(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部分と前記第2部分の一方又は両方が、前記第1形態から前記第2形態へ移行する際に前記長手方向軸線に沿って動く、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一部の特定の態様では、本開示は、細胞の患者組織への一体化を改善する細胞送達システム及び方法を提供している。本開示の幾つかの形態によれば、その様なシステム及び方法は、患者の特定の組織場所を、当該組織場所が複数の細胞を受け入れるのに先立ってプライミングする(例えば、治癒応答、修復応答、再生応答、又は類似の応答を生成又は生成支援する)ように形態されている。具体的には、細胞を送達する方法の少なくとも1つの実施形態は、針シャフトと、針先端と、針先端に隣接していて隣接組織をプライミングする(例えば、以上に注記されている応答を生成するべく接触するなりそれ以外のやり方で影響を与える)ように配設されているプライミング部分と、を有する外科用針をヒト身体の組織の中へ刺入する段階と、プライミング部分を操作して隣接組織を前処置する段階と、針の先端領域から複数の細胞をそれら細胞が前処置された組織に向けて送達されるように放出する段階と、を含んでいる。
【0004】
一部の特定の実施形態では、細胞送達システムは、長手方向軸線と、第1部分と、第2部分と、組織穿通遠位先端と、を有する細長い針本体を有している。第1部分と第2部分は組織内への刺入のための第1位置から組織内への細胞送達のための第2位置へ移行でき、第1部分と第2部分は針本体が第1位置にあるときは複数の細胞を保持できる第1空洞部を画定している。第1空洞部は針が第2位置に入ると組織と連通する。
【0005】
細胞送達システムの実施形態は、プライミング部分と、細胞担持部分と、終端又は遠位の組織穿通部分と、を有する細長い本体を含むものとすることができる。組織穿通部分は組織の中へ押し進められることで組織を穿通するように配設されている。プライミング部分は、組織穿通部分に隣接して配置されていて、プライミング部分に隣接する組織を前処置するように、例えば前処置される組織での再生応答又は修復応答を促進するように、配設されている。細胞担持部分は、複数の細胞を針本体に隣接する組織へ送達するように配設されている。
【0006】
細胞送達システムの幾つかの実施形態は、シリンジと、中空針と、を備えている。シリンジは使用者が簡単に細胞を装置の中へ装填できるように及び/又は細胞をシリンジから針を通して輸送できるようにしている。針は、細長い針本体を有していて、組織を穿通する、針刺入中又は刺入後に内部組織部位をプライミングする、及び/又は細胞を送達するのに使用することができる。「シリンジ」及び「針」は例示としての形態であり、これらの構成要素の代用品又は代わりの構造が具体的な実施形態では使用されることもあるものと理解しておきたい。例えば、ポンプ、動力式注入器、インデフレータ、圧縮式ブラダ、及び同種物の様な装置はどれもみなシリンジの代用品として使用され得る。また、「針」という用語は、皮下針、カニューレ、マイクロニードル、及びナノニードルを含み得る。
【0007】
細胞送達システムの幾つかの実施形態は、シリンジと、中空針と、傷害組織へ送達されることになっている細胞と、を含んでいる。「細胞」という用語の本開示での使用は、媒体又はゲルの様なキャリア材料中に懸濁している細胞を含み得る。「細胞」という用語の本開示での使用は更に固形又は半固形の(単数又は複数の)材料片に事前付着されている細胞を含み得るものと理解しておきたい。例えば、細胞/細胞材料は細胞外基質(ECM)及び/又は足場様基質であってもよい。この基質は全天然構造及び/又は全天然組成を有していてもよい。その様な基質の1つの例がブタの小腸粘膜下組織(SIS)である。
【0008】
細胞は、製造者によって装置中又は装置上に事前装填されて提供されていてもよいし、又は細胞送達処置前又は細胞送達処置中に送達装置内へ又は送達装置上へ組み入れられるように別体の収容器又は配列で提供されていてもよい。細胞(媒体又はキャリア材料の有無を問わず)を針の中又は上へ装填したら続いて流体(食塩水、媒体、など)を押し流して細胞を先端付近に保つようにしてもよい。代わりに、装填段階を省略し、代わりに細胞をそのまま先端の位置へ又は組織内部の場所へ流し込むようにしてもよい。
【0009】
細胞送達システムの幾つかの実施形態は、シリンジと、組織穿通先端に隣接するプライミング部分を有する中空針と、を備えている。幾つかの実施形態では、シリンジは針のプライミング部分を操作するのに使用されている。例えば、シリンジはプライミング部分の物理的運動を生じさせることができる。プライミング部分は、回転する、起動する、又はそれ以外のやり方で針のシャフト部分又は針の先端部分に対して動くようになっていてもよい。代わりに、シリンジはプライミング部分を隣接組織に対して動くよう仕向けるようになっていてもよい。
【0010】
プライミング部分は、具体的な実施形態では、隣接組織に接触するか又はそれ以外のやり方で影響を与えて、送達される細胞を受け入れる組織の表面積が増加するように及び/又は送達される細胞の受容及び利用に有利な再生応答又は修復応答又は治癒応答が誘発されるようにする。シリンジは、プライミング部分にパワー供給するようになっていてもよいし、又は食塩水を高圧の1つ又はそれ以上のパルスで関心組織に向けて又は関心組織の中へ注入するといったような加圧又は減圧によって隣接組織に直接影響を与えるようになっていてもよい。これらの実施形態は、更に、プライミングされた組織へ例えば装置の事前装填部分などから送達されることになっている細胞を含んでいてもよい。
【0011】
細胞送達システムの幾つかの実施形態は、プライミング部分のための又はプライミング部分と関連付けられている機械的パワー、電気的パワー、熱的パワーの供給源又は光源を備えている。プライミング部分を操作して隣接組織に影響を与えるために、例えばモータ又はアクチュエータが針のプライミング部分へ直接又は間接的に接続されていてもよい。加えて又は代わりに、電気パワー供給源、熱的パワー供給源、及び/又は光源が、針のプライミング部分へ接続されていてもよい。これらの供給源は、隣接組織を前処置するためにプライミング部分にパワー供給するようになっていることもあれば、これらの供給源からのエネルギーが隣接組織の中へ直接移入されることもある。例えば、パルス生成器からの電気パルスがプライミング部分へ送達されてプライミング部分を動かし隣接組織を前処置させることもある。代わりに電気パルスが周囲組織へ印加されることもある。熱的パワー供給源がプライミング部分に接続されていて、熱をプライミング部分及び/又は当該プライミング部分に隣接する組織に対して移入又は移出するようになっていてもよい。同様に、レーザーの様な光源が使用されていてプライミング部分にパワー供給するように及び/又は隣接組織へ直接影響を与えるようになっていてもよい。レーザー間質温熱療法(LITT)及びレーザーアブレーションはレーザーを使用して組織をプライミングしている少数例である。
【0012】
幾つかの実施形態は、第1位置から第2位置へ移行できる中空針を備えている。第1位置は針を標的組織へ刺入するための針の形態であり、第2位置はプライミングのための及び/又は組織への細胞送達のための針の形態であるとしてもよい。細胞は、針を通って及び/又は針から押し流されることによって、又は受動的ブラウン運動によって、又は組立体若しくは組立体の諸部分の運動によって、送達することができる。
【0013】
細胞を送達する方法が開示されており、一部の方法は、針シャフト及び先端領域を有する外科用針をヒトの身体組織の中へ刺入する段階と、針の刺入に続いて外科用針を操作して特定内部部位の組織をプライミングする段階と、針の先端領域から複数の細胞をそれら細胞がプライミングされた組織に向けて送達されるように放出する段階と、を含んでいる。
【0014】
本開示の更なる形態、目的、特徴、態様、恩恵、利点、及び実施形態は、ここに併せて提供されている詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の原理の理解を促すことを目的に、これより図面に描かれている実施形態を参照してゆくが、説明に際して特定の言葉遣いを用いている。だからといってそれにより特許請求の範囲を限定することが意図されているのではないことを理解されたい。説明されている実施形態における何れかの変更及び更なる修正及びここに説明されている本開示の原理の何れかの更なる適用が、本開示に関係のある当業者には普通に発想され得るものと考えられる。少なくとも1つの実施形態が詳細に描かれているが、本開示に関連性のない一部の特徴は明解さを期して描かれていないこともあるということが関連の当業者には自明であろう。
【0017】
図1は、細胞送達システム100の1つの実施形態を描いている。当該実施形態のシステム100は、少なくとも2つの構成要素、すなわちシリンジ102と細長い中空針104を含んでいる。シリンジ102は、接続部分106であってこの実施形態ではシリンジ102を針104へ及び少なくとも第1操作部材108(例えば、プランジャ)へ接続している接続部分106を含んでいる。操作部材108は、シリンジの内部の1つ又はそれ以上のチャンバを加圧してシリンジの内容物が接続部分106及び針104を通して押し進められるようにするのに使用することができる。この実施形態のシリンジ102は、針104側のプライミング部分112を操作するのに使用することのできる第2操作部材110を有している。操作部材110は、針を第1の形態又は位置から第2の形態又は位置へ移行させるのにも使用することができる。第1位置は、針104を標的組織へ刺入するための針の形態であり、第2位置は特定組織又は選択組織に係合するか又はそれ以外のやり方で影響を与えてそれを(例えば(単回又は複数回の)細胞塗布の受容に向けて)前処置するための及び/又は細胞を組織へ送達するための針の形態である。
【0018】
この特定の実施形態では、細胞(視認できない)は、患者の組織内部への細胞送達に先立ってシリンジ102や針104内部に配置されている。細胞はシステム100を(シリンジ102と針104を別々に又は一体に)製造した後にシリンジ102や針104内部に事前装填されていてもよいし、又は細胞は細胞送達処置の直前に装填されるようになっていてもよい。
【0019】
図2は、細胞送達システムの別の実施形態200を描いている。上記実施形態と同様にシステム200はシリンジ202と中空針204を含んでいる。接続部材206がシリンジ202と針204を接続しており、接続部材206は管又はカテーテルの様な細長い可撓性の部材であってもよい。細長い接続部材206によって、装置200の操作中に針204をシリンジ202から遠く離れた位置に配置させることができる。加えて、可撓性の接続部材206によって、針204を患者の身体500(例えば
図5)を通る曲線経路を前進させることが可能となる。場合によっては、針は患者の身体500内部で蛇行する脈管構造を通して進められることもある。第1操作部材208が提供されており、第1操作部材208はプランジャ又はそれ以外の同種の部材108とすることができる。
【0020】
図2は、更に、或る具体的な実施形態での第2操作部材210を描いている。当該実施形態では、第2操作部材210はシリンジ202側に配置されていない。シリンジ202とは別に操作部材210を有することにより、接続部材206や針204へのシリンジ202のより単純な取り付けや、接続部材206や針204からのシリンジ202のより単純な分離が可能となる。この実施形態での操作部材210の配設は、更に、機械的エネルギー、電気的エネルギー、熱的エネルギー、又は光エネルギーの供給源の様な、針204のプライミング部分212の操作のための追加の装置へのより簡単な接続を可能にさせる。例えば、先に示唆されている様に、操作部材210は、第2シリンジ、モータ、アクチュエータ、電気供給源、熱供給源、及び/又は光源に接続されていてもよい。
【0021】
図3は、接続部材の或る実施形態106を描いている。この実施形態では、接続部材106は中央ルーメン302を画定している壁300を含んでいる。先端制御部材304が中央ルーメン302内部に配置されていてもよく、先端制御部材304は第2操作部材110を針104のプライミング部分112と接続している。
【0022】
図4は、接続部材の別の実施形態206を描いている。この実施形態では、接続部材は1つより多いルーメンを有している。例えば、接続部材206は制御ルーメン402と流体送達ルーメン404を含んでいてもよい。制御ルーメン402は、第2操作部材210と針204のプライミング部分212の間の連通のために使用される1つ又はそれ以上の部材を収納するのに使用することができる。流体送達ルーメン404は、第1操作部材208と流体連通していて、材料をシリンジ202から接続部材206を通して針204へ送達するように配設されている。例えば、流体送達ルーメンは、滅菌剤、食塩溶液、細胞、ゲル、又は粉末を、装置200を通して送達することができる。
【0023】
図5は、システム100又は200が使用され得る1つの環境を描いている。この例では、システム100又は200は細胞を患者の身体500へ送達するのに使用されている。針104又は204は療法の所望される内的場所へ刺入される。とはいえ細胞送達システム100又は200は同様に他の環境で使用されてもよい。例えば、システム100又は200は、臓器が患者に植え込まれるのに先立って、臓器移植の組織へ及び/又は移植部位へ細胞を送達するのに使用されてもよい。
【0024】
図6及び
図7は、100又は200の様なシステムの或る実施形態の一部となり得る針600の1つの実施形態を描いている。この実施形態では、針600は、第1形態(例えば
図6)から第2形態(例えば
図7)へ動かされ又は再構成される。望ましくは、針600は、刺入時には第1形態にあり、その後、それが所望の組織区域又は身体部分を前処置し細胞を送達するのに使用される前又は使用されている際に体内で第2形態へ移行される。代わりに、針600は、隣接組織又は周囲組織をプライミングするのに使用された後に、細胞を放出する前又は放出中に第2形態へ移行させることもできる。
【0025】
描かれている針600の実施形態は、シース部分602と中心キャリア部分604を含んでいる。シース部分602は、中心キャリア部分604が配置されている少なくとも1つの空洞部608を画定している少なくとも1つの内面606を含んでいる。シース部分602は、空洞部608内の細胞又は他の材料がそれらの放出を所望される以前に身体へ開放されないように閉じられた頂部を有し及び/又は身体の外を延びている。空洞部608は、針600が第1形態にあるとき即ち空洞部608が周囲組織へ開放されていないときの複数の細胞を保持するのに使用されている。針600が第2形態に入ったら、空洞部608は隣接組織へ開放されて細胞を組織に向けて導入できるようにする。空洞部608は、更に、シリンジ102又は202の第1操作部材108又は208に向かって接続部分106又は206内のルーメン302又は404と連通していてもよい。空洞部608は、製造後に細胞を事前装填されていてもよいし、細胞送達処置の直前に細胞を装填されてもよい。細胞は処置中に空洞部608から又は空洞部608を通って押し流される。
【0026】
中心キャリア部分604は、この実施形態ではノーズ部分612で終端しているキャリアシャフト610を含んでいる。ノーズ部分612は、中心キャリア部分604を針600のシース部分602から脱着可能に連結する連結部分614を有している。例えば、連結部分614は、シース部分602の内面606に当接するように配設されている少なくとも1つの連結面616を含んでいて、両者が滑り嵌め様式に接続されるようになっていてもよい。連結部分614は空洞部608の一端を封止する働きをする。連結部分614は、更に、中心キャリア部分604をシース部分602内部に整列させることもできる。
図6に描かれている様に、連結部分614は中心キャリア部分604を空洞部608内で、中心キャリア部分604とシース部分602が長手方向軸線626を共有するように、中心に整列させる。中心キャリア部分604とシース部分602の整列は、針組立体がノーズ部分612からシース部分602にかけてのその外面上に連続する滑らかな移行部を維持できるようにする。
【0027】
ノーズ部分612は、鋭く尖った遠位端の点、面、又は先である組織穿通部分618と、組織穿通部分618に隣接する組織分離部分620と、を含んでいてもよい。この実施形態の組織穿通部分618は、組織、例えば皮膚、筋肉、骨、及び/又は所望治療場所へ通じる他の(単数又は複数の)組織、の表面を穿つように配設されており、一方、組織分離部分620は、ノーズ部分612のより広い部分及びシース部分602のための空きを作るために組織を分離するように配設されている。理解しておきたいこととして、治療場所への経路は別の針又は装置(図示せず)によって作られていてもよく、その場合、針600はその様な他の針又は装置と一体に又は他の針又は装置を通して刺入されてもよいし、又はそれ以外のやり方で当該経路を通して設置されてもよい。
【0028】
ノーズ部分612は、この実施形態では組織穿通部分618に隣接するプライミング部分622を含んでいる。プライミング部分622は、プライミング部分622に隣接する組織に影響を与えるように配設されており、当該対象部位に修復プロセス又は再生プロセスを生成することによって影響を与えるとされている。プライミング部分622は、プライミング部分622に隣接する組織での再生応答を促進する多数の特徴を含むことができる。例えば、プライミング部分622は、隣接組織を掻く、筋付けする、刺激する、又はそれ以外のやり方で擦るか又は削るのに使用される研削面、シース602との間に組織を挟むように使用されるリップ又は縁部624、隣接組織を浅く裂く又は切るための1つ又はそれ以上のエッジ又は突出部分、隣接組織への流体圧力を送達するように配設されている1つ又はそれ以上の孔及び/又はポート、及び/又は電気エネルギー又は熱エネルギーを隣接組織へ送達する電気伝導体及び/又は熱伝導体の様な1つ又はそれ以上の部材、を含んでいてもよい。
【0029】
針600及びその構成要素は、プライミング部分622の形態に依存する様々なやり方で操作することができる。1つの例として、プライミング部分622は、研削面又は突出部分を備えており、プライミング部分622は、隣接組織及び/又はシース部分602に対して、回転運動で操作され及び/又はその長手方向軸線626に沿って動かされて隣接組織に接触する。例として、キャリアシャフト610を押し出す、引く、及び/又は回してプライミング部分622を操作し、以上に示唆されている様に細胞を受容するために組織を研削する、挟む、切る、又はそれ以外のやり方でプライミングするようになっていてもよい。代わりに又は連係して、空洞部608内部の圧力を働かせて針600を第1形態(例えば
図6)から第2形態(例えば
図7)への又はその逆の間を少なくとも途中まで移行させるようにしてもよい。プライミング部分622が、流体圧力を送達するように配設されている1つ又はそれ以上の孔及び/又はポートを備えている場合、システム100又は200、針600、及び/又はプライミング部分622を操作して、1つ又はそれ以上の圧力パルスを孔及び/又はポートから隣接組織へ向けて送達させるようにしてもよい。プライミング部分622が、電気エネルギー、熱エネルギー、及び/又は光エネルギーを送達する1つ又はそれ以上の部材(例えばレーザー)を備えている場合、システム100/200、針600、及び/又はプライミング部分622を操作して、細胞の送達前又は送達中に、少なくとも1つ又はそれ以上の部材にエネルギー供給し、次いで供給停止したり又は光を送信したりしてもよい。
【0030】
図8−
図13は針800の別の実施形態を描いている。この実施形態では、針800は第1の状態又は形態(例えば、
図8、
図10、及び
図12)から第2の状態又は形態(例えば、
図9、
図11、及び
図13)へ操作される。針800は、刺入中は第1形態にあり、その後、(単数又は複数の)組織部位をプライミングするための操作及び/又は細胞又は細胞材料を送達するための操作の前又は間に第2形態へ移行される。
【0031】
針800は、少なくとも、シース部分802と中心キャリア部分804を含んでいる。シース部分802は、空洞部808を画定している内面806を有している。シース部分802は更にテーパの付けられた遠位領域814を含んでいる。領域814は組織穿通遠位先端818に終端している。中心キャリア部分804はキャリアシャフト810と端領域812を有している。中心キャリア部分804の端領域812は、この実施形態では、シース部分802の内面806と実質的に面一の接点816に沿って接するように外方にテーパが付けられている。接点816は遠位領域814の付近又は遠位領域814内にある。接点816は針800の外面上に遠位領域814のシース部分802から中心キャリア部分804にかけて連続する滑らかな移行部を提供しているのが望ましい。連続移行部は接点816に沿って実質的にエッジの無いことが望ましい。接点816は、中心キャリア部分804を空洞部808内部で中心に位置付けし空洞部808の一方の端を封止する。針800がその第1形態で患者の組織を貫いて刺入されてゆくとき、接点816は追従縁824が当該組織へ追加の外傷を生じさせるのを予防する。
【0032】
シース部分802は組織穿通遠位先端818に隣接して組織分離部分820を有している。中心キャリア部分804は組織穿通遠位先端818に隣接してプライミング部分822を有している。幾つかの実施形態では、プライミング部分822は、隣接組織及び/又はシース部分802に対して、回転運動で操作され及び/又はその長手方向軸線826に沿って動かされる。例えば、キャリアシャフト810は、押し出す、引く、及び/又は回してプライミング部分822を操作するようになっていてもよく、特定の実施形態では部分822を関心組織に押し付ける又は擦り付けることによって操作している。シース部分802及び中心キャリア部分804が第1位置から第2位置へ移行してゆくとき及び/又は移行してしまったときに接点816から逃れ隣接組織をプライミングする(修復応答又は治癒応答を生成する)ために空洞部808内部の加圧も許容されている。第1形態(
図8、
図10、
図12)では、細胞又は細胞材料は空洞部808に保持されており、一方、第2形態(
図9、
図11、
図13)では、細胞又は細胞材料は所望部位、例えば針800の使用を通じて前処置された部位、に向けて空洞部808を出てゆく。
【0033】
図14及び
図15は、空洞部1408を画定している内面1406を有する本体部分1402と、ノーズ部分1412と、を有している針1400の実施形態を描いている。空洞部1408は、針1400が第1形態(例えば
図14)にあるときには、一端をノーズ部分1412によって封止されている(即ち面1414が面1406に封止係合している)。針1400のノーズ部分1412は、空洞部1408内部の流体圧力により動かされる。空洞部1408が加圧されると、圧力がノーズ部分1412の(単数又は複数の)面(例えば面1414)に作用してノーズ部分1412を第1形態での自身の場所(例えば
図14)から第2形態での自身の場所(例えば
図15)へ動かす。ノーズ部分1412が第2形態に入ると、空洞部1408からの流体は面1414側の開口1424の中へ進み空洞部1426を通って孔又はポート1422から外へ出る。対照的に
図14では見て分かる様に孔1422は面1406によって閉じられ、面1414及び/又はストッパ部材1428が流体のルーメン1408からの流出を防いでいる。
【0034】
針1400の内面1406はストッパ部材1428を有している。ストッパ部材1428はノーズ部分1412の捕捉部材1430と相互作用してノーズ部分1412が本体部分1402から完全に分離するのを防止する。ストッパ部材1428と捕捉部材1430は第2位置では互いに当接する突起であってもよい。代わりに、ストッパ部材1428が溝であって捕捉部材1430は第2位置でストッパ部材1428へ入る付勢部材であってもよいし、その逆であってもよい。
【0035】
図16及び
図17は、針1600がシース部分1602及びノーズ部分1612を備えている実施形態の描写である。シース部分1602は空洞部1608を画定している内面1606を有している。空洞部1608はポート又は孔1622及び操作部材(図示せず)へ流体接続されている流体送達ルーメン(図示せず)と流体連通している。操作部材は流体を流体送達ルーメンを通して空洞部1608の中へそして孔1622を通して隣接組織に向けて押し進める。
【0036】
図18及び
図19は、シース部分1802と、長手方向軸線1826の周りで第1の形態又は相対位置(例えば
図18)から第2の形態又は相対位置(例えば
図19)へ回転して移行する中空シャフト部分1810と、を有する針1800の実施形態を描いている。シース部分1802は第1空洞部1808を画定している内面1806を備えている。中空シャフト部分1810は第2空洞部1811を有している。シャフト部分1810は、第1空洞部1808内部に配置されており、シース部分1802の内面1806に放出領域1814のところで実質的に当接している。シャフト部分1810と内面1806の密な当接は、第2空洞部1811の内容物がシャフト部分1810と内面1806の間に漏れてシース部分1802のポート又は孔1822から外へ漏出するのを実質的に阻止する。
【0037】
図18は、刺入形態の一例を示している。針1800が身体内への刺入に向けた位置にあるとき、ポート1822はシャフト部分1810の孔1824と整列していない。それどころか、シース部分1802は孔1824を閉じている(
図18)。所望通り刺入されたらシャフト部分1810をシース部分1802に対して回転させシース部分1802の孔1822をシャフト部分1810の孔1824と整列させると、
図19の例示としての送達形態がもたらされる。孔1822を少なくとも部分的に孔1824と整列させると、中空シャフト部分1810内部の第2空洞部1811が放出領域1814に隣接する組織と連通する。
【0038】
図20及び
図21は、細胞がシース部分2002と中心キャリア部分2004の間に収容されていて流体が中心キャリア部分2004を通して押し流される針2000の実施形態を描いている。この実施形態では、針2000は
図20に描かれている第1の形態又は相対位置から
図21に描かれている第2の位置へ移行される。針200は、刺入中は第1の形態又は相対位置にあり、隣接組織をプライミングする及び細胞を送達するのに使用される前又は間に第2の形態又は相対位置へ移行されるのが望ましい。
【0039】
図20及び
図21は、シース部分2002と、中心キャリア部分2004と、を備えている針2000を描いている。シース部分2002は内面2006を有している。中心キャリア部分2004はシース部分2002内部に配置されていて、中心キャリア部分2004の外面2007とシース部分2002の内面2006は、少なくとも第1空洞部2008及びシール2032により分離されている第2空洞部2009を画定している。シール2032は、リング形状又は座金形状をしていてシャフト部分2010を取り囲みシース部分2002の内面2006に当接しているのが望ましい。シール2032は第1空洞部2008と第2空洞部2009の間の連通を防止している。中心キャリア部分2004はシャフト空洞部2011を画定しているシャフト部分2010を有している。シャフト空洞部2011は、針が第1の形態又は相対位置(例えば
図20)にあるときは第2空洞部2009へ開いている孔2024と連通している。針が第2の形態又は相対位置(例えば
図21)へ移行すると、孔2024は針2000の当該部分の周囲の組織と連通する。
【0040】
細胞(例えば適切な媒体中)は患者の身体内への刺入に先立って第2空洞部2009の中へ事前装填されているのが望ましい。針2000が(例えば第1の形態又は相対位置で)身体の中へ刺入された後で且つプライミング部分2022の操作前又は操作中に、針2000は第2の形態又は相対位置へ移行され、そして細胞が第2空洞部2009から針の周囲の組織へ向けて放出される。細胞の周囲組織へ向けた放出及び分配を支援するべく更に流体がシャフト部分2010内部のシャフト空洞部2011を通し及び孔2024を通して押し流されてもよい。
【0041】
針は更に処置中にX線又は超音波の様な画像化法によって装置をより視認し易くするためにマーカー又はマーカー部分を有していてもよい。装置をより視認し易くすることで、施術者は組立体が適切な場所にあるかどうかを、刺入中に、プライミング部材又はプライミング部分を操作するのに先立って、及び/又は装置からの細胞送達に先立って、より簡単に見極められるようになる。マーカー又はマーカー部分は、装置をX線下により視認し易くする金部分の様な放射線不透過性マーカーを含んでいてもよい。同様に、マーカー又はマーカー部分は、装置を超音波下により視認し易くする肌理及び/又は輪郭の付けられた表面を含んでいてもよい。
【0042】
細胞送達組立体は、上記実施形態の少なくとも1つ又はそれ以上及び見込まれる追加的な機器を備えたキットとして提供されていてもよい。場合によってはその様なキットは身体内への刺入を意図した細胞又は細胞材料を含んでいてもよい。例えば、キットは細胞を事前装填されている針及び/又は針組立体を含んでいてもよい。代わりに、細胞は標的組織への細胞送達に先立って針の中へ挿入するのに適したカートリッジ又は注入できる溶液の様な装填可能な形態で提供されていてもよい。細胞は様々な形態で提供することができる。例えば、細胞は、溶液、ゲル、発泡体、又はシートで提供されていてもよく、送達装置中/装置上への装填に適するように及び/又は身体内の特定場所への送達に適するように形態されていてもよい。
【0043】
キットは、更に、異なるサイズの、異なる細胞送達形態の、及び/又は異なるプライミング部分の、1つ又はそれ以上の針を提供していてもよい。同様に、キットは、針を操作するための、細胞を送達するための、及び/又は組織をプライミングするための様々なシリンジ及び/又はエネルギー源若しくは圧力源を提供していてもよい。
【0044】
上記実施形態は生体適合性材料で構築することができる。例えば、針全体又は部分はステンレス鋼の様な外科用金属で作られていてもよい。代わりに、針全体又は部分は、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリイミドの様なポリマーで構築されていてもよい。装置と隣接の組織及び/又は脈管構造の間の摩擦を減らす親水性被覆の様な刺入を容易にする1つ又はそれ以上の被覆が装置の少なくとも一部分に施されていてもよい。代わりに、装置の諸部分が生体吸収性材料で構築されていてもよい。例えば、ノーズ部分は、ポリカプロラクトン、PLA、PGA、キトサン、又はSIS(小腸粘膜下組織)の様な生体吸収性材料で構築されていて、組織のプラミング及び/又は細胞送達の後はその場に残されるようになっていてもよい。
【0045】
送達方法
細胞送達に先立って、使用者(例えば医師又は他の医学専門家)は細胞のための送達部位を選択する。例えば、患者が心臓発作を患っているのであれば施術者は梗塞帯域又はその付近の場所を選定することになろう。腹圧性尿失禁を患う患者については、施術者は横紋筋性括約筋(rhabdosphincter)又はその付近に標的場所を選定することになろう。
【0046】
標的組織を選択した後、施術者は送達経路を選択する。組織場所が患者の皮膚付近の場合、施術者は単純に直達経皮進入法を選び、
図1の実施形態と同様の実施形態を使用することができる。標的組織が患者の皮膚から遠隔にある場合又は直進的なアクセスを介してアクセスできない場所にある場合、施術者は刺入のための遠回り経路を選定することになる。例えば、施術者は装置を経管腔的に(例えば、食道、尿道、又は脈管系を経由して)送達することを選定することになろう。
【0047】
標的組織に近づくための送達経路を選択した後、使用者はシステムを細胞送達に向けて準備する。準備には、針サイズを選択すること、プライミング装置又はプライミング部分を選択すること(選択された針の既存部分でない場合)、細胞送達機構を選択すること、及び細胞又は細胞材料の選択、が含まれ得る。施術者は、細胞又は細胞材料を必要に応じて下処理したり、それを装置中へ又は装置上へ装填したりすることができる。細胞を送達装置上へ装填する段階は、患者の身体内への針刺入の直前、又は針が刺入され及び/又は標的場所へ進められた後、又は組織が細胞のためにプライミングされた後、に起こっていてもよい。システムを準備する段階は、更に、何れかのプライミング部分又はプライミング装置を準備又は設定する段階を含んでいてもよい。例えば、施術者はシリンジを食塩水の様な流体溶液で満たし当該シリンジを針に取り付けることができる。
【0048】
送達装置は、針先端部分を患者組織の表面に近接させる段階と、針先端部分を組織の表面と接触させる段階と、針の組織穿通遠位先端が組織を穿通し組織分離部分が組織を分離するような具合に針先端部分を組織の中へ前進させる段階と、によって操作される。針先端が組織の表面を穿通した後、X線及び/又は超音波の様な画像化法が使用されて針の場所が確定されるのが望ましい。画像化法は、標的部位への細胞送達に先立って患者の身体を通る針の軌道を追跡するべく1回又はそれ以上の回数若しくは継続的に遂行されることもあり得る。
【0049】
細胞の送達前又は送達中に使用者は細胞送達システムのプライミング部分を操作することができる。プライミング部分は患者の組織内部の1つ又はそれ以上の場所で1回又は複数回操作することができる。機械操作式プライミング部分(例えばアブレーダー又はカッター)については、プライミング部分は装置の別の部分に対して及び/又は周囲組織に関係付けて起動されてもよい。圧力を使用するプライミング部分については、傷害組織に向けた細胞送達に先立って1つ又はそれ以上の圧力パルスが針のプライミング部分から放出されてもよい。電気的パワー、熱的パワー、及び/又は光パワーの供給されるプライミング装置については、施術者は細胞の送達前及び/又は送達中に、電気エネルギー、熱エネルギー、又は光エネルギーの1つ又はそれ以上のパルスを標的組織へ送達してもよい。
【0050】
細胞を放出する段階は、押し流し、受動的ブラウン運動、及び/又は針組立体の一部分の運動、によって果たされてもよい。細胞はプライミング部分の操作後に細胞送達部分から隣接する前処置済みの組織へ放出されるのが望ましい。細胞は、プライミング部分が新たに放出される細胞に重大な影響を与えない場合には、プライミング部分の操作中に放出されてもよい。例えば細胞が操作中のプライミング部分に隣接していないのであれば、細胞はプライミング部分の操作中に放出されてもよい。同様に、細胞をプライミング部分の操作中に放出し、細胞がプライミング部分に隣接する前処置された組織に到達したらプライミング部分の操作を止める、というようにしてもよい。他の実施形態では、プライミング部分は異なったプライミング相で操作されていて、少なくとも1つの相は別の相とは(量的又は質的に)異なる効果を生じさせるものであり、細胞は影響がより少ない相の操作中に放出される。前処置された組織と結合する細胞又は細胞材料は、再生、修復、又は治癒、或いはバルキングの様な他の治療活動を支援する傾向を呈する。
【0051】
プライミング部分の操作及び/又は細胞放出の後、針を標的組織から後退させる。針の後退中に細胞を放出させて(又は放出させ続けて)、送達経路を前処置又は作成する際若しくは針を経路に沿って動かす際に起こり得る穿孔又は組織損傷の治癒を支援させることもできるものと理解しておきたい。後退中、針はその初期刺入形態にあってもよいし又はその細胞放出形態にあってもよい。以上に示唆されている様に、幾つかの実施形態では、送達経路に沿った後退の影響を回避する又は最小限にするために針をその初期刺入形態で後退させている。他の実施形態では、細胞放出形態で針を後退させ、後退経路に沿って細胞を放出させている。
【0052】
ここでの使用に際し「プライミング」という用語及びその変化形は、組織での治癒カスケード、修復応答又は反応、又は再生応答又は反応が開始、生成、又は援助される環境を作り出すことを指し、その様な環境は(単数又は複数の)層の細胞を(例えば、剥離、熱すなわちエネルギーの印加、切除、などにより)破壊することによって作り出されるものである。同様に、「プライミングされる」又は「前処置される」組織とは、細胞又は他の治療材料を設置するための受入部位又は場所、例えば細胞の受容のために治癒反応が生成される部位、を指す。
【0053】
本開示を図面及び以上の記述中に詳しく示し説明してきたが、それらは性質上説明が目的であり限定を課すものではなく、付随の特許請求の範囲の精神の内に入るあらゆる変更、等価物、及び修正は保護されることが望まれるものと理解している。1つの実施形態に関して具体的に記載されている特徴は、他の特徴又は他の実施形態へ適用できる若しくは他の特徴又は他の実施形態と一体に適用できるものと理解しておきたい。更に、同一の下2桁を有する識別番号を付してここに説明又は描写されている特徴は、構造及び/又は機能が互いに類似又は同一であると見なすことができる。本明細書に引用されている全ての出版物、特許、及び特許出願は、各個別の出版物、特許、又は特許出願が特定的に且つ個別に参考文献として援用される旨を指示されその全体がここに記載されているかのごとく、ここに参考文献として援用される。