(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンのオイル供給系の油圧を変更可能な油圧可変手段を備え、当該エンジンの運転状態に応じて前記油圧可変手段により油圧を制御するようにした油圧制御装置であって、
前記オイル供給系の油圧を検出する油圧検出手段と、
前記油圧検出手段による検出油圧が所定圧よりも低い低油圧状態が所定の判定時間以上継続したときに、前記油圧可変手段によって油圧を前記低油圧状態から高圧側に変更する高油圧制御を行う高油圧変更手段と、
前記油圧検出手段による検出油圧と、エンジンの運転状態に対応づけて予め設定されている標準油圧とに基づいて、油路の詰まりの度合いを推定する詰まり度合い推定手段と、
前記詰まり度合い推定手段による推定結果に応じて、油路の詰まりの度合いが相対的に大きいときには、相対的に小さいときに比べて前記判定時間を短い時間に変更する判定時間変更手段と、を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来例のように低油圧に制御する時間が継続すると、オイルに含まれているスラッジや異物などが堆積しやすくなることから、例えばオイルジェットなど、オイル供給系の末端に位置する油路の狭いところで詰まりが発生し、潤滑不良を招くおそれがある。この点につき前記従来例では、低油圧の状態が暫く継続すれば強制的に高油圧に変更するようにしており、これによりスラッジなどの詰まりが解消される可能性はある。
【0006】
しかしながら前記従来例では、詰まりを解消するために油圧を高くしているわけではないので、実際には詰まりが進行しておらず、潤滑不良を招くおそれはないにもかかわらず、低油圧の状態が一定の時間、継続すれば高油圧にされることになり、低油圧に制御することによる燃費の低減効果が目減りしてしまう。また、反対に詰まりが進行しているにもかかわらず、低油圧のままになることもある。
【0007】
かかる点に鑑みて本発明の目的は、エンジンのオイル供給系において潤滑不良の起きることを防止しつつ、そのための高油圧化は必要最低限の頻度に留めることによって、燃費の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、オイル供給系の油路におけるスラッジなどの堆積が進行し、詰まりの度合いが大きくなるに連れて、油路の圧損が増大し、油圧が高くなることに着目した。そして、このように油路の詰まりの度合いが大きくなれば、早めに高油圧に変更するようにした。
【0009】
具体的に本発明は、エンジンのオイル供給系の油圧を変更可能な油圧可変手段を備え、当該エンジンの運転状態に応じて前記油圧可変手段により油圧を制御するようにした油圧制御装置を対象とする。そして、前記オイル供給系の油圧を検出する油圧検出手段と、その検出油圧が所定圧よりも低い低油圧状態が所定の判定時間以上、継続したときに、前記油圧可変手段によって油圧を前記低油圧状態から高圧側に変更する高油圧制御を行う高油圧変更手段と、を備えている。
【0010】
その上で本発明は、前記油圧検出手段による検出油圧と、エンジンの運転状態に対応づけて予め設定されている標準油圧とに基づいて、油路の詰まりの度合いを推定する詰まり度合い推定手段と、この詰まり度合い推定手段による推定結果に応じて、油路の詰まりの度合いが相対的に大きいときには、相対的に小さいときに比べて前記判定時間を短い時間に変更する判定時間変更手段と、を備えている。
【0011】
前記の構成により、まず、エンジンの運転状態に応じて油圧可変手段によりオイル供給系の油圧が制御されることで、基本的には例えば軽負荷や低回転の運転状態などにおいて油圧を低下させ、ポンプ駆動損失を低減させることができる。これにより燃費の低減が図られる。一方、そうして油圧の低い状態(低油圧状態)が所定の判定時間以上、継続すれば、油圧可変手段によって油圧を高圧側に変更し(高油圧制御)、堆積しているスラッジなどを除去することによって、油路の詰まりを解消することができる。
【0012】
また、前記油圧検出手段によって検出されるオイル供給系の油圧(検出油圧)と、エンジンの運転状態に対応づけて予め設定されている標準油圧とに基づいて、詰まり度合い推定手段により油路の詰まり度合いが推定される。すなわち、標準油圧に対して検出油圧が高いほど、油路の詰まりの度合いが大きいと考えられるので、これに応じて判定時間変更手段により、前記高油圧制御を行うまでの時間(判定時間)が短縮される。
【0013】
つまり、オイル供給系の油路における詰まりの度合いを推定し、それが相対的に大きいときには、相対的に小さいときに比べて早めに高油圧制御を行うようにしているので、油路の詰まりを解消しつつ、そのための高油圧制御は必要最低限の頻度に留めることができる。よって、低油圧化によるエンジンの燃費低減効果が十分に得られる。
【0014】
ここで、前記のようにオイル供給系の油路の詰まり度合いを推定するのは、エンジンの始動毎とするのが好ましい。すなわち、仮に前回のエンジンの運転中にスラッジなどによる油路の詰まりが進行していると、今回のエンジンの始動後、すぐに詰まり度合いが大きくなってしまい、潤滑不良が起きる可能性があるので、このような不具合を未然に防止するために、エンジンの始動毎に速やかに詰まり度合いを推定するのである。
【0015】
但し、エンジンの始動直後にはオイル供給系の油路に気泡が残存していることが多く、油圧が安定しないので、油圧検出手段による検出油圧が変動し、油路の詰まり度合いを誤って推定するおそれがある。この点を考慮すれば前記油圧検出手段は、エンジンの始動後にオイル供給系の油路にオイルが充填されて、気泡が排出される所定時間(例えば2秒くらい)の経過後に、油圧を検出するものとすればよい。
【0016】
より好ましいのは、エンジンの始動後に前記油圧可変手段の動作を停止させた状態で、オイル供給系の油圧を検出することである。こうすれば、油圧可変手段の動作による油圧の変化の影響を排除して、油路の詰まりの進行による油圧の上昇分を精度良く検出することができる。また、前記油圧検出手段として具体的には、エンジンの油圧制御のためにメインギャラリに配設された油圧センサを用いることができる。
【0017】
ここで、一般的にエンジンのオイルポンプの回転数は、エンジン回転数に比例して増大するので、高回転の運転状態では自ずと油圧が高くなる一方、低回転であると油圧は低くなる傾向がある。また、エンジン始動後には油温が低くて、オイルの粘性が高くなっていることがあり、この場合には油圧も高めになる傾向がある。このため、前記検出油圧から単純に油路の詰まりの度合いを推定することは難しい。
【0018】
この点については前記標準油圧を、少なくともエンジン回転数および油温に応じて変化するように設定しておいて、油圧の検出時におけるエンジン回転数および油温に対応する標準油圧を検出油圧と比較すればよい。また、前記オイルポンプとしてポンプ容量を連続的に変更可能なものを用いる場合には、前記油圧可変手段はオイルポンプの容量可変機構とし、この容量可変機構の動作を停止させて、ポンプ容量を固定した状態で油圧を検出するようにすればよい。
【0019】
特に好ましいのは、前記オイルポンプの容量を最大値に固定した状態で油圧を検出することであり、こうすれば、油路の詰まりによる油圧の変化が大きくなるので、詰まりの度合いの推定精度が高くなる。また、エンジン始動後はオイル供給系全体にオイルを行き渡らせるために一定期間、オイルポンプの容量を最大値に固定することがあるので、この期間を利用して油圧を検出し、油路の詰まりの度合いを推定することができる。
【0020】
なお、可変容量型のオイルポンプを備えたエンジンにおいては、負荷率やエンジン回転数に応じて連続的に油圧を制御することができるので、燃費の低減効果が高い反面、低油圧状態になることも多いので、スラッジが堆積しやすい。そこで、このような可変容量型のオイルポンプを備えたエンジンにおいて、上述した高油圧制御によって油路の詰まりを解消できることの意義が特に大きいと考えられる。
【0021】
また、前記詰まり度合い推定手段として具体的には、前記検出油圧の標準油圧に対する比率(以下、油圧比という)を、油路の詰まり度合いの指標として算出するものとすればよい。この油圧比の大きさは、油路を流れるオイルの圧力損失の大きさを表しているので、前記判定時間変更手段においては、油圧比の増大に応じて前記判定時間を短い時間に変更すればよい。
【0022】
すなわち、前記判定時間変更手段は、詰まり度合い推定手段によって算出される油圧比の増大に応じて、例えばこれに反比例するように判定時間を短縮するものとすればよい。好ましくは判定時間変更手段は、詰まり度合い推定手段による油圧比の算出値が、前回の算出値よりも所定以上、増大したときに、判定時間を変更するようにすればよく、こうすれば、エンジンやオイルポンプの個体差による油圧のばらつきの影響を軽減し、油路の詰まりの度合いに応じて適切に判定時間を変更することができる。
【0023】
また、前記判定時間変更手段は、前記詰まり度合い推定手段による前記比率の算出値が所定値以上になったときには、前記判定時間を所定の最短時間に変更するようにしてもよい。この最短時間としては、低油圧状態になると直ちに高油圧制御が開始されるような非常に短い時間とすればよく、判定時間を零としてもよい。このようにすれば、油路の詰まりが急激に大きくなって、潤滑不良が起きる可能性があるときに、速やかに高油圧制御が開始される。
【0024】
さらにまた、そうして高油圧制御を行った後に、前記詰まり度合い推定手段によって推定される油路の詰まりの度合いが所定以上に大きければ、フェールセーフ処理を行うフェールセーフ手段を備えてもよい。すなわち、高油圧制御によって油路の詰まりが十分に解消されない場合には、何らかの故障が起きている可能性があるので、この場合には、例えば乗員への報知などのフェールセーフ処理を行うのである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る油圧制御装置によると、オイル供給系の油路における詰まりの度合いを推定し、これに応じて高油圧制御を行うまでの低油圧状態の継続時間を変更するようにしたので、潤滑不良の発生を防止しつつ、そのための高油圧制御は必要最低限の頻度に留め、エンジンの燃費を十分に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施形態では、自動車に搭載された内燃機関(エンジン)のオイルポンプに本発明を適用した場合について説明するが、これに限ることはない。
【0028】
−オイル供給系の概略−
図1には仮想線で外形のみを示すが、エンジン1は一例として直列4気筒エンジンであり、それぞれのシリンダ11(図には1つのみ示す)に収容されたピストン12が、コネクティングロッド13を介し、クランクシャフト14に連結されている。クランクシャフト14は、図の例では5つのクランクジャーナル14aによって回転自在に支持されており、その下方に配設されたオイルパン15にエンジンオイル(以下、単にオイルという)が貯留されている。
【0029】
エンジン1には、オイルパン15からオイルを汲み上げて前記のピストン12やクランクジャーナル14a等(潤滑部)に供給するオイル供給系2が設けられている。すなわち、クランクシャフト14によって駆動されるオイルポンプ3がストレーナ16を介してオイルパン15内のオイルを汲み上げ、オイルフィルタ17を通過させてメインギャラリ20へ送給する。そして、メインギャラリ20の後端部(
図1の右奥の端部)から上方に延びる分岐油路21によって、シリンダヘッドに配設された動弁系にオイルが供給される。
【0030】
また、メインギャラリ20の前端部(
図1の左手前の端部)から上方に延びる分岐油路22によって、前記動弁系の可変機構やチェーンテンショナなどにオイルが供給される。さらに、メインギャラリ20の長手方向に等間隔を空けて分岐し、それぞれ下方に延びる分岐油路23によって、クランクジャーナル14aにオイルが供給される。こうしてエンジン1の各潤滑部に供給されたオイルは、図示しないオイル落とし通路を流下して、再びオイルパン15内に貯留されるようになる。
【0031】
−オイルポンプ−
図2および
図3にそれぞれ示すようにオイルポンプ3は内接ギヤポンプであって、そのハウジング30には外歯車のドライブロータ31と、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータ32とが収容されている。ドリブンロータ32の外周は調整リング33によって保持されており、後述するように、この調整リング33の動作によってドライブロータ31およびドリブンロータ32が変位されると、ポンプ容量が変更されるようになっている。
【0032】
前記ドライブロータ31はクランクシャフト14の端部に、一体となって回転するように取り付けられており、このドライブロータ31の中心に対してドリブンロータ32の中心は所定量、偏心している。そして、その偏心している側(
図2の右上側)においてドライブロータ31の外歯31aとドリブンロータ32の内歯32aとが噛み合わされていて、これら2つのロータ31,32の間の三日月状の空間に、円周方向に並んで複数の作動室Rが形成されている。
【0033】
これらの作動室Rは、2つのロータ31,32の回転に連れて円周方向に移動しながら、その容積が徐々に増大または減少するようになっており、容積が徐々に増大してゆく範囲(
図2の右側に示す吸入範囲)において、ハウジング30に形成された吸入ポート30aからオイルを吸入する一方、容積が徐々に減少してゆく範囲(
図2の左側に示す吐出範囲)において、ハウジング30に形成された吐出ポート30bへオイルを加圧しながら送り出す。
【0034】
前記吸入ポート30aは、吸入パイプ16aを介してストレーナ16に接続されており、一方、吐出ポート30bは、吐出油路17aを介してオイルフィルタ17に接続されている。そして、クランクシャフト14の回転によりドライブロータ31およびドリブンロータ32が互いに噛み合いながら回転すると、前記のように吸入範囲を移動する作動室Rにはストレーナ16、吸入パイプ16a、吸入ポート30aを介してオイルが吸い込まれ、吐出範囲を移動する作動室Rからは吐出ポート30bを介して吐出油路17aへオイルが吐出される。
【0035】
−容量可変機構−
また、オイルポンプ3には、前記のようにしてクランクシャフト14の1回転毎に吐出されるオイルの量、即ちポンプ容量を変更可能な容量可変機構が備わっている。この容量可変機構は、ハウジング30内に形成した制御空間TCの油圧によって、調整リング33を回動(変位)させ、ドライブロータ31およびドリブンロータ32の吸入ポート30aおよび吐出ポート30bに対する相対的な位置を変化させるものである。
【0036】
すなわち、調整リング33には、ドリブンロータ32を保持するリング状の本体部から外方に向かって延びるアーム部33aが形成され、このアーム部33aに作用するコイルバネ34の押圧力によって、
図2の時計回りに回動するように付勢されている。なお、調整リング33の回動する方向は、長穴33b,33cに挿入されたガイドピン35,36によって規制されている。
【0037】
一方、前記のアーム部33aには、ハウジング30内に形成された制御空間TCの油圧が作用しており、この油圧(以下、制御油圧という)によって調整リング33には、
図2の反時計回りに回動させるような押圧力が作用する。制御油圧の大きさは、制御空間TCに臨んで開口する油路40(以下、制御油路40という)を介して、オイルコントロールバルブ(Oil Control Valve:OCV)4によって制御される。
【0038】
一例としてOCV4は、リニアソレノイド41によってスプール42を動作させる電磁比例弁であり、その供給ポート4aには、吐出油路17aから分岐する油路17bによってオイルが供給される。OCV4は、そうして供給ポート4aに供給されるオイルを制御ポート4bから制御油路40へ送り出す状態(
図3に示す)と、反対に制御油路40からのオイルを制御ポート4bに受け入れて、ドレンポート4cから排出する状態(
図2に示す)とに切り換えられる。
【0039】
前記のOCV4によって制御油圧を調圧し、制御空間TCの油圧を増大または減少させて、アーム部33aに作用する押圧力を調整することで、この押圧力とコイルバネ34の押圧力とがバランスするようにアーム部33aの位置が決まるようになる。これにより、
図2に示す最大ポンプ容量の状態と
図3に示す最小ポンプ容量の状態との間で、調整リング33の位置を変化させることができる。
【0040】
−ECU−
前記のような容量可変機構の動作によるポンプ容量の調整は、エンジン制御用のECU100によって行われる。本実施形態のECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えた公知のものである。
図2に模式的に示すようにECU100には、エンジン1のクランク角センサ101、エアフローセンサ102、スロットル開度センサ103、水温センサ104、油温センサ105、油圧センサ106(油圧検出手段)等の各種センサが接続されている。
【0041】
ECU100は、それらの各種センサ101〜106から入力する信号などに基づいて、エンジン1の運転に関わる種々の制御プログラムを実行するとともに、前記した容量可変機構を動作させてオイルポンプ3の容量を変更し、オイル供給系2の油圧を制御する。すなわち、基本的にはエンジン1の負荷率やエンジン回転数に応じてOCV4への指令値を変更し、負荷率が高いときにはポンプ容量を増大させる一方、負荷率が低いときには減少させる。オイルポンプ3の回転数はエンジン回転数と同じなので、エンジン回転数が高くなれば、自ずとオイルの吐出量は増大する。
【0042】
一例として
図4には、ECU100からOCV4への指令値(OCV電流値)と、エンジン回転数と、オイルポンプ3の吐出圧との相互の関係を示す。この図から、OCV電流値の制御によってポンプ容量を変更すれば、ポンプ吐出圧を調整できることが分かる。すなわち、エンジン回転数が或る程度以上、高ければ、その変化によらずポンプ吐出圧を維持することができ、オイル供給系2のメインギャラリ20の油圧を好適に制御することができる。
【0043】
そこで、ECU100は、例えばエンジン1の負荷率および回転数に応じて目標油圧を決定し、負荷率や回転数が低いときには油圧を低下させることにより、オイルポンプ3の駆動によるエンジン1の動力損失(ポンプ駆動損失)を低減するようにしている。具体的に油圧の基本制御としては、油圧センサ106の信号をフィードバックし、検出油圧の目標油圧からの偏差に応じてポンプ容量を変更することによって、メインギャラリ20の油圧を目標油圧に収束させる。
【0044】
−高油圧制御−
前記のようにポンプ駆動損失を低減するために、低油圧に制御する時間が継続すると、オイルに含まれているスラッジや異物などがオイル供給系2の油路の壁面などに堆積し、油路の詰まりによって潤滑不良を起こすおそれがある。すなわち、オイル供給系2の末端の油路は断面積が小さくなっているので、その付近にスラッジや異物などが堆積すると、詰まりが発生して潤滑部へのオイルの供給不足を引き起こすのである。
【0045】
この点について本実施形態では、エンジン1の運転中にメインギャラリ20の油圧が所定圧よりも低い低油圧状態が所定の判定時間以上、継続したときには、オイルポンプ3の容量を増大させ、油圧を強制的に高圧側に変更することによって、堆積しているスラッジなどを押し流すようにしている。そして、このような高油圧制御を開始するまでの時間をスラッジなどの堆積の進行度合い、即ち油路の詰まりの度合いに応じて変更し、詰まりの度合いが大きいときには、早めに高油圧制御を開始するようにしている。
【0046】
また、本実施形態では油路の詰まりの度合いを表す指標として、メインギャラリ20の油圧(検出油圧)の標準油圧に対する比率(以下、油圧比という)を用いている。これは、スラッジなどの堆積が進行し、詰まりの度合いが大きくなるに連れて、油路の圧損が増大し、油圧が高くなるからであるが、メインギャラリ20の油圧は、上述したようにオイルポンプ3の容量および回転数(エンジン回転数)によって変化し、また、油温によっても変化するので、単純に油圧そのものが油路の詰まりの度合いを表すわけではない。
【0047】
この点を考慮して本実施形態では、まず、オイルポンプ3の容量を最大値に固定した状態で、油温およびエンジン回転数を種々、変化させたときの油圧の値を、油温およびエンジン回転数に対応する標準油圧としてマップ(
図8を参照)に設定しておく。そして、エンジン1の始動後にポンプ容量を最大値に固定した状態でメインギャラリ20の油圧を検出し、この検出油圧を、検出時の油温およびエンジン回転数に対応する標準油圧で除算して、油圧比を算出するようにしている。
【0048】
こうして算出した油圧比は、ポンプ容量、ポンプ回転数および油温の影響を排除して、オイル供給系2の油路を流れるオイルの圧力損失の大きさを表すものなので、油路の詰まりの度合いを表す指標として好適である。よって、この油圧比の増大に応じて高油圧制御を開始するまでの時間(低油圧状態が継続する時間)を短縮するようにすれば、必要に応じて高油圧制御を実行し、堆積しているスラッジなどを押し流すことができる。
【0049】
−油圧制御の処理−
以下に、本実施形態のエンジン1の油圧制御に係る処理について
図5〜7を参照して具体的に説明する。まず、
図5には、前記したようにポンプ容量を調整して、オイル供給系2の油圧を制御する処理の基本的な流れ(油圧制御のメインルーチン)を示し、このルーチンは、エンジン1の運転中にECU100において所定のタイミングで繰り返し実行される。このルーチンは、エンジン1の運転状態に応じて油圧を制御する基本制御に相当する。
【0050】
図5のフローのスタート後のステップST101では、エンジン1の運転状態を表す各種情報を取得する。例えば、クランク角センサ101からの信号によってエンジン回転数を算出し、エアフローセンサ102からの信号によって吸気量を算出し、これらエンジン回転数および吸気量(アクセル操作量でもよい)から、エンジン1の負荷率を算出する。また、水温センサ104、油温センサ105および油圧センサ106からの信号によってエンジン1の水温、油温および油圧を検出する。
【0051】
続いてステップST102では、主に負荷率やエンジン回転数などに基づいて、即ち、エンジン1の運転状態に基づいて、詳しくは後述するようにメインギャラリ20の油圧の目標値(目標油圧)を算出する。ステップST103では、油圧センサ106による検出油圧が前記の目標油圧になるように、フィードバック制御演算を行う。すなわち、検出油圧と目標油圧との偏差を算出し、この偏差に応じてPID則などにより、検出油圧が目標油圧に収束するようなポンプ容量の目標値を算出する。
【0052】
ステップST104では、前記ポンプ容量の目標値に基づいて、オイルポンプ3の制御空間TCに供給する制御油圧を算出し、この制御油圧をOCV4が出力するように、そのスプール42を動作させるための指令信号、即ちOCV電流値を算出する。この指令信号がECU100からOCV4へ出力されることによって、オイルポンプ3の容量が好適に制御され、メインギャラリ20の油圧は徐々に目標油圧に収束するようになる。
【0053】
なお、前記のポンプ容量、制御油圧、OCV電流値などのパラメータの対応関係は、予め実験・シミュレーションなどによって適合されてマップとしてECU100のROMに記憶されており、前記のステップST104では、そのようなマップを参照して、目標とするポンプ容量を実現するためのOCV電流値を算出する。また、マップの代わりにパラメータの対応関係を計算式として設定することもできる。
【0054】
−目標油圧の算出−
次に、前記のステップST102における目標油圧の算出について、
図6のフローチャートを参照して説明すると、まず、スタート後のステップST201では、油圧センサ106からの信号による検出油圧が所定圧よりも低いか否か、即ち低油圧状態か否か判定する。この所定圧未満ではオイル中のスラッジなどが堆積しやすい一方、所定圧以上であれば、スラッジなどは押し流され、堆積し難いと考えられる。所定圧は予め実験・シミュレーションによって適合されている。
【0055】
そして、検出油圧が所定圧以上で否定判定(NO)すれば後述のステップST205に進む一方、所定圧未満で肯定判定(YES)すればステップST202に進んで、今度は前記の低油圧状態が予め設定した判定時間以上、継続したか否か判定する。この判定時間は、前記の低油圧状態においてオイル中のスラッジなどが堆積し、油路の詰まりによって潤滑不良が起きる少し手前の時間として、予め実験・シミュレーションによって適合されている。
【0056】
例えば、メインギャラリ20の油圧が前記所定圧であるときに、オイル供給系2の油路の末端でスラッジの堆積がどの程度、進行するか、エンジン水温や油温の影響も考慮しながら予め実験・シミュレーションによって検討しておく。そして、潤滑不良が生じる少し手前の詰まりの進行度合いを特定し、これに対応する時間を設定すればよい。その上で、
図7を参照して後述するように本実施形態では、油路の詰まりの度合いに応じて判定時間を変更する。
【0057】
前記のステップST202では、そのような判定時間と実際の低油圧状態の継続時間とを比較する。なお、継続時間はECU100の内蔵するタイマによって測定される。そして、低油圧状態の継続時間が判定時間に達するまでは否定判定(NO)し、ステップST203に進んで通常の目標油圧を算出する。なお、通常の目標油圧は、エンジン1の負荷率やエンジン回転数などに基づいて、図示しない公知のマップを参照して算出される。
【0058】
一方、前記ステップST202において低油圧状態が判定時間、継続したと肯定判定(YES)すれば、ステップST204に進んで、高油圧制御を開始する。すなわち、オイルポンプ3の容量を増大させて、油路に堆積したスラッジなどを除去できるような所定以上の高油圧になるように、目標油圧を所定の高圧値に変更し、リターンする。なお、油圧が高いほどオイルポンプ3の駆動によるエンジン1の動力損失(ポンプ駆動損失)が大きくなるので、前記高圧値は例えば前記所定圧とするのが好ましい。
【0059】
こうして、エンジン1の運転中に低油圧状態が判定時間、継続すれば、オイル供給系2の油路においてスラッジなどが堆積し、詰まりの度合いが大きくなって潤滑不良の発生するおそれがあると判定して、高油圧制御を実行する。これによりスラッジなどを押し流して除去し、詰まりの解消が図られる(このように高油圧制御によって油路の詰まりを解消することを以下、パージともいう)。
【0060】
これに対し、前記のステップ201において、検出油圧が所定圧以上であると否定判定(NO)してステップST205に進んだ場合は、前記の高油圧制御の実行中か否かを判定する。これは、前記ステップST204において高油圧制御を開始するときにオンされるフラグによって判定すればよく、このフラグがオフで否定判定(NO)であれば、通常の目標油圧が所定圧以上になっていて、高油圧制御を実行する必要はないので、前記ステップST203に進み、リターンする。
【0061】
一方、高油圧制御の実行中で肯定判定(YES)であればステップST206に進み、ここでは高油圧に維持する所定時間(例えば3〜10秒程度)が経過したか否か判定する。この時間の長さについても予め実験・シミュレーションによって適合されており、例えば一定の時間としてもよいが、高油圧制御を始めるまでの低油圧状態の継続時間(即ち判定時間)の長さやその低油圧状態における油圧などに応じて変更するようにしてもよい。
【0062】
前記のステップST206において所定時間が経過していないと否定判定(NO)すれば、未だパージは終了していないので、前記ステップST204に進んで高油圧制御を継続する一方、ステップST206において所定時間が経過したと肯定判定(YES)すれば、ステップST207に進んで、高油圧制御による詰まりの解消(パージ)が終了したことを示すパージフラグをオンした後に、前記のステップST203に進んで通常の目標油圧を算出し、リターンする。
【0063】
前記
図6のフローのステップST202、ST204を実行することによってECU100は、検出油圧が所定圧よりも低い低油圧状態が所定の判定時間以上、継続したときに、高油圧制御を行う高油圧変更手段を構成する。本実施形態の高油圧変更手段は、オイルポンプ3の容量を増大させて、メインギャラリ20油圧を強制的に低油圧状態から高圧側に変更するものである。
【0064】
−油圧比に基づく判定時間の変更−
次に、前記のステップST202で用いる判定時間の設定の手順について、
図7のフローチャートを参照して説明する。このフローに示すルーチンは、エンジン1の始動毎にECU100において所定のタイミングで実行される。
【0065】
具体的に
図7のフローは、例えばエンジン1の始動時にエンジン回転数が所定の始動判定回転数を超えた後にスタートし、ステップST301では、今回のエンジン始動後に既に油圧比を算出しているか否か判定する。これは、後述するステップST303において油圧比を算出したときにオンされるフラグによって判定し、このフラグがオンで否定判定(NO)であれば、既に油圧比は算出しているので、処理を終了する(エンド)。
【0066】
一方、フラグがオフで肯定判定(YES)であればステップST302に進み、オイルポンプ3の容量を最大値に固定する。すなわち、
図5を参照して上述した油圧制御のメインルーチンにおけるステップST102で、目標油圧を予め設定した最高値に設定するとともに、続くステップST103のフィードバック制御演算を禁止する。これにより、ECU100からの指令信号を受けてOCV4が動作し、オイルポンプ3の容量が最大値に固定される。
【0067】
つまり、エンジン1の始動直後にオイル供給系2全体にオイルを行き渡らせるために、オイルポンプ3の容量を最大値に固定し、できるだけオイルの吐出量が多くなるようにするのである。そして、所定時間(例えば2〜3秒くらい)が経過し、オイル供給系2の油路にオイルが充填され、気泡が排出されて油圧が安定した後に、油圧センサ106によりメインギャラリ20の油圧を検出する。なお、油圧センサ106の信号は一次遅れフィルタを通過させることによって平滑化されている。
【0068】
続いてステップST303において、前記のように検出したメインギャラリ20の油圧(検出油圧)を、検出時の油温およびエンジン回転数に対応する標準油圧で除算して、油圧比を算出する。上述したように標準油圧は、ポンプ容量を最大値に固定した状態で油温およびエンジン回転数を種々、変化させたときの油圧の値を、
図8に模式的に示すようなマップに設定しておく。このマップにおいて標準油圧は、油温が低いほど、また、エンジン回転数が高いほど高い値になっている。
【0069】
そして、前記のようにメインギャラリ20の油圧を検出したときの油温およびエンジン回転数に基づき、前記マップを参照して標準油圧を算出する。こうして算出される標準油圧によって前記の検出油圧を除算し、算出される油圧比からは、油温やエンジン回転数の変化による油圧の変化の影響が排除されている。また、油圧を検出するときには、前記のように油圧のフィードバック制御を禁止し、ポンプ容量を最大値に固定しているので、油圧比からはポンプ容量の変化による油圧の変化の影響も排除されている。
【0070】
つまり、前記のステップST303において算出される油圧比は、ポンプ容量、ポンプ回転数および油温の影響を排除して、油路の詰まりの度合いに応じた油圧の上昇分を反映するものとなっており、この油圧比によって油路の詰まりの度合いを精度良く推定することができる。しかも、ポンプ容量が最大値であると、オイルポンプ3の吐出量は多くなるので、油路の詰まりによる油圧の変化も大きくなり、このことによっても詰まりの度合いの推定精度が高くなる。
【0071】
前記のステップST303に続いてステップST304では、パージフラグのオンオフについて判定する。すなわち、
図6のフローのステップST207でパージフラグがオンされているときには、前回の停止前のエンジン1の運転中に高油圧制御が行われているから、ステップST304においてパージフラグがオンで否定判定(NO)すれば、高油圧制御によって油路の詰まりが解消されているはずなので、後述のステップST307に進む。
【0072】
一方、パージフラグがオフであって、ステップST304において肯定判定(YES)したときにはステップST305に進み、前記ステップST303で算出した油圧比(今回の算出値)が、前回の算出値(前回のエンジン1の始動後に算出した値)よりも所定以上、大きいか否か判定する。油圧比は油路の詰まりの度合いを表しているので、それが予め設定した所定値以上、前回の算出時よりも大きければ肯定判定(YES)する。
【0073】
そして、ステップST306に進み、判定時間を短縮してECU100のRAMに記憶させ、処理を終了する(エンド)。すなわち、ECU100のRAMには前回のエンジン1の始動後に記憶された判定時間が記憶されており、この判定時間に補正係数を乗算して短い時間に変更する。なお、補正係数の値は、前記油圧比の変化量についての所定値に対応づけて、望ましい判定時間の変更量を予め実験・シミュレーションによって設定すればよく、例えば0.9くらいとすればよい。
【0074】
こうして油圧比の前回の算出値との比較によって、油路の詰まりの度合いの変化を判定することで、エンジン1のオイル供給系2やオイルポンプ3の個体差による油圧のばらつきの影響が概ね排除される。すなわち、標準油圧は、標準的なオイル供給系およびオイルポンプを念頭に設定されており、実際のエンジン1では個体差によって油圧がばらつくことになるが、本実施形態のように油圧比の今回の算出値を前回の算出値と比較すれば、ばらつきの影響は概ね排除することができ、油路の詰まりの度合いの変化をより正確に判定することができる。
【0075】
つまり、油路の詰まりの度合いを正確に表す油圧比が、前回の算出値よりも所定以上、大きくなれば、これに応じて判定時間が短くなるように変更し、高油圧制御が早めに開示されるようにしている。一方、油圧比の前回の算出値からの増分が所定値未満であれば、前記ステップST305では否定判定(NO)して、判定時間は変更せずに処理を終了する(エンド)。
【0076】
また、前記のステップST304においてパージフラグがオフでないと否定判定(NO)してステップST307に進んだ場合は、前回の停止前のエンジン1の運転中に高油圧制御が行われているはずなので、今回、算出した油圧比を所定値と比較する。この所定値は、前回の停止前のエンジン1の運転中に高油圧制御が行われ、オイル供給系2の油路の詰まりが解消されている場合に相当する油圧比であり、予め実験・シミュレーションによって設定されている。
【0077】
そして、油圧比が前記の所定値未満になっていれば(肯定判定:YES)、油路の詰まりは解消されているので、パージフラグをオフにして(ステップST308)処理を終了する(エンド)。一方、油圧比が所定値未満になっておらず、ステップST307で否定判定(NO)すれば、高油圧制御によっても油路の詰まりが十分に解消されておらず、何らかの故障が起きている可能性があるので、この場合にはステップST309に進んで、例えば乗員への報知などのフェールセーフ処理を行って、処理を終了する(エンド)。
【0078】
前記
図7のフローのステップST302、ST303を実行することによってECU100は、メインギャラリ20の油圧の検出値(検出油圧)と標準油圧とに基づいて、油路の詰まりの度合いを推定する詰まり度合い推定手段を構成する。本実施形態の詰まり度合い推定手段は、油路の詰まりの度合いを表す指標として、検出油圧の標準油圧に対する比率である油圧比を算出する。
【0079】
また、ステップST305、ST306を実行することによってECU100は、前記詰まり度合い推定手段による推定結果に応じて、油路の詰まりの度合いが相対的に大きいときには、相対的に小さいときに比べて判定時間を短い時間に変更する判定時間変更手段を構成する。本実施形態の判定時間変更手段は、油路の詰まりの度合いを表す油圧比が前回の算出値よりも所定以上、大きいときに判定時間を短縮する。
【0080】
さらに、前記ステップST307、ST309を実行することによってECU100は、高油圧制御を行った後に算出した油圧比(油路の詰まりの度合い)が所定以上に大きければ、フェールセーフ処理を行うフェールセーフ手段を構成する。
【0081】
以上、説明したように本実施形態のエンジン1の油圧制御によると、まず、エンジン1の始動後にメインギャラリ20の油圧を検出し、標準油圧によって除算して油圧比を算出する。そして、この油圧比に応じて、高油圧制御を行うまでの低油圧状態の継続時間(判定時間)を変更する。これにより、
図9には一例として実線のグラフで示すように、例えば軽負荷運転などによってオイル供給系2の油圧が所定圧未満になり(時刻t1)、この状態が判定時間以上、継続すると、時刻t3において高油圧制御が開始される(高油圧制御オン)。
【0082】
すなわち、オイルポンプ3の容量が増大されて、ポンプ吐出圧ひいてはメインギャラリ20の油圧が所定時間(時刻t4まで)、高油圧に維持されることで、オイル供給系2の油路に堆積したスラッジなどが押し流されて、詰まりが解消される。また、そのように高油圧制御を行うまでの低油圧状態の継続時間(判定時間)は、前記の油圧比に応じて変更される。例えば
図9に破線のグラフで示すように油圧比の大きなときには判定時間が短くなって、高油圧制御が早めに(図の例では時刻t2)開始されるようになる。
【0083】
つまり、高油圧制御を開始するタイミングが油圧比、即ちオイル供給系2の油路の詰まり度合いに応じて最適化されるので、その詰まりによる潤滑不良は防止しながら、高油圧制御の頻度は必要最低限に留めることができ、この高油圧制御に伴うオイルポンプ3の駆動損失を極力、抑えて、エンジン1の燃費を低減することができる。
【0084】
特に本実施形態では、エンジン1の始動毎に油圧を検出し、油圧比を算出するようにしているので、前回、停止する前のエンジン1の運転中にスラッジなどによる油路の詰まりが進行していても、今回のエンジン1の始動後、速やかに詰まり度合いが大きくなっていることを判定でき、これに応じて判定時間を好適に短縮することができる。このことで、油路の詰まりによって潤滑不良が起きることをより確実に防止できる。
【0085】
−他の実施形態−
上述した実施形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。例えば前記実施形態においては、エンジン1の油圧比が前回の算出値よりも所定以上、増大したときに、判定時間を変更するようにしているが、これに限らず、例えば算出した油圧比に反比例するように判定時間を設定してもよいし、算出した油圧比が所定の閾値以上のときに、判定時間を短縮するようにしてもよい。
【0086】
また、算出した油圧比が閾値値以上のときには、判定時間を所定の最短時間に変更するようにしてもよい。この場合の閾値は、油路の詰まりが大きくて、すぐにでも潤滑不良が起きると考えられる値であり、予め実験・シミュレーションによって設定すればよい。また、判定時間の最短時間は、低油圧状態になると直ちに高油圧制御が開始されるような非常に短い時間とすればよく、零としてもよい。
【0087】
また、前記実施形態においては、エンジン1の始動後にオイルポンプ3の容量を最大値に固定して、メインギャラリ20の油圧を検出するようにしているが、これにも限定されず、油圧の検出時にオイルポンプ3の容量を固定できれば、最大値でなくても(例えば最小値でも)よい。また、油圧センサ106をメインギャラリ20に設ける必要もなく、例えば、吐出油路17aに設けてもよいし、オイルフィルタ17からメインギャラリ20までの油路に設けてもよい。
【0088】
さらに、オイルポンプ3の容量可変機構を用いて油圧を変更する構成にも限定されず、例えば、容量の固定されたオイルポンプから吐出されるオイルの圧力を変更可能な油圧制御回路(油圧制御弁などを有する回路)を用いて、メインギャラリ20の油圧を変更するようにしたオイル供給系にも、本発明は適用可能である。
【0089】
また、前記実施形態においては油路の詰まり度合いの指標として、検出油圧の標準油圧に対する比率(油圧比)を用いているが、これにも限定されず、例えば、検出油圧の標準油圧からの偏差を、油路の詰まり度合いの指標としてもよい。
【0090】
さらにまた、前記実施形態では、本発明を直列多気筒エンジン1に適用した例について説明したが、これにも限定されず、本発明は、単気筒エンジンやV型エンジン、水平対向エンジンなどにも適用可能である。