特許第6483576号(P6483576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483576
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】事象判定装置及び数量予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20190304BHJP
   G06F 9/50 20060101ALI20190304BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G06N99/00 153
   G06F9/50 150Z
   G06F17/18 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-172197(P2015-172197)
(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2017-49779(P2017-49779A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年7月26日
【審判番号】不服2018-4054(P2018-4054/J1)
【審判請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】村松 久
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 克己
【合議体】
【審判長】 辻本 泰隆
【審判官】 石井 茂和
【審判官】 山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−123460(JP,A)
【文献】 特開2009−251779(JP,A)
【文献】 特開平08−106448(JP,A)
【文献】 佐々木仁,外4名,“SVMに基づく画像認識処理のGPUを用いた高速化手法”,DAシンポジウム 2011 情報処理学会シンポジウムシリーズ,一般社団法人情報処理学会,2011年08月24日,第2011巻,第5号,pp.153−158
【文献】 森秀樹,外1名,“クラスタ冗長による耐故障性木構造プロセッサ”,電子情報通信学会技術研究報告 CPSY91−62〜70 コンピュータシステム,社団法人電子情報通信学会,1992年01月31日,第91巻,第463号,pp.33−39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 99/00, G06F 9/50, G06F 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
教師データに基づき生成され、機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPUと、
前記複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて、該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段と、
前記同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段と
を具備することを特徴とする事象判定装置。
【請求項2】
前記GPUの複数のコアは、第1群の複数のコアと、第2群の複数のコアと、・・・、第N(Nは2以上の整数)群の複数のコアとにより構成され、
前記第1群の複数のコアには、第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされ、
前記第2群の複数のコアには、第1の数値より大きい第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされ、
・・・
前記第N群の複数のコアには、第(N−1)の数値より大きい第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされることを特徴する請求項1に記載の事象判定装置。
【請求項3】
前記第1群の複数のコアの第1の分類器プログラムによる処理結果、前記第2群の複数のコアの第2の分類器プログラムによる処理結果、・・・、前記第N群の複数のコアの第Nの分類器プログラムによる処理結果を、それぞれ多数決により決定することを特徴とする請求項2に記載の事象判定装置。
【請求項4】
教師データに基づき生成され、機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPUと、前記複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて、該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段と、前記同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段とを具備する事象判定装置を備え、
前記分類器プログラムを、入力情報が所定数値を基準として大小の分類を行う構成とし、分類結果を判定手段により判定して数量を予測することを特徴とする数量予測システム。
【請求項5】
前記GPUの複数のコアは、第1群の複数のコアと、第2群の複数のコアと、・・・、第N(Nは2以上の整数)群の複数のコアとにより構成され、
前記第1群の複数のコアには、第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされ、
前記第2群の複数のコアには、第1の数値より大きい第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされ、
・・・
前記第N群の複数のコアには、第(N−1)の数値より大きい第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされることを特徴する請求項4に記載の数量予測システム。
【請求項6】
前記第1群の複数のコアの第1の分類器プログラムによる処理結果、前記第2群の複数のコアの第2の分類器プログラムによる処理結果、・・・、前記第N群の複数のコアの第Nの分類器プログラムによる処理結果を、それぞれ多数決により決定することを特徴とする請求項5に記載の数量予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、極めて短時間に大量の情報を出力する例えばセンサなどのような情報発生源に対して高速に対応して事象判定を行うことのできる事象判定装置及び、その事象判定装置を用いて構成した数量予測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の事象判定装置は、CPUにおいて教師データを用いた機械学習によって分類器(分類器プログラム)を生成し、同じCPUにおいて上記で得られた分類器プログラムのパラメータにより分類を行う構成を採用していた。
【0003】
例えば、図8(a)に示すように、CPU100において分類器生成プログラム110を稼働させ教師データ101を用いた機械学習を行う。この結果、図8(b)に示すように、分類器(分類器プログラム)102が生成される。事象判定装置は、図9に示すように、CPU100において対象データ120を受けて上記で生成された分類器(分類器プログラム)102により分類を行い、結果103を得るものである。
【0004】
上記の通りに構成された従来の事象判定装置では、分類器プログラム102が機械学習の結果得たパラメータを全て一括して用いて判定を行うために、オーバーヘッドが大きくなり、短時間で大量に発生するセンサからの情報などを処理する場合には、処理が追いつかなくなるなどの問題があった。
【0005】
また、特許文献1には、大量のデータとして画像データを処理する装置において、画素単位の処理を並列処理することにより演算処理に要する時間を短縮することが記載されている。この処理装置においては、欠陥の種別を判定するにあたり、既知の欠陥画像により機械学習を行って分類アルゴリズムを得ることが示されている。
【0006】
また、特許文献2には、様々な機械学習技術に使用できるアーキテクチャをCPUからGPUへ転送することが示されている。この特許文献2のものは、GPUにおいて機械学習を行うものであり、また、それぞれの学習は画像データのピクセルを対象として行うものである。
【0007】
更に、特許文献3には、ウェブ材料の不均一性を検出するために画像解析を行うに際してGPUを起動して処理を行うことが開示されている。このシステムは、学習を行うトレーニングフェーズとオンライン予測フェーズとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−190821号公報
【特許文献2】特開2005−182785号公報
【特許文献3】特表2013−545979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1のものでは、機械学習を行うこと及び画素単位の並列処理を行うことを示すものの、機械学習により得られたパラメータについての処理については記載がなく、高速であり、しかも、高精度な処理が行われることの保証はない。
【0010】
また、上記特許文献2のものによれば、機械学習がGPUにおいて行われ、しかもピクセル単位の処理であるので、センサなどにより収集される同一情報を並列処理するような状況に適用することはできない。
【0011】
更に、特許文献3のものでは、学習を行うトレーニングフェーズとオンライン予測フェーズとを備えるものの、特に高速化に関する手法の提示がなく、センサなどにより収集される大量の情報を的確に処理できる保証はない。
【0012】
本発明は、上記のような事象判定装置の現状に鑑みてなされたもので、その目的は、極めて短時間に大量の情報を出力する例えばセンサなどのような情報発生源に対して高速に対応して事象判定を行うことのできる事象判定装置及び、その事象判定装置を用いて構成した数量予測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る事象判定装置は、教師データに基づき生成され、機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPUと、前記複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて、該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段と、前記同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る事象判定装置では、前記GPUの複数のコアは、第1群の複数のコアと、第2群の複数のコアと、・・・、第N(Nは2以上の整数)群の複数のコアとにより構成され、前記第1群の複数のコアには、第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされ、前記第2群の複数のコアには、第1の数値より大きい第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされ、・・・、前記第N群の複数のコアには、第(N−1)の数値より大きい第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされることを特徴する。
【0016】
本発明に係る事象判定装置では、前記第1群の複数のコアの第1の分類器プログラムによる処理結果、前記第2群の複数のコアの第2の分類器プログラムによる処理結果、・・・、前記第N群の複数のコアの第Nの分類器プログラムによる処理結果を、それぞれ多数決により決定することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る数量予測システムは、教師データに基づき生成され、機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPUと、前記複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて、該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段と、前記同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段とを具備する事象判定装置を備え、前記分類器プログラムを、入力情報が所定数値を基準として大小の分類を行う構成とし、分類結果を判定手段により判定して数量を予測することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る数量予測システムでは、前記GPUの複数のコアは、第1群の複数のコアと、第2群の複数のコアと、・・・、第N(Nは2以上の整数)群の複数のコアとにより構成され、前記第1群の複数のコアには、第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされ、前記第2群の複数のコアには、第1の数値より大きい第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされ、・・・、前記第N群の複数のコアには、第(N−1)の数値より大きい第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされることを特徴する。
【0020】
本発明に係る数量予測システムでは、前記第1群の複数のコアの第1の分類器プログラムによる処理結果、前記第2群の複数のコアの第2の分類器プログラムによる処理結果、・・・、前記第N群の複数のコアの第Nの分類器プログラムによる処理結果を、それぞれ多数決により決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、GPUの複数のコアそれぞれに、教師データに基づき生成され、機械学習を用いた分類を行う分類器プログラムがそれぞれロードされており、これら複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて並列処理させるので、極めて短時間に大量の情報を出力する例えばセンサなどのような情報発生源に対して高速に対応して事象判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る事象判定装置の第1の実施形態の構成を示す図。
図2】本発明に係る事象判定装置の第2の実施形態の構成を示す図。
図3】本発明に係る数量予測システムの実施形態において用いられる教師データの一例を示す図。
図4】本発明に係る数量予測システムの実施形態において用いられる入力情報の一例を示す図。
図5】本発明に係る数量予測システムの第1の実施形態の構成を示す図。
図6】本発明に係る数量予測システムの第2の実施形態の構成を示す図。
図7】本発明に係る数量予測システムの第2の実施形態において数量予測判定手段が行う判定の一例を示す図。
図8】従来例に係る事象判定装置の分類器を生成するまでの構成を示す図。
図9】従来例に係る事象判定装置の分類器を生成した後に事象判定を行う処理の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下添付図面を参照して、本発明に係る事象判定装置及び数量予測システムの実施形態を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に、分類器プログラムを生成する構成を含んだ第1の実施形態に係る事象判定装置のブロック図を示す。ここでは、一つのセンサ10から入力情報を得るものを例とする。センサ10は、温度、光量、水位などのデータを収集するもので、収集するデータに特に限定はない。
【0024】
センサ10により得られるデータは、分類器生成モードでは、CPU20へ送られる。CPU20では、センサ10により得られるデータは、教師データとされる。教師データは、センサ10の出力データに対して事象判定結果であるラベルが付加されたデータであり、例えば、センサ10の出力データが温度である場合に、ラベルとしては、商品が売れる(ラベルA)と商品が売れない(ラベルB)とが付されたものとすることができる。
【0025】
CPU20には、分類器生成プログラム21が備えられており、分類器生成プログラム21は、上記教師データに基づき、分類器プログラムを生成するものである。この分類器プログラムは、センサ10から送られる新たなデータに対して機械学習を用いた分類を行い、ラベルを付す処理を行う。ここのラベルを付す処理は、事象判定が行われていない新たなデータに対して、前述の通りラベルA、Bのいずれかを付す処理である。
【0026】
2は、事象判定装置を示す。この事象判定装置2は、GPU30とCPU40により構成される。GPU30には、演算ユニットであるコア31−1〜31−nが複数設けられている。コア31−1〜31−nの数nは、年々多くなっており、近年では、6000〜8000にのぼるものも登場している。本実施形態では、上記CPU20において生成された分類器プログラムを実行可能な単位に分割してコア31−1〜31−nにロードするものであり、実行可能な単位に分割した分類器プログラム数以上のコア31−1〜31−nがGPU30に備えられていれば良い。
【0027】
GPU30には、制御手段である制御ユニット32が設けられている。制御ユニット32は、複数のコア31−1〜31−nの分類器プログラムへ同一の入力情報(センサ10から送られるデータ)を与えて並列処理させる。
【0028】
GPU30における複数のコア31−1〜31−nの出力は、CPU40へ与えられている。CPU40には、プログラムにより実現される判定手段41が備えられている。判定手段41は、複数のコア31−1〜31−nの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行うものである。ここで、統計処理としては、多数決を用いることができる。
【0029】
以上の通りに構成された第1の実施形態に係る事象判定装置では、センサ10からデータが送られると、このデータは、複数のコア31−1〜31−nに与えられ、制御手段である制御ユニット32の制御の下に、複数のコア31−1〜31−nの各分類器プログラムにより並列処理される。各分類器プログラムが、前述の例のように、ラベルAとラベルBとに分類を行うときには、分類器プログラムがロードされたコア31−1〜31−nの数に相当する分類結果がGPU30からCPU40へ出力される。
【0030】
上記により分類結果をCPU40の判定手段41が受け取り、統計処理により事象判定を行う。例えば、統計処理として多数決を採用し、分類結果のラベルAとラベルBとについて数が多いラベルを事象判定結果とすることができる。このように本実施形態では、1つのデータに対して並列処理が行われるので、極めて短時間に大量の情報を出力する例えばセンサなどのような入力に対して高速に対応して事象判定を行うことが可能である。
【0031】
次に、図2に示す第2の実施形態に係る事象判定装置3を説明する。GPU50においては、コアが、第1群、第2群、・・・、第N(Nは2以上の整数)群に分けられている。第1群にはコア51−1〜51−nが設けられ、第2群にはコア52−1〜52−nが設けられ、・・・、第N群にはコア5N−1〜5N−nが設けられている。
【0032】
上記の第1群の複数のコア51−1〜51−nには、センサ10から与えられるデータに対して第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされる。第1の分類器プログラムは、センサ10から与えられるデータに対して、例えば、10(第1の数値)以上の商品Aが売れるか否か分類を行う。上記の第2群の複数のコア52−1〜52−nには、センサ10から与えられるデータに対して第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされる。第2の分類器プログラムは、センサ10から与えられるデータに対して、例えば、20(第2の数値)以上の商品Aが売れるか否か分類を行う。以下同様に、例えば、10の刻みで増加した、所定数以上の商品Aが売れるか否か分類を行う分類器プログラムがロードされる。そして、上記の第N群の複数のコア5N−1〜5N−nには、センサ10から与えられるデータに対して第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされる。第Nの分類器プログラムは、センサ10から与えられるデータに対して,例えば、10×N(第Nの数値)以上の商品Aが売れるか否か分類を行う。
【0033】
図示しないCPUには、分類器生成プログラムが備えられており、この分類器生成プログラムは、教師データ(センサ10から与えられるデータの例とそのときに商品Aがいくつ入れたかを示す例えば実績データ)に基づき、第1〜第Nの分類器プログラムを生成するものである。生成された第1〜第Nの分類器プログラムは、前述の通りに各群の複数のコアにロードされ、第1の実施形態の事象判定装置と同様に、センサ10から送られる新たなデータに対して機械学習を用いた上記の分類処理を行う。
【0034】
また、第1群の複数のコア51−1〜51−nに対して第1群の制御ユニット51Cが備えられ、第2群の複数のコア52−1〜52−nに対して第2群の制御ユニット52Cが備えられ、・・・、第N群の複数のコア5N−1〜5N−nに対して第N群の制御ユニット5NCが備えられている。これら第1群の制御ユニット51C、第2群の制御ユニット52C、・・・、第N群の制御ユニット5NCは、制御手段であり、第1群の複数のコア51−1〜51−nの分類器プログラム、第2群の複数のコア52−1〜52−nの分類器プログラム、・・・、第N群の複数のコア5N−1〜5N−nの分類器プログラムへ同一の入力情報(センサ10から送られるデータ)を与えて並列処理させる。
【0035】
GPU50の出力はCPU60へ送られる。CPU60には、第1群の複数のコア51−1〜51−nによる分類結果を受けて判定を行う第1の判定手段61−1、第2群の複数のコア52−1〜52−nによる分類結果を受けて判定を行う第2の判定手段61−2、・・・、第N群の複数のコア5N−1〜5N−nによる分類結果を受けて判定を行う第Nの判定手段61−Nが備えられている。
【0036】
第1の判定手段61−1、第2の判定手段61−2、・・・、第Nの判定手段61−Nは、いずれも統計処理により事象判定を行う。第1群の複数のコア51−1〜51−nからは、第1の数値以上であるか否かの分類結果がn個もたらされるので、第1の判定手段61−1は、n個の分類結果の多数決によって第1の数値以上であるか否かの事象判定を行う。第2群の複数のコア52−1〜52−nからは、第2の数値以上であるか否かの分類結果がn個もたらされるので、第2の判定手段61−2は、n個の分類結果の多数決によって第2の数値以上であるか否かの事象判定を行う。以下同様に事象判定を行い、第N群の複数のコア5N−1〜5N−nからは、第Nの数値以上であるか否かの分類結果がn個もたらされるので、第Nの判定手段61−Nは、n個の分類結果の多数決によって第Nの数値以上であるか否かの事象判定を行う。このように第2の実施形態では、1つのデータに対して異なる複数の事象判定を、それぞれ並列処理により行うので、極めて短時間に大量の情報を出力する例えばセンサなどのような入力に対して高速に対応して事象判定を行うことが可能である。
【0037】
次に、事象判定装置を用いた数量予測システムを説明する。数量予測システムは、商品に販売数、製品の歩留り数、入場者数、営業担当の販売達成率などの数量を予測する。数量予測システムは、所定対象の外的条件と内的条件の少なくとも1つの条件が所定のときに、前記所定対象の所定事象が所定時間内に発生する数量を予測するものである。ここで商品の販売数を予測するシステムでは、「所定対象」は商品であり、「所定事象」は販売されることであり、「所定時間」は1日や1か月などの期間である。また、製品の歩留り数を予測するシステムでは、「所定対象」は製品であり、「所定事象」は良品が製造されることであり、「所定時間」は1日や1か月などの期間である。また、入場者数を予測するシステムでは、「所定対象」は人であり、「所定事象」は人が入場することであり、「所定時間」は1日や1か月などの期間である。更に、営業担当者の販売達成率を予測するシステムでは、「所定対象」は或る営業担当者であり、「所定事象」は或る営業担当者が商品を販売することであり、「所定時間」は1日や1か月などの期間である。
【0038】
所定対象の外的条件とは、温度や湿度、天気、騒音(デシベル)などであり、所定対象の内的条件とは、商品や製品であれば、組成(何からできているか、何が何%含まれているかなど)、固さや柔らかさなどであり、人であれば、体温、脈拍数、病気などとすることができる。
【0039】
教師データ80は、所定対象の外的条件と内的条件の少なくとも1つの条件情報と、発生数量とを含む一連データが複数含まれて構成される。数量予測システムの第1の実施形態では、図3に示すように、条件情報として項目1〜項目mがあり、項目1に温度が採用され、項目mに天気が採用されているものとする。「発生数量」は数量であり、一連データはNoにより区分される、表中の一行分のデータを意味する。
【0040】
数量予測システムの第1の実施形態は図5に示すように構成される。数量予測システムの第1の実施形態に用いられる事象判定装置へ与えられる対象データとしての入力情報は、上記教師データ80と同じ条件情報である項目1〜項目mを有する一連データ(図4の一行分のデータ)であって、数量が求められていないデータである。
【0041】
上記教師データ80に基づき、分類器生成プログラムが備えられた図示しないCPUによって、事象判定装置の第1の実施形態と同様にして、分類器プログラムが生成される。この分類器プログラムは、情報発生源90から送られる新たなデータ(図4の一行分のデータ)に対して機械学習を用いた分類を行い、ラベルを付す処理を行う。ラベルとしては、新たなデータ(図4の一行分のデータ)に対して、発生する数量が第1の数量(例えば10)以上であるか否かとすることができる。
【0042】
GPU30には、演算ユニットであるコア31−1〜31−nが複数設けられ、制御手段である制御ユニット32が設けられている。本実施形態では、GPU30は、事象判定装置の第1の実施形態と同様に、分類器プログラムが実行可能な単位に分割されてコア31−1〜31−nにロードされた構成とされている。GPU30における複数のコア31−1〜31−nの出力が、判定手段41が備えるCPU40へ与えられる構成も、事象判定装置の第1の実施形態と同様の構成である。
【0043】
以上の通りに構成された第1の実施形態に係る数量予測システムでは、既に説明した対象データである入力情報が情報発生源90からGPU30に与えられる。もしくは、GPU30が既に説明した対象データである入力情報を情報発生源90から取り込む。複数のコア31−1〜31−nの分類器プログラムへ同一の入力情報が与えられて並列処理される。複数のコア31−1〜31−nの分類器プログラムにより処理され、CPU40の判定手段41へ与えられる。判定手段41は、複数のコア31−1〜31−nの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理としての多数決を用いて判定を行う。この結果、入力情報により発生する数量が第1の数量(例えば10)以上であるか否かという数量予測を得ることができる。
【0044】
図6に第2の実施形態に係る数量予測システムの構成を示す。この数量予測システムは、第2の実施形態に係る事象判定装置3の構成とほぼ同様である。この数量予測システムは、第2の実施形態に係る事象判定装置3の構成との差異は、図示しないCPUには分類器生成プログラムが備えられており、分類器生成プログラムは、第1の実施形態に係る数量予測システムと同様の教師データ80に基づき、第1〜第Nの分類器プログラムを生成するものである。
【0045】
第1の分類器プログラムは、センサ10から与えられるデータに対して、例えば、10(第1の数値)以上の商品Aが売れるか否か分類を行う。上記の第2群の複数のコア52−1〜52−nには、センサ10から与えられるデータに対して第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされる。第2の分類器プログラムは、センサ10から与えられるデータに対して、例えば、20(第2の数値)以上の商品Aが売れるか否か分類を行う。以下同様に、例えば、10の刻みで増加した、所定数以上の商品Aが売れるか否か分類を行う分類器プログラムがロードされる。そして、上記の第N群の複数のコア5N−1〜5N−nには、センサ10から与えられるデータに対して第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされる。第Nの分類器プログラムは、センサ10から与えられるデータに対して,例えば、10×N(第Nの数値)以上の商品Aが売れるか否か分類を行う。
【0046】
また、第1の判定手段61−1、第2の判定手段61−2、・・・、第Nの判定手段61−Nの判定結果が、数量予測判定手段70へ送られている。更に、第1の実施形態に係る数量予測システムと同様の対象データである入力情報が、情報発生源90からGPU50へ与えられる。
【0047】
以上の通りに構成された第2の実施形態に係る数量予測システムでは、第1の実施形態に係る数量予測システムと同様の対象データである入力情報が、情報発生源90からGPU50へ与えられて、分類が行われる。つまり、第1群の複数のコア51−1〜51−nの分類器プログラム、第2群の複数のコア52−1〜52−nの分類器プログラム、・・・、第N群の複数のコア5N−1〜5N−nの分類器プログラムによる並列処理が行われる。
【0048】
第1の判定手段61−1には第1の数値以上であるか否かの分類結果がn個もたらされ、第2の判定手段61−2には第2の数値以上であるか否かの分類結果がn個もたらされ、・・・、第Nの判定手段61−Nには第Nの数値以上であるか否かの分類結果がn個もたらされるので、いずれも統計処理により事象判定を行う。
【0049】
数量予測判定手段70は、第1の判定手段61−1の判定結果、第2の判定手段61−2の判定結果、・・・、第Nの判定手段61−Nの判定結果を受けて、例えば、図7に示すように、判定結果の肯定を「○」、否定を「×」で示す場合、最初に「○」から「×」へ変化した境界を予測数値とする。この例では図7(a)に示すように「40以上」の分類器で最初に「○」から「×」へ変化しているので、「30以上40より少ない数」を数値予測結果とする。或いは、図7(b)に示すように、「○」から「×」へ変化し、2度以上「×」が連続した境界を予測数値と判定することもできる。この図7(b)の例では「50以上」の分類器と「60以上」の分類器で2度以上「×」が連続しているので、境界は「40以上」の分類器と「50以上」の分類器の間であり、「40以上50より少ない数」を数値予測結果とする。
【0050】
なお、分類器の刻みは、「10」に限定されず、整数でも、小数点以下の数を含めて刻みとしても良い。また、事象判定装置においても、入力情報は1つのデータに限定されず、数量予測システムにおいて用いたように、複数の項目を含んだ情報であっても良い。勿論、複数の項目を含んだ情報を用いる場合には、このような情報と事象判定結果を含む教師データに基づき分類器プログラムを生成するものとする。
【符号の説明】
【0051】
2 事象判定装置
10 センサ
20、40 CPU
21 分類器生成プログラム
30、50 GPU
31-1、31-2、・・・、31-n コア
32 制御ユニット
41 判定手段
51-1、51-2、・・・、51-n コア
52-1、52-2、・・・、52-n コア
5N-1、5N-2、・・・、5N-n コア
51C、52C、・・・、5NC 制御ユニット
61−1 第1の判定手段
61−2 第2の判定手段
61−N 第Nの判定手段
70 数量予測判定手段
80 教師データ
90 情報発生源
図1
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