(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、以下の実施形態を参照して具体的に説明される。本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、例示および説明のみを目的として、本明細書に提示されているということに留意されたい。それは、開示された正確な形態に、網羅的であること、または限定されるものではない。
【0015】
図1Aは、本発明の好ましい実施形態に係る、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナの構造ブロック図である。
図1Bは、スタティックキャリブレーションを実行する
図1Aのスキャナを示す斜視図である。
図2は、スタティックキャリブレーションを実行する
図1Aのスキャナを示すブロック図である。
図1A、
図1B及び
図2に示すように、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ1(以下、スキャナという)は、処理部11、撮像部12、メモリ13、及びキャリブレーション部品14を備えている。処理部11は、例えば画像処理又はスタティックキャリブレーション動作等の各種機能を実行するように構成されている。処理部11は、さらに、静的補正補償モジュール111と画像処理モジュール112を含む。処理部11は静的補正補償モジュール111を起動し、スタティックキャリブレーション動作を実行する。処理部11は画像処理モジュール112を実行し、画像処理を行う。撮像部12は、撮像アレイ121を有し、処理部11と接続される。撮像アレイ121は複数の画素を備えており、キャリブレーション部品14の画像情報及び走査対象物(図示せず)の画像情報を走査して取り込み、上記画像情報を処理部11に送信するように構成されている。本実施形態では、撮像部12は、コンタクトイメージセンサ(CIS)または電荷結合素子(CCD)である。メモリ13は、処理部11と接続しており、基準補償データA
0、所定の補償閾値T
0、及び所定の調整パラメータMを保存する補償データベース131を有する。基準補償データA
0は、スキャナ1専用の既知データであり、A
0=[SG
i | SG
1, SG
2, SG
3, ..., SG
n],と定められ、基準補償データA
0は、各画素の複数の基準補償値SG
iを含み、i = 1,2,3、...、nであり、nは1より大きい整数である。キャリブレーション部品14は、スキャナ1の構成部分に配置されてもよく、スキャナ1から分離されてもよい。その結果、スタティックキャリブレーション動作が容易となるように、撮像部12は、キャリブレーション部品14を走査できる。本実施形態では、スキャナ1は、処理部11と電気的に接続されたユーザインタフェース15をさらに含む。処理部11が静的補正補償モジュール111を実行し、ユーザインタフェース15を介してユーザによる操作に従ってスタティックキャリブレーション動作を実行できる。
【0016】
この実施形態では、スキャナ1はハンドヘルドスキャナであることが好ましいが、これに限定されるものではない。キャリブレーション部品14はハンドヘルドスキャナの構成部分に配置され、撮像部12との位置合わせが成される。スキャナ1を用いて対象物を走査する前に、予めスキャナ1にスタティックキャリブレーション動作を行わせることができる。まず、処理部11が、ユーザインタフェース15を介してユーザから入力されたキャリブレーションの指示を受け付けると、静的補正補償モジュール111によりスタティックキャリブレーション動作を実行させる。そして、撮像部12は、キャリブレーション部品14の画像情報を走査して取り込み、各画素の初期走査画素値を含む初期走査画素データA
1=[G
i | G
1, G
2, G
3, ..., G
n]を取得する。この工程で、撮像部12とキャリブレーション部品14は共に、キャリブレーションの間静止している。その後、処理部11は、メモリ13の補償データベース131から基準補償データA
0を取得する。処理部11は、A
R = [R
i | R
1, R
2, R
3, ..., R
n]で定められる補償オフセット比データを初期走査画素データA
1と基準補償データA
0に基づいて生成し、次式(1)により算出される。補償オフセット比データA
Rは、各画素の複数の補償オフセット比の値R
iを含む。
【0017】
具体的には、処理部11は、初期走査画素データA
1の各初期走査画素値G
iと、各画素に対する基準補償データA
0の基準補償値SG
iとを比較する。これにより、各画素における補償オフセット比データA
Rの補償オフセット比の値R
iが得られる。
【0018】
そして、処理部11は、以下の式(2)により算出された補償オフセット比データA
Rに基づいて、第1オフセット比の平均値AVG
R1を取得する。第1オフセット比の平均値AVG
R1は、補償オフセット比データA
Rにおける全ての補償オフセット比の値の平均である。
【0019】
次に、処理部11は、次式(3)に示されるように、メモリ13の補償データベース131から所定の補償閾値T
0を受け取り、補償オフセット比データA
Rの各補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVG
R1の差分の絶対値(各々の画素に対する)が、対応する所定の補償閾値T
0より大きいかどうかについて決定する。いずれかの画素の差分の絶対値が所定の補償閾値T
0より大きい場合には、複数の画素のうちのその特定の1つに対する初期走査画素値が、スタティックキャリブレーション動作中でのその特定画素に対するエラー画素値であることを意味する。
【0020】
例えば、補償オフセット比データA
RのN番目の補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVG
R1との差分の絶対値(N番目の画素に対する)が、所定の補償閾値の値T
0より大きい場合、初期走査画素データA
1のN番目の初期走査画素値は、スタティックキャリブレーション動作中でのN番目の画素に対するエラー画素値とみなされる。
【0021】
本実施形態で、キャリブレーション部品14にある埃、塵、又はしわは、特定の画素(N番目の画素)だけでなく、隣接する画素にも影響を与えることがある。選択画素の範囲は、特定の画素の両側に隣接する画素に拡張することができる。すなわち、特定の画素の両側のM個の隣接画素は、スタティックキャリブレーション動作中での画素に対する正確でない画素値を有しているとみなされる。Mは、所定の調整パラメータを示し、整数である。スキャナ1が、それぞれの画像解像度を有しており、及び/又は各モードで動作され及び調節可能である場合には、所定の調整パラメータMの値はそれぞれ異なる値である。上記工程の後、処理部11は、メモリ13の補償データベース131から所定の調整パラメータMを取得し、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素を所定の調整パラメータMに従って、選択画素
群として決定する。さらに、処理部11は、補償オフセット比データA
Rから、選択画素
群(すなわち、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素)の補償オフセット比の値を取り除き、補償オフセット比データA
Rの残りの補償オフセット比の値に基づいて、第2オフセット比の平均値AVG
R2を求める。第2オフセット比の平均値AVG
R2は、次式(4)により算出される。
【0022】
その後、処理部11は、次式(5)に示されるように、第2オフセット比の平均値AVG
R2に、基準補償データA
0における(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値をそれぞれ乗算する。処理部11は、基準補償データA
0における(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値から、基準補償データA
0における(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値を各々乗算した第2オフセット比の平均値AVG
R2をそれぞれ減算することにより、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素に対する複数の置換補償値を取得する。処理部11は、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の初期走査画素データA
1の初期走査画素値を上記置換補償値でそれぞれ置き換え、初期走査画素データA
1の残りの初期走査画素値をそのまま維持する。これにより、初期走査画素データA
1は静的補償画素データA
2に変換される。
【0023】
スタティックキャリブレーションを行った後、スキャナ1の撮像部12を用いて対象物を走査し、処理部11は、走査した対象物の画像情報を取得する。処理部11は画像処理モジュール112を起動し、スタティックキャリブレーションによって生成された複数の画素に対する静的補償画素データA
2に基づいて、走査対象物におけて画像処理動作を行い、且つ画像情報を調整する。最後に、走査画像における調整された画像情報が画像出力部16により出力される。
【0024】
本実施形態では、スキャナ1の撮像部12はn個の画素を備え、キャリブレーション部品14に対して複数の画素値を走査して取り込むことができる。例示として10画素(すなわち、N=10)として、本発明における補償値の調整方法を示すために利用される例示的な実施形態を説明する。撮像部12の画素数は10に限定されないことに留意されたい。表1に示すように、各画素の基準補償データA
0の基準補償値SG
iが予め定められ、メモリ13に保存される。所定の補償閾値T
0および所定の調整パラメータMの値も予め設定されてメモリ13に保存される。
この実施形態では、基準補償データ
所定の補償閾値T
0=0.03及び所定の調整パラメータM=1は、メモリ13の補償データベース131に保存される。撮像部12の撮像アレイ121がキャリブレーション部品14を走査した後、初期走査画素データ
が得られる。補償データベース131に保存されている、初期走査画素データA
1、基準補償データA
0、所定の補償閾値T
0、所定の調整パラメータMが、処理部11の静的補正補償モジュール111に送られ、スタティックキャリブレーション動作が行われる。スタティックキャリブレーション動作が実行されている間、補償オフセット比データ
は、初期走査画素データA
1と基準補償データA
0に基づいて、上記式(1)により算出される。また、第1オフセット比の平均値AVG
R1=0.039は、複数の画素の補償オフセット比データA
Rの全ての補償オフセット比の値R
iから求められ、上記式(2)により算出される。
そして、各画素における補償オフセット比データA
Rの各補償オフセット比の値と、第1オフセット比の平均値AVG
R1との差分の絶対値は、所定の補償閾値T
0とそれぞれ比較され、処理部11は、上記式(3)に示されるように、各画素における補償オフセット比データA
Rの各補償オフセット比の値と、第1オフセット比の平均値AVG
R1との差分の絶対値が所定の補償閾値T
0よりも大きいか否かを判定する。
補償オフセット比データA
RのN番目の補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVG
R1との差分の絶対値が所定の補償閾値T
0より大きい場合、初期走査画素データ
のN番目の初期走査画素値は、スタティックキャリブレーション動作中、N番目の画素に対する正確でない画素値とみなされる。
本実施形態では、初期走査画素データ
の7番目と8番目の初期走査画素値は、スタティックキャリブレーション動作の間、7番目と8番目の画素に対する正確でない値とみなされる。
この所定の調整パラメータMおよび上記の結果に基づいて、選択画素の範囲が拡張され、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素
の選択画素群の範囲が決定され、選択画素群としてみなされる。本実施形態では、所定の調整パラメータMの値が1であるため、6,7,8,9番目の画素が選択画素とみなされる。そして、選択画素
群(すなわち、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素)の補償オフセット比データA
Rの補償オフセット比の値が取り除かれ、補償オフセット比データA
Rの残りの補償オフセット比の値は、上記式(4)により算出される第2オフセット比の平均値AVG
R2を求めるために用いられる。
本実施形態では、6,7,8,9画素の補償オフセット比データA
Rの補償オフセット比の値を取り除かれ、補償オフセット比データA
Rの残りである1から5番目と10番目の画素が第2オフセット比の平均値AVG
R2(すなわち、0.019)を得るために用いられる。その後、処理部11は、上記式(5)に示されるように、第2オフセット比の平均値AVG
R2に、基準補償データA
0における(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値をそれぞれ乗算する。処理部11は、基準補償データA
0における(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値から、基準補償データA
0における(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値を各々乗算した第2オフセット比の平均値AVG
Rをそれぞれ減算することにより、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素に対する複数の補間補償値を取得する。
処理部11は、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の初期走査画素データA
1の初期走査画素値を上記置換補償値でそれぞれ置き換える。本実施形態では、
となる。さらに、初期走査画素データA
1の残りの初期走査画素値をそのまま維持する。本実施形態では、G
'1=G
1=236, G
'2=G
2=231, G
'3=G
3=230, G
'4=G
4=236, G
'5=G
5=240, G
'10=G
10=240である。その結果、表1に示すように、静的補償画素データ
が得られる。
表1:
【0025】
所定の補償閾値T
0及び所定の調整パラメータMの値は、実際の要件に応じて調整可能であることに留意されたい。
【0026】
図3は、本発明の好ましい実施形態による補償値調整方法を示すフローチャートである。
図1A、
図1B、
図2、及び
図3に示すように、本発明のスキャナ1における補償値調整方法は、以下の工程を含む。まず、キャリブレーション部品14、所定の補償閾値T
0、所定の調整パラメータM、及び少なくとも基準補償データA
0を用意する(工程S1参照)。所定の調整パラメータMは整数である。基準補償データA
0は、キャリブレーション部品14の各点に対応する複数の画素の複数の基準補償値を含む。本実施形態では、キャリブレーション部品14は、光源の照度誤差を補償するためのキャリブレーション部品である。キャリブレーション部品14は、スキャナ1の構造部分に配置されるか、スキャナ1から分離される。スタティックキャリブレーション動作を容易にするために、キャリブレーション部品14は、撮像部12の撮像アレイ121によって走査されることができる。所定の補償閾値T
0、所定の調整パラメータMおよび少なくとも1つの基準補償データA
0は、メモリ13の補償データベース131に保存される(
図1Aに示す)。補償データベース131は、例えばメモリであってもよいが、これに限定されない。そして、複数の画素を備える撮像部12でキャリブレーション部品14の画像情報を走査し、複数の画素における複数の初期走査画素値を含む初期走査画素データA
1を得る(工程S2参照)。また、処理部11は、メモリ13の補償データベース131から基準補償データA
0を取得し、画素における複数の補償オフセット比の値R
iを含む補償オフセット比データA
Rは、初期走査画素データA
1と基準補償データA
0に基づいて生成され、上記式(1)により算出される(工程S3参照)。補償オフセット比データA
Rは、第1オフセット比の平均値AVG
R1を含み、第1オフセット比の平均値AVG
R1は、上記式(2)により算出される。また、(工程S4参照)。本実施形態では、(3)式に示すように、各画素における補償オフセット比データA
Rの各補償オフセット比の値と、第1オフセット比の平均値AVG
R1との差分の絶対値と、所定の補償閾値T
0とを比較して選択画素を決定する。補償オフセット比データA
RのN番目の補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVG
R1との差分の絶対値が所定の補償閾値T
0よりも大きい場合には、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素における、補償オフセット比データA
Rの補償オフセット比の値は、選択、決定される。補償オフセット比データA
Rにおける、選択画素
群(すなわち、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素)の補償オフセット比の値を取り除いた後、第2オフセット比の平均値AVG
Rは、補償オフセット比データA
Rの残りの補償オフセット比の値に基づいて取得され、上記式(4)により算出される。最後に、処理部11の静的補正補償モジュール111は、第2オフセット比の平均値AVG
R及び選択画素
群の基準補償データA
0の各基準補償値に基づいて、複数の置換補償値を生成する。選択画素
群における初期走査画素データA
1の初期走査画素値を置換補償要素にそれぞれ置き換えることによって、初期走査画素データA
1を静的補償画素データA
2に変換する。
【0027】
図4は、本発明の他の実施形態に係るスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナを示す斜視図である。本実施形態において、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ1a(以下、スキャナという)は、フラットベッドスキャナである。スキャナ1aの要素及び機能は、
図1A及び
図2のものと同様であり、ここでは重複して説明しない。本実施形態では、
図1A及び
図2のスキャナ1と異なり、スキャナ1aは、走査台17を備え、走査台17は走査領域Aを有する。走査領域Aは透過領域である。キャリブレーション部品14は、走査台17の底面の下側に配置され、走査領域Aの周縁に隣接し、撮像部12に対向する位置に配置される。撮像部12は、走査台17の下側に配置される。撮像部12は、キャリブレーション部品14の画像情報を取得するためにキャリブレーション部品14を走査し、走査対象物の画像情報を取得するために対象物を走査できる。スタティックキャリブレーションが実行されている間、撮像部12およびキャリブレーション部品14は共に静止しており、撮像部12はキャリブレーション部品14に位置合わせされている。補償値調整方法の上記工程がスキャナ1aによって実行された後、スタティックキャリブレーションが達成される。スタティックキャリブレーションを実行可能なスキャナの構成は上記実施形態に限定されるものではなく、実際の要求に応じて調整可能であることに留意されたい。
【0028】
要約すると、本発明は、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナと、補償値の調整方法を提供する。スキャナの撮像部とキャリブレーション部品を移動させることなく、スタティックな状態でキャリブレーション動作を実行するように構成されている。その結果、キャリブレーション部品にある埃、塵汚れ又はしわに起因して、キャリブレーションの間にスキャナの各画素における正確でない補償値が得られることを回避できる。一連の画像キャリブレーションの精度及び出力画像の品質が改善される。キャリブレーション部品はより小さなサイズであり、スキャナは自動的にキャリブレーション動作を実行することができる。キャリブレーション部品には塵又は埃があり、キャリブレーション部品にしわが生じているにもかかわらず、スタティックキャリブレーション中のスキャナの各画素に対する補償値の調整を自動的に実行することができ、一連の画像キャリブレーションの精度と出力画像の品質が向上される。
【0029】
本発明は、現在最も実用的かつ好ましい実施形態と考えられるものに関して説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定される必要はないことを理解されるべきである。それどころか、様々な修正およびすべてのそのような修正および類似の構造を包含するように最も広い解釈に従うべきである特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる類似の構成を包含することが意図される。