(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
満足な結果が得られるまで前記最適化した線量分布をモニタリングしつつユーザが前記初期に計画された線量分布に1つまたは複数の改変をインタラクティブに適用する、請求項1に記載の方法。
前記初期の放射線療法治療計画立案の結果が、前記放射線療法治療計画を作製するための開始点として利用される初期に計画された治療パラメータを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
前記最適化対象のうちの1つまたは複数が、前記初期に計画された線量に対応する空間的線量分布に少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
前記最適化対象のうちの1つまたは複数が、前記初期に計画された線量に対応する線量‐体積ヒストグラムに少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
前記最適化対象のうちの1つまたは複数が、前記初期に計画された線量に対応する特徴的な線量減少(dose fall−off)に少なくとも部分的に基づくことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
前記初期に計画された線量の追加的な対象および/または改変に関するユーザ入力が、ユーザ入力インターフェースを介してユーザから受領され、かつ前記最適化対象の1つまたは複数を定義するために利用されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様によると、患者のための放射線療法治療計画を作製する方法を提供する。好ましくは、本方法は、プロセッサで、1つまたは複数の最適化対象に基づき治療パラメータを最適化することを含み、1つまたは複数の上記最適化対象が上記患者のための初期の放射線療法治療計画立案の結果に含まれかつ上記放射線療法治療計画を作製する前に入手される初期に計画された線量に少なくとも部分的に基づく。
【0006】
本発明の別の態様によると、コンピュータプログラム製品を提供する。好ましくは、コンピュータプログラム製品はコンピュータ可読命令を備え、命令がコンピュータ上で実行される場合、放射線療法治療計画を作製する方法をコンピュータに行わせる。
【0007】
本発明のさらなる別の態様によると、コンピュータシステムを提供する。好ましくは、コンピュータシステムは、放射線療法治療計画を作製するためのコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリに結合したプロセッサを含み、プロセッサがコンピュータ可読命令を実行するよう構成されている。
【0008】
本発明は、治療計画の最適化が、ほぼ達成可能である治療目標に基づく場合より有効であるという認識に基づく。よって本発明は、最適な治療計画を入手するための最適化過程であって、上記最適化が初期の治療計画立案からもたらされる線量分布に部分的に基づく過程を提案する。初期に計画された線量に基づき最適化対象を使用することにより治療計画を作製する場合、最適化対象は達成可能、または少なくともほぼ達成可能である線量を反映する。よって、治療計画立案は有効であり、良好な治療計画を得ることが十分可能である。初期の放射線療法治療計画立案の結果は、従来使用されるいずれかの治療計画立案方法の結果であってよく、最適化アルゴリズムが特定の治療の目的を可能な限り満たす線量を作製する一連の治療パラメータを見つけ出すために使用される、逆方向治療計画立案に基づいてよい。
【0009】
いくつかの実施形態により、初期治療計画立案の結果は、放射線療法治療計画を作製する際に利用される初期に計画された治療パラメータの設定を含む。よって、初期に計画された変数の設定が治療計画の最適化の開始点として使用される、「ウォーム・スタート」が得られる。これは、コンピュータの時間を減少させ、特に最適化対象に若干の修正のみを導入する場合に有益である。
【0010】
いくつかの実施形態では、最適化対象のうち1つまたは複数は、初期に計画された線量に対応する空間的線量分布に少なくとも部分的に基づく。よって治療計画立案は、初期の治療計画立案で達成された線量の実際の空間分布の保存を目的とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、最適化対象のうちの1つまたは複数は、初期に計画された線量に対応する線量‐体積ヒストグラムに少なくとも部分的に基づく。よって治療計画立案は、初期に計画された線量の空間的な特徴よりも線量‐体積の統計の保存を目的とする。
【0012】
いくつかの実施形態では、最適化対象のうちの1つまたは複数は、初期に計画された線量に対応する特徴的な線量の減少(dose fall−off)に少なくとも部分的に基づく。よって、初期に計画された線量がどのように標的への距離に依存しているかを記載する特徴的なdose fall−offが保存される。
【0013】
いくつかの実施形態では、最適化対象のうちの1つまたは複数は、初期に計画された線量に基づかない追加的な対象である。よって、追加的な治療対象は、初期に計画された線量に基づき対象と組み合わせて使用される。追加的な対象は、改善する必要がある初期に計画された線量のある態様に特に対処するために使用されてもよい。他方で、初期に計画された線量に基づく対象は、初期に計画された線量分布の保証されていない実質的な変化を抑制する。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記最適化対象のうちの1つまたは複数は、初期に計画された線量の改変に少なくとも部分的に基づく。よって、部分的に改変された初期に計画された線量は、少なくとも1つの最適化対象の基礎として使用される。線量の改変は、改善する必要のある初期に計画された線量のある態様に特に対処する。改変されていない線量部分の一部もまた最適化対象の基礎として使用されるため、改変されていない初期に計画された線量分布の保証されていない実質的な何等かの変化が抑制される。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記初期に計画された線量の追加的な対象および/または改変に関するユーザ入力が、ユーザ‐入力インターフェースを介してユーザから受領され、上記最適化対象のうち1つまたは複数を定義するために利用される。よって、初期の治療計画立案の結果の評価に基づき得るユーザ入力を、治療計画立案の過程に組み込むことができる。有利なことに、そのようなユーザ‐入力は、最適化過程の最中に連続的に受領でき、これにより治療計画立案の結果をユーザが効率的に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
治療計画立案は、通常、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンなどの患者の内部画像に基づき、かつこれらの画像で定義かつ分割されている内部構造に基づき実施される。
図3A〜
図3Cは、たとえばCTスキャンの1つの断面に対応する、患者の2次元表示の概略的な例示である。患者の3次元の表示は、多くの場合、線量の計算および治療計画立案の目的のため、複数のボクセルに離散化される。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る方法のフローチャートである。ステップ101では、治療計画立案の結果に関連するデータが得られる。初期治療計画立案の結果は、少なくとも初期に計画された線量を含む。初期治療の計画立案は、治療計画者が、たとえば経験に基づき、治療パラメータの設定を定義し、結果として線量を計算する従来の順方向治療計画立案を含んでよい。治療計画者は、計画者が結果に満足するまでパラメータを改変でき線量の計算を反復できる。しかしながら、初期の治療計画立案は一般的に逆方向治療計画立案を含み、ここでは治療計画者により定義されるすべての様々な対象および/または制約を可能な限り満たす線量を作製する一連の治療パラメータを見出すための最適化アルゴリズムが使用される(ここでこれらの対象は、たとえば放射線腫瘍医により定義される、治療の臨床的な目標に基づき定義される)。よって、初期の治療計画は、放射線療法治療計画を決定するためのいずれかの種類の治療計画立案過程に対応できる。たとえば、従来の逆方向治療計画立案方法を使用でき、またはMCO(Multi−Criteria−Optimization)などの最近の技術を使用できる。治療計画は、光子、プロトンまたは電子を含む任意の種類の様式を使用する任意の種類の放射線治療装置の使用に関して最適化できる。治療計画は、強度変調放射線治療(IMRT)計画、またはたとえば三次元原体照射療法(3DCRT)計画もしくは強度変調回転照射法(VMAT)計画などの他のいずれかの放射線治療計画であってよい。
【0019】
治療計画を最適化する場合、各最適化対象は、対応する最適化の関数により表されてもよい。たとえば初期の治療計画立案のために使用できる、逆方向治療計画立案における一般的な手法は、特定の計画立案の制約をしばしば受ける、すべての最適化関数から構成される対象の関数を最小化(または最大化)することである。対象関数fは、最適化関数f
iの重みづけの合計であり、すなわち、
【数1】
であってよい。式中、最適化関数の重量w
iは、矛盾する可能性のある別の治療目的に関連して、1つの最適化関数値の減少が第2の最適化関数値の増加に置き換えられる比率に対応する。重量は、異なる最適化の関数に特異的である。異なるボクセルにおいて対象を満たす相対的な重要性を反映して、最適化関数においてボクセル特異的重量を使用することも可能である。
【0020】
jのボクセルを含む、標的の体積またはリスクのある臓器(OAR)などの、対象の特定の臓器(ROI)に関して定義した均一な線量最適化対象に対応する、最適化関数f
iの簡単な例は、
【数2】
であり、式中d
jはボクセルjの線量であり、d
refは参照線量であり、Δv
jは、ROIにおけるボクセルjの相対体積である。線量d
jは、最適化により決定されるべき治療パラメータの関数であり、参照線量d
refは、ROIにおける望ましい線量に関連する線量対象である。相対体積Δv
jを掛け合わせ、参照線量d
refの平方により除算することによる正規化は、対象の重量を無視して、すべてのROIが体積および参照線量のレベルにかかわらず等しく重要であるとみなされるという効果をもつ。(2)に定義される均一な線量最適化関数を使用して、参照線量に関して不十分な線量および過剰な線量に等しくペナルティーが科せられる。これは一例であり、この関数の代わりにまたはこの関数に加えて、他の多くの最適化対象および対応する最適化関数を使用できることが当業者に明らかである。このような例は、最小または最大線量最適化関数、最小または最大線量‐体積ヒストグラム(DVH)をベースとした最適化関数、または放射線生物学をベースとした最適化関数である。
【0021】
治療計画に到達するための対象の関数を最適化する際に、様々な異なる最適化技術を使用してもよい。たとえば、逐次二次プログラミングアルゴリズムに基づく方法などの勾配ベースの方法、または焼きなまし法などのヒューリスティックな方法を使用できる。最適化は、その後の機械パラメータへの変換を必要とするフルエンスベースであってもよく、または機械パラメータが直接最適化されるDMPO(Direct Machine Parameter Optimization)に基づくものであってもよく、または両方の組み合わせであってもよい。最適化を使用した従来の逆方向治療計画立案は当業者によく知られており、よって本明細書中でさらに詳細には説明されない。
【0022】
初期の治療計画立案の結果は、初期に計画された線量および一連の初期に計画された治療パラメータである。しかしながら本発明によると、この治療計画は最終的な治療計画として使用されるものではない。
【0023】
ステップ102では、治療計画は、初期に計画された線量に少なくとも部分的に基づき作製される。ステップ102における治療計画立案は、本明細書中、「漸進的な」治療計画立案または最適化を指し、この治療計画立案が初期に計画された線量分布に基づくことを示す。初期の治療計画立案からもたらされる初期に計画された治療パラメータはまた、全体的な治療計画立案の過程の効率を改善するために漸進的な治療計画立案で利用されてもよい。
【0024】
漸進的な最適化は、初期の治療計画立案で決定される線量分布に少なくとも部分的に基づく1つまたは複数の最適化対象を含む対象の関数の最適化を使用する。好ましくは、初期に計画された線量に基づかない追加的な最適化対象、または初期に計画された線量の何らかのわずかな改変も、最適化に組み込まれる。しかしながら、初期に使用した最適化対象の少なくとも一部は、漸進的な最適化で無視される。いくつかの例示的な実施形態によると、以前に使用された対象のすべてが無視される。代替的な例示的な実施形態によると、初期に使用された最適化対象のうち1つまたは複数が、漸進的な治療計画立案のため保存されており、初期に計画された線量に基づく最適化対象と組み合わせて使用される。好ましくは、保存される1つまたは複数の最適化対象は、初期の治療計画立案において果たされていない臨床上の目的に関連する。
【0025】
よって、少なくとも部分的に、特定の線量分布(すなわち初期の治療計画立案から得た線量分布)を入手することを目的とする最適化が実施される。そのような最適化は、本明細書中では、「線量の模倣」と呼ばれ、最適化の目標が、特定の線量分布と可能な限り密接に一致するまたはそれを「模倣」する線量分布を生成する、一連の治療パラメータを見出すことであることを示す。線量の模倣は、空間的線量分布に基づいてよく、すなわち、各ボクセルに関して異なりかつ特異的な参照線量の対象を使用する。あるいはまたはさらに、線量の模倣は、線量−体積ヒストグラム(DVH)に基づいてよく、すなわち最適化における参照として以前に入手したDVH曲線を使用する。あるいはまたはさらに、参照線量fall−off関数は、初期に計画された線量から決定でき、最適化対象として使用できる。これらの異なる線量模倣方法は、以下にさらに記載される。
【0026】
空間線量の模倣
空間的線量分布を模倣する場合、上記の例の式(2)で定義した関数と類似の最適化関数を使用でき、ここで参照線量が各ボクセルについて特異的であるという差異を伴う。すなわち、本発明の文脈では、ボクセルの参照線量は、ボクセルに対し初期に計画された線量に対応する。よって、差次的な
【数3】
が最適化関数として使用され、式中、
【数4】
は、ボクセルjに特異的な参照線量である。異なる線量の模倣の最適化関数は、異なる領域で使用できる。たとえば、ボクセルにおいて不十分な線量および過剰な線量の両方にペナルティーを科す最適化関数(たとえば式2に係る関数と類似するが、ボクセル特異的な参照線量のレベルを使用する)は標的に使用でき、一方で過剰な線量にのみペナルティーを科す最適化関数は、リスクのある特定の臓器(OAR)に対応する領域でなど、他の領域で使用できる。
【0027】
DVHの模倣
DVH曲線を模倣する場合、様々な方法を使用できる。例として、均一な参照DVH最適化関数を使用できる。DVH曲線上の特定のポイントに関する偏差にのみペナルティーを科す、最大または最小DVH最適化関数に関連して、均一な参照DVHの最適化関数は、最適化されるべき計画のDVH曲線と参照DVH曲線との間の何等かの矛盾にペナルティーを科す。たとえば、累積体積の関数としてDVH曲線をパラメータ化する関数D(v)を定義する場合(D(v)を、体積のフラクションvがdよりも大きな線量を受領するように最小線量レベルdにして)、最適化関数fは、
【数5】
の形をとることができ、式中D(v)は、最適化される計画のDVHを指し、
【数6】
は、参照DVH曲線を指す(たとえばDVH曲線は、初期治療計画立案の結果である)。数種類の参照線量レベルを使用する正規化を、たとえば式(2)にしたがう正規化に対応させて、好ましくは最適化関数に組み込むこともできる。
【0028】
DVH曲線は、何等かの空間的情報を含まないが、特定の構造における線量分布の単純な2D表示である。よって、DVHベースの線量の模倣を使用する場合、最適化は、線量‐体積の統計により焦点がおかれ、線量分布の空間的な特徴にはあまり焦点がおかれない。
【0029】
dose fall−offの模倣
参照線量のfall−offの模倣は、参照線量分布の標的体積の外側のdose fall−offを再現するよう作用する。よって、dose fall−offが模倣される領域の各ボクセルjでは、標的の体積に対するおおよその最も短い距離δ
jが計算される。参照線量、すなわち初期に計画された線量が、どのように標的に対する距離に依存するかをおおよそ説明するdose fall−offの関数Δ(δ)を、次に構築する。最適化関数は、たとえば式(2)と類似の最適化関数と類似して、最終的に定義されるが、差次的な
【数7】
が最適化関数で使用されるように、参照線量レベルと置換されるdose fall−off関数と類似して定義される。
【0030】
この手法を使用すると、ボクセルに関する参照線量は、ボクセルに対し初期に計画された線量に完全には対応しないが(線量分布の模倣に関して)、むしろ初期に計画された線量分布から決定される特徴的なdose fall−offに従い計算される。単純な例として、fall−off関数
【数8】
は、標的からの距離δ
jでのボクセルjに関する参照線量が、標的からの対応する距離でのすべてのボクセルに関して、初期に計画された線量分布にしたがい、平均的な線量であるように構築できる。
【0031】
記載される線量模倣最適化関数のいずれかは、
図2Bを参照にして以下に論述されるように、互いと組み合わせることができ、かつ/または対象関数の他の最適化関数と組み合わせることができる。
【0032】
線量模倣最適化関数は、漸進的な治療計画立案で使用されるだけでなく、初期に計画される線量を決定する際に使用されてもよい。一例として、望ましい線量分布は、ユーザにより定義でき、初期治療計画立案における最適化対象として使用できる。よって、ユーザは、患者の中の望ましい線量分布を「ペイント」でき、または適切なユーザインターフェースのいずれかを使用する任意の方法で、定義できる。あるいはまたはさらに、上述の参照線量のfall−off関数は、望ましい線量分布を定義するために、様々な領域においていくつかの特定の望ましい線量レベルと有利に組み合わせて使用できる。その後、望ましい線量分布は、上述に従い線量模倣の最適化における最適化対象として使用される。線量模倣の最適化からもたらされる計画された線量は、望ましい線量が達成可能でない場合があるため、望ましい線量分布に通常は完全には対応しない。それにもかかわらず、計画された線量分布は、最適化対象として従来使用される望ましい線量分布を無視して、その後の漸進的な治療計画立案の基礎として使用される。これにより、漸進的な治療計画立案は実際に入手可能な線量分布に基づき、単に望ましい線量分布に基づくものではない。
【0033】
図2Aは、初期の治療計画立案の結果を示す線量‐体積ヒストグラム(DVH)曲線を示す。よって、標的領域DVH曲線201、リスクのある臓器のDVH曲線202は、初期の治療計画立案に従いこれらの構造に送達される線量を示す。2つのDVH曲線のみが示されているが、様々な異なる構造に関連する多くのDVH曲線が初期治療計画立案からもたらされ得、漸進的な治療計画立案のステップで利用される最適化対象に関する基礎として使用できることが理解されるべきである。初期治療計画立案は、多くの対象の最適化を利用する逆方向治療計画立案であり得る。この例示的な実施形態では、対象203、204、205、206が、DVHグラフ中で小さな矢印として
図2Aに示されている。最小DVH対象203は、少なくとも体積の95%が60Gy以上を受領すると定義する標的体積に割り当てた。最大線量の対象もまた標的に割り当て、標的のどの部分も70Gy超を受けていないことを定義した。別の最大線量対象205は、リスクのある臓器に割り当てられており、臓器のどの部分も55Gy超を受けないことを定義した。最終的に、最大で臓器の50%が15Gy超を受けることを定義する最大DVH対象を、リスクのある臓器に割り当てた。これらは、初期治療計画立案ステップに使用できる最適化対象の単なる例示である。これらの代わりに、またはこれらに加えて、多くの代替的な対象および/または制約を物理的(すなわち全体の線量ベース)および生物学ベースの最適化関数の両方に対応して使用できる。
【0034】
図2Bは、その後の漸進的な治療計画立案ステップに使用される最適化対象を示す。初期の最適化からもたらされるDVH曲線201、202は、標的に対して58Gyの最小線量を定義する1つの追加的な対象207と共に、対象として今度は使用される。以前に使用された対象は、漸進的な最適化ステップにおいて完全に無視される。さらなるまたは他の追加的な対象および対応する最適化関数を、漸進的な最適化の対象関数に組み込むことができる。たとえば、線量の均一性、平均線量、等価均一線量(equivalent uniform dose(EUD))、腫瘍制御確率(tumor control probability TCP))、正常組織障害確率(NTCP)、または他のいずれかの物理的もしくは生物学ベースの最適化関数に関連する対象を使用できる。しかしながら、漸進的な最適化ステップで使用される対象の関数は、上述のように、好ましくは線量模倣最適化関数により、初期の治療計画立案からもたらされる初期に計画された線量に少なくとも部分的に常に基づく。
図2Bでは、漸進的な計画立案における最適化対象として使用される初期に計画された線量は、DVH曲線201、201により例示される。よって漸進的な最適化で使用されるべき例示的な対象関数は、2つのDVH模倣最適化関数(各DVHに関して1つ)、および1つの最小線量最適化関数から構成できる。しかしながら、空間的線量分布模倣関数および/または参照線量fall−off関数を、DVH模倣関数と組み合わせて、またはこれの代わりに使用可能である。これらの線量模倣最適化関数は、最小線量対象207などの追加的な対象と、対応する方法で併用できる。
【0035】
図2Cは、漸進的な治療計画立案で使用される代替的な最適化対象を示す。図面に示されるように、小さな改変208を含む、改変DVH曲線202’は、改変されていないDVH曲線201と共に対象として今度は使用される。対象としてDVH曲線202’および201を使用する漸進的な最適化を、上述のように、DVH模倣最適化により実施する。
【0036】
DVH曲線の小さな改変は、漸進的な最適化アルゴリズムへの入力として使用され、治療計画者が改善したい特異的な線量の矛盾に関連する可能性がある。
図2Cに示される例では、改変207は、いわゆる「ホットスポット」(不合理に高い線量を受ける領域の一部)を表し得る、相対的に滑らかなDVHにおいて「隆起」として見られる、OAR DVHにおける異常な線量の減少を目的とする。任意の種類のユーザインターフェースを、初期に計画された線量の望ましい改変を治療計画者に入力させるように使用できる。一例として、ユーザインターフェースは、ユーザに、たとえばマウスを使用して、DVH曲線上をクリックさせ、曲線の一部を望ましい方向に望ましい距離「ドラッグ」させることができる。これはわずかに改変されたDVH曲線をもたらし、この曲線は、他の構造に関連する改変していないDVH曲線と共に、上述のように、漸進的な最適化の最適化対象を構成する。
【0037】
最適化対象を改変するための線量分布のインタラクティブな操作を含む他の実施形態では、初期の最適化からもたらされる完全な3次元の線量分布を、漸進的な最適化に関する基礎として使用でき、すなわち空間的な線量の模倣を使用する。このような実施形態を、
図3A〜3cを参照して最初に記載する。
図3Aは、標的領域301およびリスクのある臓器(OAR)領域302および初期の治療計画立案ステップからもたらされる線量分布を含む患者の断面図(たとえばCT断面に対応する)を示し、ある特定の線量レベルに対応する等線量の曲線303が付されている。
【0038】
この例示的な実施形態によると、線量分布の小さな改変は、任意の適切なユーザインターフェースを使用して画像中に直接定義される。たとえば、ホットスポットまたはコールドスポットを、関連する等線量の曲線の一部を望ましい方向に望ましい距離インタラクティブにドラッグすることにより提示できる。
図3Bでは、等線量の曲線の一部(破線により例示)が、等線量がOAR302を包有しないように標的に向けて移動され、改変された等線量の曲線303’をもたらす。これは、漸進的な最適化に関する対象として使用される改変線量分布を作製し、ここで改変線量分布は、領域305内のボクセル、および可能な場合は領域305の近くのボクセルを除き、以前に入手した線量分布に対応する。領域305は、以前の等線量曲線303から減算した改変等線量曲線303’に対応する。等線量曲線の改変は、様々な方法で関連するボクセルにおける改変線量の対象に翻訳できる。たとえば、領域305内の各ボクセルに、等線量303に対応する線量レベルを下回る所定のレベルに線量の対象を割り当ててもよい。代替的な別の例として、領域305内のボクセルの線量対象は、等線量曲線303に係る線量およびある特定の低い線量レベルの等線量に係る線量の補間に基づいてよく、すなわち、さらなる外側の等線量曲線303に位置する特定の等線量曲線(例示せず)に対応する。よって、領域305内のボクセルの改変参照線量レベルは、改変等線量曲線303’および初期に計画された線量分布での特定の低い線量レベルに対応する等線量曲線を考慮した、ボクセルの相対配置に依存する。最適化に使用される重要性の重みづけを調節してもよく、たとえば、改変参照線量レベルを有するボクセル(たとえば領域305内のボクセル)について、ある所定の基準に従い増加させてもよい。よって、漸進的な最適化は、改変していない参照線量を有するボクセルでの線量レベルを保存するよりも提案される線量改変を得ることを優先させる。
【0039】
漸進的な治療計画立案ステップで使用される線量模倣最適化は、改変等線量曲線303’を有する改変線量分布を入手しようと次に試みる。
図3Cは漸進的な治療計画立案ステップからもたらされる更新した等線量曲線303’’を含む線量分布を示し、これはたとえば、上述のような空間的線量模倣最適化を含み得る。図中に見られるように、
図3Bからの線量改変は部分的に満たされ、線量は隣接する領域でわずかにのみ変更される。治療計画者が結果に満足する場合、治療計画は認証され、患者を治療するために使用される。満足しない場合、治療計画者は、線量分布の何らかの他の改変を試み、または何らかの他の追加的な最適化対象を追加してもよい。
図3A〜3Cでは、線量分布は2次元図(たとえば患者のCT断面に対応する)で表示かつ改変される。あるいはまたはさらに、線量分布は患者の3D図で直接可視化かつ改変できる。
【0040】
等線量曲線を改変する代替物として、
図3Bに係る改変線量分布などの望ましい線量改変を「描く」ことを可能にするユーザインターフェースを使用してもよい。たとえば、画像分割過程において構造の曲線を改変するために使用されることのあるツールと類似する、「ブラシ」ツールを使用できる。これにより、ツールを使用して、たとえば、線量分布が調節されるべき画像内の領域において、マウスポインタを配置かつ/もしくはクリックする、または任意の他のデータ入力装置を使用することにより、望ましい線量の調節を画像に直接明記できる。ブラシツールの拡張は、ユーザにより定義できる。よってツールを使用する場合、線量レベルは、ブラシによりカバーされるすべてのボクセルに関して調節されてもよい。たとえば、「減少線量」および/または「増加線量」機能を、ある領域中の以前の線量レベルに関わらずその領域(たとえば1つまたは複数のボクセル)中の線量をそれぞれ減少または増加させるために使用してもよい。線量調節は、ブラシによりカバーされる領域内の相対的な位置に基づき、異なるボクセルに関して異なってよい。たとえば、ブラシによりカバーされる領域の中心でのボクセルは、上記領域の周辺のボクセルを超えて調節されてもよい。線量を増加かつ/または線量を減少させるユーザコマンドは、たとえばマウスのボタンおよび/またはマウスのホイールなどの、いずれかの適切なデータ入力装置を使用して入力できる。このブラシツールは、たとえば現在表示されるCT断面におけるボクセルのみを修正する、2Dツールとして使用してもよい。あるいは、ブラシツールは、ブラシツールによりカバーされる体積(たとえばユーザにより定義される半径を有する球状のブラシにより定義される体積)内のすべてのボクセルを改変する、2Dまたは3Dの患者の図中で使用される3Dツールとして使用してもよい。
【0041】
上述のインタラクティブな治療計画立案に関連する実施形態では、漸進的な最適化は連続して作動することが好ましく、すなわち、最適化を停止させるよう指令するユーザのコマンドをシステムが受領する前に最適化が終了または一時停止せずあるいは途切れないことが好ましい。よって、最適化は特定の回数の相互作用の後で自動的に停止せず、または特定の対象の関数値が入手されたなどの場合に、これは従来の治療計画最適化過程でよくある状況であろうが、自動的に停止しない。代わりに、最適化は、ユーザが線量分布に満足し、または他の理由で最適化を停止したいと思うまで、継続する。よって、システムは、初期に計画された線量およびユーザによる入力としてのこの線量の改変により定義される線量分布を、継続的に入手しようと試みる。
【0042】
漸進的な最適化が、認容可能な方法で、線量分布の望ましい改変を果たすことができる保証はない。しかしながら、最適化および線量計算のアルゴリズムが十分に迅速である場合、ほぼリアルタイムのフィードバックを伴うインタラクティブな治療計画立案が提供される。よって、ユーザは、任意の適切なツールを使用して、初期に計画された線量分布をインタラクティブに改変し、かつ最適化後に得られる線量分布をほぼすぐに見るであろう。よって、ユーザは、線量模倣最適化アルゴリズムが作動している間に最適化対象(すなわち初期に計画された線量分布)の小さな改変を示すことができ、かつ改変が達成可能かどうか、または費用が、他の構造および/もしくは他の治療目標のうちの達成されていない目標に対する改変線量の観点で、高すぎるかどうかに関する示唆をすぐに受け取ることができる。よって、治療計画者は、納得できる結果の線量分布を見つけ出すまで、最適化対象の様々な改変を効率よく試みることができる。これは、最適化対象が実際に達成した線量分布に部分的に基づき、よって常にほぼ達成可能である(提案される改変が小さい場合)ため、容易となる。
【0043】
いくつかの実施形態によると、ユーザは、漸進的な治療計画立案に関する基礎として使用される線量を「リセット」できる。よって、ユーザは、いずれの時点でも、最新の線量(たとえば上述のインタラクティブな漸進的な治療計画立案の最中に入手した)と初期に計画された線量を置き換えるよう選択でき、これにより、最新の線量は、任意の後の最適化において初期に計画された線量とみなされ得る。言い換えると、漸進的な治療計画立案の結果は、さらなる漸進的な治療計画立案の基礎として使用される初期治療計画立案の結果を表すよう選択できる。
【0044】
漸進的な最適化はスクラッチから開始でき、すなわち初期に計画された治療パラメータを使用せず、新規の最適化対象のための基礎として初期に計画された線量のみを利用して開始できるが、場合によっては、初期の治療計画立案かららもたらされる治療パラメータ設定の一部またはすべてを使用することが好ましいことがある。これらのパラメータ設定は、漸進的な最適化の開始点として使用できる。一般的に、小さな改変のみが作製される限り、そのような最適化は、コンピュータによる計算時間の減少を可能にする。
【0045】
図4は、本発明に係るコンピュータシステム401の例を概略的に示す。システムは、メモリ403に結合したプロセッサ402を備える。さらに、システムはディスプレイ装置404(たとえば患者の画像および線量分布、グラフィカルユーザインターフェース、および治療計画立案に関連する任意の他の情報を表示するため)、データ入力装置405(たとえばキーボード、マウスまたはデータ入力に適した任意の他の装置)ならびにデータ読み取り/書き込み装置406(たとえば光学ドライブ、USBインターフェース、またはデータの読み取り/書き込みに適した任意の他の装置)を含む。プロセッサ402は、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)または任意の種類の平衡プロセッサシステムなど、任意の種類であってよく、たとえば1つまたは複数のグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)に基づく。メモリ403は、情報の記録および取り出しに適した任意の種類の揮発性または非揮発性のメモリであってよく、たとえばハードドライブなどである。メモリ403は、それに記録されるコンピュータプログラム407を有する。コンピュータプログラム407は、治療計画立案方法を実施するためのコンピュータ可読命令を含み、ここでコンピュータ可読命令は、プロセッサ402に移され、またはプロセッサ402により実行され得る。プロセッサ402により実行される場合、コンピュータ可読命令は、初期に計画された線量を含む初期の治療計画立案の結果を回収することと初期に計画された線量に少なくとも部分的に基づく治療計画を作製することとを含む
図1に例示される方法を実施する。作製された治療計画は、メモリ403に記録できる。またコンピュータプログラム407は、非一時的コンピュータ可読媒体408、たとえばUSBドライブ、CD−ROMなどの光学データキャリアー、または適切な任意の他の携帯情報記録デバイスに記録でき、これによりコンピュータプログラム407はメモリ403に書き込まれ、かつ/または異なるコンピューティングシステムに移される。
図4を参照して記載されるシステムは単なる例であり、本発明に係るコンピュータシステムは、必ずしも例示されるすべての構成要素を含む必要はなく、かつ/または例示されていない他の構成要素を含んでもよい。
【0046】
本発明は、多くの例示的な実施形態を参照して記載されている。これらの実施形態は、単に本発明の原則および方法を単に例示するものであることが理解される。よって添付される特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの改変を施してもよく、かつ他の配置を考案してもよいことが理解されるものである。