特許第6483650号(P6483650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6483650スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ及びその補償値の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483650
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ及びその補償値の調整方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/191 20060101AFI20190304BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20190304BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
   H04N1/191
   G06T1/00 460D
   H04N1/401
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-214098(P2016-214098)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2018-46538(P2018-46538A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2016年11月29日
(31)【優先権主張番号】105129905
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】505135704
【氏名又は名称】東友科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TECO IMAGE SYSTEMS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】羅乃文
(72)【発明者】
【氏名】許銘柱
【審査官】 宮島 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−11297(JP,A)
【文献】 特開平4−150569(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3013213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
G06T 1/00
H04N 1/40 − 1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリブレーション部品と、メモリと、撮像部と、処理部を備えるスキャナであって、
前記メモリは、補償データベースを有し、複数の基準補償値を含む基準補償データと、所定の補償閾値が、前記補償データベースに保存され、
前記撮像部は、複数の画素を備え、前記キャリブレーション部品の画像情報を走査及び取得し、且つ、前記複数の画素における、複数の初期走査画素値を含む初期走査画素データを取得するように構成され、
前記処理部は、前記撮像部及び前記補償データベースに接続され、静的補正補償モジュールを含み、
前記静的補正補償モジュールが起動され、前記初期走査画素データを受け取り、前記初期走査画素データと前記基準補償データに基づいて、前記複数の画素における複数の補償オフセット比の値を含む補償オフセット比データを生成し、前記補償オフセット比が下記の式(1)で得られ、
前記補償オフセット比データは、第1オフセット比の平均値を含み、ここで、全ての前記複数の画素における、複数の補償オフセット比の値の平均値を、第1オフセット比の平均値とし、下記の式(2)で得られ、
前記補償オフセット比データ、前記第1オフセット比の平均値、及び前記所定の補償閾値に基づいて、下記の式(3)に示される条件を満たす、選択画素が決定され、
第2オフセット比の平均値は、前記補償オフセット比データから、前記選択画素に基づいて定められた選択画素群における前記補償オフセット比データの補償オフセット比の値を取り除き、残りの補償オフセット比の値に基づいて、下記の式(4)で得られ、
前記選択画素の複数の置換補償値は、前記第2オフセット比の平均値と、前記選択画素群における前記基準補償データの各基準補償値とに基づいて、下記の式(5)で生成され、前記選択画素における前記初期走査画素データの前記初期走査画素値を、前記置換補償値に置き換えることによって、前記初期走査画素データを静的補償画素データに変換する、
スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ、

式(1)において、Rは前記補償オフセット比であり、Gは初期走査画素データの初期走査画素値であり、SGは基準補償データの基準補償値であり、


式(2)において、AVGR1は第1オフセット比の平均値であり、Rは前記補償オフセット比であり、nは前記複数の画素における複数の補償オフセット比の値の個数である。

式(3)において、AVGR1は第1オフセット比の平均値であり、Rは前記補償オフセット比であり、Tは所定の補償閾値であり、

式(4)において、AVGR2は第2オフセット比の平均値であり、Rは補償オフセット比の値であり、nは前記複数の画素における補償オフセット比の値の個数であり、Nは補償オフセット比データのN番目を意味する整数であり、MはN番目の画素の両側に隣接する画素の個数を意味する整数であり、

式(5)において、'は置換補償値であり、複数の置換補償値'を含むAは静的補償画素データである。
【請求項2】
所定の調整パラメータは、前記メモリの前記補償データベースに保存され、
前記処理部の前記静的補正補償モジュールは、前記所定の調整パラメータを用いて、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素の選択画素の範囲を決定し、前記所定の調整パラメータは、整数Mである、
請求項1に記載のスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ。
【請求項3】
前記補償オフセット比データのN番目の補償オフセット比の値と、前記第1オフセット比の平均値との差分の絶対値が前記所定の補償閾値より大きい場合、
前記選択画素は、前記所定の調整パラメータを用いて、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の範囲として決定され、
前記第2オフセット比の平均値は、前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の範囲の前記選択画素の前記補償オフセット比データの補償オフセット比の値を取り除き、残りの補償オフセット比の値に基づいて、式(4)で得られ、
前記基準補償データにおける前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値から、
前記基準補償データにおける前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値を各々乗算した前記第2オフセット比の平均値を減算することによって、前記選択画素の置換補償値を生成し、
前記初期走査画素データにおける前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の前記初期走査画素値は、前記選択画素における前記置換補償値でそれぞれ置換され、前記初期走査画素データの残りの初期走査画素値はそのまま維持され、これにより、前記初期走査画素データは前記静的補償画素データに変換される、
請求項2に記載のスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ。
【請求項4】
前記スキャナは、ハンドヘルド又はフラットベッドスキャナである、
請求項1に記載のスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ。
【請求項5】
前記撮像部は、コンタクトイメージセンサ又は電荷結合素子である、
請求項1に記載のスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ。
【請求項6】
前記処理部と接続している画像出力部をさらに備え、
前記処理部は、画像処理モジュールをさらに備え、
前記画像処理モジュールが、前記静的補償画素データに基づいて画像処理動作を実行し、
請求項1に記載のスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ。
【請求項7】
スキャナの補償値調整方法であって、
前記スキャナは、スタティックキャリブレーションを実行可能であり、
前記スキャナの補償値調整方法は、
(a)キャリブレーション部品、複数の基準補償値を含む基準補償データ、及び所定の補償閾値を提供する工程と、
(b)複数の画素を備える撮像部を用いて、前記キャリブレーション部品に対して複数の画素を走査し、且つ画素値を取得し、前記画素値を含む初期走査画素データを取得する工程と、
(c)前記初期走査画素データと前記基準補償データに基づいて、複数の補償オフセット比の値を含む補償オフセット比データ(前記補償オフセット比データは第1オフセット比の平均値を含む)を生成する工程と、ここで、前記補償オフセット比が下記の式(1)で得られ、
(d)前記補償オフセット比データ、前記第1オフセット比の平均値、及び前記所定の補償閾値に基づいて、下記の式(3)に示される条件を満たす、選択画素を決定し、前記補償オフセット比データから、前記選択画素に基づいて定まる選択画素群における前記補償オフセット比データの補償オフセット比の値を取り除き、残りの補償オフセット比の値に基づいて、下記の式(4)で、第2オフセット比の平均値を求める工程と、ここで、全ての前記複数の画素における、複数の補償オフセット比の値の平均値を、第1オフセット比の平均値とし、下記の式(2)で得られ、
(e)前記第2オフセット比の平均値と前記選択画素における前記基準補償データの各基準補償値が下記の式(5)に基づいて、複数の置換補償値を生成し、前記選択画素における前記初期走査画素データの初期走査画素値を前記置換補償値にそれぞれ置き換えることによって、前記初期走査画素データを静的補償画素データに変換する工程と、
を備える、スキャナの補償値調整方法であり、

式(1)において、Rは前記補償オフセット比であり、Gは初期走査画素データの初期走査画素値であり、SGは基準補償データの基準補償値であり、


式(2)において、AVGR1は第1オフセット比の平均値であり、Rは前記補償オフセット比であり、nは前記複数の画素における複数の補償オフセット比の値の個数である。

式(3)において、AVGR1は第1オフセット比の平均値であり、Rは前記補償オフセット比であり、Tは所定の補償閾値であり、

式(4)において、AVGR2は第2オフセット比の平均値であり、Rは補償オフセット比の値であり、nは前記複数の画素における補償オフセット比の値の個数であり、Nは補償オフセット比データのN番目を意味する整数であり、MはN番目の画素の両側に隣接する画素の個数を意味する整数である。

式(5)において、'は置換補償値であり、複数の置換補償値'を含むAは静的補償画素データである。
【請求項8】
前記スキャナは、静的補正補償モジュールを含む処理部を備え、
工程(c)、(d)及び(e)は、前記静的補正補償モジュールによって実行される、
請求項7に記載のスキャナの補償値調整方法。
【請求項9】
前記スキャナはメモリを備え、前記メモリに所定調整パラメータを保存し、
前記処理部の前記静的補正補償モジュールは、前記所定の調整パラメータを用いて、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素の選択画素の範囲を決定し、前記所定の調整パラメータは整数Mである、
請求項8に記載のスキャナの補償値調整方法。
【請求項10】
前記工程(d)は、
(d1)前記補償オフセット比データのN番目の補償オフセット比の値と前記第1オフセット比の平均値との差分の絶対値が前記所定の補償閾値よりも大きい場合、前記所定の調整パラメータに基づいて(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の範囲を選択画素に決定する工程と、
(d2)前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の範囲の前記選択画素における、補償オフセット比データの補償オフセット比の値を取り除き、残りの補償オフセット比の値に基づいて、式(4)で、前記第2オフセット比の平均値を求める工程と、
を備える、請求項9に記載のスキャナの補償値調整方法。
【請求項11】
前記工程(e)は、
(e1)前記基準補償データにおける前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の前記基準補償値から、前記基準補償データにおける前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の前記基準補償値を乗算した前記第2オフセット比の平均値を、それぞれ減算することにより、前記選択画素の置換補償値を生成する工程と、
(e2)前記初期走査画素データにおける前記(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の初期走査画素値を、前記選択画素の前記置換補償値でそれぞれ置き換え、
前記初期走査画素データの残りの初期走査画素値をそのまま維持し、
それによって、前記初期走査画素データは、前記静的補償画素データに変換される工程と、
を備える、請求項10に記載のスキャナの補償値調整方法。
【請求項12】
前記撮像部は、コンタクトイメージセンサ又は電荷結合素子である、
請求項7に記載のスキャナの補償値調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ及びその調整方法に関するものであり、特に、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ及びその補償値の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、スキャナは画像を走査して出力するために広く使用されている。スキャナ内にある撮像素子の光学的特性が経時劣化するために、スキャナの各画素のゲイン及びオフセットを調整するためにキャリブレーション又は補償動作を実行しなければならない。これにより、元の走査対象物と同じ品質の出力画像が得られる。すなわち、走査された画像の品質は、キャリブレーションの品質に直接関係する。一般的に、ハンドヘルドスキャナ、フラットベッドスキャナ、または自動シートフィードスキャナのいずれであろうと、撮像素子を利用してキャリブレーションが成され、既知の光学特性を有するキャリブレーション部品の領域を動的に走査して、一連の画像処理動作の補償値を取得する。
【0003】
例えば、ハンドヘルドスキャナを使用する場合、ユーザは、キャリブレーションを実行するために設置されているキャリブレーション部品を使用することができる。ユーザはハンドヘルドスキャナを保持し、スキャナの撮像素子によりキャリブレーション部品の上を移動させて、キャリブレーション部品の画像情報を取り込むことができる。この結果、一連の画像処理動作で画素の補償値が得られる。ユーザがキャリブレーションを容易にできるように、ハンドヘルドスキャナのキャリブレーション部品のサイズは、フラットベッドスキャナのものより大きい。その結果、ハンドヘルドスキャナのキャリブレーション部品は、持ち運びが不便である。加えて、キャリブレーション動作を実行している間、ユーザは、ハンドヘルドスキャナを走査するために保持しなければならない。ハンドヘルドスキャナは、自動的にキャリブレーション動作を実行することはできない。そのため、便利に使うことができない。また、キャリブレーション部品に埃及び塵などの汚れが付着しやすく、キャリブレーション部品にしわができることがある。したがって、ハンドヘルドスキャナが上記のキャリブレーション部品(すなわち、キャリブレーション部品の埃、塵又はしわが生じている状態で)を走査すると、キャリブレーションによりスキャナの各画素に対して算出された補償値は正確なものではなくなる。その結果、一連の画像キャリブレーションの精度と出力画像の品質が悪影響を受ける。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ及びその補償値の調整方法を提供することを目的とする。スキャナの撮像部とキャリブレーション部品は移動せずに静的な状態でキャリブレーション動作を実行できるように構成されている。その結果、キャリブレーションの間、キャリブレーション部品の埃、塵又はしわに起因するスキャナの各画素に対する不正確な補償値が回避される。一連の画像キャリブレーションの精度と出力画像の品質が逐次改善される。
【0005】
本発明は、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ及びその補償値の調整方法を提供することを目的とする。キャリブレーション部品のサイズはさらに小さくなり、スキャナは自動的にキャリブレーション動作を実行する。キャリブレーション部品に埃又は塵が付着し、或いはキャリブレーション部品にしわが生じていたとしても、スタティックキャリブレーションの間、スキャナにおける各画素を調整するための補償値は、自動的に実行され、一連の画像キャリブレーションの精度と出力画像の品質は向上する。
【0006】
本発明の一態様によれば、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナが提供される。スキャナはキャリブレーション部品、メモリ、撮像部、処理部、を含む。メモリには補償データベースを有する。補償データベースには、複数の基準補償値を含む基準補償データと所定の補償閾値が保存されている。撮像部は、複数の画素を備えており、キャリブレーション部品の画像情報を走査及び取得し、複数の初期走査画素値を含む初期走査画素データを取得するように構成される。
処理部は、撮像部と補償データベースに接続されており、静的補正補償モジュールを含んでいる。
静的補正補償モジュールを起動し、初期走査画素データを受け取り、初期走査画素データと基準補償データに基づいて、複数の画素における複数の補償オフセット比の値を含む補償オフセット比データを生成する。補償オフセット比データは第1オフセット比の平均値を含む。
複数の選択画素は、補償オフセット比データ、第1オフセット比の平均値、及び所定の補償閾値に基づいて、選択画素を決定され、第2オフセット比の平均値は、補償オフセット比データから、選択画素に基づいて定められた選択画素群における補償オフセット比データの補償オフセット比の値を取り除き、残りの補償オフセット比の値に基づいて得られる。
選択画素における複数の置換補償値は、第2オフセット比の平均値と、選択画素群おける基準補償データの各基準補償値に基づいて生成される。選択画素における初期走査画素データの初期走査画素値を置換補償値にそれぞれ置き換えることによって、初期走査画素データを静的補償画素データに変換する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、スキャナの補償値の調整方法が提供される。この方法は、
(a)キャリブレーション部品と、複数の基準補償値を含む基準補償データ、及び所定の補償閾値を提供する工程と、
(b)複数の画素を備える撮像部を用いて、キャリブレーション部品に対して複数の画素を走査し、且つ画素値を取得し、画素値を含む初期走査画素データを取得する工程と、
(c)初期走査画素データと基準補償データに基づいて複数の補償オフセット比の値を含む補償オフセット比データを生成する工程と、補償オフセット比データは、第1オフセット比の平均値を含み、
(d)補償オフセット比データ、第1オフセット比の平均値、及び所定の補償閾値に基づいて、選択画素を決定し、補償オフセット比データから、選択画素に基づいて定まる選択画素群における補償オフセット比データの補償オフセット比の値を取り除き、残りの補償オフセット比の値に基づいて、第2オフセット比の平均値を求める工程と、
(e)第2オフセット比の平均値と選択画素における基準補償データの各基準補償値に基づいて、複数の置換補償値を生成し、選択画素における初期走査画素データの初期走査画素値を置換補償値にそれぞれ置き換えることによって、初期走査画素データを静的補償画素データに変換する工程
を備える。
【0008】
本発明の上記の内容は、以下の詳細な説明および添付の図面を検討した後、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本発明の好ましい実施形態に係る、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナの構造ブロック図である。
【0010】
図1B図1Bは、スタティックキャリブレーションを実行する図1Aのスキャナを示す斜視図である。
【0011】
図2図2は、スタティックキャリブレーションを実行する図1Aのスキャナを示すブロック図である。
【0012】
図3図3は、本発明の好ましい実施形態に係る、補償値調整方法を示すフローチャートである。
【0013】
図4図4は、本発明の他の実施形態に係る、スタティックキャリブレーションを実行するスキャナを示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、以下の実施形態を参照して具体的に説明される。本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、例示および説明のみを目的として、本明細書に提示されているということに留意されたい。それは、開示された正確な形態に、網羅的であること、または限定されるものではない。
【0015】
図1Aは、本発明の好ましい実施形態に係る、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナの構造ブロック図である。図1Bは、スタティックキャリブレーションを実行する図1Aのスキャナを示す斜視図である。図2は、スタティックキャリブレーションを実行する図1Aのスキャナを示すブロック図である。図1A図1B及び図2に示すように、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ1(以下、スキャナという)は、処理部11、撮像部12、メモリ13、及びキャリブレーション部品14を備えている。処理部11は、例えば画像処理又はスタティックキャリブレーション動作等の各種機能を実行するように構成されている。処理部11は、さらに、静的補正補償モジュール111と画像処理モジュール112を含む。処理部11は静的補正補償モジュール111を起動し、スタティックキャリブレーション動作を実行する。処理部11は画像処理モジュール112を実行し、画像処理を行う。撮像部12は、撮像アレイ121を有し、処理部11と接続される。撮像アレイ121は複数の画素を備えており、キャリブレーション部品14の画像情報及び走査対象物(図示せず)の画像情報を走査して取り込み、上記画像情報を処理部11に送信するように構成されている。本実施形態では、撮像部12は、コンタクトイメージセンサ(CIS)または電荷結合素子(CCD)である。メモリ13は、処理部11と接続しており、基準補償データA、所定の補償閾値T、及び所定の調整パラメータMを保存する補償データベース131を有する。基準補償データAは、スキャナ1専用の既知データであり、A=[SG | SG, SG, SG, ..., SG],と定められ、基準補償データAは、各画素の複数の基準補償値SGを含み、i = 1,2,3、...、nであり、nは1より大きい整数である。キャリブレーション部品14は、スキャナ1の構成部分に配置されてもよく、スキャナ1から分離されてもよい。その結果、スタティックキャリブレーション動作が容易となるように、撮像部12は、キャリブレーション部品14を走査できる。本実施形態では、スキャナ1は、処理部11と電気的に接続されたユーザインタフェース15をさらに含む。処理部11が静的補正補償モジュール111を実行し、ユーザインタフェース15を介してユーザによる操作に従ってスタティックキャリブレーション動作を実行できる。
【0016】
この実施形態では、スキャナ1はハンドヘルドスキャナであることが好ましいが、これに限定されるものではない。キャリブレーション部品14はハンドヘルドスキャナの構成部分に配置され、撮像部12との位置合わせが成される。スキャナ1を用いて対象物を走査する前に、予めスキャナ1にスタティックキャリブレーション動作を行わせることができる。まず、処理部11が、ユーザインタフェース15を介してユーザから入力されたキャリブレーションの指示を受け付けると、静的補正補償モジュール111によりスタティックキャリブレーション動作を実行させる。そして、撮像部12は、キャリブレーション部品14の画像情報を走査して取り込み、各画素の初期走査画素値を含む初期走査画素データA=[G | G, G, G, ..., G]を取得する。この工程で、撮像部12とキャリブレーション部品14は共に、キャリブレーションの間静止している。その後、処理部11は、メモリ13の補償データベース131から基準補償データAを取得する。処理部11は、A= [R | R, R, R, ..., R]で定められる補償オフセット比データを初期走査画素データAと基準補償データAに基づいて生成し、次式(1)により算出される。補償オフセット比データAは、各画素の複数の補償オフセット比の値Rを含む。
【0017】
具体的には、処理部11は、初期走査画素データAの各初期走査画素値Gと、各画素に対する基準補償データAの基準補償値SGとを比較する。これにより、各画素における補償オフセット比データAの補償オフセット比の値Rが得られる。
【0018】
そして、処理部11は、以下の式(2)により算出された補償オフセット比データAに基づいて、第1オフセット比の平均値AVGR1を取得する。第1オフセット比の平均値AVGR1は、補償オフセット比データAにおける全ての補償オフセット比の値の平均である。
【0019】
次に、処理部11は、次式(3)に示されるように、メモリ13の補償データベース131から所定の補償閾値Tを受け取り、補償オフセット比データAの各補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVGR1の差分の絶対値(各々の画素に対する)が、対応する所定の補償閾値Tより大きいかどうかについて決定する。いずれかの画素の差分の絶対値が所定の補償閾値Tより大きい場合には、複数の画素のうちのその特定の1つに対する初期走査画素値が、スタティックキャリブレーション動作中でのその特定画素に対するエラー画素値であることを意味する。
【0020】
例えば、補償オフセット比データAのN番目の補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVGR1との差分の絶対値(N番目の画素に対する)が、所定の補償閾値の値Tより大きい場合、初期走査画素データAのN番目の初期走査画素値は、スタティックキャリブレーション動作中でのN番目の画素に対するエラー画素値とみなされる。
【0021】
本実施形態で、キャリブレーション部品14にある埃、塵、又はしわは、特定の画素(N番目の画素)だけでなく、隣接する画素にも影響を与えることがある。選択画素の範囲は、特定の画素の両側に隣接する画素に拡張することができる。すなわち、特定の画素の両側のM個の隣接画素は、スタティックキャリブレーション動作中での画素に対する正確でない画素値を有しているとみなされる。Mは、所定の調整パラメータを示し、整数である。スキャナ1が、それぞれの画像解像度を有しており、及び/又は各モードで動作され及び調節可能である場合には、所定の調整パラメータMの値はそれぞれ異なる値である。上記工程の後、処理部11は、メモリ13の補償データベース131から所定の調整パラメータMを取得し、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素を所定の調整パラメータMに従って、選択画素として決定する。さらに、処理部11は、補償オフセット比データAから、選択画素(すなわち、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素)の補償オフセット比の値を取り除き、補償オフセット比データAの残りの補償オフセット比の値に基づいて、第2オフセット比の平均値AVGR2を求める。第2オフセット比の平均値AVGR2は、次式(4)により算出される。
【0022】
その後、処理部11は、次式(5)に示されるように、第2オフセット比の平均値AVGR2に、基準補償データAにおける(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値をそれぞれ乗算する。処理部11は、基準補償データAにおける(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値から、基準補償データAにおける(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値を各々乗算した第2オフセット比の平均値AVGR2をそれぞれ減算することにより、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素に対する複数の置換補償値を取得する。処理部11は、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の初期走査画素データAの初期走査画素値を上記置換補償値でそれぞれ置き換え、初期走査画素データAの残りの初期走査画素値をそのまま維持する。これにより、初期走査画素データAは静的補償画素データAに変換される。
【0023】
スタティックキャリブレーションを行った後、スキャナ1の撮像部12を用いて対象物を走査し、処理部11は、走査した対象物の画像情報を取得する。処理部11は画像処理モジュール112を起動し、スタティックキャリブレーションによって生成された複数の画素に対する静的補償画素データAに基づいて、走査対象物におけて画像処理動作を行い、且つ画像情報を調整する。最後に、走査画像における調整された画像情報が画像出力部16により出力される。
【0024】
本実施形態では、スキャナ1の撮像部12はn個の画素を備え、キャリブレーション部品14に対して複数の画素値を走査して取り込むことができる。例示として10画素(すなわち、N=10)として、本発明における補償値の調整方法を示すために利用される例示的な実施形態を説明する。撮像部12の画素数は10に限定されないことに留意されたい。表1に示すように、各画素の基準補償データAの基準補償値SGが予め定められ、メモリ13に保存される。所定の補償閾値Tおよび所定の調整パラメータMの値も予め設定されてメモリ13に保存される。
この実施形態では、基準補償データ
所定の補償閾値T=0.03及び所定の調整パラメータM=1は、メモリ13の補償データベース131に保存される。撮像部12の撮像アレイ121がキャリブレーション部品14を走査した後、初期走査画素データ
が得られる。補償データベース131に保存されている、初期走査画素データA1、基準補償データA、所定の補償閾値T、所定の調整パラメータMが、処理部11の静的補正補償モジュール111に送られ、スタティックキャリブレーション動作が行われる。スタティックキャリブレーション動作が実行されている間、補償オフセット比データ
は、初期走査画素データAと基準補償データAに基づいて、上記式(1)により算出される。また、第1オフセット比の平均値AVGR1=0.039は、複数の画素の補償オフセット比データAの全ての補償オフセット比の値Rから求められ、上記式(2)により算出される。
そして、各画素における補償オフセット比データAの各補償オフセット比の値と、第1オフセット比の平均値AVGR1との差分の絶対値は、所定の補償閾値Tとそれぞれ比較され、処理部11は、上記式(3)に示されるように、各画素における補償オフセット比データAの各補償オフセット比の値と、第1オフセット比の平均値AVGR1との差分の絶対値が所定の補償閾値Tよりも大きいか否かを判定する。
補償オフセット比データAのN番目の補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVGR1との差分の絶対値が所定の補償閾値Tより大きい場合、初期走査画素データ
のN番目の初期走査画素値は、スタティックキャリブレーション動作中、N番目の画素に対する正確でない画素値とみなされる。
本実施形態では、初期走査画素データ
の7番目と8番目の初期走査画素値は、スタティックキャリブレーション動作の間、7番目と8番目の画素に対する正確でない値とみなされる。
この所定の調整パラメータMおよび上記の結果に基づいて、選択画素の範囲が拡張され、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素の選択画素群の範囲が決定され、選択画素群としてみなされる。本実施形態では、所定の調整パラメータMの値が1であるため、6,7,8,9番目の画素が選択画素とみなされる。そして、選択画素(すなわち、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素)の補償オフセット比データAの補償オフセット比の値が取り除かれ、補償オフセット比データAの残りの補償オフセット比の値は、上記式(4)により算出される第2オフセット比の平均値AVGR2を求めるために用いられる。
本実施形態では、6,7,8,9画素の補償オフセット比データAの補償オフセット比の値を取り除かれ、補償オフセット比データAの残りである1から5番目と10番目の画素が第2オフセット比の平均値AVGR2(すなわち、0.019)を得るために用いられる。その後、処理部11は、上記式(5)に示されるように、第2オフセット比の平均値AVGR2に、基準補償データAにおける(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値をそれぞれ乗算する。処理部11は、基準補償データAにおける(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値から、基準補償データAにおける(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の基準補償値を各々乗算した第2オフセット比の平均値AVGをそれぞれ減算することにより、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素に対する複数の補間補償値を取得する。
処理部11は、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の初期走査画素データAの初期走査画素値を上記置換補償値でそれぞれ置き換える。本実施形態では、
となる。さらに、初期走査画素データAの残りの初期走査画素値をそのまま維持する。本実施形態では、G'=G=236, G'=G=231, G'=G=230, G'=G=236, G'=G=240, G'10=G10=240である。その結果、表1に示すように、静的補償画素データ
が得られる。
表1:
【0025】
所定の補償閾値T及び所定の調整パラメータMの値は、実際の要件に応じて調整可能であることに留意されたい。
【0026】
図3は、本発明の好ましい実施形態による補償値調整方法を示すフローチャートである。図1A図1B図2、及び図3に示すように、本発明のスキャナ1における補償値調整方法は、以下の工程を含む。まず、キャリブレーション部品14、所定の補償閾値T、所定の調整パラメータM、及び少なくとも基準補償データAを用意する(工程S1参照)。所定の調整パラメータMは整数である。基準補償データAは、キャリブレーション部品14の各点に対応する複数の画素の複数の基準補償値を含む。本実施形態では、キャリブレーション部品14は、光源の照度誤差を補償するためのキャリブレーション部品である。キャリブレーション部品14は、スキャナ1の構造部分に配置されるか、スキャナ1から分離される。スタティックキャリブレーション動作を容易にするために、キャリブレーション部品14は、撮像部12の撮像アレイ121によって走査されることができる。所定の補償閾値T、所定の調整パラメータMおよび少なくとも1つの基準補償データAは、メモリ13の補償データベース131に保存される(図1Aに示す)。補償データベース131は、例えばメモリであってもよいが、これに限定されない。そして、複数の画素を備える撮像部12でキャリブレーション部品14の画像情報を走査し、複数の画素における複数の初期走査画素値を含む初期走査画素データAを得る(工程S2参照)。また、処理部11は、メモリ13の補償データベース131から基準補償データAを取得し、画素における複数の補償オフセット比の値Rを含む補償オフセット比データAは、初期走査画素データAと基準補償データAに基づいて生成され、上記式(1)により算出される(工程S3参照)。補償オフセット比データAは、第1オフセット比の平均値AVGR1を含み、第1オフセット比の平均値AVGR1は、上記式(2)により算出される。また、(工程S4参照)。本実施形態では、(3)式に示すように、各画素における補償オフセット比データAの各補償オフセット比の値と、第1オフセット比の平均値AVGR1との差分の絶対値と、所定の補償閾値Tとを比較して選択画素を決定する。補償オフセット比データAのN番目の補償オフセット比の値と第1オフセット比の平均値AVGR1との差分の絶対値が所定の補償閾値Tよりも大きい場合には、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素における、補償オフセット比データAの補償オフセット比の値は、選択、決定される。補償オフセット比データAにおける、選択画素(すなわち、(N−M)番目の画素から(N+M)番目の画素の複数の画素)の補償オフセット比の値を取り除いた後、第2オフセット比の平均値AVGは、補償オフセット比データAの残りの補償オフセット比の値に基づいて取得され、上記式(4)により算出される。最後に、処理部11の静的補正補償モジュール111は、第2オフセット比の平均値AVG及び選択画素の基準補償データAの各基準補償値に基づいて、複数の置換補償値を生成する。選択画素における初期走査画素データAの初期走査画素値を置換補償要素にそれぞれ置き換えることによって、初期走査画素データAを静的補償画素データAに変換する。
【0027】
図4は、本発明の他の実施形態に係るスタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナを示す斜視図である。本実施形態において、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナ1a(以下、スキャナという)は、フラットベッドスキャナである。スキャナ1aの要素及び機能は、図1A及び図2のものと同様であり、ここでは重複して説明しない。本実施形態では、図1A及び図2のスキャナ1と異なり、スキャナ1aは、走査台17を備え、走査台17は走査領域Aを有する。走査領域Aは透過領域である。キャリブレーション部品14は、走査台17の底面の下側に配置され、走査領域Aの周縁に隣接し、撮像部12に対向する位置に配置される。撮像部12は、走査台17の下側に配置される。撮像部12は、キャリブレーション部品14の画像情報を取得するためにキャリブレーション部品14を走査し、走査対象物の画像情報を取得するために対象物を走査できる。スタティックキャリブレーションが実行されている間、撮像部12およびキャリブレーション部品14は共に静止しており、撮像部12はキャリブレーション部品14に位置合わせされている。補償値調整方法の上記工程がスキャナ1aによって実行された後、スタティックキャリブレーションが達成される。スタティックキャリブレーションを実行可能なスキャナの構成は上記実施形態に限定されるものではなく、実際の要求に応じて調整可能であることに留意されたい。
【0028】
要約すると、本発明は、スタティックキャリブレーションの実行可能なスキャナと、補償値の調整方法を提供する。スキャナの撮像部とキャリブレーション部品を移動させることなく、スタティックな状態でキャリブレーション動作を実行するように構成されている。その結果、キャリブレーション部品にある埃、塵汚れ又はしわに起因して、キャリブレーションの間にスキャナの各画素における正確でない補償値が得られることを回避できる。一連の画像キャリブレーションの精度及び出力画像の品質が改善される。キャリブレーション部品はより小さなサイズであり、スキャナは自動的にキャリブレーション動作を実行することができる。キャリブレーション部品には塵又は埃があり、キャリブレーション部品にしわが生じているにもかかわらず、スタティックキャリブレーション中のスキャナの各画素に対する補償値の調整を自動的に実行することができ、一連の画像キャリブレーションの精度と出力画像の品質が向上される。
【0029】
本発明は、現在最も実用的かつ好ましい実施形態と考えられるものに関して説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定される必要はないことを理解されるべきである。それどころか、様々な修正およびすべてのそのような修正および類似の構造を包含するように最も広い解釈に従うべきである特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる類似の構成を包含することが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4