特許第6483606号(P6483606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483606電気的に制御可能な液晶グレージングの電力供給源、及びかかるグレージングに給電する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483606
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】電気的に制御可能な液晶グレージングの電力供給源、及びかかるグレージングに給電する方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20190304BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   G02F1/13 505
   G02F1/133 520
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-502412(P2015-502412)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公表番号】特表2015-515020(P2015-515020A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】FR2013050703
(87)【国際公開番号】WO2013144526
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】1252943
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ジーンウエイ ジャーン
(72)【発明者】
【氏名】ユーグ シェネベール
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−067217(JP,A)
【文献】 特開平03−116019(JP,A)
【文献】 特開平02−091622(JP,A)
【文献】 特開平09−005666(JP,A)
【文献】 特開昭58−139182(JP,A)
【文献】 特開2004−182006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0315693(US,A1)
【文献】 特開2009−198754(JP,A)
【文献】 特開平09−175500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/133
G02F 1/1334
G09G 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源(ALIM)に接続された第1電極と第2電極との間に配置された液晶素子を支持する基材を含んでなる電気的に制御される液晶グレージングユニット(VITR)であり、前記液晶素子が、
・当該グレージングユニット(VITR)がゼロ電圧の作用下にある拡散状態から、
・当該グレージングユニット(VITR)が動作振幅(Vo)と呼ばれる振幅を有する正弦波AC電圧(Vnom(t))の作用下にある透明及び/又は着色状態に、
移行することが可能である、電気制御式液晶グレージングユニット(VITR)であって、前記電力供給源(ALIM)が、当該電力供給源(ALIM)の作動後に開始する少なくとも0.1秒の運転開始期間(Ton)にわたって振幅がゼロから動作振幅(Vo)に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧(Ve(t))、及び/又は当該電力供給源(ALIM)の作動停止後に開始する少なくとも0.1秒の運転停止期間(Toff)にわたって振幅が動作振幅(Vo)からゼロに至るまで漸進的に減少する運転停止電圧(Vs(t))を、当該グレージングユニット(VITR)に印加するように設計されていることを特徴とする、電気制御式液晶グレージングユニット(VITR)。
【請求項2】
前記運転開始電圧(Ve(t))の振幅が線形的に増加し、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))の振幅が線形的に減少することを特徴とする、請求項1に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項3】
前記運転開始電圧(Ve(t))が擬似正弦波状であり、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))が擬似正弦波状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項4】
擬似正弦波状の前記運転開始電圧(Ve(t))及び前記正弦波AC電圧(Vnom(t))が実質的に同じ周波数を有し、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))及び前記正弦波AC電圧(Vnom(t))が実質的に同じ周波数を有することを特徴とする、請求項3に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項5】
擬似正弦波状の前記運転開始電圧(Ve(t))の周波数が40Hzと5kHzの間の範囲内であり、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))の周波数が40Hzと5kHzの間の範囲内であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項6】
前記運転開始電圧(Ve(t))がポリノミアル又は線形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項7】
前記運転開始期間(Ton)の終了時に、当該電気制御式グレージングユニット(VITR)の曇り度が10%未満であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項8】
前記電力供給源(ALIM)が前記運転開始期間(Ton)の調整手段を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶電気制御式グレージングユニット(VITR)に電力を供給するための方法であって、次の一連の工程、すなわち、
・前記電力供給源(ALIM)を起動する工程、
・振幅が少なくとも0.1秒の運転開始期間(Ton)にわたってゼロから前記動作振幅(V0)に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧(Ve(t))を前記グレージングユニット(VITR)に印加する工程、
を含むことを特徴とする電力供給方法。
【請求項10】
前記運転開始期間(Ton)を調整するための工程を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
次の一連の工程、すなわち、
・前記電力供給源(ALIM)の作動を停止する工程、
・振幅が少なくとも0.1秒の運転停止期間(Toff)にわたって前記動作振幅(V0)からゼロに至るまで漸進的に減少する運転停止電圧(Vs(t))を前記グレージングユニット(VITR)に印加する工程、
を含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から8の1項に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)に電力を供給するための装置であって、スイッチ(INT)を入れた後で開始する少なくとも0.1秒の運転開始期間(Ton)にわたって、前記運転開始電圧(Ve(t))の振幅をゼロから前記動作振幅(V0)に至るまで搭載ソフトウェアによって漸進的に増加させるように設計されたプログラム可能な制御装置(REGU)に接続されたスイッチ(INT)を含むことを特徴とする、電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、可変光が拡散する電気的に制御可能なグレージングユニットの技術分野、より詳しく言えば液晶グレージングユニットの技術分野である。本発明は、電気的に制御可能なグレージングユニットと、その電力供給源とに関するものであって、該グレージングユニットは、電力供給源によるAC電圧の印加中に拡散状態から透明状態に移ることが可能であるものである。
【背景技術】
【0002】
液晶グレージングユニットの透明度は、適切な電力供給源の作用下で変更することができる。この度合いは、実際のところ、グレージングユニットに印加される電圧の大きさに直接関連づけられる。かかるグレージングユニットを通して見る能力がこうして制御され、これが一定の時間で透明度が低下し又は遮断すらされるのを可能にする。かかるグレージングユニットは、例えば、建物内の2つの部屋の間、又は列車もしくは航空機の2つの区画間の内部間仕切りとして用いられる。
【0003】
一般に、液晶グレージングユニットは、電力供給源に接続された第1電極及び第2電極の間に配置された液晶の層を含んでなる。この液晶の層は、純粋な液晶とポリマーとから構成される。電力供給源によってグレージングユニットに給電すると、純粋な液晶が優先軸に沿って配向し、それらの光学指数はポリマーのそれと等しくなり、これが視認を可能にする透明状態をもたらす。電圧の印加がなく、液晶の整列がない場合、純粋な液晶及びポリマーの光学的指数間の不一致によって、グレージングユニットは拡散性となり、視認が妨げられる。サン−ゴバン・グラス社は、特にかかる液晶グレージングユニットを“Privalite”という商品名で販売している。
【0004】
従来、これらのグレージングユニットにはAC正弦波電圧V(t)=V0sin(2πf0t)が給電され、ここで周波数f0は例えば50Hzであり、動作振幅と呼ばれる振幅V0は典型的には数十ボルト程度である。グレージングユニットを通した透明度は、「曇り度」で測定される。図1は、曇り度と振幅V0との関係を示す。V0=0Vの場合、曇り度は100%に近く、電気的に制御可能な液晶グレージングユニットは拡散状態である。V0が公称の振幅Vnomに等しい場合、曇り度はほぼ5%であり、グレージングユニットは透明状態である。公称振幅Vnomは、グレージングユニットの固有の特性、とりわけ液晶の層に依存する。
【0005】
電力供給源のスイッチを入れると、グレージングユニットは標準的に、拡散状態に相当するゼロの電圧から、透明又は実質的に透明の状態に相当する振幅V0=Vnomの電圧に移行する。同様に、電力供給源を停止すると、グレージングユニットは電圧V0=Vnomからゼロ電圧に移行する。
【0006】
拡散状態から透明状態への、逆に透明状態から拡散状態への移行は、即時であり、その効果は視覚的に急激であると見なすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電気的に制御可能な液晶グレージングユニットが拡散状態から透明状態へ、及び/又はその逆へ急激に移行することを防ぐための解決策を提供することである。本発明はまた、電極が反射型もしくは半反射型である場合にも、又は反射型もしくは半反射型素子が基材に搭載されている場合にも適用可能であり、それゆえに、液晶グレージングユニットが拡散状態から反射もしくは半反射状態へ、及び/又はその逆へ急激に移行することを防ぐための解決策をも提供するものである。
【0008】
更に、本発明は、液晶の層が着色されている場合にも適用可能であり、それゆえに、液晶グレージングユニットが拡散状態から着色状態へ、及び/又はその逆へ急激に移行することを防ぐための解決策をも提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、本発明は基本的に、電力供給源に接続された第1(透明)電極と第2電極との間に配置された液晶素子を支持する基材(ガラス又はポリマーで作製された、透明の又は場合によっては着色された)を含んでなる電気的に制御可能な液晶グレージングユニットであり、前記液晶素子が、
・グレージングユニットがゼロ電圧の作用下にある拡散状態から、
・グレージングユニットが動作振幅と呼ばれる振幅を有する正弦波AC電圧の作用下にある透明及び/又は着色状態に、
移行することが可能である電気的に制御可能な液晶グレージングユニットであって、前記電力供給源が、当該電力供給源を作動させた後に開始する、少なくとも0.1秒(あるいは少なくとも0.5秒又は1秒、好ましくは1分未満又は30秒未満)の運転開始期間にわたって振幅がゼロから動作振幅に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧、及び/又は当該電力供給源の作動停止後に開始する、少なくとも0.1秒(あるいは少なくとも0.5秒又は1秒、好ましくは1分未満又は30秒未満)の運転停止期間にわたって振幅が動作振幅からゼロに至るまで漸進的に減少する運転停止電圧を、グレージングユニットに印加するように設計されている、電気的に制御可能な液晶グレージングユニットに関する。
【0010】
本発明の結果、電気的に制御可能な液晶グレージングユニットは、振幅が漸進的に増加する及び/又は漸進的に減少する電圧の作用を受ける。こうして、曇り度は振幅と共に漸進的に減少又は増加し、これは移行を裸眼で追うことができる使用者にとって視覚的により快いものである。運転開始又は運転停止期間は、実際、眼の感度に適合するように選択される。
【0011】
更に、運転開始電圧が0Vで開始するので、グレージングユニットに損傷を与えかねない電力供給源の運転開始時における高電流ピークを防ぐことが可能となる。実際、本発明によれば、電力供給源の運転開始時のグレージングユニットの端子における電圧は、0Vから、−V0とV0の間の範囲(正弦波AC信号の振幅)内の任意の所定の無制御値V(t=0)に即時に移行しない。従って、ゼロから開始して漸進的に増加するこの運転開始電流i(t=0)は、供給系(バスバー)又は導電層に、あるいは更に液晶にも、損傷を与えない。
【0012】
前段落に記載した主要な特徴とは別に、本発明によるグレージングユニットは、個別に考えられる、又は技術的に可能な組み合わせに従って考えられる、以下のうちの1つ以上の補足的特徴を有することができる。
・運転開始電圧の振幅は線形的に増加する、及び/又は運転停止電圧の振幅は線形的に減少する。線形の増加は、実際のところ、使用者にとって視覚的に快いと見なされ、実施するのが比較的簡単である。漸進的な増加は、階段状に作用するのでなく、有利なことに一定(連続)であり、且つ、運転開始期間中に既に到達されたより低い値へのいかなる回帰も、いずれの安定化した横ばい状態も含まない。
・運転開始電圧は擬似正弦波状であり、及び/又は運転停止電圧は擬似正弦波状である。
・運転開始電圧と正弦波AC電圧は実質的に同じ周波数を有し、及び/又は運転停止電圧と正弦波AC電圧は実質的に同じ周波数を有する。
・正弦波AC動作電圧の周波数f0は40Hzと5kHzの間の範囲内である。
・運転開始電圧が擬似正弦波状である場合の運転開始電圧の周波数は40Hzと5kHzの間の範囲内であり、及び/又は運転停止電圧が擬似正弦波状である場合の運転停止電圧の周波数は40Hzと5kHzの間の範囲内である。
・運転開始電圧はポリノミアルもしくは線形であり、及び/又は運転停止電圧はポリノミアルもしくは線形である。
・運転開始期間の終了時、電気的に制御可能なグレージングユニットの曇り度は10%未満であり、好ましくは5%以下である。
・運転開始期間の終了時、グレージングユニットの光透過率(TL)は少なくとも70%、又は場合によっては80%もしくは90%であり、反射型素子が存在する場合には、光反射率(RL)は少なくとも50%あるいは70%である。
・動作振幅は200ボルト以下であり、典型的には数十ボルトから200ボルトである。
・電力供給源は運転開始期間の調整手段を含む。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、先に説明したような電気的に制御可能なグレージングユニットに電力を供給するための方法であって、以下の一連の工程、すなわち、
・電力供給源を起動する工程、
・場合により、運転開始期間を調整する工程、
・振幅が運転開始期間にわたってゼロから動作振幅に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧をグレージングユニットへ印加する工程、
・電力供給源の作動を停止する工程、
・場合により、振幅が少なくとも0.1秒の運転停止期間にわたって動作振幅からゼロに至るまで漸進的に減少する運転停止電圧をグレージングユニットへ印加する工程、
を含む、電気的に制御可能なグレージングユニットに電力を供給する方法に関する。
【0014】
第3の態様によれば、本発明は、本発明による電気的に制御可能なグレージングユニットに電力を供給するための装置であって、スイッチを入れた後で開始する運転開始期間にわたって、ゼロから動作振幅に至るまでの運転開始電圧の振幅を搭載ソフトウェアによって漸進的に増加させるように設計されたプログラム可能な制御装置に接続されたスイッチを含む装置に関する。
【0015】
本発明及びその種々の応用は、以下の説明を読み、添付の図面を検討することでよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は、本発明の非限定的な例として提示するにすぎない。
【0017】
図1】電気的に制御可能なグレージングユニットの曇り度と該グレージングユニットに印加された電圧の振幅との関係を表す曲線を示す図である。
図2】電力供給源の運転開始時に本発明の第1の実施形態による電気的に制御可能なグレージングユニットに該電力供給源によって供給される電圧を示すタイミング図である。
図3】電力供給源の運転停止時に図2のグレージングユニットに該電力供給源によって供給される電圧を示すタイミング図である。
図4】電力供給源の運転開始時に本発明の第2の実施形態による電気的に制御可能なグレージングユニットに該電力供給源によって供給される電圧を示すタイミング図である。
図5】本発明の第1又は第2の実施形態による電気的に制御可能なグレージングユニットに電力供給源によって供給される電圧の振幅を示すタイミング図である。
図6】本発明の第1の実施形態による電気的に制御可能なグレージングユニットのための電力供給源の模式ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、電気的に制御可能な液晶グレージングユニットVITRのための電力供給源ALIMに関する。以下において、電力供給源ALIMによってグレージングユニットVITRに供給される電圧はV(t)で示される。
【0019】
先に説明したように、グレージングユニットVITRは、第1電極と第2電極との間に配置された液晶の層を含んでなる。説明する実施形態において、第1電極及び第2電極は透明であって、場合により着色されていることもある透明基材(一般的にはポリマー又はガラス)上にあり、その結果グレージングユニットVITRは電圧V(t)の作用下で拡散状態から透明状態(又は準透明状態)に移行することができる。この場合、グレージングユニットVITRは、
・いかなる電圧も印加されていない場合、言い換えれば電圧V(t)がゼロである場合は、拡散状態にあり、そして、
・電圧V(t)が正弦波AC電圧である場合は、透明状態(透明度が例えば少なくとも70%)にある。
【0020】
ここでは、V(t)=Vnom(t)=V0sin(2πf0t)となる。この式中、
・V0は、正弦波AC電圧Vnom(t)の振幅であり、この振幅V0は以下において動作振幅と呼ばれる。通常、V0は数十ボルトから200Vに等しい。先に説明したように、V0はグレージングユニットVITRの曇り度に直接関連づけられる。従って、V0は、この振幅で曇り度が10%未満、好ましくは5%以下になるように選択されるのが有利である。
・f0は、正弦波AC電圧Vnom(t)の周波数である。電力供給源ALIMは標準的に電力線電源に接続されるので、f0は標準的に50又は60Hzに等しい。
【0021】
なお、別の実施形態においては、第1電極は透明ではなく、反射型又は半反射型である。この場合、グレージングユニットVITRは、拡散状態から反射又は半反射状態へ、及びその逆へ移行することが可能である。
【0022】
変形実施形態として、例えば従来実施されているように二色性着色剤の添加によって、液晶の層を着色する。更に、基材の液晶の層を有する面と反対側の主面を、反射防止層、保護層などの、各種の機能性構成要素で被覆してもよい。更に、基材の液晶の層を有する面と反対の主面側に、積層中間層を介してガラスインサートを積層してもよい。
【0023】
グレージングユニットVITRが1つの状態から別のものに急激に移行することを防ぐために、電力供給源ALIMは1以上の過渡電圧Ve(t)、Vs(t)を供給することが可能であり、グレージングユニットVITRが、ゼロ電圧から正弦波AC電圧Vnom(t)に、及び/又は逆に正弦波AC電圧Vnom(t)からゼロ電圧に移行する電圧を急激に印可されるのを防ぐことができる。従って、電力供給源ALIMは、
・電力供給源ALIMの起動後に開始して、運転開始期間Tonにわたり、振幅がゼロから動作振幅V0に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧Ve(t)を供給するように設計され、第1の実施形態においては、運転開始電圧Ve(t)は正弦波AC電圧Vnom(t)の周波数f0における擬似正弦波電圧であり、その後、運転開始期間Tonの終了時において、電力供給源ALIMは正弦波AC電圧Vnom(t)を供給し、
・及び/又は電力供給源ALIMの作動停止後に開始して、運転停止期間Toffにわたり、振幅が動作振幅V0からゼロに至るまで運転停止期間Toffにわたって漸進的に減少する運転停止電圧Vs(t)を供給するように設計され、一実施形態においては、運転停止電圧Vs(t)は、正弦波AC電圧Vnom(t)の周波数f0における擬似正弦波電圧である。
【0024】
本発明の一実施形態により、電力供給源によって供給される電圧V(t)を、図2及び図3に示す。図2は、電力供給源ALIMの運転開始に関しており、言い換えればグレージングユニットVITRが最初に拡散状態にあり、そしてそれが透明状態に移行することが所望される場合に関するのに対して、図3は、電力供給源ALIMの運転停止に関しており、言い換えればグレージングユニットVITRが透明状態から拡散状態に戻ることが所望される場合に関している。
【0025】
電力供給源ALIMの運転開始は、時間t=tdで行われる。従って、t=td未満の時間ではV(t)=0である。運転開始期間Tonの間は、V(t)=Ve(t)となる。その後、運転開始期間Tonの終了時にV(t)=Vnom(t)となる。
【0026】
電力供給源ALIMの運転停止は、時間t=taで行われる。t=taで開始する運転停止期間Toffの間は、V(t)=Vs(t)となる。その後、運転停止期間Toffの終了時にV(t)=0となる。
【0027】
図2図3に示す実施形態において、
・運転開始電圧Ve(t)及び運転停止電圧Vs(t)は擬似正弦波状であり、
・運転開始電圧Ve(t)の振幅及び運転停止電圧Vs(t)の振幅は線形的に増加し、
・運転開始電圧Ve(t)、運転停止電圧Vs(t)、及び正弦波AC電圧Vnom(t)は、実質的に同じ周波数を有する。なお、擬似周期信号の周波数に言及するのは、本文を明らかにすることを目的とした用語の流用であり、擬似周波数について言うことを当然に意図したものである。
【0028】
先に列挙した特徴には、実施するのが簡便であるという利点と、一方では運転開始電圧Ve(t)と正弦波AC電圧Vnom(t)との間で、他方では正弦波AC電圧Vnom(t)と運転停止電圧Vs(t)との間で、周波数及び振幅が継続するという利点がある。
【0029】
図4で説明される第2の実施形態では、運転開始電圧Ve(t)は線形である。漸進的な透明性の視覚上の効果は、図2で説明される実施形態と同じであり、本実施形態には更に、実施が特に簡単であるという利点がある。図示しないその他の実施形態において、運転開始電圧Ve(t)は、鐘型あるいは放物線状の形をとる。
【0030】
図5は、電力供給源ALIMが「滑らかな開始」という機能及び「滑らかな停止」という機能を含む場合、言い換えればそれが漸進性の振幅の運転開始電圧Ve(t)及び運転停止電圧Vs(t)を供給するように設計される場合の、電圧V(t)の振幅AMPの変化を時間の関数として示している。時間t=tdで、言い換えれば電力供給源ALIMの運転開始時に、電圧V(t)の振幅が時間t=ta+Tonで動作振幅V0に到達するまで線形的に増加することが観察される。次いで、時間t=taにおいて、言い換えれば電力供給源ALIMの運転停止時において、電圧V(t)の振幅は動作振幅V0から、時間t=ta+Toffで到達する値であるゼロに至るまで線形的に減少する。
【0031】
図6は、運転開始電圧Ve(t)及び運転停止電圧Vs(t)を供給するように設計された電力供給源ALIMの模式ブロック図を示している。かかる電力供給源ALIMは当業者に知られており、一実施形態が以下で想起される。この電力供給源ALIMは、グレージングユニットに供給される電圧の振幅を漸進的に増加させること及び漸進的に減少させることによってグレージングユニットVITRの運転開始及び運転停止を制御することを可能にする「円滑な開始」/「円滑な停止」として知られている機能を有する。このことによって、拡散状態と透明状態のと間における推移が緩やかで制御されたものとなり、急激な状態変化に対してより良好な視覚感が得られる。
【0032】
電力供給源ALIMは、電力供給系SECT、一般的には周波数が50又は60Hzに等しい電力線電源に接続され、以下の構成要素を含む。
・電力供給源ALIMの入力時に、電力供給源ALIMを電力供給系SECTに接続するのを可能にし、そうして電力供給源ALIMが作動するのを可能にするスイッチINT。
・国際基準の義務であり、電力供給源ALIMが家庭の電力供給系SECTにいささかも干渉も生じさせないことの保証を可能にする配線電源フィルタFILT1。
・電力供給系SECTによって分配される正弦波信号から開始してDC電圧を得るのを可能にする整流器REDR。
・スイッチモード電力供給源を形成する、電圧低下装置AB及びプログラム可能制御装置REGUであり、これらの複合作用で特定の値のDC電圧を得るのを可能にする電圧低下装置AB及びプログラム可能制御装置REGU。
・こうして生じさせたDC信号を正弦波電圧に変換し直すチョッパHACH。
・不必要な高調波を除去して、液晶グレージングユニットVITRに印加する信号、言い換えればV(t)を純化するのを可能にする出力フィルタFILT2。
【0033】
運転開始時には、スイッチINTの作用によってプログラム可能制御装置REGUに給電される。プログラム可能制御装置REGUは、搭載ソフトウェアアプリケーションで設定された期間、すなわち運転開始期間Tonにわたって、0Vからその公称値まで出力電圧を漸進的に増加させるように設計されている。
【0034】
運転開始期間Tonは、拡散状態と透明状態との間の所望の推移効果に応じて、所望のとおりにプログラムすることができる。運転開始電圧Ve(t)は少数の擬似周期、典型的には5の擬似周期で十分である。周波数f0=50Hzの場合、25の運転開始擬似周期が0.5秒に相当する。快い視覚効果のためには、運転開始期間Tonは少なくとも半秒、あるいは少なくとも1秒に等しいことが有利に所望される。
【0035】
スイッチINTへの新たな作用によって電力供給源ALIMを停止することにより、プログラム可能制御装置REGUのスイッチを切る。これは、出力電圧の制御を無効にする。こうして、運転停止電圧Vs(t)の振幅は、運転停止期間Toffにわたって漸進的に減少する。運転停止期間Toffは、出力フィルタFILT2の構成部品とグレージングユニットVITRに貯蔵されたエネルギーとによって決定される。液晶グレージングユニットVITRは、実際のところ、出力フィルタFILT2の成分とともに変動して、能動的な役割を果たす。
【0036】
有利には、電力供給源の構成部品は、快い視覚効果のために、運転停止期間Toffが有利には少なくとも半秒、あるいは少なくとも1秒となるように選択される。
【0037】
なお、この電力供給源は、運転開始時及び運転停止時の大きな電流に関連した損傷を制限することによって液晶グレージングユニットVITRの性能を保証することも可能にする。こうして、グレージングユニットVITRの耐用年数が延ばされる。
本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
電力供給源(ALIM)に接続された第1電極と第2電極との間に配置された液晶素子を支持する基材を含んでなる電気的に制御される液晶グレージングユニット(VITR)であり、前記液晶素子が、
・当該グレージングユニット(VITR)がゼロ電圧の作用下にある拡散状態から、
・当該グレージングユニット(VITR)が動作振幅(Vo)と呼ばれる振幅を有する正弦波AC電圧(Vnom(t))の作用下にある透明及び/又は着色状態に、
移行することが可能である電気制御式液晶グレージングユニット(VITR)であって、前記電力供給源(ALIM)が、当該電力供給源(ALIM)の作動後に開始する少なくとも0.1秒の運転開始期間(Ton)にわたって振幅がゼロから動作振幅(Vo)に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧(Ve(t))、及び/又は当該電力供給源(ALIM)の作動停止後に開始する少なくとも0.1秒の運転停止期間(Toff)にわたって振幅が動作振幅(Vo)からゼロに至るまで漸進的に減少する運転停止電圧(Vs(t))を、当該グレージングユニット(VITR)に印加するように設計されていることを特徴とする、電気制御式液晶グレージングユニット(VITR)。
《態様2》
前記運転開始電圧(Ve(t))の振幅が線形的に増加し、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))の振幅が線形的に減少することを特徴とする、態様1に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様3》
前記運転開始電圧(Ve(t))が擬似正弦波状であり、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))が擬似正弦波状であることを特徴とする、態様1又は2に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様4》
擬似正弦波状の前記運転開始電圧(Ve(t))及び前記正弦波AC電圧(Vnom(t))が実質的に同じ周波数を有し、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))及び前記正弦波AC電圧(Vnom(t))が実質的に同じ周波数を有することを特徴とする、態様3に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様5》
擬似正弦波状の前記運転開始電圧(Ve(t))の周波数が40Hzと5kHzの間の範囲内であり、及び/又は前記運転停止電圧(Vs(t))の周波数が40Hzと5kHzの間の範囲内であることを特徴とする、態様3又は4に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様6》
前記運転開始電圧(Ve(t))がポリノミアル又は線形であることを特徴とする、態様1又は2に記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様7》
前記運転開始期間(Ton)の終了時に、当該電気制御式グレージングユニット(VITR)の曇り度が10%未満、好ましくは5%以下であることを特徴とする、態様1から6のいずれか1つに記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様8》
前記電力供給源(ALIM)が前記運転開始期間(Ton)の調整手段を含むことを特徴とする、態様1から7のいずれか1つに記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)。
《態様9》
態様1から8のいずれか1つに記載の液晶電気制御式グレージングユニット(VITR)に電力を供給するための方法であって、次の一連の工程、すなわち、
・前記電力供給源(ALIM)を起動する工程、
・振幅が少なくとも0.1秒の運転開始期間(Ton)にわたってゼロから前記動作振幅(V0)に至るまで漸進的に増加する運転開始電圧(Ve(t))を前記グレージングユニット(VITR)に印加する工程、
を含むことを特徴とする電力供給方法。
《態様10》
前記運転開始期間(Ton)を調整するための工程を含むことを特徴とする、態様9に記載の方法。
《態様11》
次の一連の工程、すなわち、
・前記電力供給源(ALIM)の作動を停止する工程、
・振幅が少なくとも0.1秒の運転停止期間(Toff)にわたって前記動作振幅(V0)からゼロに至るまで漸進的に減少する運転停止電圧(Vs(t))を前記グレージングユニット(VITR)に印加する工程、
を含むことを特徴とする、態様9又は10に記載の方法。
《態様12》
態様1から8の1つに記載の電気制御式グレージングユニット(VITR)に電力を供給するための装置であって、スイッチ(INT)を入れた後で開始する少なくとも0.1秒の運転開始期間(Ton)にわたって、前記運転開始電圧(Ve(t))の振幅をゼロから前記動作振幅(V0)に至るまで搭載ソフトウェアによって漸進的に増加させるように設計されたプログラム可能な制御装置(REGU)に接続されたスイッチ(INT)を含むことを特徴とする、電力供給装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6