(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6483670
(24)【登録日】2019年2月22日
(45)【発行日】2019年3月13日
(54)【発明の名称】機械式結合片を有しているシリンジ
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20190304BHJP
A61M 5/34 20060101ALI20190304BHJP
G01N 30/18 20060101ALI20190304BHJP
【FI】
B01L3/02 D
A61M5/34 530
G01N30/18 E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-518955(P2016-518955)
(86)(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公表番号】特表2016-529089(P2016-529089A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2014061912
(87)【国際公開番号】WO2014198673
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2016年2月9日
【審判番号】不服2018-3240(P2018-3240/J1)
【審判請求日】2018年3月6日
(31)【優先権主張番号】102013210998.9
(32)【優先日】2013年6月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501401397
【氏名又は名称】ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・レッケブッシュ
【合議体】
【審判長】
豊永 茂弘
【審判官】
金 公彦
【審判官】
後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02764978(US,A)
【文献】
米国特許第04281653(US,A)
【文献】
特表昭62−501268(JP,A)
【文献】
特表2010−539499(JP,A)
【文献】
米国特許第04720285(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
A61M 3/00- 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00-39/28
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシアル方向に受容空間(16)を有しているシリンジ本体(12)であって、前記シリンジ本体(12)が、前記シリンジ本体(12)の長手方向軸線(LA)に沿って延在しており、プランジャ(14)が、前記プランジャ(14)が長手方向に移動可能とされるように、前記シリンジ本体(12)の内部に収容されているか、又は収容可能とされる、前記シリンジ本体(12)と、
前記シリンジ本体(12)の長手方向端部において前記シリンジ本体(12)に接続されているか、又は接続可能とされるニードル(18)であって、前記シリンジ本体(12)が、前記シリンジ本体(12)のニードル側長手方向端部に結合セグメント(20)を有しており、前記ニードル(18)が、前記長手方向に沿って滑動可能とされる接続要素(22)によって前記ニードル側長手方向端部に固定可能とされるか、又は固定されている、前記ニードル(18)と、
を備えているシリンジにおいて、
少なくとも1つのラジアル方向内方に形成されているキャビティ(34)が、前記結合セグメント(20)に設けられており、前記結合セグメント(20)が、前記接続要素(22)に設けられている対応するロックセグメント(32)と係合可能とされるか、又は係合しており、
前記接続要素(22)が、外殻として形成されており、シリンジ本体側に位置するシリンジ本体側接続セグメント(28)とニードル側に位置するニードル側接続セグメント(30)とを備えており、
前記ロックセグメント(32)が、前記シリンジ本体側接続セグメント(28)に配置されており、
複数の前記ロックセグメント(32)が、前記シリンジ本体側接続セグメント(28)に周方向において分配配置されており、
前記ロックセグメント(32)が、前記接続要素(22)の前記シリンジ本体側接続セグメント(28)の内周に沿って延在しており、ラジアル方向内方に向いており、
前記ロックセグメント(32)が、対応する接続セグメント部分(68)に配置されている複数のロックセグメント部分(70,72,74)を備えているように、前記長手方向軸線(LA)に沿って延在している複数の溝(66)が、前記シリンジ本体側接続セグメント(28)に形成されており、
前記接続セグメント部分(68)が、ラジアル方向(RR)に屈曲可能とされ、
前記シリンジが、前記結合セグメント(20)と前記接続要素(22)との間にアキシアル方向のプレテンションを発生可能とされる、又は発生させるための張力手段を備えており、
前記張力手段が、少なくとも1つの前記キャビティ(34)を前記結合セグメント(20)に備えており、
前記キャビティ(34)が、前記結合セグメント(20)の周に沿って延在しており、ネジ部分として形成されていることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記プレテンションが、前記結合セグメント(20)と前記接続要素(22)との間に収容されているシール要素(42,44)に作用することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記ネジ部分が、両方の回転方向において前記結合セグメント(20)の周方向外周面(62)に至る移行部分(34−1,34−2)を有しているように形成されており、
前記接続要素(22)を前記結合セグメント(20)に対して最大一回転させることができ、前記結合セグメント(20)の周の8分の1〜8分の7である部分的な回転させることができることを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記接続要素(22)が、ラジアル方向内方に方向づけられている境界壁(36)を前記接続要素(22)の前記ニードル側接続セグメント(30)に備えており、
前記ニードル(18)が、前記境界壁(36)の開口部(38)を貫通しており、
前記シリンジの組み立てられた状態において、前記境界壁(36)が、前記シリンジ本体(12)に面している内面(40)を介して、前記結合セグメント(20)のアキシアル方向前面(46)に当接しているシール要素(42,44)にアキシアル方向力を作用させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記ニードル側接続セグメント(30)が、ラジアル方向内方に向いている安定化リング(48)を備えており、
前記安定化リング(48)が、前記シリンジ(10)の組み立てられた状態において前記結合セグメント(20)の前面(46)に当接しており、
前記安定化リング(48)が、前記接続要素(22)と一体に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記シール要素(42,44)と前記ニードル(18)とが、一体要素として前記シリンジ本体(12)の前記結合セグメント(20)に接続可能とされるか、又は接続されるように、前記シール要素(42,44)と前記ニードル(18)とが、前記接続要素(22)に収容されているか、又は固定されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記シリンジ本体(12)と前記結合セグメント(20)とが、一体に形成されており、ガラスから形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記接続要素(22)が、合成材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記シリンジ(10)が、前記接続要素(22)に収容されているニードルホルダ(50)を備えており、
前記ニードルホルダ(50)が、前記ニードル(18)のカニューレ(26)のシリンジ本体側端部(52)を周方向において密接状態で囲んでおり、前記シリンジ(10)の組み立てられた状態において、シール要素(42,44)によって、前記接続要素(22)と前記結合セグメント(20)のニードル側前面(46)との間に保持されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに関する。具体的には、本発明は、例えば高温クロマトグラフィーやヘッドスペースクロマトグラフィーのようなクロマトグラフィーで利用される計量装置のためのシリンジに関する。
【0002】
このようなシリンジは、アキシアル方向内方キャビティを有しているシリンジ本体であって、シリンジ本体が、シリンジ本体の長手方向軸線に沿って延在しており、シリンジ本体には、プランジャが長手方向において移動可能とされるように、プランジャが収容可能とされるか、又は収容されている、シリンジ本体と、シリンジ本体の長手方向端部においてシリンジ本体に接続可能とされるか、又は接続されているニードルであって、シリンジ本体が、シリンジ本体のニードル側長手方向端部に結合セグメントを有しており、ニードルが、長手方向において滑動可能とされる接続要素を介して、結合セグメントに固定可能とされるか、又は固定されている、ニードルとを備えている。
【0003】
研究室で利用するためのこのようなシリンジは、例えば特許文献1に開示されている。既知のシリンジでは、ニードルとシリンジ本体とが、外殻状の案内要素によって共に接着されており、当該案内要素が、ニードルに接続されている締めネジと螺合する雌ネジ部分を有している。
【0004】
さらに、ニードルとシリンジ本体との間を結合する様々なカップリングが医療科学から知られている。しかしながら、
従来技術に基づくこれらカップリングは、研究室での利用に十分ではない。特に、
従来技術に基づくこれらカップリングは、安定性と特に液密性とに関する要件を満たさない。ここで、シリンジによって吸引及び排出される液体の純度を所望の程度に確保することができないという問題がある。
【0005】
接着接続は、研究室で利用される計量装置のためのシリンジにおいては不利であることが知られている。このようなシリンジを例えば(ガス)クロマトグラフィーのような分析装置で利用する際には、プローブが、特に接着剤に由来する揮発性有機材料を含んでいるシリンジ内で汚染される。シリンジが温められると、これら揮発性有機材料は接着剤から放出され、分析装置によって得られた試料液体に関する計測結果に著しい影響を及ぼす。さらに、例えば試料液体のような溶剤を含む環境において接着接続部を具備するシリンジを利用することも困難である。使用済みの接着剤が溶剤によって損なわれるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公報第2009/036994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、これら欠点が解消された計量装置のためのシリンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、上述のシリンジにおいて少なくとも1つのラジアル方向内方に形成されたキャビティを結合セグメントに設けるか、又は接続要素に設けられている少なくとも1つの対応するロックセグメントと係合させることを提案する。
【0009】
結合セグメントのキャビティと接続要素のロックセグメントとによって、ニードルとシリンジ本体との純粋な機械的接続が可能となるので、接着剤の利用を回避することができる。ここで、接続要素を結合要素に接触させた状態で滑動させる際に、簡単な方法でロックセグメントをキャビティの内部にロックすることができるので、接着接続によって、必要であれば調整用ネジを介してニードルと接続要素とを結合することによってシリンジを製造することと比較して、このようなシリンジの製造を単純化することもできる。
【0010】
接続要素は、シリンジ本体側接続セグメントとニードル側支持要素とを備えている外殻であって、少なくとも1つのロックセグメントが接続セグメントに配置されている、外殻として形成されていることが望ましい。
【0011】
この目的を達成するために、さらなる実施例として、周方向に分配配置されていると共にラジアル方向内方に向かっている幾つかのロックセグメントを接続要素に設けることを提案する。
【0012】
接続セグメントが、対応する接続セグメント部分に配置されているロックセグメントが幾つかのロックセグメント部分を備えているように、長手方向に延在していると共に外殻のシリンジ本体側端部から外殻のニードル側端部に向かっている溝をロックセグメントの領域に備えており、接続セグメント部分が、ラジアル方向に湾曲することがさらに望ましい。
【0013】
このような構成によって、接続要素と結合セグメントとが、周囲に分配配置されている幾つかの位置において係合されるので、確実な相互接続が確保される。たとえラジアル方向内方に向かっているロックセグメント又はロックセグメント部分が、ロックセグメントの領域において接続片の内径を低減させるとしても、(弾性的に)湾曲可能とされる接続セグメント部分によって、接続要素は、結合セグメントに接触した状態でアキシアル方向に滑動可能とされる。接続セグメント部分が、結合セグメントのロックセグメント部分に対して結合セグメントに接触させた状態でアキシアル方向に滑動するように配置されており、接続セグメント部分は、ロックセグメント部分又はロックセグメントが結合セグメントのキャビティの内部に係合するまで、ラジアル方向外方に変形又は屈曲される。このプロセスでは、接続セグメント部分が、ラジアル方向内方への弾性変形に起因して急速に元の状態に復帰し移動する。
【0014】
シリンジ本体とニードルとの接続についての液密性を高めるために、シリンジが、結合セグメントと接続要素との間にアキシアル方向のプレテンションを発生可能とされる、又は発生させるための張力手段を備えており、プレテンションが、結合セグメントと接続セグメントとの間に収容されているシール要素に作用することを提案する。
【0015】
この目的を達成するために、張力手段が、少なくとも1つのキャビティを結合セグメントに備えており、キャビティが、結合セグメントの周に沿って延在しており、ネジ部分として形成されていることが想定され得る。
【0016】
ここで、ネジ部分が、両方の回転方向において結合セグメントの外周面に至る移行部分を有しているように形成されており、好ましくは、接続要素を結合セグメントに対して最大一回転させることができ、好ましくは、結合セグメントの周の約8分の1〜約8分の7である部分的な回転をすることができることが望ましい。
【0017】
提案するネジ部分は、2つの対応する要素同士が純粋な相対的な回転運動によって接続可能とされる一般的なネジ部分ではない。対照的に、ネジ部分は、シリンジの結合セグメントのキャビティによって形成されており、ロックセグメントとキャビティとを係合させた後に、さらにアキシアル方向において張設するように適合している。。ロックセグメントとキャビティとは、一般的なネジ部分のように、この目的を達成するために、2つの部品同士が互いに対して最初に回転することを必要とすることなく、結合セグメントに接触させた状態で接続要素がアキシアル方向に滑動する際には既に、上述の元の位置への急速な復帰によって係合されている。ロックセグメントがキャビティの内部に接触させた状態で滑動すること、接続セグメントが結合セグメントの周の約8分の1〜約8分の7に亘って連続的に回転することとが、このようなシリンジの製造を単純化し、確実で高い水密性を有する機械的な相互接続と、ニードルとシリンジ本体との摩擦係合接続とを可能にする。
【0018】
外殻は、ラジアル方向内方に向いている境界壁を当該外殻の支持セグメントに有しており、ニードルは、境界壁の中心を貫通しており、シリンジの組み立てられた状態において、境界壁は、シリンジ本体に面している境界壁の内面を介して、結合セグメントのアキシアル方向前面に対向して配置されているシール要素にアキシアル方向力を作用させることをさらに提案する。
【0019】
この目的を達成するために、さらなる実施例として、支持セグメントが、ラジアル方向内方に方向づけられている安定化リングを備えており、安定化リングが、シリンジの組み立てられた状態において結合セグメントの前面に当接しており、安定化リングが、好ましくは外殻と一体に形成されていることが想到され得る。
【0020】
シール要素とニードルとが、好ましくは、接続要素又は外殻に収容されており、好ましくは、一体要素としてシリンジ本体の結合セグメントに接続可能とされるように又は接続されているように、接続要素又は外殻に固定されている。
【0021】
さらに、シリンジ本体と結合要素が、好ましくはガラスから一体的に形成されている。
【0022】
接続要素又は外殻は、合成材料から形成されている。
【0023】
ニードルを接続セグメントに精度良く収容可能とするために、シリンジが、接続要素すなわち外殻に収容されているニードルホルダを備えており、ニードルホルダが、ニードルのカニューレのシリンジ本体側端部を周方向において密接状態で囲んでおり、シリンジの組み立てられた状態において、シール要素によって、接続要素すなわち外殻と結合セグメントのニードル側前面との間に保持されていることを提案する。
【0024】
本発明については、添付図面を参照しつつ例示的に且つ非限定的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一の実施例におけるシリンジ本体及びニードルを具備するシリンジの、単純且つ概略的な長手方向断面図である。
【
図2】
図1の区域IIに示す、シリンジと接続要素及び結合セグメントを具備するニードルとの間における接続区域の拡大図である。
【
図3】
図2の区域IIIにおける接続要素とそのロックセグメントとの2つの代替例の拡大図である。
【
図4】a)シリンジ本体の単純且つ概略的な斜視図を表わし、b)
図4aの区域IVの拡大図である。
【
図5】ニードルとシリンジ本体との結合を可能とする接続要素の単純且つ概略的な斜視図である。
【
図6】接続要素を結合セグメントに接触した状態でアキシアル方向に滑動させ、接続要素と結合セグメントとの固定接続を確立するプロセス(ステップa)〜d))を示す、単純且つ概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、シリンジ10の一の実施例における長手方向軸線LAに沿った単純且つ概略的な長手方向断面図である。シリンジ10は、長手方向LRに沿って移動可能とされるプランジャ14を収容するためのシリンジ本体12を備えている。シリンジ10によって吸引及び排出可能とされる液体のための受容空間16(シリンジ本体12の内部キャビティ)の容積が変化するように、プランジャ14は、図示しない動作手段に接続されている。ニードル18はシリンジ本体12に接続されている。シリンジ本体12に設けられている結合セグメント20とシリンジ本体12のニードル側に設けられている接続要素とによって、ニードル18とシリンジ本体12とが結合可能とされる。好ましくは、当該接続要素は、一種の外殻構造体として形成されており、結合セグメント20に接触した状態でアキシアル方向すなわち長手方向LRに滑動可能とされる。
【0027】
ニードル18とシリンジ本体12との接続について、
図1の区域IIに示す円状の領域に略対応する
図2の概略的な拡大断面図を参照しつつ説明する。
【0028】
好ましくは、結合セグメント20は、シリンジ本体12に一体的に接続されている。接続要素22及びニードル18が結合セグメント20に接続された場合には、受容空間16は、結合セグメント20の内部に形成されているチャネル24を介して、ニードル18のカニューレ26と流通する。
【0029】
接続要素22は、以下において外殻22とも呼称されるが、シリンジ本体側接続セグメント28とニードル側支持セグメント30とを備えている。少なくとも1つのロックセグメント32が、シリンジ本体側接続セグメント28に設けられており、長手方向軸線LAに関するラジアル方向内方に延在又は突出している。1つ以上のロック要素32が、シリンジ10の組み立てられた状態において、結合セグメント20に形成されているキャビティ34と係合している。1つ以上のロックセグメント32とキャビティ34とが係合することによって、接続要素22と結合セグメント20との間に機械式相互嵌合接続が確立可能又は確立するように、キャビティ34と1つ以上のロックセグメント32とは対応する形状を有している。
【0030】
接続要素22は、ラジアル方向内方に向いている境界壁36を接続要素22の支持セグメント30に備えている。開口部38が境界壁38の中央に形成されており、ニードル18が開口部38を貫通している。シリンジ10の組み立てられた状態では、境界壁36が、シリンジ本体12と面している境界壁36の内面40を介して、アキシアル方向力をシール要素42,44に作用させるので、シール要素42,44が結合セグメント20のアキシアル方向前面46に対して押圧されるか、又は、プレテンションがシール要素42,44に作用する。さらに、当該実施例では、境界壁36とシール要素42,44との間に、ニードル側支持セグメント30が、シリンジ10の組み立てられた状態においてラジアル方向内方に向いていると共に結合要素20のアキシアル方向前面46に面している、安定化リング48を備えている。好ましくは、安定化リング48は外殻22と一体に形成されている。
【0031】
さらに、ニードルホルダ50が、外殻22の内部に設けられており、ニードル18のカニューレ26のシリンジ本体側端部52を周方向において密接状態で囲んでおり、シリンジの組み立てられた状態において、シール要素42,44を介して、結合要素すなわち外殻22と結合セグメント20のニードル側前面46との間に保持されている。当該実施例では、ニードルホルダ50は、結合セグメント20に向かってテーパー状になっている錐状部分54と、ニードル側において錐状部分54に接続されているフランジ56とを備えている。フランジ56は、概略的にニードル18のカニューレ26から外殻22の内周に至るまでラジアル方向に延在しており、好ましくは円状の断面を具備するリング状のシールとして形成されているシール要素42をフランジ56のシリンジ本体側支持面60と接触させている。シール要素42は、さらなるシール要素すなわち支持要素44によって支持されている。シール要素すなわち支持要素44は、錐状部分54に対応する錐状の形態とされる。外殻22と外殻22に収容されているニードルホルダ50とをアキシアル方向において結合セグメント20に向かって変位させる際に、フランジ56は、アキシアル方向力をシール要素42,44に作用させる。錐状部分54は、優位にはシール要素42,44が外殻22と結合セグメント20との間において変形及び圧縮されるように、錐状部分54の幾何学的形状に起因して、ラジアル方向成分を含む力を作用させるので、所望の高さの液密性を有するニードル18とシリンジ本体14との間における機械的接続を確保することができる。
【0032】
図4aは、結合セグメント20を具備するシリンジ本体14の単純且つ概略的な斜視図である。
図4bは、
図4aの領域IVにおける結合セグメント20の拡大図である。
図4bから理解されるように、キャビティ34は、周方向において結合セグメント20の周囲に形成されており、アキシアル方向においてリードを有している。好ましくは、キャビティ34は、移行部分34−1,34−2を具備するネジ部分として形成されている。移行部分34−1,34−2は、結合セグメント20の周方向外面62をキャビティ34に接続している。さらに、
図4bから理解されるように、結合セグメント20は、ニードル側前面46に隣接している傾斜案内セグメント64を備えている。傾斜案内セグメント64は、ニードル側前面46と周方向外面62との間に移行部分を形成している。さらに、図解されるように、チャネル24が、ニードル側前面46において、シリンジ本体12の内部に形成された受容空間16と流通している。
【0033】
図5は、シリンジ本体側接続セグメント28及びニードル側支持セグメント30を具備する接続要素22すなわち外殻22の概略的な斜視図である。シリンジ本体側接続セグメント28は、シリンジ本体側接続セグメント28の周囲に沿って分配配置されている複数の溝又は凹所66を備えている。溝66は、ラジアル方向において弾性変形可能とされる接続セグメント部分68を形成している。接続ラッチ68とも呼称される接続セグメント部分68の周方向内面には、ロックセグメント部分70,72,74それぞれが、ロックセグメント部分70,72,74が協働してロックセグメント32を形成するように形成されている。当該実施例では、
図5から理解されるように、互いに対して反対側に配置されている2つのロックセグメント32が形成されている。
図5では、右側のロックセグメント32が視認可能であるが、ロックセグメント部分70,72,74から成る左側のロックセグメント32が破線で示されており、視認することができない。周方向において、非屈曲式接続セグメント部分76それぞれが、2つのロックセグメント32の間に配置されている。当該実施例では、非屈曲式ロックセグメント部分76と接続ラッチ68から成る2つのグループそれぞれとが、周方向の約4分の1に亘って延在している。言うまでもなく、接続ラッチ68と接続セグメント部分70とが異なる態様で配置されていても良い。例えば、1つの接続ラッチが、又は、2つの接続ラッチから成る組が、互いに対して120°の角度でオフセットされて配置されている。接続ラッチの数量と当該接続ラッチの周方向に沿った分配配置とは、シリンジの寸法及び所望の接続についての仕様に従って適応させることができる。従って、3つの接続ラッチ68から成る組を2つ具備する図示の実施例は、接続ラッチ68とロックセグメント32又はロックセグメント部分70,72,74との設計を必ずしも制限する必要はない。
【0034】
図3は、ロックセグメント32の構成に関する単純且つ概略的な部分図である。
図3は、結合セグメント20を省略した、
図2の区域IIIの外殻22の一部分を表わす。2つの実施形態両方において、ロックセグメント32は、傾斜案内面32−1を有している。さらに、ロックセグメント32は共に、ニードル側に面している支持面32−2を有している。支持面32−2は、キャビティ34の対応する側面に当接している。キャビティ34の対応する側面は、好ましくはネジ部分として形成されており、シリンジの組み立てられた状態において、アキシアル方向に作用する力を支持している。上側の実施形態では、支持面32−2がアキシアル方向すなわち長手方向LRに対して略直角に配置されている。下側の実施形態では、支持面32−2が、ロックセグメント32が鉤状のフックの形態とされるように、アキシアル方向LRに対して傾斜している。下側の実施形態に表わすロックセグメント32の構成によって、接続要素22と結合セグメント20との接続が、略直角の配置(上側の実施形態)と比較して、さらに改善される。いずれの実施形態においても、このような機械式接続が偶発的に解除されることはない。下側の実施形態については、特に接続セグメント部分若しくは接続ラッチ68又はロックセグメント部分70,72,74(
図5参照)を破損させる力が作用する条件下においてのみ、このような解除が起こり得る。
【0035】
図6は、外殻22がアキシアル方向すなわち長手方向LRにおいて結合セグメント20に接触した状態で滑動する際に、外殻22と結合セグメント20とのロック接続又は急速解除式接続がどのようにしてなされるかについて、単純且つ概略的に表わす。最初のプロセスa)では、ロックセグメント32が、傾斜案内面32−1を結合セグメント20の傾斜案内セグメント64に接触させるように移動される。プロセスb)において、接続要素22が結合セグメント20に向かってアキシアル方向に移動する際に、傾斜案内セグメント64によってロックセグメント32がラジアル方向RRに屈曲されることを条件として、プロセスa)において、ロックセグメント32の傾斜案内面32−1と傾斜案内セグメント64の案内面との傾斜は、自由に選択可能とされる。プロセスb)において、接続ラッチ68は、ラジアル方向外方に弾性的に屈曲される(
図5参照)。ロックセグメント32は、結合セグメント20の外周面に当接し(プロセスc))、弾性的な屈曲によって生じるプレテンション力が作用することによって外殻22がアキシアル方向にさらに滑動した後に、キャビティ34に係合されるか又はキャビティ34から急速に接続解除される(プロセスd))。ロックセグメント32がキャビティ34と係合するとすぐに、時計回りの回転運動(
図5の矢印DBを参照)によって、外殻22が結合セグメント20に堅固に接続される。当該回転運動は、好ましくは一回転の8分の1〜最大でも8分の7、特に一回転の約4分の1〜約3分の1とされる。従って、外殻22と結合セグメント20とは、係合を伴うアキシアル方向における滑動とその後の小さい回転運動とによって、機械的にすなわち連結して固定され、摩擦係合された状態で接続される。これに関連して、ロックセグメント32は、キャビティ34のネジ部分のリードに対応して、ロックセグメント28に配置されている。すなわち、ロックセグメント32は、対応するリードを有している。例えば部分的に雌ネジの態様とされる対応するリードを有している。完成したシリンジ10を組み立てるための上述のプロセスは、接着接続と必要であれば互いに対して接続されるべき要素を数回転させる必要がある螺合接続との組み合わせより時間を要しない、最終的な組立体における単純な結合プロセスを構成している。
【0036】
最後に、シリンジ本体12が結合セグメント20と一体に形成されていることが望ましいことに留意すべきである。シリンジ本体12のための材料としては、ガラスが望ましいが、研究所での利用に適切な合成材料であっても良い。好ましくは、接続要素すなわち外殻22は、約+300℃〜−70℃の温度範囲で利用可能とされる合成材料から形成されている。
【0037】
要約すると、例えばクロマトグラフィーでの利用のような研究所での利用のためのシリンジ10は、接続要素(外殻)22と結合セグメント20とが固定接続又は急速解除可能な接続で係合するようになっている。ここで、ロックするための形体(ロックセグメント32、キャビティ34)は、長手方向軸線LAを中心として部分的に回転させ、これにより接続要素22を締め付けることによって、係合後にアキシアル方向のプリテンションが作用されるように構成されている。このようなアキシアル方向のプレテンションによって、接続要素22に一体化されているシール要素すなわち支持要素42,44には、研究所での利用に十分とされるシリンジ10の所望の液密性を実現するように、プレテンションが作用している。本発明におけるシリンジは、特に高温クロマトグラフィー、ヘッドスペースクロマトグラフィー、溶媒を有する(損傷される接着剤が存在しない)環境、高純度が求められる環境、(接着剤の)ガスを放出する有機材料が存在しない環境、及び大きい張力がニードルとシリンジ本体との間に作用する環境で利用可能とされる。
【符号の説明】
【0038】
10 シリンジ
12 シリンジ本体
14 プランジャ
16 受容空間
18 ニードル
20 結合セグメント
22 接続要素(外殻)
24 チャネル
26 カニューレ
28 シリンジ本体側接続セグメント
30 ニードル側接続セグメント
32 ロックセグメント
32−1 傾斜案内面
32−2 支持面
34 キャビティ
34−1 移行部分
34−2 移行部分
36 境界壁
38 開口部
40 (境界壁36の)内面
42 シール要素
44 シール要素(支持要素)
46 アキシアル方向前面(ニードル側前面)
48 安定化リング
50 ニードルホルダ
52 シリンジ本体側端部
54 錐状部分
56 フランジ
60 シリンジ本体側支持面
62 (結合セグメント20の)周方向外面
64 傾斜案内セグメント
66 溝(凹所)
68 接続セグメント部分(接続ラッチ)
70 ロックセグメント部分
72 ロックセグメント部分
74 ロックセグメント部分
DB 矢印
LA 長手方向
LR アキシアル方向(長手方向)
RR ラジアル方向