して、薄層19aの形成直後から間を置かずに直ちにレーザ光を照射することができる。そして、その間にさらに温度安定領域が広がり、その領域内にスライスデータの新たな部分領域が含まれるようになるため、その部分領域の薄層19aに対してレーザ光を照射することができる。
【0143】
このようにして、スライスデータに対して薄層19aの形成直後から間を置かずに次々とレーザ光の照射を行うことができる。
【0144】
よって、レーザ光の照射の待ち時間を必要とせず、したがって、造形に要する時間を短縮することができる。
【0145】
なお、薄層19aの形成直後にレーザ光を照射している時間は、比較的長いので、その間に薄層19a全体が温度安定領域内に含まれるようなることが多い。その場合は、薄層形成直後の分割領域を特定するだけでよく、その領域内の薄層19aにレーザ光を照射した後は、スライスデータの残りの領域の薄層19aに対してどこからでもレーザ光を照射することができる。
【0146】
もっと簡略化して、分割領域を特に設定せずに、薄層19aの中央領域から、順次、薄層19aの周辺領域に、スライスデータにしたがってレーザ光を照射していくことができる場合もある。
【0147】
(2)本実施形態の粉末床溶融結合方法について
図13〜
図17を参照して、本実施形態の粉末床溶融結合方法について説明する。
【0148】
図13〜
図17は、制御部103の制御により動作する粉末床溶融結合装置を示す断面図である。溶融結合は、
図4乃至
図6に示す制御方法によって行う。
【0149】
図13〜
図17の粉末床溶融結合方法では、粉末材料の薄層19aの形成直後に間を置かずにレーザ光を照射することができるため、
図14(a)から
図15(a)までのリコータ20の作業について、レーザ光の照射中に同時進行が可能である。
【0150】
制御部103は、造形を開始する前に、予めヒータ14a及び14bを動作させて左右のフランジ13a及び13bの上面を溶融温度より少し低い温度に加熱しておく。さらに、他の加熱手段を動作させて、容器11, 12a, 12b内の粉末材料19が、溶融温度より少し低い温度で、かつ、レーザ光照射開始下限温度より高い温度で安定した状態になるように設定しておく。
【0151】
レーザ光照射開始下限温度は、例えば、樹脂粉末の場合、溶融温度より50℃低い温度とする。
【0152】
一方、金属粉末の場合も、樹脂粉末の場合に準ずる。この場合、金属の溶融温度は樹脂よりもかなり高く、したがって、樹脂の場合溶融温度より50℃低いとした下限についてより大きい幅を持たせるとよい。
【0153】
まず、
図13(a)に示すように、リコータ20を第1粉末材料収納容器12aの外側の縁部に配置する。
【0154】
次いで、
図13(b)に示すように、粉末材料19を載せた第1フィードテーブル17aを上昇させて第1粉末材料収納容器12aから粉末材料19を突出させるとともに、パートテーブル15を薄層19a一層分だけ下降させる。また、第2フィードテーブル17bを、薄層19aの形成後に残る粉末材料が十分に収納される程度に下降させる。
【0155】
次いで、
図13(c)に示すように、リコータ20を右側に移動させて第1粉末材料収納容器12aから突出させた粉末材料19を押し取って薄層形成容器11まで運ぶ。そして、リコータ20により薄層形成容器11内に粉末材料19を運び入れながら表面を均してパートテーブル15上に粉末材料の薄層19aを形成させる。さらに、残った粉末材料19を第2粉末材料収納容器12bまで運ぶため、リコータ20を右側に移動させる。
【0156】
このとき、リコータ20が右側のフランジ13b上に達した後に、直ちに、
図14(a)に示すように、粉末材料の薄層19aへのレーザ光21の照射を開始する。
【0157】
レーザ光21は、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、かつ、温度分布の経時変化に従って順次分割領域にレーザ光21を照射する。そして、レーザ光21を照射している間に、以下の動作を行わせる。
【0158】
すなわち、
図14(b)に示すように、リコータ20をさらに右側に移動させて、残った粉末材料19を第2粉末材料収納容器12bまで運び、第2フィードテーブル17b上に収納する。
【0159】
次に、
図14(c)に示すように、粉末材料19を載せた第2フィードテーブル17bを上昇させて第2粉末材料収納容器12b上面から粉末材料19を突出させる。
【0160】
次いで、
図15(a)に示すように、リコータ20を左側に移動させて第2粉末材料収納容器12bから突出させた粉末材料19を押し取る。続いて、薄層形成容器11まで粉末材料19を運ぶため、リコータ20をさらに左側に移動させる。そして、リコータ20が右側のフランジ13b上に達したときに、まだレーザ光21の照射が終っていない場合、リコータ20を右側のフランジ13b上で待機させる。待機中、右側のフランジ13b上の粉末材料19はヒータ14bにより加熱され、溶融温度より少し低い温度に維持される。以下同じである。
【0161】
次いで、
図15(b)に示すように、レーザ光21の照射が終ってから、パートテーブル15を薄層19a一層分だけ下降させるとともに、第1フィードテーブル17aを下降させる。なお、第1フィードテーブル17aは、レーザ光21の照射中に下降させておいてもよい。
【0162】
次に、
図15(c)に示すように、リコータ20を左側に移動させて、1層目の結合層19b上に2層目の粉末材料の薄層19aを形成し、リコータ20が左側のフランジ13aに達した後、
図16(a)に示すように、直ちに、レーザ光21を照射し始める。
【0163】
レーザ光21は、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、かつ、温度分布の経時変化に従って順次分割領域にレーザ光21を照射する。そして、レーザ光21を照射している間に、以下の動作を行わせる。
【0164】
すなわち、
図16(b)に示すように、リコータ20をさらに左側に移動させて、残った粉末材料19を第1粉末材料収納容器12aまで運び、第1フィードテーブル17a上に収納する。
【0165】
次に、
図16(c)に示すように、粉末材料19を載せた第1フィードテーブル17aを上昇させて第1粉末材料収納容器12a上面から粉末材料19を突出させる。
【0166】
次いで、
図17(a)に示すように、リコータ20を右側に移動させて第1粉末材料収納容器12aから突出させた粉末材料19を押し取る。続いて、薄層形成容器11まで粉末材料19を運ぶため、リコータ20をさらに右側に移動させる。そして、リコータ20が左側のフランジ13b上に達したときに、まだレーザ光21の照射が終っていない場合、リコータ20を左側のフランジ13b上で待機させる。待機中、左側のフランジ13b上の粉末材料19はヒータ14bにより加熱され、溶融温度より少し低い温度に維持される。以下同じである。
【0167】
次いで、
図17(b)に示すように、レーザ光21の照射が終ってから、パートテーブル15を薄層19a一層分だけ下降させるとともに、第2フィードテーブル17bを下降させる。なお、第2フィードテーブル17bは、レーザ光21の照射中に下降させておいてもよい。
【0168】
その後、
図13(c)〜
図17(b)に示す工程を繰り返して、所要数の結合層19bを積層させ、3次元造形物を作製させる。
【0169】
以上説明した本発明の実施形態によれば、制御部103による制御により、粉末材料の薄層19aを形成した直後から時間経過とともに次々に温度安定領域に入ってくる薄層19aの部分領域に対して、順次、レーザ光21を照射している。これにより、薄層19aの形成直後から待機時間なしに直ちにレーザ光21を照射することができるため、造形に要する時間を短縮することができる。
【0170】
また、薄層19aの形成後、薄層19aにレーザ光21を照射している間に、リコータ20を移動させて収納側のフィードテーブル17b又は17a上に余った粉末材料を収納し、その後に新たに供給側となったフィードテーブル17b又は17aを上昇させて粉末材料収納容器12b又は12a上面から新たな粉末材料19を突出させ、リコータ20を逆向きに移動させて突出させた粉末材料19を押し取り、薄層形成容器11の手前まで運んでいる。
【0171】
そして、レーザ光21の照射が終わった直後に、間を置かずに、パートテーブル15を下降させ、リコータ20を移動させて新たな粉末材料19をパートテーブル15上に運び入れて新たな薄層19aを形成し、新たな薄層19aに対してレーザ光21の照射を行っている。
【0172】
このように、本発明の実施形態によれば、1層の結合層19bを形成するにつき要する時間(1サイクル)は、パートテーブル15の下降時間と、パートテーブル15上に薄層19aを形成するためのリコータ20の移動時間と、レーザ光21の照射時間とを含むのみである。言い換えれば、結合層19bを1層形成するにつき、パートテーブル15上に薄層19aを形成し終えた直後から、新たな粉末材料19がパートテーブル15の手前に運ばれてくるまでの時間だけさらに短縮することができる。
【0173】
よって、結合層19bを数千層も積層して造形物を完成させる必要がある粉末床溶融結合方法において、造形に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0174】
さらに、粉末材料の溶融温度との温度差が小さくなった温度安定領域を、順次、溶融結合しているので、結合層19b、ひいては、完成した造形物の熱歪を小さく抑えて反りを防止することができる。
【0175】
したがって、本発明の実施形態によれば、結合層19b、ひいては、完成した造形物の熱歪を小さく抑えて反りを防止しつつ、造形に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0176】
(3)実施例
次に、
図13乃至
図17の粉末床溶融結合方法に基づき造形に要する時間を調査した結果について説明する。
【0177】
調査では、全体の大きさが横幅1600mm、奥行き750mmである造形部102を有する粉末床溶融結合装置を用いた。造形部102は、横幅560mm、奥行き560mmの薄層形成容器11と、横幅340mm、奥行き560mmの第1及び第2粉末収納容器12a, 12bと、横幅160mm、奥行き600mmの第1及び第2フランジ14a, 14bとからなる。
【0178】
そして、薄層形成容器11内の粉末材料の薄層19aの上表面の全面積の凡そ30%に相当する領域にレーザ光21を照射した。調査によれば、レーザ光21の照射時間(TL)は、造形物の形状に依存し、1層あたり約10秒から60秒以上変化した。平均30秒とする。
【0179】
また、リコータ20の移動速度は定速度時で200mm/秒であった。
【0180】
この場合、粉末材料収納容器12a及び12b上でのリコータ20の移動時間は、計算上は、ともに1.7秒となる。しかし、加速を含む移動では、リコータ20の振動を避けるべく加速を緩やかにしているのに対して、減速を含む移動では、リコータ20の振動を避ける必要がなく急速に減速している。このため、減速を含む移動時間(T4)は1.5秒となり、加速を含む移動時間(T5)は3秒となった。
【0181】
また、フランジ13a 13b上では、移動時間(T1, T3)はともに0.8秒となる。
【0182】
また、薄層形成容器11上では、移動時間(T2)は2.8秒となる。
【0183】
また、パートテーブル15を下降させるのに要する時間(Tpd)と、フィードテーブル17a、17bを上昇させるのに要する時間(Tfu)と、フィードテーブル17a、17bを下降させるのに要する時間(Tfd)とは、それぞれ約0.5秒であった。
【0184】
ところで、パートテーブル15上に薄層19aを形成し終えた直後から、リコータ20が残った粉末材料を粉末材料収納容器12a又は12bに収納し、粉末材料収納容器12a又は12bから新たな粉末材料をフランジ13a又は13b上に運んでくるまでの時間(T)は、リコータ20がフランジ13a又は13b上を移動する時間(T3=0.8秒)と、粉末材料収納容器12a又は12b上を減速移動する時間(T4=1.5秒)と、フィードテーブル17a又は17bを上昇させる時間(Tfu=0.5秒)と、リコータ20が再び粉末材料収納容器12a又は12b上を加速移動してフランジ13a又は13b上に到達するまでの時間(T5=3秒)とを合計した時間、すなわち、5.8秒となる。
【0185】
この時間(T)を、レーザ光21の照射時間(TL=30秒)と比較すると、レーザ光21の照射時間の方が、かなり長い。すなわち、レーザ光21を照射している間に、上記作業を同時進行で行い、リコータ20が残った粉末材料を収納し、新たな粉末材料をフランジ13a又は13b上に運んでくることができる。
【0186】
したがって、この実施形態の粉末床溶融結合方法では、1サイクルに要する時間は、パートテーブル15上に薄層19aを形成するために、パートテーブル15を下降する時間(Tpd=0.5秒)と、リコータ20がフランジ13a又は13b上を移動する時間(T1=0.8秒)と、リコータ20が薄層形成容器11上を移動する時間(T2=2.8秒)と、レーザ光の照射時間(TL=30秒)とを合計した時間、すなわち、34.1秒となる。
【0187】
なお、
図15(b)に示すフィードテーブル17a又は17bを下降させるのに要する時間(Tfd)は、パートテーブル15の下降時に同時にその下降も行っているので、短縮の対象となる時間としてカウントしていない。
【0188】
(比較例)
図23〜
図24は、
図21〜
図22の粉末床溶融結合装置を用いて行われる比較例の粉末床溶融結合方法を示す断面図である。
【0189】
最初に、
図23(a)に示すように、左側の粉末材料収納容器52aを最初の粉末材料59の供給側とし、右側の粉末材料収納容器52bを最初の粉末材料59の収納側とし、リコータ60を左側の粉末材料収納容器52aの外側のフランジ上に置く。
【0190】
容器52a, 52b内の粉末材料59は、溶融温度よりも少し低い温度に加熱されている。また、薄層形成容器51内に形成された粉末材料の薄層59aを短時間に溶融温度に昇温するため、及び溶融時に温度の均一性を保つため、薄層形成容器51の周辺のフランジ53a, 53bの下などにヒータ54a, 54bなどが設置され、溶融温度よりも少し低い温度に加熱している。薄層59aの温度がこれよりもさらに低い所定の温度(レーザ光照射開始下限温度)に達したら、レーザ光の照射が開始される。
【0191】
次いで、
図23(b)に示すように、右側の粉末材料収納容器52bのフィードテーブル57bを下降させ、薄層形成容器51のパートテーブル55を薄層1層分下降させるとともに、左側の粉末材料収納容器52aのフィードテーブル57aを上昇させて粉末材料収納容器52a上に粉末材料59を突出させる。
【0192】
次いで、
図23(c)に示すように、リコータ60を右側に移動させて突出した粉末材料59を押し取って薄層形成容器51まで運び、薄層形成容器51に運び入れながら表面を均してパートテーブル55上に第1層目の粉末材料の薄層59aを形成する。
【0193】
次いで、リコータ60をさらに右側に移動させて残った粉末材料59を右側の粉末材料収納容器52bに収納する。
【0194】
次いで、残った粉末材料59を粉末材料収納容器52bに収納した後に、
図24(a)に示すように、薄層形成容器51内の粉末材料の薄層59a全体の温度がレーザ光照射開始下限温度以上で安定するまで待機する。待機時間は、およそ3秒である。
【0195】
薄層59a全体の温度がレーザ光照射開始下限温度以上で安定したら、
図24(b)に示すように、レーザ光61の照射を開始し、引き続き、
図24(c)に示すように、レーザ光61により第1層目の粉末材料の薄層59aを選択的に溶融し固化して、パートテーブル55上に第1層目の結合層59bを形成する。
【0196】
続いて、右側の粉末材料収納容器52bを粉末材料の供給側とし、左側の粉末材料収納容器52aを余った粉末材料の収納側として、リコータ60を左側に移動させ、
図23(b)〜
図23(c)の工程に準じて、第1層目の結合層59bの上に第2層目の粉末材料の薄層を形成する。
【0197】
その後、
図24(a)〜
図24(c)の工程に準じて、薄層形成容器51内の粉末材料の薄層の温度がレーザ光照射開始下限温度以上で安定するのを待ってレーザ光61を照射し、第2層目の粉末材料の薄層59aを選択的に溶融し固化して、パートテーブル55上に第2層目の結合層59bを形成する。
【0198】
以降、上記の動作を繰り返して第2層目の結合層59bの上に第3層目以降の結合層を積層して、所要の造形物が作製される。
【0199】
以上のように、比較例によれば、1サイクルは、1層の結合層59bを形成するのに必要な次の作業を含む。
【0200】
すなわち、パートテーブル55とフィードテーブル57bを下降させ、フィードテーブル57aを上昇させる作業(
図23(b))と、リコータ60を移動させて、一方の粉末材料収納容器52aから粉末材料59を押し取り、薄層形成容器51に運び入れながらパートテーブル55上に粉末材料の薄層59aを形成する作業(
図23(c))と、さらにリコータ60を移動させて、残った粉末材料59を他方の粉末材料収納容器52bに収納する作業(
図23(c))と、粉末材料の薄層59aがレーザ光照射開始下限温度以上で安定するまで待機する作業(
図24(a))と、粉末材料の薄層59aにレーザ光61を照射して、溶融し固化して結合層59bを形成する作業(
図24(b)〜(c))とである。
【0201】
実際に、上述の実施例と同じ条件を適用して1サイクルに要する時間を調査したところ、以下のような結果を得た。
【0202】
すなわち、1サイクルは、パートテーブル15の下降時間(Tpd=0.5秒)、フィードテーブル17a、17bの上昇時間及び下降時間(ともにTfu, Tfd=0.5秒)のうち最も長くかかる時間(Tpd=0.5秒)と、一方の粉末材料収納容器12a又は12bから他方の粉末材料収納容器12b又は12aまでのリコータ20の移動時間(T1+T2+T3+T4+T5=8.9秒)と、粉末材料収納容器12bに粉末材料を収納した後、レーザ光の照射を開始するまでの待機時間(Tw=3秒)と、レーザ光の照射時間(TL=30秒)とを含み、合計約42.4秒かかっていた。
【0203】
したがって、造形物を完成させるのにたとえば3千層の結合層を積層する場合、約127200秒(35.3時間)とかなり長時間を要していた。
【0204】
図18は、本願の実施例と比較例とを比較するためまとめて示した表である。
【0205】
図18では、比較例で1層の結合層59bを形成するために必要な各作業に要する時間(T1, T2, Tpd, T3, T4, Tw, TL, T5)に対して、実施例の作業に要する時間を対応させて比較した。
【0206】
表中、○印はレーザ光の照射と別に行う必要がある作業であり、時間短縮の対象とはならないものである。一方、×印はレーザ光の照射中に同時進行が可能な作業であり、時間短縮の対象となるものである。
【0207】
また、実施例の各作業について、対応図(
図15(b)乃至
図17(a))を挙げるとともに、比較例の各作業について、対応図(
図23(b)乃至
図24(c))を挙げた。
【0208】
表に示すように、実施例では、比較例のリコータ20の作業に要する時間(T3+T4+T5)は、レーザ光21の照射中に同時進行可能であり、比較例の薄層の温度上昇のための待ち時間(Tw)は不要である。
【0209】
すなわち、実施例では、比較例に対して1層の結合層あたり凡そ8.3秒だけ短縮できる。これにより、造形物を完成させるのに3千層の結合層を積層した場合、およそ24900秒(6.92時間)短縮できることになる。
【0210】
なお、
図15(b)に示すフィードテーブル17a又は17bを下降させるのに要する時間(Tfd)は、比較例では、
図23(b)に示すように、パートテーブル15の下降時に同時にその下降も行い、1サイクルに要する時間としてカウントしていないので、実施例でも短縮の対象となる時間としてカウントしていない。
【0211】
また、
図16(c)に示すフィードテーブル17a又は17bを上昇させるのに要する時間(Tfu)も、同様に、短縮の対象となる時間としてカウントしていない。
【0212】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、比較例に比べて約19.3%の時間短縮率が得られた。
【0213】
なお、上述の作業時間(T1, T2, T3, T4, Tw, TL, T5)は、粉末床溶融結合装置の大きさ、リコータの移動速度、造形物の形状などに応じて変動するため、時間短縮の効果も変動する。
【0214】
例えば、造形物の形状に応じてレーザ光の照射時間が大きく変動し、レーザ光の照射時間が短い場合に、時間短縮の効果がより顕著になる。
【0215】
(第2実施形態)
図19(a)、(b)は、第2実施形態に係る粉末床溶融結合装置と粉末床溶融結合方法を示す断面図である。
【0216】
この実施形態の粉末床溶融結合装置は、温度測定手段23を備えたことが
図1の粉末床溶融結合装置と異なる。温度測定手段23は、例えば、粉末材料の薄層19aの表面の温度分布を赤外線24により一度に計測することができる熱画像センサ(サーモグラフィ)を用いる。
【0217】
この実施形態に係る粉末床溶融結合方法では、薄層19aの形成直後から一定の経過時間ごとに熱画像センサ23により粉末材料の薄層19aの表面の温度分布を計測する。
図20は、ある経過時間で計測した粉末材料の薄層19aの表面の温度分布を示す。図中、符号θ
1〜θ
4は、温度の絶対値を例えば5℃間隔で示した等温線である。なお、符号11は薄層形成容器である。11a, 11b, 11c, 11dは、それぞれ、薄層形成容器11の前縁、後縁、左縁及び右縁である。
【0218】
次いで、計測した表面の温度分布に基づき、温度安定領域をX−Y座標上で特定する。この場合、等温線が、必ずしも
図25のレーザ光照射開始下限温度に一致しない場合が多いので、レーザ光照射開始下限温度以上にある等温線の内側を、温度安定領域とみなす。
【0219】
なお、温度安定領域は、粉末材料の溶融温度よりも低くかつ所定の温度以上の温度範囲である。
【0220】
例えば、樹脂粉末の場合、下限を溶融温度より50℃低い温度とし、上限を溶融温度より10℃低い温度とする。
【0221】
一方、金属粉末の場合も、樹脂粉末の場合に準ずる。この場合、金属の溶融温度は樹脂よりもかなり高く、したがって、樹脂粉末の場合溶融温度より50℃低いとした下限についてより大きい幅を持たせるとよい。
【0222】
上述の下限の温度が、
図25のレーザ光照射開始下限温度に対応する。
【0223】
次いで、
図4乃至
図6又は
図7乃至
図9に準じて、温度安定領域内にあるスライスデータの全領域又は部分領域を特定し、特定した領域の薄層19aに対して、
図11乃至
図12のいずれかに従ってレーザ光を移動させ、折り返しながら照射し、薄層19aを溶融し固化する。
【0224】
その後、時間経過に対応させて、表面の温度分布の計測と、温度安定領域の特定と、レーザ光の移動及び照射とを繰り返して、スライスデータに対応する結合層を形成する。
【0225】
これを、複数層にわたり繰り返して、造形物を形成する。
【0226】
以上のように、第2実施形態によれば、温度の実測に基づき、より正確に温度安定領域を特定することができるため、造形に要する時間を短縮することができるとともに、より確実に温度分布の不均一による結合層、ひいては完成した造形物の熱歪を抑え、反りを抑制することができる。
【0227】
また、特に、金属の場合、塊のときは熱伝導率が一定なので、仮に塊で薄層を形成した場合、温度分布の経時変化は、薄層を形成する度に変動が少ないと推測できる。これに対して、粉末にすると粒径が大小の分布を持ち、相互に点接触しているため、粉末の混ざり具合によって全体の熱伝導率など熱に関する諸元が薄層を形成する度に大きく変動する恐れがある。このため、温度分布の経時変化の予測が困難となることがある。このような場合に、熱画像センサで温度分布を実測しながら行う本実施形態の溶融結合方法は非常に有用なものとなる。
【0228】
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0229】
例えば、
図3に示すように、薄層形成容器11の内側上面の中心(C)から経過時間に対応して6つの同心円を描き、同心円に内接する6つの正方形を設定しているが、これに限られない。分割領域として、薄層形成容器11の内側縁部の形状に相似する形状を設定してすることができる。また、必ずしも薄層形成容器11の内側縁部の形状に相似していなくてもよい。円形或いは楕円形や、三角形や長方形その他の多角形を分割領域とすることができる。
【0230】
また、
図10(a)、(b)に示すように、正方形の分割の単位領域を基に、温度分布の経時変化にしたがって分割領域を設定しているが、これに限られない。三角形や長方形その他の多角形を分割の単位領域とすることができる。
【0231】
最後に、上記実施形態で説明した発明を以下に付記としてまとめる。
【0232】
(付記1)
エネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、
粉末材料の薄層を形成する薄層形成部と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱手段と、
造形を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
スライスデータに基づき、前記薄層の中央領域から前記エネルギービームの照射を始め、順次、前記薄層の周辺領域に前記エネルギービームの照射を移行して造形を行う工程とを行わせる
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0233】
(付記2)
前記粉末材料の薄層表面に、経時的に変化する前記薄層表面の温度分布に応じて経過時間に対応させて設定した複数の分割領域の位置を記憶するメモリを有し、
前記造形を行う工程は、前記経過時間に従って順次対応する前記分割領域の薄層に、前記スライスデータに基づき、前記エネルギービームの照射を移行して造形を行う工程である
ことを特徴とする付記1又は2に記載の粉末床溶融結合装置。
【0234】
(付記3)
前記スライスデータは、前記粉末材料の薄層表面に複数の分離した物体に対応させて設定され、
前記エネルギービームの照射を移行して造形を行う工程は、前記薄層の中央領域に配置された前記物体のスライスデータから前記エネルギービームの照射を始め、順次、前記薄層の周辺領域に配置された前記物体のスライスデータに前記エネルギービームの照射を移行して造形を行う工程であることを特徴とする付記1又は2に記載の粉末床溶融結合装置。
【0235】
(付記4)
粉末材料を収納する第1容器と、
粉末材料を収納する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器の間に置かれ、前記粉末材料の薄層を形成する第3容器と、
前記第1容器と、前記第3容器と、前記第2容器との間を移動し、前記粉末材料を運ぶ運搬部材と、
前記粉末材料の薄層を加熱するエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱手段と、
造形を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記運搬部材を移動して、前記第1容器から前記粉末材料を運び出し、さらに前記第3容器に運び入れて、前記粉末材料の薄層を形成し、残った前記粉末材料を前記第2容器に収納する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
スライスデータに基づき、前記薄層の中央領域から前記エネルギービームの照射を始め、順次、前記薄層の周辺領域に前記エネルギービームの照射を移行して第1結合層を形成する工程とを行わせる
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0236】
(付記5)
前記粉末材料の薄層表面に、経時的に変化する前記薄層表面の温度分布に応じて経過時間に対応させて設定した複数の分割領域の位置を記憶するメモリを有し、
前記第1結合層を形成する工程は、前記経過時間に従って順次対応する前記分割領域の薄層に、前記スライスデータに基づき、前記エネルギービームの照射を移行して第1結合層を形成する工程である
ことを特徴とする付記4に記載の粉末床溶融結合装置。
【0237】
(付記6)
前記制御手段は、
前記第1結合層を形成する工程の後、前記運搬部材を移動して、前記第2容器から前記粉末材料を運び出し、さらに前記第3容器に運び入れて、前記第1結合層の上に前記粉末材料の薄層を形成し、余った前記粉末材料を前記第1容器に収納する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
スライスデータに基づき、前記薄層の中央領域から前記エネルギービームの照射を始め、順次、前記薄層の周辺領域に前記エネルギービームの照射を移行して第2結合層を形成する工程とを行わせる
ことを特徴とする付記4に記載の粉末床溶融結合装置。
【0238】
(付記7)
前記粉末材料の薄層表面に、経時的に変化する前記薄層表面の温度分布に応じて経過時間に対応させて設定した複数の分割領域の位置を記憶するメモリを有し、
前記第2結合層を形成する工程は、前記経過時間に従って順次対応する前記分割領域の薄層に、前記スライスデータに基づき、前記エネルギービームの照射を移行して第2結合層を形成する工程である
ことを特徴とする付記6に記載の粉末床溶融結合装置。
【0239】
(付記8)
粉末材料を収納する第1容器と、
粉末材料を収納する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器の間に置かれ、前記粉末材料の薄層を形成する第3容器と、
前記第1容器と、前記第3容器と、前記第2容器との間を移動し、前記粉末材料を運ぶ運搬部材と、
前記粉末材料の薄層を加熱するエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱手段と、
造形を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記運搬部材を移動させ、前記第1容器から運び出した前記粉末材料を前記第3容器に運び入れて、前記粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
スライスデータに基づき、前記薄層の中央領域から前記エネルギービームの照射を始め、順次、前記薄層の周辺領域に前記エネルギービームの照射を移行して第1結合層を形成する工程とを行わせ、
一方で、前記粉末材料の薄層を形成する工程の後、前記第1結合層を形成する工程の間に、前記運搬部材を移動して、前記粉末材料の薄層を形成した後に残った前記粉末材料を前記第2容器に収納し、次いで、前記第2容器から前記粉末材料を運び出して前記第3容器の手前まで運ぶ工程を行わせる
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0240】
(付記9)
前記粉末材料の薄層表面に、経時的に変化する前記薄層表面の温度分布に応じて経過時間に対応させて設定した複数の分割領域の位置を記憶するメモリを有し、
前記第1結合層を形成する工程は、前記経過時間に従って順次対応する前記分割領域の薄層に、前記スライスデータに基づき、前記エネルギービームの照射を移行して第1結合層を形成する工程である
ことを特徴とする付記8に記載の粉末床溶融結合装置。
【0241】
(付記10)
前記制御手段は、
前記第1結合層を形成する工程の後、前記運搬部材を移動して、前記第3容器の手前まで運んだ前記粉末材料を前記第3容器に運び入れて、前記第1結合層の上に前記粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程と、
スライスデータに基づき、前記薄層の中央領域から前記エネルギービームの照射を始め、順次、前記薄層の周辺領域に前記エネルギービームの照射を移行させて第2結合層を形成する工程とを行わせ、
一方で、前記第1結合層の上に前記粉末材料の薄層を形成する工程の後、前記第2結合層を形成する工程の間に、前記運搬部材を移動して、前記粉末材料の薄層を形成した後に残った前記粉末材料を前記第1容器に収納し、次いで、前記第1容器から前記粉末材料を運び出して前記第3容器の手前まで運ぶ工程を行わせる
ことを特徴とする付記8に記載の粉末床溶融結合装置。
【0242】
(付記11)
前記粉末材料の薄層表面に、経時的に変化する前記薄層表面の温度分布に応じて経過時間に対応させて設定した複数の分割領域の位置を記憶するメモリを有し、
前記第2結合層を形成する工程は、前記経過時間に従って順次対応する前記分割領域の薄層に、前記スライスデータに基づき、前記エネルギービームの照射を移行して第2結合層を形成する工程である
ことを特徴とする付記10に記載の粉末床溶融結合装置。
【0243】
(付記12)
エネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、
前記エネルギービームを照射する粉末材料の薄層を形成する薄層形成部と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱手段と、
前記粉末材料の薄層の表面の温度分布を測定する温度測定手段と、
造形を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程とを行わせ、
引き続き、前記温度測定手段により前記粉末材料の薄層表面の温度分布を測定する工程と、
測定した前記温度分布を基に、前記粉末材料の溶融温度よりも低くかつ所定の温度以上の温度範囲にある前記粉末材料の薄層の部分領域を特定する工程と、
スライスデータに基づき、前記部分領域に前記エネルギービームを照射して、溶融し固化する工程とを繰り返させる
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0244】
(付記13)
粉末材料を収納する第1容器と、
粉末材料を収納する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器の間に置かれ、前記粉末材料の薄層を形成する第3容器と、
前記第1容器と、前記第3容器と、前記第2容器との間を移動し、前記粉末材料を運ぶ運搬部材と、
前記粉末材料の薄層を加熱するエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱手段と、
前記粉末材料の薄層の表面の温度分布を測定する温度測定手段と、
造形を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記運搬部材を移動して、前記第1容器から前記粉末材料を運び出し、さらに前記第3容器に運び入れて、前記粉末材料の薄層を形成し、残った前記粉末材料を前記第2容器に収納する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程とを行わせ、
引き続き、前記温度測定手段により前記粉末材料の薄層表面の温度分布を測定する工程と、
測定した前記温度分布を基に、前記粉末材料の溶融温度よりも低くかつ所定の温度以上の温度範囲にある前記粉末材料の薄層の部分領域を特定する工程と、
スライスデータに基づき、前記部分領域に前記エネルギービームを照射して、溶融し固化する工程とを繰り返して、第1結合層を形成させる
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0245】
(付記14)
前記制御手段は、
前記第1結合層を形成させた後、前記運搬部材を移動して、前記第2容器から前記粉末材料を運び出し、さらに前記第3容器に運び入れて、前記第1結合層の上に前記粉末材料の薄層を形成し、残った前記粉末材料を前記第1容器に収納する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程とを行わせ、
引き続き、前記温度測定手段により前記粉末材料の薄層表面の温度分布を測定する工程と、
測定した前記温度分布を基に、前記粉末材料の溶融温度よりも低くかつ所定の温度以上の温度範囲にある前記粉末材料の薄層の部分領域を特定する工程と、
スライスデータに基づき、前記部分領域に前記エネルギービームを照射して、溶融し固化する工程とを繰り返して、第2結合層を形成させる
ことを特徴とする付記13に記載の粉末床溶融結合装置。
【0246】
(付記15)
粉末材料を収納する第1容器と、
粉末材料を収納する第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器の間に置かれ、前記粉末材料の薄層を形成する第3容器と、
前記第1容器と、前記第3容器と、前記第2容器との間を移動し、前記粉末材料を運ぶ運搬部材と、
前記粉末材料の薄層を加熱するエネルギービームを出射するエネルギービーム出射部と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する予備加熱手段と、
前記粉末材料の薄層の表面全体の温度分布を測定する温度測定手段と、
造形を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記運搬部材を移動させて、前記第1容器から運び出した前記粉末材料を前記第3容器に運び入れて、前記粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程とを行わせ、
引き続き、前記温度測定手段により前記粉末材料の薄層表面の温度分布を測定する工程と、
測定した前記温度分布を基に、前記粉末材料の溶融温度よりも低くかつ所定の温度以上の温度範囲にある前記粉末材料の薄層の部分領域を特定する工程と、
スライスデータに基づき、前記部分領域に前記エネルギービームを照射して、溶融し固化する工程とを繰り返して、第1結合層を形成させ、
一方で、前記粉末材料の薄層を形成する工程の後、前記第1結合層を形成させる間に、前記運搬部材を移動し、前記粉末材料の薄層を形成した後に残った前記粉末材料を前記第2容器に収納し、次いで、前記第2容器から前記粉末材料を運び出して前記第3容器の手前まで運ばせる
ことを特徴とする粉末床溶融結合装置。
【0247】
(付記16)
前記制御手段は、
前記第1結合層を形成させた後、前記運搬部材を移動させて、前記第3容器の手前まで運ばせた前記粉末材料を前記第3容器に運び入れて、前記第1結合層の上に前記粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記粉末材料の薄層を予備加熱する工程とを行わせ、
引き続き、前記温度測定手段により前記粉末材料の薄層表面の温度分布を測定する工程と、
測定した前記温度分布を基に、前記粉末材料の溶融温度よりも低くかつ所定の温度以上の温度範囲にある前記粉末材料の薄層の部分領域を特定する工程と、
スライスデータに基づき、前記部分領域に前記エネルギービームを照射して、溶融し固化する工程とを繰り返して、第2結合層を形成させ、
一方で、前記第1結合層の上に前記粉末材料の薄層を形成する工程の後、前記第2結合層を形成させる間に、前記運搬部材を移動して、前記粉末材料の薄層を形成した後に残った前記粉末材料を前記第1容器に収納し、次いで、前記第1容器から前記粉末材料を運び出して前記第3容器の手前まで運ばせる
ことを特徴とする付記15に記載の粉末床溶融結合装置。